説明

ケトチフェンの眼科用製剤および使用方法

本発明は、眼へ点眼した場合に快適な製剤をなし、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するのに有効であるケトチフェンの局所製剤を提供する。本発明は、眼アレルギーの治療を必要とする被験体において眼アレルギーを、治療および予防する方法であって、本発明のケトチフェン製剤をそれらの製剤を必要とする被験体の眼に局所適用することによって行う方法をさらに提供する。本発明は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための快適な局所眼科用製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2009年3月17日に出願された米国仮特許出願第61/160,918号、および2009年5月1日に出願された米国仮特許出願第61/174,675号の利益を主張し、これらの米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ケトチフェンを含む眼科用製剤、ならびに眼アレルギーを治療および予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を有効に治療するための局所眼科用医薬品が必要とされており、アレルギー性結膜炎は、眼の痒み、発赤、結膜浮腫、流涙および腫張の臨床的な徴候および症状により特徴付けられ、米国では、その有病率が20%を上回ると推定されている障害である。アレルギー性結膜炎の徴候および症状は、患者の生活の質に、社会的相互作用、職場および学校における生産性に、視覚的タスク、例として、コンピュータでの作業または読書を行う能力に対して、顕著な影響を及ぼす恐れがある。
【0004】
肥満細胞が、眼アレルギーに関与する主要な細胞であり、アレルゲン(花粉、ほこり、フケ)により刺激されると、アレルギー性結膜炎の徴候および症状(痒み、発赤、腫張および流涙)を発生させる多くの物質を放出する。ヒスタミンが、放出される主要メディエーターであり、神経終末および血管の受容体を刺激して、痒みおよび発赤を発生させる。眼表面で同定されている、2つのヒスタミン受容体がある。神経終末のH1受容体が痒みをもたらし、血管のH1受容体およびH2受容体が血管拡張を起こして、発赤、および腫脹を発生させる、血管から周囲組織への体液の漏出をもたらす。また、アレルギー性結膜炎は、その他の外部の眼の状態および疾患、例として、眼乾燥、または汚染物質もしくはその他の原因により引き起こされた過敏と共存する場合もある。こうした共存する症状により、アレルゲンから眼表面を保護するように働く涙液膜が損なわれる。
【0005】
眼アレルギーのための現時点で利用可能な治療薬は、眼表面からアレルゲンを洗い流し、眼のためのバリアとして作用することができる滴剤(例えば、人工涙液)、ヒスタミンのヒスタミン受容体への結合を遮断する薬物(例えば、抗ヒスタミン剤)、肥満細胞からのヒスタミンおよびその他の物質の放出を遮断する薬物(例えば、肥満細胞安定化剤)、複数の作用機序を有する薬物(例えば、抗ヒスタミン剤/肥満細胞安定化剤)、ステロイド、NSAID、ならびに血管を能動的に収縮させ、したがって、発赤および腫脹を低下させることができる薬物(例えば、血管収縮剤)を含む。患者のために薬剤の適切性を評価する際に考慮することができる判定基準は、作用開始のとき有効性、作用の持続期間、ならびに薬剤がアレルギー性結膜炎の個々の徴候および症状を制御する良好さの程度、眼へ点眼した場合の滴剤の快適さを含む。眼科用製品の快適さは、薬学的活性成分自体にも、その製品を構成する製剤およびビヒクルの性質にも依存する。例えば、経口抗ヒスタミン剤は、涙液産生の減少を誘発し、眼表面の乾燥を起こすことが示されており、涙液の減少および眼の乾燥は、眼科用製品による刺激に対して眼を感受性にさせる。
【0006】
フマル酸ケトフェチンは、抗ヒスタミン特性、肥満細胞安定化特性および抗炎症特性を有する医薬品である。フマル酸ケトフェチンは現時点では、米国においては、0.025%フマル酸ケトフェチン眼科用液剤として、商品名Alaway(商標)(Bausch and Lomb)およびZaditor(商標)(Novartis)の下で承認されており、一般用医薬品(over−the−counter)としての販売について、その他の名前の下でも承認されていた。また、ケトチフェンは、日本および南アメリカを含めた、その他の国においても、0.05%製剤として承認されている。
【0007】
米国では、この0.025%製剤は、アレルギー性結膜炎に起因する眼の痒みの一時的な予防のために、1日2回の投薬について適応である。比較対照臨床試験(controlled clinical study)では、この製剤は、最長12時間の作用の持続期間を有することが示されている。一般に、米国以外の国では入手可能である、より高い濃度のフマル酸ケトフェチン製剤(すなわち、0.05%)は、眼へ点眼した場合に快適さが劣り、眼表面における刺痛/灼熱痛を発生させることが公知である。種々のケトチフェン眼科用製剤が記載されている。例えば、特許文献1は、0.01〜0.04%フマル酸ケトフェチンを含み、210〜290mOsmの範囲の容量オスモル濃度を有するケトチフェン製剤を記載している。特許文献2は、0.01〜0.05%フマル酸ケトフェチンを含み、400〜875mOsmの範囲の容量オスモル濃度を有する眼科用ケトチフェン製剤を記載している。特許文献3は、0.025〜0.10%フマル酸ケトフェチンを含む眼科用ケトチフェン製剤であって、その中で、ケトチフェンが、代用涙液と共に製剤化されて、より高い濃度における快適さが増加している製剤を記載している。特許文献4は、0.01〜0.10%フマル酸ケトフェチンを含み、過酸化水素を保存剤として含有する眼科用ケトチフェン製剤を記載している。0.025%超の濃度のフマル酸ケトフェチンのより快適な製剤が望ましい。これは、それらの製剤であれば、有効性の増加をもたらし、かつ/または所望される治療効果を達成するのに、頻度のより少ない投与(例えば、1日1回)を必要とすることによる。
【0008】
(塩酸塩の形態をとる)ナファゾリンは、2−(1−ナフチルメチル)−2−イミダゾリン塩酸塩の一般名である。ナファゾリンは、著しいアルファアドレナリン作動活性を示す交感神経様作用剤である。ナファゾリンは、種々の眼科用製剤、例として、Visine A(商標)(0.025%)およびAlbalon(商標)、Nafazir(商標)、Napheon(商標)およびOpcon(商標)において、血管収縮剤として使用されており、それらのそれぞれが、ナファゾリンを、0.10%の濃度で含有する。特許文献5は、ケトチフェン(ketoifen)(0.001〜0.20%)およびナファゾリン(0.001〜0.20%)の、5未満のpHを有する安定化させた眼科用製剤を記載している。
【0009】
フルチカゾンは、強力な合成副腎皮質ステロイドである。現存する製品は、喘息およびアレルギー性鼻炎を治療するための鼻への投与のため、または湿疹および乾癬を治療するためのクリーム剤および軟膏剤として製剤化されている。米国特許出願公開第20060263350号は一般に、アレルギー性鼻炎を治療するための、ケトチフェンであり得る抗ヒスタミン剤およびフルチカゾンであり得るステロイドを含む製剤を記載している。
【0010】
