説明

グラビア塗工装置、及びグラビア塗工方法

【課題】塗工面端部での塗工材の盛り上り抑制し、メンテナンスの頻度を抑えられるグラビア塗工装置及びグラビア塗工方法の提供。
【解決手段】薄膜50に複数条の塗工膜50aを形成する大径部21aを有するグラビアロール21と、隣り合う大径部21aの間に設けられる掻き取り部材40とを備え、薄膜50に塗工材18を塗布するグラビア塗工装置10において、掻き取り部材40を、大径部21aの大径部端面21abに押圧するサイドパッキン41及び楔プレート42を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜にグラビア塗工装置を用いて塗工部材を塗工する技術に関し、詳しくは薄膜に対して複数条の塗工部を形成する際に、グラビアロールの塗工部端部のエッジに塗工材が溜まることを防ぐ技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの電子機器の電源として二次電池が用いられ、車載用の電源としても二次電池の利用が検討されている。それに伴い、二次電池の大容量化や高出力化及び軽量化の要請も高くなってきた。
このような背景により、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などの各種二次電池の開発が進められている。
【0003】
二次電池の製法としては、金属製の芯材(箔)に活物質を塗布して巻き、電池の電極板として用いる方法が知られている。活物質を塗布した塗工部の表面にさらに多孔質絶縁膜からなる保護膜を形成する。
このような芯材に保護膜等を塗布する方法は色々提案されているが、膜厚の均一性を保つためにはグラビア塗工装置を用いて塗工材を塗布する方法が考えられる。芯材に形成される塗工部の厚みが薄い場合は、グラビア塗工装置を用いると有利となるためである。
【0004】
グラビア塗工装置を用いて芯材に活物質や保護膜等の塗工材を塗布する場合には、以下のような流れとなる。
まず、グラビア塗工装置を用いて塗工材を芯材に塗布する。その後、塗工部を乾燥・圧縮処理を行う。最後に、切断加工して所望の大きさの二次電池の電極板を製造する。
このような、グラビア塗工装置によって塗工材を塗布する方法を用いる場合、塗布速度はそれ程あげることができない。そこで、生産コストの低減を図るため、グラビア塗工装置に用いるグラビアロールの版胴部を複数条備えて一度に複数の芯材を製作する方法が検討されている。
【0005】
特許文献1では、芯材に活物質や保護膜等の塗工材を塗布する際にグラビア塗工装置を用いる方法を開示している。
芯材に塗工材を塗布するためのグラビアロールは複数の版胴部を備えており、版胴部と版胴部の間には一段径が細くなった小径部を備えている。又、版胴部の側面に接触するようなロール半径方向に沿って接し、版胴部から塗工材となる塗工液を掻き取るエッジが形成された掻き取り部材を備えている。
そして、版胴部が塗工液とグラビアロール下面で接触することで、版胴部の表面に塗工液を供給すると共に、掻き取り部材のエッジで塗工液を掻き取ることで、版胴部の膜厚の均一性を確保することが可能である。
【0006】
芯材に塗布される塗工液の膜厚に影響するのが、版胴部の端部に形成される塗工液の膜厚である。
グラビアロールを用いて芯材に塗布する場合、グラビアロールには塗布を行う版胴部が形成され、芯材に未塗工部を形成するために、版胴部の径よりも径の細い小径部が形成されている。この部分を複数作れば、版胴部をストライプ状に形成することが可能となる。
しかし、グラビアロールは塗工材を溜めたパンに版胴部を漬け、塗工材を版胴部の表面に留まらせる構成となっていることから、版胴部の側面に塗工材が付いてしまうと、版胴部の表面側に塗工材が流れ、その結果、版胴部の表面の端部に塗工液が溜まり、芯材への塗布の幅が変化してしまう結果となり問題となる。
【0007】
グラビア塗工装置のグラビアロールに設けられる版胴部が1カ所であり、芯材に1条の塗工部を形成する場合には、版胴部の両端にプレート状の掻き取り部材を当接させることで、余分な塗工液を掻き取ることができる。しかし、複数の版胴部を備えていると、隣り合う版胴部の間には、プレート状の掻き取り部材を挿入しにくい。
このため、グラビアロールの版胴部と版胴部の間に、版胴部の側面に接触するようなロール半径方向に沿って接し、版胴部から塗工材となる塗工液を掻き取るエッジが形成された掻き取り部材を挿入することで、掻き取り部材のエッジが塗工液を掻き取り、塗工幅の変化を抑制する。
【0008】
こうすることで、版胴部と版胴部の間にも掻き取り部材を挿入することが可能となる。
結果として、版胴部の表面の端部には塗工液が溜まりにくくなり、芯材に均一な厚みの塗工液を塗布することが可能となる。
