説明

クレンジング用組成物

【課題】透明で、且つ、高次分子会合体を形成して増粘することなく、マッサージ性能を発揮することのできる油性クレンジング剤を提供すること
【解決手段】組成物の全重量に対して、
(A)400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する少なくとも1つのエステル油 5〜35重量%、
(B)少なくとも4個の炭素原子を有するポリオール及びポリオキシアルキレングリコールのエーテルと、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸との、モノ又はポリエステルから選択され、且つ76〜86の鹸化価を有する少なくとも1つの界面活性剤 10〜30重量%、及び
(C)少なくとも1つのジオール 10〜25重量%
を含むクレンジング用組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水で濡れた顔又は手であっても好適に使用可能なクレンジング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クレンジング用組成物は、メイクアップの除去等に使用される化粧品であり、水性クレンジング剤又は油性クレンジング剤に大別される。水性クレンジング剤は油を含まないか又は微量に含むものであるために、使用中の油性感は少ないが、クレンジング力に乏しい。一方、油性クレンジング剤は水を含まないか又は微量に含むものであり、クレンジング力に優れているために、メイクアップの除去等に好適に使用することができる。
【0003】
油性クレンジング剤は、主に、油性成分及び界面活性剤からなり、界面活性剤が油中で親水性部分を内側にして会合体を形成した逆ミセル油溶液である。油性クレンジング剤に微量の水が配合される場合、水は、この親水性部分付近に可溶化されており、全体として、透明な状態を維持している。
【0004】
例えば、特開2004−238376号公報、特開2005−162691号公報、及び、特開2005−194249号公報には、主に液状の油性成分と界面活性剤からなり、任意に微量の水を含む油性クレンジング剤が記載されている。
【特許文献1】特開2004−238376号公報
【特許文献2】特開2005−162691号公報
【特許文献3】特開2005−194249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、油性クレンジング剤は、通常、水の可溶化量が小さいために、例えば、比較的多量に水が存在する場合には容易に可溶化限界を超えてしまい、エマルションを形成して2相化する。このような2つの相が存在すると、各相の屈折率の違いにより、油性クレンジング剤は全体として白濁化する。白濁状態は使用者に視覚的に好ましくない印象を与えるばかりか、クレンジング力の低下や使用感の低下を招く。
【0006】
また、幾つかの油性クレンジング剤では、濡れた顔又は手に使用した場合に、液晶等の高次分子会合体が形成され、増粘してしまい、また、クレンジング剤に求められるマッサージ性能が低下することがある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決することを目的とするものである。すなわち、本発明は、透明で、且つ、高次分子会合体を形成して増粘することなく、マッサージ性能を発揮することのできる油性クレンジング剤を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、組成物の全重量に対して、
(A)400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する少なくとも1つのエステル油 5〜35重量%、
(B)少なくとも3個の炭素原子を有するポリオール及びポリオキシアルキレングリコールのエーテルと、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸との、モノ又はポリエステルから選択され、且つ、76〜86の鹸化価を有する少なくとも1つの界面活性剤 10〜30重量%、及び
(C)少なくとも1つのジオール 9〜25重量%
を含むクレンジング用組成物によって達成される。
【0009】
前記組成物の全重量に対する前記(A)エステル油の量は10〜25重量%であることが好ましい。
【0010】
前記(B)界面活性剤としては、下記式:

