説明

グロメットおよび燃料電池のシール構造体

【課題】組み付け対象物に対して簡単かつ精度よく組み付けることができ、それによって十分な遮音性を得ることができるグロメット、および燃料電池のシール構造体を提供する。
【解決手段】燃料電池を収容する燃料電池ケースCと、その燃料電池ケースCに形成された貫通孔C1に挿通される燃料電池の配管90との間を封止する燃料電池のシール構造体であって、配管90Aに固定される固定部101と、固定部101から貫通孔C1側に向かうに従って徐々に拡径する拡径部102と、拡径部102の固定部101とは反対側に設けられた当接部103と、を有するグロメット100を備え、そのグロメット100が、燃料電池ケースCの貫通孔C1の周囲に、燃料電池ケースCの内側から当接するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材としてのグロメット、および燃料電池のシール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムにおいて、燃料電池を収容する燃料電池ケースと、その燃料電池ケースに形成された貫通孔に挿通される燃料電池の配管との間を、グロメットを用いて封止するシール構造が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
上記の燃料電池システムにおいては、燃料電池ケースに燃料電池を収容した後、グロメットを取り付けた配管を燃料電池ケースの下面に形成された貫通孔を通じて燃料電池に接続する。そして、グロメットを、燃料電池ケースの外側から貫通孔の周囲に当接するようにして燃料電池ケースに取り付けている。
【特許文献1】特開2005−147241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の燃料電池システムにおいては、グロメットを燃料電池ケースの外側から貫通孔にはめ込むようにして取り付けるので、組み付け作業が行い難いという問題がある。また、グロメットを精度よくはめ込まないと、グロメットと燃料電池ケースとの間から当該燃料電池ケース内で発生した音が漏れることがあり、遮音性が十分に得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、組み付け対象物に対して簡単かつ精度よく組み付けることができ、それによって十分な遮音性を得ることができるグロメット、および燃料電池のシール構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のグロメットは、挿通部材と被挿通部材との隙間を封止するグロメットであって、前記挿通部材が挿通される挿通孔を有し、前記挿通孔の一端側に前記挿通部材に固定される固定部を備えると共に、前記挿通孔の他端側に前記被挿通部材に対して前記挿通部材の挿通方向に当接する当接部を備える。
【0007】
この構成において、前記固定部から前記被挿通部材側へと向かうに従い拡径する拡径部を備えると共に、前記拡径部の前記固定部とは反対側に前記当接部が設けられていてもよい。
【0008】
以上の構成によれば、固定部を介して挿通部材(例えば、配管やハーネス等の管状、線状、あるいは棒状の部材)に取り付けられたグロメットの当接部が、挿通部材と被挿通部材(例えば、ケースの壁部やパネル等の板状部材)との隙間を覆うようにして被挿通部材に当接されることになる。すなわち、グロメットを当該隙間の周囲の被挿通部材に押し付けることによって、被挿通部材と挿通部材との隙間を封止することができるので、組み付け作業が行い易い。
【0009】
本発明のグロメットにおいて、前記拡径部は、前記固定部および前記当接部のいずれよりも硬くてもよい。
【0010】
この構成によれば、配管のフランジに接する固定部、および被挿通部材に接する当接部をのぞいた部分に相当する拡径部が、他の部分(固定部および当接部)よりも硬くされる(高剛性とされる)ことにより、拡径部の振動が抑制されるので、拡径部を介して他所へ振動が伝わり難い。したがって、グロメットの遮音性が高められる。
【0011】
本発明のグロメットにおいて、前記固定部は前記挿通部材に設けられたフランジに対して着脱可能な構成とされてもよい。
【0012】
この構成によれば、グロメットが、挿通部材よりも径の大きなフランジに固定されるので、グロメットが安定する。また、グロメットがフランジに対して着脱可能なので、グロメットの交換が容易である。
【0013】
