グリップ、工具及びグリップの製造方法
【課題】 工具軸に嵌着可能にしながら工具軸に抜け抵抗を与えておくことができるようにする。
【解決手段】
本発明のグリップ1は、工具軸2の回り止め部12を有する後部3を包囲するグリップ本体5と、このグリップ本体5より軟質な樹脂でグリップ本体5の周囲を被覆する被覆層6とを備えている。そして、グリップ本体5と工具軸2の後部3との間に被覆層6と同一の樹脂で形成された内部層4を備えていることを特徴とする。この内部層4は、例えば工具軸2の後部3に備えたソケット17の外周面とグリップ本体5との間に設けられているのが好ましい。
【解決手段】
本発明のグリップ1は、工具軸2の回り止め部12を有する後部3を包囲するグリップ本体5と、このグリップ本体5より軟質な樹脂でグリップ本体5の周囲を被覆する被覆層6とを備えている。そして、グリップ本体5と工具軸2の後部3との間に被覆層6と同一の樹脂で形成された内部層4を備えていることを特徴とする。この内部層4は、例えば工具軸2の後部3に備えたソケット17の外周面とグリップ本体5との間に設けられているのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバなどのグリップ、工具及びグリップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライバなどの工具軸の後部には、使用時に工具を握り込みやすいようにグリップが設けられている。このようなグリップは、工具軸に伝達するトルクに耐えられるように、または使用者が握った際の握力に耐えられるように、一定の剛性を備える必要がある。その一方で、グリップを握った際に手指に加わる圧迫感をなくすために弾力性を備えることも要求される。
このような相反する要求に応えるために、工具軸の周囲に硬質の樹脂を射出成形してグリップ本体を形成すると共にグリップ本体の周囲を部分的に軟質の樹脂でなる被覆層で覆ったグリップが、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−296661号公報
【特許文献2】特表平8−501026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1や特許文献2の工具は、工具軸の周りを硬質の樹脂で固めてグリップ本体を形成しているため、工具軸をグリップ本体(グリップ)から抜き挿しすることが困難な構造となっている。
しかし、工具には古くなった工具軸を新たな工具軸に取り替えたいという要望や工具軸だけを刃先の形状が異なる別の工具軸に取り替えたいという要望がある。それゆえ、工具軸の抜き挿しが困難な特許文献1や特許文献2の工具では、上述の要望に応えることができない。
【0005】
また、例えば工具軸を挿脱自在に収容するソケットを金型内のチャンバに配備しておき、チャンバに樹脂を注入してソケットがグリップ本体に埋め込まれた工具を得ることもできる。
ところが、このような工具では、工具軸を容易に挿入できる反面、何らかの拍子に抜け落ちることもある。例えば作業時に工具を傾けた際に工具軸が簡単に抜け落ちてしまうようでは作業性を低下させてしまうので好ましくない。つまり、工具には、工具軸が挿脱自在でありながら、簡単には抜け落ちてしまわないように工具軸に適度な抜け抵抗が与えられるようになっているのが好ましい。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、工具軸を挿脱可能に保持できるものでありながら、落下防止のための抜け抵抗を工具軸に与えることができる工具のグリップを提供することを目的とする。
また、本発明は、グリップを嵌着していながら工具軸を簡単に交換することができ、工具軸の落下を防止して良好な作業性を実現できる工具を提供することを目的とする。
また、本発明は、工具軸に嵌着可能に保持できるグリップを低コストで製造することができるグリップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のグリップは、工具軸の回り止め部を有する後部を包囲するグリップ本体と、このグリップ本体より軟質な樹脂で前記グリップ本体の周囲を被覆する被覆層とを備えた工具のグリップであって、前記グリップ本体と工具軸の後部との間に前記被覆層と同一の樹脂で形成された内部層を備えていることを特徴とする。
このようにすれば、グリップに対して工具軸を内部層が付与する抜け抵抗を超える力で強めに押し引きすることでグリップに対して工具軸を抜き挿しすることができ、工具軸を
簡単に取り替えることができ、そのうえグリップに挿し込まれた工具軸に対しては内部層が適度な抜け抵抗を与えるので、工具軸がグリップから不意に抜け落ちて落下したり紛失したりする心配がない。
【0008】
また、前記工具軸の後部にソケットを備える場合には、前記ソケットの外周面と前記グリップ本体との間に前記内部層が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、グリップ本体との間に設けられた内部層がソケットの外周面に抜け抵抗を与えるため、ソケットごと工具軸をグリップから抜き差しすることが可能となり、ソケットを有する工具軸の交換が可能となる。
なお、前記内部層と被覆層とは、前記グリップ本体における後端側から先端側までの間に形成され且つ先端側で内部層と被覆層とが連続形成されていても良いし、前記グリップ本体における後端側から中途部までの間に形成されていても良い。このようにすれば、工具軸に対して内部層が与える抜け抵抗を適宜変更でき、工具の設計のバリエーションを向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の工具は、上述のようにグリップ本体と工具軸の後部との間に被覆層と同一の樹脂で形成された内部層を備えており、工具軸の落下を防止して良好な作業性を実現できるようになっている。さらに、工具軸の後部は、好ましくは工具軸の後部を角軸に形成しているか、丸軸にフィンを設けているか、又は丸軸にフィンを設けてソケットを嵌合しているのが良い。このようにすれば、角軸の角の部分やフィンの先端が回り止め部となり、グリップの回動トルクを工具軸に確実に伝達することができる。
さらに、本発明のグリップの製造方法は、工具軸の回り止め部を備えた後部を金型のチャンバ内に挿入し、前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸の後部の周囲に内部層を形成し、前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とするものである。
【0010】
このようにすれば、先にチャンバ内注入された第1の樹脂の内側に第2の樹脂が注入され、第1の樹脂と第2の樹脂とが重なったままチャンバの内周面と工具軸の後部との間に形成された空間に広がるので、被覆層と内部層とを同時に形成できると共に、被覆層と内部層との間にグリップ本体を一度に形成することができ、工具軸を挿脱可能に保持できるグリップを低コストで製造することができる。
なお、本発明の製造後に工具軸を挿入するグリップの製造方法は、工具軸入れ子を金型のチャンバ内に挿入し、前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、被覆層、内部層及びグリップ本体が成形されてから工具軸入れ子を抜いて、工具軸入れ子が抜けたあとを工具軸を挿し込む孔として利用することができる。
さらに、本発明の樹脂注入後に工具軸入れ子を挿入するグリップの製造方法は、金型のチャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、前記第1の樹脂の注入途中から当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記被覆層の内側にグリップ本体を形成し、前記チャンバ内に充填された第1及び第2の樹脂が冷却固化する前に工具軸入れ子を前記被覆層を巻き込みながら前記チャンバに挿入して前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、前記軸穴の形成後に、前記工具軸入れ子を前記チャンバから引き抜くことにより、前記内部層の内側に軸穴を形成することを特徴とする。
【0012】
このように工具軸入れ子をチャンバ内に挿入する際には、チャンバ内に充填されている第1の樹脂及び第2の樹脂は完全に冷却固化していないため、工具軸入れ子が被覆層を巻き込むように挿入されることで工具軸入れ子の周囲に内部層を簡単に形成することができ、内部層がチャンバの先端側だけに形成されたグリップを容易に製造することが可能とな
る。
上述のようにしてグリップを製造する際には、前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することができる。
【0013】
このようにすれば工具軸の回り止め部を備えた後部をグリップ本体より軟質な樹脂で形成された内部層で包囲することができる。
また、前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から中途側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することもできる。
このようにすれば工具軸の回り止め部を備えた後部の中途までを軟質の内部層で、後部の中途から先端を硬質で剛性のあるグリップ本体で被覆することができ、グリップからの工具軸の抜き差しを可能としつつもグリップの回動トルクを工具軸に確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグリップによれば、工具軸を挿脱可能に保持できるものでありながら、落下防止のための抜け抵抗を工具軸に与えることができる。
また、本発明の工具によれば、工具軸を簡単に交換することができ、工具軸の落下を防止して良好な作業性を実現できる。
さらに、本発明のグリップの製造方法によれば、工具軸を挿脱可能に保持できるグリップを低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のグリップ付きの工具の断面斜視図である。
【図2】同断面平面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】第1実施形態のグリップの製造方法を示す説明図である。
【図5】第2実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】第3実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図8】第4実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図9】第5実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】第6実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図12】第7実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図13】第8実施形態のグリップの断面平面図である。
