説明

クリーニング装置及び画像形成装置

【課題】 使用耐久、経時変化又は使用環境変化により“みかけの摩擦係数”が変動しても、ブレードと被クリーニング部材との間の摩擦力を安定させ、ブレードビビリ、ブレード鳴き、クリーニング不良を軽減させるクリーニング装置を提供する。
【解決手段】 クリーニングされる2次転写ローラ20に対して、2次転写ローラ20に付着した現像剤をクリーニングするブレード201と、ブレード201が揺動中心点103を中心として揺動するように2次転写ローラ20を加圧する加圧機構60と、を備え、揺動中心点103は、ブレード201及び2次転写ローラ20が相対的に移動中に、ブレード201と2次転写ローラ20とが接する摺接線Aに沿う方向でブレード201が2次転写ローラ20から受ける力が、ブレード201を2次転写ローラ20から離間させるベクトル成分を有する位置に配置されたクリーニング装置21を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被クリーニング部材と、被クリーニング部材に付着した付着物を除去するブレードと、を有するクリーニング装置、及び、これを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体ドラムの表面の現像剤像を記録材に転写した後に、感光体ドラムの表面にトナーが残る場合がある。また、中間転写ベルトを有する画像形成装置においては、中間転写ベルトの表面の現像剤像を記録材に転写した後に、中間転写ベルトの表面にトナーが残る場合がる。こうした感光体ドラムや中間転写ベルト(以下、これらを「被クリーニング部材」という)に残ったトナーを除去する装置として、被クリーニング部材に当接するブレードを有するクリーニング装置が知られる。ブレードを被クリーニング部材に当接させる当接形態としては、被クリーニング部材の回転方向に順方向のものと、被クリーニング部材の回転方向に逆方向(カウンター方向)のものとがある。
【0003】
クリーニングの精度から見ると、後者のカウンター方向の当接形態がより好ましい。クリーニング性能を向上させるカウンター方向の当接形態は、同時に被クリーニング部材へのブレードの当接圧の上昇と当接領域における摩擦力の上昇を引き起こす。その結果、被クリーニング部材を駆動するモータの負荷トルクの上昇、被クリーニング部材の摩耗、当接領域において発生するブレードの振動に起因する異音や、クリーニング性能の悪化の問題に至る場合がある。あるいは、ブレードと被クリーニング部材との接触部のめくれ、被クリーニング部材の下流方向へのブレード巻き込みによる装置の停止や破損等の問題に至る場合がある。
【0004】
また、近年、高画質化傾向に伴いトナーの平均粒径も小径化傾向にあり、加えて重合法で製造されるトナーに代表されるように、均一且つ高円形度のトナーの使用機会が増加している。このようなトナーを確実に回収するため被クリーニング部材に対するクリーニング部材には、より大きな押圧力が必要となっている。被クリーニング部材による表面押圧力の増加は、ブレードと被クリーニング部材の表面間の摩擦力を更に高めることとなり、以前にもましてブレードのめくれや鳴き、被クリーニング部材の表層の磨耗等が発生し易い状況となっている。
【0005】
これらの問題点を解決するためのものとして、特許文献1に記載の発明が開示されている。特許文献1では、弾性体の被クリーニング部材にブレードを押圧摺接することにより被クリーニング部材の移動方向の上流側に形成される立ち上がり形状のなす角度を規定することが提案されている。これにより、ブレードが押圧及び摺接して被クリーニング部材の弾性層に弾性変形による凹凸部を形成させ、トナー粒子が弾性体表面に付着担持される付着力を低減させることにより、発生する摩擦力の低減と、良好なクリーニング性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007―114392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ブレードと2次転写ローラとの間の“みかけの摩擦係数”が上昇した場合に、摩擦力が増大してしまうおそれが生じる。ここでいう“みかけの摩擦係数”とは、ブレードと被クリーニング部材との押圧摺接点にかかる摩擦力を垂直抗力で除したものと定義する。つまり、ブレードや被クリーニング部材の材料自身がもつ摩擦係数のみならず、部材の形状変化や状態変化に伴う摩擦力の変化を加味した摩擦係数を“みかけの摩擦係数”とする。
【0008】
上記した“みかけ摩擦係数”の上昇は、ブレードや被クリーニング部材が使用耐久により磨耗した場合、経時的に寸法変化をした場合、また使用環境が変動した場合等に発生する。
【0009】
ブレードや被クリーニング部材が使用耐久により磨耗した場合としては、耐久により部材表面の粗さが平滑となりブレードと被クリーニング部材の真実接触面積の増大に起因するものや、部材表面に偏在している低摩擦物質の脱落に起因するものがある。経時的に寸法変化をした場合としては、ブレードが経時的にクリープ現象を起こし、結果としてブレードが被クリーニング部材との接触面積が増大する所謂、腹あたり現象に起因するものがある。また、環境変動による“みかけの摩擦係数”の上昇は、高湿下においてブレードや被クリーニング部材が吸湿し、部材間の液架橋力が増大することに起因するものがある。
【0010】
本発明は、使用耐久、経時変化又は使用環境変化により“みかけの摩擦係数”が変動しても、ブレードと被クリーニング部材との間の摩擦力を安定させるクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のクリーニング装置は、弾性体で形成されてクリーニングされる被クリーニング部材に対して、弾性体で形成されて前記被クリーニング部材に付着した付着物を除去するするブレードと、前記ブレードが揺動支点を中心として揺動するように前記被クリーニング部材を加圧する加圧手段と、を備え、前記揺動支点は、前記ブレード及び前記被クリーニング部材が相対的に移動中に、前記ブレードと前記被クリーニング部材とが接する接線に沿う方向で前記ブレードが前記被クリーニング部材から受ける力が、前記ブレードを前記被クリーニング部材から離間させるベクトル成分を有する位置に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用耐久、経時変化又は使用環境変化により“みかけの摩擦係数”が変動しても、ブレードと被クリーニング部材との間の摩擦力(トルク)を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係る画像形成装置の構成を示す断面図等である。
【図2】クリーニング装置の構成を示す拡大図である。
【図3】従来例に係るクリーニング装置の構成を示す拡大図である。
【図4】みかけの摩擦係数と摩擦力の関係を示すグラフである。
【図5】摩擦力を、揺動支点通過線に沿う方向、及び、直交線に沿う方向に分解した従来の構成における概念図である。
