説明

クローポール型ブラシレスモータ

【課題】小型であっても容易に組立て可能なクローポール型ブラシレスモータを提供する。
【解決手段】クローポール型ブラシレスモータ1は、互いに対面交差する極歯30a〜30c,40a〜40cをそれぞれ有する一対のステータヨーク30,40と、極歯30a〜30c,40a〜40cの外周に配置されたコイル50と、ヨーク30,40及びコイル50が保持された保持部材60と、保持部材60の下方に配置された配線用基板70と、コイル50に対して回転可能に配置されたロータ10などを備えている。保持部材60には、配線用基板70に沿うような突起部65,66が形成されている。コイル50の巻回端部51,52は、突起部65,66のそれぞれに絡げられて固定された状態で、配線用基板70のランド部71,72に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クローポール型ブラシレスモータに関し、特に、コイルを挟む一対のヨークの一方に沿うように配置された配線用基板を有する小型のクローポール型ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
クローポール型ブラシレスモータとしては、2つの平板状のヨークを各ヨークから突出する極歯が対面交差するように対向させ、2つのヨーク間であって極歯の外周に空芯コイルを配置してなるステータ部と、その一方のヨークに沿うように配置された配線用基板とを有するものがある。空芯コイルの2つの巻回端部(コイル端)は、それぞれ配線用基板上の配線用ランド部に接続される。このような構造は、モータの薄型化、小型化の要請に対応可能なものであり、例えばコイン型の振動モータなどに用いられている。
【0003】
下記特許文献1には、それぞれヨークが固定される2つのボビンのそれぞれに、ヨークの位置決め部を設け、2つのボビンを組み合わせたとき、各ヨークが所定の位相差をもって配置されるように構成されているモータが開示されている。このモータにおいて、コイル端末は、ボビンに配設されている端子ピンに絡げて接続される。
【0004】
下記特許文献2には、ステータコアを位置決めするための端子台を設け、その端子台に端子(コイル絡げ部)を設けた構造を有するDCブラシレスモータが開示されている。このモータは、ステータコアの各極歯にコイルを巻回した構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−61376号公報
【特許文献2】特開2011−167024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような構造のクローポール型ブラシレスモータでは、小型化が進むにつれて、コイル端を配線用ランド部に固定したり、はんだ、溶接、接着などにより接続したりすることが難しくなっている。このような問題点に対して有効な解決策は、特許文献1又は特許文献2には、何ら開示されていない。
【0007】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、小型であっても容易に組立て可能なクローポール型ブラシレスモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、クローポール型ブラシレスモータは、それぞれ平板状に形成され、互いに対面交差する複数の極歯がそれぞれ周状に並ぶようにして突設された上下一対のステータヨークと、複数の極歯の外周に、一対のステータヨークの間に挟まれるようにして配置されたコイルと、一対のステータヨークのうち下方のステータヨークに沿うように配置され、一対のステータヨーク及びコイルが保持された保持部材と、複数の極歯に対向するように配置された磁石を有するロータと、保持部材の下方に、一対のステータヨークとの間に保持部材を挟むようにして配置され、コイルの巻回端部が接続される配線用基板とを備え、保持部材は、コイルの巻回端部を絡げることができるように、配線用基板に沿うように突出する突起部を有する。
【0009】
好ましくは保持部材は、さらに、一対のステータヨークのそれぞれを保持部材に対して位置決めする位置決め部を有する。
【0010】
好ましくは位置決め部は、一対のステータヨークに向けて上方に突出する複数の位置決め突起を有し、一対のステータヨークのそれぞれが、そのステータヨークの1つ又は2つ以上の極歯が複数の位置決め突起のうち少なくとも2つの位置決め突起に挟まれるようにして、保持部材に取り付けられていることで、一対のステータヨークのそれぞれが保持部材に対して位置決めされる。
【0011】
好ましくは突起部は、配線用基板のうち巻回端部が接続されるランド部に対応する位置に設けられ、平面視でランド部を挟むように配置された2つの突起を有しており、ランド部に接続される巻回端部は、2つの突起のそれぞれに絡げられている。
【0012】
