説明

クリーニング装置及び画像形成装置

【課題】残留トナー等の付着物をブラシローラから回収ローラ等の摺擦部材へ回収させる回収効率を簡単な構成で向上させることができるクリーニング装置。
【解決手段】複数の繊維が周面に植毛され、被清掃体の表面に当接して回転し、該被清掃体の表面に付着した付着物を除去するブラシローラと、前記ブラシローラに摺接して前記ブラシローラに付着した前記付着物を除去する摺擦部材と、を有するクリーニング装置において、
前記ブラシローラの複数の繊維には、少なくとも先端部の摩擦係数が異なる繊維が混在していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体等の被清掃体の表面に当接して被清掃体の表面に付着したトナー等の付着物を除去するブラシローラを有するクリーニング装置、及び該クリーニング装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの諸機能を備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置において、カラー画像を形成する場合には、原稿色に対応したY、M、C、Kの潜像を4個の感光体ドラムに形成し、顕像化された4色の画像を無端状の中間転写ベルトに一次転写した後、記録材上に二次転写して、記録材上に転写された画像を定着して排紙している。
【0003】
以上の如き画像形成装置においては、転写後に感光体ドラムや中間転写ベルトの像担持体に付着して残留したトナーを除去するクリーニング装置が設けられている。
【0004】
像担持体から残留トナーを除去する部材としては、クリーニングブレードやブラシローラがある。
【0005】
クリーニングブレードを用いる場合は、ウレタンゴム等から板状に形成されたクリーニングブレードのエッジ部を回転する像担持体の外周面に当接させて、像担持体の表面に付着した残留トナーを掻き落として除去する。そして、掻き落とした残留トナーをクリーニング装置内に設けた搬送スクリューによりクリーニング装置外に搬送し、更に搬送スクリューを内蔵した管状の搬送手段によって所定の搬送先まで搬送する。そして、残留トナーを廃棄する場合は回収容器に搬送し、残留トナーを再利用する場合は現像装置に搬送する。
【0006】
しかし、クリーニングブレードを用いると、小径トナーの除去が充分に行われないという問題や、エッジの摩耗による耐久性能の問題がある。
【0007】
一方、ブラシローラを用いる場合は、複数の繊維が周面に植毛されたブラシローラを回転させ、回転する像担持体の外周面に当接させて、像担持体の表面に付着した残留トナーを除去する。そして、ブラシローラに付着した残留トナーを回収ローラで除去する。
【0008】
このようなブラシローラを用いたクリーニング装置においては、像担持体の残留トナーがブラシローラに移行し、ブラシローラに付着した残留トナーが更に回収ローラに移行する。この場合に、ブラシローラから残留トナーを回収ローラが回収する回収効率が低いと、次第にブラシローラに残留トナーが溜まってゆき、像担持体から残留トナーをブラシローラが回収する回収効率も低下する。
【0009】
なお、ブラシローラの回転により像担持体上の残留トナーが撹拌されるので、残留トナーの像担持体への付着力が低下する。従って、残留トナーからブラシローラへの回収効率は高い。しかし、ブラシローラに付着した残留トナーは回収ローラにより撹拌されないので、回収効率は低い。
【0010】
また、ブラシローラに付着した残留トナーを除去する他の構成として、回転するブラシローラに固定された面状や棒状の部材を当接させて残留トナーをブラシローラから離脱させ、エアにより吸引したり、回収ローラに残留トナーと逆極性の電圧を印加したりする構成があるが、残留トナーの離脱効率が悪いと、エアや電界だけの力では充分に残留トナーを除去することは困難である。
【0011】
このようなブラシローラを用いたクリーニング装置においては、長期間の使用によってブラシローラの繊維に残留トナーが固着すると、像担持体に疵を付ける虞がある。そこで、残留トナーのブラシローラからのクリーニング性能を向上させる必要がある。
【0012】
このような問題を解決するために、ブラシローラにおける個々の繊維の根本に樹脂を含浸させて形成すると共に、含浸させる高さを異ならせ、腰の強い繊維と腰の弱い繊維とを混在させたクリーニング装置が特許公報に開示されている(特許文献1参照)。
【0013】
このブラシローラにおいては、腰の強い繊維で残留トナーを像担持体から掻き取り、腰の弱い繊維で除去した残留トナーを集めて搬送することにより、クリーニング性能を向上させている。
【特許文献1】特開2005−10725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、残留トナー等をブラシローラから回収ローラへ回収させる回収効率が高くなく、上記の問題を解決するためには未だ不充分である。
