説明

クロロプレンラテックス、その製造方法及びその用途

【課題】 クロロプレンラテックスにおいて、保管中の分子量変化を最小限に抑え、ゲル分を発生させないことで、接着剤として用いた場合に良好な接着物性を安定して示すクロロプレンラテックスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 分子中にカルボキシル基を有さず、pH調整剤、並びにスルホン酸塩及び/又は硫酸塩からなる乳化・分散剤を含み、かつ、25℃におけるラテックスのpHが3.0〜11.0であることを特徴とするクロロプレンラテックス、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間保存してもポリマー物性が安定であるクロロプレンラテックスに関するものである。なお、本発明における長期間とは、10℃の冷蔵保管においては2年以上、23℃の常温保管における5ヶ月以上を指す。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴム等をベースとした溶剤系接着剤は、その良好な作業性や接着物性から各種用途に用いられてきた。しかし、使用される有機溶剤は地球環境や作業者の健康に悪影響を与え、時には作業場の火災等を引き起こす危険性を有している。そのため、脱溶剤の要求が高まっている。
【0003】
脱溶剤化の手法の一つとして、ラテックス系接着剤による代替が考えられている。クロロプレンラテックスとしては各種の方法が知られている(例えば特許文献1〜特許文献4参照)。
【0004】
しかし、特許文献1,特許文献2に示されるように、ロジン酸の金属塩からなるを乳化剤を用いた場合、クロロプレンゴムの保管中における脱塩酸や、接着剤配合する為のpHの低下によりラテックスの安定性が低下し、ゴムが析出するなどの問題が生じる。
【0005】
また、特許文献3,特許文献4に示されるように、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を用いた場合、その保護コロイド性から優れたラテックスの安定性を示す一方で、期待される接着物性が得られず、特に耐水性が低くなる。
【0006】
また、高分子量化によりポリマーがゲル分を含有すると、耐熱強度が向上する反面粘着保持時間が短くなるなど、接着剤のコンタクト性を阻害してしまう。
【0007】
この問題を解決する方法の1つとして、クロロホルムに溶解した際に不溶部であるゲル分を含まないクロロプレン系共重合体ラテックスおよびそれを用いた接着剤組成物が知られている(例えば、特許文献5,非特許文献1)。
【0008】
しかし、クロロプレンゴムは保管中に徐々に脱塩酸し、ラテックスのpH低下および分子量増加によるゲル化が生じる事が知られている。そのため、ゲル分不含により物性を向上させる場合には、保管中に分子量が安定でゲル分が発生しないことが必須と考えられる。
【0009】
【特許文献1】特公昭51−39262号公報
【特許文献2】特開2001−49043号公報
【特許文献3】特開平6−287360号公報
【特許文献4】特開平11−335491号公報
【特許文献5】特開平8−218044号公報
【非特許文献1】JETI Vol.44 No.12(88頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クロロプレンラテックスにおいて、保管中の分子量変化を最小限に抑え、ゲル分を発生させないことで、接着剤として用いた場合に良好な接着物性を安定して示すクロロプレンラテックスおよびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、クロロプレンラテックスのpHを一定範囲とすることで、保管中の分子量変化を抑えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、pH調整剤、並びにスルホン酸塩及び/又は硫酸塩からなるアニオン系乳化・分散剤を含むことにより、25℃におけるpHが3.0〜11.0であることを特徴とするクロロプレンラテックス、その製造方法及びそれを含有することを特徴とした接着剤組成物である。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のクロロプレンラテックスは、分子中にカルボキシル基を有さず、pH調整剤、並びにスルホン酸塩及び/又は硫酸塩からなる乳化・分散剤を含み、かつ、25℃におけるpHが3.0〜11.0であることを特徴とする。
【0014】
クロロプレンラテックスとは、2−クロロ−1,3−ブタジエンであるクロロプレンの単量体を重合して得られたラテックスであり、また、クロロプレンの単量体と、クロロプレンと共重合可能な他の単量体のうちのカルボキシル基を含有しないものを重合して得られたラテックスである。クロロプレンと共重合可能なその他の単量体のうち、カルボキシル基を含有しないものとしては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート等があり、これらをクロロプレン100重量部に対し、20重量部以下で用いることが好ましい。
【0015】
pH調整剤としては特に種類や量を限定するものではなく、例えば、酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、しゅう酸、リンゴ酸、クエン酸、アミノ酸などがあげられ、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがあげられる。また、アミノ酸のような両性電解質の使用も可能である。なかでも、取り扱いの安全性およびpH調整の容易さから、弱酸、弱塩基が好ましい。ここに、弱酸とはpKaが2以上のもの(例えば、リン酸、ギ酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸等があげられる)をいい、弱塩基とはpKbが2以上のもの(例えば、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等があげられる)をいう。酸の解離定数Kaは、電離水溶液中における酸の電離平衡の平衡定数であり、強い酸ほどその値は大きい。pKaはKaの負の常用対数値であり、強い酸ほど小さくなる。同様にpKbは電離水溶液中における塩基の解離定数Kbの負の常用対数値であり、強い塩基ほどpKbは小さくなる。なお、pH調整剤の2種類以上の組み合わせでも良い。更には、保管中のpH安定化のため、pH調整剤として、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどpH緩衝作用のある物質を用いることが好ましく、中でも酢酸アンモニウムが好ましい。