オキシメタゾリンは、選択的アルファ−1アゴニストおよび部分アルファ−2アゴニストの局所うっ血除去剤であり、市販されている鼻スプレーにおいて、オキシメタゾリン塩酸塩の形態で使用されている。オキシメタゾリンは、交感神経様作用特性を有し、したがって、鼻および副鼻腔の血管を、アルファ−2アドレナリン作動性受容体の活性化を介して収縮させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,774,137号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0148899号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0239745号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0048389号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0208058号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための快適な局所眼科用製剤を提供する。また、相乗的に作用して、眼アレルギーの徴候および症状、特に、眼の痒み、発赤、腫張および鼻の症状を和らげる成分の組合せを含有する製品も提供する。特に、本明細書に記載する製剤は、眼へ点眼した場合に快適な眼科用製剤として、眼科における使用に適したケトチフェンまたはその薬学的に許容される塩を提供する。また、本発明は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎の治療を必要とする被験体の、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための方法も提供し、この方法は、本発明のケトチフェン製剤を被験体の眼に直接局所投与することによって行う。
【0013】
本発明は、痒みの緩和時間により定義した場合、現時点で販売されているケトチフェン眼科用液剤の濃度を上回る、ケトチフェン濃度の最低限(marginal)の増加により、有効性の最低限を上回る増加が発生するという驚くべき発見に部分的に基づく。特定の実施形態では、本発明は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤において唯一の活性薬剤としてのケトチフェンを有する眼科用製剤を提供する。本明細書に記載するそのような製剤は、眼アレルギーのためにすでに承認されているケトチフェン製剤(例えば、Zaditor(商標)、0.025%ケトチフェン液剤、および米国以外の国で上市されている0.05%ケトチフェン液剤)を上回る優れた有効性および快適さのプロファイルをもたらし、眼アレルギーのために現時点で上市されている製剤よりも必要な投薬頻度を減らす。注目すべきことには、1日1滴の本明細書に記載するケトチフェン製剤により、眼アレルギーの徴候および症状(例えば、眼の痒み)を、少なくとも16時間、最長24時間和らげることができる。より注目すべきことには、本明細書において記載し、試験するケトチフェン製剤は、現時点で販売されているケトチフェン製品と比較して、より有利に働く。後者は、2倍ものAPI濃度を有するが、BID投薬(すなわち、1日2回)を維持するのみの持続期間しか有さないが、一方、本発明のケトチフェン製剤の有効性は、QD投薬(すなわち、1日1回)を維持する。
【0014】
また、本発明は、オキシメタゾリン、ナファゾリンおよびフルチカゾンから選択された1つ以上の追加の活性成分と組み合わせたケトチフェン眼科用製剤も提供する。そのような組合せ製剤は、眼アレルギー、とりわけ、アレルギー性結膜炎の症状、例として、発赤、結膜浮腫、瞼腫張および鼻の症状をさらに緩和するのにも有効である。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の眼科用製剤は、代用涙液またはその構成成分を含む。特定の実施形態では、代用涙液またはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースもしくはHPMC)を含む。いくつかの実施形態によれば、HPMCの濃度は、約0.5%〜約2%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。いくつかの実施形態によれば、HPMCの濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。好ましい実施形態では、HPMCの濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%または約0.90%)をとる。
【0016】
別の特定の実施形態では、代用涙液またはその構成成分は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。いくつかの実施形態によれば、CMCの濃度は、約0.5%〜約2%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。いくつかの実施形態によれば、CMCの濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。好ましい実施形態では、CMCの濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%または約0.90%)をとる。
【0017】
さらに別の特定の実施形態では、本発明の眼科用製剤は、ポリマーの粘膜接着性ビヒクルを含む。本発明の方法または製剤において使用するのに適した粘膜接着性ビヒクルの例として、これらに限定されないが、非限定的に、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone)、多糖ゲル、Gelrite(登録商標)、セルロース誘導体のポリマーを含めた、1つ以上のポリマー懸濁化剤を含む水性のポリマー懸濁液、およびカルボキシ含有ポリマー系が挙げられる。特定の実施形態では、ポリマー懸濁化剤は、架橋結合したカルボキシ含有ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含む。本発明の局所の眼科用製剤において使用するのに適した架橋結合したカルボキシ含有ポリマー系の例として、これらに限定されないが、Noveon AA−1、Carbopol(登録商標)および/もしくはDuraSite(登録商標)(InSite Vision)が挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、本発明の眼科用製剤は、約30〜約150センチポアズ(cpi)、好ましくは、約50〜約120cpi、さらにより好ましくは、約60〜約115cpiの範囲の(または前記範囲に属する任意の特定の値をとる)粘度を有する。好ましい実施形態によれば、本発明の眼科用製剤は、約60〜約80cpiの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値(すなわち、約60cpi、約61cpi、約62cpi、約63cpi、約64cpi、約65cpi、約66cpi、約67cpi、約68cpi、約69cpi、約70cpi、約71cpi、約72cpi、約73cpi、約74cpi、約75cpi、約76cpi、約77cpi、約78cpi、約79cpiまたは約80cpi)をとる粘度を有する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、代用涙液およびその構成成分、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、ならびに任意のその他の型の遮蔽剤(すなわち、ケトチフェンの眼への局所投与のときに引き起こされる、眼の任意の刺痛または灼熱痛の感覚を隠す、ごまかすまたは軽減するために使用される薬剤)を含まない。
【0020】
好ましくは、本発明のケトチフェン製剤は、フマル酸ケトフェチンからなる。
【0021】
特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、グリセロールをさらに含む。特定の実施形態では、製剤におけるグリセロールの濃度は、2%〜3%(v/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値である。
【0022】
