グランドアンカー打設装置及び打設方法
【課題】グランドアンカーの打設に要する施行工程数の削減を可能にしたグランドアンカー打設装置及び打設方法を提供する。
【解決手段】ボーリングロッド12に回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して穿孔ビット16で地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進し、同時にワイヤーロープ20を穿孔された孔内に順次引き込む。地山への穿孔が終了した後は、ボーリングロッド12を穿孔時と逆に回転してビットアダプタ14を穿孔ビット16から分離する。そして、穿孔ビット16とケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とワイヤーロープ20を穿孔された孔に残したまま、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を孔内から引き抜きながら、ボーリングロッド12を通して、孔内にグラウトを加圧注入してワイヤーロープを地山に定着する。
【解決手段】ボーリングロッド12に回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して穿孔ビット16で地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進し、同時にワイヤーロープ20を穿孔された孔内に順次引き込む。地山への穿孔が終了した後は、ボーリングロッド12を穿孔時と逆に回転してビットアダプタ14を穿孔ビット16から分離する。そして、穿孔ビット16とケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とワイヤーロープ20を穿孔された孔に残したまま、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を孔内から引き抜きながら、ボーリングロッド12を通して、孔内にグラウトを加圧注入してワイヤーロープを地山に定着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグランドアンカーの打設装置及び打設方法に関し、さらに詳しくは、地山に穿孔しながらワイヤーロープからなるグランドアンカーを挿入し定着できるようにしたグランドアンカー打設装置及び打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グランドアンカーは、山岳トンネルにおける切羽の前方補強に利用されるほか、根切りの土止め壁の支保のような仮設構造物、あるいは切り取り斜面の安定確保や地滑り防止など永久構造物のアンカーとして用いられている(特許文献1または2参照)。
一方、この種グランドアンカーの地山や地盤への打設には、主に二重管削孔方式が採用されている。以下、根切りの土止め壁用支保として使用されるグランドアンカーの打設方法について、図13を参照して説明する。
【0003】
このようなグランドアンカーの打設に使用される二重管削孔装置70は、図13(a)に示すように、先端に回転可能に取り付けられたアウタビッド7202を有する外管72と、外管72内に挿通された内管74と、内管74の先端に設けられ、アウタビッド7202の内側と係脱可能に係合されるインナービッド7402と、内管74の後端に連結され、内管74に回転と打撃力を付与する回転打撃機構76と、回転打撃機構76を含む内管74及び外管72を地山82への掘進方向に移動させる押込み機構78とを備える。また、このように構成された二重管削孔装置70は、フレーム81を介して走行装置80に装着されて使用される。
【0004】
二重管削孔装置70を用いて地山82の土止め壁84の支保に用いられるグランドアンカーを打設する場合は、まず、走行装置80に装着された二重管削孔装置70のアウタビッド7202及びインナービッド7402の先端面を土止め壁84の外面に押し当てた状態で回転打撃機構76及び押込み機構78を駆動する。回転打撃機構76及び押込み機構78が駆動されると、押込み機構78による押込み力と回転打撃機構76による回転及び打撃力が、内管74を介してインナービッド7402に伝達され、同時にアウタビッド7202もインナービッド7402と一体に回転されながら推進される。これにより、土止め壁84が掘削される。そして、土止め壁84を貫通したインナービッド7402及びアウタビッド7202は、押込み機構78による押込み力と回転打撃機構76による回転及び打撃で地山82を穿孔し、図13(a)に示すように孔86を形成する。これと同時に外管72は、押込み機構78による押込み力によって孔86の掘進方向に押し込まれ、孔86の崩れをカバーする。
【0005】
この時、給水口88から穿孔水が内管74を通してアウタビッド7202及びインナービッド7402に供給される。そして、アウタビッド7202及びインナービッド7402で掘削された繰り粉(スライム)は、アウタビッド7202及びインナービッド7402に供給された穿孔水により、インナービッド7402に設けられている周知の還流通路から、外管72の内周と内管74の外周との間に形成される空間を通して外部に排出される。
【0006】
地山82に希望する一定長さ(例えば10m〜15m程度)の孔86が形成されたならば、内管74を掘削方向と逆の方向に回転して、インナービッド7402のアウタビッド7202との係合を解除する。この状態で、押込み機構78を押し込み方向と逆の方向に動作させることにより、インナービッド7402を含む内管74を図13(b)に示すように引き抜く。しかる後、外管72を通して洗浄水を注入することにより孔86内を洗浄する。
【0007】
次に、図13(c)に示すように、テンドンと称されるPC鋼より線や多重PC鋼より線などからなるワイヤーロープ90を外管72内を通して孔86の奥部先端近傍まで挿入する。その後、図13(d)に示すように、小形運搬機92に装着された油圧ユニット9202により駆動される引抜きジャッキ9204で外管72を引き抜きながら、外管72を通してセントミルク等のグラウト94を加圧注入する。
グラウト94の加圧注入が終了したならば、図13(e)に示すように、ワイヤーロープ90を緊張ジャッキ89により緊張させる。しかる後、図13(f)に示すように、ワイヤーロープ90を定着プレート96により固定して定着させる。これにより、地山中にグランドアンカーを打設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−239830号公報
【特許文献2】特開平9−100688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来の二重管削孔方式のグランドアンカー打設方法においては、掘削により生じた繰り粉(スライム)は削孔水と共に、外管72の内周と内管74の外周との間に形成される空間を通して削孔86外に排出できるため、繰り粉を確実に孔86外へ排出することができ、多様な地盤に対応できるほか、外管72の引き抜きを削孔機または引抜きジャッキで容易に行うことができる。
しかしながら、上記従来のグランドアンカー打設方法では、インナービッド7402を含む内管74を引き抜いた後、ワイヤーロープ90を外管72を通して削孔86内に挿入する工程が必要になり、しかも、内管74の他に外管72も必要になる。このため、これらワイヤーロープ90の挿入工程に加えて内管74及び外管72の引き抜き工程が必要になり、その分、工程数が増加し、グランドアンカーの打設が煩雑になり、その打設に多くの時間を要するほか、打設能率も低く、コスト高になるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、その目的は、グランドアンカーの打設に要する施行工程数の削減を可能にしたグランドアンカー打設装置及び打設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明はグランドアンカー打設装置であって、地山への穿孔用の回転と打撃力が付与される中空のボーリングロッドと、前記ボーリングロッドの先端に前記ボーリングロッドの軸線と軸線を一致して前記ボーリングロッドの軸線方向に移動不能かつ前記ボーリングロッドと一体回転するように設けられたビットアダプタと、前記ビットアダプタの先端に前記ビットアダプタの軸線と軸線を一致させて設けられる穿孔ビットと、前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとをそれらの軸線方向に移動不能でそれらが一体回転可能かつ分離可能に結合させ前記ボーリングロッドの基端側からの操作で前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとを分離させる着脱機構と、前記ビットアダプタの外周に配置され軸線方向の一端が前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結され前記穿孔ビットにより穿孔された孔に挿入される外径で形成された外側部材と、前記外側部材に設けられ前記ボーリングロッドの長さ方向に沿って配置される複数のワイヤーロープの一端を連結する連結機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明はグランドアンカー打設方法であって、中空のボーリングロッドの先端にビットアダプタを設け、前記ビットアダプタの先端に穿孔ビットを分離可能に設け、前記ビットアダプタの外周で前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能に前記穿孔ビットに外側部材を連結し、前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記外側部材の周方向に間隔をおいた複数箇所に複数のワイヤーロープの一端をそれぞれ連結し、前記ボーリングロッドに回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して前記穿孔ビットで地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進し、同時に前記外側部材により前記ワイヤーロープを前記穿孔された孔内に順次引き込む穿孔引き込み工程と、前記地山への穿孔が終了した後、前記ビットアダプタを前記穿孔ビットから分離し、前記穿孔ビットと前記外側部材と前記ワイヤーロープを前記孔内に残したまま前記ビットアダプタと前記ボーリングロッドを前記孔内から引き抜きながら前記ボーリングロッドを通して前記孔内にグラウトを加圧注入するグラウト注入工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグランドアンカー打設装置及び打設方法によれば、地山に穿孔しながら穿孔された孔内にワイヤーロープを挿入し定着することができる。これにより、グランドアンカーの打設に要する施行工程数を削減でき、打設の能率化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかるグランドアンカー打設装置の一例を示す要部の断面図。
【図2】図1の矢印A方向から見た穿孔ビットの正面図。
