説明

クレーンの巻下げ衝突防止装置

【課題】 スタッキングガイドなどを使用することなく、隣に段積みされたコンテナなどの障害物がある場所に、コンテナとこれらの障害物との衝突を防止しながら、速やかにコンテナを目標位置に着床させること。
【解決手段】 第1の赤外線ビームセンサ11により、コンテナCの側面の延長線上近傍にある障害物を検出し、第2の赤外線ビームセンサ12により、コンテナCの側面の延長線上よりも外側にある障害物15を検出する。これにより、吊具45により把持されたコンテナCを下降させる際には、コンテナCの下端が、障害物に衝突することを防止することが可能となるとともに、吊具45などが傾いてワイヤ46に吊り下げられていた場合であっても、略鉛直方向下方にある障害物15を検出することが可能となる。これにより、例えば、吊具45やコンテナCが障害物15に衝突することを防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナクレーンの巻下げ衝突防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾コンテナヤードにおけるコンテナの段積み作業に用いられているクレーンとして、トランスファークレーンがある。このトランスファークレーンは、コンテナヤード上方に水平方向に配設されたガータの両端部に柱状の脚構造体を連結してなる門型構造体と、脚構造体の下端部に設けられた走行装置とを備えている。上記ガータには、ガータの長手方向に沿って移動するトロリが設けられており、このトロリから、コンテナ等の吊荷を吊り上げる吊具がワイヤによって吊り下げられている。
【0003】
このトランスファークレーンによって、コンテナの段積み作業を行う場合、コンテナを吊具により把持し、トロリの水平移動により目標位置上方まで移動させる。そして、吊コンテナが周囲に段積みされているコンテナと衝突しないように,徐々にワイヤを巻下げコンテナを目標の位置に着床させる。
【0004】
このようなコンテナの段積み作業を自動運転によって行うためには、吊コンテナとコンテナの積み山との衝突を回避しながら、目標位置上方から目標位置まで吊コンテナを巻下げる技術が必要となる。
【0005】
例えば、特開平10−167663号公報(特許文献1)には、コンテナを把持する吊具に、スタッキングガイドを取り付け、このスタッキングガイドに、積み山と吊コンテナの干渉を検出するためのセンサを設置し、衝突を防止しながら吊コンテナを目標位置に下降させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−167663号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1のようなスタッキングガイドは、高価である上、メンテナンスが必要となるため、低コスト化を望めないという不都合があった。
【0007】
本発明は、スタッキングガイドを使用することなく、周辺に段積みされたコンテナと吊コンテナとの衝突を防止しながら、速やかにコンテナを目標位置に着床することのできるクレーンの巻下げ衝突防止装置及びクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、ワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンに用いられ、前記ワイヤの巻下げ時における衝突を防止するクレーンの巻下げ衝突防止装置であって、前記吊具に設けられ、前記コンテナの側面の延長線上の下方近傍にある障害物を検出する第1の障害物検出手段と、前記吊具に設けられ、前記延長線上よりも外側にある障害物を検出する第2の障害物検出手段とを具備するクレーンの巻下げ衝突防止装置を提供する。
【0009】
上記構成によれば、第1の障害物検出手段により、コンテナの側面の延長線上近傍、換言すると、コンテナの側面に略平行な直線上の下方近傍にある障害物が検出されるので、例えば、吊具により把持されたコンテナを下降させる際には、コンテナの下端が、障害物に衝突することを防止することが可能となる。また、第2の障害物検出手段により、前記コンテナの側面の延長線上よりも外側にある障害物が検出されるので、例えば、図13に示されるように、吊具などが傾いてワイヤに吊り下げられていた場合であっても、略鉛直方向下方にある障害物を検出することが可能となる。これにより、吊具が障害物に衝突することを防止することが可能となる。また、複数のセンサを使用することで、役割を分担させた効率的な障害物回避が可能となる。
【0010】
上記記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置において、前記第1の障害物検出手段又は前記第2の障害物検出手段により、前記障害物が検出された場合には、前記第1の障害物検出手段又は前記第2の障害物検出手段により前記障害物が検出されなくなるまで、前記吊具を水平方向に移動させると良い。
【0011】