必要に応じて、本発明のケトチフェン製剤は、保存剤、好ましくは、塩化ベンザルコニウムまたは安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))もさらに含む。特定の実施形態では、製剤における塩化ベンザルコニウムの濃度は、0.005%〜0.02%(v/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値(例えば、0.01%)である。一実施形態では、この製剤のpHは、5.0と7との間、好ましくは、5.0と6.5との間、最も好ましくは、約5.5である。一実施形態では、この製剤は、水性製剤である。一実施形態では、この製剤は、保存剤を含有しない単回用量単位の形態をとる。
【0023】
一実施形態では、本発明は、ケトチフェン(またはその薬学的に許容される塩)を、製剤における唯一の活性薬剤として含む眼科用製剤を提供し、ケトチフェンの濃度は、0.01%〜0.20%、好ましくは、0.02%〜0.04%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)であり、この製剤のpHは5.5と7との間であり、この製剤は、代用涙液およびその構成成分、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、ならびに過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は、290mOsm超かつ400mOsm未満である。この実施形態の特定の態様では、ケトチフェンは、フマル酸ケトフェチンの形態をとる。必要に応じて、この製剤は、保存剤、好ましくは、塩化ベンザルコニウムまたは安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))もさらに含む。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトフェチン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、21.25mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたもので、この製剤は、代用涙液およびその構成成分、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、ならびに過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は255mOsm/kgである。別の好ましい実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトフェチン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、28.75mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたもので、この製剤は、代用涙液およびその構成成分、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、ならびに過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は345mOsm/kgである。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、ケトチフェンまたはその薬学的に許容される塩を含む眼科用製剤を提供し、この製剤のpHは5超であり、重量オスモル濃度は400mOsm未満である。一実施形態では、ケトチフェンの濃度は、0.01%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。一実施形態では、この製剤のpHは、5.5と7との間である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225〜390mOsmである。一実施形態では、この製剤は、代用涙液またはその構成成分をさらに含む。特定の実施形態では、代用涙液またはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースを含有する。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%、好ましくは、0.7%〜0.9%の濃度で存在し、その結果得られる製剤の粘度は、およそ60〜80cpiである。一実施形態では、この製剤は、保存剤、好ましくは、塩化ベンザルコニウムまたは安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))をさらに含む。特定の一実施形態では、この製剤は、カルボキシメチルセルロースおよび安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))を含む。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、ケトチフェンおよびナファゾリン、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む眼科用製剤を提供し、この製剤のpHは5超であり、重量オスモル濃度は400mOsm未満である。一実施形態では、ケトチフェンは、フマル酸ケトフェチンの形態をとる。一実施形態では、ナファゾリンは、ナファゾリン塩酸塩の形態をとる。一実施形態では、ケトチフェンの濃度は、0.01%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。一実施形態では、ナファゾリンの濃度は、0.001%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。一実施形態では、この製剤のpHは、5.5と7との間である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225〜390mOsmである。一実施形態では、この製剤は、代用涙液またはその構成成分をさらに含む。特定の実施形態では、代用涙液またはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースを含有する。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%、好ましくは、0.7%〜0.9%の濃度で存在し、その結果得られる製剤の粘度は、およそ60〜80cpiである。一実施形態では、この製剤は、保存剤、好ましくは、塩化ベンザルコニウムまたは安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))をさらに含む。特定の一実施形態では、この製剤は、カルボキシメチルセルロースおよび安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))を含む。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、ケトチフェンおよびフルチカゾン、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む眼科用製剤を提供する。一実施形態では、ケトチフェンは、フマル酸ケトフェチンの形態をとる。一実施形態では、ケトチフェンの濃度は、0.001%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。一実施形態では、フルチカゾンの濃度は、0.001%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。好ましくは、フルチカゾンの濃度は、0.001%〜0.01%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。特定の実施形態では、フルチカゾンの濃度は、0.005%(w/v)である。一実施形態では、この製剤のpHは、4と7との間である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225〜400mOsmである。別の実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、400〜875mOsmである。