説明

クリーニング装置及び画像形成装置

【課題】 感光体の移動方向と逆方向に向かうクリーニング部材の先端部を、トナー像が転写された後の感光体の表面に圧接させて残留するトナーを除去するにあたり、温度が上昇した場合に、クリーニング部材にめくれやビビリが発生したりするのを抑制し、使用環境が変化した場合においても、感光体の表面に残留するトナーを安定して除去できるようにする。
【解決手段】 感光体10の移動方向と逆方向に向かうクリーニング部材21の先端部を、トナー像が転写された後の感光体の表面に圧接させて残留するトナーを除去するクリーニング装置20において、クリーニング部材として、熱膨張係数の異なる材料で構成された第1層21aと第2層21bとが厚み方向に積層されたものを用い、感光体の表面に当接するこのクリーニング部材の当接角θが温度上昇によって減少するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンタ,ファクシミリ及びこれらの複合機などの画像形成装置、及びこのような画像形成装置において、感光体や中間転写体等の像保持部材からトナー像を転写させた後、像保持部材の表面に残留するトナーを除去するのに使用するクリーニング装置に関するものである。特に、感光体や中間転写体等の像保持部材の移動方向と逆方向に向かうように設けられたクリーニング部材の先端部を、トナー像が転写された後の像保持部材の表面に圧接させて、像保持部材の表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置において、温度が上昇してクリーニング部材の硬度が低下した場合に、クリーニング部材の先端部が像保持部材に引っ張られて、クリーニング部材にめくれが生じたり、ビビリが発生したりすることがなく、使用環境が変化した場合においても、上記のクリーニング部材が像保持部材の表面に適切に圧接されて、トナー像が転写された後の像保持部材の表面に残留するトナーを安定して除去できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリ及びこれらの複合機などの画像形成装置においては、一般に、感光体に形成されたトナー像を中間転写ベルト等の中間転写体や記録媒体に転写させた後、また中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に転写させた後、上記の感光体や中間転写体からなる像保持部材の表面に残留するトナーをクリーニング装置によって除去させるようにしている。
【0003】
そして、従来においては、例えば、図1に示すように、感光体や中間転写体などの像保持部材1の表面に残留するトナーtをクリーニング装置2によって除去させるにあたり、トナー像が転写された後の像保持部材1の表面に、像保持部材1の移動方向と逆方向に向かうように設けられたクリーニング部材2aの先端部を圧接させて、像保持部材1の表面に残留しているトナーtを、このクリーニング部材2aにより像保持部材1の表面から除去するようにしている。
【0004】
ここで、このようにクリーニング部材2aの先端部を像保持部材1の表面に圧接させて、像保持部材1の表面に残留しているトナーtを長期にわたって除去すると、クリーニング部材2aの先端部が摩耗したり、クリーニング部材2aが永久変形したりし、像保持部材1の表面に残留しているトナーtを除去する能力が次第に低下するという問題があった。
【0005】
このため、従来においては、クリーニング部材2aの先端部を像保持部材1の表面に当接させる当接角θを大きくして、クリーニング部材2aの先端部を像保持部材1の表面に押圧させる方向に作用する力を高めることが行われている。
【0006】
しかし、このようにクリーニング部材2aの先端部を像保持部材1の表面に当接させる当接角θを大きくすると、像保持部材1とクリーニング部材2aとの間の摩擦により、クリーニング部材2aが移動する像保持部材1によって引っ張られた場合、クリーニング部材2aがめくれ易くなり、特に、高温環境下ではクリーニング部材2aの硬度が低下して、クリーニング部材2aにめくれやビビリが発生しやすくなるという問題があった。
【0007】
そして、従来においては、特許文献1において、クリーニング部材として、その厚み方向に沿って特性の異なる材料で構成された複数の層が積層され、像保持部材の表面に接触する側の層を高硬度の樹脂で構成したものを用い、クリーニング性を高めると共に、クリーニング部材におけるめくれやビビリの発生を抑制するようにしたものが提案されている。
【0008】
また、特許文献2においては、複数の層が積層されたクリーニング部材において、像保持部材の表面に接触する側の層の曲げ強度を高くすることが提案されている。
【0009】