上記構成によれば、第1の障害物検出手段又は第2の障害物検出手段により、障害物が検出された場合には、第1の障害物検出手段又は第2の障害物検出手段により障害物が検出されなくなるまで、吊具を水平方向に移動させるので、例えば、コンテナや吊具を障害物に衝突させることなく、速やかに目標位置に下降させることが可能となる。
【0012】
上記記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置において、前記第1の障害物検出手段が、前記吊具によりコンテナを把持した状態において、前記コンテナの側面の延長線上の近傍にある障害物を検出することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第1の障害物検出手段はコンテナ下端と障害物との干渉を検出するためのセンサとして使用されるため、吊具と障害物との衝突防止のための過剰な回避を行うことなく、速やかにコンテナを下降させることが可能となる。
【0014】
上記記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置において、前記第2の障害物検出手段が、前記吊具によりコンテナを把持した状態において、前記コンテナの下端よりも上方にある障害物を検出することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、第1の障害物検出手段によって、コンテナ下端と障害物との衝突が回避された後に、第2の障害物検出手段によって、障害物を過剰に回避することなく吊具と障害物との衝突防止を行うことができる。
【0016】
上記記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置において、前記第1の障害物検出手段及び前記第2の障害物検出手段として、電磁波を所定の方向に出射し、前記電磁波の反射波を検知することにより、それぞれの検出範囲における障害物を検出するセンサを採用しても良い。
【0017】
このように、第1の障害物検出手段及び第2の障害物検出手段として、電磁波を利用したセンサを用いることにより、安価な装置構成とすることが可能となる。
【0018】
上記記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置は、コンテナの傾きを検出する傾斜計を備え、前記傾斜計により検出される傾斜角が所定の角度以上であった場合には、前記ワイヤの巻下げを停止させることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、コンテナの傾きが所定の角度以上であった場合には、ワイヤの巻下げを停止させることにより、コンテナ又は吊具の下降を停止することとしている。これにより、ワイヤの巻下げ時における安全性を高めることが可能となる。
【0020】
上記記載のクレーンの巻下げ防止装置において、前記吊具によりコンテナを把持する際に、前記吊具と前記コンテナとの衝突を検出するための第3の障害物検出手段が、前記吊具の外縁に設けられていても良い。
【0021】
上記構成によれば、吊具によりコンテナを把持する際に、吊具とコンテナとの衝突を検出するための第3の障害物検出手段を備えるため、吊具がコンテナに衝突することなく、速やかに吊具によりコンテナを掴むことが可能となる。なお、この第3の障害物検出手段として、上述の第1の障害物検出手段を流用することも可能である。
【0022】
上記記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置において、前記吊具は、前記コンテナを把持する把持体を有する外枠体を備え、前記第3の障害物検出手段は、前記外枠体の縁部に設けられ、斜め外側下方に向けて電磁波を出射し、前記電磁波の反射波を受信することにより、前記コンテナとの接触を検出するセンサであっても良い。
【0023】
上記構成によれば、第3の障害物検出手段は、コンテナを把持する把持体の外枠体の縁部に設けられている。そして、第3の障害物検出手段が外枠体の縁部から斜め外側下方に向けて、電磁波を発し、この電磁波の反射波を受信することにより、コンテナがきちんと把持体の下方に収容されているか、つまり、把持体により確実に把持される範囲内にコンテナが位置しているか否かが判断されるので、障害物と吊具との衝突を回避しながら、確実にコンテナを把持することが可能となる。
なお、上記第3の障害物検出手段は、例えば、外枠体の下面の外側に設けられていてもよく、外枠体の側面に取り付けられていても良い。
例えば、第3の障害物検出手段は、吊具がコンテナの2.5m上方に位置したときに、その電波がコンテナから100mm外側に照射されるような位置に設けられている。
【発明の効果】
【0024】
本発明のクレーンの巻下げ衝突防止装置によれば、スタッキングガイドなどを使用することなく、コンテナ及び吊具と障害物との衝突を防止しながら、速やかにコンテナを目標位置まで降下させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置の実施形態について、〔第1の実施形態〕、〔第2の実施形態〕の順に図面を参照して説明する。なお、ここでは、クレーンとして、トランスファークレーンを例にとって説明する。