【0016】
スルホン酸塩及び/又は硫酸塩からなる乳化・分散剤としては、一般的に乳化重合に用いるものであれば特に限定するものではなく、例えば、デカンスルホン酸塩,ラウリルスルホン酸塩,ステアリルスルホン酸塩などの炭素数が10〜20のアルカンスルホン酸塩、ラウリルベンゼンスルホン酸塩,ステアリルベンゼンスルホン酸塩などの炭素数が10〜20のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸塩,ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸塩などの炭素数が10〜20のアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ブチルナフタレンスルホン酸塩,ラウリルナフタレンスルホン酸塩などの炭素数が4〜20のアルキルナフタレンスルホン酸塩などがあげられ、硫酸塩からなるアニオン系乳化・分散剤は、例えば、ラウリル硫酸塩,ステアリル硫酸塩などの炭素数が10〜20のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸塩などの炭素数が10〜20のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などがあげられる。塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどがあげられる。これらの中でも、重合安定性の面からアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のナトリウムをクロロプレン100重量部に対し0.5〜10重量部用いるのが好ましい。また、スルホン酸塩からなるアニオン系乳化・分散剤と硫酸塩からなるアニオン系乳化・分散剤の両方を含有しても良い。
【0017】
本発明のクロロプレンラテックスは、ラテックスの安定性確保のために、さらに安定剤を含有することが好ましい。この安定剤としては、例えば、エチレンスルホン酸およびその化合物、スチレンスルホン酸およびその化合物、ナフタレンスルホン酸およびその化合物などがあげられ、なかでも重合時のラテックス安定性の面からナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合物が好ましい。
【0018】
本発明のクロロプレンラテックスは、25℃におけるpHが3.0〜11.0である。3.0未満のpHではポリマーの安定性が悪くゲル分が発生し、11.0を超えるpHでは保管中にゴムが析出する。
【0019】
クロロプレンラテックスの重合方法としては特に制限のあるものではなく、クロロプレン単量体、又はクロロプレン単量体とカルボキシル基を含有しないビニル単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体をラジカル乳化重合すればよい。乳化重合は、特に限定するものではなく、上記の単量体、pH調整剤、および乳化・分散剤を、重合開始剤、連鎖移動剤等と共に乳化し、所定温度にて行い、所定の転化率で重合停止剤を添加すればよい。
【0020】
重合開始剤としては、公知のフリーラジカル性物質、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、過酸化水素、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等を用いることができる。また、これらは単独又は還元性物質、例えば、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、有機アミン等との併用レドックス系で用いても良い。
【0021】
連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン、ハロゲン炭化水素、アルキルキサントゲンジスルフィド、硫黄等の分子量調節剤等があげられ、これらのうち、臭気及び作業性の面からn−ドデシルメルカプタンが好ましく、その使用量は0.1〜3.0重量部が好ましく、0.2〜1.0重量部が更に好ましい。
【0022】
重合温度は特に限定するものではなく、0〜80℃の範囲で行うことができ、好ましくは10〜50℃の範囲である。
【0023】
重合終了時期は特に限定するものでないが、生産性、および良好な接着物性を得るため単量体の転化率が60〜100%まで重合を行うことが好ましい。
【0024】
重合停止剤としては、通常用いられる停止剤であれば特に限定するものでなく、例えば、フェノチアジン、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒドロキシルアミン等が使用できる。
【0025】
重合終了時のラテックスのpHは、pH調整剤の添加量により調節する。pH調整剤の添加のタイミングは特に限定するものではなく、重合開始前から重合終了後まで任意のタイミングで添加することができる。
【0026】
また、ラテックスの安定性を更に良好にするため、重合中、および重合終了後に上記の乳化・分散剤のうち1種類以上を追加添加しても良い。
【0027】
本発明のクロロプレンラテックスを含有する接着剤は、単独でも接着剤として使用可能であるが、粘着付与樹脂や架橋剤を添加することで接着物性が向上する。
【0028】
粘着付与樹脂としては特に限定するものではなく、例えば、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系炭化水素等があげられ、例えば、重合ロジン、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、アルキルフェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール、水添ロジン、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、石油樹脂、クマロン樹脂等が使用される。
【0029】