【0009】
【特許文献1】特開2007−253108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1には、以下のような課題があると考えられる。
特許文献1に開示される技術では、複数条の版胴部を持つグラビアロールの、端部を掻き取るため掻き取り部材が設けられている。しかしこの掻き取り部材と、版胴部の端面とは、塗工材を掻き取るために常に摺動する状態である必要がある。
このため、使用を続けると摩耗してグラビアロールの版胴部分のエッジと掻き取り部材との間に僅かながら隙間が発生する虞がある。
【0011】
この発生した隙間に塗工材が入り込むと、グラビアロールの版胴部分の表面である塗工面のエッジに塗工材の盛り上がりを作る結果となり、塗工の精度が悪化するという問題がある。
掻き取り部材は版胴部を傷つけないように樹脂等の柔らかい部材で形成されることが多く、摩耗し易い。このため取り替え頻度が高くなるとメンテナンスに要する時間も増えてしまうという問題もある。
【0012】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、塗工面端部での塗工材の盛り上り抑制し、メンテナンスの頻度を抑えられるグラビア塗工装置及びグラビア塗工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明によるグラビア塗工装置は以下のような特徴を有する。
(1)シートに複数条の被塗工面を形成する塗工部を有するグラビアロールと、隣り合う前記塗工部の間に設けられる掻き取り部材とを備え、前記シートに塗工材を塗布するグラビア塗工装置において、
前記掻き取り部材を、前記塗工部の側面に押圧する押圧機構を備えていることを特徴とする。
【0014】
(2)(1)に記載のグラビア塗工装置において、
前記掻き取り部材は、先端に前記グラビアロールの回転方向に沿ってテーパ状に設けられた凹部を備え、前記押圧機構は、前記掻き取り部材の前記凹部に係合するテーパ状の凸部を有する押さえ部材と、前記押さえ部材を前記凹部に向けて付勢する付勢手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
前記目的を達成するために、本発明によるグラビア塗工方法は以下のような特徴を有する。
(3)シートに複数条の被塗工面を形成する塗工部を有するグラビアロールと、隣り合う前記塗工部の間に設けられる掻き取り部材とを備え、前記シートに塗工材を塗布するグラビア塗工方法において、
前記掻き取り部材を前記塗工部の側面に押圧しながら、前記シートに複数条の被塗工面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような特徴を有する本発明によるグラビア塗工装置により、以下のような作用、効果が得られる。
まず、(1)に記載される発明は、シートに複数条の被塗工面を形成する塗工部を有するグラビアロールと、隣り合う塗工部の間に設けられる掻き取り部材とを備え、シートに塗工材を塗布するグラビア塗工装置において、掻き取り部材を、塗工部の側面に押圧する押圧機構を備えているものである。
【0017】
掻き取り部材を押圧する押圧機構を備えているので、グラビアロールの塗工部の側面に対して、常に適切な押圧力で掻き取り部材を押圧することが可能となる。このため、掻き取り部材と塗工部の側面との間に隙間が生じず、塗工材が塗工部の端部に溜まるようなことが無くなる。この結果、シートに形成する複数条の被塗工面を精度良く形成することが可能になる。
また、掻き取り部材を押圧機構で押圧しているため、掻き取り部材が摩耗してきても、掻き取り部材を塗工部の側面に接触させていることができ、メンテナンスの頻度を低くすることが可能となる。
【0018】
また、(2)に記載される発明は、(1)に記載のグラビア塗工装置において、掻き取り部材は、先端にグラビアロールの回転方向に沿ってテーパ状に設けられた凹部を備え、押圧機構は、掻き取り部材の凹部に係合するテーパ状の凸部を有する押さえ部材と、押さえ部材を凹部に向けて付勢する付勢手段と、を有するものである。
【0019】
押さえ部材は、押さえ部材を凹部に向けて付勢する付勢手段が備えられているため、グラビアロールとの摩擦によってグラビアロールと同じ方向に回転しようとする掻き取り部材は、塗工部の側面に押し付けられる結果となる。このため、掻き取り部材を押圧する押圧機構は駆動装置を備えずに掻き取り部材をグラビアロールの塗工部の側面に押圧する力を得ることができる。
グラビアロールの塗工部と塗工部の間が狭い場合、押圧機構の押圧力を駆動装置によって得ることは、スペース上の制約があり困難となる。
【0020】
