説明

クロスフロー膜濾過による酸化物ナノ粒子の分別方法

【課題】金属酸化物ナノ粒子の分散液の分別のための方法であって、技術水準の欠点、特に膜上での成層の形成を克服し、従って大工業的な規模においてもナノ粒子の分級を可能とする方法を提供する。
【解決手段】酸化物ナノ粒子の分散液の分別のための方法において、少なくとも1つの方法工程が膜式クロスフロー濾過工程であり、その際、該分散液による膜の越流が被動回転部材によって生ずることを特徴とする方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜濾過による酸化物ナノ粒子の分散液の分別方法に関する。更に、本発明は、本発明による方法により得られる酸化物ナノ粒子の分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ナノスケールの粒子、つまり1μm未満の直径を有する粒子への関心は、学術的な側面からも工業的な側面からも増え続けている。それというのも、ナノ粒子は、その特性に基づき、例えばエレクトロニクス、オプティクスおける用途に関して、かつ化学生産において大きな潜在力があると見なされているからである。その際に、特に関心が持たれているのは、直径が100nm未満の範囲にある粒子である。ここでは、通常、いわゆる"ナノ効果"、例えば量子効果が生じ、その効果は、とりわけ大きな粒子表面の影響を原因とすることがある。加えて、前記の粒子の場合には、光散乱は、"ナノ複合材"の透明性の増大を観察できるほどずっと低下し、その際、記載される粒子は、その特性の改善のために、しばしばプラスチックもしくは塗料からなるマトリクス中に包埋される。
【0003】
しかしながら、複合材中でのナノ粒子の使用に重要なことは、球形の粒子が、一方では凝集せず、他方では狭いサイズ分布で存在することである。粗大粒子もしくは凝集物の少ない割合によって既に、該複合材の特性は悪影響を受けることがある。特に、これは透明性について当てはまる。しばしば、ナノ粒子は、その都度のマトリクスに適合させるために変性され、これは、より良好な分散と、それによる凝集物形成の抑制をもたらすことが望ましい。
【0004】
ナノ粒子の合成は、種々の方法に従って行うことができる。気相合成の他に、溶液中で作業することができ、その際、テンプレートも使用される。他の可能性は、粗大粒子の粉砕にある。前記のアプローチは、それが分子前駆物質から合成するよりも廉価である点で優れている。
【0005】
分子前駆物質からの粒子の合成でも、粉砕の場合でも、常に、1つのサイズ分布を有する生成物が得られる。マイクロメーター範囲の粒子の場合には、粗大粒子の分離は、沈殿、遠心分離もしくはスクリーン濾過によって達成できる一方で、これらの方法は、ナノ粒子の場合には制限されてのみ利用できるに過ぎない。ナノ粒子が分散液中に存在する場合に、粗大粒子の分離は、可能性的には、沈殿もしくは遠心分離によって行うことができるが、その際、ここでは極端な表面要求と時間要求並びに断続的なプロセス操作は、この方法が実践的にほとんど重要となり得ないため不利である。同様に、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)もしくはゲル電気泳動などの方法は、より多くの量にとっては適していない。
【0006】
多くの用途のために、金属酸化物からなるナノ粒子は、例えばUV保護されたポリマー複合材もしくは蛍光性材料の製造のために関心がもたれている(Journal of Nanoscience and Nanotechnology,2006,6,409−413)。従って、工業的な実施のためには、酸化物ナノ粒子の分別のために、連続的に作業する容易に実施されるべき方法を提供することが役に立つ。この目的のために膜濾過法を使用することは、たびたび提案されている。その際、膜での分離は、粒子と膜との間の特定の相互作用によって影響されることを考慮すべきである。
【0007】
一般に、粒子を、例えば粒径などの予め決まった基準に従って分離するためには、しばしば濾過技術が使用される。ここでは、一般に、"デッドエンド濾過"が"回分"法として使用され、又は"クロスフロー濾過"が動的法として使用される。デッドエンド濾過の場合に、濾過されるべき全量が濾過材に直接的に導かれ、その際、選別された粒子は、濾過の成果を決定的に左右するケークを構成しうる。従って、こでは、濾過の成果は、濾過材の特性の他に、とりわけ形成され、かつプロセス時間とともに変化する濾過ケークによって決定される。それに応じて、ケークを形成する濾過は、粒子分散液の分級のためには使用することができない。デッドエンド法に従って作業される深層濾過だけが、分離されるべき粒子が濾過材の構造中に侵入し、そして該濾過材の内表面への粒子の付着に基づき分離することによって、限界において、分級濾過をすることができる。前記方法の限界は、非常に希釈された分散液しか処理できず、分級作用が高い当然の不鮮明さを有し、それによって、多量の目的生成物も濾過材中に付着したままとなり、それとともに失われるということにある。