本発明の燃料電池のシール構造体は、前記燃料電池ケースに形成された貫通孔に挿通されて前記燃料電池に接続される配管との間がグロメットにより封止されてなる燃料電池のシール構造体であって、前記グロメットは、前記配管に固定される固定部と、前記固定部から前記燃料電池ケースの壁面側に向かうに従い拡径する拡径部と、前記拡径部の前記固定部とは反対側に設けられた当接部と、を有してなり、前記当接部が前記壁面に開口する前記貫通孔の周囲に前記燃料電池ケースの内側から当接するように配置されている。
【0014】
この構成によれば、固定部を介して配管に取り付けられたグロメットの当接部が、貫通孔を当該グロメットにて覆うようにして燃料電池ケースに当接される。すなわち、燃料電池ケースに形成された貫通孔の周囲にグロメットを内側から押し付けることによって燃料電池ケースと配管との間を封止するので、燃料電池ケースに燃料電池を収容する際の組み付け作業が行い易い。
【0015】
本発明の燃料電池のシール構造体において、前記固定部は前記配管のフランジに固定され、前記フランジには、前記配管に接続される相手方の配管の雄形ジョイントを上向きに挿嵌される雌形ジョイントが形成されていてもよい。
【0016】
この構成では、燃料電池側の配管のフランジに形成された雌形ジョイントに、相手形の配管の雄形ジョイントを上向きに挿嵌することにより、燃料電池側の配管と相手方(水素供給源側)の配管とが接続される。すなわち、雄形ジョイントを上向きに挿嵌するので、雌雄のジョイントを分離する際、配管の内側に泥や埃などの異物が入り込み難い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グロメットを組み付け対象物に対して簡単かつ精度よく組み付けることができ、それによって十分な遮音性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係るグロメットおよび燃料電池のシール構造体の第1の実施形態を説明する。以下、このグロメットおよび燃料電池のシール構造体を、燃料電池車両の車載発電システムに適用した場合について説明するが、本発明はこのような適用例に限らず、船舶、航空機、電車、歩行ロボット等のあらゆる移動体への適用や、例えば燃料電池が建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムへの適用も可能である。
【0019】
図1に示される燃料電池システム1において、酸化ガスとしての空気(外気、被加湿ガス)は、空気供給路71を介して燃料電池20の空気供給口に供給される。空気供給路71には、空気から微粒子を除去するエアフィルタA1、空気を加圧するコンプレッサA3、及び空気に所要の水分を加える加湿器A21が設けられている。エアフィルタA1には、空気流量を検出する図示省略のエアフローメータが設けられている。コンプレッサA3は、モータMによって駆動される。
【0020】
燃料電池20から排出される空気オフガス(酸化オフガス、加湿ガス)は、排気路72を経て外部に放出される。排気路72には、圧力調整弁A4、及び加湿器A21が設けられている。圧力調整弁A4は、燃料電池20への供給空気圧を設定する調圧器として機能する。
【0021】
燃料ガスとしての水素ガスは、水素供給源30から水素供給路74を介して燃料電池20の水素供給口に供給される。水素供給源30は、例えば高圧水素タンクが該当するが、いわゆる燃料改質器や水素吸蔵合金等であっても良い。
【0022】
水素供給路74には、水素供給源30から水素を供給しあるいは供給を停止する遮断弁H100、燃料電池20への水素ガスの供給圧力を減圧して調整する水素調圧弁H9、水素供給路74内の水素ガスの圧力を計測する圧力センサP1、及びインジェクタ80が設けられている。インジェクタ80は、流量調整弁としての機能と、可変調圧弁としての機能とを併せもち、両機能によりストイキ比や背圧を制御する。
【0023】
燃料電池20で消費されなかった水素ガスは、水素オフガス(燃料ガスのオフガス)として水素循環路75に排出され、水素供給路74の水素調圧弁H9の下流側に戻される。水素循環路75には、水素オフガスから水分を回収する気液分離装置H42、回収した生成水を水素循環路75外の図示しないタンク等に回収する排水弁H41、及び水素オフガスを加圧する水素ポンプH50が設けられている。
【0024】
