説明

グルコシノレート混入が減少した天然物を生成するための植物細胞培養

アブラナ属の植物からグルコシノレート混入の減少した天然物調製物を得るための方法を開示する。これらの方法は、所望する天然物を生成することができる植物から植物カルスを培養するステップと、グルコシノレート生成の減少したカルスを選択するステップと、選択したカルスを液体培地中で培養するステップとを含むことができる。この方法はまた、培養物から天然物を回収するステップを含むことができる。グルコシノレート混入の減少したキャベツアントシアニンを得るための方法も開示する。これらの方法は、液体培地中においてグルコシレート生成の減少した赤キャベツ植物カルスを培養して懸濁培養物を得るステップと、窒素源の欠如した培地中において懸濁培養物を培養するステップとを含むことができる。この方法はまた、培養物からグルコシノレート混入の減少したアントシアニンを回収するステップを含むことができる。最後に、いくつかの特定の低グルコシノレート細胞株を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物細胞培養の分野、特に、グルコシレート混入の減少した天然物を生成するための植物細胞培養の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、いずれも本明細書に全体を参考として組み込んだ2008年12月18日出願の米国仮出願第61/138,884号および2009年4月3日出願の米国仮出願第61/166,438号の特典を請求する。
【0003】
合成食品用および化粧品用の着色料は、消費者の好みのため、天然着色料に着実に置き換わりつつある。アントシアニン(ポリフェノール性色素)は、果実および野菜から得られた天然の水溶性非毒性色素であり、オレンジから青までの様々な色を表す。アントシアニンは、それらの抗酸化特性のため、ヒトの健康に有益な影響も及ぼすことができる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shenoy, 1993, Curr. Sci. 64: 575-579
【非特許文献2】Meyer and Adam, Eur Food Res Technol. 226:1429-1437, 2008
【非特許文献3】DiCosmo, F. and Misawa, M. (Eds.) Plant Cell Culture Secondary Metabolism, 1996, CRC Press, Boca Raton, 232 pp
【非特許文献4】Payne, G.F., Bringi, V., Prince, C.L., and Shuler, M.L. Plant cell and tissue culture in liquid systems, 1992, John Wiley & Sons, Inc, New York, 346 pp
【非特許文献5】Gamborg, O. L. and Phillips, G. C. (Eds.). Plant cell, tissue and organ culture: Fundamental methods, 1995, Springer- Verlag Berlin Heidelberg, 307 pp
【非特許文献6】Fu, T-J, Singh, G., and Curtis, W.R. (Eds.). Plant cell and tissue culture for the production of food ingredients, Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, 290 pp
【非特許文献7】Murashige and Skoog, Physiol. Plant 15:473-497, 1962
【非特許文献8】Reddy et al., 1994, Plant Physiol. 105: 1059-1066
【非特許文献9】Nitsch and Nitsch, Science 163:85-87, 1969
【非特許文献10】Mellon et al., Anal. Biochem. 306:83-91, 2002
【非特許文献11】Song et al., J. Sci. Food Agriculture 86:1271-1280, 2006
【非特許文献12】Rochfort et al., Phytochem. 69:1671-1679, 2008
【非特許文献13】Heaney and Fenwick, Zeitschrift Pflanzenzuchtg 87:89-95, 1981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品用または化粧品用の着色料としてアントシアニンを使用する欠点は、アントシアニンにおける不快な味および/または臭い、特に赤キャベツから抽出されたものにおけるそれらの存在である。
【0006】
アントシアニンは、果実または野菜を刻むか、またはつぶし、その後一般的な食用酸で酸性化した水を注入することによって生じる。その後、この抽出物を非化学的分離技術によって濃縮する。植物原料からの色素抽出物は一般的に、水酸化、メチル化およびアシル化のレベルによって異なる様々なアントシアニン分子の混合物を含有する。いくつかの場合、例えば、赤キャベツおよびダイコンから抽出されたアントシアニンの場合、抽出物は、その抽出物の不快な味または臭いに寄与する所望しない成分も含有する。これらの因子は、その植物原料において年によって変化する可能性があり、気候および環境要因によって影響を受ける。植物からアントシアニン色素を商用に生産するためのもう1つの難題は、収穫が年に1回に制限されることが多いことである。これは、1年を通じて食品業界の需要に応えるために大量の抽出物を準備して、長期間保存しなければならないことを意味する。アントシアニンは不安定なため、特殊な保存条件を利用しなければならないことが多い。さらに、植物全体または植物組織からアントシアニンまたはその他の天然の植物生成物を精製した後で、不快な味および臭いが生じることも多い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
植物細胞培養技術は、所望する植物天然物の生成および抽出のための代替源をもたらす。合成栄養培地で増殖する植物細胞の制御された環境によって、年間を通した生成および生成物のバッチ毎の一貫性がもたらされる。さらに、植物細胞培養技術は、所望する化合物を生成する能力を増強し、一方で所望しない化合物、例えば抽出物に所望しない臭いまたは味を付与する化合物を生成しない細胞株を選択する能力を有する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書では、グルコシノレート混入の減少した天然物調製物(例えば、アブラナ科(Brassicaceae)天然物、例えば、アブラナ属(Brassica)天然物)およびこのような天然物を含む組成物を得るための方法を開示する。グルコシノレート混入の減少した天然物調製物の生成方法は、植物カルス(例えば、アブラナ科植物カルス、例えばアブラナ属植物カルス)を培養するステップと、グルコシノレート生成が減少した(例えば、新鮮細胞重量1グラム当たり全グルコシノレート約5μg未満の)植物カルスを選択するステップと、選択したカルスを懸濁培地中で培養して懸濁細胞培養物を得るステップとを含む。この方法はまた、細胞培養物から天然物(例えば、アブラナ科天然物、例えば、アブラナ属天然物)を回収するステップを含むことができる。いくつかの例では、天然物調製物は天然色素、例えば、アントシアニンである。
【0009】
本明細書ではまた、アントシアニン調製物中におけるグルコシノレート混入が100mg/L未満のキャベツアントシアニンを生成する方法を開示する。アントシアニン調製物中におけるグルコシノレート混入が100mg/L未満のキャベツアントシアニンを生成する方法は、第1の懸濁培地中においてグルコシレート生成の減少した赤キャベツ植物カルスを培養するステップと、第2の懸濁培地中において懸濁細胞培養物を増殖させるステップとを含む。いくつかの例では、第2の懸濁培地は窒素源が欠如している(例えば、添加したアンモニアおよび/または硝酸が欠如した培地)、かつ/または添加したリン酸が欠如している(例えば、添加したリン酸が欠如した培地)。この方法はまた、細胞培養物からキャベツアントシアニンを回収するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、懸濁細胞培養物は、スクロース約3〜10%(例えば、スクロース約6%または8%)を含む第2の懸濁培地中で増殖させる。