【図3】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結部材を構成するワイヤー連結スリーブの一部切欠きの側面図。
【図4】図3の矢印B方向から見たワイヤー連結スリーブの底面図。
【図5】本発明にかかるグランドアンカー打設装置の作業手順を示す説明図。
【図6】本発明のグランドアンカー打設装置におけるケーシングシュへのスタビライザーの装着例を示す説明図。
【図7】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の他の例を示す説明図。
【図8】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープのワイヤー連結スリーブへの接続方式の変形例を示す説明用側面図。
【図9】図8のC−C線に沿う断面図。
【図10】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の更に他の例を示す説明図。
【図11】本発明のグランドアンカー打設装置で打設されたワイヤーロープにより補強されたトンネルの説明用正面図。
【図12】本発明のグランドアンカー打設装置で打設されたワイヤーロープが地山及び切羽方向に打設された状態を示すトンネルの縦断側面図。
【図13】従来におけるグランドアンカー打設方法の作業手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明にかかるグランドアンカー打設装置の実施の形態1について図1乃至図5を参照して説明する。
第1の実施の形態に示すグランドアンカー打設装置100は、トンネルが掘削される軟弱地盤層の地盤を改良し切羽などの地山を補強し、あるいは土止め壁の支保用仮設構造物や切り取り斜面の安定確保などの永久構造物のグランドアンカーとして地山に自穿孔式で打設されるタイプのもので、ボーリングロッド12、ビットアダプタ14、穿孔ビット16、ケーシングシュ18、ワイヤーロープ20、連結機構22、ビット先導管24及び着脱機構30等を含んで構成される。
【0016】
ボーリングロッド12は、図示省略した周知の削孔機(ロータリーパーカッション等)から付与された回転と打撃力及び掘進力を穿孔ビット16に伝達するものであり、穿孔水やグラウトの注入が可能なように中空の金属製ロッドから構成されている。また、このボーリングロッド12は、長さが1m〜5m程度のロッド1202を複数本、カップリング1204により一直線状に結合することで構成される。この場合、ボーリングロッド12の全体の長さは、地山に穿孔される孔の深さにより設定されるが、例えば10m〜20m程度である。したがって、実際の地山への穿孔では、長さが1m〜5m程度のロッド1202をカップリング1204で順次継ぎ足すことで、地山への穿孔に必要な長さのボーリングロッド12を確保している。
【0017】
ビットアダプタ14は、ボーリングロッド12に付与される穿孔用の回転と打撃力を穿孔ビット16に伝達するもので、ボーリングロッド12の先端に、ボーリングロッド12の軸線と軸線を一致してボーリングロッド12の軸線方向に移動不能かつボーリングロッド12と一体に回転するように設けられている。
【0018】
穿孔ビット16は、ボーリングロッド12及びビットアダプタ14を通して付与される回転と打撃力で地山を穿孔するものであり、ビットアダプタ14の先端にビットアダプタ14の軸線と軸線を一致させて着脱機構30により着脱可能に設けられている。この穿孔ビット16は、地山を穿孔した後はロストビットとして穿孔された孔内に残されるものである。
【0019】
着脱機構30は、穿孔ビット16の軸心部にビットアダプタ14側から同心に形成され、ビットアダプタ14の先端部が着脱可能に挿入される有底の嵌合穴3002と、この嵌合穴1602の内周壁に、その周方向に一定の間隔をおいて突設された複数の係止爪3004と、ビットアダプタ14の先端部外周面に、その周方向に一定の間隔をおいて形成され、各係止爪3004が別々に係脱される複数の係止凹部3006とを有する。
【0020】
このような着脱機構30の嵌合穴3002と係止爪3004と係止凹部3006とによって、ビットアダプタ14と穿孔ビット16とをそれらの軸線方向に移動不能でそれらが一体回転可能かつ分離可能に結合させ、さらにボーリングロッド12の基端側から回転操作で係止爪3004を係止凹部3006外してビットアダプタ14と穿孔ビット16とを分離できるようになっている。
また、穿孔ビット16は、ビットアダプタ14の軸心孔1402を通してボーリングロッド12の中空部1206に連通する穿孔水流出路1604を有する。
【0021】
穿孔ビット16をビットアダプタ14の先端部に結合する場合は、ビットアダプタ14の先端部を穿孔ビット16の嵌合穴3002に差し込んで、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を、例えば反時計廻りに回転する。これにより、係止爪3004が係止凹部3006に係止されるため、穿孔ビット16とビットアダプタ14は分離できない結合状態に保持される。また、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を時計廻りと逆の方向に回転した場合は、係止爪3004が係止凹部3006から外れ、穿孔ビット16とビットアダプタ14とは分離可能な状態になる。
【0022】
なお、穿孔ビット16の穿孔により生じた繰り粉は、穿孔ビット16、ケーシングシュ18及び連結機構22の外周面と穿孔により形成された地山の孔内周面との間に生じた隙間を通して穿孔水と共に孔外へ排出される。また、穿孔ビット16に、図1に破線で示すような繰り粉取り込流路1608を設けることにより、繰り粉を穿孔水と共に粉取り込流路1608から、ケーシングシュ18の内周とビットアダプタ14の外周との間に生じた隙間と、ビット先導管24内を通して孔外へ排出することも可能である。
【0023】
ケーシングシュ18は、ボーリングロッド12からビットアダプタ14を通して伝達される回転と打撃力を穿孔ビット16に伝えると共に、穿孔に伴う穿孔ビット16の回転がケーシングシュ18、連結機構22およびビット先導管24に伝達されないようにするものである。このために、ケーシングシュ18は、穿孔ビット16のビットアダプタ14との結合端部1606の外周に回転可能に嵌合され、穿孔ビット16の外径より小さい外径の第1円筒部1802と、第1円筒部1802の穿孔ビット16と反対の端部にボーリングロッド12側へ延在して設けられ、第1円筒部1802の外径より小さい外径の第2円筒部1804と、第2円筒部1804の第1円筒部1802と反対の端部にボーリングロッド12側へ延在して設けられ、第2円筒部1802の外径より小さい外径の第3円筒部1806とを有し、これら第1乃至第3円筒部1802〜1804の軸線は一致している。
【0024】
このように構成されたケーシングシュ18は穿孔ビット16に対して、その軸線周りに回転可能に連結されている。このために、穿孔ビット16の結合端部1606の外周に雄ねじ1606aを形成し、さらに、第1円筒部1802の内周に雌ねじ1802aを形成する。そして、雄ねじ1606aを雌ねじ1802aに螺入して、両者の螺合が図1に示すように外れたフリー状態にすることにより、ケーシングシュ18と穿孔ビット16とが回転可能に連結され、かつこれらは互いに分離できないように連結される。
なお、ケーシングシュ18または穿孔ビット16を、雄ねじ1606aが雌ねじ1802aに螺入方向と逆の方向に回転させれば、ケーシングシュ18と穿孔ビット16とを分離することができる。
【0025】
連結機構22は、グランドアンカーの引張り材としてのワイヤーロープ20をケーシングシュ18に連結するためのもので、ケーシングシュ18からボーリングロッド12側へ延在する長さの筒体のワイヤー連結スリーブ2202からなる。このワイヤー連結スリーブ2202の一端はケーシングシュ18の第2円筒部1804の外周にケーシングシュ18の軸線周りに回転可能に係合され、ワイヤー連結スリーブ2202の他端部には、複数のワイヤーロープ20の一端が別々に連結される複数の連結孔2204がワイヤー連結スリーブ2202の周方向に沿い一定の間隔で形成されている。
ワイヤーロープ20の一端には、図1に示すように、金属製の結合金具26が固着されている。この結合金具26をワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204に嵌着することにより、ワイヤーロープ20はワイヤー連結スリーブ2202に連結される。また、ワイヤーロープ20は、PC鋼棒、PC鋼より線、多重PC鋼より線、連続繊維補強材などから構成される。
【0026】
ワイヤー連結スリーブ2202をケーシングシュ18の第2円筒部1804の外周に回転可能に連結するために、第2円筒部1804の外周に雄ねじ1804aを形成し、ワイヤー連結スリーブ2202の一端部内周に雌ねじ2202aを形成する。そして、雄ねじ1804aを雌ねじ2202aに螺入して、両者の螺合が図1に示すように外れたフリー状態にすることにより、ワイヤー連結スリーブ2202とケーシングシュ18とが回転可能に連結され、かつこれらは互いに分離できないように連結される。
なお、ケーシングシュ18またはワイヤー連結スリーブ2202を、雄ねじ1804aが雌ねじ2202aに螺入方向と逆の方向に回転させれば、ケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とを分離することができる。
【0027】
ワイヤー連結スリーブ2202の外周面には、図1に示すように、穿孔ビット16で穿孔された孔の内周部に係合して、ワイヤー連結スリーブ2202の回転を抑止する複数のスタビライザー28がワイヤー連結スリーブ2202の周方向に沿って一定の間隔で設けられている。このスタビライザー28が穿孔された削孔に内壁に食い込むことで、掘進時にボーリングロッド12の回転に伴ってワイヤー連結スリーブ2202が連れ回りするのを防止する。
また、本発明におけるスタビライザー28は、ワイヤー連結スリーブ2202の外周に設ける方式のものに限らない。例えば、図6に示すように、ケーシングシュ18の回転を抑止するスタビライザー28をケーシングシュ18の外周面に、その周方向に沿って一定の間隔で複数設けることもできる。
【0028】
ビット先導管24は、穿孔時の穿孔ビット16の掘進方向を安定化させるもので、1m〜5m程度の長さと、ケーシングシュ18の第3円筒部1806の外径と同程度の外径を有している。このようなビット先導管24は、ボーリングロッド12の外周にボーリングロッド12の長さ方向に沿って同心に配置され、その一端は第3円筒部1806にねじ結合により連結されている。
【0029】
なお、本実施の形態では、ケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とビット先導管24とにより、ビットアダプタ14の外周に配置され軸線方向の一端が穿孔ビット16に、穿孔ビット16の軸線周りに回転可能にかつ穿孔ビット16の軸線方向に移動不能に連結された外側部材が構成されている。
【0030】
次に、上記のように構成されたグランドアンカー打設装置100を用いて地山にグランドアンカーを打設する方法について、図5を参照して説明する。