しかし、上記の特許文献1,2に示されるものにおいては、温度変化に伴ってクリーニング部材の特性が変化することに関しては考慮されておらず、高温環境下において、クリーニング部材にめくれが生じたり、ビビリが発生したりするのを十分に抑制することはできなかった。
【0010】
また、特許文献3においては、クリーニング部材として、熱膨張係数の異なる少なくとも第1部材と第2部材とを有する積層構造のものを用い、像保持部材の表面と接触する表面側の第1部材の熱膨張係数よりも、裏面側における第2部材の熱膨張係数が大きくなるようにし、高温環境下においては、像保持部材の表面と接触するクリーニング部材の先端における像保持部材に対する食い込みを大きくすることが提案されている。
【0011】
しかし、このように高温環境下において、像保持部材の表面と接触するクリーニング部材の先端における像保持部材に対する食い込みを大きくした場合、クリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が大きくなり、上記のようにクリーニング部材が移動する像保持部材によって引っ張られてめくれ易くなり、特に、高温環境下においては、クリーニング部材の硬度が低下する結果、逆に、クリーニング部材にめくれやビビリが発生しやすくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−184462号公報
【特許文献2】特開2008−268647号公報
【特許文献3】特開2005−25078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、保持部材の移動方向と逆方向に向かうように設けられたクリーニング部材の先端部を、トナー像が転写された後の像保持部材の表面に圧接させて、像保持部材の表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置において、温度が上昇した場合に、クリーニング部材にめくれやビビリが発生するのを適切に抑制し、使用環境が変化した場合においても、上記のクリーニング部材が像保持部材の表面に適切に圧接されて、トナー像が転写された後の像保持部材の表面に残留するトナーを安定して除去できるようにした点に特徴を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明におけるクリーニング装置においては、上記のような課題を解決するため、像保持部材の移動方向と逆方向に向かうように設けられたクリーニング部材の先端部を、トナー像が転写された後の像保持部材の表面に圧接させて、像保持部材の表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置において、上記のクリーニング部材が、熱膨張係数の異なる材料で構成された層がその厚み方向に少なくとも2層積層された構造を有するようにし、このクリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が温度上昇によって減少するようにした。
【0015】
そして、このように温度上昇によって、クリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が減少すると、クリーニング部材がめくれにくくなり、高温環境下において、クリーニング部材の硬度が低下しても、移動する像保持部材によりクリーニング部材の先端部が引っ張られて、クリーニング部材にめくれが生じたり、ビビリが発生したりするのが抑制される。
【0016】
ここで、上記のように温度上昇によって、像保持部材の表面に当接されるクリーニング部材の先端部の当接角が減少されるようにするにあたっては、少なくとも2層積層されたクリーニング部材において、像保持部材側における層の熱膨張係数が、像保持部材と反対側における層の熱膨張係数よりも大きくなるようにする。
【0017】
また、上記のように温度上昇によって、クリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が減少すると、クリーニング部材によって像保持部材の表面に残留するトナーを除去する能力が低下するおそれがある。このため、回転支点を中心に回動する保持部材の保持部にクリーニング部材を保持させて、このクリーニング部材の先端部をトナー像が転写された後の像保持部材の表面に圧接させるようにした場合、クリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点における接線に対して、この保持部材の回転支点とクリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点とを結ぶ線がなす角度を支点角とした場合に、この支点角が0度以上になるようにすることが好ましい。