【0010】
本開示の前述の特性およびその他の特性は、以下の詳細な説明から、添付の図面を参照にしてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】茎由来カルスにおける赤キャベツ栽培品種の総グルコシノレート濃度を示した一連のヒストグラムである。
【図1B】葉柄由来カルスにおける赤キャベツ栽培品種の総グルコシノレート濃度を示した一連のヒストグラムである。
【図2】12ヵ月にわたって培養した代表的な低グルコシノレートルビーボールキャベツの懸濁細胞株、MX797−12におけるアントシアニン生成を示したヒストグラムである。
【図3】キャベツ細胞株MX797−12の増殖およびスクロース消費パターンを示した図である。PCV、パック細胞容積;RI、屈折率。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.緒言
アブラナ属から天然物(例えば、アントシアニン)を生成するための生細胞培養系には、安定した生理活性分子の選択的生成を促進し、不確実な、変動しやすい、または季節性の供給の問題を回避することを含むいくつかの有望な利点がある。これには、原料植物からの組織培養系の開発および微生物発酵系に類似した大規模な植物懸濁培養物の増殖が関与する。培養による植物細胞の増殖によって、細胞増殖および/または所望する天然物の生成を増強するために栄養素を操作することができる高度に制御された環境を供給する。細胞培養物はまた、所望する化合物の生成を増加させるか、または所望しない化合物の生成を減少させる化学的または物理的誘発などの処理に適している。
【0013】
本開示では、増殖条件を変化させることによって、グルコシノレート生成の減少した赤キャベツ細胞株の選択が可能となった。開示した方法および記載した細胞株によって、(以下の実施例で示したように)グルコシノレート含量の減少したアントシアニンを生成することができる。さらに、窒素源を欠如した懸濁培地中において細胞を培養することによって、細胞のアントシアニン生成が増加する。
【0014】
II.いくつかの実施形態の概要
本明細書では、グルコシノレート混入の減少した天然物調製物(例えば、アブラナ科天然物、例えば、アブラナ属天然物)およびこのような天然物を含む組成物を得るための方法を開示する。一実施形態では、グルコシノレート混入の減少した天然物を生成するための方法は、植物から植物カルス(例えば、アブラナ科植物カルス、例えばアブラナ属植物カルス)(例えば、子葉、根、胚軸、茎頂、茎、葉または表皮剥片(epidermal peel)から得られたカルス)を培養するステップと、グルコシノレート生成の減少した植物カルスを選択するステップと、選択したカルスを懸濁培地中で培養してグルコシノレート混入の減少した天然物を生成することができる懸濁細胞培養物を得るステップとを含むことができる。いくつかの特定の例では、グルコシノレート生成の減少した植物カルスは、誘導培地中でインビトロ培養して植物カルスの形成を誘導することによって生成される。この方法はまた、培養物からグルコシノレート混入の減少した天然物を回収するステップを含むことができる。
【0015】
一実施形態では、グルコシノレート生成の減少した植物カルス(例えば、アブラナ科植物カルス、例えば、アブラナ属植物カルス)は、新鮮細胞重量(FCW)1グラム当たり全グルコシノレート5μg未満を含有する。
【0016】
本明細書ではまた、アントシアニン調製物中におけるグルコシノレート混入100mg/L未満のキャベツアントシアニンを得る方法を開示する。
【0017】
グルコシノレート混入100mg/L未満のキャベツアントシアニンを生成する方法は、第1の懸濁培地中でグルコシノレート生成の減少した赤キャベツ植物カルス(例えば、赤キャベツルビーパーフェクション、レッドエーカー、ルビーボール、マンモスレッドロック、バスカロ(Buscaro)またはカイロ(Cairo)栽培品種のカルス)を培養して懸濁細胞培養物を得るステップと、第2の懸濁培地(例えば、窒素源および/またはリン酸を欠如した第2の懸濁培地)中で懸濁細胞培養物を増殖させるステップとを含む。いくつかの実施形態では、懸濁細胞培養物は、スクロース約3〜10%(例えば、スクロース約4〜8%、例えば、スクロース約6%または8%)も含む窒素源を欠如した第2の懸濁培地中で増殖させる。その他の実施形態では、懸濁細胞培養物は、スクロース約3〜6%を含む第2の懸濁培地中で増殖させる。この方法はさらに、細胞培養物からアントシアニン色素を回収するステップを含むことができる。
【0018】
グルコシノレート生成が低い可能性がある特定の細胞株も提供する。
【0019】
III.略語および用語
A.略語
2,4−D:2,4−ジクロロフェノキシ酢酸
BA:6−ベンジルアミノプリン
ES:エレクトロスプレー
FCW:新鮮細胞重量
LC−MS:液体クロマトグラフィー−質量分析
MS:ムラシゲおよびスクーグビタミンまたは塩
NAA:α−ナフタレン酢酸
NN:ニッチ&ニッチビタミン
PCV:パック細胞容積
PDA:光ダイオードアレイ
RI:屈折率
【0020】
B.用語
本開示の様々な実施形態の概説を容易にするために、以下に特定の用語の説明を挙げる。
【0021】
アントシアニン:植物の葉およびその他の器官にピンク/赤から紫までの色を付与する水溶性フラボノイドの一群。一般的なアントシアニンには、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン(malvidin)、およびペラルゴニジンの誘導体が含まれる。一例では、アントシアニン色素は、グルコシノレートの減少したアブラナ属植物カルスを液体培地(例えば、窒素源を欠如した培地)中において培養した後に形成される色素である。
【0022】
アブラナ属:時々総称してキャベツまたはカラシナとして知られているカラシナのファミリー(family)(アブラナ科)の植物の1属である。この属の作物は時々アブラナ属作物(cole crop)と呼ばれる。
【0023】
アブラナ属の種には、アビシニアガラシ(B.carinata)(アビシニアガラシまたはアビシニアンキャベツ)、B.エロンガタ(B.elongata)(エロンゲーテッドマスタード(elongated mustard))、B.フルティクロサ(B.fruticulosa)(地中海キャベツ(Mediterranean Cabbage))、カラシナ(B.juncea)(例えば、カラシナ、セイヨウカラシナおよびタカナ、サレプタマスタード(Sarepta mustard))、セイヨウアブラナ(B.napus)(例えば、ナタネ、セイヨウアブラナ、カブハボタン)、マスタード(B.nigra)(黒ガラシ)、B.オレラセア(B.oleracea)(例えば、ケール、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ)、B.ラパ(B.rapa)(B.カンペストリス(B.campestris)と同義)(例えば、ハクサイ、カブ、ラピニ)およびB.ルペストリス(B.rupestris)(セイヨウカラシナ)が含まれるがそれらだけに限らない。特定の例では、企図したアブラナ属植物は、B.オレラセア、例えば、アカキャベツ(B.oleraceae var.capitata f.rubra)(例えば、栽培品種ルビーパーフェクション、レッドエーカー、ルビーボール、マンモスレッドロック、バスカロおよびカイロ)である。
【0024】