まず、図5(a)に示すように、ワイヤーロープ束20Aから繰り出された複数本のワイヤーロープ20の一端を結合金具26によりワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204係合して、ワイヤーロープ20をワイヤー連結スリーブ2202に連結しておく。かかる状態のグランドアンカー打設装置100を削孔機(ロータリーパーカッション)300に装着する。
【0031】
次に、削孔機300に装着されたグランドアンカー打設装置100の穿孔ビット16の先端を土止め壁42の外面に押し当てた状態で回転打撃機構32及び押込み機構34を駆動する。回転打撃機構32及び押込み機構34が駆動されると、押込み機構34による押込み力と回転打撃機構32による回転と打撃力が、ボーリングロッド12及びビットアダプタ14を通して穿孔ビット16に伝達される。これにより、土止め壁42が掘削される。そして、図5(a)に示すように、土止め壁42を貫通した穿孔ビット16は、押込み機構34による押込み力と回転打撃機構32による回転と打撃力で地山44を穿孔し、孔46を形成する。これと同時にワイヤー連結スリーブ2202に連結された複数のワイヤーロープ20が、押込み機構34による押込み力によって穿孔の進行に伴い形成された孔46内に順次引き込まれる(特許請求の範囲に記載した穿孔引き込み工程に相当する)。
【0032】
この時、回転打撃機構32の給水口3202から穿孔水がボーリングロッド12の中空部1206及びビットアダプタ14の軸心孔1402を通して穿孔ビット16に供給され、その穿孔水流出路1604から穿孔ビット16の穿孔面に流出される。そして、穿孔ビット16で掘削された地山の繰り粉(スライム)は、穿孔ビット16に供給された穿孔水により、穿孔ビット16、ケーシングシュ18及び連結部材22の外周面と削孔44の内周面との間に生じた隙間を通して穿孔水と共に孔46内に流出し、孔46から孔46外へ排出される。
【0033】
地山44に希望する一定長さ(例えば、10m〜20m程度)の孔46が形成されたならば、図5(b)に示すように、回転打撃機構32でボーリングロッド12を上記穿孔時と逆に回転してビットアダプタ14と穿孔ビット16との係合を解除し、ビットアダプタ14を穿孔ビット16から引き抜くことで両者を分離する。その後、穿孔ビット16とケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とワイヤーロープ20を孔46内に残したまま、押込み機構34を押し込み方向と逆の方向に動作させる。これにより、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を孔46から引き抜きながら、ボーリングロッド12の中空部1202を通して、孔46内及び穿孔ビット16の内部空間、ケーシングシュ18の内部空間、ワイヤー連結スリーブ2202の内部空間にグラウト48を加圧注入する(特許請求の範囲に記載したグラウト注入工程に相当する)。
【0034】
グラウト注入工程が終了したならば、図5(c)に示すように、ワイヤーロープ20を緊張ジャッキ36により緊張させる。しかる後、図5(d)に示すように、ワイヤーロープ20をワイヤーロープ束20Aから切り離す。そして、このワイヤーロープ20を定着プレート38により固定して定着させる。これにより、地山中にグランドアンカーを打設することができる。
【0035】
なお、穿孔の進行に伴い継ぎ足されるロッド1202の長さは4.6m程度のため、4m程度穿孔した段階で穿孔を中断し、ロッド1202の基端を削孔機のアダプタから切り離す。その後、削孔機のブームを元の位置に戻し、継ぎ足されるロッド1202をブームに装着する。この継ぎ足されるロッド1202を、既に穿孔に供されたロッドにカップリングでつないで穿孔を再開する。以下、上記の操作を繰り返すことで所定の深さまで穿孔する。そして、所定の深さ穿孔された後は、ボーリングロッド12を穿孔時の回転と逆に回転させることにより穿孔ビット16とビットアダプタ14とを分離し、ボーリングロッド12とビットアダプタ14を回収する。穿孔ビット16、ケーシングシュ18、ワイヤー連結スリーブ2202及びビット先導管24は穿孔された孔中に埋め殺しとなる。
【0036】
このような第1の実施の形態に示したグランドアンカー打設装置及び打設方法によれば、ボーリングロッド12に回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して穿孔ビット16で地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進する。同時にワイヤーロープ20を穿孔された孔46内に順次引き込む。地山への穿孔が終了した後は、ボーリングロッド12を穿孔時と逆に回転してビットアダプタ14を穿孔ビット16から分離する。そして、穿孔ビット16とケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とワイヤーロープ20を孔46内に残したまま、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を孔46内から引き抜きながら、ボーリングロッド12の中空部1202を通して、孔46内及び穿孔ビット16の内部空間、ケーシングシュ18の内部空間、ワイヤー連結スリーブ2202の内部空間にグラウトを加圧注入する。
そのため、外側部材(ケーシングシュ18、ワイヤー連結スリーブ2202、ビット先導管24)を設けるといった簡単な構成により、地山にグランドアンカー打設用の孔を穿孔しながら穿孔された孔内にワイヤーロープを同時に挿入し定着することができる。これにより、従来におけるワイヤーロープの挿入工程が削減され、従来使用していた外管も不要になる。
そして、グランドアンカーの打設に要する施行工程数を削減できるとともに打設の能率化及び低コストを図ることができる。
しかも、ケーシングシュ18は穿孔ビット16に回転可能に結合され、かつワイヤー連結スリーブ2202はケーシングシュ18に回転可能に結合されているため、ボーリングロッド12が回転しても、これにワイヤーロープ20が絡み付くことがなく、ワイヤーロープ20を穿孔と同時に安定かつ確実に挿入することができる。
【0037】
また、第1の実施の形態によれば、従来使用していた外管が不要になるため、繰り粉の排出が穿孔ビットの内外で可能になる。これに伴い、ボーリングロッド12が従来の外管のように繰り粉によって締め付けられることがなく、ボーリングロッド12の回収が簡単で、打設の施工性を向上できる。しかも、ボーリングロッド12のみの回転と打撃で穿孔できるため、削孔機の能力が少なくても打設の施工が可能になり、ボーリングロッド12の引き抜を削孔機で行うことができる。
【0038】
また、第1の実施の形態によれば、ケーシングシュ18に、ボーリングロッド12の基端側に延在するビット先導管24が連結されているため、穿孔時の穿孔ビット16の掘進方向を安定化させることができる。
さらに、第1の実施の形態によれば、ワイヤー連結スリーブ2202に設けられたスタビライザー28が、穿孔された孔の内周部に係合されるため、ボーリングロッド12の回転に伴うワイヤー連結スリーブ2202の連れ回りを未然に抑止でき、ボーリングロッド12へのワイヤーロープ20の絡み付きも防止できる。
【0039】
(第2の実施の形態)
次に、本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の他の例について図7を参照して説明する。
図7において、図1と同一の部分または同様な部分には同一符号を付してその構成説明を省略し、図1と異なる部分を重点に述べる。
【0040】
図1と異なる点は、図7から明らかなように、グランドアンカーの打設に使用される2本のワイヤーロープ20の連結機構22がビット先導管24を利用して構成されたところにある。
このために第2の実施の形態に示す連結機構22は、ケーシングシュ18に連結されたビット先導管24の外周部の周方向に180度の間隔をおいた複数箇所に設けられたワイヤー引掛け部2206と、この各ワイヤー引掛け部2206に引掛けられた各ワイヤーロープ20の端部をビット先導管24の外周部に締め付けて固定する締付バンド2208とを含んで構成される。
このような連結機構22を用いたグランドアンカー打設装置においても、上記第1の実施の形態に示す場合と同様な効果が得られる。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に、本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープのワイヤー連結スリーブへの接続方式の変形例について図8及び図9を参照して説明する。
この第3の実施の形態では、図8及び図9に示すように、ワイヤーロープ20の端部20aをワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204に雌ねじ2202aと反対側から挿通した後、その挿通端部20aをU字状に折り曲げ、その折り曲げ端部20bを隣接する連結孔2204に雌ねじ2202a側から挿通する。これにより、ワイヤーロープ20をワイヤー連結スリーブ2202に接続することができる。
このようなワイヤーロープの接続方式を利用したグランドアンカー打設装置においても、上記第1の実施の形態に示す場合と同様な効果が得られる。
【0042】
(第4の実施の形態)
次に、本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の更に他の例について図10を参照して説明する。
この第4の実施の形態においては、図10に示すように、ワイヤーロープ20の一端20bをワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204に連結するための引っ掛け金具34を備える。
引っ掛け金具34は、断面がコ字状を呈し、連結孔2204の内径より大きい長さLと、連結孔2204の内径より小さい高さDを有している。
このような引っ掛け金具34とワイヤーロープ20の一端20bとを結合する場合は、ワイヤーロープ20の一端20bの一端を引っ掛け金具34のU字状溝内に引っ掛け金具34の長さ方向と直角な方向から差し込む。そして、ワイヤーロープ20の一端20bと引っ掛け金具34とを貫通する結合ピン36により、ワイヤーロープ20の一端20bと引っ掛け金具34とを回動可能に結合する。
【0043】
このようなワイヤーロープ20をワイヤー連結スリーブ2202に連結する場合は、まず、引っ掛け金具34を結合ピン36を中心に回動し、引っ掛け金具34を図10の仮想線に示すようにワイヤーロープ20の長さ方向と一致する状態に保持する。この状態にあるワイヤーロープ20を引っ掛け金具34ごと、連結孔2204の挿入開口2204a側から雌ねじ2202a側へ突出されるまで差し込む。その後、引っ掛け金具34を図10の実線に示す状態に回動する。そして、この状態のワイヤーロープ20を図10の矢印X方向に引っ張ることで、引っ掛け金具34の長さ方向の両端を連結孔2204の縁部に係止させる。これにより、ワイヤーロープ20はワイヤー連結スリーブ2202に連結されることになる。
このようなワイヤーロープの連結方式を利用したグランドアンカー打設装置においても、上記第1の実施の形態に示す場合と同様な効果が得られる。
