説明

クロロプレンゴム組成物

【課題】接着剤を作製する際に相分離を起こさないクロロプレンゴム組成物を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩を含有するクロロプレンゴムを含むクロロプレンゴム組成物であって、(a)当該エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量(重量%)及び(b)ロジン酸類の含有量(重量%)が、(a)=50.0、(b)=0、(b)=5.3、(a)=0.014(b)+0.01で囲まれる領域にあることを特徴とするクロロプレンゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロロプレンゴム溶剤系接着剤を作製した場合に接着剤が不均一化し上下相に分離(以下相分離という)を生ずる傾向の極めて少ないクロロプレンゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴム溶剤系接着剤の製造法は公知であり、実用上要求される接着性能、加工性を満足させるためにクロロプレンゴムと金属酸化物、粘着付与樹脂、老化防止剤、充填剤等の添加剤を有機溶剤に含有したものである。これは、有機溶剤と有機溶剤に溶解する成分と不溶成分を含む分散物であり、従来のクロロプレンゴムで接着剤を作製して放置すると分散物が凝集して分離する相分離現象が起こることがある。相分離を起こした接着剤は、その商品価値を失ってしまう。
【0003】
そのため、これまでに相分離の問題を解決する多くの方法が提案されている。例えば、特許文献1には相分離性を改善する方法として特定比率のロジン酸、不飽和脂肪酸等の存在下にて乳化重合して得られるクロロプレンゴム組成物が示されている。
【0004】
しかしながら、クロロプレンゴム溶剤系接着剤に好適なベンゼン、トルエン、キシレンに代表されるBTX溶剤の使用が制限されてきたことから、相分離の発生が頻発するようになっている。
【0005】
また、特許文献2には一般的なクロロプレンゴム溶剤系接着剤について、相分離性、初期接着力、耐熱接着力の点からp−t−ブチルフェノールを用いた熱反応性アルキルフェノール樹脂をトルエン等の有機溶剤溶液中に酸化マグネシウムを添加して予めキレート化合物を調整したものの使用が開示されている。
【0006】
しかしながら、接着剤を作製する際の有機溶剤組成によりなお相分離が発生する様な問題点が存在する。
【0007】
【特許文献1】特公昭49−32783号公報
【特許文献2】特開平7−126593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでに提案された方法では、接着剤を作製する際の有機溶媒組成により相分離が発生する問題点が存在するものであり、相分離を起こさない新たなクロロプレンゴム組成物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のクロロプレンゴム組成物をクロロプレンゴム溶剤系接着剤に使用した場合に、相分離の傾向が極めて少ないことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩を含有するクロロプレンゴムを含むクロロプレンゴム組成物であって、(a)当該エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量(重量%)及び(b)ロジン酸類の含有量(重量%)が、(a)=50.0、(b)=0、(b)=5.3、(a)=0.014(b)+0.01で囲まれる領域にあることを特徴とするクロロプレンゴム組成物である。
【0011】
【化1】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基を表し、Xは水素原子、カリウム、ナトリウム、第四級アンモニウムを表し、Yは水素原子、低級アルキル基、ハロゲン原子、水酸基を表す。また、nは0〜4の整数である。)
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のクロロプレンゴム組成物は、一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩を含有するクロロプレンゴムを含むものである。
【0013】
本発明のクロロプレンゴム組成物におけるクロロプレンゴムは、クロロプレン、クロロプレンと共重合可能な単量体、エチレン性不飽和二重結合を有するスルホン酸又はその誘導体、1−クロロブタジエン、2,3-ジクロロブタジエン、2−シアノブタジエン、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等の通常モノマーを重合することにより得られるものである。本発明のクロロプレンゴム組成物におけるクロロプレンゴムの含有量は特に限定するものではないが、クロロプレンゴムとしての性状を維持するために50〜99.99重量部が好ましい。
【0014】
本発明のクロロプレンゴム組成物におけるクロロプレンゴムに含有する下記一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸は、ビニルスルホン酸又はその誘導体、スチレンスルホン酸又はその誘導体等が挙げられ、例えば、ビニルスルホン酸又はその誘導体としては、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、4−スルホブチルメタクリル酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アクリルアミド含有スルホン酸等が挙げられ、スチレンスルホン酸又はその誘導体としては、p−スチレンスルホン酸、α−メチル−p−スチレンスルホン酸、o−クロル−p−スチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0015】
【化2】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基を表し、Xは水素原子、カリウム、ナトリウム、第四級アンモニウムを表し、Yは水素原子、低級アルキル基、ハロゲン原子、水酸基を表す。また、nは0〜4の整数である。)
一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸の塩としては、エチレン性不飽和スルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、第四級アミン塩、ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.01〜50.0重量%であることが必要である。共重合量が0.01重量%未満では、溶剤型接着剤への相分離安定性が付与できなくなる。また、50重量%を超えると、溶剤型接着剤に必要な接着性能が得られなくなる。その共重合量は0.01〜3.0重量%が好ましい。
【0017】
本発明のクロロプレンゴム組成物においては、ロジン酸類は含有しても良く、含有しなくても良い。ただし、ロジン酸類の含有量は、クロロプレンゴム組成物に対して0〜5.3重量%であることが必要である。含有量が5.3重量%を超えると、溶剤型接着剤への相分離安定性が付与できなくなる。相分離安定性をより付与するためには、その含有量は0〜5.0重量%が好ましい。ここに、ロジン酸類とは、天然物であるロジン酸や不均化反応によって得られる不均化ロジン酸、不均化ロジン酸のナトリウム塩、不均化ロジン酸のカリウム塩等が挙げられる。不均化ロジン酸の構成成分としては、例えば、セスキテルペン、8,5−イソピマル酸、ジヒドロピマル酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、デイソプロピルデヒドロアビエチン酸、デメチルデヒドロアビエチン酸などが挙げられる。
【0018】