遮断弁H21は、燃料電池20のアノード側を閉鎖する。水素ポンプH50は、制御部50によって動作が制御され、水素供給路74を通じて燃料電池20に水素ガスを供給したり、水素供給路74および水素循環路75を通じて燃料電池20に水素ガスを供給したりすることが可能である。水素オフガスは、水素供給路74で水素ガスと合流し、燃料電池20に供給されて再利用される。
【0025】
水素循環路75は、排出制御弁H51を介して、パージ流路76によって加湿器A21の下流側の排気路72に接続されている。排出制御弁H51は、電磁式の遮断弁であり、制御部50からの指令によって作動することにより、水素オフガスは燃料電池20から排出された空気オフガスとともに外部へ排出(パージ)される。このパージ動作を間欠的に行うことによって、水素ガス中の不純物濃度が増加することによるセル電圧の低下を防止することができる。
【0026】
燃料電池20の冷却水出入口には、冷却水を循環させる冷却路73が設けられている。冷却路73には、冷却水の熱を外部に放熱するラジエータ(熱交換器)C2、及び冷却水を加圧して循環させるポンプC1が設けられている。また、ラジエータC2には、モータによって回転駆動される冷却ファンC13が設けられている。
【0027】
燃料電池20は、水素ガスと空気の供給を受けて電気化学反応により発電する単セルを所要数積層してなる燃料電池スタックとして構成されている。燃料電池20が発生した電力は、図示しないパワーコントロールユニットに供給される。パワーコントロールユニットは、車両の駆動モータに電力を供給するインバータと、コンプレッサモータや水素ポンプ用モータなどの各種の補機類に電力を供給するインバータと、二次電池等の蓄電手段への充電や該蓄電手段からのモータ類への電力供給を行うDC−DCコンバータなどが備えられている。
【0028】
制御部50は、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイなどの公知構成から成る制御コンピュータシステムによって構成されており、図示しない車両のアクセル信号などの要求負荷や燃料電池システム1の各部のセンサ(圧力センサ、温度センサ、流量センサ、出力電流計、出力電圧計等)から制御情報を受け取り、システム各部の弁類やモータ類の運転を制御する。
【0029】
インジェクタ80は、水素ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を備えるとともに、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、このノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に収容保持されて噴射孔を開閉する弁体とを備えている。インジェクタ80の弁体は、例えばソレノイドにより駆動され、このソレノイドに給電されるパルス状励磁電流のオン/オフにより、噴射孔の開口面積(開口状態)を二段階以上の多段階または無段階に切り替えることができる。
【0030】
燃料電池20は、図2に示すように、燃料電池ケースCに収容されている。水素供給路74のうち、インジェクタ80よりも上流側、すなわちインジェクタ80と水素供給源30との間の水素供給路74を形成する配管90の一部は、図示しない支持部材を介して燃料電池20のエンドプレート20Aに固定され、燃料電池ケースCに形成された貫通孔C1に挿通されている。
【0031】
配管90は、インジェクタ80側の配管90Aと、水素供給源30側の配管90Bとに分割されており、双方の接続部分には、配管コネクタ91が設けられている。一方の配管90Aの下端には、配管コネクタ91を構成するコネクタフランジ91Aが溶接などにより接合され、他方の配管90Bの上端には、配管コネクタ91を構成するコネクタフランジ91Bが溶接などにより接合されている。配管90A,90Bは、コネクタフランジ91Aにコネクタフランジ91Bを当接して双方を互いに固定することによって接続される。
【0032】
インジェクタ80側の配管90A、および配管コネクタ91のコネクタフランジ91Aは、燃料電池ケースCの内側に配設されている。コネクタフランジ91Aには、貫通孔C1とコネクタフランジ91Aとの間を封止するグロメット100が設けられている。
【0033】
グロメット100は、図3および図4に示すように、配管コネクタ91のコネクタフランジ91Aに固定される固定部101と、固定部101から配管90Aの径方向外方(言い換えれば、燃料電池ケースCの内底面に沿う面方向外側)に向かうに従って、当該配管90Aの軸方向(言い換えれば、燃料電池ケースCに対する配管90Aの挿通方向)に離間するように断面円弧状に拡径する拡径部102と、拡径部102の固定部101とは反対側に設けられて貫通孔C1の周囲の燃料電池ケースCにその内側から当接する当接部103と、を備えている。
