説明

クレーン装置

【課題】電動駆動による作業時に作業効率の低下させることなく、静音性を向上させることのできるクレーン装置を提供する。
【解決手段】回転数が可変に設けられた電動モータ84で駆動する第2油圧ポンプ85と、油圧ポンプの所定の作動油の吐出量に対して回転数が可変に設けられた可変容量式のウインチモータ72と、を備えている。これにより、第2油圧ポンプ85を駆動する電動モータ84の回転数を低下させた状態においても、ウインチ70の動作速度を維持することができるので、作業効率を低下させることなく、電動モータ84の回転数を低下させることで静音性を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ユニットの油圧ポンプをバッテリの電力によって駆動可能なクレーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクレーン装置としては、動力源としてエンジンの動力によって油圧ユニットの油圧ポンプを駆動させるようにしたものが知られている。しかし、従来のクレーン装置では、作業中にエンジンを継続的に運転した状態となるため、エンジン音が作業場所における騒音の原因となる可能性がある。
【0003】
そこで、近年のクレーン装置では、油圧ユニットの油圧ポンプを電動モータによって駆動するようにすることで、作業場所における騒音を低減するようにしている(例えば、引用文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−206673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、クレーン装置の作業では、ブームの旋回、起伏、伸縮およびウインチによるワイヤロープの巻き込みおよび繰り出しが繰り返し行われる。クレーン装置の作業では、ウインチによる作業が作業時間全体の中で大きな割合を占めている。
電動駆動のクレーン装置では、エンジン音が発生しない代わりに、ウインチによる作業時に発生する音が作業時の騒音として問題となるおそれがある。そこで、電動駆動のクレーン装置では、油圧ポンプを駆動する電動モータの回転数を小さくすることによって、ウインチの作業時に生じる音を低減することが可能となる。しかし、電動駆動のクレーン装置では、電動モータの回転数を小さくするとウインチの動作速度が遅くなるため、作業効率が低下する。
【0006】
本発明の目的とするところは、電動駆動による作業時に作業効率を低下させることなく、静音性を向上させることのできるクレーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、バッテリの電力で駆動可能な電動油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動するウインチ駆動用の油圧モータと、を備えたクレーン装置において、油圧ポンプは、作動油の吐出量が可変に設けられ、油圧モータは、油圧ポンプの所定の作動油の吐出量に対して回転数が可変に設けられた可変容量形の油圧モータである。
【0008】
これにより、油圧モータを回転数が大きくなる側に設定することによって、電動油圧ポンプから吐出される作動油の吐出量を小さくしても油圧モータの回転数が維持可能となることから、電動油圧ポンプを駆動する電動モータの回転数を低下させた状態においても、ウインチの動作速度を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動油圧ポンプを駆動する電動モータの回転数を低下させた状態においても、ウインチの動作速度を維持することができるので、作業効率を低下させることなく、電動モータの回転数を低下させることで静音性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示すクレーン装置を搭載した車両の斜視図である。
【図2】クレーン装置の正面図である。
【図3】油圧供給装置の概略構成図である。
【図4】動力源および動力源の出力とウインチモータの速度との関係におけるウインチのワイヤロープ速度および騒音値を示す図である。
【図5】高速設定制限処理を示すフローチャートである。
【図6】低速設定制限処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施形態の設定切換処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図6は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0012】
本発明のクレーン装置10は、図1に示すように、車両1に搭載されるものである。
【0013】
車両1は、シャシフレーム2の前側に設けられたキャブ3と、シャシフレーム2の後側に設けられた荷台4と、を備えており、キャブ3と荷台4との間のシャシフレーム2にクレーン装置10が搭載されている。
【0014】
クレーン装置10は、シャシフレーム2上に固定される基台20と、基台20の左右両側に設けられたアウトリガ30と、基台20の上面に旋回自在に設けられた旋回台40と、旋回台40に対して起伏自在に設けられたブーム50と、ブーム50の先端側から垂下されるワイヤロープ60と、ワイヤロープ60の巻き込みまたは繰り出しを行うためのウインチ70と、を備えている。
