説明

クリーニング装置及びプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】コスト上昇を伴うことなく寿命を延ばすことが可能なクリーニング装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】金属製ブレード35を表面移動部材23に当接させて表面移動部材23をクリーニングするクリーニング装置20において、金属製ブレード35は短冊形状であり、長手方向の4つの稜線のうちの何れか1つの稜線を表面移動部材23に当接させ、表面移動部材23に当接させる稜線を変更可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、詳しくは中間転写体上の残存トナーをクリーニングするクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成に使用されるトナーとしては、ユーザからのさらなる高画質化の要望に応えるため小粒化の傾向にあり、製造コスト低減及び転写率向上の観点から粉砕トナーではなく重合法等によって球形化されたものの使用頻度が増加している。これに伴い、作像後に像担持体上に残留したトナーを除去する手段として主に用いられてきたブレードクリーニング方式では、ゴム製のブレードを像担持体に当接させてトナーを除去するためブレードと像担持体との密着度が低いとトナーがすり抜けてしまいクリーニング性が低下し易い。これを防ぐべく像担持体に対してブレードを強い圧力で押し付けると、ブレードにめくれが発生してスジ状あるいは帯状のクリーニング不良を引き起こす原因となるため、安定したクリーニング性能を保ち続けることが困難となる。球形トナーであっても線圧を極端に高く(例えば100gf/cm以上)すればクリーニングが可能であるが、像担持体及びクリーニングブレードの摩耗等によって寿命が極端に短くなる。
【0003】
また、転写性が良好とされている球形トナーに対するブレードによるクリーニングは、粉砕(異形)トナーに対するそれよりも劣ることはよく知られている。一方、像担持体の表面膜削れを軽減し小粒径または球形トナーのクリーニングにおいても確実なクリーニング性を発揮することが可能な方式としてブラシクリーニング方式が挙げられる。この方式では、像担持体表面に接触摺擦すべくブラシローラを、このブラシローラに接触すべく回収ローラをそれぞれ配置し、回収ローラからブレード等の手段によりトナーを除去する構成が知られており、回収ローラあるいは回収ローラ及びブラシの双方に電圧を印加して静電気力でクリーニングを行っているため、球形トナーの使用時に有利である。
【0004】
そして、高画質化と共に省資源及び長寿命化への要求も高まっており、静電気力により像担持体からトナーをクリーニングするブラシクリーニング方式はブレードクリーニング方式よりも長寿命化を狙うことができる。これは、ブレードクリーニング方式では像担持体とブレードとが摺擦してブレードやベルトが摩耗しクリーニング能力が低下してしまうのに対し、静電気力によりトナーを移動させるブラシクリーニング方式では像担持体とブラシとの摺擦負荷が比較的少なく両者の摩耗が少ないため長期間にわたってクリーニング性能を維持できるためである。しかし、ブラシクリーニング方式においても像担持体からブラシへ、ブラシから回収ローラへと静電気力によりトナーを移動させた後、最後にはブレードにより機械的に回収ローラからトナーを掻き落とす必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のブレードとして、ゴムブレードや金属ブレードが挙げられる。ゴムブレードでは被クリーニング体である回収ローラを摩耗させにくい反面、ブレードの摩耗が進行し易く寿命が短い。一方、金属ブレードは硬度が高いため摩耗が少なく、たとえば「特許文献1」には厚さ0.1mmのステンレス板が用いられている。このため、近年の長寿命化への要求に応えるためには金属ブレードの使用が有効であると考えられるが、さらなる部品の長寿命化を求められた場合には金属製のブレードであっても摩耗が進行してしまいクリーニング能力を保つことが困難となる。
【0006】
本発明は、上述のような金属ブレードの更なる長寿命化に対応すべく、コスト上昇を伴うことなく寿命を延ばすことが可能なクリーニング装置及びこれを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、金属製ブレードを表面移動部材に当接させて前記表面移動部材をクリーニングするクリーニング装置において、前記金属製ブレードは短冊形状であり、長手方向の4つの稜線のうちの何れか1つの稜線を前記表面移動部材に当接させ、前記表面移動部材に当接させる稜線を変更可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のクリーニング装置において、さらに前記金属製ブレードと前記表面移動部材との相対位置関係を調整する調整手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のクリーニング装置において、さらに前記金属製ブレードを着脱自在に支持する支持部材を