架橋剤としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、エポキシ樹脂、ポリアジリジン化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート化合物等が使用でき、クロロプレンゴムラテックスに均一に混合できれば用いることができる。
【0030】
クロロプレンゴムラテックスを主成分とする接着剤の粘度は、各種増粘剤、例えば、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、疎水化セルロース、会合型ノニオン界面活性剤等の水溶性ポリマー、及びカルボキシル基含有ポリマーから構成されるアルカリ可溶型の増粘剤、ヘクトライト等のシリケート化合物等の配合により所望の粘度に調整できる。また必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、凍結防止剤、造膜助剤、可塑剤、クレー等の各種充填剤を適宜配合しても良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明のクロロプレンラテックスは、長期間の保管において分子量の上昇が少なく、その結果、これを含有する接着剤組成物は安定した接着物性を示すものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における保管期間は、10℃2年に相当する促進条件として、50℃における8日間の保管とした。また、ラテックスのpH、機械的安定性、配合安定性、ポリマーの溶液粘度、接着剤配合物の常温剥離強度、耐熱剥離強度は以下の方法で測定した。
【0033】
<pH>
pHメーター((株)堀場製作所製)により測定した。
【0034】
<機械的安定性>
マーロン試験法により、ゴム凝固率を測定した。
【0035】
<ポリマーのゲル分および溶液粘度>
ラテックスを流延してゴムフィルムを作製し、真空乾燥機において24時間以上経過後に秤量をし、その後8時間おきに秤量を実施。重量変化が1%以下となるまで乾燥した。その後、そのゴムを重量換算で1%の濃度となるようにトルエンに溶解し、ボールミルにて16時間混合・溶解し、得られた溶液を100メッシュの金網にてろ過、トルエンにて洗浄後、残渣を170℃で10分乾燥し、その重量と溶解したゴムの重量の比をゲル分とした。またゲル分同様にそのゴムを重量換算で10%の濃度となるようにトルエンに溶解し、その粘度をB型粘度計を用いて測定した。測定は、試料容器をを23℃の恒温槽に1時間浸漬した後に、No.2ローターを用いて60rpmで測定し、60秒後の値を用いた。
【0036】
<配合安定性>
接着剤配合時のゴム析出有無を観察した。
【0037】
<常温剥離強度>
9号帆布(150mm×25mm)2枚それぞれの片面に接着剤を約690g/m塗布し、23℃にて60分間乾燥した後にハンドローラーを用いて圧着を行い測定用の試験片とし、テンシロン型引っ張り試験機を用いて180°常温剥離強度を23℃の雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で行った。圧着後すぐに剥離強度の測定をしたものを初期強度、試験片を23℃の雰囲気にて7日間養生し、剥離強度を測定したものを7日後強度とした。
【0038】
<耐熱剥離強度>
常温剥離強度測定と同様の手順で試験片を作製し、ハンドローラーで圧着後23℃で7日間養生した後、高温雰囲気下における180°剥離強度の測定を行った。測定は80℃の雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で行った。
【0039】
実施例1
表1で示した重量部のクロロプレン、n−ドデシルメルカプタン、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(商品名:ペレックスSS−H、花王(株)製)、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物(商品名:デモールN、花王(株))、ハイドロサルファイトナトリウム、および純水を攪拌機付き10Lオートクレーブ中40℃で重合を行い、クロロプレンラテックスを作製した。重合は窒素雰囲気下で0.35重量%の過硫酸カリウム水溶液を連続的に滴下して行い、重合転化率が97%以上となった時点で重合停止剤を加え反応を停止した。その後、pH調整剤としてラテックス100重量部に対し0.1重量部の酢酸アンモニウムを加えた後に、30%酢酸を25重量部添加して25℃におけるpHが5.0であるラテックスAを得た。
【0040】
ラテックスAの一部を容器に入れ、50℃雰囲気で8日間保管し、保管前後のラテックスのpH、機械的安定性、ポリマーのゲル分、および溶液粘度を測定した。また、保管前後のラテックスそれぞれに対し、樹脂エマルジョン、金属酸化物、増粘剤を配合して接着剤組成物を作製し、その配合安定性、常温剥離強度、および耐熱剥離強度を測定した。配合を表2に、結果を表3に示す。表3の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは3.1であり、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好で、ゲル分の発生は無く、常温剥離強度、耐熱剥離強度共に良好な値であった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

実施例2
pH調整剤としてラテックス100重量部に対し0.1重量部の酢酸アンモニウムを加えた後に、トリエタノールアミン0.8重量部を添加して25℃におけるpHが8.3であるラテックスBを得た以外は実施例1に従ってラテックスおよび試験片を作製し、評価を実施した。表3の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは7.9であり、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好で、ゲル分の発生は無く、常温剥離強度、耐熱剥離強度共に良好な値であった。
【0044】
実施例3