【0018】
また、上記のように支点角を0度以上にした場合において、クリーニング部材が保持部材の保持部に保持された端部位置におけるクリーニング部材の中立軸を変形支点とし、この変形支点とクリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点とを結ぶ線が、クリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点における接線に対してなす角度を変形支点角とした場合に、この変形支点角が支点角以上になると、より大きくなると、移動する像保持部材によりクリーニング部材の先端部が引っ張られた場合に、クリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が増加するようになる。一方、この変形支点角が上記の支点角より小さくなると、移動する像保持部材によりクリーニング部材の先端部が引っ張られた場合に、クリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が減少するようになる。
【0019】
このため、温度上昇が上昇してクリーニング部材の硬度が低下した場合には、クリーニング部材にめくれが生じたり、ビビリが発生したりするおそれがあるため、この変形支点角が支点角より小さくなるようにすることが好ましい。一方、温度が所定温度以下で、クリーニング部材にめくれやビビリが発生しにくい状態では、上記の変形支点角が支点角以上になるようにして、像保持部材に対するクリーニング部材の当接角が大きくなるようにし、像保持部材の表面に残留するトナーがこのクリーニング部材によって十分に除去されるようにすることが好ましい。
【0020】
そして、本発明の画像形成装置においては、トナー像が転写された後の感光体や中間転写体からなる像保持部材の表面に残留しているトナーを除去するのに、上記のようなクリーニング装置を用いるようにした。
【発明の効果】
【0021】
本発明のクリーニング装置においては、厚み方向に熱膨張係数の異なる材料で構成された層が少なくとも2層積層された構造を有するクリーニング部材を用い、クリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が温度上昇によって減少するようにしたため、温度の上昇によってクリーニング部材の硬度が低下しても、移動する像保持部材との摩擦によってクリーニング部材にめくれが生じたり、ビビリが発生したりするのが抑制されるようになる。一方、温度が低くなると、逆にクリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が増加するため、クリーニング部材が像保持部材の表面に強く圧接されて、像保持部材の表面に残留するトナーが十分に除去されるようになる。
【0022】
この結果、本発明のクリーニング装置においては、使用環境が変化した場合においても、クリーニング部材が像保持部材の表面に適切に圧接されて、トナー像が転写された後の像保持部材の表面に残留するトナーを安定して除去できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】像保持部材の表面に残留するトナーをクリーニング装置によって除去する従来例を示した概略説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る第1のクリーニング装置を用いた画像形成装置によって画像形成を行う状態を示した概略説明図である。
【図3】上記の実施形態に係る画像形成装置において、1つの感光体における画像形成を行う状態を示した概略説明図である。
【図4】上記の実施形態に係る第1のクリーニング装置おいて、第1層と第2層とが積層されたクリーニング部材を感光体の表面に圧接させた状態を示した概略説明図である。
【図5】上記の実施形態に係る第1のクリーニング装置において、クリーニング部材における第1層の熱膨張係数と昇温後における当接角の変化との関係を示したグラフである。
【図6】上記の実施形態に係る第1のクリーニング装置において、クリーニング部材を感光体の表面に圧接させる形態を変更させた変更例を示した概略説明図である。
【図7】図6に示した変更例において、クリーニング部材を感光体の表面に圧接させた形態をさらに詳細に示した部分拡大説明図である。
【図8】図7に示した例において、変形支点角βが支点角αより小さくなった場合における力の作用状態を示した概略説明図である。