一実施形態では、この製剤は、代用涙液またはその構成成分をさらに含む。特定の実施形態では、代用涙液またはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースを含有する。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%、好ましくは、0.7%〜0.9%の濃度で存在し、その結果得られる製剤の粘度は、およそ60〜80cpiである。一実施形態では、この製剤は、保存剤、好ましくは、塩化ベンザルコニウムまたは安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))をさらに含む。特定の一実施形態では、この製剤は、カルボキシメチルセルロースおよび安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))を含む。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、ケトチフェンおよびオキシメタゾリン、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む眼科用製剤を提供する。一実施形態では、ケトチフェンは、フマル酸ケトフェチンの形態をとる。一実施形態では、ケトチフェンの濃度は、0.001%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。一実施形態では、オキシメタゾリンの濃度は、0.001%〜0.20%(w/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値である。一実施形態では、この製剤のpHは、4と7との間である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225〜400mOsmである。別の実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、400〜875mOsmである。一実施形態では、この製剤は、代用涙液またはその構成成分をさらに含む。特定の実施形態では、代用涙液またはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースを含有する。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%、好ましくは、0.7%〜0.9%の濃度で存在し、その結果得られる製剤の粘度は、およそ60〜80cpiである。一実施形態では、この製剤は、保存剤、好ましくは、塩化ベンザルコニウムまたは安定化オキシクロロ複錯体(Purite(登録商標))をさらに含む。特定の一実施形態では、この製剤は、カルボキシメチルセルロースおよび安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))を含む。
【0029】
また、本発明は、眼アレルギーの症状を治療および予防する方法も提供し、それらの方法は、本発明のケトチフェン製剤を、そのような治療および予防を必要とする被験体の眼に投与することによって行う。好ましくは、被験体は、ヒト被験体である。また特定の実施形態では、本発明の方法は、眼アレルギーに伴う鼻の症状を治療するのにも有効である。
【0030】
一実施形態では、本発明の方法は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としてのケトチフェン(またはその薬学的に許容される塩)の有効量を含む眼科用製剤を、被験体の眼に局所投与するステップを含み、ケトチフェンの濃度は、0.01%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)であり、この製剤のpHは5超であり、この製剤は、代用涙液およびその構成成分、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、ならびに過酸化水素を含まない。
【0031】
特定の実施形態では、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎の治療および予防を必要とする被験体の、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための方法は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としてのケトチフェン(またはその薬学的に許容される塩)、グリセロールおよび塩化ベンザルコニウムを含む眼科用製剤を、被験体の眼に局所投与するステップを含み、ケトチフェンの濃度は、0.01%〜0.20%、好ましくは、0.02%〜0.04%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)であり、この製剤におけるグリセロールの濃度は、2%〜3%(v/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値であり、この製剤のpHは、5.0と7との間、好ましくは、5.0と6.5との間、最も好ましくは、約5.5であり、この製剤の重量オスモル濃度は、290mOsm超かつ400mOsm未満であり、この製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含まない。
【0032】
別の特定の実施形態では、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための方法は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としてのケトチフェン(またはその薬学的に許容される塩)の有効量を含む眼科用製剤を、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎の治療および予防を必要とする被験体の眼に投与するステップを含み、ケトチフェンの濃度は約0.035%(w/v)であり、この製剤のpHは約5.5であり、この製剤の重量オスモル濃度は、300〜350mOsmの間(または前記範囲に属する任意の特定の値)であり、この製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含まない。
【0033】
好ましい実施形態では、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎の治療および予防を必要とする被験体の、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための方法は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトフェチン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、21.25mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたケトチフェン製剤を、被験体の眼に局所投与するステップを含み、この製剤は、代用涙液およびその構成成分、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、ならびに過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は255mOsm/kgである。別の好ましい実施形態では、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎の治療および予防を必要とする被験体の、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための方法は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトフェチン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、28.75mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたケトチフェン製剤を、被験体の眼に局所投与するステップを含み、この製剤は、代用涙液およびその構成成分、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、ならびに過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は345mOsm/kgである。