〔第1の実施形態〕
図1において、符号R1は、トランスファークレーン(クレーン)である。このトランスファークレーンR1は、水平方向に配設されたガータ41の両端部に柱状の脚構造体42a、42bを連結してなる門型構造体2を有している。
門型構造体2を構成する脚構造体42a、42bには、それぞれその下端部に、複数の車輪43が設けられており、これら車輪43によってトランスファークレーンR1が走行可能とされている。それぞれの脚構造体42a、42bの下端には、走行モータ(図示略)が設けられており、これら走行モータによって、それぞれの脚構造体42a、42bの下端部に設けられた車輪43の内の少なくとも一つが駆動されるようになっている。すなわち、走行モータによって車輪43が回転駆動されることにより、トランスファークレーン1が自走するようになっている。また、これら車輪43は、それぞれ操舵可能とされている。
【0026】
ガータ41には、ガータ41の長手方向へ沿って移動可能に支持されたトロリ44が設けられており、このトロリ44には、コンテナ等の搬送品を吊り上げる吊具45がワイヤ46によって吊り下げられている。
トロリ44には、ワイヤ46の巻取り、巻下げ(送り出し)を行う昇降装置47が設けられている。この昇降装置47は、巻取りモータ(図示略)によってワイヤ46が巻回されたドラムを回転させることにより、ワイヤ46のドラム(図示略)への巻取り及び巻下げを行い、吊具45を昇降させるようになっている。さらに、トロリ44には、トロリモータ(図示略)によってトロリ44をガータ41の長手方向、つまり、水平方向に沿って走行させるトロリ装置(図示略)が設けられている。
【0027】
また、門型構造体2を構成する脚構造体42aには、その下端側にディーゼルエンジン式の発電機10が設けられており、隣接して設けられた燃料タンク(図示略)からの燃料によって駆動するようになっている。また、対向側の脚構造体42bには、制御盤20が設けられている。制御盤20は、制御装置を備えており、この制御装置が後述の巻下げ衝突防止制御などを行うことにより、障害物との衝突を避けながら、コンテナを目標位置まで下降させることが可能となる。
なお、制御装置は、例えば、CPU(中央演算装置)、HD(Hard Disk)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。後述する巻下げ衝突防止制御などの各種機能を実現するための一連の処理手順は、プログラムの形式でHD等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述するワイヤの巻下げ制御やトロリの横行制御を行う。
【0028】
次に、本実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置について説明する。図2は、本実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置の構成について説明するための図であり、図1に示した吊具45の周辺部分を正面から見たときの拡大図である。
【0029】
本実施形態に係るトランスファークレーンR1の吊具45は、コンテナCを把持するフリッパ(把持体)13を備えた外枠体14を備えている。この外枠体14は、例えば、吊具45の長手方向に沿って設けられており、コンテナCの上部を固定して把持するような構成となっている(例えば、図11参照)。この外枠体14の少なくとも四隅には、例えば、第1の赤外線ビームセンサ(第1の障害物検出手段)11及び第2の赤外線ビームセンサ(第2の障害物検出手段)12が設けられている。
【0030】
第1の赤外線ビームセンサ11は、外枠体14に少なくとも4つ備えられており、それぞれコンテナCの側面の延長線上、下方に光(電磁波)SB1を出射し、この光SB1の反射光を受光することにより、少なくともコンテナCの下端近傍にある障害物15を検出する。
この第1の赤外線ビームセンサ11は、図2に示されるように、外枠体14において、内側(つまりコンテナCに近い位置)に設置されることが好ましい。これにより、後述するワイヤの巻下げ制御において、第1の赤外線ビームセンサ11により検出される範囲を極力コンテナCの側面に近い領域に限ることが可能となるため、過剰な回避を行うことなく、コンテナCを速やかに下降させることが可能となる。
【0031】
第2の赤外線ビームセンサ12は、外枠体14に少なくとも4つ備えられており、それぞれコンテナCの側面に対して所定の角度、外側に光SB2を出射し、この光の反射光を受光することにより、コンテナCの側面の延長線上よりも外側にある障害物を検出する。このとき、第2の赤外線ビームセンサ12の検出範囲をコンテナCの下端よりも上部に設けるとよい。つまり、図2に示すように、第2の赤外線ビームセンサ12から出射される光SB2が届く距離をコンテナCの下端までの距離よりも短くすることにより、コンテナCの下端よりも上部にある障害物を検出するようにしておくと良い。