【図9】図7に示した例において、変形支点角βが支点角αより大きくなった場合における力の作用状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態に係る画像形成装置及びクリーニング装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る画像形成装置及びクリーニング装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0025】
この実施形態に係る画像形成装置においては、図2に示すように、トナー像が形成される4つの感光体(像保持部材)10に対応させて、現像剤を収容させた4つの現像装置11を設け、各現像装置11においては、それぞれの現像剤におけるトナーの色彩を異ならせて、黒色,黄色,マゼンダ色,シアン色のトナーを用いている。
【0026】
ここで、この画像形成装置においては、上記の各感光体10を回転させて、各感光体10の表面をそれぞれ帯電装置12によって帯電させ、このように帯電された各感光体10に対して、それぞれ潜像形成装置13により画像形成情報に従った露光を行い、各感光体10の表面にそれぞれ静電潜像を形成するようにしている。
【0027】
そして、このように静電潜像が形成された各感光体10に対して、それぞれ対応する現像装置11から所定の色彩のトナーを各感光体10の静電潜像に供給して現像を行い、各感光体10の表面にそれぞれの色彩のトナー像を形成するようにしている。
【0028】
次いで、上記のように各感光体10に形成された各色彩のトナー像を、複数の回転ローラ14aに架け渡されて回転駆動される無端ベルト状になった中間転写体(像保持部材)14の表面に、上記の各感光体10と対向して設けられた各一次転写ローラ15により順々に一次転写させて、この中間転写体14の表面にフルカラーのトナー像を形成するようにしている。
【0029】
また、上記のようにトナー像を中間転写体14に転写させた後の各感光体10の表面に、それぞれ潤滑剤供給装置16により潤滑剤を供給した後、各感光体10の表面に残留しているトナーを、それぞれ第1のクリーニング装置20によって、各感光体10の表面から除去するようにしている。なお、上記の潤滑剤供給装置16においては、図3に示すように、回転するブラシローラ16aに固形潤滑剤16bをバネ16cによって押圧させ、このブラシローラ16aにより固形潤滑剤16bから潤滑剤を掻き取り、このように掻き取った潤滑剤をブラシローラ16aにより感光体10の表面に供給するようにしている。
【0030】
そして、上記のように中間転写体14の上に形成されたフルカラーのトナー像を、この中間転写体14により二次転写ローラ17と対向する位置に導くと共に、この画像形成装置の下部に収容された記録シートSを、送りローラ18により上記の中間転写体14と二次転写ローラ17との間に導き、中間転写体14の上に形成されたフルカラーのトナー像を、二次転写ローラ17により記録シートSに転写させるようにしている。
【0031】
その後、フルカラーのトナー像が転写された記録シートSを定着装置19に導いて、転写されたフルカラーのトナー像を記録シートSに定着させた後、このようにフルカラーのトナー像が定着された記録シートSを排紙させるようにしている。
【0032】
また、上記の記録シートSに転写されずに中間転写体14に残ったトナーを、第2のクリーニング装置30によって中間転写体14から除去させるようにしている。
【0033】
ここで、上記のように各感光体10の表面に残留しているトナーを第1のクリーニング装置20によって除去するにあたり、この実施形態における第1のクリーニング装置20においては、図3に示すように、熱膨張係数の異なる材料で構成された第1層21aと第2層21bとが厚み方向に積層された板状のクリーニングブレードからなるクリーニング部材21を用いるようにしている。
【0034】
そして、このクリーニング部材21において熱膨張係数が高い第1層21aを上記の感光体10側に位置させる一方、この第1層21aよりも熱膨張係数が低い第2層21bを保持部材22に保持させ、このクリーニング部材21の先端側を感光体10の移動方向と逆方向に向かうように配置させて、このクリーニング部材の先端部を感光体10の表面に所定の当接角θで当接させた後、このクリーニング部材21の先端部を所定の押圧力で感光体10の表面に圧接させて、感光体10の表面に残留しているトナーをこのクリーニング部材21によって除去するようにしている。なお、上記のようにクリーニング部材21の先端部を所定の押圧力で感光体10の表面に圧接させると、感光体10の表面に対するクリーニング部材21の先端部の当接角θが減少する。
【0035】