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載のクリーニング装置において、さらに前記表面移動部材は像担持体に接触配置されたブラシ部材に接触配置された回転体であることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、感光体と、前記感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジであって、前記クリーニング装置として請求項1ないし4の何れか1つに記載のクリーニング装置を有することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、中間転写体と、前記中間転写体の表面をクリーニングするクリーニング装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジであって、前記クリーニング装置として請求項1ないし4の何れか1つに記載のクリーニング装置を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載のクリーニング装置を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項5記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置であることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項6記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の画像形成装置において、さらに前記中間転写体は厚さ0.07〜0.5mmの弾性層を有するベルトであることを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項7ないし10の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに形状係数SF1が100〜150であるトナーが用いられることを特徴とする。
【0018】
本発明は、部品コストの上昇を伴うことなく金属ブレードのさらなる長寿命化を図るものであり、具体的には短冊状の金属ブレードの長手方向稜線を複数箇所使用し、1つ目の稜線が摩耗した場合には他の稜線を被クリーニング部材に接触させることにより、金属ブレードの寿命を延ばすものである。しかし、金属ブレードはゴムブレードと違い弾性体ではないため、自身がつぶれて変形せず稜線の当接精度が悪い場合にはクリーニング不良が発生する。従って稜線の当接にはある程度の精度が必要となる。また、ブレードは長期間使用すると加圧により変形が発生し、使用する稜線を変更する際にはこの変形量が被クリーニング部材への食い込み量の差として現れる。
【0019】
ゴムブレードの場合には弾性力があるため、被クリーニング部材に当接させた際に比較的きれいに当接されクリーニング能力への影響が小さく、長手方向のうねりに対しては弾性変形により吸収する。また、ブレードの姿勢についても弾性変形により狙いの位置に当接する。一方、金属ブレードでは弾性体ではないため、変形が生じた状態で使用する稜線を変更した場合には被クリーニング部材への当接状態が極端に変化するため、クリーニング能力に大きく影響してクリーニング性が低下する場合がある。また、ブレードのうねりに対しては圧縮変形が発生せず、当接ムラが発生し易い。従って、金属ブレードを当接させる際には厳しい当接精度が要求されるため、金属ブレードの使用稜線を変更する場合にはブレードの変形をも考慮に入れた当接を実施する必要がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、部品コストを上昇させることなく金属製ブレードの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を採用した画像形成装置の要部概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を採用した画像形成装置の画像形成部要部の概略正面図である。
【図3】本発明の一実施形態を採用した中間転写ベルトクリーニング装置の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例を採用した中間転写ベルトクリーニング装置の概略図である。
【図5】本発明の一実施形態における金属製ブレードの構成を説明する概略図である。
【図6】本発明の一実施形態における金属製ブレードの変形を説明する概略図である。
【図7】本発明の一実施形態における金属製ブレードの接触状態を説明する概略図である。
【図8】本発明の一実施形態における金属製ブレードの接触状態を説明する概略図である。
【図9】本発明の一実施形態における金属製ブレードの稜線変更方法を説明する概略図である。
