説明

クローズドインペラ

【目的】本発明は、簡易な構造であって強度が確保され、且つ、インペラ内の流体の流れを阻害することなく、効率を低下させないようにすること。
【構成】 裁頭円錐状のフロントプレート1と、複数放射方向に延びる単位羽根板21の一端面を羽根先端面21aとして形成した羽根2とを備えていること。羽根2及びフロントプレート1はガラス繊維等が含有する合成樹脂材からなること。この表面1bと羽根先端面21aとが接触されて適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させることで、その表面1bと羽根先端面21aとの溶融樹脂によって溶着部50が形成される。溶着部50は基材質よりガラス繊維等の含有量が少なくなって形成され、これが羽根2側面に膨出した膨出溶着部pが形成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維等が含有する合成樹脂材の羽根及びフロントプレートから成るクローズドインペラに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の羽根と側板に超音波を与えて加熱軟化させ、軟化した材料を羽根部側端面と後面シュラウド側面間に介在させて一体に溶着することが特許文献1(特開昭53−54301号)に開示されている。羽根の根元とベースとなる後面シュラウドとの溶着部は、強度を確保する必要があるため、溶着部を構成する軟化した軟化材料も多くなって厚肉化し、且つ、はみ出しが大きくなることから、前記はみ出し内には多くの軟化材料(溶融樹脂)と共にガラス繊維が流動することになって、そのはみ出しは強く硬いものとなる。その結果、はみ出しの加工や除去することが困難であった。
【0003】
そのようなことから、大きなはみ出しがそのまま残ることになって、インペラ下面の流路の平滑さを損ないインペラ内の流動抵抗が大きくなり、効率を低下させる不具合があった。また、前記はみ出しを小さくしようと羽根部と後面シュラウド間に介在される軟化材料の厚さを変化させる押圧力、超音波の強さの条件を規制しようとしても、これらを厳格に規制することは困難であり、工程管理が面倒となって量産することが難しいという不具合があった。その不具合を解消するために、羽根と後面シュラウドの溶着部面に溝等を形成して、羽根部に側端縁からはみ出しが形成されないようにしたものが特許文献1(特開昭53−54301号)に開示されている。
【0004】
しかし、溶着時に溝との位置あわせ、溝の挿入などの工程管理が面倒となる不具合が生ずる。このようなことから複雑な工程管理を必要としない平面同士によって溶着部を形成し、インペラの効率を低下させないという課題を解決することが困難であった。言い換えると、羽根とシュラウドとを超音波等によって溶着部の強度を確保しつつ、且つ工程管理が面倒になることなく容易な構造でインペラの効率を低下させないクローズドインペラ(構造)とすることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−54301号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、簡易な構造であって強度が確保され、且つ、インペラ内の流体の流れを阻害することなく、効率を低下させないクローズドインペラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、裁頭円錐状のフロントプレートと、複数放射方向に延びる単位羽根板の一端面を羽根先端面として形成した羽根とを備え、該羽根及び前記フロントプレートはガラス繊維等が含有する合成樹脂材からなり、前記フロントプレートの表面と前記羽根先端面とが接触されて適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させることで、前記フロントプレート表面と前記羽根の羽根先端面との溶融樹脂によって溶着部が形成され、該溶着部は前記羽根及び前記フロントプレートよりガラス繊維等の含有量が少なくなって形成され、該ガラス繊維等の含有量が少ない溶着部から前記羽根側面に膨出した膨出溶着部が形成され、該膨出溶着部の表面に前記円錐状のフロントプレート及び前記羽根先端面の円錐状傾斜方向且つ羽根放射方向に沿って滑らかな連続表面が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決した。
【0008】
