説明

グリーンシート及びグリーンシートの製造方法

【課題】別途新たな表面改質を行うことなく、導電性インクの液滴を用いても描画面に高精細のパターン描画できるグリーンシート及びグリーンシートの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラスセラミック粉末とバインダ樹脂を分散媒で混練して、グリーンシート18となる混練物を作る際、親水性受容性樹脂を加えて練り合わせ、その混練物を成形して作ったグリーンシート18を親水性かつ受容性にする。吐出ヘッド30から吐出しグリーンシート18に着弾する液滴Fbは、描画面18a上の着弾位置で付着され該着弾位置で蒸発・乾燥することから、描画面18aに金属インクFによる微細な液状配線パターンPLを描画することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンシート及びグリーンシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics )技術は、グリーンシートと金属との一括焼成を可能にすることから、セラミックの層間に各種の受動素子を組み込んだ素子内蔵基板を具現できる。システム・オン・パッケージ(SOP)の実装技術においては、電子部品の複合化や表面実装部品に発生する寄生効果の最小化を図るため、この素子内蔵基板(以下単に、LTCC多層基板という。)に関わる製造方法が鋭意開発されている。
【0003】
LTCC多層基板の製造方法では、複数のグリーンシートの各々に受動素子や配線等のパターンを描画する描画工程と、該パターンを有する複数のグリーンシートを積層して圧着する圧着工程と、圧着体を一括焼成する焼成工程とが順に実施される。
【0004】
描画工程には、各種パターンの高密度化を図るため、導電性インクを微小な液滴にして吐出する、いわゆるインクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1)。インクジェット法は、数ピコリットル〜数十ピコリットルの液滴を用い、該液滴の吐出位置の変更によってパターンの微細化や狭ピッチ化を可能にする。
【特許文献1】特開2005−57139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、グリーンシートは、セラミック粒子とバインダ樹脂を混練してドクターブレード法やリバースロールコータ法等で成形したシートである。そして、グリーンシートのバインダ樹脂は、撥液(水)性であった。
【0006】
そのため、配線等のパターンを描画する導電性インクは水系であることから、グリーンシートに着弾した導電性インクの液滴は、描画面で弾かれて描画面上でバジルを形成する。そのため、後に続いて先の液滴に隣接した位置に着弾する液滴がその先の液滴に接触したとき、引き寄せられて大きなバジルを形成する。すなわち、着弾した後続の液滴の位置がずれる。その結果、描画面に導電性インクによる微細な配線パターンを描画することができないという問題があった。
【0007】
そこで、グリーンシートの表面を、導電性インクに対して親水性かつ受容性となる表面処理をグリーンシートに対して行うことが考えられる。親水性にするだけでは、インクの液滴が濡れ広がりすぎてしまい、配線幅の制御が困難であるが、受容性とすることで分散媒を吸収するため、インクの液滴を増粘させ濡れ広がりを制御することができる。しかし、配線パターンを描画する前に、個々のグリーンシートに対して表面処理を行わなければならず、工程数が増え生産効率を低下させる問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、別途新たな表面改質を行うことなく、導電性インクの液滴を用いても描画面に高精細のパターン描画できるグリーンシート及びグリーンシートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のグリーンシートは、セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して
混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ水系液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートであって、前記セラミック粒子とバインダ樹脂の他に親水性受容性樹脂を練り込ませた。
【0010】
本発明のグリーンシートによれば、バインダ樹脂に親水性受容性樹脂を加えたのでグリーンシート自体が親水性かつ受容性となるため、後工程で、従来のように撥液性のグリーンシートの表面を親水性かつ受容性にするための表面処理を、グリーンシートに対して行う必要がない。
【0011】