また、このようにして感光体10の表面に残留しているトナーをこのクリーニング部材21によって除去するにあたり、環境温度が上昇すると、図4に示すように、感光体10側に位置する第1層21aが保持部材22に保持された第2層21bよりも長く伸びて、感光体10の表面に対するクリーニング部材21の先端部の当接角θがさらに減少し、クリーニング部材21がめくれにくくなる。このため、温度の上昇によってクリーニング部材21の硬度が低下した状態で、このクリーニング部材21の先端部が移動する感光体10により引っ張られたとしても、クリーニング部材21にめくれが生じたり、ビビリが発生したりするのが抑制されるようになる。
【0036】
一方、環境温度が低くなると、感光体10側に位置する第1層21aが、保持部材22に保持された第2層21bよりも収縮して、感光体10の表面に対するクリーニング部材21の先端部の当接角θが増加し、クリーニング部材21の先端部が感光体10の表面に強く圧接されるようになり、感光体10の表面に残留しているトナーがこのクリーニング部材21によって適切に除去されるようになる。
【0037】
ここで、上記の第1層と第2層の厚みがそれぞれ1mm、第2層の熱膨張係数が0.0001であり、第1層の熱膨張係数が0.0001、0.0002,0.0003,0.0004、0.0005と異なる5種類のクリーニング部材を用い、温度を25℃から50℃に変化させた場合に、感光体10の表面に当接するクリーニング部材21の先端部の当接角θの変化を調べる実験を行った。
【0038】
この実験においては、各クリーニング部材を上記の保持部材から突出させる長さを9mmにすると共に、各クリーニング部材を感光体に圧接させる前の当接角θを20°にし、25℃の温度条件で、それぞれ感光体に対するクリーニング部材の食い込み量が1mmになるように、各クリーニング部材を感光体に圧接させた。この場合、各クリーニング部材の感光体の表面に対する当接角θは10°になっていた。
【0039】
そして、上記のように各クリーニング部材を感光体に圧接させた状態で、温度を50℃に上昇させた場合において、感光体の表面に対する各クリーニング部材の当接角θの変化を調べ、この結果を図5に示した。
【0040】
この結果、温度が50℃に上昇した場合、感光体の表面に対するクリーニング部材の当接角は、第2層に対する第1層の熱膨張係数が高くなるに連れて減少しており、高温時におけるクリーニング部材のめくれやビビリの発生が抑制されるようになる。
【0041】
なお、上記の実施形態において、上記のクリーニング部材21の先端部を感光体10の表面に圧接させるにあたっては、図6に示すように、熱膨張係数が高い第1層21aを感光体10に当接させるようにして、このクリーニング部材21における第2層21bを、回転支点24aを中心に回動する保持部材24の保持部24bに保持させると共にこの保持部材24にバネ25を取り付け、このバネ25により、クリーニング部材21を保持する保持部材24をその回転支点24aを中心にして感光体10に向かう方向に回転するように付勢し、クリーニング部材21の先端部を感光体10の表面に圧接させるようにすることができる。
【0042】
また、このように回転支点24aを中心にして回動する保持部材24によってクリーニング部材21の先端部を感光体10の表面に圧接させる場合、クリーニング部材21が感光体10の表面に接触する接触点21cにおける接線に対して、この保持部材24の回転支点24aと上記の接触点21cとを結ぶ線がなす角度を支点角αとした場合に、この支点角αが0度以上であると、クリーニング部材21の先端部と感光体10の表面との間の摩擦により、感光体10の回転に伴ってクリーニング部材21の先端部が感光体10の回転方向に引っ張られると、保持部材24の回転支点24aを中心にして、クリーニング部材21を感光体10の表面に押し付ける方向のモーメントが作用するようになる。この結果、クリーニング部材21の先端部が感光体10の表面にさらに強く押し付けられるようになり、感光体10の表面に残留しているトナーがクリーニング部材21によって適切に除去されるようになる。
【0043】
ここで、上記のようにバネ25により回転支点24aを中心にして回動する保持部材24を介してクリーニング部材21の先端部を感光体10の表面に圧接させるようにした場合において、クリーニング部材における第1層と第2層の厚み、熱膨脹係数及びヤング率が、下記の表1に示すようになった4種類のクリーニング部材を用いると共に、各クリーニング部材を保持部材の保持部から突出させる長さ(以下、「突出長」という。)、各クリーニング部材を感光体の表面に圧接させる前の初期当接角、上記の支点角、回転支点からクリーニング部材が感光体の表面に接触する点までの距離(以下、「支点距離」という。)及び上記のバネによるモーメントを下記の表1に示すように設定し、昇温前の25℃の条件下における各クリーニング部材の感光体の表面に対する当接角(昇温前当接角)と、温度を表1に示す温度に昇温させた場合における当接角(昇温時当接角)を求め、これらの結果を表1に合わせて示した。
【0044】
【表1】