アブラナ科(Brassicaceae):カラシナ科、またはキャベツ科として(また、十字花科(Cruciferae)または十字花植物(crucifer)として)知られる植物の科。アブラナ科に含まれる属には、アブラナ属、ダイコン属(Raphanus)、セイヨウワサビ属(Armoracia)、アラセイトウ属(Matthiola)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)およびイワナズナ属(Alyssum)が含まれる。アブラナ科の仲間はグルコシノレート化合物を生成する。この科には、食用作物(例えば、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、カブ、ナタネ、セイヨウアブラナ、カラシナ、ダイコン(radish)、セイヨウワサビ、芽キャベツ、ケールおよびカブハボタン)および遺伝学的モデル生物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を含む数多くの経済的に重要な植物が含まれる。
【0025】
カルス:未分化型細胞の塊。植物細胞カルスは、対象植物の未分化体細胞、例えば成体の対象植物または植物胚を含む植物部分から構成される。一例では、カルス(例えば、赤キャベツカルス)のグルコシノレート含量は減少している。
【0026】
混入(コンタミネーション):調製物中における所望しない成分の存在。一例では、「グルコシノレート混入」には、グルコシノレート(例えば、全グルコシノレートまたは1種または複数の特定のグルコシノレート)が不快な味および/または臭いを生じるレベル(例えば、約5μg/植物カルス中の新鮮細胞の重量g、または約100mg/天然物調製物Lを上回るグルコシノレート)で存在するときのアブラナ科の植物の天然物調製物中におけるグルコシノレートの存在が含まれる。
【0027】
対照:「対照」とは、実験試料と比較するために使用される試料または標準物を意味する。いくつかの実施形態では、対照は、グルコシノレート生成の減少について選択されていない植物または植物カルス(例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、α−ナフタレン酢酸および/または6−ベンジルアミノプリンを含まない培地で誘導されたカルス)から得られた試料である。他の実施形態では、対照は、グルコシノレート生成の減少について選択されていない植物カルスまたは懸濁培養物から生成したアントシアニン調製物である。いくつかの例では、対照は、グルコシノレート生成の減少について選択されたカルスが得られた植物または植物カルス由来であってもよい。その他の実施形態では、対照は、歴史的な対照または標準参照値もしくは数値範囲(例えば、以前に試験した対照試料、例えば、グルコシノレート生成の減少について選択されていない植物もしくは植物カルスまたはグルコシノレート生成の減少について選択されていない植物カルスもしくは懸濁培養物から生成したアントシアニン調製物)である。
【0028】
グルコシノレート:グルコースおよびアミノ酸から得られた硫黄および窒素を含有する有機化合物の1種。グルコシノレートは、アブラナ目(アブラナ科を含む)のほとんど全ての植物によって生成され、カラシナ、ダイコン、キャベツ、芽キャベツ、ケール、カリフラワー、ブロッコリーおよびカブを含む食品の苦味または「ピリッとする」味の原因となっている。グルコシノレート由来の化合物は、昆虫および草食動物に対する植物の天然の防御化合物である。
【0029】
いくつかの例では、グルコシノレートにはアブラナ科植物によって生成されるグルコシノレート、例えば、赤キャベツによって生成されるグルコシノレート(例えば、グルコイベリン(3−メトキシスルフィニルプロピル−グルコシノレート)、プロゴイトリン((2R)−ヒドロキシ−3−ブテニル−グルコシノレート)、シニグリン(2−プロペニル−グルコシノレート)、グルコラファニン(4−メチルスルフィニルブチル−グルコシノレート)、グルコナピン(3−ブテニル−グルコシノレート)、4−ヒドロキシ−グルコブラシキン(4−ヒドロキシ−3−インドリルメチル−グルコシノレート)、グルコトロパエオリン(ベンジル−グルコシノレート)、グルコエルシン(4−メチルチオブチル−グルコシノレート)、グルコブラシキン(3−インドールメチル−グルコシノレート)、4−メトキシ−グルコブラシキン(4−メトキシ−3−インドリルメチル−グルコシノレート)およびネオ−グルコブラシキン(1−メトキシ−3−インドールメチル−グルコシノレート)が含まれる。例えば、非特許文献2参照。
【0030】
天然物:生きた生物または細胞(例えば培養した細胞)によって生成される、(例えば薬物として、または創薬、または設計において使用するため)薬理学的活性または生物学的活性または(例えば、食品添加物のための)その他の有用な特性を通常有する化合物または物質。一例では、天然物は、アントシアニン、例えば、アブラナ科植物(例えば、アブラナ属植物、例えば、赤キャベツ)または培養したアブラナ科植物(例えば、アブラナ属カルスまたは懸濁培養物、例えば、赤キャベツカルスまたは懸濁培養物)によって生成されるアントシアニンである。
【0031】
アブラナ科の植物または細胞から生成される天然物(例えば、アントシアニン)は、不快な味または臭いを生じる所望しない混入物(例えば、グルコシノレート)を含有してもよい。一例では、天然物(例えば、天然物抽出物)は、グルコシノレート生成の減少したアブラナ科植物カルスから生成され、グルコシノレート混入の減少した天然物がもたらされる。
【0032】
窒素源:窒素を植物または植物細胞培養物(例えば、カルスまたは懸濁培養物)に供給する化合物。窒素源には、アンモニア(例えば、硝酸アンモニアまたは硫酸アンモニア)および硝酸(例えば、硝酸アンモニア、硝酸カリウムまたは硝酸カルシウム)が含まれる。窒素源を欠如した増殖培地は、添加した窒素源、例えば、アンモニアまたは硝酸の形態で添加した窒素を含まない培地、例えば、アンモニアおよび/または硝酸を約100μM未満(例えば、アンモニアおよび/または硝酸を約1μM未満、約100nM未満、約1nM未満、または約0.1nM未満)含有する培地、または例えば質量分析によって検出可能なレベルのアンモニアおよび/または硝酸を含有しない培地である。
【0033】
pH:溶液の酸性またはアルカリ性の測定値。pH7未満の25℃の水性溶液は酸性であり、一方、pH7を上回る溶液は塩基性(アルカリ性)と考えられる。一例では、酸性pHは5未満、例えば、1と3の間である。
【0034】
植物細胞:未分化型組織(例えば、カルス)ならびに植物の種、花粉、栄養繁殖体および胚由来の細胞を含む植物から得られた任意の細胞。植物細胞は、任意の植物器官または組織およびそれらから調製した培養物から得ることができる。
【0035】
植物部分:限定はしないが、種、胚、成長点領域、カルス組織、葉、根、苗条、茎、配偶体、胞子体、花粉および小胞子を含む任意の植物器官または組織。
【0036】
赤キャベツ:赤キャベツ(例えば、アカキャベツ(Brassica oleracea var.capitata f.rubra))は、調製後赤クラウト(Red Kraut)または青クラウト(Blue Kraut)(例えば、調理後青色を形成する)としても知られるキャベツの変種である。一例では、赤キャベツは栽培品種ルビーボールである。
【0037】
減少した:数、量、レベル、濃度または強度が少ないことまたは小さいこと。一例では、(例えば、植物カルスによる)グルコシノレート生成の減少は、対照植物カルスと比較したグルコシノレートの量(例えば、グルコシノレートの濃度、またはアントシアニンに対するグルコシノレートの比)の減少である。別の例では、グルコシノレート混入の減少は、対照調製物と比較した調製物中のグルコシノレートの量(例えば、グルコシノレートの濃度、またはグルコシノレートに対するアントシアニンの比)の減少である。
【0038】
懸濁培養:生物体から分離された細胞の増殖。これは一般的に、液体培地(「懸濁培地」)を使用することによって促進される。懸濁培養は、液体栄養培地における細胞の増殖を意味することができる。
【0039】
組織培養:組織培養は通常、固体栄養培地上における細胞および組織の培養を意味する。
【0040】