【図14】第8実施形態のグリップの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。
工具Kは、工具軸2の後部3にグリップ1を嵌着して構成されている。前記工具軸2は、丸棒材から形成されており、先端側にビス等と係合可能な刃先(図示略)が形成されている。また、工具軸2の後部3には工具軸2をグリップ1に対して回り止めする回り止め部12が設けられており、グリップ1の回転トルクを工具軸2に伝達できるようになっている。回り止め部12としてフィン8が形成されており、このフィン8は、工具軸2の後部3に工具軸2の軸心を挟んで径方向に一対形成されている。フィン8は、後部3の外周面の一部をプレスで圧縮成形することで後部3の外周面から径外方向に板状に突出形成されており、工具軸2のグリップに対する相対回転を規制している。
【0017】
図1〜図3に示すように第1実施形態のグリップ1Aは、工具軸2の後部3に設けられており、工具軸2の軸心方向に沿って長い略回転楕円体状に形成されている。グリップ1Aは、工具軸2のフィン8(回り止め部12)を有する後部3を包囲する内部層4と、この内部層4の周囲を包囲するグリップ本体5と、このグリップ本体5の周囲を被覆する被覆層6とを備えている。被覆層6はグリップ本体5より軟質な樹脂で形成されており、内
部層4は被覆層6と同一の樹脂で形成されている。つまり、グリップ1Aはグリップ本体5より軟質な樹脂で構成された内部層4をグリップ本体5と工具軸2の後部3との間に積層状に備えた構成とされている。
【0018】
グリップ本体5は、その外観形状がグリップ1Aの外観形状に合わせてグリップ1Aと相似な略楕球状に形成されており、グリップ1Aに比べて被覆層6の厚みの分だけ小さいサイズに形成されている。
グリップ本体5は、工具軸2の後部3の形状に合わせて形成された内部層4を外側から包み込むように包囲している。すなわち、グリップ本体5は、先方に向かって開口した有底筒状に形成されており、後部3の軸後端面9を包囲する内部層4のさらに後端側にも形成されている。
【0019】
被覆層6は、グリップ本体5の外周面、前端面及び後端面を全面に亘って被覆している。被覆層6は、内部層4と同じ樹脂で一体的に形成されると共に先端側で内部層4と繋がっており、グリップ本体5の径外側を隙間なく包囲している。
内部層4は、工具軸2の後部3の外周面、前端面及び後端面を全面に亘って包囲するように略円筒状に形成されており、後部3の軸後端面9の全面を包囲できるように軸後端面9の後端側にも形成されている。
グリップ1Aの内部層4は、工具軸2のフィン8を包囲している。すなわち、内部層4は、工具軸2におけるフィン8が形成された位置ではフィン8に合わせて径外側に向かって膨らんだ形状とされており、フィン8の全体をも隙間なく全面に亘って包囲している。
【0020】
図3に示すように、第1実施形態のグリップ1Aでは、グリップ本体5は硬質の樹脂で形成されており、内部層4と被覆層6とはグリップ本体5を構成する硬質の樹脂より柔らかい軟質の樹脂で形成されている。言い換えれば、グリップ1Aは内部層4と被覆層6との間にグリップ本体5を挟持した部材を有底の円筒状に形成して、工具軸2の後部3の周りを包囲したものということもできる。
内部層4と被覆層6とを形成する軟質の樹脂には、シリコンゴム、天然ゴム、BRやSBRなどの合成ゴム、ポリエチレン系樹脂、アイオノマ系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、発泡ポリウレタン、又はこれらから選ばれる複数の樹脂を混合した合成樹脂が用いられる。
【0021】
軟質の樹脂には、ショアA硬さ(ASTM D2240)が40〜60の合成樹脂を用いるのが好ましい。ショアA硬さ40以上の合成樹脂を硬質の樹脂に用いることで、ブリードの発生を防ぐことができる。また、ショアA硬さ60以下の合成樹脂を硬質の樹脂に用いることで、握って使用する際の手指に対する負担を軽減することが可能となるからである。
グリップ本体5を形成する硬質の樹脂には、ロックウェル硬さ(ASTM D785)が80〜100のポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS、アセチレン樹脂又はこれらから選ばれる複数の樹脂を混合した合成樹脂、あるいはこれらの樹脂を含む再生樹脂が用いられ、これらの中でも特に好ましくはポリプロピレン系樹脂が用いられる。
【0022】
硬質の樹脂には、ロックウェル硬さが80〜100の合成樹脂を用いるのが好ましい。これらの硬度を備えた硬質の樹脂をグリップ本体5に用いれば、内部層4を介していても、グリップ1Aを捻った際に発生する回転トルクを工具軸2に減らすことなく伝えることが可能となる。
また、内部層4や被覆層6に比べて樹脂使用量が大きなグリップ本体5に再生材料を用いることで、再生材料の使用比率が10%未満であることが多かった従来のグリップに比べて再生材料の使用比率を90%以上に高めることができ、環境への負荷の低減が可能となる。また、様々な樹脂や添加物が混合されて黒色を呈することの多い再生材料をグリップ本体5に用いていても、グリップ本体5を被覆層6で被覆する構成となっているので、被覆層6を着色することによってグリップ1Aをサイズや種類に合わせて色分けすることが可能となる。
【0023】
上述のように硬質の樹脂でなるグリップ本体5と工具軸2の後部3との間に軟質の樹脂でなる内部層4を設ければ、グリップ1Aに挿し込まれた工具軸2に対して内部層4が適
度な抜け抵抗を与えるので、工具軸2がグリップ1Aから不意に抜け落ちて落下したり紛失したりする心配がない。また、グリップ1Aに対して工具軸2を内部層4が付与する抜け抵抗を超える力で強めに押し引きすれば、グリップ1Aに対して工具軸2がスライドして工具軸2を抜き挿しすることができ、工具軸2を簡単に取り替えることができる。
次に、第1実施形態のグリップ1Aの製造方法について説明する。
【0024】
第1実施形態のグリップ1Aの製造方法は、金型10のチャンバ14に工具軸2の後部3を挿入し、チャンバ14内に溶融状態の樹脂を供給する二色射出成型法(混色成型法)で製造される。
図4(a)に示すように、金型10には、内部がグリップ1Aの外観形状に合わせて中空に形成されたチャンバ14が設けられている。チャンバ14には、溶融した樹脂を供給する供給口11が後端側に形成されている。
図4(b)に示すように、グリップ1Aを成形するには、まず内部層4と被覆層6とを形成するための軟質の樹脂(第1の樹脂)を、溶融状態のまま供給口11からチャンバ14内に供給する。
【0025】
図4(c)に示すように、軟質の樹脂の供給に続いて、硬質の樹脂(第2の樹脂)を溶融状態のまま供給口11からチャンバ14内に供給する。このとき、既に供給された軟質の樹脂の樹脂溜まり内側に硬質の樹脂を供給して、軟質の樹脂を内部から硬質の樹脂で膨らませるようにする。このようにすると、軟質の樹脂がチャンバ14の内周面や工具軸2の外表面に最初に付着して、内部層4とこの内部層4に先端側で繋がった被覆層6とが形成される。
図4(d)に示すように、樹脂の冷却(凝固)後に金型10から取り出せば、軟質の樹脂がチャンバ14の内周面及び工具軸2の外表面を隙間なく包囲して内部層4と被覆層6とが形成されると共に、これら内部層4と被覆層6との間にグリップ本体5が両者に挟まれるように形成される。
【0026】
このようにグリップ1Aは、軟質の樹脂を最初に供給し、軟質の樹脂の内側に軟質の樹脂を連続して供給する混色成型法で製造される。つまり、硬質の樹脂と軟質の樹脂とが連続して供給されているので、それぞれの樹脂の供給後に樹脂の冷却に時間をかける必要がない。その結果、異なる樹脂で多層に形成されたグリップ1Aを一度に(効率的に)製造することができる。
第1実施形態では、グリップ本体5が内部層4と被覆層6との間に形成されている。工具軸2は硬質な樹脂で成るグリップ本体5によりグリップ1Aに支持されているが、工具軸2とグリップ本体5との間には粘弾性に富む軟質の樹脂で成る内部層4が設けられている。それゆえ、グリップ1Aから工具軸2に急激なトルク伝達があっても、内部層4でトルクを吸収して緩和することができ、工具軸2によりねじ穴が潰されることを防止することができる。
【0027】
また、グリップ1Aはグリップ本体5に再生樹脂を用いることができ、再生樹脂の使用比率を従来のグリップより高くすることができる。さらに、第1実施形態のグリップ1Aでは、金属製の工具軸2を樹脂製のグリップ1Aから引き抜くことができ、樹脂製のグリップ1Aだけを分別してリサイクルすることができる。それゆえ、第1実施形態のグリップ1Aでは、環境に負担を与えないように製造から廃棄までを行うことができる。
さらに、上述のようなグリップ1Aを備えた工具13は、工具軸2の落下を防止して良好な作業性を実現できるようになっている。
「第2実施形態」
次に、グリップ1の第2実施形態を以下に説明する。
【0028】
第2実施形態のグリップ1Bは、工具のフィン8付き工具軸2の後部3を先端側から挿入した際に、フィン8が内部層4を貫通してグリップ本体5まで達するように、既に成形してあるグリップ1Bの内部層4に先端側から挿入して、先方に向かって開口したストレート筒状の内部層4を備えている。
図5及び図6に示すように、第2実施形態のグリップ1Bでは、内部層4は先方に向かって開口したストレート筒状に形成されており、工具軸2のフィン8が形成された位置で
もフィン8に合わせて径外側に向かって膨らむことがない。また、内部層4の後端は工具軸2の後端面よりさらに後端側に位置しており、工具軸2の後端面と内部層4の後端との間には樹脂や工具が設けられていない空間が形成されている。
【0029】
また、グリップ1Bの先端側から挿入された工具軸2の後部3では、フィン8の先端(突端8a)が内部層4を貫通して硬質な樹脂で形成されたグリップ本体5に達しており、フィン8を取り巻く内部層4とフィン8との間に抜け抵抗が発生するようになっている。
次に、第2実施形態の製造方法を以下に説明する。
第2実施形態のグリップ1Bは、第1実施形態の金型10をそのまま使用して製造される。金型10には内部のチャンバ14にフィン8付きの工具軸2に代えて工具軸入れ子16が挿入される。この工具軸入れ子16は、フィン8が形成されていない丸棒とされており、その後端がチャンバ14の後端側に位置するようにチャンバ14内に配備されている。
【0030】