【0045】
この結果、回転支点24aを中心にして回動する保持部材24によってクリーニング部材21の先端部を感光体10の表面に圧接させるようにした場合においても、感光体10の表面に圧接させる第1層21aにおける熱膨張係数を、第2層21bにおける熱膨張係数よりも大きくしたクリーニング部材21を用いると、昇温時における当接角θが減少し、高温時におけるクリーニング部材21のめくれやビビリの発生が抑制されるようになる。
【0046】
また、上記のように回転支点24aを中心にして回動する保持部材24によって保持されたクリーニング部材21の先端部を感光体10の表面に圧接させるにあたり、図7に示すように、クリーニング部材21の厚み方向の断面におけるモーメントの中心となる中立面Lと、クリーニング部材21を保持する保持部材24の保持部24aの端部位置におけるクリーニング部材21の厚み方向の断面とが交差する部分における中立軸を変形支点21dとし、クリーニング部材21が感光体10の表面に接触する接触点21cにおける接線に対して、この変形支点21dと接触点21cとを結ぶ線がなす角度を変形支点角βとした場合において、この変形支点角βと上記の支点角αとの関係を調べた。
【0047】
ここで、図8に示すように、上記の変形支点角βが支点角αより小さくなった場合において、感光体10の回転に伴ってクリーニング部材21の先端部が感光体10の回転方向に引っ張られ、クリーニング部材21の先端部に力Fが作用すると、この力Fの分力として上記の接触点21cから変形支点21dに向かう力Faが作用し、さらにこの変形支点21dに作用する力Faは、変形支点21dから回転支点24aに向かう力と、保持部材24を下方に向けて回転させる方向の力Fbとに分力され、保持部材24を下方に向けて回転させる方向の力Fbにより、感光体10の表面に対するクリーニング部材21の先端部の当接角θが減少するようになる。この結果、高温時におけるクリーニング部材21のめくれやビビリの発生が抑制されるようになる。また、図7に示すように、保持部材24の保持部24aの端部位置に固定されたクリーニング部材21の点を固定点21eとし、クリーニング部材21が感光体10の表面に接触する接触点21cにおける接線に対して、この固定点21eと接触点21cとを結ぶ線がなす角度を固定点角γとした場合において、この固定点角γが支点角αより小さくなると、感光体10の表面に対するクリーニング部材21の先端部の当接角θがさらに減少し、高温時におけるクリーニング部材21のめくれやビビリの発生がより一層抑制されるようになる。
【0048】
一方、図9に示すように、上記の変形支点角βが支点角αより大きくなった場合において、感光体10の回転に伴ってクリーニング部材21の先端部が感光体10の回転方向に引っ張られ、クリーニング部材21の先端部に力Fが作用すると、この力Fの分力として上記の接触点21cから変形支点21dに向かう力Faが作用し、さらにこの変形支点21dに作用する力Faは、変形支点21dから回転支点24aに向かう力と、保持部材24を上方に向けて回転させる方向の力Fbとに分力され、保持部材24を上方に向けて回転させる方向の力Fbにより、感光体10の表面に対するクリーニング部材21の先端部の当接角θが増加する。このため、クリーニング部材21の先端部が感光体10の表面に強く圧接されるようになり、感光体10の表面に残留しているトナーがこのクリーニング部材21によって適切に除去されるようになる。
【0049】
また、このようにバネ25により回転支点24aを中心にして回動する保持部材24を介してクリーニング部材21の先端部を感光体10の表面に圧接させるようにした場合において、クリーニング部材における第1層と第2層の厚み、熱膨脹係数及びヤング率が、下記の表2に示すようになった3種類のクリーニング部材を用いると共に、各クリーニング部材を保持部材の保持部から突出させる突出長、各クリーニング部材を感光体の表面に圧接させる前の初期当接角、上記の支点角、回転支点からクリーニング部材が感光体の表面に接触する点までの支点距離及び上記のバネによるモーメントを下記の表2に示すように設定し、昇温前の25℃の条件下における変形支点角(昇温前変形支点角)、温度を50℃に昇温させた場合における変形支点角(昇温後変形支点角)を求めると共に、昇温前における各クリーニング部材の感光体の表面に対する当接角(昇温前当接角)と、昇温後における当接角(昇温時当接角)を求め、これらの結果を表2に合わせて示した。
【0050】
【表2】

【0051】
この結果、上記の何れのクリーニング部材を用いた場合にも、上記の支点角αに対して変形支点角βが、昇温前では支点角αよりも大きくなって、当接角θが大きくなっており、感光体の表面に残留しているトナーがこれらのクリーニング部材によって適切に除去されるようになっていた。また、昇温後においては、変形支点角βが支点角αよりも小さくなって、当接角θが小さくなっており、高温時におけるクリーニング部材21のめくれやビビリの発生が抑制されるようになっていた。