【0015】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、残留トナー等の付着物をブラシローラから回収ローラ等の摺擦部材へ回収させる回収効率を簡単な構成で向上させることができるクリーニング装置、及び該クリーニング装置を備えた画像形成装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的は、下記に記載した発明により達成される。
1.複数の繊維が周面に植毛され、被清掃体の表面に当接して回転し、該被清掃体の表面に付着した付着物を除去するブラシローラと、前記ブラシローラに摺接して前記ブラシローラに付着した前記付着物を除去する摺擦部材と、を有するクリーニング装置において、
前記ブラシローラの複数の繊維には、少なくとも先端部の摩擦係数が異なる繊維が混在していることを特徴とするクリーニング装置。
2.前記ブラシローラの複数の繊維は、第1の樹脂から形成された第1の繊維と、摩擦係数が前記第1の樹脂と異なる第2の樹脂が前記第1の繊維の先端部に塗布された第2の繊維とからなることを特徴とする1に記載のクリーニング装置。
3.前記ブラシローラの複数の繊維は、第1の樹脂から形成された第1の繊維と、摩擦係数が前記第1の樹脂と異なる第2の樹脂から形成された第2の繊維とからなることを特徴とする1に記載のクリーニング装置。
4.前記第1の繊維に対する前記第2の繊維の比率は20%以上、50%以下であることを特徴とする1〜3の何れか1項に記載のクリーニング装置。
5.前記摺擦部材は、回転する回収ローラであることを特徴とする1〜4の何れか1項に記載のクリーニング装置。
6.前記被清掃体は像担持体であり、前記付着物は残留トナーであることを特徴とする1〜5の何れか1項に記載のクリーニング装置。
7.前記回収ローラに前記残留トナーと逆極性の電圧を印加することを特徴とする6に記載のクリーニング装置。
8.前記回収ローラに付着した付着物を掻き落とすスクレーパを設けたことを特徴とする1〜7の何れか1項に記載のクリーニング装置。
9.1〜8の何れか1項に記載のクリーニング装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明のクリーニング装置及び該クリーニング装置を備えた画像形成装置によれば、残留トナー等の付着物をブラシローラから回収ローラ等の摺擦部材へ回収させる回収効率を簡単な構成で向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の画像形成装置に関する実施の形態を図を参照して説明する。
【0019】
先ず、画像形成装置の一例を図1の構成図に基づいて説明する。
【0020】
本画像形成装置は画像形成装置本体GHと画像読取装置YSとから構成される。
【0021】
画像形成装置本体GHは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10K、中間転写ベルト6、給紙搬送手段及び定着装置8等からなる。
【0022】
画像形成装置本体GHの上部には、自動原稿送り装置201と原稿画像走査露光装置202から成る画像読取装置YSが設置されている。自動原稿送り装置201の原稿台上に載置された原稿dは搬送手段により搬送され、原稿画像走査露光装置202の光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0023】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、不図示の画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0024】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体ドラム1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段5Yを配置している。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段5Mを配置している。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段5Cを配置している。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段5Kを配置している。そして、帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光装置3C、及び帯電手段2Kと露光装置3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0025】
なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。
【0026】