グリップ1Bを成形するには、第1実施形態の場合と同様に、まず軟質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する。そして、軟質の樹脂の供給に続いて硬質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する。その際、軟質の樹脂の樹脂溜まりの内側に硬質の樹脂を供給するようにする。
次に、このようにして形成されたグリップ1Bから工具軸入れ子16を抜き出す。工具軸入れ子16を抜き出した後には、先端側に向かって開口したストレート筒状の軸穴15が軸心方向に沿って形成される。そして、この軸穴15に、実際に使用するフィン8付き工具軸2を軸後端面9から挿入する。フィン8付きの工具軸2はフィン8の突端8a間の外径が軸穴15の内径より大きくなっているため、工具軸2の挿入に合わせて内部層4にはフィン8による切り込みが入り、フィン8を取り巻く内部層4とフィン8とが互いに接触する。
【0031】
それゆえ、挿入された工具軸2をグリップ1Bから抜き取る際には、フィン8を取り巻く内部層4とフィン8との間に抜け抵抗が発生する。
また、グリップ1Bではフィン8を介して硬質な樹脂で成るグリップ本体5に工具軸2のフィン8の突端8aが達しているので、グリップ1Bに加えられた回転トルクを、内部層4に吸収されることなく工具軸2に確実に伝えることができる。
さらに、第2実施形態のグリップ1Bでは、軸穴15に対して様々な種類の工具軸2を自由に組み合わせて製造することができる。それゆえ、多種類の工具を製造する際に便利となる。さらに、溶融状態の樹脂により高温となる工程では工具軸入れ子16が用いられ、実際の工具軸2が高温となることもない。それゆえ、工具軸2に耐熱性のない金属材料(例えば、熱に弱いネオジウム磁石を含む工具軸2など)を用いることができ、様々な種類の工具を簡単に製造することができる。
【0032】
なお、第2実施形態のグリップ1B及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については第1実施形態と同じである。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態のグリップ1Cを以下に説明する。
図7に示すように、第3実施形態のグリップ1Cは、第2実施形態と同様に工具軸入れ子16をチャンバ14内に挿入した状態で樹脂を供給して成形を行った後、工具軸入れ子16を引き抜いて軸穴15を形成し、この軸穴15に工具軸2を挿入したものである。
【0033】
第3実施形態のグリップ1Cが第1及び第2実施形態と異なっている点は、工具軸入れ子16が丸棒にフィン8が形成されたものとされており、工具軸入れ子16と同様にフィン8を備えた丸棒状の工具軸2が軸穴15に挿入されている点である。
工具軸2は、軸方向の長さが工具軸入れ子16より短く形成されており、この工具軸2の後端面は軸穴15の後端面より先端側に位置している。そして、工具軸2の後部3は内部層4の先端側(一部)だけと接触して抜け抵抗を発揮できるようになっている。
このようにすれば、工具軸2の長さを変更することで内部層4と接触して抜け抵抗を発揮する工具軸2の長さを変更することができ、工具軸2に働く抜け抵抗の大きさを任意に変更することができる。また、第3実施形態のグリップ1Cでは、工具軸2の後端面と軸
穴15の後端面との間に隙間が発生し、この隙間分だけ第1及び第2実施形態より樹脂量を低減することができる。
【0034】
なお、第3実施形態のグリップ1C及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については第1及び第2実施形態と同じである。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態のグリップ1Dを以下に説明する。
図8に示すように、第4実施形態のグリップ1Dは、内部層4と被覆層6とがグリップ本体5における後端側から先端側までの間に形成されているのではなく、グリップ本体5における後端側から中途部までの間に形成されている。そして、グリップ1Dの先端側においては、工具軸2の後部3とグリップ本体5との間には内部層4が設けられておらず、グリップ本体5が工具軸2の回り止め部12を備えた後部3と直接接触する構造となっている。
【0035】
すなわち、第4実施形態のグリップ1Dにおける工具軸2の後部3が挿入される軸穴15は、その後端側だけが内部層4で被覆されており、先端側は内部層4が設けられていない。そして、グリップ1Dに挿入される工具軸2の後端面は第3実施形態と同様に軸穴15の後端面より先端側に位置しており、工具軸2の後部3の後端側(一部)だけが軸穴15の後端側に形成された内部層4で被覆されており、工具軸2の後部3の先端側は硬質な樹脂でなるグリップ本体5で被覆されている。また、軸穴15の先端側の内周面には、工具軸2の軸心方向に沿ってフィン挿入溝16が形成されており、工具軸2のフィン8を挿入できるようになっている。
【0036】
次に、第4実施形態の製造方法を以下に説明する。
グリップ1Dを成形するには、第1及び第2実施形態の場合と同様に、まず軟質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する。そして、軟質の樹脂の供給に続いて硬質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する際に、軟質の樹脂の樹脂溜まりの内側に硬質の樹脂を供給する。第4実施形態の製造方法が上述の実施形態の場合と異なる点は、先に供給される軟質の樹脂の供給量が少なくされ、後から供給される硬質の樹脂の供給量が多くされている点である。このように軟質の樹脂の供給量を少なくすると、先に供給された軟質の樹脂の樹脂溜まりがチャンバ14の後端側に留まり、後から供給された硬質の樹脂だけが樹脂溜まりを貫通してチャンバ14の先端側に広がるため、内部層4と被覆層6とをグリップ本体5における後端側から中途部までの間に形成することができる。
【0037】
なお、第4実施形態のグリップ1D及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については第1実施形態や第2実施形態と同じである。
このように工具軸2のフィン8を有する後部3の一部だけを内部層4で被覆すれば、後部3を全面に亘って内部層4で包囲するのに比べて、工具軸2に対して内部層4が与える抜け抵抗を小さくすることができ、抜け抵抗を適宜変更して工具13の設計のバリエーションを向上させることが可能となる。
なお、第4実施形態のグリップ1D及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第5実施形態」
次に、第5実施形態のグリップ1Eを以下に説明する。
【0038】
図9及び図10に示すように、第5実施形態のグリップ1Eは、ソケット17を有する工具軸2を挿脱自在に備えており、ソケット17の外周面とグリップ本体5との間に内部層4が設けられている。
ソケット17は角筒状に形成されており、その先端側にはフランジ部19が形成されている。ソケット17の内部には、工具軸2を挿通する挿通孔18が前後方向に沿って形成されている。この挿通孔18には、前後方向にフィン挿入溝16が形成されており、このフィン挿入溝16に沿ってフィン8を案内することで、工具軸2の後部3を着脱自在に挿入できるようになっている。
【0039】
また、ソケット17の外周面は、このソケット17の外径に合わせて形成された軸穴15に挿入されており、ソケット17の外周面が内部層4に接触することでソケット17を
有する工具軸2に抜け抵抗が働くようになっている。
このようにすれば、グリップ本体5とソケット17の外周面との間に設けられた内部層4がソケット17に抜け抵抗を与えるため、ソケット17ごと工具軸2をグリップ1Eから抜き差しすることが可能となり、工具軸2の交換だけでなくソケット17の交換も可能となるので、工具13やグリップ1Eの利便性をさらに向上させることができる。
【0040】
次に、第5実施形態のグリップ1Eの製造方法を以下に説明する。
グリップ1Eを製造するには、金型10には内部のチャンバ14に、ソケット17の角筒部の外形に合わせた工具軸入れ子16を予め挿入しておく。この工具軸入れ子16は、チャンバ14の先端から後端際まで及ぶ長さに形成されており、またあとでソケット17を挿脱し易いように先端側に向かってテーパ状に形成されている。そして、上述の実施形態の場合と同様に、まず軟質の樹脂と硬質の樹脂とを供給口11からチャンバ14内に供給して、工具軸入れ子16の周囲に内部層4、グリップ本体5、被覆層6を形成する。そして、冷却後に工具軸入れ子16を抜き取り、抜き取ったあとの軸穴15に工具軸2とこの工具軸2が挿入されたソケット17とを挿入する。
【0041】
このようにすれば、ソケット17の外周面と内部層4との間に働く抜け抵抗により、ソケット17がグリップ1Eにしっかりと保持される。また、軸穴15は先端側に向かってテーパ状に形成されているため、ソケット17を軸穴15から引き抜くことも可能となり、ソケット17の挿脱が可能となる。
なお、第5実施形態のグリップ1E及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第6実施形態」
次に、第6実施形態のグリップ1Fを以下に説明する。
【0042】
図11に示すように、第6実施形態のグリップ1Fは、六角筒状の内部層4を備えており、工具軸2として六角棒状(角軸状)の工具軸2を挿入可能となっている。第6実施形態のグリップ1Fは、六角筒状の内部層4が六角棒状の工具軸2の各面を被覆するため、工具軸2を引き抜くのが容易であるにも拘わらず、回転方向に一定のトルクを伝達できるようになっている。すなわち、第6実施形態のグリップ1Fは、角部が回り止め部12とされた角軸状の工具軸2に着脱自在に備えられるグリップを例示したものということもできる。
【0043】
なお、本実施形態では六角棒状の工具軸2を挿入可能な六角筒状の内部層4を備えたグリップ1Fを開示したが、グリップ1Fは、例えば四角棒状の工具軸2を挿入可能な四角筒状の内部層4を備えたものであっても良い。
なお、第6実施形態のグリップ1F及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第7実施形態」
次に、第7実施形態のグリップ1Gを以下に説明する。
【0044】
図12に示すように、第7実施形態のグリップ1Gは、第5実施形態のグリップ1Eと同様にソケット17を有する工具軸2を挿脱自在に備えている。グリップ1Gは、内部層4と被覆層6とがグリップ本体5における後端側から中途部までの間に形成されており、グリップ1Gの先端側においては、ソケット17とグリップ本体5との間には内部層4が設けられておらず、グリップ本体5がソケット17の外周面と直接接触する構造となっている。