しかしながら、グラビアロールの回転力によって塗工部の側面に掻き取り部材を押圧する力を得ることができるため、グラビアロールの塗工部と塗工部との間が狭い場合にも対応することが可能となる。
また、押圧機構に駆動装置を用いた場合には、塗工材が付着することでの動作不良が発生する虞がある点が問題となる。二次電池の基材に用いる塗工材は、アルミナの粉末や溶剤が用いられるケースも多い。このため、塗工材が駆動装置内にはいると駆動装置に悪影響を及ぼす虞がある。したがって、駆動装置を用いない押圧機構を実現できることはメリットが大きい。
【0021】
また、このような特徴を有する本発明によるグラビア塗工方法により、以下のような作用、効果が得られる。
まず、(3)に記載される発明は、シートに複数条の被塗工面を形成する塗工部を有するグラビアロールと、隣り合う塗工部の間に設けられる掻き取り部材とを備え、シートに塗工材を塗布するグラビア塗工方法において、掻き取り部材を塗工部の側面に押圧しながら、シートに複数条の被塗工面を形成するものである。
【0022】
塗工部と塗工部の間に備える掻き取り部材を、塗工部の側面に押圧しながらシートに複数条の被塗工面を形成しているので、(1)及び(2)に記載のグラビア塗工方法と同様に、塗工部の端部に塗工材が盛り上がるような現象を避けることができ、シートに形成される被塗工面の寸法精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態のグラビア塗工装置10の概略側面図を示す。図2に、グラビア塗工装置10の概略正面図を示す。
グラビア塗工装置10は、シートである薄膜50に活物質等の塗工材18を塗工するための装置である。薄膜50は、リチウムイオン電池に用いられる基材であり、数十μm程度の厚みの銅箔、或いはアルミニウム箔である。塗工される塗工材18は数Pas程度の粘度を有するアルミナが混入された液体である。塗工材18は薄膜50上に数μm程度の厚みで塗布され、後述する塗工膜50aが一定の膜厚で形成される。この塗工膜50aは、二次電池に用いられる活物質の表面上に塗られて形成されるか、あるいは活物質の下に塗布され、その上に活物質の層が形成される。このような塗工膜50a及び活物質層は薄膜50の両面に設けられる。
【0024】
グラビア塗工装置10はベース11の上に取り付けられた支持筐体12と、支持筐体12に支持されるアーム13と、支持機構30の上部に配置される塗工機構部20よりなる。
薄膜50は複数のローラに通され、塗工機構部20に備えるグラビアロール21と、アーム13に備えられる押圧ローラ14の間にも通されている。この結果、薄膜50は押圧ローラ14によってグラビアロール21側にテンションがかけられた状態となる。
グラビア塗工装置10の後工程には、図示しない乾燥炉等がある。グラビア塗工装置10によって、薄膜50の表面に活物質等の膜が形成された後、後工程の乾燥炉で乾燥され、最終的には図示しないボビンに巻き取られる。
【0025】
グラビアロール21は、図2に示すようにカップリング36を介して駆動モータ35が接続されている。この駆動モータ35には、サーボモータ等の回転を制御可能なモータが用いられることが好ましい。
グラビアロール21は駆動モータ35から動力を得て回転する。そして、送られていく薄膜50の表面に、グラビアロール21が塗工材18を塗工していく。
【0026】
図3に、グラビアロール21とドクターブレード22の関係を斜視図で示す。
グラビアロール21は、大径部21aと小径部21bとが交互に設けられ、両端部21cの片側がカップリング36と接続され、駆動モータ35から動力を得る。図3に示す矢印は、グラビアロール21の回転方向を示している。
大径部21aは小径部21bまたは端部21cよりも一段大径に形成されている。ここで、大径部21aの表面を塗工面21aaとし、大径部21aの側面を大径部端面21abと呼ぶことにする。この塗工面21aaには塗工材18を保持するための凹凸が設けられている。なお、大径部21aは従来技術で版胴部と表現された部分と同じ機能を果たす。
【0027】
ドクターブレード22は、グラビアロール21の大径部21aの表面に当接するようにグラビア塗工装置10に取り付けられている。単純な固定方式でも良いが、本実施形態では図示しないシリンダなどによって一定の力を加えて、ドクターブレード22をグラビアロール21に押し付け、ドクターブレード22によって大径部21aの表面に付いた塗工材18を掻き落とすことができるものとする。
本実施形態に用いられているドクターブレード22は樹脂製のブレードであり、樹脂製のプレートを金属製の治具で挟んで固定する構造となっている。