【0034】
つまり、グロメット100は、硬質ゴムの成形品であって、ほぼ半球形に広がった傘形状をなしており、燃料電池ケースCの壁面(内底面)に伏せるように配置されている。グロメット100の頭頂部には、固定部101をなす略菱形の挿通孔が開口している。
【0035】
コネクタフランジ91Aの外周面には、無端の溝が形成されている。この溝にグロメット100の固定部101がはめ合わされ、固定部101が自らの弾力によってコネクタフランジ91Aに締着することにより、グロメット100がコネクタフランジ91Aに着脱可能に固定されている。
【0036】
グロメット100の拡径部102の内部には、グロメット100の弾性を補うバネ体105が配設されている。バネ体105は、グロメット100に、グロメット100自身を燃料電池ケースCの内側の壁面に押し付ける押圧力を付与している。
【0037】
グロメット100の当接部103には、図5に示すように、グロメット100が燃料電池ケースCに押し付けられると容易に変形し、グロメット100と燃料電池ケースCとの間の密封度を高める可変形部107が設けられている。可変形部107は環状の当接部103に沿って同心円状に形成された複数の突条107aからなる。
【0038】
上記のように構成されたグロメット100においては、上面が開放した燃料電池ケースCに、燃料電池20が上方から収容される。このとき、グロメット100が、貫通孔C1を覆うようにして燃料電池ケースCの内側の底面に押し付けられる。燃料電池20が燃料電池ケースCの底面に接地すると、グロメット100はそれ自身が弾性変形した状態を維持しつつ、貫通孔C1とコネクタフランジ91Aとの間を封止する。
【0039】
また、配管90Aよりも径の大きなコネクタフランジ91Aにグロメット100の固定部101が締着されるので、グロメット100が安定する。また、当接部103に設けられた可変形部107を局部的に見ると、可変形部107を構成する複数の突条107aがそれぞれ弾性変形し、燃料電池ケースCの底面に押し付けられる。すなわち、燃料電池ケースCとコネクタフランジ91Aとの間が複数の突条107aによって何重にも封止される。
【0040】
上記のように構成されたグロメット100を用いて貫通孔C1とコネクタフランジ91Aとの間を封止するシール構造によれば、グロメット100を貫通孔C1の周囲の燃料電池ケースCに内側から押し付けることによって燃料電池ケースCとコネクタフランジ91Aとの間を封止するので、燃料電池ケースCに燃料電池20を収容する際の組み付け作業が行い易い。また、燃料電池ケースCとコネクタフランジ91Aとの間が複数の突条107aによって何重にも封止されるので、シール性や遮音性が向上する。
【0041】
経年劣化などの理由により、グロメット100を交換する必要が生じた場合には、燃料電池ケースCから燃料電池20および配管90Aを取り出したうえで、劣化したグロメット100を引っ張り、グロメット100の固定部101を引き伸ばすようにしてコネクタフランジ91Aの溝から外す。そして、新しいグロメット100を、コネクタフランジ91Aに劣化したグロメット100と同様に装着する。このように、グロメット100がコネクタフランジ91Aに着脱可能なので、グロメット100の交換が容易である。
【0042】
なお、本実施形態においては、拡径部102の内部にグロメット100の弾性を補うバネ体105が配設されているが、燃料電池ケースCに対する押圧力がグロメット100自身の弾性によって十分にまかなえる場合はバネ体を設けなくてもよい。また、本実施形態においては、グロメット100の当接部103に、グロメット100と燃料電池ケースCとの間の密封度を高める可変形部107が設けられているが、グロメット100の材質などを適宜選定することにより当接部103に十分な柔軟性が確保される場合は可変形部107を設けなくてもよい。
【0043】
次に、本発明に係るグロメットおよび燃料電池のシール構造体の第2の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態において既に説明した構成要素には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0044】