【0044】
次に、上述した本実施の形態に示すグランドアンカー打設装置及び打設方法によりワイヤーロープを打設して軟弱地盤層の地盤を改良し地山を補強する場合、例えばトンネル50を掘削しようとする地山52及び切羽54を補強する場合について、図11及び図12を参照して説明する。
図11、図12に示すように、トンネル50の断面の上半に対応する切羽54の部分の複数箇所に、図1に示すグランドアンカー打設装置のボーリングロッドに回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して穿孔ビットで地山をトンネル50の延在方向に沿って穿孔しながら一定の深さまで掘進する。これと同時に、穿孔ビットにケーシングシュ、連結機構を介して連結したワイヤーロープ2002を穿孔された孔内に順次引き込む。切羽54への穿孔が終了した後は、ボーリングロッドを穿孔時と逆に回転して穿孔ビットから分離する。そして、穿孔ビットとケーシングシュと連結機構とワイヤーロープ2002を孔内に残したまま、ボーリングロッドを孔内から引き抜きながら、ボーリングロッド内を通してグラウトを加圧注入する。これにより、図11及び図12に示す切羽54の複数箇所にワイヤーロープ2002が打設され、切羽54が補強される。
【0045】
同様にして、切羽54の周囲に対応する地山52の複数箇所に、図1に示すグランドアンカー打設装置を用いてトンネル50の内部から離間する斜め上方に向けて穿孔しながら一定の深さまで掘進する。これと同時に、穿孔ビットにケーシングシュ、連結機構を介して連結したワイヤーロープ2004を穿孔された孔内に順次引き込む。地山への穿孔が終了した後は、ボーリングロッドを穿孔時と逆に回転して穿孔ビットから分離する。そして、穿孔ビットとケーシングシュと連結機構とワイヤーロープ2004を孔内に残したまま、ボーリングロッドを孔内から引き抜きながら、ボーリングロッド内を通してグラウトを加圧注入する。これにより、図11及び図12に示す地山52の複数箇所にワイヤーロープ2004が打設され、切羽54の周囲に対応する地山52が補強される。
【0046】
次に、図12に示すように、補強された切羽542を、不図示の掘削機械を用いてワイヤーロープ2002及び2004を破壊しつつ掘削し、トンネル50の全断面をトンネル50の延在方向に沿って掘削する。これにより、トンネル空洞部5002が形成される。
この場合、ワイヤーロープ2002は切断されないまま、切羽54の前面から垂れ下がった状態におかれる。
これら垂れ下がったワイヤーロープ2002aを機械式カッタまたはガス切断機などを用いて切断し、切羽の掘削作業に支障が来たさないように除去する。
【0047】
なお、図12において、ワイヤーロープ2002と平行な残留ワイヤーロープ2002A及びワイヤーロープ2004と平行な残留ワイヤーロープ2002Aは、ワイヤーロープ2002,2004が打設される一段階前に打設されたワイヤーロープが、掘削機械による切羽の掘削時に残ったケーブルボルトである。
また、図12において、符号56は掘削後のトンネル50の内周壁面に吹き付けられた吹付けコンクリートであり、符号58は吹付けコンクリート56で覆工された後のトンネル50の内周面を支持する支保工であり、60はトンネル50の底面に打設されたインバートである。
【0048】
上記のようにグランドアンカー打設装置及び打設方法を用いてワイヤーロープを打設することにより、軟弱地盤層の地盤を改良し地山を補強することができるとともに、ワイヤーロープ施工の容易性及び能率化を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0049】
100……グランドアンカー打設装置
12……ボーリングロッド
14……ビットアダプタ
16……穿孔ビット
18……ケーシングシュ
20……ワイヤーロープ
22……連結機構
2202……ワイヤー連結スリーブ
24……ビット先導管
28……スタビライザー
30……着脱機構
【技術分野】
【0001】
本発明はグランドアンカーの打設装置及び打設方法に関し、さらに詳しくは、地山に穿孔しながらワイヤーロープからなるグランドアンカーを挿入し定着できるようにしたグランドアンカー打設装置及び打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グランドアンカーは、山岳トンネルにおける切羽の前方補強に利用されるほか、根切りの土止め壁の支保のような仮設構造物、あるいは切り取り斜面の安定確保や地滑り防止など永久構造物のアンカーとして用いられている(特許文献1または2参照)。
一方、この種グランドアンカーの地山や地盤への打設には、主に二重管削孔方式が採用されている。以下、根切りの土止め壁用支保として使用されるグランドアンカーの打設方法について、図13を参照して説明する。
【0003】
このようなグランドアンカーの打設に使用される二重管削孔装置70は、図13(a)に示すように、先端に回転可能に取り付けられたアウタビッド7202を有する外管72と、外管72内に挿通された内管74と、内管74の先端に設けられ、アウタビッド7202の内側と係脱可能に係合されるインナービッド7402と、内管74の後端に連結され、内管74に回転と打撃力を付与する回転打撃機構76と、回転打撃機構76を含む内管74及び外管72を地山82への掘進方向に移動させる押込み機構78とを備える。また、このように構成された二重管削孔装置70は、フレーム81を介して走行装置80に装着されて使用される。
【0004】
二重管削孔装置70を用いて地山82の土止め壁84の支保に用いられるグランドアンカーを打設する場合は、まず、走行装置80に装着された二重管削孔装置70のアウタビッド7202及びインナービッド7402の先端面を土止め壁84の外面に押し当てた状態で回転打撃機構76及び押込み機構78を駆動する。回転打撃機構76及び押込み機構78が駆動されると、押込み機構78による押込み力と回転打撃機構76による回転及び打撃力が、内管74を介してインナービッド7402に伝達され、同時にアウタビッド7202もインナービッド7402と一体に回転されながら推進される。これにより、土止め壁84が掘削される。そして、土止め壁84を貫通したインナービッド7402及びアウタビッド7202は、押込み機構78による押込み力と回転打撃機構76による回転及び打撃で地山82を穿孔し、図13(a)に示すように孔86を形成する。これと同時に外管72は、押込み機構78による押込み力によって孔86の掘進方向に押し込まれ、孔86の崩れをカバーする。
【0005】
この時、給水口88から穿孔水が内管74を通してアウタビッド7202及びインナービッド7402に供給される。そして、アウタビッド7202及びインナービッド7402で掘削された繰り粉(スライム)は、アウタビッド7202及びインナービッド7402に供給された穿孔水により、インナービッド7402に設けられている周知の還流通路から、外管72の内周と内管74の外周との間に形成される空間を通して外部に排出される。
【0006】
地山82に希望する一定長さ(例えば10m〜15m程度)の孔86が形成されたならば、内管74を掘削方向と逆の方向に回転して、インナービッド7402のアウタビッド7202との係合を解除する。この状態で、押込み機構78を押し込み方向と逆の方向に動作させることにより、インナービッド7402を含む内管74を図13(b)に示すように引き抜く。しかる後、外管72を通して洗浄水を注入することにより孔86内を洗浄する。
【0007】
次に、図13(c)に示すように、テンドンと称されるPC鋼より線や多重PC鋼より線などからなるワイヤーロープ90を外管72内を通して孔86の奥部先端近傍まで挿入する。その後、図13(d)に示すように、小形運搬機92に装着された油圧ユニット9202により駆動される引抜きジャッキ9204で外管72を引き抜きながら、外管72を通してセントミルク等のグラウト94を加圧注入する。
グラウト94の加圧注入が終了したならば、図13(e)に示すように、ワイヤーロープ90を緊張ジャッキ89により緊張させる。しかる後、図13(f)に示すように、ワイヤーロープ90を定着プレート96により固定して定着させる。これにより、地山中にグランドアンカーを打設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−239830号公報
【特許文献2】特開平9−100688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来の二重管削孔方式のグランドアンカー打設方法においては、掘削により生じた繰り粉(スライム)は削孔水と共に、外管72の内周と内管74の外周との間に形成される空間を通して削孔86外に排出できるため、繰り粉を確実に孔86外へ排出することができ、多様な地盤に対応できるほか、外管72の引き抜きを削孔機または引抜きジャッキで容易に行うことができる。
しかしながら、上記従来のグランドアンカー打設方法では、インナービッド7402を含む内管74を引き抜いた後、ワイヤーロープ90を外管72を通して削孔86内に挿入する工程が必要になり、しかも、内管74の他に外管72も必要になる。このため、これらワイヤーロープ90の挿入工程に加えて内管74及び外管72の引き抜き工程が必要になり、その分、工程数が増加し、グランドアンカーの打設が煩雑になり、その打設に多くの時間を要するほか、打設能率も低く、コスト高になるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、その目的は、グランドアンカーの打設に要する施行工程数の削減を可能にしたグランドアンカー打設装置及び打設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明はグランドアンカー打設装置であって、地山への穿孔用の回転と打撃力が付与される中空のボーリングロッドと、前記ボーリングロッドの先端に前記ボーリングロッドの軸線と軸線を一致して前記ボーリングロッドの軸線方向に移動不能かつ前記ボーリングロッドと一体回転するように設けられたビットアダプタと、前記ビットアダプタの先端に前記ビットアダプタの軸線と軸線を一致させて設けられる穿孔ビットと、前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとをそれらの軸線方向に移動不能でそれらが一体回転可能かつ分離可能に結合させ前記ボーリングロッドの基端側からの操作で前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとを分離させる着脱機構と、前記ビットアダプタの外周に配置され軸線方向の一端が前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結され前記穿孔ビットにより穿孔された孔に挿入される外径で形成された外側部材と、前記外側部材に設けられ前記ボーリングロッドの長さ方向に沿って配置される複数のワイヤーロープの一端を連結する連結機構とを備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明はグランドアンカー打設方法であって、中空のボーリングロッドの先端にビットアダプタを設け、前記ビットアダプタの先端に穿孔ビットを分離可能に設け、前記ビットアダプタの外周で前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能に前記穿孔ビットに外側部材を連結し、前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記外側部材の周方向に間隔をおいた複数箇所に複数のワイヤーロープの一端をそれぞれ連結し、前記ボーリングロッドに回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して前記穿孔ビットで地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進し、同時に前記外側部材により前記ワイヤーロープを前記穿孔された孔内に順次引き込む穿孔引き込み工程と、前記地山への穿孔が終了した後、前記ビットアダプタを前記穿孔ビットから分離し、前記穿孔ビットと前記外側部材と前記ワイヤーロープを前記孔内に残したまま前記ビットアダプタと前記ボーリングロッドを前記孔内から引き抜きながら前記ボーリングロッドを通して前記孔内にグラウトを加圧注入するグラウト注入工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグランドアンカー打設装置及び打設方法によれば、地山に穿孔しながら穿孔された孔内にワイヤーロープを挿入し定着することができる。これにより、グランドアンカーの打設に要する施行工程数を削減でき、打設の能率化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかるグランドアンカー打設装置の一例を示す要部の断面図。