好ましくはロータは、ロータの重心をロータの回転軸上からずらすウエイトを有し、ロータが回転することで、振動を発生させる。
【発明の効果】
【0013】
これらの発明に従うと、保持部材に一対のステータヨーク及びコイルを保持することができ、保持部材の突起部にコイルの巻回端部を絡げることができる。したがって、小型であっても容易に組立て可能なクローポール型ブラシレスモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおけるクローポール型ブラシレスモータを示す分解斜視図である。
【図2】モータの側断面図である。
【図3】保持部材を上面側から見た斜視図である。
【図4】保持部材を底面側から見た斜視図である。
【図5】トッププレート及びロータが除かれた状態のモータを示す平面図である。
【図6】図5の斜視断面図である。
【図7】モータの固定子モジュールを示す斜視図である。
【図8】コイルの巻回端部の配線用基板への接続部の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるクローポール型ブラシレスモータ(以下、単にモータということがある。)について説明する。
【0016】
[実施の形態]
【0017】
本実施の形態において、クローポール型ブラシレスモータは、上下一対のステータヨークの間にコイルが配置された構造を有する、薄型(へん平型)で、インナーロータ型のものである。モータは、小型なコイン型のものであり、簡素な構成を有している。モータには、それを駆動するための駆動回路を有する配線用基板が、保持部材を介して、下方のステータヨークの下側に設けられている。これにより、モータの小型化が図られている。
【0018】
本実施の形態において、ロータにはウエイトが設けられている。すなわち、モータは、ロータを回転させることで振動力を発生させる、振動モータである。なお、モータは、振動モータに限られるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるクローポール型ブラシレスモータを示す分解斜視図である。
【0020】
図1に示されるように、クローポール型ブラシレスモータ1は、大まかに、ケース2と、トッププレート8と、シャフト25を中心軸として回転可能なロータ10と、軸受21と、上ステータヨーク30と、下ステータヨーク40と、コイル50と、保持部材60と、配線用基板70とを備えている。ロータ10には、ロータ10の重心がその回転軸から偏心するように、ウエイト15が設けられている。モータ1は、ロータ10の回転に伴い振動する。
【0021】
ケース2、上ステータヨーク30、及び下ステータヨーク40は、例えば軟磁性材料を用いて形成されている。モータ1において、上ステータヨーク30と下ステータヨーク40とは一対のステータヨークを構成する。各ステータヨーク30,40には、絶縁皮膜が施されている。上ステータヨーク30と下ステータヨーク40との間には、コイル50が配置されている。なお、以下の説明において、上ステータヨーク30と下ステータヨーク40とのそれぞれを、ヨーク30、ヨーク40ということがある。
【0022】
図1に示されるように、ヨーク30には、3つの極歯30a,30b,30cが設けられている。ヨーク40には、3つの極歯40a,40b,40cが設けられている。これらの極歯30a〜30c,40a〜40cは、ヨーク30,40の平板部31,41から折り曲げられるようにして形成されている。ヨーク30,40のそれぞれの極歯30a〜30c,40a〜40cは、互いに対面交差するように、ロータ10の回転中心に相当する位置を中心に、周状に並ぶように突設されている。
【0023】
本実施の形態において、ヨーク30,40と、コイル50と、保持部材60とは、固定子モジュール100としてサブアセンブリ化されて用いられる。
【0024】
図2は、モータ1の側断面図である。
【0025】
図2において示されている断面は、ロータ10の回転軸すなわちシャフト25の中心軸を通る平面である。
【0026】
図1、図2を参照して、モータ1の各構成部材について説明する。
【0027】
トッププレート8は、モータ1の上面を覆うように設けられており、ケース2の内部の各部材は、露出していない。
【0028】
図2に示されるように、モータ1において、ロータ10、ヨーク30,40、コイル50、及び保持部材60などは、ケース2の内部に配置される。配線用基板70は、ケース2の底面に沿うようにして、モータ1の底部に配置されている。モータ1は、全体として、比較的薄く、平面視で(モータ1の上面(トッププレート8の外表面)に対面する位置から見て)円形であってコイン型に形成されている。
【0029】
コイル50は、銅線を巻回して円環形に構成された空芯コイルである。図2に示されるように、コイル50は、ヨーク30とヨーク40との間に挟まれるようにして、複数の極歯30a〜30c,40a〜40cの外周に、環状に配置されている。