グラビアロール21にドクターブレード22が接触して回転することで摩耗し、金属粉が塗工材18に混入すると二次電池の性能に悪影響を与える虞がある。このため、グラビアロール21側が金属であるのに対して、ドクターブレード22側は樹脂とし、かつ、グラビアロール21の材質に比べてドクターブレード22は硬度が低く、ドクターブレード22側が消耗するように設計されている。
なお、ドクターブレード22の材質については導電性が低いか絶縁性を示す物質であれば特に限定されるものではない。
【0028】
図4に、塗工機構部20の上部の構成について説明をする断面図を示す。また、図5に、塗工機構部20の上部の構成について説明をする正面図を示す。
塗工機構部20に備えられるグラビアロール21は、ペースト供給ダイ25に設けられたU字溝25aに一部が収まるように設計されており、ペースト供給ダイ25のU字溝25aには、塗工材18が流路25bを通って下部から供給される。
つまり、グラビアロール21の大径部21aの塗工面21aaには下部で塗工材18が供給されることになる。
【0029】
掻き取り部材40は、実際に塗工材18を掻き取る働きをするサイドパッキン41と、押さえ部材となる楔プレート42と、付勢手段となるパッキン押さえ43とから成る。
図6に、掻き取り部材40の分解斜視図を示す。
サイドパッキン41は半割環状の樹脂部材であり、先端部分にはテーパ部41aを備えている。サイドパッキン41に用いる樹脂は、耐摺動性が高くかつ耐薬品性に優れていることが望ましい。例えばPTFE等の樹脂が考えられる。
楔プレート42は押さえ接続部42aと楔状突起部42bからなる。押さえ接続部42aの形状はどんなカタチでも良いが、楔状突起部42bはテーパ部41aに対応した形状となっており、同様のテーパが設けられている。このテーパ部41aと楔状突起部42bの斜面の角度によって、大径部端面21abへの押さえつける力を調節することが可能である。
【0030】
掻き取り部材40は、グラビアロール21の隣り合う大径部21aの間に配置されている。大径部21aの大径部端面21abにはサイドパッキン41の側面が当接する。一方、ペースト供給ダイ25に固定されたパッキン押さえ43が楔プレート42の押さえ接続部42aに接続されている。
サイドパッキン41に対して楔プレート42は、グラビアロール21の回転方向に対して後方に取り付けられており、テーパ部41aは楔状突起部42bのテーパ面に接するように配置されている。
サイドパッキン41はグラビアロール21の重量を受けてペースト供給ダイ25のU字溝25a内部に配置される。
なお、グラビアロール21は端部21cに別途ベアリングが用意されて保持されているものとする。
【0031】
本実施形態のグラビア塗工装置10は上記構成となっているので、以下に説明する作用効果を示す。
グラビアロール21に形成されている大径部21aの塗工面21aaは、図4及び図5に3カ所とも薄膜50に接触し、塗工材18を薄膜50に塗工することができる。したがって、薄膜50には同時に3条の塗工膜50aを形成する。
グラビアロール21は、ペースト供給ダイ25の流路25bから供給された塗工材18をU字溝25a内で大径部21aの塗工面21aaに接触させることで、大径部21aに形成された塗工面21aaに塗工材18を付着させる。塗工面21aaには細かい凹凸が設けられており、塗工材18はこの凹凸の内部にも入り込む。
またこの際に、グラビアロール21の小径部21bにも塗工材18は付着してしまう。
【0032】
図7に、掻き取り部材40の模式図を示す。
このグラビアロール21が回転することで、グラビアロール21の小径部21bの外周面に接触しているサイドパッキン41も同じ方向に回転力F1が発生することになる。グラビアロール21の小径部21bの外周面と、サイドパッキン41の内周面は接触しており、グラビアロール21の回転によってサイドパッキン41との間に摩擦力が生じる。この力が回転力F1となってサイドパッキン41に作用する。
そして、サイドパッキン41の進行方向に楔プレート42が配置されているため、サイドパッキン41の回転によって、テーパ部41aは楔プレート42の楔状突起部42bのテーパ面と接触することになる。向かい合うサイドパッキン41のテーパ部41aは、回転方向に沿ってテーパ状に設けられているため、契合する楔状突起部42bのテーパ面に回転力F1が作用する。そして、楔状突起部42bのテーパ面の形状によって、分力F2が発生することになる。
【0033】
この分力F2はサイドパッキン41の先端部分に作用し、サイドパッキン41の先端部分はグラビアロール21の大径部端面21abに押し付けられることになる。
図8にグラビアロール21の大径部21aの端部に塗工材18が溜まる様子を表す模式断面図を示す。
グラビアロール21の大径部21aの表面にはローレット状の細かい溝が設けてあるため、塗工面21aaに塗工材18を必要な量だけ溜めることができる。
