説明

クリーニング装置及びクリーニング方法

【課題】本発明は、光学素子表面に残った粘着剤を効果的に除去することができるクリーニング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るクリーニング装置は、積載ホルダーに固定されている光学素子表面に残った粘着剤を除去することに用いられ、第一温度で前記光学素子に対して処理を行う第一筒状物と、前記第一筒状物の内部に位置し、第二温度で前記光学素子に対して処理を行う第二筒状物と、を備え、前記第二筒状物の側壁には、前記積載ホルダーを回転可能に回転させる第一:第二回転軸が設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子加工領域に関するものであって、特に光学素子をクリーニングする装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異なる光電製品の需要を満足するために、各種の形状を有する光学レンズを必要とする。従って、光学レンズ加工技術も急速に発展して、人々は異なる加工方式で必要とする光学レンズを獲得する。
【0003】
光学応用を満足するために、通常、光学レンズを円形に加工する。例えば、カメラのレンズ、眼鏡のレンズ、望遠鏡のレンズなどである。具体的に方形に成型された光学レンズをさらに円形に加工する。
【0004】
光学レンズを円形に加工する過程において、加工効率を高めるために、通常、紫外線硬化樹脂などの粘着剤によって加工しようとする複数の光学レンズを一体に粘着してから辺縁を円形に加工する。目下、加熱水で加工を完了したレンズをクリーニングするが、残った粘着剤を効果的に除去することができない不具合が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記課題を解決し、光学素子表面に残った粘着剤を効果的に除去することができるクリーニング装置及びクリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクリーニング装置は、積載ホルダーに固定されている光学素子表面に残った粘着剤を除去することに用いられ、第一温度で前記光学素子に対して処理を行う第一筒状物と、前記第一筒状物の内部に位置し、第二温度で前記光学素子に対して処理を行う第二筒状物と、を備え、前記第二筒状物の側壁には、前記積載ホルダーを回転可能に回転させる第一:第二回転軸が設置される。
【0007】
本発明に係るクリーニング方法は、光学素子を第一筒状物の内部に配置して第一温度で処理を行う第一ステップと、前記光学素子を第二筒状物の内部に回転して第二温度で処理を行う第二ステップと、前記光学素子を洗って、表面に残った粘着剤を除去する第三ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクリーニング装置は、二種の異なる温度で表面に粘着剤が付着している光学素子に対して処理を行って、高い温度は、光学素子表面の粘着剤の微粒子を軟化させて、隣り合う微粒子の間に水層を形成し、低い温度は、前記水層を氷に凝固させ、且つ凝固過程で水の体積が変化するため、前記光学素子に接触する粘着剤の微粒子が水層の膨張によって前記光学素子から剥離される。従って、光学素子表面に残った粘着剤を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態に係るクリーニング装置の縦方向断面図であって、断熱ユニット、第一筒状物及び積載ホルダーを備える。
【図2】本発明の第一実施形態に係るクリーニング装置の横方向断面図である。
【図3】図1に示すクリーニング装置の断熱ユニットの構造を示す図である。
【図4】図1に示すクリーニング装置の積載ホルダーを第一筒状物に固定した状態を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るクリーニング装置の積載ホルダーを第一筒状物に固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1及び図2を参照すると、本発明の第一実施形態に係るクリーニング装置10は、同軸に設置された第一筒状物11及び第二筒状物12を備える。
【0012】
前記第一筒状物11は、光学素子に対して加熱水処理を行うことに用いられる。前記第一筒状物11の上部には、注水口111が設置され、前記第一筒状物11の底部には、排水口112が設置されている。加熱水は、前記第一筒状物11と前記第二筒状物12との間の空間に収容されて、前記第一筒状物11の内部の光学素子と十分に接触することができる。前記加熱水の流動性を確保するため、加熱水で前記光学素子の表面に残った粘着剤を効果的に除去することができる。
【0013】
前記第一筒状物11に注水口と排水口の機能を兼ね備える注水口111だけを設置することもできる。
【0014】
前記第二筒状物12は、前記光学素子に対して冷凍処理を行うことに用いられる。前記第二筒状物12の上方には、外界液化気体貯蓄装置に接続された噴霧ノズル4が設置されている。前記噴霧ノズル4から前記第二筒状物12の内部に霧状の液化気体を噴射して、前記第二筒状物12の内部の温度を下げる。