【0030】
保持部材60は、一対のヨーク30,40のうち、下側のヨーク40に沿うようにして配置されている。保持部材60は、環状に構成されている。保持部材60には、ヨーク30,40及びコイル50が保持されている。保持部材60は、ヨーク40の平板部41に略平行な平板部61と、平板部61の一部から略水平に突出する突起部65,66とを有している。突起部65,66のそれぞれは、第1突起67aと第2突起67bとを有している。また、保持部材60は、例えば6つの位置決め突起(位置決め部の一例)63を有している。
【0031】
配線用基板70は、例えばプリント配線基板である。図1に示されるように、配線用基板70は、ケース2の底面すなわちモータ1の外周形状と略同じ円形の外周形状を有している。配線用基板70は、ケース2を介して、下側のヨーク40との間に保持部材60を挟むようにして配置されている。
【0032】
配線用基板70の上面には、駆動用IC76、電子部品77、及び接続パターンが設けられている。駆動用IC76、電子部品77、及び接続パターンなどは、例えばコイル50に通電して、ロータ10をコイル50などに対して回転させる駆動回路を構成する。接続パターンには、2つのランド部71,72(ランド部71は図5に示す。)が設けられている。ランド部71,72は、それぞれ、ケース2の底面に対向するように、配線用基板70の上面に露出している。ランド部71,72には、後述するように、コイル50の巻き始めの巻回端部(巻き始め線)51、巻き終わりの巻回端部(巻き終わり線)52のそれぞれが接続される。
【0033】
図1に示されるように、ケース2は、下面(底面)が覆われた椀形状を有している。ケース2の中央部には、円筒状に形成された保持部2cが設けられている。保持部2cには、円柱形状の軸受21が圧入され、固定されている。軸受21は、例えばすべり軸受であり、シャフト25が貫通するようにして配置されている。また、軸受21の底面には、スラスト板27が配置されている。スラスト板27は、ケース2の軸受21と、配線用基板70の上面との間に配置されている。これにより、ロータ10がシャフト25を中心に回転可能に軸支される。
【0034】
図1に示されるように、ロータ10は、環状磁石11と、ロータスペーサ12と、ウエイト15と、シャフト25とを有している。
【0035】
環状磁石11は、例えば、環状に連続して一体に形成された永久磁石であり、ロータスペーサ12の側周部12aに保持されている。環状磁石11は、例えば、複数の極歯(極歯30a〜30c,40a〜40c)に対応する複数の磁極(例えば6つの磁極)を有している。図2に示されるように、環状磁石11は、周状に配置されている極歯30a〜30c,40a〜40cに近接して対向するように、ロータ10の外周部分に配置されている。
【0036】
ロータスペーサ12は、大まかに、下方に開口する椀形状を有している。図2に示されるように、ロータスペーサ12は、円筒状の側周部12aと、側周部12aの上部からロータ10の中央部にかけて略水平に形成された板状部12bとを有している。ロータスペーサ12の中央部には、保持孔部12cが形成されている。板状部12bには、開口部12hが形成されている。板状部12bは、保持孔部12c及び開口部12hを除き、側周部12aを塞ぐように形成されている。
【0037】
側周部12aは、ロータスペーサ12の外周をなし、環状磁石11の内面に面するように形成されている。環状磁石11は、ロータスペーサ12の側周部12aすなわちロータスペーサ12の外周に、その内周面が側周部12aに面するようにしてはめ込まれ、その状態でロータスペーサ12に例えば接着されて固定されている。
【0038】
保持孔部12cには、シャフト25の上端部が貫入している。ロータスペーサ12は、その中央部に、シャフト25を保持している。シャフト25は、保持孔部12cに貫入した状態で、ロータスペーサ12の上面すなわち板状部12bから下方に突出するように、ロータスペーサ12に固定されている。ロータ10は、シャフト25を回転軸として回転可能に、ケース2内に配置されている。
【0039】
ロータスペーサ12は、例えば軟磁性材料を用いて形成されている。本実施の形態において、ロータスペーサ12は、例えば、プレス加工や板金加工などにより製造可能であるが、これに限られるものではない。また、硬磁性材料を用いて形成されていたり、これらと樹脂等を併せて用いて形成されていたりしてもよい。
【0040】
ウエイト15は、例えば半円盤形状を有する錘である。図1に示されるように、ウエイト15は、側周部12a及び板状部12bで囲まれたロータスペーサ12の底面側に開口する空間のうち、ロータ10の中心部を除いて、底面視でその略半周部分を占めるような形状に形成されている。ウエイト15は、例えばタングステン合金など、比重が大きい金属を用いて形成されている。なお、ウエイト15の材質や形状はこれに限られるものではない。ウエイト15は、例えば、接着又は溶接などにより、ロータスペーサ12に固定されている。ウエイト15の体積、比重は比較的大きいので、ロータ10の重心の偏心量をより大きくすることができる。