本発明のクロロプレンゴム組成物は、(a)下記一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量(重量%)及び(b)ロジン酸類の含有量(重量%)が、(a)=50.0、(b)=0、(b)=5.3、(a)=0.014(b)+0.01で囲まれる領域にあるものである。
【0019】
【化3】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基を表し、Xは水素原子、カリウム、ナトリウム、第四級アンモニウムを表し、Yは水素原子、低級アルキル基、ハロゲン原子、水酸基を表す。また、nは0〜4の整数である。)
ここに、(a)=50.0、(b)=0、(b)=5.3、(a)=0.014(b)+0.01で囲まれる領域を図に示すと図1のようになる。(a)一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量(重量%)及び(b)ロジン酸類の含有量(重量%)が当該領域にないと、相分離の発生という問題が生ずる。
【0020】
本発明のクロロプレンゴム組成物は、その効果を具備する限り、上記したロジン酸類以外の添加剤を含有しても良い。例えば、通常の重合に使用される副資材である乳化剤や重合触媒、重合停止剤等が挙げられる。
【0021】
本発明のクロロプレンゴム組成物の製造について、以下に説明する。
【0022】
本発明のクロロプレンゴム組成物は、乳化重合、溶液重合等により製造できるものである。
【0023】
本発明においてクロロプレンゴム組成物の乳化重合には、クロロプレンとエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩の単量体とが用いられる。または、エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩以外のクロロプレンと共重合可能な単量体とが用いられる。エチレン性不飽和スルホン酸としては、ビニルスルホン酸又はその誘導体、スチレンスルホン酸又はその誘導体、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、α−メチル−p−スチレンスルホン酸、o−クロル−p−スチレンスルホン酸、4−スルホブチルメタクリル酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アクリルアミド含有スルホン酸等が挙げられ、その塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、第四級アミン塩、ナトリウム等が挙げられる。その量は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜10重量部の範囲で使用することができる。また、本発明に用いられるエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩以外のクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロブタジエン、1−クロロブタジエン、2−シアノブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルアクリレート等が挙げられる。これら単量体は、通常、全単量体組成に対して50重量部までの範囲で用いられる。
【0024】
本発明において乳化重合に用いられる乳化剤は、ロジン酸類又はロジン酸類の金属塩が挙げられる。また、ロジン酸類又はロジン酸類の金属塩と、乳化剤として一般的に用いられるアニオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤との併用が可能である。アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸、樹脂酸、長鎖アルキルスルホン酸、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物及びそれらの金属塩等が、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどである。これらの乳化剤は、0.1〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部の範囲で使用できる。
【0025】
本発明においてクロロプレンゴムの分子量調節に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエエチルキサントゲンジスルフィド、イオウ等が一種以上用いられる。
【0026】
本発明において重合を開始するために用いられるラジカル開始剤は、クロロプレンとエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩及びクロロプレンと共重合可能な単量体の重合に用いられるラジカル開始剤の何れも使用できる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アスコルビン酸等が用いられる。これらは単独又は硫酸第一鉄、ハイドロサルファイトナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、有機アミン等の還元性物質を併用したレドックス系で使用してもかまわない。
【0027】
重合は溶剤系接着剤用のクロロプレンゴムとしての性状を確保するために0〜100℃、好ましくは5〜60℃の温度において触媒液を添加して行われる。
【0028】
重合は重合転化率50〜95%程度まで行われ、ついで通常の重合禁止剤、例えば、チオジフェニルアミン、4−t−ブチルカテコール、ヒドロキシルアミン、2,2’−メチレンビス−4−メチル−6−t−フェノールなどを重合体に対して0.01〜20重量部加えて停止させる。
【0029】
50〜90%の転化率に達したときに停止剤を加えて重合を停止させる。未反応の単量体は水蒸気蒸留、高温での真空処理などの方法により除去する。クロロプレンゴム組成物は、公知の方法、例えば、凍結可能な温度へ冷却したドラム上で凝固させることにより分離後に乾燥することにより得られる。
【0030】
得られたクロロプレンゴム組成物を用いてアルキルフェノール樹脂に代表される粘着付与樹脂、金属酸化物、酸化防止剤、無機充填剤等を有機溶剤に溶解・分散することにより、溶剤系接着剤を製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明のクロロプレンゴム組成物は、そのクロロプレンゴム組成物を用いて製造された接着剤において相分離を起こさないという効果を有するものである。
【実施例】
【0032】
本発明を以下に実施例によって例示するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
<エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量(重量%)の算出方法>
エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量(重量%)は、重合後にラテックス中に残存する未反応のエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩の単量体及び重合体を以下の方法で定量し、仕込み量からの差し引きにより算出する。
【0034】
定量方法はラテックスにNaClを添加することによりポリマーを塩析分離し、乾燥後にクロロホルムで溶解して苛性水溶液で該未反応化合物を抽出し定量を行う。
【0035】
濃度0.1〜50mg/lの該化合物の水溶液を調整し、HPLC測定で検量線を作製する。抽出液1mlを蓋付きサンプル瓶に量り取り、15%NaCl水溶液を加えて10分間振とう後、試料を遠心分離して水層を適宜希釈してHPLC測定により検量する。
【0036】