【図6】実施例1及び比較例1のクリーニング装置の構成を示す拡大断面図である。
【図7】実施例2及び比較例5のクリーニング装置の構成を示す拡大断面図である。
【図8】実施例4に係るクリーニング装置の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0015】
図1(a)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した画像形成装置である。図1(a)に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に装置本体という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、画像を形成する画像形成部71が設けられる。
【0016】
(画像形成部の概略構成)
画像形成部71は、並設された像担持体となるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック用の4個の像担持体である感光体ドラム2Y,2M,2C,2K(以下、単に「感光体ドラム2」という)(電子写真感光体ドラム)を備えている。各感光体ドラム2の周囲には、その回転方向の上流側から順に、1次帯電器7Y,7M,7C,7K(以下、単に「1次帯電器7」という)、現像手段である現像装置3Y,3M,3C,3K(以下、単に「現像装置3」という)が配置されている。
【0017】
感光体ドラム2に対向した位置には、感光体ドラム2の表面に形成されたトナー画像が1次転写される中間転写体となる中間転写ベルト11が駆動ローラ12、対向ローラ13、テンションローラ15及び従動ローラ14により張架されている。中間転写ベルト11は、イオン導電剤を添加して体積抵抗率1010Ωcm程度に調整された厚さ100μmの無端状樹脂ベルトを用いた。ベルト材質は、本実施例ではポリフッ化ビニリデン(PVDF)のものを用いた。
【0018】
駆動ローラ12は、外径24mmの中空のアルミ管に0.5mmの厚みでEPDMゴムを被覆し、電気抵抗が10Ω以下のものを使用した。中間転写ベルト11は、駆動モータ28により矢印方向に回転駆動されている。テンションローラ15はテンションバネ16で一方向に付勢され、中間転写ベルト11に所定のテンションを付与している。中間転写ベルト11を挟んで感光体ドラム2の対向位置には1次転写ローラ4Y、4M、4C、4K(以下、単に「1次転写ローラ4」という)が配置されている。
【0019】
中間転写ベルト11には、中間転写ベルト11上に付着したトナー(残留トナー)を除去するためのクリーニングローラ18が配置され、中間転写ベルト11により従動回転している。中間転写ベルト11を挟んで対向ローラ13に対向する位置には、2次転写ローラ20が配置されている。
【0020】
図1(b)は、2次転写ローラ20の構成を示す断面図である。図1(b)に示されるように、2次転写ローラ20は、中央部に外径が8mmのSUS製の芯金51を有する。芯金51の外側には、順に、約5μmのプライマ層52、5mmの厚みのNBR発泡ゴム53、約5μmのプライマ層54、厚み50μmのポリイミド製樹脂チューブ55が設けられる。
【0021】
ここでは、表層材質はポリイミドとした。それ以外には、ポリカーボネート,ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミド,ポリサルフォン,ポリアリレート,ポリエチレンテレフタレート,ポリエーテルサルフォン,熱可塑性ポリイミド等の樹脂材料が設けられても良い。または、表面にアクリル等の樹脂硬化層や、ソリッド状のゴム等の弾性層が設けられても良い。
【0022】
最表層のポリイミドチューブは、Rzが0.5μm、RSmが25μmのものであり、内径が18mm、表面抵抗率が1×1012Ωcmのものを用いた。2次転写ローラ20の抵抗は、1×10ΩとなるようにNBR発泡ゴムの抵抗調整を行った。電気抵抗値は、外径30mmのアルミシリンダ上に、2次転写ローラ20を両端の芯金(不図示)の両端に各5Nの圧力を加えた状態で当接かつ従動回転させ、芯金(不図示)に+1kVの直流電圧を印加して流れる電流から求めた。
【0023】
2次転写ローラ20は、不図示のバネで一方向に付勢され、駆動モータ29により駆動されている。2次転写ローラ20の硬度は、9.8N加重下でのAsker−C硬度で60度、マイクロ硬度計MD−1型(高分子計器株式会社製)を用いたマイクロ硬度で78度のものを使用した。2次転写ローラ20には、クリーニング装置21が当接している(図1参照)。
【0024】
本実施例では、トナー重合法によって製造された、円形度が0.96以上で1.00以下の略球形のトナーを用いた。トナーの平均円形度(C)は、以下のように測定した。トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
【0025】
円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)である。ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とはこのトナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0026】
(2次転写クリーニング部の詳細構成)
図2は、クリーニング装置21の構成を示す拡大図である。クリーニング装置21は、2次転写ローラ20及びブレード201を有する。被クリーニング部材である転写部材としての2次転写ローラ20は、弾性体で形成され、感光体ドラム2の表面から中間転写ベルト11に転写された現像剤像を記録媒体Pに転写するための部材であり、また、ブレード201によってクリーニングされる部材でもある。ブレード201は、2次転写ローラ20に対して、弾性体で形成され、2次転写ローラ20に付着した現像剤その他の付着物を除去すなわちクリーニングする部材である。ブレード201は、2次転写ローラ20にカウンターで(移動方向X1と逆方向に向かうように)当接している。
【0027】
また、クリーニング装置21は、加圧機構60を有する。加圧手段である加圧機構60は、ブレード支持部材(以下、「支持部材102」という)、バネ104、揺動中心点103を有する。加圧機構60は、ブレード201が揺動支点である揺動中心点103を中心として揺動するように2次転写ローラ20を加圧する機構である。
【0028】
支持部材102は、ブレード201を支持するために部材である。支持部材102は、バネ104の付勢方向に延びるアーム102aを有しており、アーム102aの先端に揺動中心点103が設けられている。揺動中心点103は、支持部材102が揺動回転する中心点である。そして、バネ104は、支持部材102を付勢してブレード201を2次転写ローラ20に対して矢印X2の方向に所望の圧で当接させる付勢力を発揮する。また、クリーニング装置21は、回収したトナーを格納する不図示のトナー回収容器を有する。
【0029】