【0034】
別の実施形態では、この方法は、ケトチフェンおよびナファゾリン、またはそれらの薬学的に許容される塩の有効量を含む眼科用製剤を、被験体の眼に投与するステップを含み、この製剤のpHは5超であり、重量オスモル濃度は400mOsm未満である。別の実施形態では、この方法は、ケトチフェンおよびフルチカゾンの有効量を含む眼科用製剤を、被験体の眼に投与するステップを含む。別の実施形態では、この方法は、ケトチフェンおよびオキシメタゾリンの有効量を含む眼科用製剤を、被験体の眼に投与するステップを含む。
【0035】
1つの特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤を、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するために、1日2回投与する。別の特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤を、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するために、1日1回投与する。
【0036】
本発明は、眼科において使用するために製剤化した、ケトチフェンの薬学的組成物およびそのような使用のための指示を含むキットも提供する。本発明のその他の特色および利点が、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、ビヒクル対照と比較した場合の、眼の痒みを低下させる0.035%ケトチフェン製剤(255mOsm/kg)の有効性を描写する線グラフである。
【図2】図2は、ビヒクル対照と比較した場合の、被験体の眼への点眼時の0.035%ケトチフェン(255mOsm/kg)製剤の滴の快適さを描写する線グラフである
【図3】図3は、ビヒクル対照と比較した場合の、眼の痒みを低下させる0.035%ケトチフェン製剤(345mOsm/kg)の有効性を描写する線グラフである。
【図4】図4は、ビヒクル対照と比較した場合の、被験体の眼への点眼時の0.035%ケトチフェン製剤(345mOsm/kg)の滴の快適さを描写する線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ケトチフェンの安定な局所眼科用製剤が、代用涙液またはその構成成分(例えば、セルロース誘導体)を同時に使用しなくても、眼への投与のときに快適であり、かつ眼アレルギーの症状を低下させるのに有効であるという発見に部分的に基づく。驚くべきことに、本発明のケトチフェン製剤の1日1回の投与薬が、眼アレルギーの症状、特に、眼の痒みを、少なくとも16時間、最長24時間緩和するのに有効である。眼への投与のときのそのような快適さ、および有効性のそのような持続期間は、これまでに達成されたことがない。本明細書に記載するケトチフェン製剤の並外れた有効性は、組み合わせると、眼への使用のために承認されているこれまでのケトチフェン液剤を上回る優れた快適さおよび有効性をもたらす、眼科用液剤のための最適なケトチフェン濃度および最適な重量オスモル濃度範囲を同定したことによるものである。本明細書に記載する快適な眼科用製剤は、眼アレルギーに伴う徴候および症状ならびに関連の眼の不快感を治療および予防するための、そのような製剤の使用における患者のコンプライアンスを高める。
【0039】
また、本発明の特徴は、有効量のケトチフェン、および必要に応じて1つ以上の代用涙液またはその構成成分を、薬学的に許容されるキャリアに含む新規の薬学的組成物でもある。ケトチフェン構成成分は、眼アレルギーの症状の緩和をもたらし、1つ以上の代用涙液またはその構成成分は、(涙液膜の崩壊時間の増加により明らかである)涙液膜の増強を介して眼表面の保護をもたらす。有効量の製剤を使用して、眼アレルギーに伴う徴候および症状、ならびに/または一般的な眼の過敏を、治療ならびに予防することができ、また、そうした製剤が、別の眼障害のための薬物を含有する場合には、そうした製剤を使用して、その障害も治療することができる。そのような製剤は、眼へ点眼した場合、快適な眼科用製剤をもたらし、そのようなその他の薬剤と組み合わさらないケトチフェン製剤を上回る有効性および作用の持続期間の増強を示す。
【0040】
この組合せケトチフェン/代用涙液製剤の優れた有効性は、とりわけ、それらの製剤における成分の組合せの相乗的な効果に起因する。ケトチフェンと代用涙液またはその構成成分との組合せは相乗的に作用して、眼表面におけるケトチフェンのより長い滞留時間をもたらし、したがって、作用の持続期間および有効性を増加させ、涙液膜の完全性を延長し、それによって、(例えば、涙液膜の崩壊時間および/または眼の保護指数を増加させることによって)眼表面の保護をもたらす。したがって、本発明の組合せケトチフェン/代用涙液製剤は、眼へ点眼しても快適であり、急性または慢性の眼アレルギーの緩和のために使用することができ、特に、断続的使用および長期使用の両方に適している。
【0041】
製剤
本発明の文脈では、ケトチフェンの全ての濃度を、ケトチフェン遊離塩基について示す。当業者であれば、フマル酸ケトフェチン塩の対応する濃度は、ケトチフェン遊離塩基の濃度に1.375を掛けることによって計算することができることを認識する。例えば、非限定的に、0.035%ケトチフェン遊離塩基は、0.0481%フマル酸ケトチフェン塩と同等である(0.035%×1.375=0.0481%)。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、ケトチフェンまたはその薬学的に許容される塩を、0.01%〜0.20%(w/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で製剤化する。特定の実施形態では、ケトチフェンを、0.01%〜0.025%、0.025%〜0.050%、0.050%〜0.075%、0.075%〜0.1%、0.1%〜0.15%、0.15%〜0.175%もしくは0.175%〜0.2%(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で製剤化する。特定の実施形態では、ケトチフェンを、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%、0.10%、0.12%、0.15%、0.18%または0.20%で製剤化する。好ましくは、ケトチフェンは、フマル酸ケトチフェンの形態をとる。
【0043】
一実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェンを、唯一の活性成分として、この眼科用製剤において、0.01%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で含み、重量オスモル濃度は290mOsm超である。一実施形態では、重量オスモル濃度は、400mOsm未満である。別の実施形態では、重量オスモル濃度は、290mOsm超かつ400mOsm未満(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。特定の実施形態では、ケトチフェンの濃度は、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%または0.10%である。別の実施形態では、フマル酸ケトチフェンの濃度は、0.15%、0.25%、0.35%、0.45%、0.55%、0.65%、0.75%、0.85%、0.95%または0.20%である。好ましくは、ケトチフェンは、フマル酸ケトチフェンの形態をとる。