【図2】図1の矢印A方向から見た穿孔ビットの正面図。
【図3】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結部材を構成するワイヤー連結スリーブの一部切欠きの側面図。
【図4】図3の矢印B方向から見たワイヤー連結スリーブの底面図。
【図5】本発明にかかるグランドアンカー打設装置の作業手順を示す説明図。
【図6】本発明のグランドアンカー打設装置におけるケーシングシュへのスタビライザーの装着例を示す説明図。
【図7】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の他の例を示す説明図。
【図8】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープのワイヤー連結スリーブへの接続方式の変形例を示す説明用側面図。
【図9】図8のC−C線に沿う断面図。
【図10】本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の更に他の例を示す説明図。
【図11】本発明のグランドアンカー打設装置で打設されたワイヤーロープにより補強されたトンネルの説明用正面図。
【図12】本発明のグランドアンカー打設装置で打設されたワイヤーロープが地山及び切羽方向に打設された状態を示すトンネルの縦断側面図。
【図13】従来におけるグランドアンカー打設方法の作業手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明にかかるグランドアンカー打設装置の実施の形態1について図1乃至図5を参照して説明する。
第1の実施の形態に示すグランドアンカー打設装置100は、トンネルが掘削される軟弱地盤層の地盤を改良し切羽などの地山を補強し、あるいは土止め壁の支保用仮設構造物や切り取り斜面の安定確保などの永久構造物のグランドアンカーとして地山に自穿孔式で打設されるタイプのもので、ボーリングロッド12、ビットアダプタ14、穿孔ビット16、ケーシングシュ18、ワイヤーロープ20、連結機構22、ビット先導管24及び着脱機構30等を含んで構成される。
【0016】
ボーリングロッド12は、図示省略した周知の削孔機(ロータリーパーカッション等)から付与された回転と打撃力及び掘進力を穿孔ビット16に伝達するものであり、穿孔水やグラウトの注入が可能なように中空の金属製ロッドから構成されている。また、このボーリングロッド12は、長さが1m〜5m程度のロッド1202を複数本、カップリング1204により一直線状に結合することで構成される。この場合、ボーリングロッド12の全体の長さは、地山に穿孔される孔の深さにより設定されるが、例えば10m〜20m程度である。したがって、実際の地山への穿孔では、長さが1m〜5m程度のロッド1202をカップリング1204で順次継ぎ足すことで、地山への穿孔に必要な長さのボーリングロッド12を確保している。
【0017】
ビットアダプタ14は、ボーリングロッド12に付与される穿孔用の回転と打撃力を穿孔ビット16に伝達するもので、ボーリングロッド12の先端に、ボーリングロッド12の軸線と軸線を一致してボーリングロッド12の軸線方向に移動不能かつボーリングロッド12と一体に回転するように設けられている。
【0018】
穿孔ビット16は、ボーリングロッド12及びビットアダプタ14を通して付与される回転と打撃力で地山を穿孔するものであり、ビットアダプタ14の先端にビットアダプタ14の軸線と軸線を一致させて着脱機構30により着脱可能に設けられている。この穿孔ビット16は、地山を穿孔した後はロストビットとして穿孔された孔内に残されるものである。
【0019】
着脱機構30は、穿孔ビット16の軸心部にビットアダプタ14側から同心に形成され、ビットアダプタ14の先端部が着脱可能に挿入される有底の嵌合穴3002と、この嵌合穴1602の内周壁に、その周方向に一定の間隔をおいて突設された複数の係止爪3004と、ビットアダプタ14の先端部外周面に、その周方向に一定の間隔をおいて形成され、各係止爪3004が別々に係脱される複数の係止凹部3006とを有する。
【0020】
このような着脱機構30の嵌合穴3002と係止爪3004と係止凹部3006とによって、ビットアダプタ14と穿孔ビット16とをそれらの軸線方向に移動不能でそれらが一体回転可能かつ分離可能に結合させ、さらにボーリングロッド12の基端側から回転操作で係止爪3004を係止凹部3006外してビットアダプタ14と穿孔ビット16とを分離できるようになっている。
また、穿孔ビット16は、ビットアダプタ14の軸心孔1402を通してボーリングロッド12の中空部1206に連通する穿孔水流出路1604を有する。
【0021】
穿孔ビット16をビットアダプタ14の先端部に結合する場合は、ビットアダプタ14の先端部を穿孔ビット16の嵌合穴3002に差し込んで、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を、例えば反時計廻りに回転する。これにより、係止爪3004が係止凹部3006に係止されるため、穿孔ビット16とビットアダプタ14は分離できない結合状態に保持される。また、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を時計廻りと逆の方向に回転した場合は、係止爪3004が係止凹部3006から外れ、穿孔ビット16とビットアダプタ14とは分離可能な状態になる。
【0022】
なお、穿孔ビット16の穿孔により生じた繰り粉は、穿孔ビット16、ケーシングシュ18及び連結機構22の外周面と穿孔により形成された地山の孔内周面との間に生じた隙間を通して穿孔水と共に孔外へ排出される。また、穿孔ビット16に、図1に破線で示すような繰り粉取り込流路1608を設けることにより、繰り粉を穿孔水と共に粉取り込流路1608から、ケーシングシュ18の内周とビットアダプタ14の外周との間に生じた隙間と、ビット先導管24内を通して孔外へ排出することも可能である。
【0023】
ケーシングシュ18は、ボーリングロッド12からビットアダプタ14を通して伝達される回転と打撃力を穿孔ビット16に伝えると共に、穿孔に伴う穿孔ビット16の回転がケーシングシュ18、連結機構22およびビット先導管24に伝達されないようにするものである。このために、ケーシングシュ18は、穿孔ビット16のビットアダプタ14との結合端部1606の外周に回転可能に嵌合され、穿孔ビット16の外径より小さい外径の第1円筒部1802と、第1円筒部1802の穿孔ビット16と反対の端部にボーリングロッド12側へ延在して設けられ、第1円筒部1802の外径より小さい外径の第2円筒部1804と、第2円筒部1804の第1円筒部1802と反対の端部にボーリングロッド12側へ延在して設けられ、第2円筒部1802の外径より小さい外径の第3円筒部1806とを有し、これら第1乃至第3円筒部1802〜1804の軸線は一致している。
【0024】
このように構成されたケーシングシュ18は穿孔ビット16に対して、その軸線周りに回転可能に連結されている。このために、穿孔ビット16の結合端部1606の外周に雄ねじ1606aを形成し、さらに、第1円筒部1802の内周に雌ねじ1802aを形成する。そして、雄ねじ1606aを雌ねじ1802aに螺入して、両者の螺合が図1に示すように外れたフリー状態にすることにより、ケーシングシュ18と穿孔ビット16とが回転可能に連結され、かつこれらは互いに分離できないように連結される。
なお、ケーシングシュ18または穿孔ビット16を、雄ねじ1606aが雌ねじ1802aに螺入方向と逆の方向に回転させれば、ケーシングシュ18と穿孔ビット16とを分離することができる。
【0025】
連結機構22は、グランドアンカーの引張り材としてのワイヤーロープ20をケーシングシュ18に連結するためのもので、ケーシングシュ18からボーリングロッド12側へ延在する長さの筒体のワイヤー連結スリーブ2202からなる。このワイヤー連結スリーブ2202の一端はケーシングシュ18の第2円筒部1804の外周にケーシングシュ18の軸線周りに回転可能に係合され、ワイヤー連結スリーブ2202の他端部には、複数のワイヤーロープ20の一端が別々に連結される複数の連結孔2204がワイヤー連結スリーブ2202の周方向に沿い一定の間隔で形成されている。
ワイヤーロープ20の一端には、図1に示すように、金属製の結合金具26が固着されている。この結合金具26をワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204に嵌着することにより、ワイヤーロープ20はワイヤー連結スリーブ2202に連結される。また、ワイヤーロープ20は、PC鋼棒、PC鋼より線、多重PC鋼より線、連続繊維補強材などから構成される。
【0026】
ワイヤー連結スリーブ2202をケーシングシュ18の第2円筒部1804の外周に回転可能に連結するために、第2円筒部1804の外周に雄ねじ1804aを形成し、ワイヤー連結スリーブ2202の一端部内周に雌ねじ2202aを形成する。そして、雄ねじ1804aを雌ねじ2202aに螺入して、両者の螺合が図1に示すように外れたフリー状態にすることにより、ワイヤー連結スリーブ2202とケーシングシュ18とが回転可能に連結され、かつこれらは互いに分離できないように連結される。
なお、ケーシングシュ18またはワイヤー連結スリーブ2202を、雄ねじ1804aが雌ねじ2202aに螺入方向と逆の方向に回転させれば、ケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とを分離することができる。
【0027】
