説明

クリーム状イヌリン組成物の製造方法

【課題】加工特性上および味質・食感の優れた良質なクリーム状イヌリン組成物の製造法等を提供することにある。
【解決手段】重合度5〜29のイヌリンを95%以上含むイヌリンまたはその混合物に常温水を加え、撹拌してクリーム状の組成物を製造すること、得られたクリーム状イヌリン組成物およびかかるクリーム状イヌリン組成物を含む飲食品、飼料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーム状イヌリン組成物の製造方法、得られるクリーム状イヌリン組成物、これらを用いた飲食物および飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活における過剰なカロリー摂取量が肥満を助長していると言われている。特に脂肪の過度の摂取が肥満の大きな原因となるとともに、成人病を引き起こす原因として懸念されるなど健康との関連が指定されている。従って、脂肪の摂りすぎや肥満防止対策として低カロリーの脂肪代替組成物を食品に利用することが大いに期待されている。一方、食物繊維は脂肪に比べ1gあたりのカロリーが7kcalも低いものであるが、この食物繊維は1日あたり6g不足していると言われている。そのため、食物繊維による脂肪代替組成物の開発が注目されている。しかしながら、食物繊維を食品として利用する場合、食感や味質が問題となりそれらの点の改善が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特許第2897328号公報
【特許文献2】特許第2946622号公報
【特許文献3】WO93/06744、(特許第3195796号公報)
【特許文献4】WO94/19973、(特許第3212094号公報)
【特許文献5】USP 5501869
【特許文献6】WO96/01849、(特表平10−502678号公報)
【特許文献7】特開平10−179025号公報
【特許文献8】特開平9−252723号公報
【特許文献9】WO98/38870、特表2001−512987号公報
【特許文献10】特許第3790916号公報
【特許文献11】特開平10−290671号公報
【特許文献12】特開平9−252723号公報
【特許文献13】特開平9−103264号公報
【特許文献14】特開平9−103265号公報
【特許文献15】US 2006/0051485A1
【非特許文献1】ジャパンフードサイエンス Vol.45 2月号p.18〜24、2006
【0004】
前述の条件を満たす食材として、水溶性食物繊維のイヌリンまたはこのイヌリンを含む混合物をクリーム状の形態にした組成物が開発されている(特許文献1-15)。まず、その例としてコウジカビの一種であるアスペルギルス・シンドウイー(Aspergillus sydowii)由来の重合度10−100のb-2,1型フラクタン(イヌリン)を濃度10−60%で熱水可溶化後、急激に10℃以下まで冷却したクリーム状組成物がある(特許文献1、2)。このクリーム状組成物の食感上の改良型として、チコリなどの植物由来の重合度2〜10のオリゴ糖を10%以上含有するイヌリンのクリーム状組成物がある。これは、イヌリンまたはイヌリンを含む混合物を例えば水、牛乳、卵白、卵黄、液糖などのような液体食材に混ぜ、高い剪断力もしくは熱を加える方法によって製造するものである。液体食材の存在下でチコリ由来のイヌリンまたはこのイヌリンの混合物は、ホモジナイザーもしくは押出機に圧入し超音波反応機の作用にかける(特許文献3)か、または特許文献1に記載されているように、直火、湯煎、オートクレープ等で加熱することによって、粒子間に剪断作用と摩擦作用をかけることが必要であり(特許文献3)、クリーム化の方法が限定されてしまう。この改善のために、既存の粉末形態のチコリイヌリンを凝集により粒系を増加させる方法も開発されている(特許文献4)。しかし、いずれの方法もイヌリンに加温水、或いは加熱した液体食材を加えるか、又はこれらを剪断するもので、作業性、コスト面から満足な方法とは言えない。また、チコリイヌリンは重合度4以下の糖を多く含んでいるため甘味を呈し、高濃度では甘味を必要としない食品への添加には適さない。このことは特許文献5にも記載されており、イヌリン製品における重合度の限定はしていないものの、23%以上のイヌリンが甘さを与え、いくつかの食品においては不適なものである。製品の中にはチコリイヌリンから10糖以下の糖を取り除いたものもあるが(特許文献6)、これらを含むクリームはざらつき感が強く、食感も大きく異なる。
【0005】
これらの加工上の問題や味質、食感に関わる問題は、イヌリンの重合度の違いによる溶解度や甘味度の違いに起因すると考えられる。しかしながら、これまでのところ天然由来のイヌリンでは重合度を限定することが困難で、上述のような10糖以下の糖を取り除いたイヌリンなどに限られてしまい、より食感の優れたクリーム素材の開発が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、加工特性および味質・食感の優れた良質なクリーム状イヌリン組成物の製造法、その組成物を含む飲食物および飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、重合度5〜29の特定重合度範囲のイヌリンを使用することにより、意外にも従来の加熱水の使用なしにまた剪断を行うことなく、常温水を加え、通常の撹拌処理を行うことによりなめらかな食感を持つクリーム状イヌリン組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、重合度5〜29のイヌリンを95%以上含むイヌリン組成物に常温水を加え、撹拌してクリーム状イヌリン組成物を製造することを特徴とするクリーム状イヌリン組成物の製造方法である。
【0009】
さらに、本発明は上記記載の製造方法により得られたクリーム状イヌリン組成物である。
さらに、本発明は上記記載のクリーム状イヌリン組成物を含む飲食品である。
さらに、本発明は上記記載のクリーム状イヌリン組成物を含む飼料である。
さらに、本発明は飲食品または飼料における脂肪の全部又は一部を上記クリーム状イヌリン組成物で置換したクリーム状イヌリン組成物を含む飲食品又は飼料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来のものと比べ加熱水の使用も不要であり、剪断の必要もなく製造方法が極めて簡便で、コストもかからず、甘味がほとんどなく、ざらつき感もないなめらかな高濃度のイヌリンを含むクリーム状イヌリン組成物を得ることができた。そして、このクリーム状イヌリン組成物は食物繊維をより多く含むため、低カロリー、低脂肪であり、これらクリーム状イヌリン組成物を含む食品の摂取は、肥満や成人病の防止対策につながることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において使用するイヌリン組成物は、重合度5〜29のイヌリンを95%以上含むイヌリン組成物、すなわち、異なる重合度の集合体であるイヌリン組成物において重合度5〜29のイヌリンが95%以上を占めるイヌリン組成物である。本発明において使用するイヌリン組成物は、スクロースにイヌリン合成酵素のような糖転移酵素を作用させて合成されるものである。
【0012】
本発明で使用する酵素的に合成されるイヌリン組成物の具体的製法はW003/027304に記載しているとおりであるが、その要旨は次に説明するとおりである。
【0013】
このイヌリン組成物は、イヌリン合成酵素をスクロースに接触させることにより製造される。なお、ここで、イヌリンとは、スクロースのフルクトース側にD−フルクトースがβ−(2→1)結合で順次脱水重合した多糖類であって、グルコースに2分子以上のフルクトースが重合したものを意味し、2〜4分子のフルクトースが重合した低重合度のFOS(フルクトオリゴサッカライド)も含むものである。上記において、イヌリン合成酵素を「スクロースに接触させる」とは、スクロースを炭素源として含有する原料溶液にイヌリン合成酵素を添加し、これらが反応液中でスクロースを基質としてイヌリンを生成し得る条件下で反応させることを意味する。ここで、イヌリン合成酵素は、スクロースをイヌリンに変換することができる基質特異性を有する酵素であればいずれの酵素をも使用することができる。その一例として、スクロースに作用してイヌリンを生成するが、ケストース、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオースには作用しない作用及び基質特異性を有するイヌリン合成酵素が挙げられる。また、イヌリン合成酵素としては、微生物が産生する酵素が相当するが、当該酵素を産生する微生物の培養液若しくは培養菌体、又はその処理物も含まれる。上記酵素としては、具体的には、W002/00865に記載されているバチラスsp. 217C−11株(FERM BP-7450)の培養液若しくは培養菌体又はその処理物から得られるものを用いることができる。
【0014】
このバチラス(Bacillus)sp.217C−11株の培養法及び酵素の調製方法について、以下に簡単に説明する。この培養法において培地に添加する炭素源としては、通常使用されるものを適当な濃度で使用すればよい。例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトースなどの糖質を単独又は混合して用いることができるが、最も好ましい炭素源はスクロースである。これを主炭素源とした液体培地を用いて培養を行うことにより当該酵素活性は向上する。
【0015】
窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー等の有機窒素源のほか、硫酸、硝酸、リン酸のアンモニウム塩などの無機窒素源を単独又は混合して用いることができる。無機塩類としては、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄等の硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩等をそれぞれ単独で又は組み合わせて用いることができる。さらに必要に応じて、アミノ酸、ビタミンなど通常の培養に用いられる栄養源なども適宜用いることができる。具体的培地としては、スクロース0.5〜2%(w/v)、ペプトン1%、酵母エキス0.5%、リン酸2カリウム0.2%を含むpH7〜8の液体培地を用いることができる。
【0016】
培養は、振とう培養又はジャー・ファーメンターを用いて通気条件下で行うことができる。培地のpHは6〜9の範囲が好ましく、培養温度は25℃〜37℃の範囲が好ましく、培養時間は微生物が増殖し得る以上の時間であればよく、5〜96時間、好ましくは15〜72時間である。
【0017】
バチラス(Bacillus)sp.217C−11株を先に示した培地で培養後、遠心分離により除菌し、その後培養上清を分画分子量30000の限外濾過膜を用いて濃縮し、反応用の酵素液として使用することができる。この、バチラス(Bacillus)sp.217C−11株由来のイヌリン合成酵素は、以下の理化学的性質を有するものである。
【0018】
分子量 :45,000〜50,000
至適温度:40〜50℃
熱安定性:45℃を越えると徐々に失活し始め、50℃で70%、60℃
で40%の残存活性を示す。
至適pH :7〜8(45℃)
pH安定性:pH6以上で安定。
【0019】
なお、このイヌリン合成酵素は、スクロースに作用してイヌリンを生成するが、ケストース、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオースには作用しない作用及び基質特異性を有するものである。
【0020】
イヌリン合成酵素の濃度は、反応液中のスクロース(基質)を十分に利用し得る濃度であればよく、例えば、スクロース40〜60%(w/w)の場合、イヌリン合成酵素の活性が0.4unit/ml反応液となる濃度とするのが好ましい。スクロースの基質としてイヌリンを生成するのに適切なpHは、pH6〜8の範囲の反応液を用いるのが好ましい。さらに該反応液のpHを保つためにリン酸緩衝液を用いることもできる。反応時間は、イヌリン合成酵素の使用量等により適宜変更することができるが、通常、0.1〜100時間、好ましくは、0.5〜72時間である。
【0021】
得られるイヌリンの平均重合度の分析は、以下のようにして行うことができる。なお、重合度とは、イヌリン中のサッカライド単位(フルクトース及びグルコース単位)の数であり、平均重合度は、例えば、以下のようにして、HPLC、GC、HPAEC等の通常の分析法によって求めた分析結果のピークのトップを平均重合度とすることができる。カラムとして、例えば、信和化工製のULTRON PS-80N(8×300mm)(溶媒;水、流速;0.5ml/min、温度;50℃)、あるいは、TOSOH製のTSK-GEL G3000PWXL(7.8×300mm)(溶媒;水、流速;0.5ml/min、温度;50℃)を用い、検出器として示差屈折計を使用することによって確認された生成イヌリンの重合度を、標準物質として、例えば、植物由来のイヌリンであるオラフティ社のラフテリンST(平均重合度11)とラフテリンHP(平均重合度22)を用いて作成した検量線により求めることができる。なお、イヌリンの重合度の分析に関しては、Loo等(Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 35(6)、525−552(1995)の方法に基づいて実施することができる。
【0022】
上記イヌリンの製造法において、(1)スクロース濃度の調整、(2)イヌリン合成酵素をスクロースに接触させる際の温度の調整、(3)スクロースの追添加、により、生成されるイヌリンの平均重合度を調節することができる。
【0023】
上記(1)について更に説明すると、スクロース濃度の調整は、イヌリン合成酵素をスクロースに接触させてイヌリンを合成するに際し、生成するイヌリンの平均重合度に対応して行なわれる。具体的なスクロース濃度は、例えば、3〜68%(w/w)、好ましくは10〜60%(w/w)の範囲であるが、スクロース濃度を上記範囲内で低く設定することによって、得られるイヌリンの平均重合度を高めることができる。例えば、反応温度が15℃の場合、原料のスクロース濃度が50%のときに得られるイヌリンの平均重合度は10であるのに対し、原料のスクロース濃度が20%のときに得られるイヌリンの平均重合度は18である。また、反応温度が37℃の場合、原料のスクロース濃度が60%のときに得られるイヌリンの平均重合度は9であるのに対し、原料のスクロース濃度が20%のときに得られるイヌリンの平均重合度は20である。従って、スクロース濃度を適宜設定することによって、所望の平均重合度のイヌリンを得ることができる。
【0024】
以下、本発明を詳しく説明する。イヌリンは一般式GFn(G:グルコース、F:フラクトース、n:フラクトースの数(n≧2))で表される分岐のないフラクタンである。一般に重合度の異なるイヌリンの集合体として販売されているが、個々の重合度のイヌリンに着目した場合、重合度の大きさにより性質は異なり、低重合体(特に重合度4以下)は甘味を呈し、高重合体(特に30以上)は水に溶けづらい特徴を持っている。そのため、集合体においてもその重合度の分布が、加工特性や味質・食感に影響を与える。これについては、クリーム状イヌリン組成物、飲食物および飼料として利用する場合についても同様である。
【0025】
代表的なイヌリン製品の重合度の分布状態は図1に示すとおりである(非特許文献1)。なお、図1におけるイヌリン製品の重合度の分布状態はイオンクロマト分析装置を用いて測定した。図1の結果から、植物由来のイヌリン(市販イヌリンA(キクイモイヌリン)、市販イヌリンB(チコリイヌリン)、市販イヌリンC(ダリアイヌリン))には全て重合度30以上のイヌリンが含まれているのに対し、本発明で使用する酵素的合成イヌリン(フジFF)は重合度30以上のものが含まれていないことがうかがえる。この図1中、食品用として販売されているものは、市販イヌリンD(ラフティリンHP、オラフティ社製)及び市販イヌリンE(ラフティリンST、オラフティ社製)のイヌリンで、市販イヌリンD はチコリ抽出物である市販イヌリンEから低重合度イヌリンを取り除いたものである。市販イヌリンE には甘味を呈する低重合度のイヌリンが高濃度に含まれていることがうかがえ、本発明で使用する4以下の重合度イヌリンを含まない重合度5〜29のイヌリン(フジFF)とは大きく異なる。
【0026】
比較検討については、本発明で使用する重合度5〜29のイヌリン(酵素的合成イヌリン)(フジFF)と食品グレードである市販イヌリンD(ラフティリンHP)および市販イヌリンE(ラフティリンST)について行った(実験例、表1参照)。
【0027】
本発明のクリーム状イヌリン組成物の製造に使用する常温水の使用量は重合度5〜29のイヌリンに対して40〜400重量%望ましくは100〜190重量%である。常温水の温度は15〜30℃望ましくは25〜30℃である。また、「撹拌」は通常の混合を目的とした撹拌を意味し、例えば、棒状のマグネティックスターラーを用いた時の撹拌速度は300〜800rpmである。
【0028】
重合度5〜29のイヌリンの飲食品への添加量は、20〜70重量%望ましくは30〜50重量%である。また、飼料への添加量は、20〜70重量%望ましくは30〜50重量%である。
【0029】
製造例 重合度5〜29のイヌリン(酵素的合成イヌリン)の調製法
原料である砂糖溶液の濃度を45%に調製し、55℃にてイヌリン合成酵素を添加し、緩やかに撹拌しながら2日間の酵素反応を行った。なお、反応24時間目に原料溶液を追添加しさらに反応を続け、砂糖の残量が糖組成で10%程度になった時点で反応を終了させた。反応終了液は加熱により酵素を熱変性させ、活性炭ろ過による脱色工程、逆浸透膜による低分子糖類の除去工程、イオン交換樹脂による脱塩工程を経て精製を行い、噴霧乾燥よって純度97%以上の粉末を得ることができる。このようにして得られる酵素的合成イヌリンの重合度について前述した方法によって分析を行ったところ、平均重合度16、重合度分布は5〜29であり、重合度5〜29のイヌリンの占有率は96.2%であった。
【0030】
実験例
高濃度の食物繊維(イヌリン)含有組成物の例として、各イヌリンの50%クリームを題材に、これを非加熱攪拌操作で作成し比較した。すなわち、常温(25℃)の水を用い、攪拌操作により50%濃度の各イヌリン(本発明で使用する酵素的合成イヌリン(フジFF)、ラフティリンHP、ラフティリンST)でクリームを作成し、得られたクリームについて官能試験を行った(作成方法の詳細については、実施例参照)。以下にその官能試験結果について記載する。官能試験は9人の成人男女により行われ、同一の見解が得られた。
【0031】
【表1】

【0032】
以上の結果から、酵素的合成イヌリンを用いたクリーム状イヌリンは、他のイヌリンを用いた場合と異なり、常温水での攪拌操作のみでも、舌触りが滑らかで、適応範囲の広い無味に近いクリーム状イヌリンが得られることがわかった。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1) クリーム状イヌリンの製造方法
1)1リットルのビーカー中に500mlの水(26℃)とスターラーの攪拌子を入れる。
2)上記1)のビーカーをスターラー上に載せ、400rpmの速さで攪拌子を回す。
3)500gの重合度5〜29のイヌリン(酵素的合成イヌリン)(フジFF、フジ日本精糖製)がだまにならないように上記2)のビーカーに少しずつ入れる。
4)上記3)の操作が終了したところで、スターラーを止める。
5)攪拌子を取り除き、室温または冷蔵庫中で保存し、クリーム状になるのを待ってクリーム状イヌリンを得る。
なお、液体は水の代わりに牛乳、卵白、卵黄、液糖などのような液体食材としてもかまわない。
【0035】
(実施例2) 低脂肪マヨネーズタイプドレッシング風調味料
1)表2における全卵、りんご酢、砂糖、塩、こしょう、からしを入れ、攪拌機で混ぜて、ペーストを作る。
2)このペーストに重合度5〜29のクリーム状イヌリン(Bx 40)を入れ、撹拌機で攪拌して低脂肪マヨネーズタイプドレッシング風調味料を得る。
【0036】
【表2】

【0037】
(実施例3) 低脂肪ヨーグルト
1)表3における重合度5〜29のクリーム状イヌリンに無脂肪乳を混合する。
2)この混合物にプレーンヨーグルトを加えて低脂肪ヨーグルトを得る。
【0038】
【表3】

【0039】
(実施例4) 低脂肪抹茶ムース
1)表4におけるゼラチンを事前に水の中に入れてふやかしておく。
2)抹茶とグラニュー糖は良く混ぜ合わせ、茶こしでふるう。
3)ボウルを氷水に浮かべ、生クリーム、ブランデー、抹茶+グラニュー糖、重合度5〜29のクリーム状イヌリンを入れ、6〜7分泡立てる。
4)ゼラチンはレンジで溶かしてから加え、更に泡立てる。(2段階、1分)
5)これを型に流し、冷蔵庫で冷やして固めて低脂肪抹茶ムースを得る。
【0040】
【表4】

【0041】
(実施例5) 低脂肪アイスクリーム
1)鍋に表5における卵黄を入れて無脂肪乳を少量ずつ加えてのばした後、とろみがつくまで煮詰める。
2)ボウルに重合度5〜29のクリーム状イヌリン(Bx 40)と上記1)の混合物を入れて泡だて器で混ぜ合わせて生地を作る。
3)上記2)の生地を容器に入れ、冷凍室で1〜2時間冷やし固める。
4)生地が固まったら、全体をかき混ぜて再び冷蔵庫へ入れ、冷やし固め、これを2、3回繰り返すことにより低脂肪アイスクリームを得る。
【0042】
【表5】

【0043】
(実施例6) ホットケーキ
1)表6におけるホットケーキミックス粉に、水、卵を入れ、混ぜ合わせる。
2)上記1)の混合物に重合度5〜29のクリーム状イヌリンを混ぜる。
3)これをホットプレートで焼いてホットケーキを得る。
【0044】
【表6】

【0045】
(実施例7) 低脂肪ドッグ(キャット)フード
既成のレトルトドッグ(キャット)フードとクリーム状イヌリンを表7の比率で混合して低脂肪ドッグ(キャット)フードを得る。
【0046】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】イオンクロマト分析装置による代表的なイヌリン製品の重合度分布分析を示す図。図中、酵素的合成イヌリンは本発明で使用するイヌリン(フジFF)、市販イヌリンAはキクイモイヌリン、市販イヌリンBはチコリイヌリン、市販イヌリンCはダリアイヌリン、市販イヌリンDはラフティリンHP、市販イヌリンEはラフティリンSTである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度5〜29のイヌリンを95%以上含む酵素的に合成されたイヌリン組成物に、イヌリン組成物に対して40〜400重量%の常温水を加え、非加熱撹拌して得られるクリーム状イヌリン組成物。
【請求項2】
請求項1記載のクリーム状イヌリン組成物を含む飲食品。
【請求項3】
飲食品における脂肪の全部又は一部を請求項1記載のクリーム状イヌリン組成物で置換した請求項2記載の飲食品。
【請求項4】
請求項1記載のクリーム状イヌリン組成物を含む飼料。
【請求項5】
飼料における脂肪の全部又は一部を請求項1記載のクリーム状イヌリン組成物で置換した請求項4記載の飼料。
【請求項6】
イヌリン組成物がバチラス(Bacillus)sp.217C−11株由来(FERM BP−7450)のイヌリン合成酵素を用いて合成されたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のクリーム状イヌリン組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−82139(P2009−82139A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306455(P2008−306455)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【分割の表示】特願2007−198518(P2007−198518)の分割
【原出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(502281585)フジ日本精糖株式会社 (14)
【Fターム(参考)】