【図10】本発明の一実施形態に用いられる中間転写体の構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1はタンデム型間接転写方式を採用した画像形成装置としてのプリンタの内部構成を、図2はエンジンの詳細をそれぞれ示している。このプリンタは、装置本体1のほぼ中央に並列配置された4個のドラム状の感光体2a,2b,2c,2dを有しており、各感光体2a〜2dはそれぞれ時計回り方向に回転可能に構成されている。像担持体である感光体2a〜2dの周囲には、感光体2a〜2dの表面を除電する図示しない除電装置、感光体2a〜2dの表面を一様に帯電する帯電装置3a〜3d、レーザ光による光書き込みを行って感光体2a〜2dの帯電部分に静電潜像を形成する露光装置4、この静電潜像を現像する現像装置5a〜5d、転写後の感光体2a〜2dの表面をクリーニングするクリーニング装置7a〜7dがそれぞれ配設される。このプリンタは、感光体を4個用いたいわゆるタンデム方式を採用しており、それぞれの感光体2a〜2dの周囲に設けられる画像形成用の部品構成は、現像装置5a〜5dが扱う色材(トナー)の色(イエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ異なる以外は同じである(4セットあるPCUの構成部品については、感光体2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置7をもって説明し、他色の同一構成部品については説明を省略する)。
【0023】
感光体2a〜2dの上方には、中間転写ユニット10が設けられている。中間転写ユニット10は被クリーニング体である像担持体としての中間転写体である中間転写ベルト11を有しており、中間転写ベルト11は駆動ローラ12、支持ローラ13,14,15及び対向ローラ16に掛け回されおり、図2において反時計回り方向に走行駆動される。中間転写ベルト11は多層構造を呈しており、ベース層。弾性層、コート層から構成され、弾性層を有することにより転写しにくい凹凸形状の転写紙への転写性が向上する。しかし、転写紙として普通紙を使用する場合は弾性層を有せずとも問題なく、たとえば伸びの少ないフッ素樹脂やPVDシート、ポリイミド系樹脂によってベース層を構成し、その表面をフッ素系樹脂等の平滑性のよいコート層で被覆して形成されている。弾性層を含む中間転写ベルトについては後述する。
【0024】
中間転写ベルト11を挟んで感光体2a〜2dと対向する位置には、感光体2a〜2d上に形成されたトナー像を中間転写ベルト11に1次転写する1次転写手段としての1次転写ローラ6a〜6dが配設されており、対向ローラ16の左方には、後述する2次転写ローラ8による2次転写後に中間転写ベルト11上に残留した残留トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング装置20が配設されている。対向ローラ16は、中間転写ベルト11に一定の張力を付与する働きを持つと共に、中間転写ベルトクリーニング装置20の対向部材である対向ローラも兼ねていることになる。中間転写ベルトクリーニング装置20は中間転写ベルト11に比べて短寿命である理由から、後述するように単独での着脱が可能に構成されている。
【0025】
中間転写ベルト11を介して駆動ローラ12と対向する位置には、2次転写手段としての2次転写ローラ8が配設されている。本実施形態では2次転写手段として2次転写ローラ8を用いているが、2次転写ローラ8に代えて数本の支持ローラと駆動ローラにより掛け渡されるベルト等を2次転写手段として用いてもよい。
【0026】
装置本1の下方には、内部に記録紙を収納した給紙カセット17が配設されており、給紙ローラの回転によって給紙カセット17内の最上位の記録紙が1枚ずつ給紙路を経てレジストローラ対18に搬送される。2次転写ローラ8の上方には、記録紙上に転写された転写画像を定着する定着装置9が配設されている。2次転写ローラ8には、画像転写後の記録紙を定着装置9へと搬送するシート搬送機能も備えている。
【0027】
上述した構成のプリンタにおいて、図示しないスタートキーを押下する等により画像形成動作が開始されると図示しない駆動モータの作動によって駆動ローラ12が回転駆動され、支持ローラ13,14,15及び対向ローラ16が従動回転して中間転写ベルト11が図2の矢印方向に走行駆動される。同時に、各画像形成手段において各感光体2a〜2dが回転し、各感光体2a〜2d上にそれぞれイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの単色画像が形成される。形成された各単色画像は、中間転写ベルト11の回転に伴い中間転写ベルト11上に順次重畳転写されて合成カラー画像が形成される。一方、給紙カセット17から記録紙が1枚ずつ給送され、給送された記録紙はレジストローラ対18に突き当てられて一時停止される。そして中間転写ベルト11上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ対18が回転し、記録紙が中間転写ベルト11と2次転写ローラ8との間に送り込まれる。送り込まれた記録紙には2次転写ローラ8の作用によって合成カラー画像が転写される。画像転写後の記録紙は2次転写ローラ8により定着装置9へと送られ、定着装置9において熱と圧力との作用により転写画像を定着された後、機外に排出される。