本発明のグリーンシートは、セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ水系液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートであって、前記バインダ樹脂を、親水性受容性樹脂とした。
【0012】
本発明のグリーンシートによれば、バインダ樹脂を親水性受容性樹脂としたのでグリーンシート自体が親水性かつ受容性となるため、後工程で、従来のように撥液性のグリーンシートの表面を親水性かつ受容性にするための表面処理を、グリーンシートに対して行う必要がない。
【0013】
このグリーンシートにおいて、前記親水性受容性樹脂は、ポリビニルアルコールであってもよい。
このグリーンシートによれば、ポリビニルアルコールによって、グリーンシートは親水性かつ受容性となる。
【0014】
このグリーンシートにおいて、前記水系液状体に含まれる導電性微粒子は、金属微粒子であってもよい。
このグリーンシートによれば、高精細な配線を形成できる。つまり、金属微粒子を含む液滴は、グリーンシートが親水性かつ受容性であるため、グリーンシートに着弾した時に該液滴がグリーンシートの描画面上で分散媒が吸収されて、増粘しながらに付着することから、後に続いて着弾する液滴が先の液滴に接触しても引き寄せられて大きなバジルを形成することがない。従って、高精細な液状配線パターンを形成することができる。
【0015】
本発明のグリーンシートの製造方法は、セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ水系液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートの製造方法であって、前記バインダ樹脂と前記セラミック粒子に親水性受容性樹脂を加え、分散媒とともに混練して前記混練物を形成した。
【0016】
本発明のグリーンシートの製造方法によれば、セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練する際に、親水性受容性樹脂を加えて混錬するだけで親水性かつ受容性のグリーンシートを簡単に作ることができ、後工程で、グリーンシートの表面を親液性にするための表面処理のための工程がなくなる。また、バインダ樹脂と親水性受容樹脂の混合比により任意の親水性を発現でき、液滴のサイズを制御し、配線幅の制御も可能になる。
【0017】
本発明のグリーンシートの製造方法は、セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ水系液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートの製造方法であって、前記バインダ樹脂を親水性受容性樹脂とし、その親水性受容性樹脂と前記セラミック粒子を分散媒とともに混練して前記混練物を形成した。
【0018】
本発明のグリーンシートの製造方法によれば、バインダ樹脂を親水性受容性樹脂とし、該親水性受容性樹脂とセラミック粒子を分散媒とともに混練するだけで、親水性かつ受容性のグリーンシートを作ることができるため、後工程で、グリーンシートの表面を親水性かつ受容性にするための表面処理のための工程がなくなる。
【0019】
しかも、バインダ樹脂自身がグリーンシートに親水性かつ受容性を発現する親水性受容性樹脂なので、混練する際に親水性かつ受容性を発現する材料を加える必要がないことから、混練材料の数を少なくでき、材料管理が容易になるとともに混練時間を短縮することができる。
【0020】
このグリーンシートの製造方法において、前記親水性受容樹脂は、ポリビニルアルコールであってもよい。
このグリーンシートの製造方法によれば、ポリビニルアルコールによって、グリーンシートは親水性かつ受容性となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図1〜図5に従って説明する。図1は、本発明の製造方法を用いて製造したセラミック多層基板からなる回路モジュールの断面図である。
【0022】
図1において、回路モジュール10は、セラミック多層基板としての低温焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics )多層基板11と、LTCC多層基板11に接続された半導体チップ12とを有する。
【0023】
LTCC多層基板11は、積層された複数のLTCC基板13を有する。各LTCC基板13は、それぞれグリーンシートの焼結体であって、厚みが数十μ〜数百μmで形成されている。各LTCC基板13には、それぞれ抵抗素子、容量素子、コイル素子等の各種の内部素子14と、各内部素子14に電気的に接続する内部配線15とが形成されるとともに、それぞれスタックビア構造やサーマルビア構造を成すビア配線16が形成されている。
【0024】