【0041】
図2に示されるように、ロータ10は、シャフト25が軸受21を貫通し、シャフト25の下端部がスラスト板27に接触するようにして、ケース2に配置されている。ロータ10がシャフト25を回転軸として回転するとき、シャフト25が軸受21に対して摺動する。このとき、ロータ10は、スラスト板27によりシャフト25の軸方向に支えられて、回転する。
【0042】
図1に示されるように、ヨーク30とヨーク40とは、それぞれ、平板部(ヨークつば部)31,41を有している。平板部31,41は、それぞれ、平面視でケース2の内側壁面よりもわずかに小さい円板状の外周形状を有しており、ヨーク30とヨーク40とは、ケース2の内部に軽圧入で取り付けられている。これにより、ヨーク30と、ヨーク40と、ケース2とで、磁気回路が構成されている。
【0043】
ヨーク30,40は、平板部31,41でコイル50を上下方向に挟むようにして重ねられている。ヨーク30,40は、極歯30a,30b,30cと極歯40a,40b,40cとが相対向するような向きで、重ねられている。このようにヨーク30,40が重ねられた状態で、極歯30a〜30c,40a〜40cは、上面視で、反時計回りに、極歯30a、極歯40a、極歯30b、極歯40b、極歯30c、極歯40cと周状に並ぶように配置されている。
【0044】
各極歯30a〜30c,40a〜40cは、例えば、ヨーク30,40の平板部31,41から折り曲げられることで形成されている。すなわち、ヨーク30,40は、それぞれ、1つの板状部材から極歯30a〜30c,40a〜40cに相当する部位をプレス加工などにより折り曲げて形成することにより、他の部材を接合することなく、一体に成形されている。ヨーク30,40のうち、極歯30a〜30c,40a〜40cが設けられた部位よりも内側の部位は空いており、ロータ10が配置されるスペースとなっている。これにより、上記の通り、ロータ10の環状磁石11は、極歯30a〜30c,40a〜40cに対向するように配置されている。
【0045】
図2に示されるように、コイル50は、周状に並ぶ複数の極歯30a〜30c,40a〜40cの外周に配置されている。モータ1は、コイル50によりヨーク30,40が励磁され、極歯30a〜30cと極歯40a〜40cとが励磁されることで駆動される。すなわち、ロータ10は、コイル50及び極歯30a〜30c,40a〜40cに対して回転可能である。
【0046】
図3は、保持部材60を上面側から見た斜視図である。図4は、保持部材60を底面側から見た斜視図である。
【0047】
保持部材60は、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)や、液晶ポリマーなど、熱に強い材質の樹脂を用いて形成されている。この場合、例えば巻回端部51,52をはんだ付けなどによりランド部71,72に接続する場合において加わる熱に耐えることができる。なお、巻回端部51,52のランド部71,72への接続方法として、特に保持部材60に高熱が加わらないような場合には、保持部材60の材質を、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)などのような安価なものとしてもよい。すなわち、巻回端部51,52のランド部71,72への接続方法に応じて、適宜適当な材料を用いて構成すればよい。
【0048】
図3及び図4に示されるように、本実施の形態において、保持部材60の平板部61は、環状に形成されている。保持部材60は、平板部61の上面が、ヨーク40の底面に面するようにして配置される。平板部61には、6つの位置決め突起63(位置決め突起63a〜63f)と、2組の突起部65,66とが設けられている。
【0049】
突起部65,66のそれぞれは、第1突起67aと、第2突起67bとを有している。第1突起67a及び第2突起67bは、それぞれ、平板部61の内周縁部から内側に向けて略水平に突出している。第1突起67aと第2突起67bとは、ケース2越しに配線用基板70に沿うように形成されている。
【0050】
突起部65,66は、ランド部71,72の上方に位置するようにそれぞれ形成されている。各突起部65,66は、平面視で、第1突起67aと第2突起67bとで、ランド部71,72を挟むように(ランド部71,72を跨ぐように)配置されている。
【0051】
第1突起67a及び第2突起67bのそれぞれの突出方向先端部には、2つの溝部68a,68bが形成されている。溝部68a,68bは、それぞれ、第1突起67a又は第2突起67bの側面の一部分が上下方向に沿って窪むようにして形成されている。なお、第1突起67a及び第2突起67bのそれぞれにおいて、溝部68aよりも溝部68bの方が、平板部61の内周縁からの距離が遠くなっている。すなわち、溝部68aの位置と溝部68bの位置とは、第1突起67a又は第2突起67bの突出方向に若干ずれている。これにより、巻線を重ねることなく絡げることができる。