特に説明しない限り、本明細書で使用した技術用語および科学用語は全て、本発明の属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。単数用語「a」、「an」および「the」には、文脈で明確に指示しない限り、複数の参照物を含む。同様に、「または」という語は、文脈で明確に指示しない限り、「および」を含むものとする。「含む(Comprising)」は「包含する(including)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprising A or B)」はAまたはBまたはAおよびBを包含することを意味する。
【0041】
核酸またはポリペプチドまたはその他の分子について与えられた塩基の大きさまたはアミノ酸の大きさおよび全分子量または分子質量値は近似値であり、特に指示しない限り、便宜的に挙げられているものとさらに理解されたい。本明細書で記載したのと類似、または同等の方法、および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及した出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は全て、全体を参考として組み込む。矛盾する場合、用語の説明を含む本明細書が基準となる。さらに、材料、方法および実施例は、例示のために過ぎず、制限するものではない。
【0042】
特に記載した場合を除いて、本開示の方法および技術は一般的に、当業界で周知の従来の方法にしたがって、本明細書全体で引用し、検討した様々な一般的な、およびより具体的な参考文献で記載されたように実施する。例えば、いずれも本明細書に全体を参考として組み込んだ非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6を参照のこと。
IV.グルコシノレートの減少した天然物の生成方法
グルコシノレート混入の減少した天然物、例えばアブラナ科天然物(例えば、アブラナ属天然物、例えば、アントシアニン)の生成方法を本明細書で開示する。一実施形態では、これらの方法は、アブラナ科植物カルスなどの植物カルス(例えば、アブラナ属植物カルス、例えばブラッシカ オレラセア(Brassica oleraceae)植物カルス)を培養するステップと、グルコシノレート生成の減少した植物カルスを選択するステップと、選択したカルスを懸濁培地中で培養して懸濁細胞培養物を得るステップと、細胞培養物からグルコシノレート混入の減少した天然物を回収するステップとを含む。特定の例では、グルコシノレート混入の少ない天然物はアントシアニン(例えば、赤キャベツアントシアニン)である。
【0043】
アブラナ科植物。本明細書で開示した方法は、グルコシノレート生成植物、例えば、アブラナ科の植物からグルコシノレート混入の減少した天然物を生成するために使用することができる。
【0044】
アブラナ科の植物には、アビシニアガラシ(アビシニアガラシまたはアビシニアンキャベツ)、B.エロンガタ(エロンゲーテッドマスタード)、B.フルティクロサ(地中海キャベツ)、カラシナ(例えば、カラシナ、セイヨウカラシナおよびタカナ、サレプタマスタード)、セイヨウアブラナ(例えば、ナタネ、セイヨウアブラナ、カブハボタン)、マスタード(黒ガラシ)、B.オレラセア(例えば、ケール、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ)、B.ラパ(B.カンペストリスと同義)(例えば、ハクサイ、カブ、ラピニ)およびB.ルペストリス(セイヨウカラシナ)が含まれるがそれらだけに限らない。特定の例では、開示した方法で使用できる植物には、アカキャベツ(赤キャベツ)、例えば、栽培品種ルビーパーフェクション、レッドエーカー、ルビーボール、マンモスレッドロック、バスカロまたはカイロが含まれる。
【0045】
開示した方法で使用できるアブラナ科の植物にはまた、ダイコン属(Raphanus)の植物、例えば、Raphanus sativus(栽培されているダイコン)およびセイヨウワサビ属の植物、例えば、セイヨウワサビ(Armoracia rusticana)(ホースラディッシュ(Cochlearia armoracia)(ホースラディッシュ)と同義)が含まれる。開示した方法で使用できるアブラナ科の他の植物には、アラセイトウ属(Matthiola)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アリッサム属(Alyssum)、ワサビ属(Wasabia)、エゾスズシロ属(Erysimum)およびマメグンバイナズナ属(Lepidium)を含むがそれらだけに限定しないアブラナ科のその他の属の植物が含まれる。
【0046】
グルコシノレートの減少した天然物を生成するために使用する培養条件。一例では、グルコシノレートの減少した天然物を生成するために、植物カルスおよび/または懸濁培養を使用する。植物カルスは、周知技術を使用して適切な植物から得ることができる。植物組織は、子葉、根、胚軸、茎頂、茎、葉または表皮剥片を含む様々な原料由来であってもよい。カルスは、適切な栄養培地中におけるインビトロ培養によって所望する天然物(例えば、アントシアニン)を生成することができる植物の組織外植片から誘導され得る。例えば、カルスの形成の誘導ステップで使用した栄養培地(「誘導培地」)には、固形培地が含まれる。植物細胞培養、例えば、カルス形成の誘導に適した栄養培地は当業者には周知である。特定の例では、カルス誘導培地には、ムラシゲおよびスクーグ(MS)塩(例えば、カタログ番号524、Phytotech、Shawnee Mission、KS)およびMSビタミン(例えば、カタログ番号533、Phytotech、Shawnee Mission、KS)が含まれる。例えば、非特許文献7参照。
【0047】
一例では、カルス形成は、様々な濃度のホルモン(例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、6−ベンジルアミノプリン(BA)またはアルファ−ナフタレン酢酸(NAA))を含有する誘導培地上で培養することによって誘導する。この誘導培地は、2,4−D約0〜1mg/L(例えば、約0mg/L、0.5mg/Lまたは1mg/L)、NAA約0〜4mg/L(例えば、約0mg/L、0.1mg/L、1mg/L、2mg/Lまたは4mg/L)、BA約0〜0.1mg/L(例えば、約0mg/L、0.05mg/Lまたは0.1mg/L)、またはそれらの1種または複数の様々な組み合わせを含有してもよい。特定の例では、カルス形成は、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸約1mg/L、アルファ−ナフタレン酢酸約2mg/L、6−ベンジルアミノプリン約0.1mg/Lを含む固形誘導培地上で培養することによって誘導する。得られたカルスによるグルコシノレート生成を測定し、グルコシノレート生成の減少したカルスを選択することができる。
【0048】
いくつかの例では、グルコシノレート生成の減少は、2,4−D、NAA、およびBAの1種、または複数を含有する誘導培地上で増殖したカルスによって生成したグルコシノレート(例えば、全グルコシノレート、または1種、または複数の特定のグルコシノレート)の量を対照(例えば、2,4−D、NAA、および/またはBAを欠如した誘導培地で誘導したカルス、またはカルスを得た植物の実生)と比較することよって決定する。減少したグルコシノレート生成には、対照(例えば、2,4−D、NAAおよび/またはBAを欠如した誘導培地で誘導したカルス、またはカルスを得た植物の実生)と比較して少なくとも約10%減少(例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%または約99%も減少)が含まれる。その他の例では、減少したグルコシノレート生成には、低量のグルコシノレート(例えば、全グルコシノレート、または1種、または複数の特定のグルコシノレート)、例えば、約5μg/gFCW未満、例えば、約0.01μg/gFCWから約5μg/gFCW、約0.05μg/gFCWから約2.5μg/gFCW、約0.05μg/gFCWから約1μg/gFCW、約0.05μg/gFCWから約0.75μg/gFCWまたは約0.05μg/gFCWから約0.5μg/gFCWの全グルコシノレート)が含まれる。
【0049】