そして、内部配線15は、導電性微粒子の焼結体であり、液状体としての導電性インク(金属インク)を用いるインクジェット法によってその液状の配線パターンがLTCC基板13の前駆体であるグリーンシート18に形成される。
【0025】
図2において、グリーンシート18は、キャリアフィルム19上に形成されている。グリーンシート18は、ガラスセラミック粉末、バインダ樹脂、分散媒等を含むガラスセラミック組成物からなる層である。グリーンシート18の膜厚は、内部素子14としてコンデンサ素子を形成する場合に数十μmで形成され、他の層においては100μm〜200μmで形成される。
【0026】
ガラスセラミック粉末は、0.1μm〜5μmの平均粒径を有する粉末であり、例えばアルミナやフォルステライト等のセラミック粉末にホウ珪酸系ガラスを混合したガラス複合セラミックを用いることができる。また、ガラスセラミック粉末としては、ZnO−MgO−Al2O3−SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO−Al2O3−SiO2系セラミック粉末やAl2O3−CaO−SiO2−MgO−B2O3系セラミック粉末等を用いた非ガラス系セラミックを用いても良い。
【0027】
バインダ樹脂は、ガラスセラミック粉末の結合剤としての機能を有し、後工程の焼成工
程で分解して容易に除去できる有機高分子である。バインダとしては、例えばブチラール系、アクリル系、セルロース系等のバインダ樹脂を用いることができる。アクリル系のバインダ樹脂としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物の単独重合体を用いることができる。また、アクリル系のバインダ樹脂としては、該(メタ)アクリレート化合物の2種以上から得られる共重合体、あるいは(メタ)アクリレート化合物と不飽和カルボン酸類等の他の共重合性単量体から得られる共重合体を用いることができる。
【0028】
なお、バインダ樹脂は、例えばアジピン酸エステル系可塑剤、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)フタル酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤等の可塑剤を含有しても良い。
【0029】
さらに、本実施形態では、上記ガラスセラミック粉末とバイダ樹脂に対して、親水性受容性樹脂を加え、その親水性受容性樹脂を加えたバインダ樹脂とセラミック粒子を分散媒で混練する。
【0030】
親水性受容性樹脂は、グリーンシート18を親水性かつ受容性にする樹脂である。本実施形態では、ポリビニルアルコールであり、親水性かつ受容性の強い樹脂である。ポリビニルアルコール以外の親水性受容性樹脂としては、例えばデンプン、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等が用いることができる。
【0031】
分散媒としては、例えば界面活性剤やシランカップリング剤等を用いることができ、ガラスセラミック粉末を均一に分散させるものであれば良い。
そして、グリーンシート18は、ガラスセラミック粉末、バインダ樹脂、親水性受容性樹脂及び分散媒を加え混練してスラリー化する。このスラリー化したガラスセラミック組成物(混練物)を、ドクターブレード法やリバースロールコータ法等のシート成形法を用いて、キャリアフィルム19の上に塗布し、該塗布膜をハンドリング可能な状態に乾燥することによって得られる。
【0032】
キャリアフィルム19は、描画工程や乾燥工程においてグリーンシート18を支持するためのフィルムであり、例えばグリーンシート18との剥離性や各工程における機械的耐性に優れたプラスチックフィルムを用いることができる。キャリアフィルム19には、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムを用いることができる。
【0033】
従って、出来上がったキャリアフィルム19を貼付したグリーンシート18は、ガラスセラミック粉末とバイダ樹脂を混錬する際に親水性受容性樹脂を加え混錬したため、グリーンシート18にはガラスセラミック粉末、バインダ樹脂の他に親水性受容性樹脂を含むことになる。その結果、グリーンシート18は、その表面が親水性受容性樹脂にて、水系を弾かない親水性かつ受容性となる。
【0034】
図3は、グリーンシート18のシート面としての描画面18aに、内部配線15を形成のための配線パターンを描画する液滴吐出装置20を示す。液滴吐出装置20は、直方体形状に形成された基台21を有している。基台21の上面には、その長手方向(Y矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝22が形成されている。案内溝22の上方には、案内溝22に沿ってY矢印方向及び反Y矢印方向に移動するステージ23が備えられている。ステージ23は、その上面に焼成前の裏面にキャリアフィルム19を貼付したグリーンシート18を載置する。