【0052】
各位置決め突起63は、それぞれ、平板部61の内周縁部に設けられている。各位置決め突起63は、平板部61の上面から上方にわずかに突出するように形成されている。位置決め突起63は、互いに略等間隔に並んでいる。各位置決め突起63は、極歯30a〜30c,40a〜40cのそれぞれと、それと周方向に隣り合うものとの間に位置するように配置されている。
【0053】
図5は、トッププレート8及びロータ10が除かれた状態のモータ1を示す平面図である。図6は、図5の斜視断面図である。
【0054】
図6においては、ケース2及び軸受21などの図示は省略されている。
【0055】
図5に示されるように、ケース2の底面の一部には、開口部4,5が形成されている。開口部4,5は、それぞれ、配線用基板70上のランド部71,72に対応する位置に形成されている。このようにケース2に開口部4,5が形成されていることで、ケース2の底面に配線用基板70を重ねたとき、ランド部71,72が開口部4,5を介してケース2の内部側に露出する。コイル50の2つの巻回端部51,52は、後述のように、開口部4,5を介して表れるランド部71,72に接続される。
【0056】
ケース2の底面の一部には、孔部7が形成されている。孔部7は、駆動用IC76、電子部品77に対応する位置に形成されている。ケース2に孔部7が形成されていることで、ケース2の底面に配線用基板70を重ねたとき、駆動用IC76や電子部品77などがケース2の底面に干渉しないように構成されている。これにより、配線用基板70をケース2により近づけることができ、モータ1の小型化、薄型化が可能となっている。
【0057】
配線用基板70は、粘着シート90によってケース2に固定されている。粘着シート90は、例えば、シート状の基材の両面に粘着剤などが配されたものであり、両面に粘着性を有するシート状である。図6に示されるように、粘着シート90のランド部72が対応する位置には、孔部92が設けられている。ランド部71に対応する位置にも、これと同様に、孔部91が設けられている(図5参照。)。粘着シート90は、その一方の面がケース2の下面に接着され、他方の面が配線用基板70の上面に接着されて用いられる。
【0058】
図5に示されるように、突起部65の第1突起67a及び第2突起67bには、巻回端部51が絡げられる。また、突起部66の第1突起67a及び第2突起67bには、巻回端部52が絡げられる。平面視で、突起部65,66のそれぞれの第1突起67aと第2突起67とは、互いにランド部71,72を挟むように、ランド部71,72の周方向両側部に位置する。巻回端部51,52は、第1突起67aと第2突起67との間を架け渡されるようにして、突起部65,66のそれぞれに絡げられる。そのため、巻回端部51,52は、ランド部71,72の上方に、その一部が位置する状態になる。ここで一部とは、巻回端部51,52のそれぞれのうち、第1突起67aに絡げられた部分と、第2突起67bに絡げられた部分との中間部分をいう。巻回端部51,52は、このようにしてランド部71,72の上方に位置する部分が、ランド部71,72にそれぞれはんだ付けなどにより接続されることで、配線用基板70に接続されている。
【0059】
ここで、保持部材60の位置決め突起63のそれぞれは、互いに隣り合うものとの周方向の間隔が、極歯30a〜30c,40a〜40cの周方向の長さと略等しくなるように形成されている。ヨーク30,40の各極歯30a〜30c,40a〜40cは、それぞれ、各位置決め突起63とその位置決め突起63に周方向に隣り合うものとの間に嵌るようにして、配置されている。また、各極歯30a〜30c,40a〜40cの周方向両側部は、それぞれ、互いに隣り合う位置決め突起63の周方向側部に接触している。これにより、各極歯30a〜30c,40a〜40cは、位置決め突起63により周方向に位置決めされている。
【0060】
すなわち、図5に示されるように、極歯30aは、位置決め突起63aと位置決め突起63fとの間に配置され、位置決めされている。極歯40aは、位置決め突起63bと位置決め突起63aとの間に配置され、位置決めされている。極歯30bは、位置決め突起63cと位置決め突起63bとの間に配置され、位置決めされている。極歯40bは、位置決め突起63dと位置決め突起63cとの間に配置され、位置決めされている。極歯30cは、位置決め突起63eと位置決め突起63dとの間に配置され、位置決めされている。極歯40cは、位置決め突起63fと位置決め突起63eとの間に配置され、位置決めされている。図6に例えば極歯30bについて示されているように、上側のヨーク30の極歯30a〜30cは、その下端部(先端部)の周方向両側部が2つの位置決め突起63(例えば極歯30bについては、位置決め突起63b,63c)に挟まれるようにして位置決めされている。また、図6に例えば極歯40aについて示されているように、下側のヨーク40の極歯40a〜40cは、その下端部(平板部41から折り曲げられた基端部)が、2つの位置決め突起63(例えば極歯40aについては、位置決め突起63a,63b)に挟まれるようにして位置決めされている。このようにして、ヨーク30,40は、極歯30a〜30c,40a〜40cがそれぞれ適切な位置に位置するように、保持部材60に対して位置決めされている。