ワイヤー連結スリーブ2202の外周面には、図1に示すように、穿孔ビット16で穿孔された孔の内周部に係合して、ワイヤー連結スリーブ2202の回転を抑止する複数のスタビライザー28がワイヤー連結スリーブ2202の周方向に沿って一定の間隔で設けられている。このスタビライザー28が穿孔された削孔に内壁に食い込むことで、掘進時にボーリングロッド12の回転に伴ってワイヤー連結スリーブ2202が連れ回りするのを防止する。
また、本発明におけるスタビライザー28は、ワイヤー連結スリーブ2202の外周に設ける方式のものに限らない。例えば、図6に示すように、ケーシングシュ18の回転を抑止するスタビライザー28をケーシングシュ18の外周面に、その周方向に沿って一定の間隔で複数設けることもできる。
【0028】
ビット先導管24は、穿孔時の穿孔ビット16の掘進方向を安定化させるもので、1m〜5m程度の長さと、ケーシングシュ18の第3円筒部1806の外径と同程度の外径を有している。このようなビット先導管24は、ボーリングロッド12の外周にボーリングロッド12の長さ方向に沿って同心に配置され、その一端は第3円筒部1806にねじ結合により連結されている。
【0029】
なお、本実施の形態では、ケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とビット先導管24とにより、ビットアダプタ14の外周に配置され軸線方向の一端が穿孔ビット16に、穿孔ビット16の軸線周りに回転可能にかつ穿孔ビット16の軸線方向に移動不能に連結された外側部材が構成されている。
【0030】
次に、上記のように構成されたグランドアンカー打設装置100を用いて地山にグランドアンカーを打設する方法について、図5を参照して説明する。
まず、図5(a)に示すように、ワイヤーロープ束20Aから繰り出された複数本のワイヤーロープ20の一端を結合金具26によりワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204係合して、ワイヤーロープ20をワイヤー連結スリーブ2202に連結しておく。かかる状態のグランドアンカー打設装置100を削孔機(ロータリーパーカッション)300に装着する。
【0031】
次に、削孔機300に装着されたグランドアンカー打設装置100の穿孔ビット16の先端を土止め壁42の外面に押し当てた状態で回転打撃機構32及び押込み機構34を駆動する。回転打撃機構32及び押込み機構34が駆動されると、押込み機構34による押込み力と回転打撃機構32による回転と打撃力が、ボーリングロッド12及びビットアダプタ14を通して穿孔ビット16に伝達される。これにより、土止め壁42が掘削される。そして、図5(a)に示すように、土止め壁42を貫通した穿孔ビット16は、押込み機構34による押込み力と回転打撃機構32による回転と打撃力で地山44を穿孔し、孔46を形成する。これと同時にワイヤー連結スリーブ2202に連結された複数のワイヤーロープ20が、押込み機構34による押込み力によって穿孔の進行に伴い形成された孔46内に順次引き込まれる(特許請求の範囲に記載した穿孔引き込み工程に相当する)。
【0032】
この時、回転打撃機構32の給水口3202から穿孔水がボーリングロッド12の中空部1206及びビットアダプタ14の軸心孔1402を通して穿孔ビット16に供給され、その穿孔水流出路1604から穿孔ビット16の穿孔面に流出される。そして、穿孔ビット16で掘削された地山の繰り粉(スライム)は、穿孔ビット16に供給された穿孔水により、穿孔ビット16、ケーシングシュ18及び連結部材22の外周面と削孔44の内周面との間に生じた隙間を通して穿孔水と共に孔46内に流出し、孔46から孔46外へ排出される。
【0033】
地山44に希望する一定長さ(例えば、10m〜20m程度)の孔46が形成されたならば、図5(b)に示すように、回転打撃機構32でボーリングロッド12を上記穿孔時と逆に回転してビットアダプタ14と穿孔ビット16との係合を解除し、ビットアダプタ14を穿孔ビット16から引き抜くことで両者を分離する。その後、穿孔ビット16とケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とワイヤーロープ20を孔46内に残したまま、押込み機構34を押し込み方向と逆の方向に動作させる。これにより、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を孔46から引き抜きながら、ボーリングロッド12の中空部1202を通して、孔46内及び穿孔ビット16の内部空間、ケーシングシュ18の内部空間、ワイヤー連結スリーブ2202の内部空間にグラウト48を加圧注入する(特許請求の範囲に記載したグラウト注入工程に相当する)。
【0034】
グラウト注入工程が終了したならば、図5(c)に示すように、ワイヤーロープ20を緊張ジャッキ36により緊張させる。しかる後、図5(d)に示すように、ワイヤーロープ20をワイヤーロープ束20Aから切り離す。そして、このワイヤーロープ20を定着プレート38により固定して定着させる。これにより、地山中にグランドアンカーを打設することができる。
【0035】
なお、穿孔の進行に伴い継ぎ足されるロッド1202の長さは4.6m程度のため、4m程度穿孔した段階で穿孔を中断し、ロッド1202の基端を削孔機のアダプタから切り離す。その後、削孔機のブームを元の位置に戻し、継ぎ足されるロッド1202をブームに装着する。この継ぎ足されるロッド1202を、既に穿孔に供されたロッドにカップリングでつないで穿孔を再開する。以下、上記の操作を繰り返すことで所定の深さまで穿孔する。そして、所定の深さ穿孔された後は、ボーリングロッド12を穿孔時の回転と逆に回転させることにより穿孔ビット16とビットアダプタ14とを分離し、ボーリングロッド12とビットアダプタ14を回収する。穿孔ビット16、ケーシングシュ18、ワイヤー連結スリーブ2202及びビット先導管24は穿孔された孔中に埋め殺しとなる。
【0036】
このような第1の実施の形態に示したグランドアンカー打設装置及び打設方法によれば、ボーリングロッド12に回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して穿孔ビット16で地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進する。同時にワイヤーロープ20を穿孔された孔46内に順次引き込む。地山への穿孔が終了した後は、ボーリングロッド12を穿孔時と逆に回転してビットアダプタ14を穿孔ビット16から分離する。そして、穿孔ビット16とケーシングシュ18とワイヤー連結スリーブ2202とワイヤーロープ20を孔46内に残したまま、ビットアダプタ14を含むボーリングロッド12を孔46内から引き抜きながら、ボーリングロッド12の中空部1202を通して、孔46内及び穿孔ビット16の内部空間、ケーシングシュ18の内部空間、ワイヤー連結スリーブ2202の内部空間にグラウトを加圧注入する。
そのため、外側部材(ケーシングシュ18、ワイヤー連結スリーブ2202、ビット先導管24)を設けるといった簡単な構成により、地山にグランドアンカー打設用の孔を穿孔しながら穿孔された孔内にワイヤーロープを同時に挿入し定着することができる。これにより、従来におけるワイヤーロープの挿入工程が削減され、従来使用していた外管も不要になる。
そして、グランドアンカーの打設に要する施行工程数を削減できるとともに打設の能率化及び低コストを図ることができる。
しかも、ケーシングシュ18は穿孔ビット16に回転可能に結合され、かつワイヤー連結スリーブ2202はケーシングシュ18に回転可能に結合されているため、ボーリングロッド12が回転しても、これにワイヤーロープ20が絡み付くことがなく、ワイヤーロープ20を穿孔と同時に安定かつ確実に挿入することができる。
【0037】
また、第1の実施の形態によれば、従来使用していた外管が不要になるため、繰り粉の排出が穿孔ビットの内外で可能になる。これに伴い、ボーリングロッド12が従来の外管のように繰り粉によって締め付けられることがなく、ボーリングロッド12の回収が簡単で、打設の施工性を向上できる。しかも、ボーリングロッド12のみの回転と打撃で穿孔できるため、削孔機の能力が少なくても打設の施工が可能になり、ボーリングロッド12の引き抜を削孔機で行うことができる。
【0038】
また、第1の実施の形態によれば、ケーシングシュ18に、ボーリングロッド12の基端側に延在するビット先導管24が連結されているため、穿孔時の穿孔ビット16の掘進方向を安定化させることができる。
さらに、第1の実施の形態によれば、ワイヤー連結スリーブ2202に設けられたスタビライザー28が、穿孔された孔の内周部に係合されるため、ボーリングロッド12の回転に伴うワイヤー連結スリーブ2202の連れ回りを未然に抑止でき、ボーリングロッド12へのワイヤーロープ20の絡み付きも防止できる。
【0039】
(第2の実施の形態)
次に、本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の他の例について図7を参照して説明する。
図7において、図1と同一の部分または同様な部分には同一符号を付してその構成説明を省略し、図1と異なる部分を重点に述べる。
【0040】
図1と異なる点は、図7から明らかなように、グランドアンカーの打設に使用される2本のワイヤーロープ20の連結機構22がビット先導管24を利用して構成されたところにある。
このために第2の実施の形態に示す連結機構22は、ケーシングシュ18に連結されたビット先導管24の外周部の周方向に180度の間隔をおいた複数箇所に設けられたワイヤー引掛け部2206と、この各ワイヤー引掛け部2206に引掛けられた各ワイヤーロープ20の端部をビット先導管24の外周部に締め付けて固定する締付バンド2208とを含んで構成される。
このような連結機構22を用いたグランドアンカー打設装置においても、上記第1の実施の形態に示す場合と同様な効果が得られる。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に、本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープのワイヤー連結スリーブへの接続方式の変形例について図8及び図9を参照して説明する。
この第3の実施の形態では、図8及び図9に示すように、ワイヤーロープ20の端部20aをワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204に雌ねじ2202aと反対側から挿通した後、その挿通端部20aをU字状に折り曲げ、その折り曲げ端部20bを隣接する連結孔2204に雌ねじ2202a側から挿通する。これにより、ワイヤーロープ20をワイヤー連結スリーブ2202に接続することができる。
このようなワイヤーロープの接続方式を利用したグランドアンカー打設装置においても、上記第1の実施の形態に示す場合と同様な効果が得られる。
【0042】
(第4の実施の形態)
次に、本発明のグランドアンカー打設装置におけるワイヤーロープ連結方式の更に他の例について図10を参照して説明する。
この第4の実施の形態においては、図10に示すように、ワイヤーロープ20の一端20bをワイヤー連結スリーブ2202の連結孔2204に連結するための引っ掛け金具34を備える。