中間転写ベルト6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0027】
定着装置8は、加熱された加熱ローラ81と加圧ローラ82との間に形成されたニップ部で記録紙(記録材)P上のトナー像を加熱・加圧して定着する。
【0028】
かくして、画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写ベルト6上に転写手段7Y、7M、7C、7Kにより逐次転写されて(1次転写)、カラー画像合成されたトナー像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録紙Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23等を経て、転写手段7Aに搬送され、記録紙P上にカラー画像が転写される(2次転写)。カラー画像が転写された記録紙Pは定着装置8において加熱・加圧され、記録紙P上のカラートナー像が定着される。その後、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
【0029】
一方、転写手段7Aにより記録紙Pにカラー画像を転写した後、記録紙Pを曲率分離した中間転写ベルト6は、クリーニング装置9により残留トナーが除去される。
【0030】
なお、以上はカラー画像を形成する画像形成装置であったが、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよい。
【0031】
次に、本発明に係わるクリーニング装置9の主たる構成を図2に基づいて詳細に説明する。図2はクリーニング装置9の断面図である。
【0032】
クリーニング装置9は、ブラシローラ91、回収ローラ92、スクレーパ93及び回収スクリュー94から構成される。
【0033】
ブラシローラ91は、回転軸の周面に例えばポリエステル樹脂から成る複数の繊維が静電的に植毛されている。そして、中間転写ベルト6(被清掃体)の表面に当接して回転し、像担持体としての中間転写ベルト6の表面に付着した残留トナー(付着物)を除去する。なお、図においてはブラシローラ91は中間転写ベルト6と同じ時計方向に回転するので、両者の当接位置において両者の外周面は逆方向に移動する。
【0034】
回収ローラ92(摺動部材)は、ステンレス等から形成され、ブラシローラ91の表面に当接して回転する。なお、図においては回収ローラ92はブラシローラ91と同じ時計方向に回転するので、両者の当接位置において両者の外周面は逆方向に移動する。また、回収ローラ92には残留トナーと逆極性の電圧が印加されているので、ブラシローラ91に付着した残留トナーを静電的に引きつけることができる。
【0035】
スクレーパ93は、ステンレス等から形成され、回収ローラ92にカウンタ方向から当接して、回収ローラ92に付着した残留トナーを掻き落とす。
【0036】
回収スクリュー94は、ブラシローラ91や回収ローラ92から落下した残留トナーを紙面直角方向に搬送する。そして、クリーニング装置9の外部に搬送された残留トナーは、廃棄される場合は不図示の回収容器に回収され、再利用される場合は現像装置に搬送される。
【0037】
以上の如き構成のクリーニング装置9において、ブラシローラ91における複数の繊維には少なくとも先端部の摩擦係数が異なる繊維を混在させてある。先端部の摩擦係数が異なる繊維を混在させるには、主繊維(第1の繊維)を形成する樹脂(第1の樹脂)とは異なる樹脂(第2の樹脂)を主繊維の先端部に塗布した繊維(第2の繊維)を主繊維と混在させたり、主繊維(第1の繊維)を形成する樹脂(第1の樹脂)とは異なる樹脂(第2の樹脂)から形成された繊維(第2の繊維)を主繊維と混在させたりする。
【0038】
これにより、ブラシローラ91と回収ローラ94との当接部において、摩擦力が異なる繊維が混在しているので、繊維の先端速度が繊維毎に異なって、ばらばらになる。従って、残留トナーの付着が多い繊維の先端部の近傍においては繊維同士の接触が活発になり、繊維の振動や残留トナーの攪乱効果によって、残留トナーが離脱し易くなる。
【0039】
このように異なるブラシローラの作用を図3の拡大図に示す。
【0040】
図3(a)は同一の繊維からなるブラシローラの図、図3(b)は主繊維と、主繊維の先端部に他の樹脂を塗布した繊維とを混在させたブラシローラの図、図3(c)は主繊維と、主繊維とは異なる樹脂から形成された繊維とを混在させたブラシローラの図である。
【0041】
なお、図3においては繊維を一部のみに描いている。
【0042】
また、摩擦係数が異なる繊維が混在したブラシローラを製造するには、例えばポリエステル樹脂の先端部にウレタン樹脂、シリコーン樹脂、若しくはフッ素樹脂等の何れかを塗布し、ポリエステル樹脂からなる主繊維と他の樹脂を塗布した繊維とを混在させて植毛する。
【0043】