【0015】
前記第一筒状物11に噴霧ノズル4を設置して光学素子に対して冷凍処理を行い、前記第二筒状物12に注水口111と排水口112を設置して光学素子に対して加熱水処理を行うこともできる。
【0016】
前記第二筒状物12の側壁には、複数の開口122(図4を参照)が開設される。前記開口122の中には、360度回転できる断熱ユニット8が設置されている。光学素子は、積載ホルダー9に構成された円形の収容凹所100に収容されて、前記断熱ユニット8に固定され、さらに前記第二筒状物12に固定される。前記断熱ユニット8は、冷凍処理を行う時、外部の熱量が前記第二筒状物12の内部に輻射して前記第二筒状物12の内部の温度が上がることを防止する。
【0017】
前記開口122以外の他の位置に断熱ユニット8を設置することもできる。
【0018】
図3に示すように、前記断熱ユニット8は、ステンレス15及び第一軟栓141に囲まれて形成された真空構造であって、前記ステンレス15及び前記第一軟栓141は、いずれも中空構造である。前記第一軟栓141は、前記ステンレス15の中空構造の中に位置し、前記第一軟栓141の表面には、熱輻射を反射するための銀薄膜16がめっきされている。第二軟栓142及び第三軟栓143によって前記第一軟栓141の中空部を塞ぎ、前記第一軟栓141の中空部に真空空間を形成する。前記第二軟栓142には、第一回転軸171が設置され、前記第三軟栓143には、溝144が設置される。
【0019】
図4に示すように、前記第二筒状物12の開口122には、第一貫通孔123と第二貫通孔124が設置され、前記第一貫通孔123の中心と前記第二貫通孔124の中心の連接線は、前記第二筒状物12の中心軸に平行する。前記断熱ユニット8のステンレス15には、2つのボルト22が設置され、前記積載ホルダー9の両端には、2つのアーム21がそれぞれに設置され、前記2つのボルト22は、別々に対応する2つのアーム21の間に係合され、2つのナット23が別々に対応する前記2つのアーム21の間から突出された前記ボルト22に螺合して、前記積載ホルダー9を前記断熱ユニット8に固定する。1つの第二回転軸172は、前記溝144に差し込むことができ、前記第二回転軸172を回転させると、前記断熱ユニット8が回転し、従って前記積載ホルダー9が連動して回転する。
【0020】
前記積載ホルダー9の両端に別々に1つのアーム21を設置し、前記ボルト22が対応する前記アーム21を貫かせることもできる。
【0021】
光学素子の表面に残った粘着剤を除去する時、先ず、前記断熱ユニット8の2つのボルト22を別々に前記積載ホルダー9の対応する2つのアーム21の間に係合してから、2つのナット23を別々に対応する前記2つのボルト22に螺合して、前記積載ホルダー9を前記断熱ユニット8に固定させ、前記光学素子を前記積載ホルダー9に配置し、前記第一回転軸171を前記第二貫通孔124に差し込み、前記第二回転軸172を順次に前記第一貫通孔123及び前記断熱ユニット8の溝144に差し込んで、前記断熱ユニット8を前記第二筒状物12に固定し、前記注水口111から前記第一筒状物11の内部に加熱水(約50℃〜70℃であって、好ましくは60℃である)を注入し、且つ前記排水口112から流出させて、前記光学素子を流れる加熱水に一定の時間ほど(一般的に15〜25時間であって、好ましくは20時間である)浸す。実際の操作において、実際の状況に基づいて水流の速度、加熱水の温度及び加熱水での処理時間を調節することができる。一定の処理時間に達すると、前記注水口122からの加熱水の注入を停止し、前記第一筒状物11の内部の加熱水を前記排水口112から排出する。加熱水での処理によって、前記光学素子表面の粘着剤の微粒子を軟化させて、隣り合う微粒子の間に水層を形成する。
【0022】
加熱水処理を行ってから前記第二回転軸172を中心に回転させて、前記積載ホルダー9を180度回転させて、積載ホルダー9が前記第二筒状物12の内部壁となり、前記噴霧ノズル4から前記第二筒状物12の内部に霧状の液化気体を噴射して、前記第二筒状物12の内部の温度を下げて、前記光学素子に対して一定の時間(一般的に15〜25時間であって、好ましくは20時間である)ほど冷凍処理を行う。本実施形態において、前記液化気体は、窒素であって、前記第二筒状物12の内部の温度は、−50℃〜−30℃であって、好ましくは−40℃である。冷凍処理を行うと、前記光学素子表面の粘着剤における隣り合う微粒子の間の水層は氷に凝固し、凝固過程で水の体積が変化するため、前記光学素子に接触する粘着剤の微粒子は、水層の膨張によって前記光学素子から剥離される。
【0023】
最後に、冷凍処理を行った光学素子を洗う。前記光学素子は、冷凍処理を行ったため、その表面の粘着剤の微粒子を除去し易い。
【0024】
下記の表における実験パラメーターとして、光学素子を60℃の加熱水に20時間浸した後に、−40℃の温度で20時間冷凍処理を行う。
【0025】
【表1】

【0026】