すなわち、第7実施形態のグリップ1Gでは、軸穴15の先端側はソケット17の外径(ソケット17の角筒部)に合わせた形状に形成されており、軸穴15の後端側は工具軸2の外径に合わせて先端側より径小な円筒状に形成されており、軸穴15の後端側に形成された内部層4とソケット17に嵌着された工具軸2の後部3との間に抜け抵抗が働く構造となっている。
【0045】
次に、第7実施形態のグリップ1Gの製造方法は、第4実施形態の製造方法において丸棒状の工具軸入れ子16に代えてソケット17の後端側(角筒部)の外形に合わせた工具軸入れ子16を用いたものである。すなわち、グリップ1Gの工具軸入れ子16の先端側
はソケット17の角筒部に合わせた形状に形成されており、後端側は工具軸2の外径に合わせて先端側より径小な円筒状に形成されている。
そして、第4実施形態と同様にして樹脂による成形を行った後、工具軸入れ子16を引き抜くことで形成された軸穴15の先端側にソケット17を、また後端側に工具軸2の後部3を挿入することで、グリップ1Gを製造することができる。
【0046】
第7実施形態のグリップ1Gでは、工具軸2のソケット17の外周面とグリップ本体5との間には内部層4が設けられていないが、工具軸2の後部3とグリップ本体5との間には内部層4が設けられており、工具軸2には抜け抵抗が発揮される構成とされている。
なお、第7実施形態のグリップ1G及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第8実施形態」
次に、第8実施形態のグリップ1Hを以下に説明する。
【0047】
図13は工具軸2を備えていないグリップ単体の第8実施形態のグリップ1Hを示したものである。図13に示されるように、第8実施形態のグリップ1Hは、先端側に向かって開口した軸穴15を有している。この軸穴15にはフィン8を備えた工具軸2の後部3を挿入できるようにフィン挿入溝16が軸穴15の中途側から先端側にかけて形成されており、軸穴15の周囲には内部層4が形成されている。
内部層4は、被覆層6がグリップ本体5の先端側から後端側までの全長に亘って形成されているのに対して、グリップ本体5の先端側だけに形成されており、被覆層6とグリップ本体5の先端側で繋がっている。内部層4は、その厚みが先端側から後端側に向かって徐々に薄くなるように形成されており、フィン挿入溝16の中途側より後端側には形成されていない。このように内部層4がグリップ本体5の先端側だけに形成されていれば、内部層4と工具軸2の後部3との間に生じる引き抜き抵抗を小さくすることができ、強い力をかけなくても工具軸2の挿脱が行えるようになって、工具軸2の付け替えを楽に行うことができる。
【0048】
次に、第8実施形態のグリップ1Hの製造方法を説明する。
第8実施形態のグリップ1Hの製造方法は、上述した実施形態の場合と同様に金型10内のチャンバ14に軟質の樹脂(第1の樹脂)と硬質の樹脂(第2の樹脂)とを順次注入してチャンバ14の内周面に沿って被覆層6とグリップ本体5とを形成するものである。第8実施形態が他の実施形態と異なっている点は、工具軸入れ子16を入れるタイミングが第1の樹脂及び第2の樹脂の注入後である点である。
すなわち、図14(a)に示されるように、まず工具軸入れ子16が挿入されていないチャンバ14内に軟質の樹脂及び硬質の樹脂を供給口11から順次注入する。このとき、図例のようにチャンバ14の後端側に形成された供給口11から樹脂を供給しても良いが、例えばチャンバ14の先端側や側面に形成された供給口から樹脂を注入しても良い。また、チャンバ14の先端側の金型10にはフィン8付きの工具軸入れ子16を挿入する軸挿入部20が形成されており、樹脂の注入時にはこの軸挿入部20を工具軸入れ子16が塞ぐことでチャンバ14に注入された樹脂が軸挿入部20からチャンバ14の外部に漏れないようになっている。
【0049】
図14(b)に示されるように、チャンバ14内が軟質の樹脂及び硬質の樹脂で充填されると、充填された樹脂の冷却固化が始まる前に、工具軸入れ子16をチャンバ14内に挿入する。このとき、工具軸入れ子16はチャンバ14の先端側に形成された被覆層6を巻き込みながらチャンバ14に挿入され、工具軸入れ子16の周囲に被覆層6と同じ軟質の樹脂で内部層4が形成される。
図14(c)に示されるように、工具軸入れ子16がチャンバ14内に挿入されると、工具軸入れ子16の周囲に内部層4が形成され、この内部層4の形成に合わせて工具軸入れ子16に設けられていたフィン8により内部層4にフィン挿入溝16が形成される。
【0050】
図14(d)に示されるように、軟質の樹脂及び硬質の樹脂が冷却されて固化し始めたら工具軸入れ子16をチャンバ14から引き抜くことにより内部層4の内側に軸穴15が形成される。
このように工具軸入れ子16をチャンバ14内に挿入する際には、チャンバ14内に充填されている軟質の樹脂及び硬質の樹脂は完全に冷却固化していないため、工具軸入れ子16が被覆層6を巻き込むように挿入されることで工具軸入れ子16の周囲に内部層4を簡単に形成することができ、内部層4がチャンバ14の先端側だけに形成されたグリップ1Hを容易に製造することが可能となる。
【0051】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
軟質の樹脂や硬質の樹脂としてシリコンゴムやポリプロピレン系樹脂などを例示したが、軟質の樹脂や硬質の樹脂は上述のものに限定されることはない。例えば、複数の樹脂の混合物や再生樹脂を用いることもできる。
工具軸2のフィン8として後部3に工具軸2の軸心を挟んで径方向に一対形成される板状のものを例示したが、フィン8は軸方向、周方向に継続的な突起でも良いし、また例えば3枚以上形成されていても良い。
【0052】
上記実施形態では、内部層4と被覆層6とが2種類の樹脂をチャンバ14の後端側に設けられた供給口11から注入して形成されたものを例示した。しかし、これらの供給口11はチャンバ14の中途側や先端側に設けられても良いし、各位置の供給口11は1又は複数形成しても良く、各供給口11から2種類の樹脂を注入できれば良い。
なお、上記実施形態では、内部層4だけで工具軸2に抜け抵抗を付与するグリップ1を例示したが、例えば被覆層6の外周側からグリップ本体5及び内部層4を貫通して工具軸2に達するビスやボルトなどの係止具を用いて工具軸2により強い抜け抵抗を付与することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 グリップ
2 工具軸
3 後部
4 内部層
5 グリップ本体
6 被覆層
8 フィン
8aフィンの突端
9 工具軸の軸後端面
10 金型
11 供給口
12 回り止め部
13 工具
14 チャンバ
15 軸穴
16 フィン挿入溝
17 ソケット
18 挿通孔
19 フランジ部
20 軸挿入部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバなどのグリップ、工具及びグリップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライバなどの工具軸の後部には、使用時に工具を握り込みやすいようにグリップが設けられている。このようなグリップは、工具軸に伝達するトルクに耐えられるように、または使用者が握った際の握力に耐えられるように、一定の剛性を備える必要がある。その一方で、グリップを握った際に手指に加わる圧迫感をなくすために弾力性を備えることも要求される。
このような相反する要求に応えるために、工具軸の周囲に硬質の樹脂を射出成形してグリップ本体を形成すると共にグリップ本体の周囲を部分的に軟質の樹脂でなる被覆層で覆ったグリップが、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−296661号公報
【特許文献2】特表平8−501026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1や特許文献2の工具は、工具軸の周りを硬質の樹脂で固めてグリップ本体を形成しているため、工具軸をグリップ本体(グリップ)から抜き挿しすることが困難な構造となっている。
しかし、工具には古くなった工具軸を新たな工具軸に取り替えたいという要望や工具軸だけを刃先の形状が異なる別の工具軸に取り替えたいという要望がある。それゆえ、工具軸の抜き挿しが困難な特許文献1や特許文献2の工具では、上述の要望に応えることができない。
【0005】
また、例えば工具軸を挿脱自在に収容するソケットを金型内のチャンバに配備しておき、チャンバに樹脂を注入してソケットがグリップ本体に埋め込まれた工具を得ることもできる。
ところが、このような工具では、工具軸を容易に挿入できる反面、何らかの拍子に抜け落ちることもある。例えば作業時に工具を傾けた際に工具軸が簡単に抜け落ちてしまうようでは作業性を低下させてしまうので好ましくない。つまり、工具には、工具軸が挿脱自在でありながら、簡単には抜け落ちてしまわないように工具軸に適度な抜け抵抗が与えられるようになっているのが好ましい。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、工具軸を挿脱可能に保持できるものでありながら、落下防止のための抜け抵抗を工具軸に与えることができる工具のグリップを提供することを目的とする。
また、本発明は、グリップを嵌着していながら工具軸を簡単に交換することができ、工具軸の落下を防止して良好な作業性を実現できる工具を提供することを目的とする。
また、本発明は、工具軸に嵌着可能に保持できるグリップを低コストで製造することができるグリップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のグリップは、工具軸の回り止め部を有する後部を包囲するグリップ本体と、このグリップ本体より軟質な樹脂で前記グリップ本体の周囲を被覆する被覆層とを備えた工具のグリップであって、前記グリップ本体と工具軸の後部との間に前記被覆層と同一の樹脂で形成された内部層を備えていることを特徴とする。
このようにすれば、グリップに対して工具軸を内部層が付与する抜け抵抗を超える力で強めに押し引きすることでグリップに対して工具軸を抜き挿しすることができ、工具軸を
簡単に取り替えることができ、そのうえグリップに挿し込まれた工具軸に対しては内部層が適度な抜け抵抗を与えるので、工具軸がグリップから不意に抜け落ちて落下したり紛失したりする心配がない。
【0008】
また、前記工具軸の後部にソケットを備える場合には、前記ソケットの外周面と前記グリップ本体との間に前記内部層が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、グリップ本体との間に設けられた内部層がソケットの外周面に抜け抵抗を与えるため、ソケットごと工具軸をグリップから抜き差しすることが可能となり、ソケットを有する工具軸の交換が可能となる。