本発明例ではブレード201は、ポリウレタン製であり厚みが2mm、自由長が8mm(図2中L)であり、硬度はJIS−A硬度で75度のものを用いた。本発明例ではブレード201の材質はポリウレタンとしたが、ブレード201に使用される材料は特に制限されるものではなく、汎用の弾性材料が多く用いられる。例えばポリウレタン、シリコンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、SBR、BR、IR、NBR、CR、ACM、ANN、CSMなどの各種ゴムでもよい。
【0030】
本発明例における揺動中心点103の配置について、以下に述べる。2次転写ローラ20がブレード201に対して移動する(移動方向X1の方向に回転する)ものとする。ブレード201と2次転写ローラ20とが摺接する摺接部のうち、2次転写ローラ20が移動する移動方向X1で最も上流側の点を最上流摺接点105とする(図2参照)。最上流摺接点105を通り、ブレード201と2次転写ローラ20とが接する接線を、接線である摺接線Aとする。
【0031】
この際、弾性体である2次転写ローラ20の変形状態を加味して摺接線Aを決定する。また、本発明例に使用したブレード201の厚み面(またはカット面)203は、ブレード201の摺接面に対し垂直であるため、摺接線Aはブレード201の厚み面(またはカット面)203に対する垂線として求めた。
【0032】
一方、最上流摺接点105と揺動中心点103とを結ぶ線を揺動支点通過線Cとする。摺接線Aにおける2次転写ローラ20の移動方向X1の下流側を基準(0deg)とし、時計回転方向をプラス側としたときの、摺接線Aと揺動支点通過線Cとのなす角度を揺動中心位置角度η(−180deg≦η≦+180deg)と定義する。また、最上流摺接点105とブレード201を支持する支持点207を結ぶ支持点通過線γと摺接線Aとのなす角度を設定角度θと定義する。本実施の形態(図2)においては、揺動中心位置角度ηを−15deg、設定角度θを25degとなるように揺動中心点103を配置した。
【0033】
揺動中心点103は、ブレード201及び2次転写ローラ20が相対的に移動中に、摺接線Aに沿う方向でブレード201が2次転写ローラ20から受ける摩擦力Ffrが、ブレード201を2次転写ローラ20から離間させるベクトル成分を有する位置に配置される。また、揺動中心点103は、最上流摺接点105よりも移動方向X1で下流側にある。
【0034】
最上流摺接点105と揺動中心点103を通る直線である揺動支点通過線Cは、最上流摺接点105よりも移動方向X1の下流側の領域で、ブレード201と2次転写ローラ20とが接する摺接線Aよりも、2次転写ローラ20の側にある。
【0035】
(画像形成装置の動作)
以上のように構成された画像形成装置100の画像形成動作について図1(a)を用いて説明する。画像形成動作が開始されると、まずカセット30内の記録媒体Pは、給送ローラ31により給送された後、レジストローラ対33に搬送される。ここで、このときレジストローラ対33は、回転を停止しており、このレジストローラ対33のニップに記録媒体Pが突き当てられることにより、記録媒体Pの斜行が矯正される。感光体ドラム2Yにおいては、まず感光体ドラム2Yの表面が1次帯電器7Yによって一様にマイナス帯電され、次に露光装置1により画像露光が行われる。これにより、感光体ドラム2Yの表面には画像信号のイエロー画像成分と対応した静電潜像が形成される。
【0036】
現像手段である現像装置3は、感光体ドラム2の表面に現像剤像を形成するための装置であり、感光体ドラム2Yに当接している。上記静電潜像が、現像装置3Yによりマイナス帯電したイエロートナーを用いて現像され、イエロートナー画像として可視化される。そして、このようにして得られたイエロートナー画像は、1次転写バイアスが供給された1次転写ローラ4Yにより、中間転写ベルト11上に1次転写される。このような一連のトナー画像形成動作は、他の感光体ドラム2M、2C、2Kにおいても所定のタイミングをもって順次行われる。そして、各感光体ドラム2上に形成された各色トナー画像は、それぞれの1次転写部で中間転写ベルト11上に順次重ねて1次転写される。
【0037】
このように中間転写ベルト11上に重畳して転写された4色のトナー画像は、中間転写ベルト11の矢印方向の回転に伴い、2次転写ニップ部Tに移動される。
【0038】
さらに、レジストローラ対33で斜行を矯正された記録媒体Pは、中間転写ベルト11上の画像とタイミングをとって2次転写ニップ部Tに送り出される。この後、記録媒体Pは、2次転写ローラ20により、中間転写ベルト11上の4色のトナー画像を記録媒体P上へ一括して2次転写される。このようにしてトナー画像が転写された記録媒体Pは、定着器40に搬送されて、加熱、加圧されることによりトナー画像が定着された後、排出ローラ対41により、排出トレイ42に排出されて積載される。
【0039】
なお、2次転写を終了した中間転写ベルト11は、対向ローラ13の近傍に設置されたクリーニングローラ18によって表面に残留した転写残りトナーが除去される。また、2次転写ローラ20に付着した残留トナーは、クリーニング装置21により除去され、不図示のトナー回収容器へと搬送され、格納される。
【0040】
(本発明例構成の力学モデルを用いた摩擦力計算)
次に、最上流摺接点105と2次転写ローラ20との摺接部に発生する力のバランスを、力学モデルを用いて解析的に解くことにより、両部材間に生じる摩擦力のシミュレートを行う。解析するにあたり、最上流摺接点105にかかる力のバランスを、力学的モデルを用いて解析的に解くことにより説明を行う。これは、ブレード201と2次転写ローラ20との間の接触部(ニップ部)は幅をもっているものの、応力の集中するブレード201の先端部における力のバランスを解くことで近似的に摺接部全体にかかる力を求めることが可能となるからである。
【0041】
図2に示されるように、最上流摺接点105には、下記に示す4つの力がかかり、これらの力が回転中に釣り合うことにより、ブレード201は、見かけ上、静止状態を保つことが可能となる(図2参照)。
【0042】
[1]摺接線Aに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ20との摩擦により受ける力である摩擦力Ffrが働く。
[2]摺接線Aに対して垂直な垂直線Bに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ20から受ける垂直抗力Nが働く。
【0043】
[3]揺動支点通過線Cに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ20との摩擦により受ける摩擦力Ffrに抗し、ブレード201が2次転写ローラ20を押し返す押返し力Fcが働く。
[4]揺動支点通過線Cに対して直交する直交線Dに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ20を押す押圧力Fsが働く。
【0044】