【0061】
図7は、モータ1の固定子モジュール100を示す斜視図である。
【0062】
図7には、固定子モジュール100のうち、上側のヨーク30を除いた状態のものが示されている。本実施の形態において、ヨーク30,40と、コイル50とは、ケース2に組み込まれる前に、保持部材60に取り付けられて、一体の固定子モジュール100とされる。
【0063】
すなわち、まず、保持部材60には、下側のヨーク40が取り付けられる。ヨーク40は、その平板部41が保持部材60の平板部61の上面に面するようにして配置される。このとき、ヨーク40は、位置決め突起63により極歯40a〜40cが位置決めされるようにして固定される。
【0064】
次に、ヨーク40の極歯40a〜40cの外側に、コイル50が配置される。コイル50が配置されると、巻回端部51,52が突起部65,66のそれぞれに絡げられる。
【0065】
コイル50が取り付けられると、上方から、ヨーク30が保持部材60に取り付けられる。ヨーク30は、その平板部31と、ヨーク40の平板部41との間でコイル50を挟むようにして配置される。このとき、ヨーク40と同様に、位置決め突起63により極歯30a〜30cが位置決めされるようにして固定される。これにより、固定子モジュール100が完成する。
【0066】
モータ1は、大まかに、例えば次のような手順で組み立てられている。まず、上述のように、固定子モジュール100の組立てを行う。そして、ケース2の内部に、固定子モジュール100を配置する。すなわち、ヨーク30,40と、コイル50と、保持部材60とは、同時にケース2に取り付けられる。ケース2の底面には配線用基板70を配置する。コイル50の2つの巻回端部51,52を、配線用基板70のランド部71,72に接続する。そして、ヨーク30,40の中央部にロータ10を配置し、モータ1の上面から、ケース2の内部をトッププレート8で覆う。なお、組立て手順は、これに限られるものではない。例えば、先に配線用基板70をケース2に固定してから、ケース2の内部に各部材を配置してもよい。
【0067】
図8は、コイル50の巻回端部51の配線用基板70への接続部の構造を模式的に示す図である。
【0068】
巻回端部51は、突起部65に、次のようにして絡げられる。すなわち、図8に示されるように、巻回端部51は、まず、第2突起67bに巻き付けられた後、突起部65の下側を通るようにして第1突起67aまで渡され、第1突起67aに巻き付けられる。これにより、巻回端部51が、第1突起67aと第2突起67bとの間に架け渡されて固定される。なお、図8において、巻回端部51は突起67a,67bにそれぞれ1回巻き付けられているように示されているが、これに限られず、それぞれ複数回巻き付けられていてもよい。
【0069】
ここで、巻回端部51は、第1突起67a及び第2突起67bのそれぞれについて、溝部68a,68bが設けられて窪んでいる部分に巻き付けられる。これにより、巻回端部51の巻付け部分が第1突起67aや第2突起67bから抜け落ちたりせず、また、第1突起67aと第2突起67bに巻き付けられた位置が変位しないように構成されている。したがって、常に、巻回端部51がランド部71の上部の所定位置に位置することになり、巻回端部51のランド部71への接続を確実に行うことができる。
【0070】
このようにして突起部65に巻回端部51が絡げられた状態で、固定子モジュール100がケース2に納められ、モータ1が組み立てられると、突起部65が配線用基板70に近接する状態となる。突起部65はランド部71に対応する位置に設けられており、巻回端部51は、突起部65の下側において第1突起67aと第2突起67bとの間に架け渡されているので、巻回端部51とランド部71とは近接する。このように巻回端部51とランド部71とが近接した状態で、巻回端部51とランド部71とを、はんだ付けなど種々の方法によって固定できる。
【0071】
巻回端部52の配線用基板70への接続部の構造も、同様にして行われる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態によれば、モータ1は、保持部材60にヨーク30,40、及びコイル50を取り付けてなる固定子モジュール100をケース2に組み付けた構成を有している。したがって、モータ1を容易に組み立てることができる。保持部材60は、一対のヨーク30,40のうち下方のヨーク40に沿うように配置されているので、固定子モジュール100の厚みを大きく増加させることがなく、モータ1を薄型化することができる。