引っ掛け金具34は、断面がコ字状を呈し、連結孔2204の内径より大きい長さLと、連結孔2204の内径より小さい高さDを有している。
このような引っ掛け金具34とワイヤーロープ20の一端20bとを結合する場合は、ワイヤーロープ20の一端20bの一端を引っ掛け金具34のU字状溝内に引っ掛け金具34の長さ方向と直角な方向から差し込む。そして、ワイヤーロープ20の一端20bと引っ掛け金具34とを貫通する結合ピン36により、ワイヤーロープ20の一端20bと引っ掛け金具34とを回動可能に結合する。
【0043】
このようなワイヤーロープ20をワイヤー連結スリーブ2202に連結する場合は、まず、引っ掛け金具34を結合ピン36を中心に回動し、引っ掛け金具34を図10の仮想線に示すようにワイヤーロープ20の長さ方向と一致する状態に保持する。この状態にあるワイヤーロープ20を引っ掛け金具34ごと、連結孔2204の挿入開口2204a側から雌ねじ2202a側へ突出されるまで差し込む。その後、引っ掛け金具34を図10の実線に示す状態に回動する。そして、この状態のワイヤーロープ20を図10の矢印X方向に引っ張ることで、引っ掛け金具34の長さ方向の両端を連結孔2204の縁部に係止させる。これにより、ワイヤーロープ20はワイヤー連結スリーブ2202に連結されることになる。
このようなワイヤーロープの連結方式を利用したグランドアンカー打設装置においても、上記第1の実施の形態に示す場合と同様な効果が得られる。
【0044】
次に、上述した本実施の形態に示すグランドアンカー打設装置及び打設方法によりワイヤーロープを打設して軟弱地盤層の地盤を改良し地山を補強する場合、例えばトンネル50を掘削しようとする地山52及び切羽54を補強する場合について、図11及び図12を参照して説明する。
図11、図12に示すように、トンネル50の断面の上半に対応する切羽54の部分の複数箇所に、図1に示すグランドアンカー打設装置のボーリングロッドに回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して穿孔ビットで地山をトンネル50の延在方向に沿って穿孔しながら一定の深さまで掘進する。これと同時に、穿孔ビットにケーシングシュ、連結機構を介して連結したワイヤーロープ2002を穿孔された孔内に順次引き込む。切羽54への穿孔が終了した後は、ボーリングロッドを穿孔時と逆に回転して穿孔ビットから分離する。そして、穿孔ビットとケーシングシュと連結機構とワイヤーロープ2002を孔内に残したまま、ボーリングロッドを孔内から引き抜きながら、ボーリングロッド内を通してグラウトを加圧注入する。これにより、図11及び図12に示す切羽54の複数箇所にワイヤーロープ2002が打設され、切羽54が補強される。
【0045】
同様にして、切羽54の周囲に対応する地山52の複数箇所に、図1に示すグランドアンカー打設装置を用いてトンネル50の内部から離間する斜め上方に向けて穿孔しながら一定の深さまで掘進する。これと同時に、穿孔ビットにケーシングシュ、連結機構を介して連結したワイヤーロープ2004を穿孔された孔内に順次引き込む。地山への穿孔が終了した後は、ボーリングロッドを穿孔時と逆に回転して穿孔ビットから分離する。そして、穿孔ビットとケーシングシュと連結機構とワイヤーロープ2004を孔内に残したまま、ボーリングロッドを孔内から引き抜きながら、ボーリングロッド内を通してグラウトを加圧注入する。これにより、図11及び図12に示す地山52の複数箇所にワイヤーロープ2004が打設され、切羽54の周囲に対応する地山52が補強される。
【0046】
次に、図12に示すように、補強された切羽542を、不図示の掘削機械を用いてワイヤーロープ2002及び2004を破壊しつつ掘削し、トンネル50の全断面をトンネル50の延在方向に沿って掘削する。これにより、トンネル空洞部5002が形成される。
この場合、ワイヤーロープ2002は切断されないまま、切羽54の前面から垂れ下がった状態におかれる。
これら垂れ下がったワイヤーロープ2002aを機械式カッタまたはガス切断機などを用いて切断し、切羽の掘削作業に支障が来たさないように除去する。
【0047】
なお、図12において、ワイヤーロープ2002と平行な残留ワイヤーロープ2002A及びワイヤーロープ2004と平行な残留ワイヤーロープ2002Aは、ワイヤーロープ2002,2004が打設される一段階前に打設されたワイヤーロープが、掘削機械による切羽の掘削時に残ったケーブルボルトである。
また、図12において、符号56は掘削後のトンネル50の内周壁面に吹き付けられた吹付けコンクリートであり、符号58は吹付けコンクリート56で覆工された後のトンネル50の内周面を支持する支保工であり、60はトンネル50の底面に打設されたインバートである。
【0048】
上記のようにグランドアンカー打設装置及び打設方法を用いてワイヤーロープを打設することにより、軟弱地盤層の地盤を改良し地山を補強することができるとともに、ワイヤーロープ施工の容易性及び能率化を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0049】
100……グランドアンカー打設装置
12……ボーリングロッド
14……ビットアダプタ
16……穿孔ビット
18……ケーシングシュ
20……ワイヤーロープ
22……連結機構
2202……ワイヤー連結スリーブ
24……ビット先導管
28……スタビライザー
30……着脱機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山への穿孔用の回転と打撃力が付与される中空のボーリングロッドと、
前記ボーリングロッドの先端に前記ボーリングロッドの軸線と軸線を一致して前記ボーリングロッドの軸線方向に移動不能かつ前記ボーリングロッドと一体回転するように設けられたビットアダプタと、
前記ビットアダプタの先端に前記ビットアダプタの軸線と軸線を一致させて設けられる穿孔ビットと、
前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとをそれらの軸線方向に移動不能でそれらが一体回転可能かつ分離可能に結合させ前記ボーリングロッドの基端側からの操作で前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとを分離させる着脱機構と、
前記ビットアダプタの外周に配置され軸線方向の一端が前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結され前記穿孔ビットにより穿孔された孔に挿入される外径で形成された外側部材と、
前記外側部材に設けられ前記ボーリングロッドの長さ方向に沿って配置される複数のワイヤーロープの一端を連結する連結機構と、
を備えることを特徴とするグランドアンカー打設装置。
【請求項2】
前記外側部材は、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュと、前記ケーシングシュに連結され前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のワイヤー連結スリーブとを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項3】
前記外側部材は、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュと、前記ケーシングシュに連結され前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在し、穿孔時の前記穿孔ビットの掘進方向を安定化させる筒状のビット先導管とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項4】
前記外側部材は、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュと、前記ケーシングシュに連結され前記ボーリングロッドの半径方向外側かつ前記ワイヤー連結スリーブの半径方向内側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在し、穿孔時の前記穿孔ビットの掘進方向を安定化させる筒状のビット先導管とを含んで構成されていることを特徴とする請求項2記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項5】
前記連結機構は、前記ワイヤー連結スリーブの内周部の周方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項2または4記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項6】
前記ビット先導管の外周部の周方向に間隔をおいた複数箇所にワイヤー引掛け部が設けられ、各ワイヤーロープの端部は前記ワイヤー引掛け部に引掛けられ締付バンドにより前記ビット先導管の外周部に締め付けられて固定され、
前記連結機構は、前記ビット先導管と前記ワイヤー引掛け部と前記バンドとを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項3または4記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項7】
前記外側部材に、前記穿孔ビットで穿孔された孔の内周部に係合して該外側部材の回転を抑止するスタビライザーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項8】
中空のボーリングロッドの先端にビットアダプタを設け、前記ビットアダプタの先端に穿孔ビットを分離可能に設け、前記ビットアダプタの外周で前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能に前記穿孔ビットに外側部材を連結し、
前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記外側部材の周方向に間隔をおいた複数箇所に複数のワイヤーロープの一端をそれぞれ連結し、
前記ボーリングロッドに回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して前記穿孔ビットで地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進し、同時に前記外側部材により前記ワイヤーロープを前記穿孔された孔内に順次引き込む穿孔引き込み工程と、
前記地山への穿孔が終了した後、前記ビットアダプタを前記穿孔ビットから分離し、前記穿孔ビットと前記外側部材と前記ワイヤーロープを前記孔内に残したまま前記ビットアダプタと前記ボーリングロッドを前記孔内から引き抜きながら前記ボーリングロッドを通して前記孔内にグラウトを加圧注入するグラウト注入工程と、
を備えることを特徴とするグランドアンカー打設方法。
【請求項9】
前記ビットアダプタの前記穿孔ビットからの分離は、前記ボーリングロッドを前記穿孔時と逆に回転したのち、前記ボーリングロッドを引き抜くことでなされることを特徴とする請求項8記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項10】