pH調整剤としてラテックス100重量部に対し1.0重量部の酢酸アンモニウムを加え25℃におけるpHが7.1のラテックスCを得た以外は実施例1に従ってラテックスおよび試験片を作製し、評価を実施した。表3の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは6.9であり、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好で、ゲル分の発生は無く、常温剥離強度、耐熱剥離強度共に良好な値であった。
【0045】
実施例4
pH調整剤としてラテックス100重量部に対し0.1重量部の酢酸アンモニウムを加えた後に、5%水酸化ナトリウム水溶液1.5重量部を添加して25℃におけるpHが8.6であるラテックスDを得た以外は実施例1に従ってラテックスおよび試験片を作製し、評価を実施した。表3の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは5.1で、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好であり、ゲル分の発生は無く、常温剥離強度、耐熱剥離強度共に良好な値であった。
【0046】
実施例5
pH調整剤としてラテックス100重量部に対し0.1重量部の酢酸アンモニウムを加えた後に、5%水酸化ナトリウム水溶液4重量部を添加して25℃におけるpHが11.0であるラテックスEを得た以外は実施例1に従ってラテックスおよび試験片を作製し、評価を実施した。表3の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは6.0で、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好であり、ゲル分の発生は無く、常温剥離強度、耐熱剥離強度共に良好な値であった。
【0047】
実施例6
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムを4重量部用いて重合を行った以外は実施例1に従ってラテックスFおよび試験片を作製し、評価を実施した。表3の結果より、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好であり、ゲル分の発生は無く、常温剥離強度、耐熱剥離強度共に良好な値であった。
【0048】
実施例7
乳化・分散剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名:ネオペレックスG−15、花王(株)製)を6重量部用いてラテックスGを得た以外は、実施例1に従って評価を実施した。表3の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは3.0であり、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好で、ゲル分の発生は無く、常温剥離強度、耐熱剥離強度共に良好な値であった。
【0049】
比較例1
実施例1と同様の方法で重合を行い、その後、pH調整剤を添加しないで、25℃におけるpHが6.9であるラテックスaを得た以外は実施例1に従って評価を実施した。結果を表4に示す。表4の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは1.7で、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好であるが、ゲル分が発生し、初期常温剥離強度も低くなった。
【0050】
【表4】

比較例2
実施例1と同様の方法で重合を行い、その後、pH調整剤として5%塩酸を7.5重量部添加し、25℃におけるpHが2.5であるラテックスbを得た以外は実施例1に従って評価を実施した。表4の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは1.3で、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好であるが、ゲル分が発生し、初期常温剥離強度も低くなった。
【0051】
比較例3
pH調整剤として5%水酸化ナトリウム水溶液6重量部を添加し、25℃おけるpHが13.0であるラテックスcを得た以外は、実施例1に従って評価を実施した。表4の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは12.9で、50℃保管の前後共にラテックスの機械的安定性および配合安定性は良好であるが、ゲル分が発生し、初期常温剥離強度も低くなった。
【0052】
比較例4
実施例1におけるアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムを不均化ロジン酸カリウムに変更し、n−ドデシルメルカプタン量を変更した以外は同様に重合を実施し、5%水酸化ナトリウム水溶液2重量部を添加して25℃におけるpHが11.0であるラテックスdを得た後、実施例1に従って評価を実施した。表4の結果より、保管終了時の25℃におけるpHは7.0であった。50℃保管後はラテックスの機械的安定性および配合安定性が悪くゴムが析出し、ゲル分が発生した。また、配合不能により、接着物性は測定できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にカルボキシル基を有さず、pH調整剤、並びにスルホン酸塩及び/又は硫酸塩からなる乳化・分散剤を含み、かつ、25℃におけるラテックスのpHが3.0〜11.0であることを特徴とするクロロプレンラテックス。
【請求項2】
スルホン酸塩及び/又は硫酸塩からなる乳化・分散剤の存在下でクロロプレン単量体単独で重合又はクロロプレン単量体とクロロプレンと共重合可能な他の単量体のうちカルボキシル基を含有しないものを共重合する際に、pH調整剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
【請求項3】
pH調整剤としてpH緩衝作用のある物質を用いることを特徴とする請求項2に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のクロロプレンラテックスを含有することを特徴とする接着剤組成物。

【公開番号】特開2008−195886(P2008−195886A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34746(P2007−34746)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】