【0015】
各アウトリガ30は、基台20に対して幅方向外側に移動可能に設けられるとともに、油圧式のジャッキシリンダ31によって下方に伸長可能である。アウトリガ30は、下端を接地させることにより車両1を地面に対して安定的に支持する。
【0016】
旋回台40は、ボールベアリング式やローラーベアリング式の旋回サークル(図示せず)によって基台20に対して旋回自在に設けられ、油圧式の旋回モータ41によって旋回するように構成されている。また、旋回台40の上面には、上下方向に延びる旋回ポスト42が設けられ、旋回ポスト42の上端側にブーム50が起伏自在に連結されている。
【0017】
ブーム50は、複数のブーム部材51〜54からなり、ブーム部材の内部に先端側に隣り合うブーム部材が収納可能な多段式に構成されている。最基端側のブーム部材51は、基端部が旋回ポスト42の上端側に上下方向に回転自在に連結されている。ブーム部材51の基端側と旋回台40との間には、油圧式の起伏シリンダ55が連結され、起伏シリンダ55の伸縮動作によってブーム50を起伏させる。また、最基端側のブーム部材51内には、油圧式の伸縮シリンダ56が設けられ、伸縮シリンダ56の伸縮によってブーム50を伸縮させる。
【0018】
ワイヤロープ60は、先端側にフックブロック61設けられ、フックブロック61がブーム50から垂下される。フックブロック61には吊荷を係止可能であり、フックブロック61に係止された吊荷がブーム50の先端から吊り下げられる。
【0019】
ウインチ70は、ワイヤロープ60が巻き掛けられるドラム71と、ドラム71を正逆回転させるための油圧式のウインチモータ72と、ウインチモータ72の回転数およびトルクを変換してドラム71に伝達する減速機73と、を有している。ドラム71は、旋回ポスト42内の上部側に設けられ、巻き掛けられたワイヤロープ60がブーム50に沿って延びるとともに、先端側がブーム50の先端側から垂下される。ウインチモータ72は、旋回ポスト42内のドラム71の下方に設けられている。さらに、減速機73は、旋回ポスト42の外側面のドラム71とウインチモータ72との間の高さ位置に設けられている。
【0020】
ウインチモータ72は、例えば、斜板式のアキシャルプランジャ油圧モータであり、斜板の角度を変更可能な可変容量形の油圧モータである。つまり、ウインチモータ72は、斜板の角度を変更することによって、所定の流量の作動油に対して回転数が可変である。ウインチモータ72は、斜板の角度を変更するための斜板角変更レバー72aを有し、斜板角変更レバー72aは回転数が低くなる方向に付勢されている。ウインチモータ72は、斜板角変更レバー72aを回転数が高くなる方向に最大限に操作したときに吊り上げ可能な吊荷の重さが、回転数が低くなる方向に最大限操作した場合の約60%となる。
【0021】
各ジャッキシリンダ31,31、旋回モータ41、起伏シリンダ55、伸縮シリンダ56およびウインチモータ72等のアクチュエータは、作動油が供給されることによって作動する。各アクチュエータを作動させる作動油は、図3に示す油圧供給装置80によって供給される。
【0022】
油圧供給装置80は、車両1走行用のエンジンEの動力を取り出すためのPTO(パワーテイクオフ)機構81と、PTO機構81によって取り出されたエンジンEの動力によって駆動する第1油圧ポンプ82と、電力を供給するためのバッテリ83と、バッテリ83の電力で駆動する電動モータ84と、電動モータ84の回転によって駆動する第2油圧ポンプ85と、第1油圧ポンプ82または第2油圧ポンプ85から吐出された作動油の各アクチュエータに対する供給や排出等の流れを制御するためのコントロールバルブユニット86と、を備え、これらは作動油回路87に接続されている。
【0023】
電動モータ84は、インバータを介してバッテリ83に接続されており、回転数が可変である。本実施形態では、使用者の操作によって回転数が「MAX(高速)」、「MID(中速)」、「MIN(低速)」の三段階に変更可能である。電動モータ84は回転数が大きくなるに従って消費電力量が大きくなるため、クレーン装置10における消費電力量は電動モータ84の回転数に依存して変化する。
【0024】
コントロールバルブユニット86は、各アクチュエータのそれぞれに対応する複数のコントロールバルブを有し、各コントロールバルブが図2に示す操作レバー86a,86b,86c,86dによって操作可能である。また、コントロールバルブユニット86を構成する各コントロールバルブは、ソレノイドからなる切換手段を有し、後述するコントローラからの信号によって操作される。
【0025】
作動油回路87には、第1油圧ポンプ82と第2油圧ポンプ85が互いに並列に接続され、第1油圧ポンプ82および第2油圧ポンプ85の吸入側が作動油タンク87aに接続されている。また、第1油圧ポンプ82および第2油圧ポンプ85の吐出側は、コントロールバルブユニット86のポンプ側のポートに接続されている。第1油圧ポンプ82および第2油圧ポンプ85のそれぞれの吐出側とコントロールバルブユニット86との間の作動油流路には、吐出側からの第1油圧ポンプ82および第2油圧ポンプ85内への作動油が流入を規制するための逆止弁87bが設けられている。また、コントロールバルブユニット86には、各アクチュエータが接続されている。コントロールバルブユニット86の作動油タンク87a側のポートには、リターンフィルタ87cを介して作動油タンク87aが接続されている。