しかし、大径部端面21abの側面に塗工材18が付着すると、付着した塗工材18が遠心力によって外側に移動し、塗工面21aaの端部に図8に示すような液溜まりを作ることになる。
【0034】
このため、掻き取り部材40のサイドパッキン41を適当な力で大径部端面21abに当接させることで、このような塗工材18の液溜まりを防ぐことが可能となる。
こうして、グラビアロール21の塗工面21aaに付着させた塗工材18を薄膜50に当接させて薄膜50上に塗工材18を一定の厚みで塗工する。
図9に、薄膜50を塗工した後に、所定の大きさに分割する様子を示す。
グラビア塗工装置10で薄膜50に3条の塗工膜50aを一様に形成した後、図9に示すように6つの電極用薄膜51に切断して分割する。この電極用薄膜51を一定の長さに切り、ロール上に巻いた状態にして二次電池の電極とする。
【0035】
本実施形態は上記構成及び作用を示すので、以下に説明する効果を奏する。
まず、第1の効果として、塗工面21aaの端部に塗工材18の盛り上ることを抑制できる点が挙げられる。
本実施形態のグラビア塗工装置10は、薄膜50に複数条の塗工膜50aを形成する大径部21aを有するグラビアロール21と、隣り合う大径部21aの間に設けられる掻き取り部材40とを備え、薄膜50に塗工材18を塗布するグラビア塗工装置10において、掻き取り部材40を、大径部21aの大径部端面21abに押圧するサイドパッキン41及び楔プレート42を備えているものである。
【0036】
掻き取り部材40にサイドパッキン41及び楔プレート42を備えていることで、グラビアロール21の回転力F1を利用して、サイドパッキン41をグラビアロール21の大径部端面21abに適切な力で押し付けることが可能となり、その結果、大径部端面21abに付着する塗工材18を掻き落とすことができる。
塗工面21aaの端部に盛り上る塗工材18は、大径部端面21abに付着する塗工材18がグラビアロール21の遠心力で外周方向に流れてきて溜まるものである。したがって、サイドパッキン41で大径部端面21abに付着する塗工材18を掻き落とすことで、ほぼ塗工面21aaの端部に塗工材18が盛り上ることを防ぐことができ、残りはドクターブレード22で掻き落とすことができる。したがって、塗工材18の飛散によりグラビア塗工装置10自身や薄膜50を汚すことを防ぐことができる。
【0037】
また、第2の効果として、メンテナンス性が高いことが挙げられる。
前述の通り掻き取り部材40には押圧機構としてサイドパッキン41及び楔プレート42を備えている。駆動機構はグラビアロール21の回転力F1を利用して分力F2を発生させ、グラビア塗工装置10の稼動中はサイドパッキン41を大径部端面21abに押し付ける力が発生している。
【0038】
したがって、常時適切な力で押圧されており、サイドパッキン41が磨耗しても継続的にグラビアロール21の大径部端面21abに付着する塗工材18の掻き取りを続けることができるため、メンテナンスのスパンを長くすることができる。
また、構造が簡単なので清掃、交換等が容易でありメンテナンスが容易である。
さらに、回転力F1によって分力F2が発生し、グラビアロール21のグラビアロール21の大径部端面21abにサイドパッキン41が押し付けられる方式であるので、自身に押圧力を調整する機能があり、組み付け精度を必要としない。このこともメンテナンス性の向上に貢献している。
【0039】
また、第3の効果として、グラビアロール21の大きさにより押圧機構に大きさの制限がある場合にも対応できる点が挙げられる。
グラビア塗工装置10の、掻き取り部材40は、先端にグラビアロール21の回転方向に沿ってテーパ状に設けられた、向かい合うことでV字状になるテーパ部41aを備え、押圧機構は、掻き取り部材40の向かい合うテーパ部4に係合するテーパ状の楔状突起部42bを有する楔プレート42と、楔プレート42を楔状突起部42bに向けて付勢するパッキン押さえ43と、を有するものである。
【0040】
楔プレート42は、楔プレート42を向かい合うことでV字状になるテーパ部41aに向けて付勢するパッキン押さえ43が備えられているため、グラビアロール21との摩擦によってグラビアロール21と同じ方向に回転しようとする掻き取り部材40は、大径部21aの大径部端面21abに押し付けられる結果となる。このため、掻き取り部材40を押圧する押圧機構は駆動装置を備えずにサイドパッキン41をグラビアロール21の大径部端面21abに押圧する力を得ることができる。
グラビアロール21の大径部21aと大径部21aの間が狭い場合、押圧機構の押圧力を駆動装置によって得ることは、スペース上の制約があり困難となる。
【0041】