上記した力を、ブレード201と2次転写ローラ20とが揺動支点通過線Cに沿う方向と直交線Dに沿う方向に分解し、力の釣り合いを式にすると下式のようになる。ここで、摺接線Aと揺動支点通過線Cとのなす角度を揺動中心位置角度η(―180deg≦η≦+180deg)とする。
【0045】
【数1】

【数2】

【0046】
また、垂直抗力Nの定義として次式(3)が得られる。
【数3】

【0047】
式(1)〜式(3)からFc、Nを消去して、Ffrに関して解くと、次式(4)が得られる。
【数4】

【0048】
実施例1のブレード201の押圧力Fsと揺動中心位置角度ηを代入し(Fs=10(N)、η=−15(deg))、ブレード201が2次転写ローラ20から受ける摩擦力Ffrを、みかけの摩擦係数μの関数として算出した結果を図4の実線302に示す。本実施例の構成において、式(4)より、みかけの摩擦係数μが0.6の時に摩擦力Ffrは5.2(N)となり、みかけの摩擦係数μが0.8の時に摩擦力Ffrは6.6(N)となる。つまり、本実施例では、みかけの摩擦係数μが33%増加したのに対し、摩擦力Ffrは26%の増加に抑制することが可能となる。
【0049】
(従来技術の構成の力学モデルを用いた摩擦力計算)
図3は、従来例に係るクリーニング装置521の構成を示す拡大図である。一方、従来技術(特開2007−114392号公報)の構成においては、前述の通り“みかけの摩擦係数”の上昇が、摩擦力増大に至る。この理由を、最上流摺接点301にかかる力のバランスを、力学的モデルを用いて解析的に解くことにより説明する。最上流摺接点301には、下記に示す4つの力がかかり、これらの力が回転中に釣り合うことにより、ブレード201は、見かけ上、静止状態を保っている。
【0050】
[5]摺接線Aに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ200との摩擦により受ける摩擦力Ffrが働く。
[6]摺接線Aに対して垂直な垂直線Bに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ200から受ける垂直抗力Nが働く。
【0051】
[7]支持点通過線γに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ200との摩擦により受ける摩擦力Ffrに抗し、ブレード201が2次転写ローラ200を押し返す押返し力Fcが働く。なお、クリーニング装置521の構成では、支持部材205は、揺動する構成ではないので、揺動支点通過線Cはなく、支持点通過線γが問題となる。
[8]支持点通過線γに対して直交する直交線Dに沿う方向に、ブレード201が2次転写ローラ200を押圧する押圧力Fsが働く。
【0052】
上記した4つの力を、支持点通貨線γに沿う方向及び直交線Dに沿う方向に分解し、力の釣り合いを式にすると字式(5)(6)のようになる。ここで摺接線Aと支持点通過線γとのなす角度をブレードの設定角度θとする。
【数5】

【数6】

【0053】
また、垂直抗力Nの定義として次式(7)が得られる。
【数7】

【0054】
式(5)〜式(7)からFc、Nを消去して、Ffrに関して解くと、次式(8)が得られる。ブレード201が被クリーニング部材である2次転写ローラ200から受ける摩擦力Ffrは、ブレードの設定角度θ、押圧力Fs、ブレード201と2次転写ローラ200間のみかけの摩擦係数μの関数となる
【数8】

【0055】
図4は、みかけの摩擦係数μと摩擦力Ffrの関係を示すグラフである。ここで、長手幅230mmのブレード201に対して押圧力Fsを10(N)、ブレードの設定角θを25(deg)とした場合に、摩擦力Ffrを、みかけの摩擦係数μの関数として算出した結果を図4の点線303に示す。みかけの摩擦係数μが0.6の時、摩擦力Ffrは9.2(N)となり、みかけの摩擦係数μが0.8の時、摩擦力Ffrは14.1(N)となる。つまり、みかけの摩擦係数μが33%増加したのに対し、摩擦力Ffrは53%増大することになる。
【0056】
図5は、摩擦力Ffrを、支持点通過線γに沿う方向、及び、直交線Dに沿う方向に分解した従来の構成における概念図である。前述した通り、従来技術の構成においては、みかけの摩擦係数の増加以上に摩擦力Ffrの増大がみられることになる。この傾向がどのようなメカニズムで発生するかを説明する。ブレード201が2次転写ローラ200との摩擦により受ける摩擦力Ffrを分解すると、支持点通過線γに沿う方向にF1、直交線Dに沿う方向にF2となる。
【0057】
このF2はブレード201を2次転写ローラ200に食い込ませる方向の力であり、動作中に発生するF2がブレードの実効的な押圧力を増加させる方向に寄与する。これにより、みかけの摩擦係数μの増加以上に摩擦力の増大がみられると考えられる。
【0058】
一方、実施例1では前述の通り、みかけの摩擦係数が33%増加したのに対し、摩擦力Ffrは26%の増加に抑制することが可能となる。換言すれば、本発明は従来技術に対して、みかけの摩擦係数μの変動に対する摩擦力Ffrの変動が小さいこととなる。これは、揺動中心位置角度ηをマイナス側に設定することにより、ブレード201が2次転写ローラ20との摩擦により受けた力は、ブレード201が2次転写ローラ20から離れる方向の回転モーメントに変換される。これより、ブレード201の実効的な押圧力Fsが低下してトルクの上昇が抑制されることに起因している。
【0059】
つまり、ブレード201や2次転写ローラ20が使用耐久により磨耗した場合、経時的に寸法変化をした場合、また使用環境が変動した場合に伴いみかけの摩擦係数μが変化しても、摩擦力Ffrへの影響は小さく安定した駆動トルクが得られる。更には、摩擦力増大に伴うブレードビビリ、鳴き、ブレードめくれなどに対しても有利となる。
【0060】
なお、ここで、特開2007―114392(特許文献1)に示された従来技術の内容に関して図3を用いて説明を行う。ブレード201の最上流摺接点301が2次転写ローラ200上の弾性体202を押圧する。そうすると、押圧部位では弾性体202が凹み203を形成し、この凹んだ体積分は体積移動して2次転写ローラ200の移動方向の上流側に円形基準径より突出した凸らみ部位204を形成するというように、弾性変形をする。装置本体100A内の支持部材205に固定されたブレード201に対して2次転写ローラ200を移動方向X1の方向に回転させる。
【0061】
弾性体202の表面に担持された現像剤のトナー粒子(T)は、弾性体202の円形基準径から凸らみ部位204への移行部位206で周方向に圧縮応力を受け、更に凸らみ部位204の突端に移行するに従って弾性体202の伸びで周方向に開放状態になる。そのため、この周方向への圧縮及び開放のストレスから、トナー粒子(T)の弾性体202の表面への付着力が低下し、弾性体202の表面から離脱し易くなっている状態でブレード201が押圧摺接する。そのために、摩擦力が低減され、且つ、良好なクリーニング性能が発揮される。ただし、こうした従来例では、力F2(図5参照)が生じる。
【0062】
(本発明例におけるクリーニング性に関しての説明)