【0035】
ステージ23の上面23aには、加熱手段としてのラバーヒータHが配設されている。ステージ23に載置されたグリーンシート18は、ラバーヒータHにて所定の温度に加熱されるようになっている。そして、ステージ23に載置されたグリーンシート18は、同ステージ23に対して位置決め固定されて、グリーンシート18をY矢印方向及び反Y矢印方向に搬送する。
【0036】
図3に示すように、基台21には、Y矢印方向と直交する方向(X矢印方向)に跨ぐ門型のガイド部材25が架設されている。ガイド部材25の上側には、X矢印方向に延びるインクタンク26が配設されている。インクタンク26は、水系液状体としての金属インクF(図5参照)を貯留し、貯留する金属インクFを吐出手段としての液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという。)30に所定の圧力で供給する。そして、吐出ヘッド30に供給された金属インクFは、吐出ヘッド30から液滴Fb(図5参照)となってグリーンシート18に向かって吐出されるようになっている。
【0037】
金属インクFは、導電性微粒子としての金属微粒子、例えば粒径が数nmの金属微粒子を水系溶媒に分散させた分散系金属インクを用いることができる。
金属インクFに使用する金属微粒子としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、及びニッケル(Ni)などの材料の他、これらの酸化物、並びに超電導体の微粒子などが用いられる。金属微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと吐出ヘッド30の吐出ノズルNに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと金属微粒子に対する分散剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0038】
水系分散媒としては、上記の金属微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、またエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、1,3−プロパンジオールなどのポリオール類、ポリエチ
レングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、乳酸エチルなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、ポリオール類、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、アルコール類を挙げることができる。
【0039】
ガイド部材25には、そのX矢印方向略全幅にわたって、X矢印方向に延びる上下一対のガイドレール28が形成されている。上下一対のガイドレール28には、キャリッジ29が取り付けられている。キャリッジ29は、ガイドレール28に案内されてX矢印方向及び反X矢印方向に移動する。
【0040】
キャリッジ29は、下側に設けた支持プレート29Aが前記ステージ23と平行に配設され、その支持プレート29Aには液滴吐出ヘッド30が取着されている。液滴吐出ヘッド30は、図4に示すように、支持プレート29Aに対してY方向に延びるように固着されたヘッド基板31とヘッド基板31に対して同じくY方向に延びるように固着されたヘッド本体30Aとを有する。
【0041】
ヘッド基板31は支持プレート29Aに位置決め固定される。つまり、液滴吐出ヘッド30は、図5に示すように、支持プレート29Aに貫通した貫通穴32を同支持プレート29Aの上面29Aaから吐出ヘッド本体30Aを貫通させ、吐出ヘッド本体30Aを支持プレート29Aの下面29Abから突出させる。そして、吐出ヘッド本体30Aを支持プレート29Aの下面29Abから突出させた状態で、支持プレート29Aの上面29Aaとヘッド基板31を密着固定することによって、液滴吐出ヘッド30は支持プレート29Aに支持固定される。従って、液滴吐出ヘッド30は、キャリッジ29とともに、X方向に移動する。
【0042】
吐出ヘッド本体30Aは、図5に示すように、その下側には、ノズルプレート33が備えられている。ノズルプレート33は、その下面(ノズル形成面33a)がグリーンシート18の上面(描画面18a)と略平行に形成されている。ノズルプレート33は、グリーンシート18が吐出ヘッド30の直下に位置するとき、ノズル形成面33aと描画面18aとの間の距離(プラテンギャップ)を所定の距離(例えば、600μm)に保持する。
【0043】
図4において、ノズル形成面33aには、Y矢印方向に沿って配列された複数のノズルNからなるノズル列が形成されている。ノズル列には、それぞれ1インチ当たりに180個のノズルNが形成されている。