【0008】
クロスフロー濾過の場合には、濾過されるべき媒体は、濾過材に接して横流で通過する。濾過材の細孔サイズは、その際、排除限界を決定する。重要な使用は、精密濾過、限外濾過並びにナノ濾過である。
【0009】
クロスフロー濾過(Querstromfiltration)は、ここで前記の慣用の濾過に対して濾過材に接して流れることによって、デッドエンド濾過法の欠点を回避しようとする。その際、供給流は、濾過材を通った濾過流と、濾過材と平行な越流(Ueberstroemung)とに分けられる。膜工学においては、膜を流過した流れは、透過液として呼称される。膜上に残留する材料は、濃縮液として呼称される。この流動操作によって、残留した成分を濾過材の表面から濃縮液流へと逆輸送することが可能となる。従って、濾過材上での堆積と成層(Deckschicht)の形成に対抗される。
【0010】
Advanced Materials 2005,17(5),532−535において、金属性のナノ粒子の分別のために膜式クロスフロー濾過の技術がどのように用いられるべきかが記載されている。そのためには、ナノスケールの溝を含む特別な膜が製造される。その試みは、最小の研究室規模で実施されており、工業的規模への転用については示唆されていない。酸化物ナノ粒子の分別のために必要な膜については、その細孔径に関しても、その組成に関しても全く明言されていない。更に、ナノ粒子の従来の膜での分級は不可能であると認められている。
【0011】
Journal of Membrane Science 2006,284,361−372においては、二酸化ケイ素−ナノ粒子の分散液の膜式クロスフロー濾過が記載されている。しかしながら、ここでは分別の可能性について明記されておらず、むしろ、ここではナノ粒子から形成される、分別を不可能にする動的な成層の形成のための調査を問題としている。
【0012】
Bokela(カールスルーエ在)社は、スクリーン濾過システム(Dynofilter)を販売している。前記システムによって、動的スクリーン濾過を用いて、粗大粒成分を10μmまで粒子分散液から分離できる。前記のシステムで膜を使用する可能性については、何も知られていない。
【0013】
Langmuir 1997,13,1820−1826は、永久表面荷電を有するポリマー粒子の膜濾過についての調査を記載している。ここでは、ナノ粒子の拘束は、表面荷電の効果的な導入によって改善される。分級効果については、何ら述べられていない。
【0014】
Anal.Chem.2006,78,8105−8112においては、有機コロイドがクロスフロー限外濾過によって水溶液からどのように分離されるかが詳述されている。その際に、ナノ粒子は、99%より多くが膜上に拘束される。
【0015】
US2004/0067485号A1は、亜鉛及びカドミウムを基礎とし、元素S、Se及びTeと組み合わされたナノスケールの半導体の合成であって、その際、タンパク質をテンプレートとして使用するものを記載している。生成する、例えば硫化亜鉛/アポフェリチンからなる複合体をデッドエンド膜濾過によって分別できることが示されており、その際、使用される膜の細孔の直径は、粒子の直径よりも大きい。膜材料の多くの選択肢が挙げられているが、濾過法の例は挙げられていない。この方法によっては、濾過ケークが形成される分別ナノ粒子濾過は工業的規模で実施できない。それにより、提案された方法は、不可欠な頻繁なフィルタ交換が容易に可能な研究室規模でのみ実施できるに留まる。
【0016】
WO2006/116798号A1は、金属のテクネチウムを基礎とする放射活性のナノ粒子の製造であって、デッドエンド法での膜濾過プロセスを経るものを記載している。その際、親水性の膜が使用される。従ってここでも、デッドエンド法に従って作業され、これによって、既にナノ粒子の凝集が少なく、ほぼ完全な全ての粒子の膜への堆積がもたらされる。従って、ここで提案されるナノ粒子分別のための方法は、非常に低いナノ粒子濃度でのみ、かつ研究室規模で実施できるに過ぎない。
【0017】
技術水準によれば、工業的規模で使用可能な膜方法であって、主にナノ粒子を含有するが、より粗大な粒子も含有する粒子分散液から微細分を分級分離できる方法は知られていない。全ての技術水準による方法は、膜表面上に成層を形成するので、分離は可能であるものの、分散液からナノ粒子を分級することは可能ではない。
【特許文献1】US2004/0067485号A1
【特許文献2】WO2006/116798号A1
【非特許文献1】Journal of Nanoscience and Nanotechnology,2006,6,409−413
【非特許文献2】Advanced Materials 2005,17(5),532−535
【非特許文献3】Journal of Membrane Science 2006,284,361−372
【非特許文献4】Langmuir 1997,13,1820−1826