なお、前記内部層と被覆層とは、前記グリップ本体における後端側から先端側までの間に形成され且つ先端側で内部層と被覆層とが連続形成されていても良いし、前記グリップ本体における後端側から中途部までの間に形成されていても良い。このようにすれば、工具軸に対して内部層が与える抜け抵抗を適宜変更でき、工具の設計のバリエーションを向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の工具は、上述のようにグリップ本体と工具軸の後部との間に被覆層と同一の樹脂で形成された内部層を備えており、工具軸の落下を防止して良好な作業性を実現できるようになっている。さらに、工具軸の後部は、好ましくは工具軸の後部を角軸に形成しているか、丸軸にフィンを設けているか、又は丸軸にフィンを設けてソケットを嵌合しているのが良い。このようにすれば、角軸の角の部分やフィンの先端が回り止め部となり、グリップの回動トルクを工具軸に確実に伝達することができる。
さらに、本発明のグリップの製造方法は、工具軸の回り止め部を備えた後部を金型のチャンバ内に挿入し、前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸の後部の周囲に内部層を形成し、前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とするものである。
【0010】
このようにすれば、先にチャンバ内注入された第1の樹脂の内側に第2の樹脂が注入され、第1の樹脂と第2の樹脂とが重なったままチャンバの内周面と工具軸の後部との間に形成された空間に広がるので、被覆層と内部層とを同時に形成できると共に、被覆層と内部層との間にグリップ本体を一度に形成することができ、工具軸を挿脱可能に保持できるグリップを低コストで製造することができる。
なお、本発明の製造後に工具軸を挿入するグリップの製造方法は、工具軸入れ子を金型のチャンバ内に挿入し、前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、被覆層、内部層及びグリップ本体が成形されてから工具軸入れ子を抜いて、工具軸入れ子が抜けたあとを工具軸を挿し込む孔として利用することができる。
さらに、本発明の樹脂注入後に工具軸入れ子を挿入するグリップの製造方法は、金型のチャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、前記第1の樹脂の注入途中から当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記被覆層の内側にグリップ本体を形成し、前記チャンバ内に充填された第1及び第2の樹脂が冷却固化する前に工具軸入れ子を前記被覆層を巻き込みながら前記チャンバに挿入して前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、前記軸穴の形成後に、前記工具軸入れ子を前記チャンバから引き抜くことにより、前記内部層の内側に軸穴を形成することを特徴とする。
【0012】
このように工具軸入れ子をチャンバ内に挿入する際には、チャンバ内に充填されている第1の樹脂及び第2の樹脂は完全に冷却固化していないため、工具軸入れ子が被覆層を巻き込むように挿入されることで工具軸入れ子の周囲に内部層を簡単に形成することができ、内部層がチャンバの先端側だけに形成されたグリップを容易に製造することが可能とな
る。
上述のようにしてグリップを製造する際には、前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することができる。
【0013】
このようにすれば工具軸の回り止め部を備えた後部をグリップ本体より軟質な樹脂で形成された内部層で包囲することができる。
また、前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から中途側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することもできる。
このようにすれば工具軸の回り止め部を備えた後部の中途までを軟質の内部層で、後部の中途から先端を硬質で剛性のあるグリップ本体で被覆することができ、グリップからの工具軸の抜き差しを可能としつつもグリップの回動トルクを工具軸に確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグリップによれば、工具軸を挿脱可能に保持できるものでありながら、落下防止のための抜け抵抗を工具軸に与えることができる。
また、本発明の工具によれば、工具軸を簡単に交換することができ、工具軸の落下を防止して良好な作業性を実現できる。
さらに、本発明のグリップの製造方法によれば、工具軸を挿脱可能に保持できるグリップを低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のグリップ付きの工具の断面斜視図である。
【図2】同断面平面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】第1実施形態のグリップの製造方法を示す説明図である。
【図5】第2実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】第3実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図8】第4実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図9】第5実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】第6実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図12】第7実施形態のグリップ付きの工具の断面平面図である。
【図13】第8実施形態のグリップの断面平面図である。
【図14】第8実施形態のグリップの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。
工具Kは、工具軸2の後部3にグリップ1を嵌着して構成されている。前記工具軸2は、丸棒材から形成されており、先端側にビス等と係合可能な刃先(図示略)が形成されている。また、工具軸2の後部3には工具軸2をグリップ1に対して回り止めする回り止め部12が設けられており、グリップ1の回転トルクを工具軸2に伝達できるようになっている。回り止め部12としてフィン8が形成されており、このフィン8は、工具軸2の後部3に工具軸2の軸心を挟んで径方向に一対形成されている。フィン8は、後部3の外周面の一部をプレスで圧縮成形することで後部3の外周面から径外方向に板状に突出形成されており、工具軸2のグリップに対する相対回転を規制している。
【0017】
図1〜図3に示すように第1実施形態のグリップ1Aは、工具軸2の後部3に設けられており、工具軸2の軸心方向に沿って長い略回転楕円体状に形成されている。グリップ1Aは、工具軸2のフィン8(回り止め部12)を有する後部3を包囲する内部層4と、この内部層4の周囲を包囲するグリップ本体5と、このグリップ本体5の周囲を被覆する被覆層6とを備えている。被覆層6はグリップ本体5より軟質な樹脂で形成されており、内
部層4は被覆層6と同一の樹脂で形成されている。つまり、グリップ1Aはグリップ本体5より軟質な樹脂で構成された内部層4をグリップ本体5と工具軸2の後部3との間に積層状に備えた構成とされている。
【0018】
グリップ本体5は、その外観形状がグリップ1Aの外観形状に合わせてグリップ1Aと相似な略楕球状に形成されており、グリップ1Aに比べて被覆層6の厚みの分だけ小さいサイズに形成されている。
グリップ本体5は、工具軸2の後部3の形状に合わせて形成された内部層4を外側から包み込むように包囲している。すなわち、グリップ本体5は、先方に向かって開口した有底筒状に形成されており、後部3の軸後端面9を包囲する内部層4のさらに後端側にも形成されている。
【0019】
被覆層6は、グリップ本体5の外周面、前端面及び後端面を全面に亘って被覆している。被覆層6は、内部層4と同じ樹脂で一体的に形成されると共に先端側で内部層4と繋がっており、グリップ本体5の径外側を隙間なく包囲している。
内部層4は、工具軸2の後部3の外周面、前端面及び後端面を全面に亘って包囲するように略円筒状に形成されており、後部3の軸後端面9の全面を包囲できるように軸後端面9の後端側にも形成されている。
グリップ1Aの内部層4は、工具軸2のフィン8を包囲している。すなわち、内部層4は、工具軸2におけるフィン8が形成された位置ではフィン8に合わせて径外側に向かって膨らんだ形状とされており、フィン8の全体をも隙間なく全面に亘って包囲している。
【0020】
図3に示すように、第1実施形態のグリップ1Aでは、グリップ本体5は硬質の樹脂で形成されており、内部層4と被覆層6とはグリップ本体5を構成する硬質の樹脂より柔らかい軟質の樹脂で形成されている。言い換えれば、グリップ1Aは内部層4と被覆層6との間にグリップ本体5を挟持した部材を有底の円筒状に形成して、工具軸2の後部3の周りを包囲したものということもできる。
内部層4と被覆層6とを形成する軟質の樹脂には、シリコンゴム、天然ゴム、BRやSBRなどの合成ゴム、ポリエチレン系樹脂、アイオノマ系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、発泡ポリウレタン、又はこれらから選ばれる複数の樹脂を混合した合成樹脂が用いられる。
【0021】
軟質の樹脂には、ショアA硬さ(ASTM D2240)が40〜60の合成樹脂を用いるのが好ましい。ショアA硬さ40以上の合成樹脂を硬質の樹脂に用いることで、ブリードの発生を防ぐことができる。また、ショアA硬さ60以下の合成樹脂を硬質の樹脂に用いることで、握って使用する際の手指に対する負担を軽減することが可能となるからである。
グリップ本体5を形成する硬質の樹脂には、ロックウェル硬さ(ASTM D785)が80〜100のポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS、アセチレン樹脂又はこれらから選ばれる複数の樹脂を混合した合成樹脂、あるいはこれらの樹脂を含む再生樹脂が用いられ、これらの中でも特に好ましくはポリプロピレン系樹脂が用いられる。
【0022】
硬質の樹脂には、ロックウェル硬さが80〜100の合成樹脂を用いるのが好ましい。これらの硬度を備えた硬質の樹脂をグリップ本体5に用いれば、内部層4を介していても、グリップ1Aを捻った際に発生する回転トルクを工具軸2に減らすことなく伝えることが可能となる。