【0044】
図5において、吐出ヘッド30の上側には、供給チューブ30Tが連結されている。供給チューブ30Tは、Z矢印方向に延びるように配設されて、インクタンク26からの金属インクFを吐出ヘッド30に供給する。
【0045】
各ノズルNの上側には、供給チューブ30Tに連通するキャビティ34が形成されている。キャビティ34は、供給チューブ30Tからの金属インクFを収容して、対応するノズルNに金属インクFを供給する。
【0046】
キャビティ34の上側には、上下方向に振動してキャビティ34内の容積を拡大及び縮小する振動板35が貼り付けられている。振動板35の上側には、ノズルNに対応する圧電素子PZが配設されている。圧電素子PZは、上下方向に収縮及び伸張して振動板35を上下方向に振動させる。上下方向に振動する振動板35は、金属インクFを所定サイズの液滴Fbにして対応するノズルNから吐出させる。吐出された液滴Fbは、対応するノズルNの反Z矢印方向に飛行して、グリーンシート18の描画面18aに着弾する。
【0047】
そして、グリーンシート18と吐出ヘッド30とが描画面18aの面方向に相対移動し、ノズルNからの複数の液滴Fbがそれぞれ描画面18aに着弾して液状配線パターンPLを描画面18aに描画する。
【0048】
このとき、描画面18aに着弾した金属インクFの液滴Fbは、グリーンシート18が親水性かつ受容性となっていることから、グリーンシート18の描画面18a上で分散媒が吸収されて、増粘しながら付着するためバジルとならない。従って、先に吐出された金属インクFの液滴Fbに、後から吐出された液滴Fbが固定され重ね打ちされても、互いに引き寄せあうことはない。そして、描画面18aに付着した液滴Fbは、その表面側から溶媒あるいは分散媒の一部が蒸発する。このとき、ラバーヒータHにてグリーンシート18が加熱されていることから溶媒あるいは分散媒の蒸発は促進される。
【0049】
そして、グリーンシート18に着弾した金属インクFの液滴Fbは、乾燥とともにその表面の外縁から増粘し、つまり、中央部に比べて外周部における固形分(粒子)濃度が速
く飽和濃度に達することから表面の外縁から増粘していく。外縁の増粘した金属インクFの液滴Fbは、グリーンシート18の面方向に沿う自身の濡れ広がりを停止する(ピニングする)。ピニングされた状態の金属インクFの液滴Fbは、グリーンシート18に固定され重ね打ちされても、グリーンシート18に固定状態になっており、液滴Fbの外径が変化しなくなっているため、次の液滴Fbに引き寄せられることはない。その結果、高精細の液状配線パターンPLを形成できる。
【0050】
また、グリーンシート18の温度は予め定めた描画温度に加熱されていることから、液状配線パターンPLは、分散媒の一部の蒸発によって増粘して描画面18aに沿う濡れ広がりが抑えられるようになっている。
【0051】
なお、予め定めた描画温度が過剰に高くなると、キャリアフィルム19とグリーンシート18が熱変形を来たし、液滴Fbの着弾精度が損なわれてしまう。そこで、予め定めた描画温度は例えば40℃〜80℃であって、液滴Fbの着弾精度を十分に確保できるように、グリーンシート18の組成や金属インクFの組成に応じて適宜選択される。
【0052】
そして、液滴吐出装置20にて、グリーンシート18の描画面18aに液状配線パターンPLが形成されると、次に乾燥工程に移り、液状配線パターンPLを乾燥配線パターンにする。以後、乾燥配線パターンを有する複数のグリーンシート18を積層して圧着し、その圧着体を一括焼成することによってLTCC多層基板11が製造される。
【0053】
次に、上記のように構成した実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、ガラスセラミック粉末とバインダ樹脂を分散媒で混練して、グリーンシート18となる混練物を作る際、親水性受容性樹脂を加えて練り合わせた。従って、その混練物を成形して作ったグリーンシート18は親水性かつ受容性となる。着弾した液滴Fbは、グリーンシート18の描画面18a上でバジルとなることなく付着する。従って、先に吐出された金属インクFの液滴Fbに、後から吐出された液滴Fbが固定され重ね打ちされても、互いに引き寄せあうことはない。その結果、吐出ヘッド30から吐出しグリーンシート18に着弾する液滴Fbは、描画面18a上の着弾位置で蒸発・乾燥することから、描画面18aに金属インクFによる微細な配線パターンを描画することができる。
【0054】
(2)しかも、上記実施形態によれば、グリーンシート18の親水性は、ガラスセラミック粉末とバインダ樹脂を分散媒で混練して、グリーンシート18となる混練物を作る際に、親水性受容性樹脂を加えて練り合わせるだけで簡単に発現させることができる。従って、従来のように、出来上がったグリーンシート一つ一つに対して、表面を親水性にするための表面処理を、個別に行う必要がない。その結果、親水性のグリーンシート18を効率よく生産することができる。