本実施形態のグロメット200は、図6に示すように、配管コネクタ91のコネクタフランジ91Aに固定される固定部201と、固定部201から配管90Aの径方向外方(言い換えれば、燃料電池ケースCの内底面に沿う面方向外側)に向かうに従って、当該配管90Aの軸方向(言い換えれば、燃料電池ケースCに対する配管90Aの挿通方向)に離間するように断面円弧状に拡径する拡径部202と、拡径部202の固定部201とは反対側に設けられて貫通孔C1の周囲の燃料電池ケースCに内側から当接する当接部203と、を備えている。
【0045】
グロメット200は、硬質ゴムの成形品であって、燃料電池ケースCの壁面(内底面)に伏せるように配置されている点において、第1の実施形態と共通するが、固定部201と当接部203との間に、外面側から内面側に同心円状に凹む凹部が形成された略傘形状をなしている点で、第1の実施形態とは構成を異にしている。グロメット200の頭頂部には、固定部201をなす略菱形の貫通孔が開口している。つまり、この貫通孔の一端側および他端側に固定部201および当接部203がそれぞれ設けられている。
【0046】
グロメット200の当接部203には、第1の実施形態と同様に、グロメット200と燃料電池ケースCとの間の密封度を高める可変形部207が設けられている。可変形部207は、円形状の当接部203に沿って同心円状に形成された複数の突条207aからなる。
【0047】
拡径部202の内側面には、グロメット200を形成する硬質ゴムよりもさらに硬い樹脂製の環状部材210が貼り付けられている。環状部材210の中央には固定部201よりも大きな略菱形の貫通孔が形成されており、この貫通孔にコネクタフランジ91Aがはめ込まれる。つまり、この貫通孔の一端側および他端側に固定部201および当接部203がそれぞれ設けられている。環状部材210は、固定部201および当接部203を除いた部分に相当する拡径部202に密着している。
【0048】
当接部203の外側縁には、環状部材210と同じ材質の環状部材212が貼り付けられている。環状部材212の下縁には、外側に折り曲げられたように広がる鍔部213が形成されている。鍔部213の下面は、グロメット200を貫通孔C1の周囲の燃料電池ケースCに内側から押し付けたとき、複数の突条207aとともに燃料電池ケースCに当接する。
【0049】
上記のように構成されたグロメット200を用いて貫通孔C1とコネクタフランジ91Aとの間を封止するシール構造体によれば、拡径部202の内側面に環状部材210が貼り付けられることにより、拡径部202の剛性が高められる。これにより、拡径部202の振動が抑制されるので、拡径部202を介して他所へ振動が伝わり難い。その結果、グロメット200の遮音性も高められる。
【0050】
また、当接部203の外側縁に環状部材212が貼り付けられることにより、グロメット200の内側から外側への振動の伝播経路となり得る部分が、環状部材210および環状部材212に阻まれて蛇行するように形成されるので、グロメット200の遮音性がさらに向上する。
【0051】
なお、本実施形態においては、グロメット200の本体部分をなす固定部201、拡径部202、および当接部203とは別の硬質な部材をグロメット200に貼り付けたが、硬質な部材を貼り付けるのではなく、グロメット200そのものを硬化して遮音性の向上を図ってもよい。
【0052】
次に、本発明に係るグロメットおよび燃料電池のシール構造体の第3の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態において既に説明した構成要素には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0053】
本実施形態においては、グロメット100を固定される配管90Aと、水素供給源30側の配管90Bとの接続部分に設けられた配管コネクタ111が、雌雄のジョイントをはめ合わせる構造となっている。具体的には、図7に示すように、配管90Aには、雌形ジョイント112を有するコネクタフランジ111Aが溶接などにより接合され、配管90Bには、雌形ジョイント112に挿嵌される雄形ジョイント113を有するコネクタフランジ111Bが溶接などにより接合されている。雄形ジョイント113は、雌形ジョイント112に対して上向きに挿嵌される。
【0054】
雄形ジョイント113の外周面には無端の溝が形成され、この溝にゴム製のOリング114が嵌着されている。Oリング114は、雄形ジョイント113が雌形ジョイント112に挿嵌されたときに雌形ジョイント112の内周面に圧接する。