請求項2の発明を、請求項1において前記膨出溶着部の表面は、ショットブラストにより前記円錐状のフロントプレート及び前記羽根先端面の円錐状傾斜方向且つ羽根放射方向に沿って滑らかな連続表面が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1において、前記羽根先端面の幅方向の側縁部に溜り用欠肉部が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明において、フロントプレートと羽根とからなるクローズドインペラを簡単な構造で製造することができ、且つ、フロントプレートと羽根先端とを簡単に溶着して製造することができる。特に、振動溶着の一つである超音波溶着法などにて簡単に製造できる。また、容易に相互部材の接合部を溶融して固着可能にすると共に該相互部材間の接合部に隙間が生じることなく密着状態となる構造によりクローズドインペラ内流路における接合部の密閉性が確保されるのでインペラ効率を向上させることができ、且つ、何らの接着剤を使用しないことから環境に優れた構造とすることができる利点がある。さらに、形成されたインペラ内の流路を滑らかな連続表面にすることができることにより効率を低下させないクローズドインペラとすることができる。
【0010】
請求項2の発明では、膨出溶着部からのバリ状突起部を簡単に除去できると共に前記円錐状フロントプレート及び前記羽根先端面の円錐状傾斜方向且つ羽根先端の放射方向に沿って滑らかな連続表面を容易に形成することができるので、クローズドインペラ内の流路を良好な状態にすることができる。請求項3の発明では、溜り用欠肉部には膨出溶着部の膨出肉部が溜まり膨出溶着部が羽根面より膨出することが少なくでき、円錐状フロントプレートと羽根先端との溶着部を確保しつつ、羽根面に対して膨出溶着部の連続表面をより滑らかな流路に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)はウォーターポンプのハウジングの壁面と本発明との関係を示す要部断面図、(B)はY1−Y1矢視拡大断面図、(C)は(B)の(ア)部拡大断面図、(D)は(C)の(イ)部の拡大断面図である。
【図2】(A)は単位羽根板とフロントプレートとを溶着させる状態の要部断面図、(B)は(A)の(ウ)部拡大断面図、(C)は単位羽根板とフロントプレートとの溶着過程における要部拡大断面図、(D)は単位羽根板とフロントプレートとが溶着完了した要部拡大断面図である。
【図3】(A)はベースプレート付き羽根に溶着完了した断面図、(B)は(A)のX1−X1矢視拡大断面図である。
【図4】(A)は(C)のベースプレート付き羽根とフロントプレートとを溶着した直後の一部拡大断面図、(B)は(C)のベースプレート付き羽根とフロントプレートとを溶着した直後のY2−Y2矢視拡大断面図、(C)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとを溶着した直後のクローズドインペラの断面図、(D)は(C)のクローズドインペラ状態にショットブラスト処理した直後のクローズドインペラの断面図、(E)は(A)の状態と対照的にショットブラスト処理した直後の一部拡大断面図、(F)は(B)の状態と対照的にショットブラスト処理した直後のY3―Y3矢視拡大断面図である。
【図5】(A)は単位羽根板の両側に形成された膨出溶着部の張出し部の張出し状態を示す平面図、(B)は(A)の平面図から単位羽根板を直線状(曲線有り)として膨出溶着部の張出し部が模式的に形成された平面図、(C)乃至(E)は単位羽根板を直線状として膨出溶着部の張出し部が模式的に形成された他の張出し状態を示す実施例の平面図である。
【図6】(A)は単位羽根板の先端に溜り用欠肉部を形成した断面図、(B)は(A)を溶着した直後の断面図、(C)は(B)の状態後にショットブラスト処理した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。1はフロントプレートであって、裁頭円錐状(ラッパ形状)の環状板である。断面的に見ると、軸方向に対して、先端側が窄まる凸をなし、外周に行くほど高さが低くなり、中心に円形孔1aの開いた円(輪)板である。厚みは適宜選択され、0.数mm乃至数mmのもの、例えば、約1乃至2mm内外で、材質は、ガラス繊維等が含有する硬質の合成樹脂材である。第1実施形態では、任意の円錐の頂部を切除した扁平ラッパ形状の環状板なるフロントプレート1である。つまり、第1実施形態では円錐形タイプとして説明する。該フロントプレート1の円錐面の表面1b〔図3(A)において円錐面内側〕の仮想頂点箇所の円錐頂角(立体角ともいう)をφとする〔図3(A)参照〕。