また、上記第2の赤外線ビームセンサ12から発せられる光SB2は、コンテナCの側面よりも約2°乃至5°傾けられていることが好ましい。或いは、この第2の赤外線ビームセンサ12によって、コンテナCの側面から100mm乃至400mm程度外側にある障害物が検出されるように、第2の赤外線ビームセンサ12が外枠体に設置されていると良い。
なお、本実施形態においては、例えば、第1の赤外線ビームセンサ11により検出される範囲を、下方5mとし、第2の赤外線ビームセンサ12により検出される範囲を下方2.5mとしている。
【0032】
次に、上述の構成を備えるトランスファークレーンR1において、吊具45により把持されているコンテナCを目標位置に着床させるまでの運転制御方法について、図4を参照して説明する。
なお、ここでは、図3に示すように、段積みされているコンテナとコンテナとの間に設定されている目標位置にコンテナCを着床させるための運転制御方法について説明する。なお、ここでは、目標位置の両側に段積みされているコンテナを全て障害物15として取り扱う。
【0033】
まず、図1に示した制御盤20内に備えられている制御装置は、トロリ44を横行させることにより、吊具45を目標位置(図3参照)の上方まで移動させると(図4のステップSA1)、トロリ横行を停止する(図4のステップSA2)。
続いて、制御装置は、ワイヤ46の巻下げを開始する(図4のステップSA3)。例えば、制御装置は、上述した昇降装置47(図1参照)が備える巻取りモータを駆動させることにより、ドラムに巻取られているワイヤ46を送出させる。これにより、ワイヤ46が巻下げられ、ワイヤ46に吊り下げられている吊具45、つまりコンテナCが除々に下降することとなる(例えば、図5参照)。
【0034】
続いて、この巻下げている期間において、図6に示されるように、上記第1の赤外線ビームセンサ11により障害物15が検出されると(図4のステップSA4において「YES」)、制御装置は、ワイヤ46の巻下げを一時停止し(図4のステップSA5)、トロリ44を除々に横行させる(図4のステップSA6)。そして、トロリ44を除々に横行させることにより、図7に示すように、第1の赤外線ビームセンサ11によって、障害物が検出されなくなると(図4のステップSA7において「NO」)、トロリ44の横行を停止させ(図4のステップSA8)、ワイヤ46の巻下げを再開する(図4のステップSA3に戻る)。このような制御を行うことにより、第1の赤外線ビームセンサ11によって検出される障害物15を避けながらコンテナCを除々に下降させることが可能となる。
【0035】
続いて、コンテナCが両側に段積みされている障害物の間に差し掛かると、第2の赤外線ビームセンサ12により障害物の検出が行われることとなる。そして、図8に示すように、第2の赤外線ビームセンサ12により障害物15が検出されると(図4のステップSA4において「YES」)、制御装置は、上述と同様に、ワイヤの巻下げを一時停止し(図4のステップSA5)、トロリ44を横行させる(図4のステップSA6)。そして、図9に示すように、第2の赤外線ビームセンサ12により障害物15が検出されなくなると(図4のステップSA7において「NO」)、トロリ44の横行を停止し(図4のステップSA8)、ワイヤ46の巻下げを再開する(図4のステップSA3)。
【0036】
このようにして、第2の赤外線ビームセンサ12による障害物の検出が行われながら、コンテナCが除々に段積みされた障害物15の隙間に下降されることとなる(例えば、図10参照)。そして、目標位置にコンテナが到達すると(ステップSA9において「YES」)、制御装置は、ワイヤ46の巻下げを停止し、当該処理を終了する(ステップSA10)。
【0037】
以上述べてきたように、本発明の第1の実施形態に係るクレーンの衝突防止装置によれば、第1の赤外線ビームセンサ11により、コンテナCの側面の延長線上近傍、換言すると、コンテナCの側面に略平行な直線上の下方近傍にある障害物15が検出されるので、例えば、吊具45により把持されたコンテナCを下降させる際には、コンテナCの下端が、障害物15に衝突することを防止することが可能となる。
また、第2の赤外線ビームセンサ12により、コンテナCの側面の延長線上よりも外側にある障害物15が検出されるので、例えば、図13に示されるように、吊具45などが傾いてワイヤ46に吊り下げられていた場合であっても、略鉛直方向下方にある障害物15を検出することが可能となる。これにより、例えば、吊具45が障害物15に衝突することを防止することが可能となる。
【0038】
更に、第1の赤外線ビームセンサ11又は第2の赤外線ビームセンサ12により、障害物15が検出された場合には、第1の赤外線ビームセンサ11又は第2の赤外線ビームセンサ12により障害物15が検出されなくなるまで、トロリ44、つまり、吊具45を水平方向に移動させるので、例えば、コンテナCや吊具45を障害物15に衝突させることなく、速やかに目標位置に下降させることが可能となる。
【0039】