ブレード201、2次転写ローラ20は、共に弾性体であるために、クリーニング性に対しても有利となる。これは、ブレード201、2次転写ローラ20ともに弾性体であるために、これら2つの部材間の追従性が非常に高いことに起因する。クリーニング不良が発生する要因として、2次転写ローラ上に異物や凸凹がある場合や、ブレードのクリーニング稜線に微小の欠けや異物がある場合に、これら2つの部材が追従しきれずに密着状態が保つことができない。そして、通過阻止力の低下に伴い生じた微小空間よりトナーがすり抜けるものがある。
【0063】
このため、ブレード201と2次転写ローラ20の両方が弾性体であることにより、動作時であっても2つの部材間の密着状態は保つことが可能となり、安定したクリーニング性を確保することが可能となる。これにより、揺動中心位置角度ηをマイナスにして、摩擦力Ffrを、ブレード201が2次転写ローラ20から離れる方向の回転モーメントに変換させても、両部材間は十分な密着状態を確保することが可能となり、クリーニング性を維持することが可能となる。
【0064】
上記した効果を得るためには、2次転写ローラ20の硬度は、AskerC硬度で75°以下(9.8N過重)、マイクロ硬度計MD−1型(高分子計器株式会社製)を用いたマイクロ硬度で95°以下とする必要がある。2次転写ローラ20の硬度は、低ければ低いほどブレード201との追従性が向上する。しかしながら、2次転写ローラ20の硬度が低すぎると、ブレード201が2次転写ローラ20に食い込んでしまい、駆動トルクが逆に上昇したり、ブレード201の挙動が乱れてしまう。よって、AskerC硬度で40°以上(9.8N過重)、マイクロ硬度計MD−1型(高分子計器株式会社製)を用いたマイクロ硬度で50°以上とすることが望ましい。
【0065】
また、ブレード201の硬度に関しては、低すぎるとクリーニングに必要な線圧を与えた場合に、ブレード201のスティック・スリップに起因するブレードビビリが発生したり、ブレード201がめくれる虞がある。高すぎると前述したように、ブレード201が2次転写ローラ20に対する十分な追従性が得られないためにクリーニング不良が発生する。このため、ブレード201の硬度はJIS−A硬度で60〜90度にすることが望ましい。
【0066】
(本発明例と従来例との比較実験)
本発明例の構成を含む種々の組み合わせにて実験を行い、2次転写ローラ20の駆動トルク測定、ブレード鳴き、クリーニング性に関する評価を行った結果を、表1に示す。評価は低温(15℃)/低湿(10%RH)環境と、高温(30℃)/高湿(80%RH)環境で行った。高温/高湿環境下では、ブレード201と2次転写ローラ20ともに吸湿し、両部材の界面に生じる液架橋力の影響により、みかけの摩擦係数が上昇することが分かっている。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1に関しては、低温/低湿環境、高温/高湿環境共にブレード鳴き、クリーニング性共に問題なく、且つ、環境変化に伴うトルク上昇も1.6Nと小さいものとなった。
【0069】
比較例1は、本発明例に対して揺動中心位置角度ηが+15degとなったものである。結果としては高温/高湿環境においてブレード鳴きが発生すると共に、環境変化に伴うトルク上昇は4.3Nと大きいものとなった。これは、揺動中心位置角度ηが+15degとプラス側に配置されているために、動作時にブレード201が2次転写ローラ20から受けた力が、ブレード201が食い込む方向のベクトル成分を持つために摩擦力が増大したためと考えられる。
【0070】
比較例2は、ブレード201の支持方法が固定方式となったものである。固定方式とは、ブレード201が装置本体100Aに固定配置された状態を意味する。設定角度とは、静止状態におけるブレード201の2次転写ローラ20に対する設定角度であり、図3中の角度θに相当する。結果としては高温/高湿環境においてブレード鳴きが発生すると共に、環境変化に伴うトルク上昇は5.2Nと大きいものとなった。
【0071】
これは、固定配置されたブレード201を支持する支持点207(図3参照)が、摺接線A(図3)を基準とした時にプラス方向に配置されているためである。このため、比較例1と同様に動作時にブレード201が2次転写ローラ20から受けた力が、ブレード201が食い込む方向のベクトル成分を持つために摩擦力が増大したためと考えられる。
【0072】
比較例3は、被クリーニング部材として剛体の2次転写ローラを用いたものである。剛体の2次転写ローラは鉄製芯金に対してポリイミドチューブを被覆したものを用いた。結果は、環境変化に伴うトルク上昇は1.5Nと小さいものとなったが、低温/低湿環境においてクリーニング不良が発生した。
【0073】
このクリーニング不良は、ブレード201の揺動中心位置角度ηをマイナス方向に配置したため、動作時にブレード201が2次転写ローラから受けた力が、ブレード201を逃がす方向に働くためである。これによりブレード201と剛体である2次転写ローラとの密着性が確保されずにクリーニング不良が発生したと考えられる。一方で、環境変化起因の摩擦係数の上昇に伴う、トルクアップは抑制することが可能となる。
【0074】
比較例4は、被クリーニング部材として剛体の2次転写ローラとし、揺動中心位置角度ηを+15degとしたものである。結果は、環境変化に伴うトルク上昇は3.0Nと比較的小さいものとなり、低温/低湿環境においてもクリーニング不良は認められなかった。比較例4の構成では、揺動中心位置角度ηが+15degとプラス側に配置されているために、動作時にブレード201が2次転写ローラから受けた力が、ブレード201が食い込む方向のベクトル成分を持つ。
【0075】
しかし、2次転写ローラが剛体であるため、ブレード201が2次転写ローラを変形させて食い込み、両部材間の接触面積が増大することは無い。よってトルクアップは抑制され、トルクアップに伴うブレード鳴きも発生しないと考えられる。
【0076】
ただし、実施例1では、2次転写ローラ20は、弾性体で形成されるから、対向部材との接触ニップを確保することによって安定した2次転写性と紙送り性能を確保することが可能となる。この一方で、比較例4では、2次転写ローラは、剛体で形成されるから、安定した2次転写性と紙送り性能が得られず、転写不良や紙送り時の斜行(紙が斜めに搬送される現象)が発生した。
【0077】
尚、本比較実験での駆動トルク測定の結果は、前述した力学モデルを用いた駆動トルクの計算値の傾向と略同じであり、計算モデルは妥当なものであると言える。
【実施例2】
【0078】
実施例2に係るクリーニング装置221の構成は、図7(a)に示されている。実施例2は、揺動中心点103の位置を変化させた発明例を比較例と対比させることにより、本発明の作用効果が得られる論拠と、揺動中心位置角度ηに関する本発明の範囲を明確にするものである。なお、実施例2の構成は、概ね実施例1の構成と同じであるから、同一の構成に関しては説明を省略する。
【0079】