【0013】
2は羽根であって、該羽根2の根元側に円板なるベースプレート3が一体形成されている。このような部材をベースプレート3付き羽根2と称する。前記羽根2は、筒状のボス部22の外周に複数の単位羽根板21,21,・・の基部が一体形成されている。前記ボス部22は、中心部に貫通孔が形成された金属製のボス部本体22aと、該ボス部本体22aに対して外周側の厚肉部22bから構成されている。該厚肉部22bは、前記単位羽根板21の根元と、前記ベースプレート3の中心部とが一体となるように形成されている。つまり、金属製のボス部本体22aを除く羽根2と前記ベースプレート3とは同一材質のガラス繊維等が含有する硬質の合成樹脂材にて構成されている。該ベースプレート3と前記羽根2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)などの熱可塑性樹脂に、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維を含有された合成樹脂材で形成されることが好ましい。
【0014】
前記単位羽根板21において、前記ベースプレート3の固着側の反対側は〔図3(A)において先端側〕羽根先端面21aとして、前記フロントプレート1の形状に対応した形状であって、円錐面の一部となっている。詳述すると、前記羽根2を構成する複数の単位羽根板21,21,・・の羽根先端面21a,21a,・・は、前記フロントプレート1の表面1bの円錐頂角φと同一の円錐頂角φとなるような円錐面の一部として構成されている。
【0015】
さらに、前記フロントプレート1及び単位羽根板21の素材断面としてみると、同一のガラス繊維等が含有する硬質の合成樹脂材でありながら、図1(C)に示すように、それぞれの表層部(約10μm〜数十μm)にはガラス繊維等が存在しない合成樹脂が形成されており、その下側(表層下)には、ガラス繊維等が存在している合成樹脂が存在していることが実験的に判明している。また、前記フロントプレート1及び単位羽根板21も、同一材質でありながら、別々に成形することから、ガラス繊維等が含有する量が若干変化することもあるため、各部を材料部として表示する。
【0016】
そこで、前記単位羽根板21の表層下のa部は、ガラス繊維が適宜含有された合成樹脂、その表層のb部は、合成樹脂又はガラス繊維等が殆ど無い合成樹脂として構成され、前記フロントプレート1の表層下のc部は、ガラス繊維等が適宜含有された合成樹脂、その表層のd部は、合成樹脂又はガラス繊維等が殆ど無い合成樹脂として構成されている。前記フロントプレート1及び単位羽根板21なる製品において、表層に合成樹脂のみ(ガラス繊維等が存在しない、又は殆ど無い部位)が形成されることは、射出成形の成形型において、溶融樹脂のガラス繊維等は流速の速い中心部を流動し、表層は合成樹脂又はガラス繊維等が殆ど無い合成樹脂の層となる特性がある。特に、図1及び2の拡大断面図において、点、点とした印は、ガラス繊維等を表し、その点が無い前記表層部b,dのところは、合成樹脂又はガラス繊維等が殆ど無い合成樹脂を表している。
【0017】
前記フロントプレート1の表面と前記羽根先端面21aとが接触されて適宜な加圧力が加えられつつ〔図2(A)及び(B)参照〕、温度が上がるようなエネルギーが与えられて、前記フロントプレート1の表面と前記羽根2の羽根先端面21aとが溶着される。この溶着(超音波溶着)について詳述する。前記フロントプレート1の表面と前記羽根先端面21aとが接合する部分に超音波溶着させる場合、まずは前記単位羽根板21の表層部bと、前記フロントプレート1の表層部dとが溶融する。そして、単位羽根板21の表層下部aと、前記フロントプレート1の表層下部cとが溶融する。
【0018】
超音波溶着時に掛かる圧力(押圧力)によって、まずは表層部b,d(合成樹脂、又はガラス繊維等が殆ど無い合成樹脂)が溶融して〔図2(C)参照〕、さらに表層下部a,c(ガラス繊維等が適宜含有された合成樹脂)が溶融して成る溶融樹脂は溶着部50として構成され、両者間の結合材となる。該溶着部50の溶融樹脂において最初に溶融された前記表層部b,d(ガラス繊維等の殆ど無い合成樹脂)は前記単位羽根板21の側面側に流動すると共に、その後、溶融された表層下部a,c(ガラス繊維等が適宜含有された合成樹脂)の流動によって、膨出溶着部Pが形成される。
【0019】
すなわち、前記溶着部50は、単位羽根板21とフロントプレート1とを結合する溶着部qと単位羽根板21の側面側とフロントプレート1との間に亘る膨出溶着部Pとから成る。そして、該膨出溶着部Pは、合成樹脂部の割合が、表層下部a,c(ガラス繊維等が適宜含有された合成樹脂)と比較して多い状態となっている。つまり、前記膨出溶着部Pは、合成樹脂部に対してのガラス繊維等の割合が少ない状態にある。該膨出溶着部Pは、起伏状等の張出し部Paとバリ状突起部Pbとから構成されている。
【0020】
以上の説明は、溶融又は溶着について詳述したが、構造について説明する。本発明では、円錐状に傾斜した立体角φを有する羽根先端面21aと円錐状の立体角φを有するフロントプレート1との溶着部から溶融された合成樹脂等が前記単位羽根板21の側面側から膨出されて膨出溶着部Pが形成されている。これは、前記各円錐状面を有する羽根先端面21aと前記フロントプレート1との接合された円錐状面(極緩やかな曲面で、立体角φ)から押し流されて形成される。前記膨出溶着部Pは、前記フロントプレート1と接合した羽根先端面21aの側縁において筋交的に羽根2とフロントプレート1の両部材に接合されている。筋交なるがゆえに、インペラの剛性を高め、強固にできる。
【0021】
前記膨出溶着部Pは、羽根先端面21aとフロントプレート1との接合された円錐状面の曲面(立体角φ)を流動して張出し部Paとして形成され、更にその表面に薄肉状片のバリ状突起部Pbが形成されている。この膨出溶着部Pは、傾斜した各羽根先端面21aとフロントプレート1との溶着部から羽根先端面21aの側端縁外方に形成されることにより、各羽根先端面21aとフロントプレート1との溶着接合面が拡大され相互部材間の溶着部をより強固にできる。
【0022】
また、前記膨出溶着部Pは前記フロントプレート1側では羽根2の厚さ方向に大きくなって、各羽根先端面21a側では該先端面の側端縁を囲むように羽根面(側面)へ食み出して張出し部Paとして形成され、前記フロントプレート1に対する各羽根先端面21aを保持固定する役目がある。このように形成された膨出溶着部Pの表面において、起伏状等の張出し部Paとバリ状突起部Pbが任意形成される。それらをショットブラストによりバリ状突起部Pbを除去すると共に起伏状等の張出し部Paをフロントプレート1の円錐状方向且つ円錐状に傾斜した羽根先端面21aの傾斜且つ放射方向に沿って滑らかな連続表面を形成する。
【0023】
また、膨出溶着部Pの表面におけるバリ状突起部Pbの除去痕が残った場合でも、除去痕は円錐状の傾斜方向且つ羽根2の単位羽根板21の放射方向に沿った滑らかな連続表面に形成される。滑らかな連続表面は、起伏状等の張出し部Paを平滑にすることだけではなく、起伏状等の張出し部Paにおいて凹凸の角部を羽根先端面21aの傾斜方向且つ放射方向に曲線状にして滑らかな起伏状等の張出し部Pa形状とすることが含まれる。すなわち、各羽根先端面21aの単位羽根板21の厚さ方向の端縁側に膨出した膨出溶着部Pの表面には、羽根先端面21aの傾斜且つ放射方向に沿ってバリ状突起Pbや起伏状の張出し部Paを平滑又は曲線状に滑らかな連続表面が形成される。
【0024】
クローズドインペラ内の流体が羽根2とフロントプレート1との溶着部より膨出した膨出溶着部Pにおいて滑らかに流れる流路となるように、該流路の一部を構成する膨出溶着部Pの表面が円錐状傾斜且つ羽根放射の方向に平滑状面又は起伏状等の曲面からなる滑らかな連続表面に形成されている。前記滑らかな連続表面を有する前記膨出溶着部Pが設けられることによりフロントプレート1と各羽根先端面21aとの溶着により形成されたクローズドインペラ内の流路において、流体の流れ方向に滑らかに流動させることができ、インペラ効率の低下を防ぐことができる。
【0025】
また、前記滑らかな連続表面を有する膨出溶着部を設けるクローズドインペラ構造としたことで、前記膨出溶着部Pを小さくしようとする厳格な規制や面倒な工程管理が必要なくなり、生産を容易にすることができる。すなわち、量産性を高めることができる。羽根2の単位羽根板21の先端部とフロントプレート1とを溶着させることで、羽根2の根元とベースプレート3とを溶着させた溶着部(従来技術)より強度確保が容易となり溶着部が薄肉化できる。つまり、溶着部が薄肉化されることで、溶融樹脂を生成する際にガラス繊維等を適宜含有している合成樹脂よりガラス繊維等が少ない状態の合成樹脂を膨出溶着部Pに設けることができる。そのため、膨出溶着部の表面が加工し易くなることから、ショットブラストにより膨出溶着部Pの表面形成を容易にすることができるようになる。即ち、ショットブラストにより膨出溶着部の表面に発生したバリ状突起部を除去すると共に、該表面の粗い起伏、凸凹などをフロントプレート及び羽根の径方向(円錐状傾斜方向)且つ羽根放射方向に沿って滑らかな連続表面を容易に形成することができる。
【0026】
図5(A)乃至(E)に示すように、前記膨出溶着部Pの張出し部Paは、羽根先端面21aの放射方向又は幅方向において膨出する大きさが異なる場合がある。例えば前記膨出溶着部Pの張出し部Pが略一様の大きさで膨出されていたり〔図5(B)及び(C)参照〕、また、図5(D)及び(E)に示すように、一様の大きさでない、大きさが異なるものがある。一様の大きさの場合は〔図5(C)参照〕、連続表面が平滑し易く、滑らかな面を形成することができる。一様の大きさでない、大きさが異なる場合は〔図5(D)及び(E)参照〕、連続表面が曲線状にし易く、滑らかな曲面を形成することができる。
【0027】
また、膨出溶着部Pの張出し部が局部的に形成されたもの、即ち、膨出溶着部の張出し部が形成されない箇所を有するものであっても膨出溶着部Pの大きさが異なるものであり、該膨出溶着部Pの張出し部がフロントプレート1及び羽根先端面21aに対して部分的に形成され、膨出溶着部Pの連続表面は、滑らかな繋ぎ面と連続表面とを形成することで、滑らかな流路が形成され、インペラの効率低下を防ぐことができる。
【0028】
前記膨出溶着部Pの張出し部は、図5(C)及び(D)に示すように、羽根先端面21aの両側面において膨出する大きさが異なるように形成されることがある。膨出溶着部Pの張出し部は羽根先端面21aの両側面において膨出する大きさが均一又は略均一であったり、均一でなく、大きさを異ならせたものがある。例えば、インペラの回転方向に対して、回転方向側(「回転前側」という。)に膨出を大きくし、それに対して回転方向と反対側(「回転後側」という。)に膨出を小さくして形成する。これは回転前側の羽根面は流体を押し流すポンプ作用面であるため、フロントプレート1と羽根先端面21aとの溶着を強固にし、且つ膨出溶着部の連続表面により滑らかな流路を形成することができる。
【0029】
また、回転前側の膨出を小さくし、それに対して回転後側の膨出を大きくして形成する。これは回転前側の羽根面は流体を押し流すポンプ作用面であるため、フロントプレート1と羽根先端面21aとの膨出溶着部Pを小さくして流路への膨出を小さく且つ連続表面をより滑らかにしつつ、その反対側(背面)における膨出溶着部Pの連続表面を滑らかな形状とし、流体の流れを円滑にでき、羽根2の背面で強固に保持することができる。
【0030】
羽根先端面の放射方向が略湾曲状に曲がっているようにすれば、適宜大きさのインペラ径に対して羽根先端面の放射方向の長さを直線的なものに比べ有効的に長くすることができ、フロントプレートとの接合面(羽根先端面の放射方向)の領域が増える(接合面積の増加)ことから、溶着部及び膨出溶着部が増えてインペラの剛性を高め、且つ、ポンプ効率を向上させることができる。
【0031】
前記膨出溶着部Pは羽根先端面21aの両側に形成された前記フロントプレート1の表面1b(円錐の内周面)との間に溜り用欠肉部(空間)20が形成され、その空間は膨出溶着部を形成する溶融樹脂の溜まり部としての役目を有する。前記溜り用欠肉部20は、羽根先端面21aを先細形状に形成する欠肉部によって羽根先端面21aと接合する前記フロントプレート1の表面1bとの間に形成される空間である。前記羽根先端面21aに形成された膨出溶着部Pの溜り用欠肉部20に、膨出溶着部Pが膨出され、その空間内に膨出溶着部Pが形成される。それにより膨出溶着部Pは、羽根2の側面より膨出する大きさを小さくすることができ、容易にインペラ内に滑らかな流路を形成することができる。
【0032】
また、膨出溶着部Pの溜まり部を形成する羽根先端面21aの先細形状に形成した欠肉部の形状は、三角形状、四角形状又は凹状、弧状形などがある。羽根先端面21aは、フロントプレート1の内周面の円錐状面、弧状円錐状面に適合した円錐状面、弧状円錐状面が形成される。羽根先端面21aとフロントプレート1の内周面とは円錐状面、弧状円錐状面とが接合され溶着部が形成されると共に、その溶着部の側面側に羽根先端面21aとフロントプレート1との間に形成された空間を膨出溶着部Pが溜まる溜り用欠肉部20として形成され、膨出溶着部Pが羽根2の側面から大きく膨出しないようにし、インペラ内の流路における突起をより小さくして、より滑らかな流路を形成することができる。さらに、インペラの効率低下をより防ぐことができる。
【0033】
ここで、適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させることで、前記フロントプレートと前記羽根先端面とを溶着する手段についてについて例を挙げる。(1)熱板溶着法、(2)振動溶着法、(3)レーザー照射溶着法、(4)高周波溶着法、(5)超音波溶着法などが挙げられる。
これらを簡単に説明すると、(1)熱板溶着法とは、両方の樹脂表面を予め高温にしておき、それ同士を押し付けることでお互いの樹脂を溶かし、溶着する手法である。
(2)振動溶着法とは、約数百Hzの振動を加えることで樹脂を溶かし溶着する方法である。
(3)レーザー照射溶着法とは、レーザー光線を溶着する箇所に当てることで樹脂を溶かし、溶着する方法である。
【0034】
(4)超音波溶着法とは、約数万Hzの音波を溶着する部材に加えることで樹脂を溶かし、溶着する方法である。この場合には、好ましくは、前記羽根先端面21a,21a,・・上に、先端面より小さな三角形状の突起が設けられる。
他にも溶着方法は存在するが、主要な溶着方法としては以上である。
【0035】
例えば、前記超音波溶着法で本発明のクローズドインペラ構造を溶着した場合、円錐状に傾斜した立体角φを有する前記フロントプレートと前記羽根2全体の単位羽根板21、21、…上面の羽根先端面21a、21a、…とを微振動にて溶着する構成にすれば、前記フロントプレート及び羽根先端面の円錐状に傾斜した平面による「調芯作用」によって中心位置を一致させて2部材を高精度に一体化することができ、且つ、前記フロントプレートと前記羽根先端面との間に形成される膨出溶着部は円錐状傾斜且つ羽根放射方向に沿った連続表面が容易に形成することができるので、剛性が高く効率の良いクローズドインペラができる。つまり、前記フロントプレート1の表面1bに、前記羽根先端面21a,21a,・・と、接合する箇所に、溝などを設けて位置決めするという必要性は、一切しなくても、微振動にて溶着する構成によって自ずと相互の中心位置を一致することができ、極めて安価に製造できる利点もある。
【0036】
前記フロントプレート1及び羽根先端面21a形状は、円錐面の一部とした内容であり、該円錐面を弧状(曲面)とした弧状円錐面にしたものがある。該弧状円錐面には、断面円弧の中間が内側に凹む形状の弧状円錐面や、断面円弧の中間が外側に膨らむ弧状円錐面などがある。
【符号の説明】
【0037】
1…フロントプレート、1b…表面、2…羽根、21…単位羽根板、
21a…羽根先端面、3…ベースプレート、20…溜り用欠肉部、50…溶着部、
q…結合溶着部、P…膨出溶着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁頭円錐状のフロントプレートと、複数放射方向に延びる単位羽根板の一端面を羽根先端面として形成した羽根とを備え、該羽根及び前記フロントプレートはガラス繊維等が含有する合成樹脂材からなり、前記フロントプレートの表面と前記羽根先端面とが接触されて適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させることで、前記フロントプレート表面と前記羽根の羽根先端面との溶融樹脂によって溶着部が形成され、該溶着部は前記羽根及び前記フロントプレートよりガラス繊維等の含有量が少なくなって形成され、該ガラス繊維等の含有量が少ない溶着部から前記羽根側面に膨出した膨出溶着部が形成され、該膨出溶着部の表面に前記円錐状のフロントプレート及び前記羽根先端面の円錐状傾斜方向且つ羽根放射方向に沿って滑らかな連続表面が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項2】
請求項1において、前記膨出溶着部の表面は、ショットブラストにより前記円錐状のフロントプレート及び前記羽根先端面の円錐状傾斜方向且つ羽根放射方向に沿って滑らかな連続表面が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項3】
請求項1において、前記羽根先端面の幅方向の側縁部に溜り用欠肉部が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−122457(P2011−122457A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278156(P2009−278156)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】