グルコシノレートの減少した天然物を生成する植物のカルスおよび懸濁培養物は、当技術分野において公知のプロトコールによって確立することができる。プロトコールの代表例は、以下の実施例に挙げる。簡単に説明すると、以下の詳細は当業者によって改変させることができるが、代表的な方法において、グルコシノレートの減少した所望する天然物を生成する細胞培養の開始は、安定した連続継代性組織培養からカルス、および懸濁培養物を作製することによって実現する。
【0050】
カルスおよび懸濁培養物は、自然に、または自発的に所望する天然物を生成してもよい。しかし、時として、宿主植物は天然物を生成するが、カルス、および/または懸濁培養物は天然物を生成しなくてもよく、または宿主植物よりも低レベルで天然物を生成してもよい。天然物の生成を誘導、または増加させる方法は、当業者には公知である。例えば、培養は、光照射、特にアントシアニン生合成の誘発因子である紫外線(UV)−B光を使用してアントシアニンを生成するように誘導することができる(例えば、非特許文献8参照)。さらに、以下に記載したように、アントシアニン生成は、適切な培地、例えば、窒素源を欠如した培地中における培養物の増殖によって増加させることができる。
【0051】
懸濁培養物は、(以下の実施例で記載したように)カルス培養物から作出し、新鮮な懸濁培地中で維持することができる。植物細胞懸濁培養に適した栄養培地は、当業者には周知である。特定の例では、植物細胞懸濁培地には、ムラシゲおよびスクーグ(MS)塩(例えば、カタログ番号M524、Phytotech、Shawnee Mission、KS)およびニッチおよびニッチビタミン(例えば、カタログ番号N608、Phytotech、Shawnee Mission、KS)が含まれる。例えば、非特許文献9参照。懸濁培養物は、定期的な計画で、一般的に、7〜14日間隔で、パック細胞容積(PCV)として表現される既知の細胞量を、新鮮な培地に無菌的に移すことによって確立することができる。
【0052】
懸濁培養のための培地(「懸濁培地」)は、懸濁培養の開始、または所望する特性(例えば、細胞構造または天然物の生成)のために至適化することができる。いくつかの例では、ホルモン(例えば、2,4−D、ジカンバ、NAA、6−γ−γ−ジメチルアリル−アミノプリン(2iP)、ピクロラム、インドール−3−酢酸(IAA)、ジベレリン酸(GA)またはカイネチン)の濃度は、個々に、または組み合わせて変化させることができる。特定の例では、この懸濁培地は、2,4−D約0〜2mg/L(例えば、約0約0mg/L、0.005mg/l、0.01mg/L、0.05mg/L、または0.1mg/L)、ジカンバ約0〜2mg/L(例えば、約0mg/L、1mg/L、または2mg/L)、GA約0〜1mg/L(例えば、約0mg/L、0.5mg/L、または1mg/L)、IAA約0〜2mg/L(例えば、約0mg/L、1mg/L、または2mg/L)、カイネチン約0〜1mg/L(例えば、約0mg/L、0.1mg/L、0.5mg/Lまたは1mg/L)、NAA約0〜2mg/L(例えば、約0mg/L、0.5mg/L、1mg/Lまたは2mg/L)、ピクロラム約0〜2mg/L(例えば、約0mg/L、1mg/Lまたは2mg/L)、BA約0〜0.1mg/L(例えば、約0mg/L、0.01mg/L、0.02mg/L、0.025mg/L、0.05mg/Lまたは0.1mg/L)、またはそれらの1種、または複数の様々な組み合わせを含有してもよい。特定の例では、懸濁培地は2,4−D約1.5mg/Lを含む。
【0053】
グルコシノレート生成の測定方法。グルコシノレートの測定方法、または定量方法は、当業者には周知である。一例では、グルコシノレート(例えば、全グルコシノレートまたは特定のグルコシノレート)は、質量分析、例えば、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)技術によって測定する。植物、植物カルス、または植物細胞培養物(例えば、グルコシノレート生成の減少した植物カルス)の抽出物(例えば、水性抽出物)は、LC−MSによって評価する。グルコシノレートは、分子量、および滞留時間に基づいて検出する。定量は、グルコシノレート(例えば、シニグリン)の既知の濃度を使用した外部検量線をベースにすることができる。例えば、非特許文献10、11、12参照。
【0054】
別の例では、グルコシノレート(例えば、全グルコシノレートまたは特定のグルコシノレート)は、酵素ミロシナーゼでグルコシノレートを加水分解し、遊離するグルコースの量を定量することによって測定する。例えば、非特許文献13参照。
V.グルコシノレートの減少したキャベツアントシアニンの生成方法
本明細書では、グルコシノレート混入の減少したキャベツアントシアニンの生成方法を開示する。一例では、グルコシノレート混入の減少したキャベツアントシアニンは、第1の懸濁培地中においてグルコシレート生成の減少した赤キャベツ植物カルスを培養して懸濁細胞培養物を得るステップと、第2の懸濁培地中において懸濁細胞培養物を増殖させるステップと、細胞培養物からキャベツアントシアニンを回収するステップによって生成する。いくつかの例では、第2の懸濁培地は窒素源が欠如している(例えば、添加した窒素源、例えば、外来性アンモニア、または硝酸の形態で添加された窒素を有さない)。他の例では、第2の懸濁培地は、糖を約3〜10%(例えば、スクロースを約3〜10%、例えば、スクロースを約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%)含む。
【0055】
グルコシノレート生成の減少した赤キャベツ植物カルスの生成は、以下に説明したように実施する。いくつかの例では、キャベツアントシアニンのグルコシノレート混入の減少は、赤キャベツ植物カルス、または懸濁培養物から調製したアントシアニン中のグルコシノレート(例えば、全グルコシノレート、または1種、または複数の特定のグルコシノレート)の量を対照(例えば、グルコシノレートの減少したカルスを得た植物の植物カルスまたは懸濁培養物から調製したアントシアニン)と比較することよって決定する。グルコシノレート混入の減少には、対照(例えば、グルコシノレートの減少したカルスを得た植物の植物カルスまたは懸濁培養物から調製したアントシアニン)と比較して少なくとも約10%減少(例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%または約99%も減少)が含まれる。その他の例では、グルコシノレート混入の減少は、アントシアニン調製物中のグルコシノレート約100mg/L未満(例えば、約100mg/L未満、約75mg/L、約50mg/L、約25mg/L、約10mg/L、約5mg/L、約1mg/Lまたは約0.1mg/Lも)と決定する。他の例では、グルコシノレート混入の減少には、グルコシノレートに対するアントシアニンの比が少なくとも約40:1(例えば、少なくとも約40:1、少なくとも約50:1、少なくとも約60:1、少なくとも約80:1、少なくとも約100:1、少なくとも約200:1またはそれ以上)が含まれる。
【0056】
アントシアニン生成の増加のために使用する培養条件。懸濁培養用培地は、アントシアニン生成のために至適化することができる。いくつかの例では、窒素源(例えば、硝酸アンモニウム、および/または硫酸アンモニウム)の量、または炭素源(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール)もしくはその他の成分(例えば、カゼインまたはリン酸)の量、もしくは種類は、個々に、または組み合わせて変化させることができる。特定の例では、懸濁培地は、窒素源0〜80mM(例えば、アンモニアおよび/または硝酸約0mM、10mM、20mM、30mM、40mMまたは80mM)、グルコース、フルクトース、スクロース、マンニトールもしくはソルビトール約3〜10%(例えば、約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%)、カゼイン0.5〜10g/L(例えば、0.5g/L、1g/L、5g/Lまたは10g/L)またはそれらの1種、または複数の様々な組み合わせを含有してもよい。一例では、懸濁培地はスクロース約4%を含有する(例えば、培地BO10923)。その他の例では、懸濁培地は、減少したリン酸を含有してもよく、またはリン酸を欠如してもよい(例えば、添加したリン酸を含まない培地、例えば、リン酸を約10μM未満(例えばリン酸約1μM未満、約100nM未満、約1nM未満、または約0.1nM未満)含有する培地、または、例えば質量分析によって検出可能なレベルのリン酸を含有しない培地)。特定の例では、懸濁培地は、スクロース約8%を含有し、窒素源を欠如する培地(例えば、培地BO1224)またはスクロース約8%を含有し、窒素源および添加したリン酸の両方を欠如する培地(例えば、培地BO1851)である。いくつかの例では、懸濁培地はまた、2,4−D(例えば、2,4−D約1〜2mg/L、例えば、2,4−D約1.5mg/L)を含む。得られた細胞培養物によるアントシアニン生成を測定し、アントシアニン生成の増加した、または至適化した培養条件を選択することができる。