実施例2(図7(a)参照)では、揺動中心点103は、最上流摺接点105よりも移動方向X1で上流側にある。また、最上流摺接点105と揺動中心点103を通る揺動支点通過線Cは、最上流摺接点105よりも移動方向X1の下流側の領域で、ブレード201と2次転写ローラ20とが接する摺接線Aよりも、2次転写ローラ20の側にある。なお、クリーニング装置221では、支持部材102に替えて支持部材502が用いられている。そして、支持部材502におけるバネ104の付勢方向と平行なアーム502aの先端に揺動中心点103が配置されており、この揺動中心点103の位置、及び、最上流摺接点105の位置が実施例1の場合と異なっている。
【0080】
実施例2の構成では、揺動中心位置角度ηが+160deg(度)となるように、揺動中心点103が配置されている。本実施例に対する比較実験として、揺動中心位置角度ηを表2に記してあるように変化させ、2次転写ローラ20の駆動トルク測定、ブレード鳴き、クリーニング性に関する評価を行った(表2参照)。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例2(図7(a)参照)は、揺動中心位置角度ηが+160deg(度)に設定された構成である。結果は実施例1(図6(a)参照)とほぼ同じであり、低温/低湿環境、高温/高湿環境共にブレード鳴き、クリーニング性共に問題なく、且つ、環境変化に伴うトルク上昇も1.5Nと小さいものとなった。
【0083】
比較例1(図6(b)参照)は、揺動中心位置角度ηが+15deg(度)に設定された構成である。結果は、前述の通り、高温/高湿環境においてブレード鳴きが発生すると共に、環境変化に伴うトルク上昇は4.3Nと大きいものとなった。なお、ここでは、支持部材102に替えて支持部材602が用いられており、支持部材602におけるバネ104の付勢方向に延びるアーム602aの先端に揺動中心点103が設けられている。
【0084】
比較例5(図7(b)参照)は、揺動中心位置角度ηが−160deg(度)に設定された構成である。結果は、比較例1とほぼ同様の結果であり、高温/高湿環境においてブレード鳴きが発生すると共に、環境変化に伴うトルク上昇は3.9Nと大きいものとなった。なお、ここでは、支持部材102に替えて支持部材702が用いられており、支持部材702におけるバネ104の付勢方向に延びるアーム702aの先端に揺動中心点103が設けられている。
【0085】
実施例1及び実施例2と、比較例1及び比較例5との差異を、図6及び図7を用いて説明する。まず、実施例2(図7(a)参照)では、揺動中心位置角度ηが+160degに設定されている。最上流摺接点105において、ブレード201は、摺接線Aに沿う方向に2次転写ローラ20から摩擦力Ffrを受ける。揺動中心点103がどの位置に配置されているかによって、この摩擦力Ffrは、ブレード201が2次転写ローラ20から離れる方向のベクトル成分を有するか、食い込む方向のベクトル成分を有するかが決定する。
【0086】
実施例2(図7(a)参照)の場合においては、摩擦力Ffrを、揺動支点通過線Cに沿う方向と、直交線Dに沿う方向と、にベクトル分解する。そうすると、各々F1(揺動支点通過線Cに沿う方向)とF2(直交線Dに沿う方向)となる。ここで、F2はブレード201の圧を軽減する方向の力であり、このF2により実施例2の構成では、動作時にブレード201が2次転写ローラ20から受けた力が、ブレード201を逃がす方向に働く。これにより見かけの摩擦係数μが増大しても摩擦力Ffrの増大を抑制することが可能となる。実施例1に関しても、同じ作用効果が得られる。
【0087】
また、実施例1及び実施例2は共に、2次転写ローラ20が弾性体であるために、ブレード201と2次転写ローラ20との密着性が確保されており、動作中にブレード201が2次転写ローラ20から離間する方向に動作するものの、クリーニング性は確保できる。
【0088】
一方、比較例5(図7(b)参照)では、揺動中心位置角度ηが−160degに設定されている。ここでも同様に、ブレード201が受ける摩擦力Ffrを、揺動支点通過線Cに沿う方向と、直交線Dに沿う方向と、にベクトル分解する。そうすると、各々F1(揺動支点通過線Cに沿う方向)とF2(直交線Dに沿う方向)となる。比較例5では、F2はブレード201の圧を増大する方向の力であり、このF2により、動作時にブレード201が2次転写ローラ20から受けた力が、ブレード201を食い込ませる方向に働く。これにより見かけの摩擦係数μの増大が、摩擦力Ffrの増大を助長させてしまう。比較例1に関しても、同様の作用が働き摩擦力Ffrが増大してしまう。
【0089】
以上説明した通り、ブレード201の先端の最上流摺接点105に対する揺動中心点103の位置を変化させた結果より本発明の作用効果が得られる揺動中心位置角度η(図2参照)は下記の通りになる。
【0090】
揺動中心点103が最上流摺接点105より移動方向X1の下流にある場合には、0deg>δ>−90deg(図6(a)参照)となる。また、揺動中心点103が最上流摺接点105より移動方向X1の上流にある場合には、+180deg>δ>+90deg(図7(a)参照)となる。換言すれば、最上流摺接点105の下流で、揺動支点通過線Cが、最上流摺接点105におけるブレード201と2次転写ローラ20との摺接線Aに対して、2次転写ローラ20側にあることで以下の効果を得る。すなわち、見かけの摩擦係数μが増大に対して摩擦力Ffrの増大を抑制する効果が得られる(図6(a)及び図7(a)参照)。
【実施例3】
【0091】
実施例3の構成は、概ね実施例1の構成と同じであるから、同一の構成に関しては説明を省略する。そして、実施例3が実施例1と異なる構成に関して、すなわち、実施例3の構成に特有な縁無し印字モードに関して以下に説明する。実施例3では、感光体ドラム2の幅方向において感光体ドラム2の表面に形成される現像剤像が、現像剤像が転写される記録媒体Pよりも外側の領域まで形成される縁無し印字モードを実行可能である。
【0092】
本実施例においては、画像余白部を有する通常印字モードの他に、記録媒体Pの縁まで画像を形成する縁無し印字モードを持っている。縁無し印字モードは画像形成装置に接続されるホストコンピュータ等の外部装置によって選択可能になっている。プリントコントローラ(制御手段)が縁無し印字信号を取り込むと縁無し印字に応じた画像形成の制御シーケンスを実行する。縁無し印字モードが実行されると、記録媒体Pに対する印字領域を決定するマスク領域を、記録媒体Pの先端部、後端部、左端部、右端部について各々所定幅(2mm)の塗り足し領域の分だけ記録媒体Pよりも大きな領域としている。
【0093】
そしてその塗り足し領域の部分までを含めた領域のトナー像を感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの表面に形成し、そのトナー像を中間転写ベルト11へと転写する。そのトナー像を2次転写ローラ20により記録媒体Pの面に転写することによって記録媒体Pの縁まで画像を形成する縁無し印字を達成している。2次転写ローラ20の表面へと転写した塗り足し部のトナーは、クリーニング装置21にあるブレード201により清掃される。トナー像が転写された記録媒体Pは、定着器40で加熱加圧されてトナー像が記録媒体Pに定着される。トナー像が定着された記録媒体Pは、排出ローラ対41により、排出トレイ42に排出され画像形成が終了される。