【0026】
また、作動油回路87には、ウインチモータ72の斜板角変更レバー72aを操作するための操作シリンダ88と、操作シリンダ88を駆動させるためのコントロールバルブ89が接続されている。操作シリンダ88は、作動油が供給されると伸長する単動シリンダからなり、斜板角変更レバー72aをウインチモータ72の回転数を速くする方向に操作可能である。コントロールバルブ89は、ソレノイドからなる切換手段を有し、後述するコントローラからの信号によって操作される。コントロールバルブ89は、作動油回路87と操作シリンダ88内を連通する流路と、作動油タンク87aと操作シリンダ88内を連通する流路と、を有し、作動油タンク87aと操作シリンダ88内を連通する流路側に付勢されている。
ウインチモータ72は、通常の状態で斜板角変更レバー72aが回転数「低速」に設定されており、切換手段であるソレノイドに通電すると、コントロールバルブ89が移動して作動油が操作シリンダ88内に流入し、斜板角変更レバー72aが回転数「高速」に切り換わる。また、ウインチモータ72は、斜板角変更レバー72aが回転数「高速」の状態で、切換手段であるソレノイドの通電を遮断すると、コントロールバルブ89が付勢力によって移動して作動油が操作シリンダ88から作動油タンク87aに流出し斜板角変更レバー72aが回転数「低速」に切り換わる。
【0027】
また、クレーン装置10は、図3に示すように、油圧供給装置80の操作に関する制御を行うためのコントローラ90を備えている。
コントローラ90は、CPU、ROM、RAMを有している。コントローラ90は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0028】
コントローラ90の入力側には、電動モータ84の回転数やウインチモータ72の設定速度を変更する操作等、油圧供給装置80の操作を行うための押しボタンやレバー等を有する操作入力部91と、吊荷の荷重、ブーム50の長さ寸法および起伏角度を検出して吊荷の定格荷重を算出し、吊荷の荷重が定格荷重を超える場合にクレーン装置10の動作を停止させる過負荷防止装置92と、が接続されている。
また、コントローラ90の出力側には、PTO機構81、電動モータ84、コントロールバルブユニット86およびコントロールバルブ89が接続されている。
【0029】
以上のように構成されたクレーン装置において、使用者は、作業を行う際に、動力源の選択、電動を選択した場合の電動モータ84の回転数の設定およびウインチモータ72の速度の設定を操作入力部91で行う。ここで、動力源および動力源の出力とウインチモータ72の速度との関係におけるウインチ70のワイヤロープ速度および騒音値を図4に示す。
【0030】
ここで、図4に示すように、動力源をエンジンE、ウインチモータ72を「高速」に設定すると、ウインチ70によるワイヤロープ60の巻き込みおよび繰り出しの速度は、A1m/min(例えば、30m/min)となり、著しく速くなる。このため、コントローラ90は、図5のフローチャートに示すように、高速設定制限処理を行う。
【0031】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、動力源がエンジンEに設定されているか否かを判定する。エンジンEに設定されていると判定した場合にはステップS2に処理を移し、エンジンEに設定されていると判定しなかった場合には高速設定制限処理を終了する。
【0032】
(ステップS2)
ステップS1において動力源がエンジンEに設定されていると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、ウインチモータ72が「高速」に設定されているか否かを判定する。ウインチモータ72が「高速」に設定されていると判定した場合にはステップS3に処理を移し、ウインチモータ72が「高速」設定されていると判定しなかった場合には高速設定制限処理を終了する。
【0033】
(ステップS3)
ステップS2においてウインチモータ72が「高速」に設定されていると判定した場合に、ステップS3においてCPUは、ウインチモータ72を「低速」に設定して高速設定制限処理を終了する。
【0034】
また、図4に示すように、動力源を電動モータ84に設定するとともに、回転数を「MIN」に設定すると、ウインチ70によるワイヤロープ60の巻き込みおよび繰り出しの速度は、A8m/min(例えば、4m/min)となり、著しく遅くなる。このため、コントローラ90は、図6のフローチャートに示すように、低速設定制限処理を行う。
【0035】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、動力源が電動モータ84に設定されているか否かを判定する。電動モータ84に設定されていると判定した場合にはステップS12に処理を移し、電動モータ84に設定されていると判定しなかった場合には低速設定制限処理を終了する。