また、内部層4や被覆層6に比べて樹脂使用量が大きなグリップ本体5に再生材料を用いることで、再生材料の使用比率が10%未満であることが多かった従来のグリップに比べて再生材料の使用比率を90%以上に高めることができ、環境への負荷の低減が可能となる。また、様々な樹脂や添加物が混合されて黒色を呈することの多い再生材料をグリップ本体5に用いていても、グリップ本体5を被覆層6で被覆する構成となっているので、被覆層6を着色することによってグリップ1Aをサイズや種類に合わせて色分けすることが可能となる。
【0023】
上述のように硬質の樹脂でなるグリップ本体5と工具軸2の後部3との間に軟質の樹脂でなる内部層4を設ければ、グリップ1Aに挿し込まれた工具軸2に対して内部層4が適
度な抜け抵抗を与えるので、工具軸2がグリップ1Aから不意に抜け落ちて落下したり紛失したりする心配がない。また、グリップ1Aに対して工具軸2を内部層4が付与する抜け抵抗を超える力で強めに押し引きすれば、グリップ1Aに対して工具軸2がスライドして工具軸2を抜き挿しすることができ、工具軸2を簡単に取り替えることができる。
次に、第1実施形態のグリップ1Aの製造方法について説明する。
【0024】
第1実施形態のグリップ1Aの製造方法は、金型10のチャンバ14に工具軸2の後部3を挿入し、チャンバ14内に溶融状態の樹脂を供給する二色射出成型法(混色成型法)で製造される。
図4(a)に示すように、金型10には、内部がグリップ1Aの外観形状に合わせて中空に形成されたチャンバ14が設けられている。チャンバ14には、溶融した樹脂を供給する供給口11が後端側に形成されている。
図4(b)に示すように、グリップ1Aを成形するには、まず内部層4と被覆層6とを形成するための軟質の樹脂(第1の樹脂)を、溶融状態のまま供給口11からチャンバ14内に供給する。
【0025】
図4(c)に示すように、軟質の樹脂の供給に続いて、硬質の樹脂(第2の樹脂)を溶融状態のまま供給口11からチャンバ14内に供給する。このとき、既に供給された軟質の樹脂の樹脂溜まり内側に硬質の樹脂を供給して、軟質の樹脂を内部から硬質の樹脂で膨らませるようにする。このようにすると、軟質の樹脂がチャンバ14の内周面や工具軸2の外表面に最初に付着して、内部層4とこの内部層4に先端側で繋がった被覆層6とが形成される。
図4(d)に示すように、樹脂の冷却(凝固)後に金型10から取り出せば、軟質の樹脂がチャンバ14の内周面及び工具軸2の外表面を隙間なく包囲して内部層4と被覆層6とが形成されると共に、これら内部層4と被覆層6との間にグリップ本体5が両者に挟まれるように形成される。
【0026】
このようにグリップ1Aは、軟質の樹脂を最初に供給し、軟質の樹脂の内側に軟質の樹脂を連続して供給する混色成型法で製造される。つまり、硬質の樹脂と軟質の樹脂とが連続して供給されているので、それぞれの樹脂の供給後に樹脂の冷却に時間をかける必要がない。その結果、異なる樹脂で多層に形成されたグリップ1Aを一度に(効率的に)製造することができる。
第1実施形態では、グリップ本体5が内部層4と被覆層6との間に形成されている。工具軸2は硬質な樹脂で成るグリップ本体5によりグリップ1Aに支持されているが、工具軸2とグリップ本体5との間には粘弾性に富む軟質の樹脂で成る内部層4が設けられている。それゆえ、グリップ1Aから工具軸2に急激なトルク伝達があっても、内部層4でトルクを吸収して緩和することができ、工具軸2によりねじ穴が潰されることを防止することができる。
【0027】
また、グリップ1Aはグリップ本体5に再生樹脂を用いることができ、再生樹脂の使用比率を従来のグリップより高くすることができる。さらに、第1実施形態のグリップ1Aでは、金属製の工具軸2を樹脂製のグリップ1Aから引き抜くことができ、樹脂製のグリップ1Aだけを分別してリサイクルすることができる。それゆえ、第1実施形態のグリップ1Aでは、環境に負担を与えないように製造から廃棄までを行うことができる。
さらに、上述のようなグリップ1Aを備えた工具13は、工具軸2の落下を防止して良好な作業性を実現できるようになっている。
「第2実施形態」
次に、グリップ1の第2実施形態を以下に説明する。
【0028】
第2実施形態のグリップ1Bは、工具のフィン8付き工具軸2の後部3を先端側から挿入した際に、フィン8が内部層4を貫通してグリップ本体5まで達するように、既に成形してあるグリップ1Bの内部層4に先端側から挿入して、先方に向かって開口したストレート筒状の内部層4を備えている。
図5及び図6に示すように、第2実施形態のグリップ1Bでは、内部層4は先方に向かって開口したストレート筒状に形成されており、工具軸2のフィン8が形成された位置で
もフィン8に合わせて径外側に向かって膨らむことがない。また、内部層4の後端は工具軸2の後端面よりさらに後端側に位置しており、工具軸2の後端面と内部層4の後端との間には樹脂や工具が設けられていない空間が形成されている。
【0029】
また、グリップ1Bの先端側から挿入された工具軸2の後部3では、フィン8の先端(突端8a)が内部層4を貫通して硬質な樹脂で形成されたグリップ本体5に達しており、フィン8を取り巻く内部層4とフィン8との間に抜け抵抗が発生するようになっている。
次に、第2実施形態の製造方法を以下に説明する。
第2実施形態のグリップ1Bは、第1実施形態の金型10をそのまま使用して製造される。金型10には内部のチャンバ14にフィン8付きの工具軸2に代えて工具軸入れ子16が挿入される。この工具軸入れ子16は、フィン8が形成されていない丸棒とされており、その後端がチャンバ14の後端側に位置するようにチャンバ14内に配備されている。
【0030】
グリップ1Bを成形するには、第1実施形態の場合と同様に、まず軟質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する。そして、軟質の樹脂の供給に続いて硬質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する。その際、軟質の樹脂の樹脂溜まりの内側に硬質の樹脂を供給するようにする。
次に、このようにして形成されたグリップ1Bから工具軸入れ子16を抜き出す。工具軸入れ子16を抜き出した後には、先端側に向かって開口したストレート筒状の軸穴15が軸心方向に沿って形成される。そして、この軸穴15に、実際に使用するフィン8付き工具軸2を軸後端面9から挿入する。フィン8付きの工具軸2はフィン8の突端8a間の外径が軸穴15の内径より大きくなっているため、工具軸2の挿入に合わせて内部層4にはフィン8による切り込みが入り、フィン8を取り巻く内部層4とフィン8とが互いに接触する。
【0031】
それゆえ、挿入された工具軸2をグリップ1Bから抜き取る際には、フィン8を取り巻く内部層4とフィン8との間に抜け抵抗が発生する。
また、グリップ1Bではフィン8を介して硬質な樹脂で成るグリップ本体5に工具軸2のフィン8の突端8aが達しているので、グリップ1Bに加えられた回転トルクを、内部層4に吸収されることなく工具軸2に確実に伝えることができる。
さらに、第2実施形態のグリップ1Bでは、軸穴15に対して様々な種類の工具軸2を自由に組み合わせて製造することができる。それゆえ、多種類の工具を製造する際に便利となる。さらに、溶融状態の樹脂により高温となる工程では工具軸入れ子16が用いられ、実際の工具軸2が高温となることもない。それゆえ、工具軸2に耐熱性のない金属材料(例えば、熱に弱いネオジウム磁石を含む工具軸2など)を用いることができ、様々な種類の工具を簡単に製造することができる。
【0032】
なお、第2実施形態のグリップ1B及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については第1実施形態と同じである。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態のグリップ1Cを以下に説明する。
図7に示すように、第3実施形態のグリップ1Cは、第2実施形態と同様に工具軸入れ子16をチャンバ14内に挿入した状態で樹脂を供給して成形を行った後、工具軸入れ子16を引き抜いて軸穴15を形成し、この軸穴15に工具軸2を挿入したものである。
【0033】
第3実施形態のグリップ1Cが第1及び第2実施形態と異なっている点は、工具軸入れ子16が丸棒にフィン8が形成されたものとされており、工具軸入れ子16と同様にフィン8を備えた丸棒状の工具軸2が軸穴15に挿入されている点である。
工具軸2は、軸方向の長さが工具軸入れ子16より短く形成されており、この工具軸2の後端面は軸穴15の後端面より先端側に位置している。そして、工具軸2の後部3は内部層4の先端側(一部)だけと接触して抜け抵抗を発揮できるようになっている。
このようにすれば、工具軸2の長さを変更することで内部層4と接触して抜け抵抗を発揮する工具軸2の長さを変更することができ、工具軸2に働く抜け抵抗の大きさを任意に変更することができる。また、第3実施形態のグリップ1Cでは、工具軸2の後端面と軸
穴15の後端面との間に隙間が発生し、この隙間分だけ第1及び第2実施形態より樹脂量を低減することができる。
【0034】
なお、第3実施形態のグリップ1C及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については第1及び第2実施形態と同じである。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態のグリップ1Dを以下に説明する。
図8に示すように、第4実施形態のグリップ1Dは、内部層4と被覆層6とがグリップ本体5における後端側から先端側までの間に形成されているのではなく、グリップ本体5における後端側から中途部までの間に形成されている。そして、グリップ1Dの先端側においては、工具軸2の後部3とグリップ本体5との間には内部層4が設けられておらず、グリップ本体5が工具軸2の回り止め部12を備えた後部3と直接接触する構造となっている。
【0035】
すなわち、第4実施形態のグリップ1Dにおける工具軸2の後部3が挿入される軸穴15は、その後端側だけが内部層4で被覆されており、先端側は内部層4が設けられていない。そして、グリップ1Dに挿入される工具軸2の後端面は第3実施形態と同様に軸穴15の後端面より先端側に位置しており、工具軸2の後部3の後端側(一部)だけが軸穴15の後端側に形成された内部層4で被覆されており、工具軸2の後部3の先端側は硬質な樹脂でなるグリップ本体5で被覆されている。また、軸穴15の先端側の内周面には、工具軸2の軸心方向に沿ってフィン挿入溝16が形成されており、工具軸2のフィン8を挿入できるようになっている。
【0036】
次に、第4実施形態の製造方法を以下に説明する。