前記外側部材を、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュを含んで構成し、
前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のワイヤー連結スリーブを前記ケーシングシュに連結し、
前記ワイヤー連結スリーブの内周部の周方向に間隔をおいた複数箇所に前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ワイヤーロープの一端が連結される複数の連結孔を設け、
前記外側部材への前記ワイヤーロープの一端の連結は、前記ワイヤーロープの一端を前記連結孔に連結することで行う、
ことを特徴とする請求項8または9記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項11】
前記外側部材を、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュを含んで構成し、
前記ケーシングシュに、前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のビット先導管を連結し、穿孔時の穿孔ビットの掘進方向を安定化させるようにした、
ことを特徴とする請求項8乃至10に何れか1項記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項12】
前記外側部材を、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュを含んで構成し、
前記ケーシングシュに、前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のビット先導管を連結し、穿孔時の穿孔ビットの掘進方向を安定化させ、
前記外側部材への前記ワイヤーロープの一端の連結は、前記ワイヤーロープの一端をビット先導管に連結することで行う、
ことを特徴とする請求項8記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項13】
穿孔時に、前記外側部材の外周部を前記穿孔ビットで穿孔された孔の内周部に係合させ、該外側部材の回転を抑止するようにした、
ことを特徴とする請求項8乃至12に何れか1項記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項1】
地山への穿孔用の回転と打撃力が付与される中空のボーリングロッドと、
前記ボーリングロッドの先端に前記ボーリングロッドの軸線と軸線を一致して前記ボーリングロッドの軸線方向に移動不能かつ前記ボーリングロッドと一体回転するように設けられたビットアダプタと、
前記ビットアダプタの先端に前記ビットアダプタの軸線と軸線を一致させて設けられる穿孔ビットと、
前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとをそれらの軸線方向に移動不能でそれらが一体回転可能かつ分離可能に結合させ前記ボーリングロッドの基端側からの操作で前記ビットアダプタと前記穿孔ビットとを分離させる着脱機構と、
前記ビットアダプタの外周に配置され軸線方向の一端が前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結され前記穿孔ビットにより穿孔された孔に挿入される外径で形成された外側部材と、
前記外側部材に設けられ前記ボーリングロッドの長さ方向に沿って配置される複数のワイヤーロープの一端を連結する連結機構と、
を備えることを特徴とするグランドアンカー打設装置。
【請求項2】
前記外側部材は、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュと、前記ケーシングシュに連結され前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のワイヤー連結スリーブとを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項3】
前記外側部材は、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュと、前記ケーシングシュに連結され前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在し、穿孔時の前記穿孔ビットの掘進方向を安定化させる筒状のビット先導管とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項4】
前記外側部材は、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュと、前記ケーシングシュに連結され前記ボーリングロッドの半径方向外側かつ前記ワイヤー連結スリーブの半径方向内側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在し、穿孔時の前記穿孔ビットの掘進方向を安定化させる筒状のビット先導管とを含んで構成されていることを特徴とする請求項2記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項5】
前記連結機構は、前記ワイヤー連結スリーブの内周部の周方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項2または4記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項6】
前記ビット先導管の外周部の周方向に間隔をおいた複数箇所にワイヤー引掛け部が設けられ、各ワイヤーロープの端部は前記ワイヤー引掛け部に引掛けられ締付バンドにより前記ビット先導管の外周部に締め付けられて固定され、
前記連結機構は、前記ビット先導管と前記ワイヤー引掛け部と前記バンドとを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項3または4記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項7】
前記外側部材に、前記穿孔ビットで穿孔された孔の内周部に係合して該外側部材の回転を抑止するスタビライザーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載のグランドアンカー打設装置。
【請求項8】
中空のボーリングロッドの先端にビットアダプタを設け、前記ビットアダプタの先端に穿孔ビットを分離可能に設け、前記ビットアダプタの外周で前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能に前記穿孔ビットに外側部材を連結し、
前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記外側部材の周方向に間隔をおいた複数箇所に複数のワイヤーロープの一端をそれぞれ連結し、
前記ボーリングロッドに回転と打撃力を付与すると共に押込み力を付与して前記穿孔ビットで地山を穿孔しながら一定の深さまで掘進し、同時に前記外側部材により前記ワイヤーロープを前記穿孔された孔内に順次引き込む穿孔引き込み工程と、
前記地山への穿孔が終了した後、前記ビットアダプタを前記穿孔ビットから分離し、前記穿孔ビットと前記外側部材と前記ワイヤーロープを前記孔内に残したまま前記ビットアダプタと前記ボーリングロッドを前記孔内から引き抜きながら前記ボーリングロッドを通して前記孔内にグラウトを加圧注入するグラウト注入工程と、
を備えることを特徴とするグランドアンカー打設方法。
【請求項9】
前記ビットアダプタの前記穿孔ビットからの分離は、前記ボーリングロッドを前記穿孔時と逆に回転したのち、前記ボーリングロッドを引き抜くことでなされることを特徴とする請求項8記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項10】
前記外側部材を、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュを含んで構成し、
前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のワイヤー連結スリーブを前記ケーシングシュに連結し、
前記ワイヤー連結スリーブの内周部の周方向に間隔をおいた複数箇所に前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ワイヤーロープの一端が連結される複数の連結孔を設け、
前記外側部材への前記ワイヤーロープの一端の連結は、前記ワイヤーロープの一端を前記連結孔に連結することで行う、
ことを特徴とする請求項8または9記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項11】
前記外側部材を、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュを含んで構成し、
前記ケーシングシュに、前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のビット先導管を連結し、穿孔時の穿孔ビットの掘進方向を安定化させるようにした、
ことを特徴とする請求項8乃至10に何れか1項記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項12】
前記外側部材を、前記穿孔ビットに、前記穿孔ビットの軸線周りに回転可能にかつ前記穿孔ビットの軸線方向に移動不能に連結されたケーシングシュを含んで構成し、
前記ケーシングシュに、前記ボーリングロッドの半径方向外側で前記ボーリングロッドの基端側へ延在する筒状のビット先導管を連結し、穿孔時の穿孔ビットの掘進方向を安定化させ、
前記外側部材への前記ワイヤーロープの一端の連結は、前記ワイヤーロープの一端をビット先導管に連結することで行う、
ことを特徴とする請求項8記載のグランドアンカー打設方法。
【請求項13】
穿孔時に、前記外側部材の外周部を前記穿孔ビットで穿孔された孔の内周部に係合させ、該外側部材の回転を抑止するようにした、
ことを特徴とする請求項8乃至12に何れか1項記載のグランドアンカー打設装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−184597(P2012−184597A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48771(P2011−48771)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(000158910)株式会社亀山 (5)
【出願人】(391066157)ドリルマシン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(000158910)株式会社亀山 (5)
【出願人】(391066157)ドリルマシン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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