画像転写後の中間転写ベルト11には多少のトナーが残留しており、中間転写ベルト11は中間転写ベルトクリーニング装置20によって残留トナーを除去されて次の画像形成に備えられる。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態を採用した中間転写ベルトクリーニング装置20の概略構成を示している。同図において中間転写ベルトクリーニング装置20は、中間転写ベルト11上の転写残トナーの極性を制御するための導電性部材である極性制御ブレード21を、対向ローラ16と対向する位置において中間転写ベルト11表面に接触する態様で有しており、極性制御ブレード21の後の工程すなわち中間転写ベルト11の走行方向下流側には、極性制御されたトナーをクリーニングするためのブラシ部材である導電性のブラシローラ22、及びブラシローラ22に付着したトナーを回収する表面移動部材としての回転体である回収ローラ23、回収ローラ23の表面に当接して回収したトナーを掻き取る回収ローラ用クリーニングブレード35、装置本体1に備えられた図示しない廃トナータンクに回収したトナーを搬送するためのコイル部材25等を有している。これらの構成により第1クリーニング工程が行われる。
【0029】
上記構成において、極性制御ブレード21に代えてコロナチャージャを用いてもよく、コロナチャージャを用いた場合には中間転写ベルト11に対して傷を付けにくくなる。このときのコロナチャージャで使用するワイヤは直径60mm程度のタングステン等が用いられ、中間転写ベルト11とは7mm程度離間させて配置する。印加電圧は直流バイアスを印加しても直流バイアスに交流バイアスを重畳させたものを印加してもよく、直流バイアスを印加する場合は−5kV程度の印加が好ましい。
【0030】
ブラシローラ22には、その表面に電荷を付与する図示しないブラシ表面電荷付与部材を付加してもよい。このブラシ表面電荷付与部材は、ブラシにトナーが多く回収された場合にブラシ先端の電位が低下してしまうことを防止すべく電位を補うために備える導電性部材であり、たとえば金属の丸棒や金属の板状部材である。また、中間転写ベルト11の表面は極性制御ブレード21によって常時摺擦されているため、中間転写ベルト11の表面保護の観点から表面にブラシによって潤滑剤塗布を行うことも有効である。この場合、固形化した潤滑剤をブラシローラ22に当接させることで塗布する構成としてもよい。また、ブラシで塗布した潤滑剤によって中間転写ベルト11の表面に薄膜を形成する塗布ブレードを設け、潤滑性が向上するように構成してもよい。
【0031】
なお、ブラシローラ22とは別に潤滑剤塗布用のブラシを用いて潤滑剤を中間転写ベルト11の表面に塗布する構成も可能である。この構成によれば、クリーニング用のブラシローラ22にはトナーが常時回収されているため、トナーと潤滑剤とが交じり合って潤滑剤塗布時にいったん回収したトナーが再度中間転写ベルト11上に付着してしまう不具合の発生を防止することができる。
【0032】
上述の第1クリーニング工程の後、さらに中間転写ベルト11上に残された転写残トナーをクリーニングするため、ブラシローラ22の中間転写ベルト走行方向下流側にはブラシ部材としてのブラシローラ122、表面移動部材としての回収ローラ123、回収ローラ用クリーニングブレード135が配設されている。これらの構成により第2クリーニング工程が行われる。この第2クリーニング工程において、ブラシローラ122及び回収ローラ123に印加するバイアスは、第1クリーニング工程において印加したバイアスとは逆極性のものを印加している。これは、第1クリーニング工程でクリーニングできなかったトナーの極性の多くは同工程で印加したバイアスと同極性であるためである。従って、第2クリーニング工程では第1クリーニング工程とは逆極性のバイアスを印加してクリーニングを行っている。
【0033】
上述した第2クリーニング工程は必ずしも必要ではなく、場合によっては図4に示すように省略してもよい。第2クリーニング工程を有する方がクリーニング能力の余裕度が向上するが、転写残トナー量が少ない場合や使用する機種の寿命が短い場合等においては第1クリーニング工程のみでも十分である。さらに処理するトナーの条件によっては極性制御機構を持たなくてもよい。極性制御をせずともトナーが狙いの極性である場合等に極性制御機構を省略できる。
【0034】
次にクリーニング部の詳細構成について説明し、ここでは代表して第1クリーニング工程を行う構成について説明する。
ブラシローラ22は中間転写ベルト11との間でトナーへの電荷注入を低減するために芯鞘構造繊維で構成されており、その回転方向下流側へ傾斜して配置されている。ブラシローラ22を傾斜させることにより繊維から導電部が露出している切断面とトナーとの接触確率を下げてトナーへの電荷注入を低減させている。ブラシローラ22には、表面に接触した金属製のブラシローラ用電荷付与部材がブラシローラ22の軸と同電位で接続されている。これは、トナーがブラシローラ22から回収ローラ23へと移動すると繊維表面が絶縁性であるため、電位の低下が発生するので繊維への電荷補充を行っているためである。ブラシ表面の電位低下の原因は未だ明らかとなってはいないが、トナーの授受が何等かの影響を与えているものと考えられる。現在は、表面繊維に付着した電荷を持ったトナーが回収ローラ23へと移動する際に剥離放電が発生して絶縁層に負極性の電荷を与えてしまう、あるいはトナー付着により繊維表面層に負極性の電荷を与えてトナー移動後においても電荷が残存してしまうためと考えられる。ブラシローラ22の繊維表面の電位が低下すると中間転写ベルト11からのトナー除去性能が低下するため、繊維表面の電位低下分を補う部材としてブラシローラ22と同電圧が印加された金属製のブラシローラ用電荷付与部材が設けられている。回収ローラ23上のトナー除去は、回収ローラ用クリーニングブレード35により機械的に掻き落としている。
【0035】
ここで、極性制御ブレード21の特性値を示す。中間転写ベルト11に対する食い込み量は1mm、中間転写ベルト11に対する当接角度は20°、厚みは2mm、自由長は7mm、硬度はJISA硬度で60〜80度、反発弾性は30%、抵抗は10〜10Ω・cm、定電圧制御による制御電圧は−1200Vである。
【0036】
次に、第1クリーニング工程に用いられるブラシローラ22及び回収ローラ23の特性値を示す。ブラシローラ22の材質は導電性ポリエステル、直径は14mm、ブラシの毛足長さは4mm、中間転写ベルト11に対する食い込み量は1mm、線速は中間転写ベルト11とカウンタ当接しつつ205mm/s、電荷付与部材印加電圧は800V、軸印加電圧は800V、原糸抵抗は10Ω・cm、ブラシ植毛密度は10万本/inch、配置形態は回転方向下流側に傾斜である。回収ローラ23の材質は導電性フェノール樹脂、直径は12mm、線速は205mm/s、軸印加電圧は1200Vである。なお、第2クリーニング工程に用いられるブラシローラ122及び回収ローラ123の特性値は、それぞれの軸印加電圧の極性が異なる点を除いてブラシローラ22及び回収ローラ23の特性値と同一である。
【0037】
回収ローラ23を介してブラシローラ22と対向する位置には、本発明の特徴部である金属製ブレードとしての回収ローラ用クリーニングブレード(以下、回収ブレードという)35が配設されている。厚さ0.08mmのステンレス製板材からなる回収ブレード35は図5に示すように支持部材36によって支持されており、支持部材36からの突き出し量は8mm、回収ローラ23に対する接触角度は28°、線圧は30gf/cmに設定されている。回収ブレード35は先端部及び後端部に計4箇所の稜線を有しており、各稜線は表面にマスクを形成した状態でエッチング処理を施すことにより形成されている。これにより回収ブレード35の1つにつき所定の精度を有する稜線が最大で4本作成可能となる。稜線の作成方法はこれに限られず、放電加工やプレス加工等によって作成してもよい。
【0038】
回収ブレード35は、図5に示すようにスペーサ37を介して支持部材36にねじ止めされることにより構成されている。支持部材36に対する回収ブレード35の固定方法はねじ止めには限定されず、支持部材36に対して着脱自在であれば他のどのような方法を採用してもよい。この構成により、クリーニングに使用されている回収ブレード35の一つの稜線が摩耗してクリーニング性が低下した場合に、サービスマンがクリーニングに使用する稜線を変更すべく回収ブレード35を支持部材36から取り外して再度取り付けることにより、部品コストを上昇させることなく回収ブレード35の寿命を延ばすことができる。具体的には、図5(b)において稜線35aを使用していた場合にこれが摩耗した際には、ねじを外して回収ブレード35を裏返した後にこれを支持部材36に再度ねじ止めし、稜線35bを使用する。回収ブレード35が支持部材36に支持されていることにより、稜線変更を容易に行うことができる。
【0039】
上述の稜線変更をすべく回収ブレード35を付け替える際に、以下の点に注意が必要である。回収ブレード35は、長時間稼働していると図6に示すように塑性変形するため、稜線を変更する場合にはスペーサ37等により回収ローラ23に対する圧接力を変更する必要がある。圧接力を変更しない場合には、線圧が低くなりクリーニング性が低下する不具合や、線圧が大きくなり回収ブレード35の摩耗が早まる不具合が生じてしまう。
【0040】
また、当接時に回収ローラ23との接触角度にも注意が必要である。回収ローラ23と回収ブレード35との接触角度は、図7に示すように使用稜線変更前の角度であるθ2と使用稜線変更後の角度であるθ1とで変化する。回収ブレード35が仮にゴムブレードであれば弾性変形により角度θ1と角度θ2との差は小さいが、本発明の回収ブレード35は金属製であるため稜線付近の弾性変形が少なく、角度θ1と角度θ2との差が比較的大きくなる。このとき、角度θ1は角度θ2よりも小さいため、使用稜線変更後の回収ブレード35においてはトナーが回収ブレード35の下に潜り込み易くなり、クリーニング性が低下する。従って、回収ブレード35の稜線付近の形状は図8(a)に示すような凹型が望ましい。図8(b)に示すように、稜線変更後に使用する稜線を形成する回収ブレード35の角度θ3を鋭角とすることにより、回収ブレード35の使用稜線を変更した際の回収ローラ23と回収ブレード35との角度を大きく取ることができ、使用稜線を変更する前の状態と同等の状態とすることができる。本実施形態における角度θ3は約63°であるが、この角度には限定されない。