グリップ1Dを成形するには、第1及び第2実施形態の場合と同様に、まず軟質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する。そして、軟質の樹脂の供給に続いて硬質の樹脂を供給口11からチャンバ14内に供給する際に、軟質の樹脂の樹脂溜まりの内側に硬質の樹脂を供給する。第4実施形態の製造方法が上述の実施形態の場合と異なる点は、先に供給される軟質の樹脂の供給量が少なくされ、後から供給される硬質の樹脂の供給量が多くされている点である。このように軟質の樹脂の供給量を少なくすると、先に供給された軟質の樹脂の樹脂溜まりがチャンバ14の後端側に留まり、後から供給された硬質の樹脂だけが樹脂溜まりを貫通してチャンバ14の先端側に広がるため、内部層4と被覆層6とをグリップ本体5における後端側から中途部までの間に形成することができる。
【0037】
なお、第4実施形態のグリップ1D及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については第1実施形態や第2実施形態と同じである。
このように工具軸2のフィン8を有する後部3の一部だけを内部層4で被覆すれば、後部3を全面に亘って内部層4で包囲するのに比べて、工具軸2に対して内部層4が与える抜け抵抗を小さくすることができ、抜け抵抗を適宜変更して工具13の設計のバリエーションを向上させることが可能となる。
なお、第4実施形態のグリップ1D及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第5実施形態」
次に、第5実施形態のグリップ1Eを以下に説明する。
【0038】
図9及び図10に示すように、第5実施形態のグリップ1Eは、ソケット17を有する工具軸2を挿脱自在に備えており、ソケット17の外周面とグリップ本体5との間に内部層4が設けられている。
ソケット17は角筒状に形成されており、その先端側にはフランジ部19が形成されている。ソケット17の内部には、工具軸2を挿通する挿通孔18が前後方向に沿って形成されている。この挿通孔18には、前後方向にフィン挿入溝16が形成されており、このフィン挿入溝16に沿ってフィン8を案内することで、工具軸2の後部3を着脱自在に挿入できるようになっている。
【0039】
また、ソケット17の外周面は、このソケット17の外径に合わせて形成された軸穴15に挿入されており、ソケット17の外周面が内部層4に接触することでソケット17を
有する工具軸2に抜け抵抗が働くようになっている。
このようにすれば、グリップ本体5とソケット17の外周面との間に設けられた内部層4がソケット17に抜け抵抗を与えるため、ソケット17ごと工具軸2をグリップ1Eから抜き差しすることが可能となり、工具軸2の交換だけでなくソケット17の交換も可能となるので、工具13やグリップ1Eの利便性をさらに向上させることができる。
【0040】
次に、第5実施形態のグリップ1Eの製造方法を以下に説明する。
グリップ1Eを製造するには、金型10には内部のチャンバ14に、ソケット17の角筒部の外形に合わせた工具軸入れ子16を予め挿入しておく。この工具軸入れ子16は、チャンバ14の先端から後端際まで及ぶ長さに形成されており、またあとでソケット17を挿脱し易いように先端側に向かってテーパ状に形成されている。そして、上述の実施形態の場合と同様に、まず軟質の樹脂と硬質の樹脂とを供給口11からチャンバ14内に供給して、工具軸入れ子16の周囲に内部層4、グリップ本体5、被覆層6を形成する。そして、冷却後に工具軸入れ子16を抜き取り、抜き取ったあとの軸穴15に工具軸2とこの工具軸2が挿入されたソケット17とを挿入する。
【0041】
このようにすれば、ソケット17の外周面と内部層4との間に働く抜け抵抗により、ソケット17がグリップ1Eにしっかりと保持される。また、軸穴15は先端側に向かってテーパ状に形成されているため、ソケット17を軸穴15から引き抜くことも可能となり、ソケット17の挿脱が可能となる。
なお、第5実施形態のグリップ1E及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第6実施形態」
次に、第6実施形態のグリップ1Fを以下に説明する。
【0042】
図11に示すように、第6実施形態のグリップ1Fは、六角筒状の内部層4を備えており、工具軸2として六角棒状(角軸状)の工具軸2を挿入可能となっている。第6実施形態のグリップ1Fは、六角筒状の内部層4が六角棒状の工具軸2の各面を被覆するため、工具軸2を引き抜くのが容易であるにも拘わらず、回転方向に一定のトルクを伝達できるようになっている。すなわち、第6実施形態のグリップ1Fは、角部が回り止め部12とされた角軸状の工具軸2に着脱自在に備えられるグリップを例示したものということもできる。
【0043】
なお、本実施形態では六角棒状の工具軸2を挿入可能な六角筒状の内部層4を備えたグリップ1Fを開示したが、グリップ1Fは、例えば四角棒状の工具軸2を挿入可能な四角筒状の内部層4を備えたものであっても良い。
なお、第6実施形態のグリップ1F及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第7実施形態」
次に、第7実施形態のグリップ1Gを以下に説明する。
【0044】
図12に示すように、第7実施形態のグリップ1Gは、第5実施形態のグリップ1Eと同様にソケット17を有する工具軸2を挿脱自在に備えている。グリップ1Gは、内部層4と被覆層6とがグリップ本体5における後端側から中途部までの間に形成されており、グリップ1Gの先端側においては、ソケット17とグリップ本体5との間には内部層4が設けられておらず、グリップ本体5がソケット17の外周面と直接接触する構造となっている。
すなわち、第7実施形態のグリップ1Gでは、軸穴15の先端側はソケット17の外径(ソケット17の角筒部)に合わせた形状に形成されており、軸穴15の後端側は工具軸2の外径に合わせて先端側より径小な円筒状に形成されており、軸穴15の後端側に形成された内部層4とソケット17に嵌着された工具軸2の後部3との間に抜け抵抗が働く構造となっている。
【0045】
次に、第7実施形態のグリップ1Gの製造方法は、第4実施形態の製造方法において丸棒状の工具軸入れ子16に代えてソケット17の後端側(角筒部)の外形に合わせた工具軸入れ子16を用いたものである。すなわち、グリップ1Gの工具軸入れ子16の先端側
はソケット17の角筒部に合わせた形状に形成されており、後端側は工具軸2の外径に合わせて先端側より径小な円筒状に形成されている。
そして、第4実施形態と同様にして樹脂による成形を行った後、工具軸入れ子16を引き抜くことで形成された軸穴15の先端側にソケット17を、また後端側に工具軸2の後部3を挿入することで、グリップ1Gを製造することができる。
【0046】
第7実施形態のグリップ1Gでは、工具軸2のソケット17の外周面とグリップ本体5との間には内部層4が設けられていないが、工具軸2の後部3とグリップ本体5との間には内部層4が設けられており、工具軸2には抜け抵抗が発揮される構成とされている。
なお、第7実施形態のグリップ1G及びその製造方法における上記以外の構成及び作用効果については上記実施形態と同じである。
「第8実施形態」
次に、第8実施形態のグリップ1Hを以下に説明する。
【0047】
図13は工具軸2を備えていないグリップ単体の第8実施形態のグリップ1Hを示したものである。図13に示されるように、第8実施形態のグリップ1Hは、先端側に向かって開口した軸穴15を有している。この軸穴15にはフィン8を備えた工具軸2の後部3を挿入できるようにフィン挿入溝16が軸穴15の中途側から先端側にかけて形成されており、軸穴15の周囲には内部層4が形成されている。
内部層4は、被覆層6がグリップ本体5の先端側から後端側までの全長に亘って形成されているのに対して、グリップ本体5の先端側だけに形成されており、被覆層6とグリップ本体5の先端側で繋がっている。内部層4は、その厚みが先端側から後端側に向かって徐々に薄くなるように形成されており、フィン挿入溝16の中途側より後端側には形成されていない。このように内部層4がグリップ本体5の先端側だけに形成されていれば、内部層4と工具軸2の後部3との間に生じる引き抜き抵抗を小さくすることができ、強い力をかけなくても工具軸2の挿脱が行えるようになって、工具軸2の付け替えを楽に行うことができる。
【0048】
次に、第8実施形態のグリップ1Hの製造方法を説明する。
第8実施形態のグリップ1Hの製造方法は、上述した実施形態の場合と同様に金型10内のチャンバ14に軟質の樹脂(第1の樹脂)と硬質の樹脂(第2の樹脂)とを順次注入してチャンバ14の内周面に沿って被覆層6とグリップ本体5とを形成するものである。第8実施形態が他の実施形態と異なっている点は、工具軸入れ子16を入れるタイミングが第1の樹脂及び第2の樹脂の注入後である点である。
すなわち、図14(a)に示されるように、まず工具軸入れ子16が挿入されていないチャンバ14内に軟質の樹脂及び硬質の樹脂を供給口11から順次注入する。このとき、図例のようにチャンバ14の後端側に形成された供給口11から樹脂を供給しても良いが、例えばチャンバ14の先端側や側面に形成された供給口から樹脂を注入しても良い。また、チャンバ14の先端側の金型10にはフィン8付きの工具軸入れ子16を挿入する軸挿入部20が形成されており、樹脂の注入時にはこの軸挿入部20を工具軸入れ子16が塞ぐことでチャンバ14に注入された樹脂が軸挿入部20からチャンバ14の外部に漏れないようになっている。
【0049】
図14(b)に示されるように、チャンバ14内が軟質の樹脂及び硬質の樹脂で充填されると、充填された樹脂の冷却固化が始まる前に、工具軸入れ子16をチャンバ14内に挿入する。このとき、工具軸入れ子16はチャンバ14の先端側に形成された被覆層6を巻き込みながらチャンバ14に挿入され、工具軸入れ子16の周囲に被覆層6と同じ軟質の樹脂で内部層4が形成される。
図14(c)に示されるように、工具軸入れ子16がチャンバ14内に挿入されると、工具軸入れ子16の周囲に内部層4が形成され、この内部層4の形成に合わせて工具軸入れ子16に設けられていたフィン8により内部層4にフィン挿入溝16が形成される。
【0050】
図14(d)に示されるように、軟質の樹脂及び硬質の樹脂が冷却されて固化し始めたら工具軸入れ子16をチャンバ14から引き抜くことにより内部層4の内側に軸穴15が形成される。
このように工具軸入れ子16をチャンバ14内に挿入する際には、チャンバ14内に充填されている軟質の樹脂及び硬質の樹脂は完全に冷却固化していないため、工具軸入れ子16が被覆層6を巻き込むように挿入されることで工具軸入れ子16の周囲に内部層4を簡単に形成することができ、内部層4がチャンバ14の先端側だけに形成されたグリップ1Hを容易に製造することが可能となる。
【0051】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