【非特許文献5】Anal.Chem.2006,78,8105−8112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の課題は、金属酸化物ナノ粒子の分散液の分別のための方法であって、技術水準の欠点、特に膜上での成層の形成を克服し、従って大工業的な規模においてもナノ粒子の分級を可能とする方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題は、酸化物ナノ粒子の分散液の分別のための方法において、少なくとも1つの方法工程が膜式クロスフロー濾過工程であり、その際、該分散液による膜の越流が被動回転部材によって生ずることを特徴とする方法によって解決される。
【0020】
驚くべきことに、本発明による方法によって、膜上での成層の形成が回避され、そして酸化物ナノ粒子の分散液の分別が可能となることが判明した。
【0021】
本発明による方法は、交差回転(Cross−rotation)(CR)原理に従って稼働する濾過ユニットを用いて行われる。それは、濾過材に平行な剪断力と流動とが運動する内部取付物によってもたらされる濾過装置である。それは、濾過材自体であってもよい(例えば回転膜)。かかる濾過装置の考えられる実施態様は、交差回転フィルタである。クロスフロー濾過に対して、交差回転濾過の場合には、越流は、付加的なロータの使用によって、供給及び圧力発生と切り離して、実施される。典型的なCRフィルタの場合には、濾材とロータとはサンドイッチ状に上下重なり合って積層される。前記の積層の中央には、ロータを駆動するシャフトが回転し、それによって明らかに6m/sより大きい平均的な、すなわち空間的に全濾過材にわたって平均的な越流速度を達成することができる。供給された媒体は、積層板を通じて層別に導かれる。積層板の各区分において、段階的に媒体の濃縮が行われる。供給(ポンプによる)と膜の越流(ロータによる)との切り離しによって、低いシステム圧力でも高い比濾液流量が達成される。回転する内部取付物を有する前記システムは、従って、非常に小さい粒子もしくは粘着性の物質を分離し、かつ非常に高濃縮せねばならないところで使用される。
【0022】
精密濾過、限外濾過並びにナノ濾過は、圧力駆動型の膜方法にも該当する。膜とは、一般に、2つの流体層の間に障壁を形成し、かつ両方の側の間で選択的な物質交換を可能にする平坦な構造物を指す。それに応じて、膜は、規定された分離限界を有し、あるいは一定のサイズの粒子を駆動力(圧力)の存在で拘束する濾過材である。駆動力の種類並びに膜における圧力と流量との比率は、その性質と組み合わさって、分離成果を決める。種々のクラスへの合成膜の分類は、その構造と、凝集状態と、電気化学的挙動をもとに行われる。ここで使用される意味範囲における膜は、細孔径10μmまでを有する細孔を有する。より大きな細孔径の場合には、篩いと言われる。
【0023】
膜としては、あらゆる慣用の膜を使用できる。例えばポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホンもしくはセルロースからなる膜が使用される。対称膜、すなわち全断面にわたって一定の細孔径を有する膜が好ましい。本発明により使用される膜は、10μmまでの、好ましくは0.01〜5μmの、特に好ましくは0.1〜1μmの細孔径を有する。
【0024】
本発明による方法において生ずる平均越流速度は、5〜25m/s、好ましくは少なくとも8m/s、特に好ましくは少なくとも10m/sである。前記の条件は、濾過されるべき媒体と膜との間の相対速度として内部取付物(例えば撹拌機)の回転によって実現される。平均越流速度は、全濾過材にわたる速度の測定と、引き続いての平均値形成によって決定される。その際、前記の越流速度を圧力発生と切り離すことが特に好ましく、それによって上述の高いクロスフロー速度が低い膜間圧力(1バール未満)で達成される。かかる条件下では、成層形成は、ほぼ完全に回避することができる。補足的に、透過液もしくは液体(例えば水)又は液体混合物(例えば水と圧縮空気)で周期的に逆洗することによって、成層形成に対抗することができる。
【0025】
本発明による方法の意味範囲でのナノ粒子としては、任意の金属酸化物の粒子を使用できる。金属酸化物は、例えば火炎熱分解、沈降法もしくはゾル・ゲル法によって製造することができる。金属酸化物は、2つ以上の異なる金属から誘導される混合酸化物であってもよい。好ましいものは、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、チタン酸バリウム又はこれらの成分を含有する混合酸化物からなるナノ粒子である。更に、分散液中には、複数の異なる金属酸化物が混合物として存在してもよい。金属酸化物ナノ粒子の分散液を、液相中での粉砕によって製造することは、例えばDE10204470号A1に記載されるように実施できる。液体ジェットを高圧下で互いに射流させ、衝突させ、そしてその結果、そこに含まれる被粉砕物を粉砕して、分散させる原理は、ウェットジェットミル(wet−jet−milling)とも呼称される。かかる分散液は、製造条件によって、非対称の粒度分布を有する。分散液を製造するための更なる方法は、例えば、ジェットミル、撹拌ボールミル、超音波分散装置、ロータ・ステータ装置、ウルトラ・ツラックス(Ultra−Turrax)、遊星型ニーダ/ミキサもしくは高圧ホモジネータを場合により組み合わせて使用することである。ここで得られる分散液は、対称的な粒度分布を有してよく、同様に本発明による方法のために適している。