【0036】
(ステップS12)
ステップS11において動力源が電動モータ84に設定されていると判定した場合に、ステップS12においてCPUは、電動モータ84の回転数が「MIN」に設定されているか否かを判定する。「MIN」に設定されていると判定した場合にはステップS13に処理を移し、「MIN」に設定されていると判定しなかった場合には低速設定制限処理を終了する。
【0037】
(ステップS13)
ステップS12において電動モータ84の回転数が「MIN」に設定されていると判定した場合に、ステップS13においてCPUは、ウインチモータ72が「低速」に設定されているか否かを判定する。ウインチモータ72が「低速」に設定されていると判定した場合にはステップS14に処理を移し、ウインチモータ72が「低速」に設定されていると判定しなかった場合には低速設定制限処理を終了する。
【0038】
(ステップS14)
ステップS13においてウインチモータ72が「低速」に設定されていると判定した場合に、ステップS14においてCPUは、ウインチモータ72を「高速」に設定して低速設定制限処理を終了する。
【0039】
このように、本実施形態のクレーン装置によれば、回転数が可変に設けられた電動モータ84で駆動する第2油圧ポンプ85と、油圧ポンプの所定の作動油の吐出量に対して回転数が可変に設けられた可変容量式のウインチモータ72と、を備えている。これにより、第2油圧ポンプ85を駆動する電動モータ84の回転数を低下させた状態においても、ウインチ70の動作速度を維持することができるので、作業効率を低下させることなく、電動モータ84の回転数を低下させることで静音性を向上させることが可能となる。
【0040】
また、第1油圧ポンプ82によってウインチモータ72を駆動させる場合にウインチモータ72の回転数の設定を「低速」に切換えるようにしている。これにより、ウインチ70によるワイヤロープ60の巻き込みおよび繰り出しの速度が、著しく速くなることを防止することができるので、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0041】
図7は本発明の他の実施形態である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0042】
このクレーン装置10は、動力源が電動モータ84に設定されている場合に、過負荷防止装置92の検出値および算出値に基づいて、ウインチ70のワイヤロープ速度をほぼ同一としたまま、電動モータ84の回転数の設定およびウインチモータ72の速度の設定を切換える設定切換処理を行う。このときのコントローラ90の動作を、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
(ステップS21)
ステップS21においてCPUは、動力源が電動モータ84に設定されているか否かを判定する。電動モータ84に設定されていると判定した場合にはステップS22に処理を移し、電動モータ84に設定されていると判定しなかった場合には設定切換処理を終了する。
【0044】
(ステップS22)
ステップS21において動力源が電動モータ84に設定されていると判定した場合に、ステップS22においてCPUは、ウインチモータ72が「低速」に設定されているか否かを判定する。「低速」に設定されていると判定した場合にはステップS23に処理を移し、「低速」に設定されていると判定しなかった場合にはステップS25に処理を移す。
【0045】
(ステップS23)
ステップS22においてウインチモータ72が「低速」に設定されていると判定した場合に、ステップS23においてCPUは、吊荷の荷重Wが所定の荷重W1以下か否かを判定する。吊荷の荷重Wが所定の荷重W1以下と判定した場合にはステップS24に処理を移し、吊荷の荷重Wが所定の荷重W1以下と判定しなかった場合には設定切換処理を終了する。
ここで、荷重W1は、ウインチモータ72が「高速」の設定でウインチ70によって吊り上げることが可能な最大荷重である。
【0046】
(ステップS24)
ステップS23において吊荷の荷重Wが所定の荷重W1以下と判定した場合に、ステップS24においてCPUは、電動モータ84の回転数の設定を1段階低速側に設定し、ウインチモータ72の設定を「高速」に設定して設定切換処理を終了する。
具体的には、例えば、電動モータ84の回転数の設定が「MAX」で、ウインチモータ72の設定が「低速」の場合には、電動モータ84の回転数の設定を「MID」とし、ウインチモータ72の設定を「高速」とする。このとき、電動モータ84の回転数の設定は、「MAX」から「MID」に変更されることから、消費電力量が小さい状態で電動モータ84が駆動される。
【0047】
(ステップS25)
ステップS22においてウインチモータ72が「低速」に設定されていると判定しなかった場合に、ステップS25においてCPUは、吊荷の荷重Wが所定の荷重W2よりも大きいか否かを判定する。吊荷の荷重Wが所定の荷重W2よりも大きいと判定した場合にはステップS26に処理を移し、吊荷の荷重Wが所定の荷重W2よりも大きいと判定しなかった場合には設定切換処理を終了する。
【0048】
(ステップS26)