水層以外の遠心分離残さを乾燥し、クロロホルムで再度溶解し、溶解液に0.2NNaOHを適量加え、10分間振とう後、遠心分離を行い水層を水で適宜希釈してHPLC測定を行い、1回目の定量値に加え、未反応化合物量とした。
【0037】
<ロジン酸類の含有量(重量%)の定量方法>
ロジン酸類の含有量(重量%)は、クロロプレンゴム組成物を分離乾燥し、15gを2mm角に裁断し、ソックスレー抽出器にてアセトンで抽出を行い、濃縮乾固後、エタノール中でジアゾメタンによりメチルエステル化させ、ガスクロマトグラムにて、DB−5(0.25mm、30m)、温度150℃〜300℃へ5℃/分の昇温条件にて定量した。
【0038】
<相分離の評価方法>
クロロプレンゴム溶剤系接着剤は、表1に示す配合割合で作製し、接着剤をガラス瓶に入れて常温にて静置する。相分離を目視により検査して分離の有無を調べた。
【0039】
【表1】

実施例1
重合は10L容積の攪拌機及びジャケット付きステンレス製重合器中で行った。窒素気流中で蒸留水90重量部、乳化剤として不均化ロジン酸カリウム塩4.6重量部とナフタレンスルホン酸ナトリウム塩のホルマリン縮合物1重量部とクロロプレン100重量部、p−スチレンスルホン酸ナトリウム0.42重量部、水酸化ナトリウム0.25重量部、n−ドデシルメルカプタン0.5重量部を攪拌混合した。40℃に調節後に開始剤として過硫酸カリウム0.1重量部を添加して重合を開始させ、転化率70%に達した時点でパラ−ターシャリーブチルカテコールを加えて重合を停止させた。
【0040】
停止剤添加後に減圧下で水蒸気蒸留によりエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩以外の単量体を回収してラテックスを得た。ラテックスの一部は前出の方法によりエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量を算出した結果、0.086重量%であった。残りのラテックスは酢酸によりpH8へ調整後に−15℃で凍結凝固して水洗し、乾燥を行いクロロプレンゴム組成物を得た。得られた組成物は前出の方法によりロジン酸類の含有量は5.26重量%であった。得られたクロロプレンゴム組成物を用いて溶剤系接着剤を作製した。アルキルフェノール樹脂(昭和高分子社製CKM−1634)40重量部と酸化マグネシウム4重量部及び水0.4重量部をメチルシクロヘキサン80重量部に加え、室温で24時間攪拌してキレート樹脂溶液を作製した。クロロプレンゴム組成物100重量部に酸化マグネシウム4重量部、酸化亜鉛2重量部にキレート樹脂溶液124.4重量部、n−ヘキサン160重量部、酢酸エチル80重量部、アセトン80重量部を加え,室温で24時間攪拌、溶解してクロロプレンゴム溶剤系接着剤を作製し、相分離安定性の評価を行った。得られた接着剤は3ヶ月の静置でも分離は無く良好な相分離安定性を示した。これらの結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

実施例2
不均化ロジン酸カリウム塩の量が3.6重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.35重量部である以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.072重量%で、ロジン酸類の含有量は4.11重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0042】
実施例3
不均化ロジン酸カリウム塩2重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.25重量部であること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.051重量%で、ロジン酸類の含有量は2.29重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0043】
実施例4
不均化ロジン酸カリウム塩1重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.09重量部であることと凍結凝固後の水洗量を多くすること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.018重量%で、ロジン酸類の含有量は0.53重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0044】
実施例5
p−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.05重量部であることと凍結凝固後の水洗・乾燥後に組成物をクロロホルムに溶解し、メタノールを加えて析出分離すること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.010重量%で、ロジン酸類の含有量は0重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0045】
実施例6
p−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が8重量部であること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、1.635重量%で、ロジン酸類の含有量は5.24重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0046】
実施例7
不均化ロジン酸カリウム塩3.0重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.5重量部である以外は実施例5に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.102重量%で、ロジン酸類の含有量は3.43重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0047】
実施例8
不均化ロジン酸カリウム塩3.0重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が6.0重量部である以外は実施例5に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、1.226重量%で、ロジン酸類の含有量は3.40重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0048】
実施例9
不均化ロジン酸カリウム塩3.0重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が10重量部である以外は実施例5に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、2.044重量%で、ロジン酸類の含有量は3.44重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0049】
実施例10
不均化ロジン酸カリウム塩1重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が10重量部であることと凍結凝固後の水洗・乾燥後に組成物をクロロホルムに溶解し、メタノールを加えて析出分離すること以外は実施例5に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、1.971重量%で、ロジン酸類の含有量は0重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0050】
実施例11