【0073】
固定子モジュール100を組み立て、保持部材60に設けられた突起部65,66に巻回端部51,52をそれぞれ絡げた後で、固定子モジュール100をケース2に納めることができる。したがって、巻回端部51,52を予め固定した状態で、ケース2の内部において、巻回端部51,52とランド部71,72とを接続する作業を行うことができる。各突起部65,66は、平面視でランド部71,72を挟むように設けられた2つの突起67a,67bを有し、巻回端部51,52はそれらの間に架け渡されるようにして絡げられる。したがって、ケース2内に固定子モジュール100が納められている状態で、巻回端部51,52がランド部71,72の上方に位置するようにして固定されている。これにより、より容易に、かつ確実に、巻回端部51,52とランド部71,72との接続を行うことができる。巻回端部51,52は、ランド部71,72への接続点と、コイル50や巻回端部51,52の末端部との間において、突起67a,67bに絡げられて固定されている。したがって、コイル50や末端部側から巻回端部51,52に引っ張りなどの力が加わっても、その力がランド部71,72への接続点にまで及ぶことがなく、巻回端部51,52とランド部71,72との接続部で断線が発生することを防止できる。したがって、モータ1の信頼性を向上させることができる。
【0074】
一般に、クローポール型のモータにおいては、上下から組み込まれる極歯のそれぞれが適切な位置に配置されていないと、モータ効率が落ちてしまう。これに関して、本実施の形態のモータ1では、位置決め突起63によりヨーク30,40の位置すなわち極歯30a〜30c,40a〜40cの位置が、適正に位置決めされている。したがって、モータ1を高効率のまま維持することができる。また、組立時においても、各極歯30a〜30c,40a〜40cを位置決め突起63間にはめ込むことにより、各極歯30a〜30c,40a〜40cの位置が適正になるように位置決めでき、モータ1を非常に容易に組み立てることができる。
【0075】
[その他]
【0076】
上記の実施の形態のそれぞれの特徴部分を適宜組み合わせてクローポール型ブラシレスモータを構成してもよい。
【0077】
巻回端部とランド部との接続方法は、はんだ付けによるものに限られない。例えば、レーザ溶接、リフロー、又は接着・溶着などの方法で接続されていてもよい。例えば、リフロー方式に対応したモータにおいて、はんだ付けにより巻回端部をランド部に接続するようにしてもよい。この場合、巻回端部が突起部に固定された状態ではんだ付けが行われるので、リフロー時にはんだが溶けても、巻回端部の位置は、位置決めされたままで保たれる。したがって、巻回端部とランド部との接続が外れにくくなる。
【0078】
保持部材の位置決め突起は、複数の極歯間のすべての箇所に位置するように設けられているものに限られず、下ステータヨークと上ステータヨークとのそれぞれが保持部材に対して周方向に位置決めされるために十分なだけのものが設けられていればよい。すなわち、一対のステータヨークのそれぞれについて、そのステータヨークの1つ又は2つ以上の極歯が、複数の位置決め突起のうち少なくとも2つの位置決め突起に挟まれるようにすればよい。例えば、上述の実施の形態において、位置決め突起63a,63b,63cのみが設けられていることにより、極歯40aと極歯30bが位置決めされ、これにより下ステータヨーク40と上ステータヨーク30とがそれぞれ周方向に位置決めされるようにしてもよい。また、位置決め突起63a,63dのみが設けられていることにより、極歯40a及び極歯40b部分がこれに挟まれて位置決めされると共に、極歯30c及び極歯30a部分がこれに挟まれて位置決めされるようにしてもよい。
【0079】
保持部材による下ステータヨークと上ステータヨークとの位置決め構造は、上述のような位置決め突起によるものに限られない。例えば、保持部材が、位置決め部として、上ステータヨーク側の極歯の一部や、下ステータヨーク側の平板部に設けられた突起が嵌入するような凹部を有していてもよい。また、位置決め部として、極歯の一部又は下ステータヨークの平板部に形成された切り欠き部や凹部に係合する突起部などを有していてもよい。
【0080】
巻回端部が絡げられる保持部材の突起部は、保持部材の平板部などと一体に成形されていてもよいし、別々に成形されたのちに互いに組み合わされるようにしてもよい。
【0081】
下ステータヨークや上ステータヨークは、それぞれ、複数の部材を溶接や接着などにより接合することにより形成されていてもよい。
【0082】