また、第1の赤外線ビームセンサ11が、吊具45によりコンテナCを把持した状態において、コンテナCの側面の延長線上の近傍にある障害物15を検出するようにしているので、第1の赤外線ビームセンサ11による検出範囲をコンテナCに極めて近い範囲に限定することが可能となる。これにより、コンテナCの側面近傍にある障害物15のみが検出されることとなるので、障害物15とコンテナCとの間隔を狭くすることができ、狭いスペースであっても、障害物15との衝突を回避しながら速やかにコンテナCを下降させることが可能となる。
【0040】
また、第2の赤外線ビームセンサ12が、吊具45によりコンテナCを把持した状態において、コンテナCの下端よりも上方にある障害物15を検出するようにしているので、障害物15が検出された場合における吊具45の水平移動距離を短くすることが可能となる。これにより、障害物15と吊具45との間隔を狭くすることが可能となるので、狭いスペースであっても、障害物15との衝突を回避しながら速やかにコンテナCを下降させることが可能となる。
【0041】
なお、上述したクレーンの衝突防止装置において、吊具45或いはコンテナCの傾きを検出する傾斜計を設け、この傾斜計により検出される傾斜角が所定の角度以上であった場合には、ワイヤ46の巻下げを停止させるようにしても良い。
このような構成によれば、コンテナCの傾きが所定の角度以上であった場合には、ワイヤ46の巻下げが停止されるので、ワイヤ46の巻下げ時における安全性を高めることが可能となる。
【0042】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係るクレーンの衝突防止装置について図11を参照して説明する。なお、本実施形態においても、クレーンとして、図1に示したトランスファークレーンを例にとって説明する。
【0043】
図11は、吊具45を側方から見た図、つまり、図1において、正面方向(矢印Aの方向)に直交する方向から見た図を示している。
本実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置は、図11に示されるように、吊具45によりコンテナCを把持する際に、吊具45とコンテナCとの衝突を検出するための第3の赤外線ビームセンサ(第3の障害物検出手段)16を備えている。
第3の赤外線ビームセンサ16は、図12に示すように、例えば、吊具45がコンテナCの上方2.5mあたりまで下降したときに、その赤外光がコンテナから100mm外側に照射されるように設けられている。なお、図12は、吊具45の上方から下方に向けてコンテナCを見たときの図である。
【0044】
次に、上述した構成を備えるトランスファークレーンR1により、所定位置に置かれたコンテナCを吊具45により把持し、吊り上げるときの運転制御方法について、図11を参照して説明する。
まず、制御装置は、所定位置に置かれているコンテナCの上方までトロリ44を横行させた後、ワイヤ46を巻下げることにより、吊具45を除々に下降させる。このとき、上述したクレーンの衝突防止制御を行いながら、吊具45が周囲の障害物に衝突しないように、吊具45を下降させる(図4参照)。
【0045】
続いて、吊具45がコンテナCの近傍に差し掛かると、上述した第3の赤外線ビームセンサ16により障害物、つまり、ここでは把持する対象となるコンテナCが検出されているか否かを判定する。この結果、第3の赤外線ビームセンサ16により、コンテナCが検出された場合には、コンテナCが検出されなくなるまで、トロリ44を横行させる。このように、コンテナCとの衝突を回避しながら、吊具45を平行移動させるとともに、下降移動させる。そして、吊具45がコンテナCの上面に接する位置に到達すると、制御装置は、ワイヤ46の巻下げ制御を停止し、その後、吊具45によって所定位置に置かれたコンテナCを把持させる。
【0046】
以上述べてきたように、第2の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置によれば、吊具45によりコンテナCを把持する際に、吊具45とコンテナCとの衝突を検出するための第3の赤外線ビームセンサ16を備えるので、吊具45がコンテナCに衝突することなく、速やかに吊具45によりコンテナCを把持させることが可能となる。
特に、第3の赤外線ビームセンサ16を、コンテナCを把持する把持体13を備える外枠体14の縁部に設け、更に、第3の赤外線ビームセンサ16が外枠体14の縁部から斜め外側下方に向けて、赤外光を発し、この赤外光の反射光を受信することにより、コンテナCがきちんと把持体13の下方に収容されているか、つまり、把持体13により確実に把持される範囲内にコンテナCが位置しているか否かを判断することが可能となる。これにより、コンテナCと吊具45との衝突を回避しながら、確実にコンテナCを把持することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記第1の赤外線ビームセンサ11及び第2の赤外線ビームセンサ12の設置位置は、一例であり、外枠体14の縁部に設置されていれば良い。ここで、縁部とは、例えば、外枠体14の下面や、側面などを含む概念である。
また、上記第1の赤外線ビームセンサ11及び第2の赤外線ビームセンサ12は、障害物を検出するためのセンサの一例であり、このようなセンサと同様の作用を有するものであれば良い。