【0052】
なお、上記の実施形態においては、感光体10の表面に残留しているトナーを除去する第1のクリーニング装置20について説明したが、中間転写体14の表面に残留しているトナーを除去する第2のクリーニング装置30についても同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 感光体(像保持部材)
11 現像装置
12 帯電装置
13 潜像形成装置
14 中間転写体(像保持部材),14a 回転ローラ
15 一次転写ローラ
16 潤滑剤供給装置,16a ブラシローラ,16b 固形潤滑剤,16c バネ
17 二次転写ローラ
18 送りローラ
19 定着装置
20 第1のクリーニング装置
21 クリーニング部材,21a 第1層,21b 第2層,21c 接触点,21d 固定点
22 保持部材
24 保持部材,24a 回転支点,24b 保持部
25 バネ
S 記録シート
θ 当接角
α 支点角
β 変形支点角
γ 固定点角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持部材の移動方向と逆方向に向かうように設けられたクリーニング部材の先端部を、トナー像が転写された後の像保持部材の表面に圧接させて、像保持部材の表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置において、上記のクリーニング部材は、熱膨張係数の異なる材料で構成された層がその厚み方向に少なくとも2層積層された構造を有し、このクリーニング部材の先端部が像保持部材の表面に当接する当接角が温度上昇によって減少することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載したクリーニング装置において、上記のクリーニング部材の像保持部材側における層の熱膨張係数が、像保持部材と反対側における層の熱膨張係数よりも大きいことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載したクリーニング装置において、回転支点を中心に回動する保持部材の保持部に上記のクリーニング部材が保持されてなり、クリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点における接線に対して、この保持部材の回転支点とクリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点とを結ぶ線がなす角度を支点角とした場合に、この支点角が0度以上であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のクリーニング装置において、上記のクリーニング部材が保持部材の保持部に保持された端部位置におけるクリーニング部材の中立軸を変形支点とし、クリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点における接線に対して、この変形支点とクリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点とを結ぶ線がなす角度を変形支点角とした場合に、この変形支点角と上記の支点角とが支点角>変形支点角の条件を満たすことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のクリーニング装置において、上記のクリーニング部材が保持部材の保持部に保持された端部位置におけるクリーニング部材の中立軸を変形支点とし、クリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点における接線に対して、この変形支点とクリーニング部材が像保持部材の表面に接触する点とを結ぶ線がなす角度を変形支点角とした場合に、温度が所定温度以下では変形支点角≧支点角の条件を満たし、温度が所定温度を超えると支点角>変形支点角の条件を満たすことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のクリーニング装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−20006(P2013−20006A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151954(P2011−151954)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】