配線用基板は、駆動用ICなどの集積回路を有していないものであってもよい。また、配線用基板のランド部は、必ずしもケースの開口部を介してケースの内部側に露出するように配置されていなくてもよい。また、コイルの巻回端部は、必ずしも配線用基板のランドに接続されていなくてもよい。例えば、配線用基板に配線用の端子などが設けられており、それに巻回端部が接続されるようにしてもよい。このような場合であっても、巻回端部が、保持部材の突起部に絡げられていることで位置決めされているので、上述と同様の効果が得られる。配線用基板は、ケースの内部に、保持部材に沿うようにして配置されていてもよい。
【0083】
ロータの構成やロータスペーサの形状などは、上述に限られない。モータは、振動モータでなくてもよく、ウエイトは設けられていなくてもよい。モータは、トッププレートやケースを貫通するシャフトを有し、駆動源として他の機器において利用されるようなものであってもよい。ケースにシャフトが保持されており、ロータはそのシャフトを貫通する軸受を保持していてもよい。モータは、すべり軸受やワッシャに代えて、他の形式の軸受などを用いたものであってもよい。
【0084】
モータの磁極の数や極歯の数は上述に限られず、さらに多くてもよいし、これより少なくてもよい。モータは、モータケースが有底円筒状の丸形ものに限られず、角型のものであってもよい。
【0085】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 クローポール型ブラシレスモータ
2 ケース
10 ロータ
11 環状磁石
15 ウエイト
25 シャフト
30 上ステータヨーク
31 平板部
30a,30b,30c 上ステータヨークの極歯
40 下ステータヨーク
41 平板部
40a,40b,40c 下ステータヨークの極歯
50 コイル
51,52 コイルの巻回端部
60 保持部材
61 平板部
63(63a〜63f) 位置決め突起(位置決め部の一例)
65,66 突起部
67a 第1の突起
67b 第2の突起
70 配線用基板
71,72 ランド部
100 固定子モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ平板状に形成され、互いに対面交差する複数の極歯がそれぞれ周状に並ぶようにして突設された上下一対のステータヨークと、
前記複数の極歯の外周に、前記一対のステータヨークの間に挟まれるようにして配置されたコイルと、
前記一対のステータヨークのうち下方のステータヨークに沿うように配置され、前記一対のステータヨーク及び前記コイルが保持された保持部材と、
前記複数の極歯に対向するように配置された磁石を有するロータと、
前記保持部材の下方に、前記一対のステータヨークとの間に前記保持部材を挟むようにして配置され、前記コイルの巻回端部が接続される配線用基板とを備え、
前記保持部材は、前記コイルの巻回端部を絡げることができるように、前記配線用基板に沿うように突出する突起部を有する、クローポール型ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記保持部材は、さらに、前記一対のステータヨークのそれぞれを前記保持部材に対して位置決めする位置決め部を有する、請求項1に記載のクローポール型ブラシレスモータ。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記一対のステータヨークに向けて上方に突出する複数の位置決め突起を有し、
前記一対のステータヨークのそれぞれが、そのステータヨークの1つ又は2つ以上の極歯が前記複数の位置決め突起のうち少なくとも2つの位置決め突起に挟まれるようにして、前記保持部材に取り付けられていることで、前記一対のステータヨークのそれぞれが前記保持部材に対して位置決めされる、請求項2に記載のクローポール型ブラシレスモータ。
【請求項4】
前記突起部は、前記配線用基板のうち前記巻回端部が接続されるランド部に対応する位置に設けられ、平面視で前記ランド部を挟むように配置された2つの突起を有しており、
前記ランド部に接続される巻回端部は、前記2つの突起のそれぞれに絡げられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のクローポール型ブラシレスモータ。
【請求項5】
前記ロータは、前記ロータの重心を前記ロータの回転軸上からずらすウエイトを有し、
前記ロータが回転することで、振動を発生させる、請求項1から4のいずれか1項に記載のクローポール型ブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115941(P2013−115941A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260638(P2011−260638)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】