【0026】
前記の方法の範囲内で使用される分散液は、例えば金属酸化物から直接的に合成で、又は予め乾燥された同じ金属酸化物の固体含分の再分散によって得ることができる。分散過程の前に、又はその間にも、例えば分散助剤を添加してよく、pH値を調整してよく、又は金属酸化物の化学的表面変性(例えば反応性シラン化合物もしくは粒子に静電的に結合する化合物の使用によって)を実施してよい。そのことは、金属酸化物の再分散を実施する場合についても言える。分散液の液状成分としては、水、水系液体、有機液体もしくはイオン性液体、又は上述の物質群の複数の代表物の混合物もしくは異なる物質群の代表物の混合物を使用することができる。液体は、溶液であってもよい。
【0027】
付加的に、分散液の液状成分において、さらに、溶解されたもしくは十分に微分散された成分、例えば安定剤、抑制剤、劣化防止剤、殺生剤、着色物質、耐電防止剤、塩、界面活性物質もしくは腐蝕防止剤が存在していてもよい。
【0028】
本発明による方法の特定の一実施態様においては、膜式クロスフロー濾過工程と、前接続された粉砕プロセスとは、分離された粗大物(濃縮液)が粉砕プロセスに戻され、そして微細物(透過液1)が該プロセスから排出されるように接続されている。透過液1は、引き続き場合により分離工程あるいは濃縮工程を通じて、例えば限外濾過によってより高い固体含有率にされるが、一方で、濃縮時に得られる実質的にナノ粒子を含まず、以下に清澄流(Klarlauf)と呼称される透過液2又は透過液2に相当する濃縮物は、"洗浄水"として、プロセス中に、すなわち前記の濾過工程に返送される。しかしながら、外部から"洗浄水"を添加してもよい。好ましい一実施態様においては、濾過工程の濃縮液は、ダイアフィルトレーションによって洗浄される。その際、濃縮液には、古い"洗浄水"が完全に膜を介して交換され、かつ濃縮液中に存在する残りのナノ粒子が膜によって透過液中に移るまで、連続的に新たな"洗浄水"が供給される。他の可能性は、粉砕法への逆配量である。好ましい一実施態様においては、全プロセスは連続的に行われる。
【0029】
図1は、可能なプロセス操作の基本フロー図を示している。
【0030】
微細分を分散液から十分に分離するために、付加的な"洗浄水"を場合により分散剤と組み合わせて使用することが必要となることがある。水もしくは"洗浄水"という概念の代わりに、一般に、液体という概念を用いることもできる。それというのも、水及び水系液体の他に、液状有機化合物もしくはイオン性液体も該当するからである。該液体は、同じ物質クラスの複数の物質の混合物又は上述の液体の群からの代表物の混合物であってもよい。それらは、ナノ粒子分散液の基礎を成すことができるし、"洗浄水"としても利用することもできる。
【0031】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に説明するが、その保護範囲は実施例により制限されるものではない。
【実施例】
【0032】
以下の試験は、水中の二酸化チタンの30%分散液で実施した。前記分散液は、DE10204470号A1に記載される方法によって製造できる。使用される分散液は、約0.09μmのD50値並びに約0.2μmのD90値を有する。すなわち、粒子の50%が0.9μm以下の粒径を有し、かつ粒子の90%が、0.2μm以下の粒径を有する。
【0033】
Millipore社製の以下の市販の膜を使用した:
試験1: 細孔径1μmを有するポリテトラフルオロエチレン製の膜
試験2: 細孔径0.45μmを有するポリテトラフルオロエチレン製の膜
試験3: 細孔径0.2μmを有するポリテトラフルオロエチレン製の膜
撹拌機回転数は、それぞれ毎分1264回転であった。それは、約9m/sの平均越流速度に相当する。
【0034】
粒度分布は、分別前(四角い測定点を有する測定列)と分別後(丸い測定点を有する測定列)にそれぞれ測定した(図2)。
【0035】
試験番号3の分散液から、付加的に、2つの異なる解像度で走査型電子顕微鏡写真を撮影した(デテクタUHR,高電圧10kVあるいは20kV)(図3)。
【0036】
試験1〜3の結果は、本発明による方法によって、使用される分散液の粒度分布が、分別実施後に100nm以上の粒径を有する粒子が分散液中に含まれなくなるほどより小さい粒度にシフトすることを明らかにしている。この結果は、純粋に定性的にも、走査型電子顕微鏡写真によって支持される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明による可能なプロセス操作の基本フロー図を示している。