【0057】
アントシアニン色素の回収。アントシアニンは、本明細書で記載した方法によって調製した細胞培養物から、任意のその他のアントシアニンの抽出について当業界で公知の方法と類似の方法で回収または抽出する。例えば、代表的な実施形態では、細胞をホモジナイズし、酸性水(硫酸0.1%、pH3)で抽出する。抽出に使用される溶媒の変更には、エタノール、またはメタノールの添加(50%v/vまで)および溶媒を酸性化するための(硫酸の代わりの)酢酸、またはその他の食用グレードの酸の使用が含まれる。細胞は、保存が必要な場合、ホモジナイズ前に冷凍することができる。例えば、細胞は液体窒素中で冷凍し、−80℃で保存することができる。
【0058】
一例では、細胞懸濁培養物は、使用した培地を除去する前にホモジナイズし、得られたホモジネートを濾過する。ホモジナイズし濾過した細胞集団をその後溶媒で抽出して、アントシアニンを取り出す。他の例では、細胞培養物を濾過して使用済培地を除去し、残存する細胞集団に溶媒を添加し、その後細胞を溶媒存在下でホモジナイズする。他の例では、使用済培地を傾瀉し、残存する細胞集団に溶媒を添加し、細胞をホモジナイズしてアントシアニンを抽出する。前述の例の全てにおいて、溶媒によるアントシアニン抽出は数回反復して、細胞集団から可能な限り多くのアントシアニンを抽出することができる。
【0059】
アントシアニン生成の測定方法。調製物中のアントシアニン量、または質量の測定方法は、当業者には公知である。調製物(例えば、細胞培養物の抽出物)のアントシアニン含量は、520nmでの吸光度を測定し、ベールの法則(A520nm×1000×シアニジングルコシドのMW)/(吸光係数)を使用してアントシアニン含量を算出することができる。
【0060】
調製物中に見出されたアントシアニンの量、および種類は、LC−MS、およびUV吸光度によって決定することができる。いくつかの例では、調製物はLC−MS分析を行う。試料を520nmでモニターする。その後、未知の抽出物の全アントシアニン濃度は、520nmでのピーク領域を積算し、標準曲線と比較することによってシアニジン−3,5−ジグルコシド当量として表すことができる。
【0061】
アントシアニン調製物の使用。アントシアニンは、清涼飲料、飲料、およびヨーグルトなどの多くの食品において天然の着色添加物として幅広く使用されている。しかし、従来通り生成されたアントシアニン、例えば、赤キャベツなどの植物からの抽出物は、調製物中にグルコシノレートが存在する結果として所望しない臭いおよび/または味を有することが多い。したがって、本明細書で記載した方法によって、通例の調製物の所望しない臭いおよび/または味を欠如した、グルコシノレート混入の減少したアントシアニンを生成することができる。開示した方法によって生成したアントシアニンは、従来通り調製したアントシアニンの代わりに、任意の食物、飲料、薬剤、化粧品またはその他の調製物で使用することができる。
【0062】
以下の実施例は、ある特定の特性および/または実施形態を例示するために挙げる。これらの実施例は、記載した特定の特性または実施形態に本開示を限定するものではない。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
グルコシノレート低生成赤キャベツ細胞株の選択
この実施例は、低量のグルコシノレートを生成するか、またはグルコシノレートを生成しない赤キャベツ細胞株の選択について説明する。
【0064】
赤キャベツ(ブラッシカ オレラセア)の7種類の異なる栽培品種、ルビーパーフェクション、レッドエーカー、ルビーボール、マンモスレッドロック、バスカロ、およびカイロの種30個それぞれを50mLチューブに入れ、漂白溶液100mL当たりTween−20を1滴含有する25%漂白液30〜40mLを試験管に添加した。チューブをLabQuake(登録商標)振盪機(ThermoScientific、Waltham、MA)で15分間振盪した。種および漂白液を滅菌した茶漉し器に注いだ。次に、種を滅菌水で3回濯ぎ、MSビタミン、スクロース30g/L、およびPhytagel(商標)20g/Lを含むMS塩をベースにした発芽培地(BO254、表1)に播種した。3週間後、発芽した実生は小刀で3つの部分(子葉、胚軸、および根)に切断し、種々の濃度のホルモン、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、アルファ−ナフタレン酢酸(NAA)および6−ベンジルアミノプリン(BA)を含むMS塩、MSビタミン、スクロース30g/LおよびPhytagel(商標)2.0g/Lをベースにしたカルス誘導培地(培地BO278、BO279、BO280、BO281、BO282、BO283、表1)上に滅菌ピンセットで移した。2〜3週間後、カルスはうまく誘導され、最終的にいくつかの継代培養物の増殖速度が良好であった。良好に増殖するカルスを、NAA2.0mg/L、2,4−D1.0mg/L、BA0.1mg/L、MSビタミン、スクロース30g/LおよびPhytagel(商標)2.0g/Lを有するMS培地(BO283、表1)に移した。
【0065】
【表1】

【0066】
7種類の様々な栽培品種の茎および葉柄由来のカルスの全グルコシノレートレベルは、液体クロマトグラフィー−質量分析を使用して評価した(図1)。抽出物は、新鮮なカルスまたは懸濁細胞約0.5mLおよびH2SO40.05%を含む50%(v/v)エタノール1.0mLから調製した。細胞は微量遠心管(2.0mL)に収集し、ビーズミルホモジナイザ−で2分間ホモジナイズした。ホモジェネートを臨床用遠心器で4000rpmで4分間遠心した。試料10μlをLC−MS分析器に注入した。SymmetryC18 10×2.1mmガードカラムを備えたSymmetryC18カラム(100×2.1mm、内径3.5μm)(Waters、Milford、MA、USA)を使用した。LC分析は、CTC分析PALオートサンプラー(Leap Technologies、Carboro、NC、USA)、600S制御装置を具備したWaters 626ポンプおよび190から780nmを0〜27分で走査するWaters996光ダイオードアレイ検出器(PDA)を備えたWaters(Milford、Massachusetts、USA)高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用して実施した。勾配溶出は、水−ギ酸0.1%(溶媒A)およびアセトニトリル−ギ酸0.1%(溶媒B)を0.3mL分-1の一定流速で実施した。溶媒Bの以下の比(v/v)の直線勾配プロファイルを適用した(t(分)、%B):(0、8)、(15、45)、(15.1、100)、(25、100)、(25.1、8)、(35、8)。Waters Quattro Micro3連4重極質量検出器(Milford、Massachusetts、USA)を同時に使用してMSデータを得た。質量分析条件は、ESネガティブモード、キャピラリー電圧2.95kV、コーン電圧15V、イオン源温度115℃、脱溶媒和温度225℃、コーンガス流量0L/時間、脱溶媒和ガス流量600L/時間、イオンエネルギー1、エントランス50、コリジョン2、エグジット50。
【0067】