【0094】
(縁無し印字モード時のクリーニング性)
本発明例におけるクリーニング装置21の構成は実施例1と全く同じである。しかしながら、下記の理由から余白のある通常画像形成モードと、縁無し印字モードでは、ブレードクリーニング性、摩擦力等の点で相違点があることが、本発明者らの検討で判った。その理由を、以下に述べる。
【0095】
通常印字モード時の画像形成領域は記録媒体に対して内側で行われるために、画像形成中に2次転写ローラ20側にトナーは転写されることはほとんどない。このために、ブレード201と2次転写ローラ20の当接状態は長手方向に対してはほぼ均一となる。一方で縁無し印字モード時の画像形成領域は、記録媒体の外側の領域を含んで行われるため、2次転写中は、2次転写ローラ20の記録媒体領域の内側にはトナーは全く転写されず、2次転写ローラ20の記録媒体領域の外側には、所謂塗り足しトナーが転写される。2次転写ローラ20に当接しているブレード201は2次転写中、トナーが全くない部分とトナーがある部分の両方に当接していることになる。
【0096】
ブレードクリーニングを行う際に、トナーがまったく無い部分とトナーが存在する部分が、隣接していると、その境界部分でブレード201に捩れ力が発生し、クリーニング不良が発生する場合がある。これは、潤滑剤としての役割を合わせ持つトナーが2次転写ローラ20上にある部分と無い部分が隣接するために、摩擦力の違いによりブレード201に捩れ力が生じるためである。
【0097】
上記した構成を種々の組み合わせにて実験を行い、縁無し印字モード時のクリーニング性の評価を行った結果を表3に示す。評価方法は、全面が100%ブラックの画像パターンを、記録媒体Pに対する印字領域を決定するマスク領域を、記録媒体Pの先端部、後端部、左端部、右端部について各々所定幅(2mm)の塗り足し領域を持つように設定してプリントする。そして、クリーニング装置21のクリーニング不良の有り無しで判断を行った。
【0098】
【表3】

【0099】
本実施例(実施例3)に示した構成ではクリーニング性は問題ないものの、比較例6、比較例7ともに記録媒体の左右端部付近でクリーニング不良が発生した。これは、記録媒体Pへのトナー転写が行われている間、潤滑剤としてのトナーが全く供給されない2次転写ローラ20上の記録媒体領域の内側の摩擦力が増大し、トナーが供給されている記録媒体領域の外側との摩擦力との差が大きくなる。そして、ブレード201の挙動が乱れるまたは、ブレード201が捩れる現象が発生しているためと推測される。
【0100】
比較例6、比較例7で、2次転写ローラ20上の記録媒体領域の内側の摩擦力が増大する理由は、実施例1と同じであり、ブレード201と2次転写ローラ20間に生じた摩擦力がブレード201をより食い込ませる方向のベクトル成分を持っているためである。一方、実施例3では、ブレード201の揺動中心位置角度ηを−15deg(度)に設定することにより、ブレード201と2次転写ローラ20との間に生じた摩擦力がブレード201を逃がす方向のベクトル成分を有することになる。
【実施例4】
【0101】
図8は、実施例4に係るクリーニング装置21の構成を示す拡大断面図である。実施例4の構成は、概ね実施例1の構成と同じであるから、同一の構成に関しては説明を省略する。実施例4の構成を図8を用いて説明する。実施例4では、被クリーニング部材は、感光体ドラム2の表面に形成された現像剤像が転写される転写部材である中間転写ゴムベルト311(弾性体の中間転写体)である。また、ブレード201は、中間転写ゴムベルト311に付着した現像剤その他の付着物を除去すなわちクリーニングするブレードである。中間転写ゴムベルト311もブレード201も弾性体で形成されている。
【0102】
中間転写ゴムベルト311は、イオン導電剤を添加して体積抵抗率1010Ωcm程度に調整された厚さ300μm、幅240mm、周長が500mmの無端状の弾性ゴムベルトの表面に、フッ素樹脂を含有した1〜10μmの樹脂コート層を有するものを用いた。
【0103】
中間転写ゴムベルト311は本実施例ではクロロプレンゴムを用いたが、それ以外に、ウレアゴム、シリコンゴム、EPDMゴム(エチレンプロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)等のゴム材料や、樹脂材料を基材とする無端ベルト表面に弾性層を設けたでもよい。中間転写ゴムベルト311の硬度は、中間転写ゴムベルト311の裏面に配置されている対向ローラ313に巻きつけた状態で測定を行い、AskerC硬度が70°(9.8N加重)になるものを使用した。中間転写ゴムベルト311を挟んで対向ローラ313の対向する位置には2次転写ローラ20が配置されている。対向ローラ313は、移動方向X3へと回転している。
【0104】
クリーニング装置21の構成に関しては本実施の形態でも、実施例1と同様である。すなわち、ブレード201、ブレード201を支持するための支持部材102、ブレード支持部材を揺動回転となる揺動中心点103、ブレードを押圧するための押圧部材であるバネ104を有する。そして、支持部材102を付勢し、ブレード201を中間転写ゴムベルト311に対して押圧する構成となっている。揺動中心位置角度ηは、本実施例においては−10deg(度)となるように揺動中心点103を配置した。
【0105】
実施例4を含む種々の組み合わせにて実験を行い、中間転写ゴムベルト311の駆動トルク測定、ブレード鳴き、クリーニング性に関する評価を行った結果を、表4に示す。
【0106】
【表4】

【0107】
本実施例(実施例4)に関しては、低温/低湿環境、高温/高湿環境共にブレード鳴き、クリーニング性共に問題なく、且つ、環境変化に伴うトルク上昇も1.1Nと小さいものとなった。
【0108】
比較例8は、実施例4に対して揺動中心位置角度ηが+10deg(度)となったものである。結果としては高温/高湿環境においてブレード鳴きが発生すると共に、環境変化に伴うトルク上昇は5.0Nと大きいものとなった。これは、揺動中心位置角度ηが+10deg(度)に配置されているために、動作時にブレード201が中間転写ゴムベルト311から受けた力が、ブレード201が食い込む方向のベクトル成分を持つために摩擦力が増大したためと考えられる。
【0109】
比較例9は、本発明例に対してブレード201の支持方法が固定方式となったものである。結果としては高温/高湿環境においてブレード鳴きが発生すると共に、環境変化に伴うトルク上昇は5.5Nと大きいものとなった。これは、固定配置されたブレード201を支持する点(図3中の207)が、摺接線A(図3)を基準とした時に+25deg(度)の位置に配置されているためである。このため、比較例1と同様に動作時にブレード201が中間転写ゴムベルト311から受けた力が、ブレード201が食い込む方向のベクトル成分を持つために摩擦力が増大したためと考えられる。