【図2】図2は、実施例における分別前と分別後のそれぞれの粒度分布を示している。
【図3】図3は、試験番号3の分散液から、2つの異なる解像度で撮影した走査型電子顕微鏡写真を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物ナノ粒子の分散液の分別のための方法において、少なくとも1つの方法工程が膜式クロスフロー濾過工程であり、その際、該分散液による膜の越流が被動回転部材によって生ずることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、分散液を膜上で直接的に撹拌することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、濾過工程において、濾材として、0.01μm〜5μmの細孔径を有する膜を使用することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、濾過工程において、濾材として、0.1μm〜1μmの細孔径を有する膜を使用することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程を、膜上での分散液の平均越流速度5〜25m/sで行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程を、膜上での分散液の平均越流速度少なくとも8m/sで行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程を、膜上での分散液の平均越流速度少なくとも10m/sで行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、酸化物ナノ粒子が、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、チタン酸バリウム又はこれらの成分を含有する混合酸化物からなる粒子であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程に引き続いて、粉砕を行う少なくとも1つの方法工程を行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、粉砕を、ボールミル、撹拌ボールミルもしくはウェットジェットミルによって行うことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程の濃縮液を、ダイアフィルトレーションを介して洗浄することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程の濃縮液を、粉砕工程に返送することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程の濾液を、更なる分離工程において濃縮することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、後続の分離工程が限外濾過工程であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13から14までのいずれか1項に記載の方法において、他の分離工程の清澄流を、先の濾過工程に返送することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法において、濾過工程を、膜の周期的な逆洗をしつつ行うことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法において、出発分散液を、膜式クロスフロー濾過工程の前に希釈することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法によって得られる酸化物ナノ粒子の分散液。
【請求項19】
請求項18に記載の分散液であって、ナノ粒子の少なくとも50%が、80nm以下の粒径を有することを特徴とする分散液。
【請求項20】
請求項18に記載の分散液であって、ナノ粒子の少なくとも50%が、50nm以下の粒径を有することを特徴とする分散液。
【請求項21】
請求項18に記載の分散液であって、ナノ粒子の少なくとも50%が、30nm以下の粒径を有することを特徴とする分散液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−119461(P2009−119461A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292893(P2008−292893)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】