また、ポリエステル樹脂の繊維とフッ素樹脂を含浸させた繊維を混在させたり、ポリエステル樹脂とアクリル繊維を混在させたりする場合も同様である。
【0044】
その他に、例えば単一のポリエステル樹脂から形成された繊維を植毛してブラシローラを形成した後、後処理によって一部の繊維の先端を摩擦係数が異なる他の樹脂を塗布することも可能である。
【0045】
次に、各種のブラシローラを用い、中間転写ベルトからブラシローラへの残留トナーの回収効率、ブラシローラから回収ローラへの残留トナーの回収効率、及び中間転写ベルトのクリーニング部におけるトナーのすり抜け状況を調べる実験について記す。
(1)実験条件
・実験装置・・・図1に示す如きタンデム方式のカラー画像形成装置
・中間転写ベルト・・・基体:PI、体積抵抗:109Ω、表面抵抗:1011Ω、ベルトテンション:39.2N
・ブラシローラ・・・外径:18mm、毛長:5mm、回収ローラとの食込量:1mm
・ブラシローラの繊維・・・材質:導電性ポリエステル(以下、ポリエステルと称す)に異なる繊維を混在、線径:2d、ポリエステルの原糸抵抗:109Ω
・回収ローラ・・・材質:SUS、外径:18mm、表面粗さ:Rz0.1μm
・スクレーパ・・・材質:SUS、厚み:0.05mm
(2)ブラシローラにおける異なる繊維の混在状況
実施例1:ポリエステルからなる全繊維の10%の先端部にウレタン樹脂を塗布
実施例2:ポリエステルからなる全繊維の20%の先端部にウレタン樹脂を塗布
実施例3:ポリエステルからなる全繊維の50%の先端部にウレタン樹脂を塗布
実施例4:ポリエステルからなる全繊維の60%の先端部にウレタン樹脂を塗布
実施例5:ポリエステルからなる全繊維の10%の先端部にシリコーン樹脂を塗布
実施例6:ポリエステルからなる全繊維の20%の先端部にシリコーン樹脂を塗布
実施例7:ポリエステルからなる全繊維の50%の先端部にシリコーン樹脂を塗布
実施例8:ポリエステルからなる全繊維の60%の先端部にシリコーン樹脂を塗布
実施例9:ポリエステルからなる全繊維の10%の先端部にフッ素樹脂を塗布
実施例10:ポリエステルからなる全繊維の20%の先端部にフッ素樹脂を塗布
実施例11:ポリエステルからなる全繊維の50%の先端部にフッ素樹脂を塗布
実施例12:ポリエステルからなる全繊維の60%の先端部にフッ素樹脂を塗布
実施例13:ポリエステルからなる全繊維の20%にフッ素樹脂を含浸
実施例14:80%のポリエステル繊維と20%のアクリル繊維
比較例1:全繊維が単一なポリエステル
比較例2:60%のナイロンからなる繊維と40%のポリエチレンからなる繊維とに各々水系ウレタンエラストマーと架橋剤エポキシとを混合した樹脂を含浸(特許文献1の図16の如き繊維)
(3)靜摩擦係数の測定装置
装置・・・HEIDON トライボギア ミューズ94iII
スライダー部・・・材質:SUS、表面粗さ:Rz0.1μm(回収ローラと同等に設定)
(4)各繊維の靜摩擦係数
【0046】
【表1】

【0047】
(5)効果の確認方法
回収ローラを外した状態でブラシローラに未転写のトナーを付着させ、その後に回収ローラを取り付けて該トナーを回収ローラに付着させ、各工程においてブラシローラの質量を測定することにより、中間転写ベルトからブラシローラへの残留トナーの回収効率及びブラシローラから回収ローラへの残留トナーの回収効率を算出した。
【0048】
また、印字率20%の画像パターンを連続1000枚プリントした後、ブラシローラによる中間転写ベルトのクリーニング部におけるトナーのすり抜け状況を視認した。
(6)実験結果
【0049】
【表2】

【0050】
なお、中間転写ベルトのクリーニング部におけるトナーのすり抜け状況に関しては、以下の通りである。
【0051】
○:すり抜け発生せず
△:僅かなすり抜け発生
×:すり抜け発生
(7)考察
中間転写ベルトからブラシローラへの回収効率に関しては実施例1〜14と比較例1,2とに差がないが、ブラシローラから回収ローラへの回収効率に関しては実施例1〜14は何れも60%以上あって、比較例1,2より大幅に向上した。換言すれば、実施例1〜14は中間転写ベルトからブラシローラを介して回収ローラへのトータルとしてのクリーニング性能が向上した。
【0052】
これは、ブラシローラと回収ローラとの接触部において、実施例1〜14においては摩擦力の異なる繊維が混在しているため、接触部において繊維の先端速度が繊維毎にばらばらになり、トナーが多く付着している繊維の先端部の近傍で繊維同士の接触が活発になり、繊維の振動や付着したトナーの攪乱効果により、電界でのトナー移動が起こり易くなるためである。
【0053】
ブラシローラの繊維としてポリエステル樹脂を用いた場合は、摩擦係数がポリエステル樹脂より高いウレタン樹脂やシリコーン樹脂等を先端に塗布するか、摩擦係数がポリエステル樹脂より低いフッ素樹脂を先端に塗布するかして、摩擦力に差のある繊維を混在させることにより、良好なトナー回収性能を得ることができる。