【0048】
更に、上記第3の赤外線ビームセンサ16は、例えば、外枠体14の下面の外側に設けられていてもよく、外枠体14の側面に取り付けられていても良い。また、第3の赤外線ビームセンサ16として、上述した第2の赤外線ビームセンサ12を流用することも可能である。
また、上記実施形態においては、クレーンとして、車輪43によって走行可能とされたトランスファークレーンR1を例にとって説明したが、クレーンとしては、例えば、レール上を移動するようなトランスファークレーンであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るクレーンであるトランスファークレーンの構成及び構造を説明する図である。
【図2】図1に示したクレーンを正面から見たときの吊具部分の拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御の手順を示したフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御を説明するための説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置により行われるワイヤの巻下げ制御を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置の概略構成を示した図であり、図1に示したクレーンを側面から見たときの吊具部分の拡大図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るクレーンの巻下げ衝突防止装置が備える第3のビームセンサにより、検出される検出位置の一例を示した図である。
【図13】従来技術の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0050】
R1 トランスファークレーン
11 第1の赤外線ビームセンサ
12 第2の赤外線ビームセンサ
13 フリッパ
14 外枠体
15 障害物
20 制御盤
44 トロリ
45 吊具
46 ワイヤ
47 昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤによって吊り下げられた吊具によりコンテナを把持して移動させることにより荷役作業を行うクレーンに用いられ、前記ワイヤの巻下げ時における衝突を防止するクレーンの巻下げ衝突防止装置であって、
前記吊具に設けられ、前記コンテナの側面の延長線上の下方近傍にある障害物を検出する第1の障害物検出手段と、
前記吊具に設けられ、前記延長線上よりも外側にある障害物を検出する第2の障害物検出手段とを具備するクレーンの巻下げ衝突防止装置。
【請求項2】
前記第1の障害物検出手段又は前記第2の障害物検出手段により、前記障害物が検出された場合には、前記第1の障害物検出手段又は前記第2の障害物検出手段により前記障害物が検出されなくなるまで、前記吊具を水平方向に移動させる請求項1に記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置。
【請求項3】
前記第1の障害物検出手段は、前記吊具によりコンテナを把持した状態において、前記コンテナの側面の延長線上の近傍にある障害物を検出する請求項2に記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置。
【請求項4】
前記第2の障害物検出手段は、前記吊具によりコンテナを把持した状態において、前記コンテナの下端よりも上方にある障害物を検出する請求項2又は請求項3に記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置。
【請求項5】
前記第1の障害物検出手段及び前記第2の障害物検出手段は、電磁波を所定の方向に出射し、前記電磁波の反射波を検知することにより、それぞれの検出範囲における障害物を検出するセンサである請求項1から請求項4のいずれかの項に記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置。
【請求項6】
コンテナの傾きを検出する傾斜計を備え、
前記傾斜計により検出される傾斜角が所定の角度以上であった場合には、前記ワイヤの巻下げを停止させる請求項1から請求項5のいずれかの項に記載のクレーンの巻下げ衝突防止装置。
【請求項7】
前記吊具によりコンテナを把持する際に、前記吊具と前記コンテナとの衝突を検出するための第3の障害物検出手段が、前記吊具の外縁に設けられている請求項1から請求項6のいずれかの項に記載のクレーンの巻下げ防止装置。
【請求項8】
前記吊具は、前記コンテナを把持する把持体を有する外枠体を備え、
前記第3の障害物検出手段は、前記外枠体の縁部に設けられ、斜め外側下方に向けて電磁波を出射し、前記電磁波の反射波を受信することにより、前記コンテナとの接触を検出するセンサである請求項7に記載のクレーンの巻下げ防止装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate