説明

クローズドインペラ

【目的】 本発明は、フロントプレートの歪み変形を防止すると共に、インペラの剛性を高めつつ、簡易な構造であって強度が確保され、且つ、インペラ内の流体の流れを阻害することなく、効率を低下させないようにすること。
【構成】 軽合金製で裁頭円錐状のフロントプレート1と、複数放射方向に延びる単位羽根板21の一端面を羽根先端面21aとして形成した合成樹脂材の羽根2とを備え、フロントプレート1の表面1bに超微細小な凹部dが無数形成され、フロントプレート1の表面1bと羽根2の一端面の羽根先端面21aとが接触され、適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させる溶着方法により羽根先端面21a箇所が溶融されて溶融樹脂がフロントプレート1の表面1bに形成された超微細小の凹部dに入り込んで溶着部50が形成されてフロントプレート1と羽根2とが固着されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板金属材料のフロントプレートと合成樹脂材の羽根及びベースプレートから成るクローズドインペラに関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーターポンプ用インペラにおいて、各ベーン部(羽根)を、薄板金属材料又は合成樹脂材料によって形成し、その各ベーン部の先端部と接続固定する環状板部(フロントプレート)が薄板金属材料又は合成樹脂材料によって形成されたものが特許文献1(特開2002−70792)に記載されている。
【0003】
その特許文献1には、薄板金属材料によって形成された各ベーン部の先端部と、薄板金属材料によって形成された環状板部とがプロジェクション溶接、スポット溶接等で接続固定することが記載されている。このような金属材料によるため、インペラの剛性を容易に高めることはできるが、インペラ重量の軽減、即ち、軽量化や、溶接による環状板部(フロントプレート)の歪み変形の低減が難しく、ポンプ効率を向上させることが困難であった。つまり、環状板部の歪み変形により、ポンプケーシング壁との間隔を広げざるを得ず、このために、ポンプ効率が低下するものである。
【0004】
また、前記ベーン部及び環状板部が合成樹脂材料によって形成された場合、各ベーン部の先端部と環状板部とを振動溶着、超音波溶着、熱板溶着等が用いられて接続固定することが記載されている。これは合成樹脂材料によるため、インペラの剛性を高めることができず、ポンプ吐出圧力による環状板部の歪み変形の低減が難しく、ポンプ効率を向上させることが困難なものとなっている。
【0005】
更に、環状板部(フロントプレート)、フランジ部、ベーン部(羽根)とを一体成形、或いはアウトモールド成形することも開示されている。これは成形工程が複雑になり製造コストが高くなり、コスト低減が著しく困難なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−70792
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、環状板部(フロントプレート)の歪み変形を防止すると共に、インペラの剛性を高めつつ、簡易な構造であって強度が確保され、且つ、インペラ内の流体の流れを阻害することなく、効率を低下させないクローズドインペラを提供することを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、軽合金製で裁頭円錐状のフロントプレートと、複数放射方向に延びる単位羽根板の一端面を羽根先端面として形成した合成樹脂材の羽根とを備え、前記フロントプレートの表面に超微細小な凹部が無数形成されてなり、前記フロントプレート表面と前記羽根一端面の羽根先端面とが接触され、適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させる溶着方法により前記羽根先端面箇所が溶融されて該溶融樹脂が前記フロントプレート表面に形成された超微細小の凹部に入り込んで溶着部が形成され前記フロントプレートと前記羽根とが固着されてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、請求項1において、前記軽合金製のフロントプレートは、アルミニウム合金としてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記軽合金製のフロントプレートは侵食性水溶液に浸漬処理による超微細小な凹部が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1又は2において、前記軽合金製のフロントプレートは、ヒドラジン水溶液に浸漬処理による超微細小な凹部が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4のいずれか1項において、前記フロントプレートの円錐頂角と前記羽根全体の単位羽根板上面の羽根先端面の仮想円錐頂角とが同等に形成されてなることを特徴とするクローズドインペラとしたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明においては、羽根先端面と前記フロントプレートとを適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させる溶着方法などにより溶融した樹脂が溶着部を形成し、その溶着部は前記フロントプレートの表面に形成された超微細小の凹部に入り込んで接合固定されていることから、インペラの強度が容易に確保することができると共に、インペラのフロントプレートの形状面精度を高めることができ、ポンプ室における吸入口付近のハウジング壁とフロントプレートとの隙間を安定させることができる最大の利点がある。これによって、当該隙間を出来る限り小さく設定することが可能となることから、ポンプ効率(ポンプ吸入効率)を高めることができる。
【0011】
さらに、フロントプレートと羽根とを適宜な加圧力を加えつつ微振動を与えてその間に生成された溶融樹脂により溶着部が形成されることから、羽根先端面とフロントプレートとを合わせて微振動を与える一工程にて容易に溶着部を形成することができるので、生産性を高めることができる。また、羽根とフロントプレートとの2部材に掛かる微振動により羽根先端面部領域に溶融樹脂が万遍無く広がって、フロントプレートとの溶着部を安定して形成することができる。さらに、溶着加工時の微振動によりフロントプレート表面の超微細小の凹部に溶融樹脂を浸透させることができるので、該凹部に樹脂がしっかりはまり込み固化することにより溶着部の接合を強固にできる。
【0012】
また、前記羽根先端面が前記フロントプレートの表面に形成された超微細小の凹部に入り込んで接合固定される溶着部の領域寸法は前記羽根先端面の厚さ寸法以上となり、フロントプレート表面に形成された超微細小の凹部に羽根先端面の溶融樹脂が羽根先端面領域から側面側にはみ出した領域(バリ)まで入り込み固化することから該羽根先端面とフロントプレートとの溶着部領域が拡大され、より強固に接合することができる。本発明では、インペラのフロントプレート1がアルミニウム合金などの軽合金材であるため、図1(A)に示すように、ハウジングの壁面4との隙間tが安定し、該隙間tを最小にすることができ、吸入効率を高め、ポンプ損失を低減し、ポンプ効率を一段と向上させ得る。さらに、フロントプレートの薄肉化が図れ、クローズドインペラ及び羽根先端側の重量軽減ができ、且つ、剛性を確保しつつインペラ容積を大きくすることができる。フロントプレートの歪み変形が低減されるので、インペラの性能特性を安定且つ良好にできる。
【0013】
請求項2の発明では、特に、フロントプレートの薄肉化が図れ、クローズドインペラ全体の重量軽減ができると共に、フロントプレートの歪み変形が低減されるので、インペラの性能特性を安定且つ良好にできる効果を奏する。請求項3の発明では、フロントプレートの軽合金材をアルミニウム合金製として該表面に形成された超微細小の凹部は、侵食性水溶液(アンモニア、水溶性アミン化合物など)に浸漬処理されたものとすることで、羽根の溶融樹脂がしっかりと入り込み固化することができ、樹脂とアルミニウム合金とが絡み合う接合部をより複雑にし、強固に接合することができる。
【0014】
請求項4の発明では、前記フロントプレートの軽合金材をアルミニウム合金製として該表面に形成された超微細小の凹部は、ヒドラジン水溶液に浸漬処理されたものとすることで、アルミニウム合金製のフロントプレートに超微細小の凹部を最も実用的に形成することが可能であり、品質を安定させることができる。請求項5の発明では、フロントプレートと羽根先端面との溶着部を安定させると共に、ハウジングの壁面との隙間を安定させることができ、また管理が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)はウォーターポンプのハウジングの壁面と本発明との関係を示す要部断面図、(B)はY1−Y1矢視拡大断面図、(C)は(B)の要部拡大断面図、(D)は(C)の(ア)部の拡大断面図である。
【図2】(A)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとの溶着前の平面図、(B)は(A)のX1−X1矢視断面図のベースプレート付き羽根とフロントプレートの断面図、(C)は(B)の(イ)部の超拡大断面図、(D)は(A)のX2−X2矢視断面図(円錐頂点を通る断面図)、(E)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとが溶着完了した断面図である。
【図3】(A)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとの溶着前の一部拡大断面図、(B)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとの溶着直前の一部拡大断面図、(C)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとを溶着完了した一部拡大断面図、(D)は(C)の(ウ)部の超拡大断面図である。
【図4】(A)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとの溶着直前の断面図、(B)は(A)のY2−Y2矢視の単位羽根板の頂部箇所の拡大断面図、(C)はベースプレート付き羽根とフロントプレートとを溶着完了した断面図、(D)は(C)のY3−Y3矢視の単位羽根板の頂部箇所の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面の図1乃至図3に基づいて説明する。1はフロントプレートであって、裁頭円錐状(ラッパ形状)の環状板である。断面的に見ると、垂直状の軸芯nに対して、上側が窄まる凸をなし、外周に行くほど高さが低くなり、中心に円形孔1aの開いた円(輪)板である。厚みは適宜選択され、0.数mm乃至数mm以上のもの、例えば、約1乃至1.5mm内外で、材質は、アルミニウム合金材、マグネシウム合金材などの軽合金材としての金属材料により形成されている。第1実施形態では、任意の円錐の頂部を切除した扁平ラッパ形状の環状板なるフロントプレート1である。つまり、第1実施形態では円錐形タイプとして説明する。該フロントプレート1の円錐面の下面1b〔図2(B)において円錐の内面側〕の仮想頂点箇所の円錐頂角(立体角ともいう)をφとする〔図2(B)参照〕。なお、前記フロントプレート1には、上面が円錐面の外面1cとして形成されている〔図1(A)及び(B)参照〕。
【0017】
前記フロントプレート1の金属材料の表面1bは、侵食性水溶液に浸漬処理されて超微細小(nm;ナノメートル)の凹部(ディンプル)が無数形成されている。図2(C)に示した図は、電子顕微鏡での5万倍の写真を図示化したものである。不規則で大きさの不揃いの凹凸部が無数形成されていることが判る。前記侵食性水溶液はヒドラジン水溶液、アンモニア水、水溶性アミン化合物などである。これらの水溶液は、軽合金材としての金属材料、主に、アルミニウム合金材の表面を微妙に侵して超微細小の凹部d,d,・・を無数に生ぜしめるものである。その大きさは個々に異なるが、実施例では、アルミニウム合金製のフロントプレート1をヒドラジン水溶液で浸漬処理して該フロントプレート1の表面に適宜数十〜数百nmの凹部が全面を覆うことになる。例えば、アルミニウム合金を電子顕微鏡で観察すると凹部の大きさは、20〜50nm,10〜80nm,30〜300nmと浸漬処理の条件により異なるものとなり、適宜ナノ(nm)寸法の凹部が設けられる。
【0018】
2は羽根であって、該羽根2の下側に円板なるベースプレート3が一体形成されている〔図1(A)及び図2(A)参照〕。このような部材をベースプレート3付き羽根2と称する。前記羽根2は、筒片状のボス部22の外周に複数の単位羽根板21,21,・・の基部が一体形成されている。前記ボス部22は、中心部に貫通孔が形成された金属製のボス部本体22aと、該ボス部本体22aに対して外周側の厚肉部22bから構成されている。該厚肉部22bは、前記単位羽根板21の根元と、前記ベースプレート3の中心部とが一体となるように形成されている。つまり、金属製のボス部本体22aを除く羽根2は硬質の合成樹脂材にて構成されている。該羽根2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)などの熱可塑性樹脂に、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維を含有された合成樹脂材で形成されることが好ましい。該合成樹脂材については、製品や製造等から要求される条件により適宜、選択することができる。
【0019】
前記単位羽根板21において、前記ベースプレート3の反対側は〔図2(B)において上側〕羽根先端面21aとして、前記フロントプレート1の形状に対応した形状であって、円錐面の一部となっている。詳述すると、前記羽根2を構成する複数の単位羽根板21,21,・・の羽根先端面21a,21a,・・は、前記フロントプレート1の表面1bの円錐頂角φと同一の円錐頂角φとなるような円錐面の一部として構成されている。
【0020】
本発明において完成したクローズドインペラについて、改めて説明する。軽合金製で裁頭円錐状のフロントプレート1と、複数放射方向に延びる単位羽根板21,21,・・の上面を羽根先端面21a,21a,・・として形成した合成樹脂材の羽根2とを備えている。一般には、該羽根2は、前記ベースプレート3と一体化されている。前記フロントプレート1の表面1bには、超微細小な凹部dが浸漬処理によって無数形成されている。このような前記羽根2の先端に前記フロントプレート1が載置されて前記フロントプレート1とが接触され〔図3(B)及び図4(B)参照〕、適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させる溶着方法により各熱源等で前記羽根先端面21a,21a,・・箇所が溶融されて該溶融樹脂により溶着部50が形成されて〔図1(D),図2(D)及び図4(D)参照〕前記フロントプレート1と前記羽根2とが固着されている。
【0021】
前記ベースプレート3と一体になった羽根2の根元側に対して他端側の羽根先端面21a,21a,・・側にフロントプレート1が羽根先端面21a,21a,・・箇所の溶着により取り付け固定されている。該フロントプレート1は、軽合金材で構成しているが、この実施形態では、アルミニウム合金製として説明する。表面に超微細小の凹部が形成されたアルミニウム合金製のフロントプレート1と羽根先端面21a,21a,・・との間には、該羽根先端面21a,21a,・・部の合成樹脂が前記溶着方法の熱源により溶融され、該溶融された合成樹脂が溶着部50として前記アルミニウム合金のフロントプレート1の表面に形成された超微細小の凹部に入り込んで固化する。そして、前記羽根先端面21a,21a,・・とが強固に接合される。
【0022】
前記溶着部50は、図1(C)及び(D)に示すように、前記単位羽根板21,21,・・の厚さLの寸法よりも、僅かな長さΔLとして外側に端部溶着領域50a,50aが形成される。これは、前記溶着部50が溶融した状態において、前記フロントプレート1の表面に形成された超微細小の凹部dに、液体が浸み込むが如くに前記単位羽根板21,21,・・の側縁より外側に入り込んでできた部位であり、この端部溶着領域50a,50aの形成が、前記フロントプレート1と前記羽根先端面21a,21a,・・との接合強度をより強固にさせることができる。前記端部溶着領域50a,50aは、フロントプレートの超微細小の凹部に入り込んでいるため、前記フロントプレートの表面を起伏させることなく滑らかな面にすることができる。
【0023】
前記羽根先端面21a,21a,・・と、接合するフロントプレート1の表面1bとが接合される際に、溶着方法(この各種の方法は後述する。)によって前記羽根先端面21a,21a,・・部の合成樹脂が溶融され、該溶融された合成樹脂がアルミニウム合金製のフロントプレート1の表面1bに形成された超微細小の凹部dに入り込んで固化して該超微細小の凹部と複雑に絡んだ溶着部50が形成されるため〔図1(D),図3(D)及び図4(D)参照〕強固な接合となり、且つ、前記溶融された合成樹脂は、羽根2側面側へはみ出す量が低減し、羽根2側面側より膨出するバリは、殆ど無い状態又は小さくできる。
【0024】
本発明品は、合成樹脂材からなるベースプレート3付き羽根2の羽根先端面21a,21a,・・と、軽合金(アルミニウム合金等)材からなるフロントプレート1の表面1b(円錐の内面)とを接合固定するのに、前記羽根先端面21a,21a,・・と、適宜な加圧力を加えつつ熱板の熱、微振動の摩擦熱、レーザー照射のエネルギーで加熱するなどの各熱源で溶融して接合する。つまり、前記フロントプレート1の表面1bと前記羽根先端面21a,21a,・・との間に生成された溶融樹脂により溶着部50を形成し〔図1(D),図3(D)及び図4(D)参照〕、該溶着部50によって接合固定する。
【0025】
この接合固定は、前述したように、軽合金材なる金属製の前記フロントプレート1の表面1b(円錐の内面)に超微細小(nm;ナノメートル)の凹部d(ディンプル)が浸漬処理によって無数形成されており、前記フロントプレート1と前記羽根先端面21a,21a,・・とを前記溶着方法(熱板溶着法、振動溶着法など)により、相互に適宜な加圧力を加えつつ、該羽根先端面21a,21a,・・を溶融して溶融樹脂が無数の超微細小の前記凹部dに入り込んで接合固定する。
【0026】
また、前記溶融樹脂が前記凹部dに入り込んで接合固定するため前記フロントプレート1と前記羽根先端面21a,21a,・・との溶着部50における羽根先端面21a,21a,・・の側縁は、接合面に沿って平滑状であり、はみ出す量を小さくできる。また、前記フロントプレート1と接合した前記羽根先端面21a,21a,・・の側縁より外側箇所の端部溶着領域50aとなって脱落しないものにできる。また、前記はみ出し溶融樹脂は、フロントプレート1の表面に形成された超微細小の凹部dに入り込むため、バリに成り難くなり、バリ取りが不要となり、生産性が向上し、コスト低減が図れる。また、バリの脱落が防止できるので、ポンプ性能が安定し、且つ、品質を維持することができる。
【0027】
そこで、適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させる溶着方法について、例を挙げると、(1)熱板溶着法、(2)振動溶着法、(3)レーザー照射溶着法、(4)高周波溶着法、(5)超音波溶着法などが挙げられる。
これらを簡単に説明すると、(1)熱板溶着法とは、片方の金属もしくは樹脂を予め高温にしておき、それを相手側樹脂に押し付けることで低融点樹脂部を溶かし、溶着する手法である。片方が金属材で、他方が樹脂である本発明に好適である。
(2)振動溶着法とは、約数百Hzの振動を加えることで樹脂を溶かし溶着する方法である。
(3)レーザー照射溶着法とは、レーザー光線を溶着する箇所に当てることで樹脂を溶かし、溶着する方法である。
【0028】
(4)高周波溶着法とは、樹脂同士では無く、樹脂と軽金属の溶着において、その間に金属ワイヤーに高周波を加えることで加熱し、その高周波を加えて加熱された金属ワイヤーにより押し付けられた樹脂を溶かし、溶着する手法である。
(5)超音波とは、約数万Hzの音波を溶着する部材に加えることで樹脂を溶かし、溶着する方法である。この場合には、好ましくは、前記羽根先端面21a,21a,・・上に、先端面より小さな三角形状の突起が設けられる。
他にも溶着方法は存在するが、主要な溶着方法としては以上である。
上記全ての溶着方法において共通する概念は、温度が上がるように樹脂にエネルギーを与えることである。このような溶着法により、一旦溶着面の樹脂を溶かした後、自然冷却されることで溶けた樹脂が固まり溶着面が固着される。
【符号の説明】
【0029】
1…フロントプレート、1b…表面、2…羽根、21…単位羽根板、d…凹部、
21a…羽根先端面、3…ベースプレート、50…溶着部、50a…端部溶着領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽合金製で裁頭円錐状のフロントプレートと、複数放射方向に延びる単位羽根板の一端面を羽根先端面として形成した合成樹脂材の羽根とを備え、前記フロントプレートの表面に超微細小な凹部が無数形成されてなり、前記フロントプレート表面と前記羽根一端面の羽根先端面とが接触され、適宜な加圧下で外部からエネルギーを与えることにより樹脂表面温度を上昇させる溶着方法により前記羽根先端面箇所が溶融されて該溶融樹脂が前記フロントプレート表面に形成された超微細小の凹部に入り込んで溶着部が形成され前記フロントプレートと前記羽根とが固着されてなることを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項2】
請求項1において、前記軽合金製のフロントプレートは、アルミニウム合金としてなることを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記軽合金製のフロントプレートは侵食性水溶液に浸漬処理による超微細小な凹部が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記軽合金製のフロントプレートは、ヒドラジン水溶液に浸漬処理による超微細小な凹部が形成されてなることを特徴とするクローズドインペラ。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4のいずれか1項において、前記フロントプレートの円錐頂角と前記羽根全体の単位羽根板上面の羽根先端面の仮想円錐頂角とが同等に形成されてなることを特徴とするクローズドインペラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−122458(P2011−122458A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278158(P2009−278158)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】