【0054】
また、繊維の先端に他の樹脂を塗布する場合は、他の樹脂を塗布した繊維の比率が10%以下であると、前述の如きトナーの攪乱効果が小さく、ブラシローラから回収ローラへの回収効率がさほど向上しない。一方、他の樹脂を塗布した繊維の比率が60%以上であると、他の樹脂を塗布した繊維に関しては元の繊維よりトナーが付着できる量が若干少なくなるため、中間転写ベルトよりブラシローラへの回収効率が低下する。従って、他の樹脂を塗布した繊維の比率は繊維全体の20%以上、50%以下であることが望ましい。
【0055】
なお、この比率は、異なる樹脂から形成された繊維を混在させた場合も同様である。
【0056】
更に、実施例14の如くポリエステル繊維とアクリル繊維とを混在させた場合は、ブラシローラから回収ローラへの回収効率は比較例よりは向上しているが、充分ではない。これは、ポリエステル繊維とアクリル繊維の摩擦係数の差が小さいためである。従って、摩擦係数の差は0.1以上あることが望ましい。
【0057】
以上の実験により、ブラシローラの繊維に、少なくとも先端部の摩擦係数が異なる繊維を混在させることによりクリーニング性能が向上することが証明された。
【0058】
なお、前述のクリーニング装置は電界の力でトナーを回収ローラに回収したが、エア吸引等によりトナーを回収してもよい。
【0059】
また、このクリーニング装置で回収する付着物としては、残留トナーの他に紙粉等もある。
【0060】
更に、クリーニングする対象となる被清掃体としては、像担持体としての中間転写ベルト以外に感光体ドラムでもよい。また、転写ローラであってもよい。
【0061】
その他に、ブラシローラに摺接する摺擦部材としては、回転する回収ローラに限定されるものではなく、例えば円弧状の曲面を有していて固定された部材であって、円弧状の曲面の内壁にブラシローラを摺接させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】画像形成装置の構成図である。
【図2】クリーニング装置の断面図である。
【図3】ブラシローラの作用を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0063】
9 クリーニング装置
91 ブラシローラ
92 回収ローラ
93 スクレーパ
94 回収スクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維が周面に植毛され、被清掃体の表面に当接して回転し、該被清掃体の表面に付着した付着物を除去するブラシローラと、前記ブラシローラに摺接して前記ブラシローラに付着した前記付着物を除去する摺擦部材と、を有するクリーニング装置において、
前記ブラシローラの複数の繊維には、少なくとも先端部の摩擦係数が異なる繊維が混在していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記ブラシローラの複数の繊維は、第1の樹脂から形成された第1の繊維と、摩擦係数が前記第1の樹脂と異なる第2の樹脂が前記第1の繊維の先端部に塗布された第2の繊維とからなることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記ブラシローラの複数の繊維は、第1の樹脂から形成された第1の繊維と、摩擦係数が前記第1の樹脂と異なる第2の樹脂から形成された第2の繊維とからなることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記第1の繊維に対する前記第2の繊維の比率は20%以上、50%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記摺擦部材は、回転する回収ローラであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記被清掃体は像担持体であり、前記付着物は残留トナーであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記回収ローラに前記残留トナーと逆極性の電圧を印加することを特徴とする請求項6に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記回収ローラに付着した付着物を掻き落とすスクレーパを設けたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のクリーニング装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−180780(P2009−180780A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17364(P2008−17364)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】