【0055】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ガラスセラミック粉末とバインダ樹脂を分散媒で混練して、混練物を作る際に親水性受容性樹脂を加えて練り合わせてグリーンシート18となる混練物を作った。そして、その混練物から作ったグリーンシート18を金属インクFの液滴Fbを弾かない親水性かつ受容性にした。
【0056】
これを、バインダ樹脂自身を、例えばポリビニルアルコールよりなる親水性受容性樹脂に代えて実施してもよい。
この場合にも、グリーンシート18が金属インクFの液滴Fbを弾かない親水性かつ受容性となり、高精細の配線パターンを形成することができる。また、上記実施形態と同様に、出来上がったグリーンシート一つ一つに対して、表面を親水性にするための表面処理
を、個別に行う必要がないことから、親水性かつ受容性のグリーンシート18を効率よく生産することができる。
【0057】
しかも、混練する際に親水性かつ受容性を発現する特別な材料を加える必要がないことから、混練材料の数を少なくでき、材料管理が容易になるとともに混練時間を短縮することができる。
【0058】
・上記実施形態では、ガラスセラミック粉末とバインダ樹脂を分散媒で混練して、混練物を作る際に親水性受容性樹脂を加えて練り合わせてグリーンシート18となる混練物を作った。これを、まず、バインダ樹脂と親水性受容性樹脂と混錬したのち、ガラスセラミック粉末を加えて練り合わせてグリーンシートを製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】回路モジュールを示す断面図。
【図2】グリーンシートを説明する断面図。
【図3】液滴吐出装置の斜視図。
【図4】液滴吐出ヘッドの下方からみた斜視図。
【図5】液滴吐出ヘッドの要部側断面図。
【符号の説明】
【0060】
F…金属インク、Fb…液滴、PL…液状配線パターン、11…セラミック多層基板、18…グリーンシート、18a…描画面、20…液滴吐出装置、30…液滴吐出ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ水系液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートであって、
前記セラミック粒子と前記バインダ樹脂の他に親水性受容性樹脂を練り込ませたことを特徴したグリーンシート。
【請求項2】
セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートであって、
前記バインダ樹脂を、親水性受容性樹脂としたことを特徴したグリーンシート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグリーンシートにおいて、
前記親水性受容性樹脂は、ポリビニルアルコールであることを特徴とするグリーンシート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載のグリーンシートにおいて、
前記水系液状体に含まれる導電性微粒子は、金属微粒子であることを特徴とするグリーンシート。
【請求項5】
セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ水系液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートの製造方法であって、
前記バインダ樹脂と前記セラミック粒子に親水性受容性樹脂を加え、分散媒とともに混練して前記混練物を形成したことを特徴したグリーンシートの製造方法。
【請求項6】
セラミック粒子とバインダ樹脂を分散媒とともに混練して混練物を生成し、その混練物をシート状に形成し、そのシート面に、導電性微粒子を含んだ水系液状体の液滴を吐出手段にて吐出させて液状配線パターンが描画されるグリーンシートの製造方法であって、
前記バインダ樹脂を親水性受容性樹脂とし、その親水性受容性樹脂と前記セラミック粒子を分散媒とともに混練して前記混練物を形成したことを特徴したグリーンシートの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のグリーンシートの製造方法において、
前記親水性受容性樹脂は、ポリビニルアルコールであることを特徴とするグリーンシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−182132(P2009−182132A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19380(P2008−19380)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】