軟質の樹脂や硬質の樹脂としてシリコンゴムやポリプロピレン系樹脂などを例示したが、軟質の樹脂や硬質の樹脂は上述のものに限定されることはない。例えば、複数の樹脂の混合物や再生樹脂を用いることもできる。
工具軸2のフィン8として後部3に工具軸2の軸心を挟んで径方向に一対形成される板状のものを例示したが、フィン8は軸方向、周方向に継続的な突起でも良いし、また例えば3枚以上形成されていても良い。
【0052】
上記実施形態では、内部層4と被覆層6とが2種類の樹脂をチャンバ14の後端側に設けられた供給口11から注入して形成されたものを例示した。しかし、これらの供給口11はチャンバ14の中途側や先端側に設けられても良いし、各位置の供給口11は1又は複数形成しても良く、各供給口11から2種類の樹脂を注入できれば良い。
なお、上記実施形態では、内部層4だけで工具軸2に抜け抵抗を付与するグリップ1を例示したが、例えば被覆層6の外周側からグリップ本体5及び内部層4を貫通して工具軸2に達するビスやボルトなどの係止具を用いて工具軸2により強い抜け抵抗を付与することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 グリップ
2 工具軸
3 後部
4 内部層
5 グリップ本体
6 被覆層
8 フィン
8aフィンの突端
9 工具軸の軸後端面
10 金型
11 供給口
12 回り止め部
13 工具
14 チャンバ
15 軸穴
16 フィン挿入溝
17 ソケット
18 挿通孔
19 フランジ部
20 軸挿入部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具軸の回り止め部を有する後部を包囲するグリップ本体と、このグリップ本体より軟質な樹脂で前記グリップ本体の周囲を被覆する被覆層とを備えたグリップであって、
前記グリップ本体と工具軸の後部との間に、前記被覆層と同一の樹脂で形成された内部層を備えていることを特徴とするグリップ。
【請求項2】
前記工具軸の後部に備えたソケットの外周面と前記グリップ本体との間に前記内部層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
前記内部層と被覆層とは前記グリップ本体における後端側から先端側までの間に形成され且つ先端側で内部層と被覆層とが連続形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリップ。
【請求項4】
前記内部層と被覆層とは前記グリップ本体における後端側から中途部までの間に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のグリップを工具軸の後部に備えていることを特徴とする工具。
【請求項6】
前記工具軸の後部は、角軸に形成している、丸軸にフィンを設けている、又は丸軸にフィンを設けてさらにソケットを嵌合していることを特徴とする請求項5に記載の工具。
【請求項7】
工具軸の回り止め部を備えた後部を金型のチャンバ内に挿入し、
前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、
前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、
前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸の後部の周囲に内部層を形成し、
前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とするグリップの製造方法。
【請求項8】
工具軸入れ子を金型のチャンバ内に挿入し、
前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、
前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、
前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、
前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とするグリップの製造方法。
【請求項9】
金型のチャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、
前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、
前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記被覆層の内側にグリップ本体を形成し、
前記チャンバ内に充填された第1及び第2の樹脂が冷却固化する前に、工具軸入れ子を前記被覆層を巻き込みながら前記チャンバに挿入して、前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、
前記内部層の形成後に、前記工具軸入れ子を前記チャンバから引き抜くことにより、前
記内部層の内側に軸穴を形成することを特徴とするグリップの製造方法。
【請求項10】
前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、
前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のグリップの製造方法。
【請求項11】
前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から中途側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、
前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載のグリップの製造方法。
【請求項1】
工具軸の回り止め部を有する後部を包囲するグリップ本体と、このグリップ本体より軟質な樹脂で前記グリップ本体の周囲を被覆する被覆層とを備えたグリップであって、
前記グリップ本体と工具軸の後部との間に、前記被覆層と同一の樹脂で形成された内部層を備えていることを特徴とするグリップ。
【請求項2】
前記工具軸の後部に備えたソケットの外周面と前記グリップ本体との間に前記内部層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
前記内部層と被覆層とは前記グリップ本体における後端側から先端側までの間に形成され且つ先端側で内部層と被覆層とが連続形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリップ。
【請求項4】
前記内部層と被覆層とは前記グリップ本体における後端側から中途部までの間に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のグリップを工具軸の後部に備えていることを特徴とする工具。
【請求項6】
前記工具軸の後部は、角軸に形成している、丸軸にフィンを設けている、又は丸軸にフィンを設けてさらにソケットを嵌合していることを特徴とする請求項5に記載の工具。
【請求項7】
工具軸の回り止め部を備えた後部を金型のチャンバ内に挿入し、
前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、
前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、
前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸の後部の周囲に内部層を形成し、
前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とするグリップの製造方法。
【請求項8】
工具軸入れ子を金型のチャンバ内に挿入し、
前記チャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、
前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、
前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、
前記第2の樹脂で被覆層と内部層との間にグリップ本体を形成することを特徴とするグリップの製造方法。
【請求項9】
金型のチャンバ内に供給口から第1の樹脂を注入し、
前記第1の樹脂の注入途中から、当該第1の樹脂より硬質な第2の樹脂を前記供給口から注入し、
前記第1の樹脂でチャンバの内周面に沿って被覆層を形成すると共に前記被覆層の内側にグリップ本体を形成し、
前記チャンバ内に充填された第1及び第2の樹脂が冷却固化する前に、工具軸入れ子を前記被覆層を巻き込みながら前記チャンバに挿入して、前記工具軸入れ子の周囲に内部層を形成し、
前記内部層の形成後に、前記工具軸入れ子を前記チャンバから引き抜くことにより、前
記内部層の内側に軸穴を形成することを特徴とするグリップの製造方法。
【請求項10】
前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、
前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のグリップの製造方法。
【請求項11】
前記第1の樹脂を前記チャンバの後端側から中途側まで流入させて前記被覆層と内部層とを形成し、
前記第2の樹脂を前記チャンバの後端側から先端側まで流入させて前記グリップ本体を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載のグリップの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−214481(P2010−214481A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61304(P2009−61304)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【特許番号】特許第4440327号(P4440327)
【特許公報発行日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000232597)株式会社ベッセル工業 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【特許番号】特許第4440327号(P4440327)
【特許公報発行日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000232597)株式会社ベッセル工業 (27)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]