ステップS25において吊荷の荷重Wが所定の荷重W2よりも大きいと判定した場合に、ステップS26においてCPUは、電動モータ84の回転数の設定を1段階高速側に設定し、ウインチモータ72の設定を「低速」に設定して設定切換処理を終了する。
具体的には、例えば、電動モータ84の回転数の設定が「MID」で、ウインチモータ72の設定が「高速」の場合には、電動モータ84の回転数の設定を「MAX」とし、ウインチモータ72の設定を「低速」とする。このとき、ウインチモータ72の設定は、「高速」から「低速」に変更されることから、確実に吊荷がウインチ70によって吊り上げられる。
【0049】
このように、本実施形態のクレーン装置によれば、動力源が電動モータ84に設定されている場合に、過負荷防止装置92の検出値および算出値に基づいて、ウインチ70のワイヤロープ速度をほぼ同一としたまま、電動モータ84の回転数の設定およびウインチモータ72の速度の設定を切換えている。これにより、吊荷の荷重Wが小さい場合には、電動モータ84の回転数を小さくすることが可能となるので、クレーン作業における消費電力量の低減を図ることが可能となる。
【0050】
また、前記実施形態では、過負荷防止装置92の検出値および算出値に基づいて、電動モータ84の回転数の設定およびウインチモータ72の速度の設定を切換えるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、過負荷防止装置92の検出値および算出値に基づいて、ウインチモータ72の速度の設定のみ切換えるようにしてもよい。
【0051】
例えば、ウインチモータ72の設定が「高速」で吊荷の荷重Wが所定の荷重W3より大きい場合には、ウインチモータ72の設定を「低速」に切換える。これにより、吊荷をウインチ70によって確実に吊り上げることが可能となる。
【0052】
また、例えば、ウインチモータ72の設定が「低速」で吊荷の荷重Wが所定の荷重W3以下の場合には、ウインチモータ72の設定を「高速」に切換える。これにより、電動モータ84の回転数を変更することなく吊荷を吊り上げる速度を上昇させることができるので、消費電力量を増加させることなく作業効率を向上させることが可能となる。
【0053】
尚、前記実施形態では、車両搭載型のクレーン装置に本発明を適用するようにしたものを示したが、これに限られるものではなく、固定式クレーンや移動式クレーンにかかわらず電動駆動の油圧ポンプを備えたクレーン装置であれば適用可能である。
【0054】
また、前記実施形態では、電動モータ84の回転数を3段階に切換えるようにしたものを示したがこれに限られるものではなく、2段階や4段階以上に切換えるものでもよいし、無段階に回転数を調整するものであっても本発明が適用可能である。
【0055】
また、前記実施形態では、ウインチモータ72の容量を2段階に切換えるようにしたものを示したがこれに限られるものではなく、3段階以上に切換えるものでもよいし、無段階に容量を調整するものであっても本発明が適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…クレーン装置、70…ウインチ、72…ウインチモータ、72a…斜板角変更レバー、80…油圧供給装置、81…PTO機構、82…第1油圧ポンプ、83…バッテリ、84…電動モータ、85…第2油圧ポンプ、86…コントロールバルブユニット、87…作動油回路、88…操作シリンダ、89…コントロールバルブ、90…コントローラ、91…操作入力部、92…過負荷防止装置、E…エンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力で駆動可能な電動油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動するウインチ駆動用の油圧モータと、を備えたクレーン装置において、
油圧ポンプは、作動油の吐出量が可変に設けられ、
油圧モータは、油圧ポンプの所定の作動油の吐出量に対して回転数が可変に設けられた可変容量形の油圧モータである
ことを特徴とするクレーン装置。
【請求項2】
エンジンの動力で駆動可能なエンジン油圧ポンプと、
油圧モータの回転数の設定を切換える回転数切換手段と、
エンジン油圧ポンプによって油圧モータを駆動させる場合に回転数切換手段によって油圧モータの回転数の設定を回転数が小さくなる方向に切換える設定切換手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
ウインチによって吊り上げる吊荷の荷重を検出する荷重検出手段と、
荷重検出手段によって検出された荷重に応じて油圧ポンプの回転数および油圧モータの回転数を切換える巻き上げ速度切換手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載のクレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75760(P2013−75760A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218171(P2011−218171)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】