ZO−[(EO)(PO)]−R

(式中、
Zは3個以上の水酸基を有する、炭素数3以上の化合物から水酸基を除いた残基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
POはオキシプロピレン基を表し;
Rは炭素数8〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸基、又は、水素原子を表し;
mおよびnはそれぞれオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、1≦m+n≦10、m/(m+n)≧0.8を満たし、オキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい)
で表されるものを使用することができる。
【0011】
前記組成物の全重量に対する前記(B)界面活性剤の量は15〜25重量%であることが好ましい。
【0012】
前記組成物の全重量に対する前記(C)ジオールの量は10〜20質量%であることが好ましい。
【0013】
更に、本発明のクレンジング用組成物は、組成物の全重量に対して10〜50重量%のミネラルオイルを含むことができる。
【0014】
更に、本発明のクレンジング用組成物は、組成物の全重量に対して0.5〜5重量%の水を含んでもよい。
【0015】
前記組成物は皮膚、毛髪等のケラチン物質に塗布されて、当該ケラチン物質のクレンジングに使用される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクレンジング用組成物は、透明であって、比較的多量の水が存在しても白濁したり、高次分子会合体を形成して増粘してマッサージ性能が低下することがないので、水で濡れた顔又は手であっても好適に使用することができる。したがって、本発明のクレンジング用組成物は浴室やシャワー室であっても、使用することができる。
【0017】
また、本発明のクレンジング用組成物はすすぎの際に水中油型エマルションを形成するので、容易に水で洗い流すことが可能であり、また、皮脂を過剰に除去して使用後の皮膚に不快な乾燥感を残すことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のクレンジング用組成物は、所定範囲の量の、(A)400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する少なくとも1つのエステル油、(B)少なくとも3個の炭素原子を有するポリオール及びポリオキシアルキレングリコールのエーテルと、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸との、モノ又はポリエステルから選択され、且つ、76〜86の鹸化価を有する少なくとも1つの界面活性剤、及び、(C)少なくとも1つのジオールを必須に含むものである。
【0019】
(A)400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する少なくとも1つのエステル油の種類は特に限定されるものではなく、400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する限り、任意のエステル油を使用することできる。ここで、エステルとは、飽和又は不飽和脂肪酸とアルコールの反応物であり、脂肪酸とは炭素数4以上のカルボン酸を意味する。脂肪酸はモノ脂肪酸又はポリ脂肪酸のいずれであってもよい。同様に、アルコールはモノアルコール又はポリアルコールのいずれであってもよい。
【0020】
ここで、「有機性値」及び「無機性値」とは、一般に、有機概念図として知られているグラフの作製に使用される、化合物固有の値である。有機概念図とは、藤田穆氏により提案されたものであり、その詳細は"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)、「化学の領域」vol.11, 10, pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」, vol.50, pp.79-82(1981)等で説明されている。すなわち、すべての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、この値を有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)等にも示されている。
【0021】
「有機性値」及び「無機性値」は、例えば、以下の文献にも記載されている:
(1)"Organic Analysis" Fujita 神谷書店(1930)
(2)"Systematic Organic Qualitative Analysis (Book of Purified Substances)" Fujita and Akatsuka 風間書店(1970), p. 487
(3)"Organic Conceptual Diagram, Its Fundamentals and applications", Koda 三洋出版(1984), p. 227
(4)"Design of Emulsion Formulations by use of Organic Conceptual Diagram" 日本エマルジョン株式会社(1985), p. 98, Yaguchi
(5)R.H. Ewell, J.M. Harrison, L. Berg.: Ind. Eng. Chem. 36, 871 (1944)
(6)欧州特許出願公開第985404号公報
【0022】
より詳細に説明すると、化合物の有機性値を計算するためには、メチレン基が単位として考慮され、炭素原子の数によって評価される。炭素原子、または-CH、-CH-若しくは=CH-基は、20の値として計算される。水素原子は考慮されない。前記有機化合物における環、分枝、またはエチレン性若しくはアセチレン性不飽和の存在は、文献、特に"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)の167頁において知られている対応する有機性値に従って、化合物の有機性値を計算する際に考慮される。
【0023】
化合物の無機性値を計算するためには、ヒドロキシル基がスタンダードな基として考慮され、それに対して100の値が与えられる。この100の値は、アルカン中の炭素原子数の関数としてのアルカンシリーズに対する沸点曲線と、アルカンに対する直鎖状飽和第一級モノアルコール類似体についての沸点曲線の間の距離に対して相関する。
【0024】
置換基Xの無機性値(Ixとして表される)は、グラフによって決定される。この値Ixは、第一に、直鎖状アルカンの沸点(b.p.)と、置換基Xで置換された前記直鎖状アルカンの類似体の沸点(b.p.x)を測定し、次いで差ΔTx=b.p.x-b.p.を計算し、第二に、第一級アルコール基で置換された類似体の沸点(b.p.OH)を測定し、次いで差ΔTOH=b.p.OH-b.p.を計算することによって計算される。値Ixは差ΔTOHに対する差ΔTxの比に等しく、前記比は全て、100に等しいヒドロキシル基の無機性値によって掛け算される。
【0025】
【数1】

【0026】
多くの置換基の無機性値は、各種の文献、特に上記文献に記載されている。化合物の無機性値は、前記化合物に存在する置換基の無機性値を加えることによって計算される。例えば置換基-Clまたは-Fのような特定の置換基は、"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)の167頁に示されている通り、有機性値と無機性値の両者を有する。
【0027】
400未満の有機性値且つ100未満の無機性値を有するエステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸トリデシル等が挙げられる。ミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0028】
400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有するエステル油としては、例えば、トリエチルヘキサノイン、リンゴ酸ジイソステアリル、パルミチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、イソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン等が挙げられる。トリエチルヘキサノイン、及び、リンゴ酸ジイソステアリルが好ましい。
【0029】
様々なエステル油の有機性値及び無機性値は、例えば、日本エマルジョン株式会社等のウェブサイトにおいて一般に公開されており、当業者であれば、400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、並びに、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有するエステル油の選択に困難を伴うものではない。
【0030】
(A)400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する少なくとも1つのエステル油は、単独で使用されてもよく、若しくは、2種類以上の混合物として使用されてもよい。前記(A)エステル油は、クレンジング用組成物の5〜35重量%を占める。10〜25重量%を占めることがより好ましい。
【0031】
本発明のクレンジング用組成物は、前記(A)エステル油以外の少なくとも1つの油を含むことができる。前記(A)エステル油以外の少なくとも1つの油は、前記(A)エステル油と共に本発明のクレンジング用組成物の主成分を構成する。したがって、本発明のクレンジング用組成物は全体として油性である。前記(A)エステル油以外の油は、好ましくは液状である。ここで、「液状」とは、室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)下で液状又はペースト状(非固形)であることを意味する。液状油としては、一般に、化粧品に使用されている油を単独で又は混合して使用することができる。
【0032】
前記油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油;植物油、前記(A)エステル油以外の他のエステル油等の極性油;又は、これらの混合物であってよい。
【0033】
炭化水素油としては、例えば、ミネラルオイル(流動パラフィン)、流動ワセリン、液体ナフタレン等の直鎖又は分枝状の炭化水素、水素化ポリイソブテン、イソエイコサン、スクアラン、スクワレン、及び、デセン/ブテンコポリマー、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0034】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状オルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0035】
植物油としては、例えば、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、落花生油、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0036】
前記他のエステル油としては、本発明の目的を阻害しない限り、任意のエステル油を使用することができ、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル、オクタン酸2−エチルヘキシル、カプリル酸/カプリン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、コハク酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0037】
前記油は、上記の油性成分の他に、ステアリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール等を含んでもよい。
【0038】
前記(A)エステル油以外の少なくとも1つの油としては、非極性油が好ましい。非極性油としては炭化水素油が好ましく、ミネラルオイルが特に好ましい。
【0039】
前記(A)エステル油以外の少なくとも1つの油は、クレンジング用組成物の10〜50重量%を占めることが好ましく、20〜50重量%がより好ましく、30〜50重量%が更により好ましく、40〜50重量%が特に好ましい。
【0040】
本発明のクレンジング用組成物は、(B)少なくとも3個の炭素原子を有するポリオール及びポリオキシアルキレングリコールのエーテルと、8〜24個の炭素原子を有する飽和脂肪酸との、モノ又はポリエステルであって、且つ、76〜86の鹸化価を有する少なくとも1つの界面活性剤を含む。
【0041】
少なくとも3個の炭素原子を有するポリオールとは、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数が2以下のポリオール以外の他のポリオールを意味しており、例えば、グリセリン等の炭素数3のポリオール;エリスリトール、トレイトール等の炭素数4の糖アルコール;アラビニトール、キシリトール、リビトール等の炭素数5の糖アルコール;並びに、イジトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール等の炭素数6の糖アルコールが挙げられる。これらの中ではグリセリン、及び、炭素数6の糖アルコールが好ましく、ソルビトールが特に好ましい。
【0042】
ポリオキシアルキレングリコールは、ポリオキシアルキレン鎖の両末端に2つのOH基を有するジオールであり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレン・ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・ポリブチレングリコール、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリブチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・ポリプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールがより好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。オキシアルキレン単位の繰り返し数は特に限定されるものではないが、10〜100が好ましく、20〜70がより好ましく、30〜50が更により好ましい。
【0043】
少なくとも3個の炭素原子を有するポリオール及びポリオキシアルキレングリコールのエーテルとは、少なくとも3個の炭素原子を有するポリオールの少なくとも1つのOH基とポリオキシアルキレングリコールの少なくとも1つのOH基が脱水縮合した構造を有しており、好ましくは1以上の、より好ましくは2以上の、更により好ましくは3以上の、特に好ましくは4以上のOH基を有している。
【0044】
前記エーテルは、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸とモノ又はポリエステルを形成して非イオン性の界面活性剤を構成する。8〜24個の炭素原子を有する飽和脂肪酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸が挙げられるが、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸が好ましく、オクタデカン酸(ステアリン酸)が更により好ましい。8〜24個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトイル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられるが、オレイン酸が好ましい。
【0045】
鹸化価は、一般に広く知られている概念であり、ここでは、1gの界面活性剤を前記エーテルと前記飽和脂肪酸の塩に分解するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を鹸化価という。前記界面活性剤(B)としては、76〜86の鹸化価を有するものを使用する。なお、同一種類の界面活性剤であってもその鹸化値は界面活性剤の製造元によって変化する場合があるが、各界面活性剤製品の鹸化値は製造元によって公開されているので、当業者であれば、76〜86の鹸化価を有する界面活性剤の選択に困難を伴うものではない。
【0046】
前記界面活性剤(B)の好ましい例としては、例えば、テトラオレイン酸ソルベス30、PEG20 グリセリルトリイソステアレート等が挙げられるが、下記式:

ZO−[(EO)(PO)]−R

(式中、
Zは3個以上の水酸基を有する、炭素数3以上の化合物から水酸基を除いた残基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
POはオキシプロピレン基を表し;
Rは炭素数8〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸基、又は、水素原子を表し;
mおよびnはそれぞれオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、1≦m+n≦10、m/(m+n)≧0.8を満たし、オキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい)
で表されるものがより好ましい。
【0047】
前記式で表されるものとしては、例えば、グリセリンとポリエチレングリコールのエーテルと、イソステアリン酸とのトリエステル、並びに、ソルビトールとポリエチレングリコールのエーテルと、イソステアリン酸とのテトラエステルが挙げられる。特に、ソルビトールとポリエチレングリコールのエーテルと、イソステアリン酸とのテトラエステルが好ましく、当該エステルはテトライソステアリン酸ソルベスと称される。ポリエチレングリコール由来のポリオキシエチレン繰返し単位数が30のもの(テトライソステアリン酸ソルベス−30)が特に好ましい。
【0048】
前記(B)界面活性剤は単独で使用されてもよく、若しくは、2種類以上の混合物として使用されてもよい。前記(B)界面活性剤は、クレンジング用組成物の10〜30重量%を占め、好ましくは15〜25重量%を、より好ましくは20〜25重量%を占める。
【0049】
(C)少なくとも1つのジオールは、1つの分子中に2つのOH基を有する任意の化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等の2〜20の炭素原子を有するジオールが挙げられるが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールが好ましく、プロピレングリコール、ブチレングリコールがより好ましく、ブチレングリコールが特に好ましい。
【0050】
前記ジオールは単独で使用されてもよく、若しくは、2種類以上の混合物として使用されてもよい。(C)ジオールは、クレンジング用組成物の9〜25重量%を占め、好ましくは10〜20重量%を、より好ましくは10〜15重量%を占める。
【0051】
本発明のクレンジング用組成物は、水を含んでもよい。
【0052】
水は、特に限定されるものではなく、一般の水道水を使用してもよいが、ヤグルマギクの水等の芳香蒸留水、及び/又は、ヴィテル(Vittel)の水、ルーカス(Lucas) の水、ラ ロッシュ ポゼ(La Roche Posay)の水等のミネラルウォーター、及び/又は、温泉水、及び/又は、海洋深層水等の海水であってもよい。
【0053】
水は、クレンジング用組成物の0.5〜5重量%を占め、好ましくは0.5〜3重量%を、より好ましくは0.5〜2重量%を占める。
【0054】
本発明のクレンジング用組成物は、常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒(水混和性有機溶媒)を含んでもよい。
【0055】
常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
エタノール、イソプロパノール、グリセリン等の2〜6の炭素原子を有するモノ又はポリアルコール類;
グリコールエーテル類(特に、3〜16の炭素原子を有するもの)、(例えば、モノ−、ジ−、トリプロピレングリコールの(C−C)アルキルエーテル類、及び、モノ−、ジ−、トリエチレングリコールの(C−C)アルキルエーテル類);並びに
これらの混合物。
【0056】
本発明のクレンジング用組成物は、前記(A)、(B)及び(C)の必須成分、並びに、ミネラルオイル及び水等の任意成分の他に、クレンジング用化粧品に通常使用される成分、例えば、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤(EDTA)、顔料等の着色剤、湿潤剤、植物抽出物、活性薬剤等のその他の成分を含むことができる。具体的には、ヒルアロン酸、セラミド、ビタミンC等の水溶性ビタミン、ビタミンA等の脂溶性ビタミン、各種ビタミンの誘導体、過酸化ベンゾイル、サリチル酸、アゼライン酸等が挙げられる。それらのその他の成分の量は、化粧品分野で通常の範囲であり、例えば組成物の全重量の0.01〜10%とすることができる。
【0057】
本発明のクレンジング用組成物は、例えば、皮膚(体、眼瞼及び睫毛を含めた顔面)用クレンジング剤、爪用クレンジング剤、又は、毛髪用クレンジング剤として使用することができる。
【0058】
本発明のクレンジング用組成物は、人体表面のケラチン物質に塗布されて、メイクアップ等の除去に使用される。ここでケラチン物質とは、ケラチンを主構成要素として含む物質であり、例えば、皮膚、毛髪、爪、唇等を挙げることができる。前記ケラチン物質は水で濡れていてもよい。本発明のクレンジング用組成物は浴室、シャワー室等の比較的多量の水が存在する条件下で使用することができ、効率的にメイクアップ等を除去することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、表中の数字は全て重量%である。
【0060】
以下の表1〜表4に示す成分からなる実施例1〜14及び比較例1〜19のクレンジングオイルを以下の工程により調製した。
(1)A成分とB成分を混合する。
(2)C成分を均一に混合する。
(3)工程(1)で得られた混合物に工程(2)で得られた混合物を添加し、全体が均一になるまで撹拌する。
【0061】
実施例1〜14及び比較例1〜19の各クレンジングオイルの外観、ゲル化性、及び、糸引き性を以下に示す方法により評価した。結果を表1〜表4に併せて示す。
【0062】
[外観(透明性)]
クレンジングオイルを濁度計(Hach社製2100P型)にて測定し、濁度が10 NTU 以下のものを透明(○)とし、濁度が10NTUを超えるものを不透明(×)とした。
【0063】
[ゲル化性]
クレンジングオイル70gと水30gを混合したとき、B型粘度計により測定(回転数12rpm、温度25℃)した粘度が10000mPa・s未満であるものをゲル化しない(○)とし、10000mPa・s以上のものをゲル化する(×)とした。
【0064】
[糸引き性]
クレンジングオイル2mLを手のひらにとり水1mLを加え、両手をすり合わせるように混ぜ合わせた後、合わせた手のひらをゆっくりと開いたときに糸引きのないものを○とし、糸引きのあるものを×とした。
【0065】
【表1】

【0066】
表1の結果から、ジオールであるプロピレングリコール、ブチレングリコールを使用する方が、3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールであるグリセリン、ソルビトールよりも、外観、ゲル化性、及び、糸引き性の全ての評価項目においてより優れたクレンジングオイルを与えることが分かる。
【0067】
【表2】

【0068】
表2の結果から、ジオールの配合量がクレンジングオイルの9重量%以上の場合に、外観、ゲル化性、及び、糸引き性の全ての評価項目において優れたクレンジングオイルを与えることが分かる。
【0069】
【表3】

【0070】
テトラオレイン酸ソルベス30(鹸化価=77.5):NIKKOL GO-430NV (日光ケミカルズ株式会社製)
テトライソステアリン酸ソルベス30(鹸化価=78.8):UNIOX ST-30IS (日油株式会社製)
テトラオレイン酸ソルベス30(鹸化価=80.7):UNIOX ST-30E (日油株式会社製)
テトラオレイン酸ソルベス30(鹸化価=96.1):RHEODOL 430V (花王株式会社製)
【0071】
表3の結果から、鹸化価が76〜86で、且つ、少なくとも3個の炭素原子を有するポリオール及びポリオキシアルキレングリコールのエーテルと、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸との、モノ又はポリエステルを界面活性剤として使用すると、外観、ゲル化性、及び、糸引き性の全ての評価項目において優れたクレンジングオイルを与えることが分かる。
【0072】
【表4】

【0073】
表4の結果から、400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する少なくとも1つのエステル油を使用すると、外観、ゲル化性、及び、糸引き性の全ての評価項目において優れたクレンジングオイルを与えることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量に対して、
(A)400未満の有機性値且つ100未満の無機性値、或いは、400以上の有機性値且つ100以上の無機性値を有する少なくとも1つのエステル油 5〜35重量%、
(B)少なくとも3個の炭素原子を有するポリオール及びポリオキシアルキレングリコールのエーテルと、8〜24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪酸との、モノ又はポリエステルから選択され、且つ、76〜86の鹸化価を有する少なくとも1つの界面活性剤 10〜30重量%、及び
(C)少なくとも1つのジオール 9〜25重量%
を含むクレンジング用組成物。
【請求項2】
組成物の全重量に対する前記(A)エステル油の量が10〜25重量%である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記(B)界面活性剤が下記式:

ZO−[(EO)(PO)]−R

(式中、
Zは3個以上の水酸基を有する、炭素数3以上の化合物から水酸基を除いた残基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
POはオキシプロピレン基を表し;
Rは炭素数8〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸基、又は、水素原子を表し;
m及びnはそれぞれオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、1≦m+n≦10、m/(m+n)≧0.8を満たし、オキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい)
で表される、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
組成物の全重量に対する前記(B)界面活性剤の量が15〜25重量%である、請求項1乃至3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
組成物の全重量に対する前記(C)ジオールの量が10〜20質量%である、請求項1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
更に、組成物の全重量に対して10〜50重量%のミネラルオイルを含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
更に、組成物の全重量に対して0.5〜5重量%の水を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、ケラチン物質のクレンジング方法。

【公開番号】特開2010−90111(P2010−90111A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193177(P2009−193177)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】