不均化ロジン酸カリウム塩4.6重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が4.0重量部であることと転化率を75%にしたこと以外は実施例5に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.818重量%で、ロジン酸類の含有量は4.91重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。これらの結果を表2に示す。
【0051】
比較例1
p−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.38重量部である以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.078重量%で、ロジン酸類の含有量は5.20重量%であった。溶剤系接着剤は、1ヶ月で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

比較例2
不均化ロジン酸カリウム塩2.5重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.2重量部であること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.041重量%で、ロジン酸類の含有量は2.86重量%であった。溶剤系接着剤は、1ヶ月で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0053】
比較例3
不均化ロジン酸カリウム塩1.0重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.08重量部であることと凍結凝固後の水洗量を多くすること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.016重量%で、ロジン酸類の含有量は0.6重量%であった。溶剤系接着剤は、1ヶ月で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0054】
比較例4
不均化ロジン酸カリウム塩5.5重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.4重量部であること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.818重量%で、ロジン酸類の含有量は6.28重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。溶剤系接着剤は、10日で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0055】
比較例5
不均化ロジン酸カリウム塩5.3重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が1.25重量部であること以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.256重量%で、ロジン酸類の含有量は6.06重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。溶剤系接着剤は、10日で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0056】
比較例6
不均化ロジン酸カリウム塩4.5重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が10重量部であることと転化率を65%にしたこと以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、2.044重量%で、ロジン酸類の含有量は6.06重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。溶剤系接着剤は、10日で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0057】
比較例7
不均化ロジン酸カリウム塩5.5重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.25重量部であることと転化率を60%にしたこと以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.050重量%で、ロジン酸類の含有量は7.33重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。溶剤系接着剤は、10日で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0058】
比較例8
不均化ロジン酸カリウム塩3.0重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が0.25重量部であることと転化率を60%にしたこと以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、0.052重量%で、ロジン酸類の含有量は4.01重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。溶剤系接着剤は、10日で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【0059】
比較例9
不均化ロジン酸カリウム塩5.5重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウムの量が6.0重量部であることと転化率を75%にしたこと以外は実施例1に示した方法で実施した。エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量は、1.226重量%で、ロジン酸類の含有量は5.87重量%であった。溶剤系接着剤の相分離安定性は実施例1と同様に良好な結果であった。溶剤系接着剤は、1ヶ月で相分離を発生した。これらの結果を表3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のクロロプレンゴム組成物における(a)クロロプレンゴムへの共重合量(重量%)及び(b)ロジン酸類の含有量(重量%)の領域を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)から一般式(6)のいずれかで表されるエチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩を含有するクロロプレンゴムを含むクロロプレンゴム組成物であって、(a)当該エチレン性不飽和スルホン酸及び/又はその塩のクロロプレンゴムへの共重合量(重量%)及び(b)ロジン酸類の含有量(重量%)が、(a)=50.0、(b)=0、(b)=5.3、(a)=0.014(b)+0.01で囲まれる領域にあることを特徴とするクロロプレンゴム組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基を表し、Xは水素原子、カリウム、ナトリウム、第四級アンモニウムを表し、Yは水素原子、低級アルキル基、ハロゲン原子、水酸基を表す。また、nは0〜4の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載のクロロプレンゴム組成物を含有することを特徴とする接着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−177198(P2007−177198A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97058(P2006−97058)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】