しかしながら、グラビアロール21の回転力F1によって大径部21aの大径部端面21abにサイドパッキン41を押圧する力を得ることができるため、グラビアロール21の大径部21aと大径部21aとの間が狭い場合にも対応することが可能となる。
また、押圧機構に駆動装置を用いた場合には、塗工材18が付着することでの動作不良が発生する虞がある点が問題となる。二次電池の基材に用いる塗工材18は、アルミナの粉末や溶剤が用いられるケースも多い。このため、塗工材18が駆動装置内にはいると駆動装置に悪影響を及ぼす虞がある。したがって、駆動装置を用いない押圧機構を実現できることはメリットが大きい。
【0042】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
例えば、掻き取り部材40に採用しているサイドパッキン41と楔プレート42の形状についても、変更を妨げない。本実施形態ではサイドパッキン41を2つ用いる構成としているが、例えばサイドパッキン41を一体化してテーパ部41aに該当するV字の溝を作り、中心部にグラビアロール21の外周に沿ってスリットを設ける構成としても良い。また、楔プレート42の形状も楔状突起部42bを必要に応じて長くしたり、短くしたりすることを妨げない。
【0043】
また、本実施形態には部品の材質を示している部分があるが、適宜同じ機能を果たす別の部材に置き換えることを妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態の、グラビア塗工装置の概略側面図を示している。
【図2】本実施形態の、グラビア塗工装置の概略正面図を示している。
【図3】本実施形態の、グラビアロールとドクターブレードの関係を斜視図で示している。
【図4】本実施形態の、塗工機構部の上部の構成について説明をする断面図を示している。
【図5】本実施形態の、塗工機構部の上部の構成について説明をする正面図を示している。
【図6】本実施形態の、掻き取り部材の分解斜視図を示している。
【図7】本実施形態の、掻き取り部材の模式図を示している。
【図8】本実施形態の、グラビアロールの大径部の端部に塗工材が溜まる様子を表す模式断面図を示している。
【図9】本実施形態の、薄膜を塗工した後に、所定の大きさに分割した様子を表し模式図を示している。
【符号の説明】
【0045】
10 グラビア塗工装置
11 ベース
12 支持筐体
13 アーム
14 押圧ローラ
18 塗工材
20 塗工機構部
21 グラビアロール
21a 大径部
21aa 塗工面
21ab 大径部端面
21b 小径部
21c 端部
22 ドクターブレード
25 ペースト供給ダイ
25a U字溝
25b 流路
30 支持機構
35 駆動モータ
36 カップリング
40 部材
41 サイドパッキン
41a テーパ部
42 楔プレート
42a 押さえ接続部
42b 楔状突起部
43 パッキン押さえ
50 薄膜
50a 塗工膜
51 電極用薄膜
F1 回転力
F2 分力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに複数条の被塗工面を形成する塗工部を有するグラビアロールと、隣り合う前記塗工部の間に設けられる掻き取り部材とを備え、前記シートに塗工材を塗布するグラビア塗工装置において、
前記掻き取り部材を、前記塗工部の側面に押圧する押圧機構を備えていることを特徴とするグラビア塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグラビア塗工装置において、
前記掻き取り部材は、先端に前記グラビアロールの回転方向に沿ってテーパ状に設けられた凹部を備え、
前記押圧機構は、
前記掻き取り部材の前記凹部に係合するテーパ状の凸部を有する押さえ部材と、
前記押さえ部材を前記凹部に向けて付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とするグラビア塗工装置。
【請求項3】
シートに複数条の被塗工面を形成する塗工部を有するグラビアロールと、隣り合う前記塗工部の間に設けられる掻き取り部材とを備え、前記シートに塗工材を塗布するグラビア塗工方法において、
前記掻き取り部材を前記塗工部の側面に押圧しながら、前記シートに複数条の被塗工面を形成することを特徴とする
グラビア塗工方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−279521(P2009−279521A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134470(P2008−134470)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】