【0055】
上記のように構成された配管コネクタ111を用いて貫通孔C1とコネクタフランジ91Aとの間を封止するシール構造体によれば、コネクタフランジ111Aの雌形ジョイント112に対し、コネクタフランジ111Bの雄形ジョイント113を上向きに挿嵌するので、グロメット100の交換などのために雌雄のジョイントを分離する際、配管コネクタ111に泥や埃などの異物が付着していたとしても、それら異物が雄形ジョイント113を越えて配管90Bの内側に入り込むことがない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施形態を示す図であって、燃料電池と、燃料電池に固定された配管と、燃料電池を収容する燃料電池ケースとを示す概略図である。
【図3】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施形態を示す図であって、配管に取り付けられたグロメットを上方からみた平面図である。
【図4】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施形態を示す図であって、図3のグロメットを図中のIV−IV線に沿う破断面を示す断面図である。
【図5】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施形態を示す図であって、グロメットに設けられた当接部の拡大断面図である。
【図6】本発明に係る燃料電池システムの第2の実施形態を示す図であって、グロメットの一部を破断した断面図である。
【図7】本発明に係る燃料電池システムの第3の実施形態を示す図であって、配管およびその配管に取り付けられたグロメットを破断した断面図である。
【符号の説明】
【0057】
20…燃料電池、90A,90B…配管(挿通部材)、91A,91B…コネクタフランジ、100…グロメット、101…固定部、102…拡径部、103…当接部、107a…突条、200…グロメット、C…燃料電池ケース(被挿通部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通部材と被挿通部材との隙間を封止するグロメットであって、
前記挿通部材が挿通される挿通孔を有し、
前記挿通孔の一端側に前記挿通部材に固定される固定部を備えると共に、前記挿通孔の他端側に前記被挿通部材に対して前記挿通部材の挿通方向に当接する当接部を備えるグロメット。
【請求項2】
請求項1に記載のグロメットにおいて、
前記固定部から前記被挿通部材側へと向かうに従い拡径する拡径部を備えると共に、前記拡径部の前記固定部とは反対側に前記当接部が設けられているグロメット。
【請求項3】
請求項2に記載のグロメットにおいて、
前記拡径部は、前記固定部および前記当接部のいずれよりも硬いグロメット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のグロメットにおいて、
前記固定部は、前記挿通部材に設けられたフランジに対して着脱可能な構成とされているグロメット。
【請求項5】
燃料電池を収容する燃料電池ケースと、前記燃料電池ケースに形成された貫通孔に挿通されて前記燃料電池に接続される配管との間がグロメットにより封止されてなる燃料電池のシール構造体であって、
前記グロメットは、前記配管に固定される固定部と、前記固定部から前記燃料電池ケースの壁面側に向かうに従い拡径する拡径部と、前記拡径部の前記固定部とは反対側に設けられた当接部と、を有してなり、前記当接部が前記壁面に開口する前記貫通孔の周囲に前記燃料電池ケースの内側から当接するように配置されている燃料電池のシール構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池のシール構造体において、
前記固定部は、前記配管のフランジに固定され、
前記フランジには、前記配管に接続される相手方の配管の雄形ジョイントを上向きに挿嵌される雌形ジョイントが形成されている燃料電池のシール構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−144806(P2008−144806A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330728(P2006−330728)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】