上述の実験データを分析すると、加熱水処理のみによる製品の平均良率は、65%であるが、加熱水処理及び冷凍処理による製品の平均良率は、85%であって、冷凍処理を加えると、製品の平均良率が20%向上し、従って光学素子の外観不良の問題を改善する。なお、回転方式によって加熱水処理を完了した後、直接に冷凍処理を行うため、クリーニング過程の連続性が確保される。
【0027】
図5に示したように、第二実施形態に係るクリーニング装置は、断熱ユニットを省略し、前記積載ホルダー19を直接前記第二筒状物12に固定する。加熱水処理が完了してから加熱水を排出するため、断熱ユニットが無くてもよい。
【0028】
積載ホルダー19の一端には、第一回転軸191が設置され、該第一回転軸191に対向する他の一端には、円孔192が設置され、1つの第二回転軸193は、前記円孔192に差し込むことができる。前記積載ホルダー19を固定する時、前記第一回転軸191を前記第二貫通孔124に差し込み、前記第二回転軸193を順次に前記第一貫通孔123及び前記円孔192に差し込んで、前記積載ホルダー19を前記第二筒状物12に固定する。
【0029】
以上本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種種変更可能であることは勿論であって、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0030】
4 噴霧ノズル
8 断熱ユニット
9,19 積載ホルダー
10 クリーニング装置
11 第一筒状物
12 第二筒状物
15 ステンレス
16 銀薄膜
21 アーム
22 ボルト
23 ナット
111 注水口
112 排水口
122 開口
123 第一貫通孔
124 第二貫通孔
141 第一軟栓
142 第二軟栓
143 第三軟栓
144 溝
171,191 第一回転軸
172,193 第二回転軸
192 円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載ホルダーに固定されている光学素子表面に残った粘着剤を除去することに用いられるクリーニング装置であって、
第一温度で前記光学素子に対して処理を行う第一筒状物と、
前記第一筒状物の内部に位置し、第二温度で前記光学素子に対して処理を行う第二筒状物と、
を備え、前記第二筒状物の側壁には、前記積載ホルダーを回転可能に回転させる第一:第二回転軸が設置されることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記第一筒状物には、注水口及び排水口が設置され、前記第二筒状物には、霧状の液化気体を噴射する噴霧ノズルが設置されることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記第二筒状物には、注水口及び排水口が設置され、前記第一筒状物には、霧状の液化気体を噴射する噴霧ノズルが設置されることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記第一筒状物及び前記第二筒状物は、同軸に設置された円筒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記第二筒状物の側壁には、複数の開口が開設され、前記開口の中には、断熱ユニットが設置され、前記第一回転軸は、前記断熱ユニットの一端に設置されることを特徴とする請求項4に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記開口の壁には、対向する第一孔及び第二孔が設置され、前記断熱ユニットの他端には、前記第二孔内で回転できる前記第二回転軸が設置され、前記第一回転軸は、前記第一孔に差し込まれて前記断熱ユニットに当接することを特徴とする請求項5に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記断熱ユニットには、溝が設置され、前記第一回転軸は、前記溝に差し込まれて前記断熱ユニットに当接することを特徴とする請求項6に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
光学素子を第一筒状物の内部に配置して第一温度で処理を行う第一ステップと、
前記光学素子を第二筒状物の内部で回転して第二温度で処理を行う第二ステップと、
前記光学素子を洗って、表面に残った粘着剤を除去する第三ステップと、
を備えることを特徴とするクリーニング方法。
【請求項9】
前記第一温度は、50℃〜70℃であって、処理時間は、15〜25時間であって、
前記第二温度は、−50℃〜−30℃であって、処理時間は、15〜25時間であることを特徴とする請求項8に記載のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−125451(P2010−125451A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258143(P2009−258143)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】