グルコシノレート検出は、150〜1000m/zのESネガティブモードスキャンを使用した分子量に基づいた。定量は、シニグリン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)15.625μg/mL、31.25μg/mL、62.5μg/mL、125μg/mLおよび250μg/mLを使用した外部検量線をベースにした。化合物は、分子量およびESネガティブモードスキャンの滞留時間をベースにして検出した。抽出物中の各グルコシノレート化合物の検出および定量は、分子量および滞留時間情報をベースにした(表2)。グルコブラシキン(glucobrassicin)、ネオグルコブラシキン(neoglucobrassicin)、4−メトキシグルコブラシキン(4-methoxyglucobrassicin)および4−ヒドロキシグルコブラシキン(4-hydroxyglucobrassicin)を含む4種類のグルコシノレート化合物を検出したところ、栽培品種のグルコシノレート含量は変動が著しかった。
【0068】
【表2】

【0069】
グルコシノレート含量が低いか、またはグルコシノレートを含有しない赤キャベツ変種全てのカルスを同定した。全グルコシノレート濃度は、対応する変種の実生の150〜300μg/g新鮮細胞重量(FCW)と比較して、平均して0.06〜76.54μg/gFCWの間であった。ルビーボールのカルス(FCW1グラム当たりグルコシノレート0.06〜0.5μg)は格別に低いレベルを示した。したがって、ルビーボールのカルスは、グルコシノレート低生成細胞株として選択し、一貫して低いレベルのグルコシノレート生成を示した。ルビーボールキャベツから得られた9種の独立したカルスを選択し、MX797−1からMX797−19と指定した。
【0070】
(実施例2)
キャベツ細胞の懸濁培養およびアントシアニンの生成の至適化
この実施例は、アントシアニン生成の至適化におけるキャベツ細胞懸濁培養物増殖のための培地の選択について説明する。
【0071】
発色した砕けやすい細胞のみを収集するために、実施例1で記載したBO283プレート上で増殖するルビーボールの健常なカルス(細胞株、MX797−5、−6、−8、−9、−11、−12、−13、−14、−15および−17)を、NNビタミン、スクロース30g/LおよびPhytagel(商標)2.5μg/Lおよび2,4−D1.5mg/Lを含むMS塩をベースにした改変培地(BO1168、表3)に移した。培地のpHは、圧力1.04kg/cm2(121℃)で25分間オートクレーブする前に5.8に調節した。BO1168培地上に再度播種した赤キャベツカルスは、良好な増殖および発色を示した。細胞構造もより砕けやすくなり、懸濁培養の作製および増殖に適合した。4週間毎にカルスを同培地に継代培養し、暗紫色の砕けやすいカルスのみを各継代時に新鮮な培地に移した。
【0072】
【表3】

【0073】
固形プレート上で2回継代した後、NNビタミン、スクロース30g/Lおよび2,4−D1.5mg/Lを含むMS培地(DC1151、表3)中で懸濁培養作製を再度開始した。懸濁した細胞は、125mLエルレンマイヤーフラスコ(三角コルベン)内で新鮮なDC1151培地(摂取量=25%PCV(パック細胞容積))30mLに継代することによって維持した。培地のpHは、オートクレーブする前に5.4に調節した。培養物は、60μM/m2/秒で、白色蛍光灯(明期16時間/日)の下で23℃で115rpmでインキュベートした。
【0074】
6日目に、全フラスコから試料を採取し、アントシアニン生成をUV吸光法によって測定した。簡単に説明すると、アントシアニンは、新鮮なカルスまたは懸濁細胞約0.5mLからH2SO40.05%を含む50%(v/v)エタノール1.0mLで抽出した。細胞は微量遠心管(2.0mL)に収集し、ビーズミルホモジナイザ−で2分間ホモジナイズした。ホモジェネートを臨床用遠心器で4000rpmで4分間遠心した。この抽出物をpH3.0緩衝溶液で5回希釈し、520nmの吸光度を調べた。アントシアニン含量は、ベールの法則(A520nm×1000×シアニジングルコシドのMW)/(吸光係数)を使用して算出した。生産性を至適化し、規模を拡大するために、均一に発色した良好な懸濁物を実現するために、さらなる細胞選択工程においてすぐれた増殖特性によって、この時点で細胞株MX797−12を選択した。
【0075】
7日目にアントシアニン高生成細胞を含有するフラスコを選択し、細胞10mLPCVを新鮮なDC1151培地30mLに移し、播種密度25%(v/v)の培養物40mLを作製した。選択的に継代して9ヵ月後、高生産系を定期的に選択する工程によって125mLフラスコ規模でアントシアニン生成の著しい改善が得られ、その生成には再現性があった。その後、125mLフラスコにおける細胞培養を250mLフラスコ規模に拡大した。250mLフラスコ規模では、細胞の20mLPCVを新鮮なDC1151培地60mLに移し、培養物80mL(25%(v/v)播取密度)を作製した。細胞増殖およびアントシアニン生成は、2つの異なる容器容量でかなり類似したパターンを示した。継続的な細胞選択工程は、維持培養におけるアントシアニン生成増加を支え、MX797−12細胞株によって生成されるアントシアニンの全量は、12ヵ月の細胞選択工程によって最大約13.6倍(81.9±7.9mg/L PCVから1119.0±24.6mg/L PCV)に増加した(図2)。倍加時間によって測定すると、MX797−12細胞株の0日と7日との間の最大増殖は、4.8日であった(図3)。
【0076】
細胞増殖およびアントシアニン生成をさらに高めるために、維持培地の糖濃度を増加させるように改変した。こうして、スクロース濃度を4%(40g/L培地)に増加させた、DC1151とは異なる培地BO1923を開発した(表3)。この変更によって、BO1923で増殖させて8ヵ月後に、平均して2.3倍(1119.0±24.6mg/L PCVから2612.5±513.2mg/L PCV)のアントシアニン生成増加がもたらされた。
【0077】
窒素源の除去の効果を評価するために、全窒素源をBO1155から除去し、培地BO1224(表3)を作製した。培養7日後の消費済培地をBO1224に置換した。この培地によって、アントシアニン生成がPCV約2060mg/Lまで上昇することが示され、窒素源除去によって高濃度のスクロースによるアントシアニン生成が改善されることが示唆された。
【0078】
(実施例3)
スクロースを使用したキャベツ懸濁細胞におけるアントシアニン生成の至適化
この実施例は、アントシアニン生成に対するスクロース初期濃度およびスクロース補充添加の効果について説明する。
【0079】
MX797−12の懸濁培養におけるアントシアニンの生産性をスクロース添加後モニターした。7日後の細胞培養物20mLを、スクロース初期濃度としてスクロース3%、4%、5%または6%(w/v)を含むDC1151培地60mLを含有する250mLフラスコに接種し、細胞をさらに7日間増殖させ、実施例2で記載したのと同じ増殖条件でインキュベートした。その後、滅菌したスクロース50%(w/v)の保存溶液を使用して、適量を各培養物に添加して屈折率(RI)を5%に調節し、2日後にアントシアニン生産性を処理間で比較した。スクロース6%で開始したフラスコは、9日後にアントシアニンを1408.7±116.5mg/L PCV生成し、これはスクロース3%で開始した細胞の生産性よりもほぼ2倍高かった(表4)。スクロース初期濃度は、7日間通常維持した培養のアントシアニン生成ならびに7日後のスクロース追加による生成増加に影響を及ぼした。
【0080】
【表4】

【0081】
(実施例4)
生成培地開発におけるリン酸の効果
この実施例は、アントシアニン生成に対するリン酸除去の効果を記載する。
【0082】
生成培地中におけるアントシアニン生成を増加させるために、BO1224からリン酸を除去して生成培地BO1851を調製した(表3)。最初の7日間の培養のためにMX797−12細胞の20mL PCVを新鮮なDC1151培地60mLに播種し、実施例2に記載したように播種した。7日目に、培地交換の前にPCVおよびRIを測定したところ、それぞれ59.3±1.4%および0.54±0.05%であった。7日後の懸濁物の使用済培地を、PCVを変化させずにBO1851と置換し、さらに7日間インキュベートした。アントシアニンの生成は、BO1224培地を含有する対照フラスコと比較した。BO1851で生成されたアントシアニンの量(1369.5±460mg/L PCV)は、対照より2.2倍高かった(表5)。