【0041】
次に、回収ブレード35における使用稜線の変更方法について説明する。先ず、回収ブレード35の摩耗がどの程度であるかの傾向を予め調べるため、40万枚通紙後に使用稜線を変更すると仮定し、40万枚通紙後に0.2mm程度の変形を確認した。
【0042】
図9を用いて変更方法を説明する。回収ブレード35の稜線変更において支持部材36と回収ローラ23との位置関係が変わらないことから、回収ブレード35と回収ローラ23との位置関係を考える代わりに支持部材36と回収ブレード35との位置関係を考えた。支持部材36と使用稜線までの距離をαとし、初期状態では厚さ0.2mmのスペーサ37を支持部材36と厚さ0.08mmの回収ブレード35との間に挟んでいることから支持部材36と使用稜線との距離は0.2+0.08=0.28mmとなり、40万枚通紙後に0.2mmの変形量が確認されたことから、α=0.28−0.2=0.08mmとなる。この状態で回収ブレード35を単に反対にして使用稜線を変更すると、0.2+0.08+0.2=0.48mmとなり回収ブレード35の食い込み量が大きくなりすぎるため、摩耗量が増大してしまう。従って、スペーサ37を調整(本実施形態ではスペーサ37を取り外す)して距離αが0.28mmとなるように調整した。本構成において、スペーサ37は調整手段として機能する。調整手段を有することにより、回収ブレード35が長期間の使用により変形している場合であっても、稜線変更による回収ブレード35の取付位置調整が容易となるので、クリーニング性を適正に保つことが容易となる。上記構成では、中間転写ベルトクリーニング装置20がプロセスカートリッジを構成しているので、主要部品の交換を容易に行うことができる。
【0043】
上記構成では、回収ブレード35の変形量が0.2mmである場合を説明したが、想定通紙枚数及び時間によって変形量は変わる可能性があるため、使用稜線を変更する際の回収ブレード35の変位量を固定する場合には、データを積み重ねて決定することが望ましい。
【0044】
次に、本実施形態に用いられる中間転写体について説明する。上述した中間転写ベルト11は、図10に示すように少なくとも基層11a、弾性層11b、表面のコート層11cを有している。本構成では硬度の低い弾性層11bを設け、転写ニップ部においてトナー層や平滑性の悪い用紙に対して変形可能となるように構成している。これにより中間転写ベルト11の表面が局部的な凹凸に追従して変形可能であるため、過度にトナー層に対して転写圧力を高めることなく良好な密着性を得ることができ文字の転写中抜けが発生せず、また平滑性の悪い用紙等に対してもソリッド部等における転写ムラのない均一性に優れた転写画像を得ることができる。
【0045】
弾性層11bに用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマ等の弾性部材が挙げられ、具体的にはブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマ(たとえばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし上記材料には限定されない。
【0046】
弾性層11bの厚さは、硬度及び層構成にもよるが0.07〜0.5mmの範囲が好ましい。中間転写体のクリーニング装置がクリーニングブレードである場合には、厚さが0.3mm以上ではクリーニングブレードの押圧力により撓んだり、クリーニングブレードが中間転写体の中に押し込まれて中間転写体の滑らかな移動を妨げたりするが、本発明においては極性制御ブレード21と像担持体である中間転写ベルト11との接触面積が小さいほど安定した放電が行われるため、極性制御ブレード21の当接圧を小さくすることができ弾性層11bの厚さが0.3mmを超えていても中間転写体の滑らかな移動を妨げることがない。従って極性制御ブレード21が、クリーニング部材であるブラシローラ22に処理される残留トナー量を低減する機能と、残留トナーのQ/M値を制御する機能とを両立することができる。中間転写体の厚さが0.07mm以下であると、2次転写ニップ部において中間転写ベルト11上のトナーに対する圧力が高くなり、転写中抜けが発生し易くさらにトナーの転写率が低下する。このような中間転写ベルト11を用いることにより、表面に凹凸を有する転写紙であっても良好に転写を行うことができ、かつ中間転写ベルト11のクリーニングを良好に行うことができる。
【0047】
上記実施形態では、像担持体として中間転写ベルト11を示し、この中間転写ベルト11上に残留したトナーをブラシ部材としてのブラシローラ22により除去し、ブラシローラ22から表面移動部材としての回収ローラ23によってトナーを静電的に除去し、回収ローラ23の表面から回収ブレード35によりトナーを機械的に除去する構成を説明したが、各クリーニング装置7a,7b,7c,7dにおいて像担持体としての各感光体2a,2b,2c,2dの表面上に残留したトナーをブラシ部材であるブラシローラ22により除去し、ブラシローラ22から表面移動部材としての回収ローラ23によってトナーを静電的に除去し、回収ローラ23の表面から回収ブレード35によりトナーを機械的に除去する構成を採用してもよい。この構成において、各クリーニング装置7a,7b,7c,7dとして各感光体2a,2b,2c,2d、ブラシローラ22、回収ローラ23、回収ブレード35を一体的に備えたプロセスカートリッジを構成してもよい。この構成により、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
次に、本発明の画像形成装置に好適に使用されるトナーについて説明する。トナーの形状係数SF−1は100〜150の範囲にあることが好ましい。形状係数SF−1はトナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(100π)/4・・・式(1)
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。本発明では、このようなクリーニングしにくいトナーを用いた場合であっても良好にクリーニングを行うことができる。
【0049】
上述した構成では、画像形成装置としてカラープリンタを用いた例を示したが、本発明が適用可能な画像形成装置はこれに限られず、複写装置、ファクシミリ、プロッタ、これらの複合機等の他の画像形成装置にも本発明は適用可能である。本発明を画像形成装置に適用することにより、異常画像を生じない画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
2 像担持体(感光体)
7 クリーニング装置
11 像担持体(中間転写ベルト)
20 クリーニング装置(中間転写ベルトクリーニング装置)
22,122 ブラシ部材(ブラシローラ)
23,123 表面移動部材(回収ローラ)
35,135 金属製ブレード(回収ローラ用クリーニングブレード)
35a,35b 稜線
36 支持部材
37 調整手段(スペーサ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2007−72398号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ブレードを表面移動部材に当接させて前記表面移動部材をクリーニングするクリーニング装置において、
前記金属製ブレードは短冊形状であり、長手方向の4つの稜線のうちの何れか1つの稜線を前記表面移動部材に当接させ、前記表面移動部材に当接させる稜線を変更可能であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1記載のクリーニング装置において、
前記金属製ブレードと前記表面移動部材との相対位置関係を調整する調整手段を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のクリーニング装置において、
前記金属製ブレードを着脱自在に支持する支持部材を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載のクリーニング装置において、
前記表面移動部材は像担持体に接触配置されたブラシ部材に接触配置された回転体であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
感光体と、前記感光体の表面をクリーニングするクリーニング装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジであって、前記クリーニング装置として請求項1ないし4の何れか1つに記載のクリーニング装置を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
中間転写体と、前記中間転写体の表面をクリーニングするクリーニング装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジであって、前記クリーニング装置として請求項1ないし4の何れか1つに記載のクリーニング装置を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1ないし4の何れか1つに記載のクリーニング装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項5記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、
前記中間転写体は厚さ0.07〜0.5mmの弾性層を有するベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項7ないし10の何れか1つに記載の画像形成装置において、
形状係数SF1が100〜150であるトナーが用いられることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−53613(P2011−53613A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204869(P2009−204869)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】