【0110】
実施例1〜4の構成によれば、ブレード201が揺動中心点103を中心に揺動自在に配置される。そして、揺動中心点103の位置は、ブレード201が被クリーニング部材から受ける摩擦力Ffrがブレード201を被クリーニング部材から逃がすようなベクトル成分を持つように配置されている。その結果、使用耐久、経時変化又は使用環境変化により“みかけの摩擦係数”が変動しても、ブレード201と被クリーニング部材との間の摩擦力(トルク)を安定(変動抑制)させ、ブレードビビリ、ブレード鳴き、クリーニング不良を軽減させることができる。
【0111】
なお、前述の「使用耐久」によりとは、ブレード201や2次転写ローラ20が使用耐久により磨耗した場合のことが例示される。また、前述の「経時変化」によりとは、ブレード201や2次転写ローラ20が経時的に寸法変化をした場合のことが例示される。さらに、「使用環境変化」によりとは、温度や湿度等の使用環境が変動した場合のことが例示される。
【0112】
また、実施例1〜4の構成では、ブレード201と2次転写ローラ20(中間転写ゴムベルト311)の両方が弾性体であることにより、動作時であってもブレード201と2次転写ローラ20(中間転写ゴムベルト311)と間の密着状態が保持可能となる。そのために、安定した接触追従性が確保される。その結果、安定したクリーニング性が確保となる。
【0113】
更に、実施例1〜4の構成では、最上流摺接点105と揺動中心点103を通る揺動支点通過線Cは、最上流摺接点105よりも移動方向X1の下流側の領域で、ブレード201と被クリーニング部材とが接する摺接線Aよりも、被クリーニング部材側にある。したがって、ブレード201は最上流摺接点105を中心として被クリーニング部材に寄る方向に揺動する。そのために、ブレード201が被クリーニング部材との摩擦により受けた力は、ブレード201が被クリーニング部材から離れる方向の回転モーメントに変換される。その結果、ブレード201及び被クリーニング部材の間で“みかけの摩擦係数”が変化した場合でも、摩擦力(トルク)の変動は小さく抑制される。
【0114】
実施例3の縁無し印字モードにおいても安定したクリーニング性を確保できる。なお、実施例3の構成は実施例1の構成を前提としていたが、実施例3の構成は実施例2の構成を前提とすることも可能である。
【0115】
なお、実施例4の構成は実施例1のクリーニング装置21を組み込んだ構成であったが、実施例2のクリーニング装置521を組み込んだ構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0116】
20 2次転写ローラ(被クリーニング部材)
21、221 クリーニング装置
60 加圧機構(加圧手段)
103 揺動中心点(揺動支点)
201 ブレード
311 中間転写ゴムベルト(被クリーニング部材)
A 摺接線(接線)
Ffr 摩擦力(力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体で形成されてクリーニングされる被クリーニング部材に対して、弾性体で形成されて前記被クリーニング部材に付着した付着物を除去するするブレードと、
前記ブレードが揺動支点を中心として揺動するように前記被クリーニング部材を加圧する加圧手段と、を備え、
前記揺動支点は、
前記ブレード及び前記被クリーニング部材が相対的に移動中に、前記ブレードと前記被クリーニング部材とが接する接線に沿う方向で前記ブレードが前記被クリーニング部材から受ける力が、前記ブレードを前記被クリーニング部材から離間させるベクトル成分を有する位置に配置されたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記被クリーニング部材が前記ブレードに対して移動するものとし、前記ブレードと前記被クリーニング部材とが摺接する摺接部のうち、前記被クリーニング部材の移動方向で最も上流側の点を最上流摺接点とした場合に、
前記接線は、前記最上流摺接点を通る線であり、
前記揺動支点は、前記最上流摺接点よりも前記移動方向で下流側にあり、
前記最上流摺接点と前記揺動支点を通る直線は、前記最上流摺接点よりも前記移動方向の下流側の領域で、前記ブレードと前記被クリーニング部材とが接する接線よりも、前記被クリーニング部材の側にあることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記被クリーニング部材が前記ブレードに対して移動するものとし、前記ブレードと前記被クリーニング部材とが摺接する摺接部のうち、前記被クリーニング部材の移動方向で最も上流側の点を最上流摺接点とした場合に、
前記接線は、前記最上流摺接点を通る線であり、
前記揺動支点は、前記最上流摺接点よりも前記移動方向で上流側にあり、
前記最上流摺接点と前記揺動支点を通る直線は、前記最上流摺接点よりも前記移動方向の下流側の領域で、前記ブレードと前記被クリーニング部材とが接する接線よりも、前記被クリーニング部材の側にあることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
像担持体と、
前記像担持体の表面に現像剤像を形成するための現像手段と、
前記像担持体上に形成された現像剤像が転写される中間転写体と、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のクリーニング装置と、を備え、
前記被クリーニング部材は、前記中間転写体に転写された現像剤像を記録媒体に転写するための転写部材であり、
前記ブレードは、前記転写部材に付着した付着物を除去するブレードであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体の表面に現像剤像を形成するための現像手段と、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のクリーニング装置と、を備え、
前記被クリーニング部材は、前記像担持体の表面に形成された現像剤像が転写される中間転写体であり、
前記ブレードは、前記中間転写体に付着した付着物を除去するブレードであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体の幅方向において前記像担持体の表面に形成される現像剤像が、現像剤像が転写される記録媒体よりも外側の領域まで形成される縁無し印字モードを実行可能であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−203247(P2012−203247A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68643(P2011−68643)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】