【0083】
【表5】

【0084】
本開示は、特定の実施形態を強調して記載しているが、特定の実施形態の変更を使用することができ、本開示は本明細書で具体的に記載したものとは別の方法で実施できるものであることは当業者には明らかであろう。したがって、本開示には、以下の特許請求の範囲に記載した本開示の精神および範囲内に包含される変更が全て含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコシノレート混入の減少したアブラナ属天然物調製物を生成する方法であって、
アブラナ属植物カルスを培養するステップと、
グルコシノレート生成の減少したアブラナ属植物カルスを選択するステップと、
選択した前記カルスを懸濁培地で培養して懸濁細胞培養物を得るステップと、
前記懸濁細胞培養物からアブラナ属天然物を回収するステップと
を含むことを特徴とし、
それによってグルコシノレート混入の減少したアブラナ属天然物調製物を生成する方法。
【請求項2】
前記アブラナ属植物カルスの培養は、誘導培地中におけるインビトロ培養によってグルコシノレートの減少した植物カルスの形成を誘導することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘導培地は、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、アルファ−ナフタレン酢酸および6−ベンジルアミノプリンを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記誘導培地は、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸約1mg/L、アルファ−ナフタレン酢酸2mg/Lおよび6−ベンジルアミノプリン約0.1mg/Lを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁培地は2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁培地は2,4−ジクロロフェノキシ酢酸約1.5mg/Lを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記懸濁培地はスクロース約3%から6%(重量/体積)をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁培地は窒素源を欠如し、添加したリン酸を含まないことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
グルコシノレート生成の減少した前記アブラナ属植物カルスは、新鮮細胞重量1グラム当たり全グルコシノレート約5μg未満を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
グルコシノレート生成の減少した前記アブラナ属植物カルスは、新鮮細胞重量1グラム当たり全グルコシノレート約0.06μgから約5μgを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アブラナ属植物カルスは、アカキャベツ植物カルスであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アカキャベツ植物カルスは、ルビーパーフェクション、レッドエーカー、ルビーボール、マンモスレッドロック、バスカロまたはカイロ栽培品種から得られることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
グルコシノレート混入の減少した前記アブラナ属天然物調製物は、アントシアニンを含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記カルスは、子葉、根、胚軸、茎頂、茎、葉または表皮剥片から得られることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載された方法によって生成されたグルコシノレート混入の減少したアブラナ属天然物の調製物。
【請求項16】
キャベツアントシアニンにおけるグルコシノレート混入が100mg/L未満のキャベツアントシアニンの生成方法であって、
第1の懸濁培地中においてグルコシレート生成の減少した赤キャベツ植物カルスを培養し、懸濁細胞培養物を得るステップと、
窒素源の欠如した第2の懸濁培地中において前記懸濁細胞培養物を増殖させるステップと、
前記細胞培養物からキャベツアントシアニンを回収するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
グルコシノレート生成の減少した前記赤キャベツ植物のカルスの培養は、誘導培地中におけるインビトロ培養によってグルコシノレートの減少した前記植物カルスの形成を誘導することを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記誘導培地は、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、アルファ−ナフタレン酢酸および6−ベンジルアミノプリンを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記誘導培地は、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸約1mg/L、アルファ−ナフタレン酢酸約2mg/Lおよび6−ベンジルアミノプリン約0.1mg/Lを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の懸濁培地は、スクロース約3%から8%(重量/体積)を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の懸濁培地は、添加したリン酸を含有しないことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
グルコシノレートが減少した前記赤キャベツ植物カルスは、グルコシノレートが減少したアカキャベツ植物カルスを含むことを特徴とする請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記アカキャベツ植物カルスは、ルビーパーフェクション、レッドエーカー、ルビーボール、マンモスレッドロック、バスカロまたはカイロを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
キャベツアントシアニンにおけるグルコシノレート混入が100mg/L未満のキャベツアントシアニンの生成方法であって、
第1の懸濁培地中においてグルコシレート生成の減少した赤キャベツ植物カルスを培養し懸濁細胞培養物を得るステップと、
初期スクロース濃度がスクロース約3〜8%(w/v)である第2の懸濁培地中において前記懸濁細胞培養物を増殖させるステップと、
前記細胞培養物からキャベツアントシアニンを回収するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記第2の懸濁培地は、スクロース約6%(w/v)の初期スクロース濃度を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−512661(P2012−512661A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542449(P2011−542449)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068559
【国際公開番号】WO2010/080530
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511147274)ダイアナプラントサイエンシズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】