【0044】
好ましくは、本発明による薬学的組成物を、局所投与のために、液剤、懸濁剤、軟膏剤、ジェル剤、乳剤およびその他の剤形として製剤化する。水溶液が一般に好ましく、これは、製剤化の簡便性、および患者が、そのような組成物を冒されている眼に1〜2滴の液剤を点眼することにより容易に投与することができることに基づく。しかしまた、組成物は、懸濁剤、粘ちょう性もしくは半粘ちょう性のジェル剤であってもよく、またはその他の型の固体もしくは半固体の組成物であってもよい。一実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、水性製剤である。本発明の水性製剤は典型的には、50重量%超、好ましくは、75重量%超、最も好ましくは、90重量%超が水である。別の実施形態では、このケトチフェン製剤は、凍結乾燥製剤である。
【0045】
活性薬剤
ケトチフェンは、本発明の製剤における主要な活性薬剤である。しかし、ケトチフェンを、本明細書に記載するその他の活性薬剤と共に製剤化することができる。例えば、ケトチフェンを、1つ以上の追加の抗アレルギー剤と共に製剤化することができる。用語「抗アレルゲン性剤(anti−allergenic agent)」は、眼アレルギーを治療するか、または眼アレルギーの症状を低下させる分子または組成物を指す。用語「眼アレルギー」は、眼の任意のアレルギー性疾患、例えば、季節性/通年性アレルギー性結膜炎、春季角結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、通年性アレルギー性結膜炎、都市型アレルギーおよびアトピー性角結膜炎を指す。眼アレルギーの徴候および症状は、結膜浮腫、眼の痒み、流涙、発赤および腫脹を含む。抗アレルギー剤の非限定的な例として、「抗ヒスタミン剤」つまりヒスタミンのヒスタミン受容体への結合を遮断する薬物、「肥満細胞安定化剤」つまり肥満細胞からのヒスタミンおよびその他の物質の放出を遮断する薬物、「複数の作用機序を有する薬物」つまり複数の作用機序を有する抗アレルゲン性剤である薬物(例えば、抗ヒスタミン剤かつ肥満細胞安定化剤である薬物、抗ヒスタミン活性、肥満細胞安定化活性および抗炎症活性を有する薬物等)、ステロイド、抗炎症薬ならびに非ステロイド性抗炎症薬つまり「NSAID」が挙げられる。
【0046】
特定の実施形態では、ケトチフェンを、肥満細胞安定化剤、例として、ネドクロミル、ロドキサミド(iodoxamide)、クロモリンもしくはクロモリンナトリウム;非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)、例として、ジクロフェナクもしくはケトロラク、トロメタミン;血管収縮剤、例として、ナファゾリン、アントラジン(antolazine)もしくはテトラヒドロゾリン(tetrahydozoline);外用ステロイド(steriod)、例として、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、ジフロラゾン、トリアムシノロン(triaminicinolone)、クロベタゾール、ジフルプレドナート、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ハロベタゾールもしくはモメタゾン;抗ヒスタミン剤(antihistimine)、例として、アステミゾール、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、デスロラタジン(desloratidine)、デクスブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、レボカバスチン、レボセチリジン、ロラタジン(loratidine)、メキタジン、ミゾラスチン、オロパタジン、オキサトミド、フェニンダミン、フェニラミン、ピリラミン、テルフェナジン(terfenidine)およびトリプロリジン;またはアルファ−アドレナリン作動性アゴニスト、例として、エピネフリン、フェノキサゾリン、インダナゾリン(indanazoline)、ナファゾリン、オキセドリン、フェニレフリン、テファゾリン(tefazoline)、テトリゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリンもしくはキシロメタゾリンから選択される1つ以上の追加の活性薬剤と共に製剤化する。
【0047】
特定の実施形態では、ケトチフェンを、オキシメタゾリン、ナファゾリンおよびフルチカゾンから選択された1つ以上の追加の活性薬剤と共に製剤化する。
【0048】
代用涙液
用語「代用涙液」は、眼に投与すると、潤滑し、「湿らせ」、内因性の涙の粘稠度に近づけ、自然の涙液の増強を援助するか、または別の場合には、眼に投与することにより、眼乾燥の症状および状態の一時的な緩和をもたらす分子または組成物を指す。多様な代用涙液が、当技術分野で公知であり、それらとして、これらに限定されないが、単量体ポリオール、例として、グリセロール、プロピレングリコールおよびエチレングリコール;ポリマーポリオール、例として、ポリエチレングリコール;セルロースエステル、例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロース;デキストラン、例として、デキストラン70;水溶性タンパク質、例として、ゼラチン;ビニルポリマー、例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポビドン、ならびにカルボマー、例として、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940およびカルボマー974Pが挙げられる。多くのそのような代用涙液が市販されており、それらとして、これらに限定されないが、セルロースエステル、例として、Bion Tears(登録商標)、Celluvisc(登録商標)、Genteal(登録商標)、OccuCoat(登録商標)、Refresh(登録商標)、Systane(登録商標)、Teargen II(登録商標)、Tears Naturale(登録商標)、Liquigel(登録商標)、Tears Natural II(登録商標)、Tears Naturale Free(登録商標)、およびTheraTears(登録商標);ならびにポリビニルアルコール、例として、Akwa Tears(登録商標)、HypoTears(登録商標)、Moisture Eyes(登録商標)、Murine Lubricating(登録商標)、およびVisine Tears(登録商標)、Soothe(登録商標)が挙げられる。また、代用涙液は、パラフィンから構成されてもよく、例として、Lacri−Lube(登録商標)軟膏剤が市販されている。代用涙液として使用されるその他の市販されている軟膏剤には、Lubrifresh PM(登録商標)、Moisture Eyes PM(登録商標)およびRefresh PM(登録商標)がある。
【0049】
本発明の1つの好ましい実施形態では、代用涙液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)を含む。いくつかの実施形態によれば、HPMCの濃度は、約0.5%〜約2%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。いくつかの実施形態によれば、HPMCの濃度は、約0.5%〜約1.5%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。いくつかの実施形態によれば、HPMCの濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。いくつかの実施形態によれば、HPMCの濃度は、約0.6%〜約1%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値をとる。好ましい実施形態では、HPMCの濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲であるか、または前記範囲に属する任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%または約0.90%)をとる。
【0050】
例えば、非限定的に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む代用涙液は、GenTeal(登録商標)潤滑性点眼剤である。GenTeal(登録商標)(CibaVision−Novartis)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース3mg/gを含有し、過ホウ酸ナトリウムを用いて保存されている無菌の潤滑性点眼剤である。HPMCに基づいた涙液のその他の例を示す。
【0051】
別の好ましい実施形態では、代用涙液は、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。例えば、非限定的に、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む代用涙液は、Refresh(登録商標)Tearsである。Refresh(登録商標)Tearsは、正常な涙に類似する潤滑性製剤であり、軽度、非感作性の保存剤である安定化オキシクロロ錯体(Purite(商標))を含有し、使用時に自然の涙の構成成分に最終的に変化する。
【0052】
好ましい実施形態では、代用涙液またはその構成成分は、涙液膜を維持するという有効性を最適化し、かつぼやけ、眼瞼に固化すること(lid caking)等を最低限に留める範囲の粘度を有する水溶液である。好ましくは、代用涙液またはその構成成分の粘度は、30〜150センチポアズ(cpi)、好ましくは、30〜130cpi、より好ましくは50〜120cpi、さらにより好ましくは60〜115cpiの範囲である(または前記範囲に属する任意の特定の値をとる)。特定の実施形態では、代用涙液またはその構成成分の粘度は、約70〜90cpi、または前記範囲に属する任意の特定の値(例えば非限定的に、85cpi)である。
【0053】
本発明の眼科用製剤の粘度を、当技術分野で公知の標準的な方法に従って、例として、粘度計またはレオメーターを使用して測定することができる。当業者であれば、温度ならびにずり速度等の因子が粘度測定に影響を及ぼすことがあることを認識する。特定の実施形態では、ブルックフィールド−コーンおよびプレート粘度計モデル VDV−III Ultra+を使用して、CP40もしくは同等のスピンドルを用いて、およそ、およそ22.50±およそ10(1/秒)のずり速度で、またはブルックフィールド粘度計 モデルLVDV−Eを使用して、SC4−18もしくは同等のスピンドルを用いて、およそ26±およそ10(1/秒))のずり速度で、本発明の眼科用製剤の粘度を20℃±1℃で測定する。
【0054】
いくつかの実施形態では、代用涙液またはその構成成分を、適切な塩(例えば、リン酸塩)を用いて、pH5.0〜9.0、好ましくは、pH5.5〜8.5、より好ましくは、pH5〜6(または前記範囲に属する任意の特定の値)に緩衝する。いくつかの実施形態では、代用涙液は、1つ以上の成分をさらに含み、これらの成分として、非限定的に、グリセロール、プロピレングリセロール、グリシン、ホウ酸ナトリウム、塩化マグネシウムおよび塩化亜鉛が挙げられる。
【0055】
他の添加剤
いくつかの実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、1つ以上の薬学的に許容される添加剤を含む。添加剤という用語は、本明細書で使用する場合には広く、製剤の活性薬剤と組み合わせて使用しても生物学的に不活性な物質を指す。添加剤を、例えば、可溶化剤、安定化剤、界面活性剤、粘滑剤、増粘剤、賦形剤、不活性なキャリア、保存剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、香味剤または着色剤として使用することができる。好ましくは、少なくとも1つの添加剤を選んで、1つ以上の有益な物性、例として、活性薬剤(複数可)の安定性および/または溶解性の増加を製剤にもたらす。「薬学的に許容される」添加剤は、州もしくは連邦の規制当局により、動物においての使用に関し、好ましくは、ヒトにおいての使用に関し承認されているか、または米国薬局方、欧州薬局方または別の一般に認識されている薬局方に、動物においての使用に関し、好ましくは、ヒトにおいての使用に関し収載されている添加剤である。
【0056】
添加剤のさらなる例として、特定の不活性なタンパク質、例として、アルブミン;親水性ポリマー、例として、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例として、アスパラギン酸(あるいは、これは、アスパルテートとも呼ばれる場合がある)、グルタミン酸(あるいは、これは、グルタメートとも呼ばれる場合がある)、リジン、アルギニン、グリシンおよびヒスチジン;脂肪酸およびリン脂質、例として、アルキルスルホネートおよびカプリレート;界面活性剤、例として、ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート;非イオン性界面活性剤、例として、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)、200、300、400もしくは600と指定されるもの;Carbowax、1000、1500、4000、6000および10000と指定されるもの;炭水化物、例として、グルコース、スクロース、マンノース、マルトース、トレハロース、およびシクロデキストリンを含めたデキストリン;ポリオール、例として、マンニトールおよびソルビトール;キレート化剤、例として、EDTA;ならびに塩形成対イオン、例として、ナトリウムが挙げられる。
【0057】
本発明の製剤において使用することができるキャリアの例として、水、水とC−アルカノール〜C−アルカノール等の水混和性の溶媒との混合物、0.5〜5%無毒性の水溶性ポリマーを含む植物油または鉱油、天然物、例として、ゼラチン、アルギネート、ペクチン、トラガント、カラヤガム、キサンタンガム、カラゲニン、寒天およびアラビアゴム、デンプン誘導体、例として、酢酸デンプンおよびヒドロキシプロピルデンプン、ならびにまた、その他の合成産物、例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは、架橋結合したポリアクリル酸、例として、中性Carbopol、またはそれらのポリマーの混合物が挙げられる。キャリアの濃度は典型的には、活性成分の濃度の1〜100000倍である。
【0058】
特定の実施形態では、キャリアは、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクルである。本発明の方法または製剤において使用するのに適した粘膜接着性ビヒクルの例として、これらに限定されないが、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、Gelrite(登録商標)、セルロース誘導体のポリマーおよびカルボキシ含有ポリマー系を非限定的に含めた、1つ以上のポリマー懸濁化剤を含む水性のポリマー懸濁液が挙げられる。特定の実施形態では、ポリマー懸濁化剤は、架橋結合したカルボキシ含有ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含む。本発明の局所の眼科用製剤において使用するのに適した架橋結合したカルボキシ含有ポリマー系の例として、これらに限定されないが、Noveon AA−1、Carbopol(登録商標)および/またはDuraSite(登録商標)(InSite Vision)が挙げられる。
【0059】
特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、以下のうちから選択される1つ以上の添加剤を含む:薬学的に許容される塩または緩衝化剤、保存剤、張度増強剤、可溶化剤、粘度増強剤、粘滑剤、乳化剤、湿潤剤、金属イオン封鎖剤および増量剤。製剤に添加する添加剤の量および型は、製剤の特定の要件に従い、一般に、約0.0001重量%〜90重量%の範囲である。
【0060】
塩、バッファーおよび保存剤
また、本発明の製剤は、薬学的に許容される塩、緩衝剤および/または保存剤を含有することもできる。そのような塩の例として、以下の酸から調製された塩が挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。また、そのような塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類の塩、例として、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として調製することもできる。緩衝剤の例として、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、および2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)が挙げられる。
【0061】
pHの、好ましくは、生理学的pHへの調節のために、バッファーは、とりわけ有用であり得る。本発明の製剤のpHは、4.0〜8.0、より好ましくは、約4.0〜6.0、より好ましくは、約5.0〜6.0の範囲内に維持すべきである。特定の実施形態では、本明細書に記載する製剤のpHは、5.5である。適切なバッファー、例として、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、炭酸水素ナトリウム、TRISおよび(NaHPOとNaHPOとKHPOとの組合せを含めた)種々の混合性リン酸緩衝剤、ならびにそれらの混合物を添加ことができる。ホウ酸バッファーが好ましい。一般に、バッファーは、約0.05〜2.5重量パーセント、好ましくは、0.1〜1.5重量パーセントの範囲の量で使用する。
【0062】
特定の実施形態では、これらの局所製剤は、保存剤をさらに含む。保存剤は典型的には、四級のアンモニウム化合物、例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウム等から選択することができる。塩化ベンザルコニウムは、塩化N−ベンジル−N−(C〜C18アルキル)−N,N−ジメチルアンモニウムとしてより十分に記載される。保存剤のさらなる例として、抗酸化剤、例として、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニルおよびセレニウム;アミノ酸のシステインおよびメチオニン;クエン酸およびクエン酸ナトリウム;さらに、合成保存剤、例として、チメロサール、ならびに例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含めた、アルキルパラベンが挙げられる。その他の保存剤として、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、m−クレゾール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀またはホウ酸フェニル水銀、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール、例として、クロロブタノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコールまたはフェニルエタノール、グアニジン誘導体、例として、クロルヘキシジン(chlorohexidine)またはポリヘキサメチレンビグアナイド、過ホウ酸ナトリウム、Polyquad(登録商標)、Germal(登録商標)II、ソルビン酸、および安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))が挙げられる。好ましい保存剤は、四級アンモニウム化合物、特に、塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体、例として、Polyquad(米国特許第4,407,791号を参照されたい)、アルキル水銀塩、パラベンおよび安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))を含む。適切な場合には、十分な量の保存剤をこの眼科用組成物に添加して、細菌および真菌が引き起こす使用の間の二次汚染に対する保護を確保する。
【0063】
特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、以下のうちから選択される保存剤を含む:塩化ベンザルコニウム、0.001%〜0.05%;塩化ベンゼトニウム、最大0.02%;ソルビン酸、0.01%〜0.5%;ポリヘキサメチレンビグアナイド、0.1ppm〜300ppm;ポリクオタニウム−1(Omamer M)−0.1ppm〜200ppm;次亜塩素酸塩化合物、過塩素酸塩(perchlorite)化合物または亜塩素酸塩化合物、500ppm以下、好ましくは、10ppmと200ppmとの間;安定化過酸化水素溶液、すなわち、重量%として0.0001〜0.1%の過酸化水素を生じる適切な安定化剤と一緒にした過酸化水素供給源;p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルおよびそれらの混合物、好ましくは、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、0.01%〜0.5%;クロルヘキシジン、0.005%〜0.01%;クロロブタノール、最大0.5%;ならびに安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))0.001%〜0.5%。
【0064】
別の実施形態では、本発明の局所製剤は、保存剤を含まない。そのような製剤は、コンタクトレンズを装用する患者、またはいくつかの局所眼科用点眼剤を使用している患者および/もしくは眼表面がすでに損なわれており(例えば、眼乾燥)、保存剤への曝露を制限するのがより望ましい患者に有用である。また、保存剤を欠く製剤は、単回用量単位の組成物のためにも好ましい。
【0065】
粘度増強剤および粘滑剤
特定の実施形態では、粘度増強剤を、本発明のケトチフェン製剤に添加することができる。そのような薬剤の例として、多糖、例として、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの種々のポリマー、ビニルポリマー、ならびにアクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0066】
特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、以下のうちの1つ以上から選択される眼科用の粘滑剤および/または粘度増強性ポリマーを含む:セルロース誘導体、例として、カルボキシメチルセルロース(carboxymethy cellulose)(0.02〜5%)、ヒドロキシエチルセルロース(0.02%〜5%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒプロメロース(0.02%〜5%)、およびメチルセルロース(0.02%〜5%);デキストラン40/70(0.01%〜1%);ゼラチン(0.01%〜0.1%);ポリオール、例として、グリセロール(0.01%〜5%)、ポリエチレングリコール300(0.02%〜5%)、ポリエチレングリコール400(0.02%〜5%)、ポリソルベート80(0.02%〜3%)、プロピレングリコール(0.02%〜3%)、ポリビニルアルコール(0.02%〜5%)、およびポビドン(0.02%〜3%);ヒアルロン酸(0.01%〜2%)、ならびにコンドロイチン硫酸(0.01%〜2%)。
【0067】
本発明の眼科用製剤の粘度は、当技術分野で公知の標準的な方法に従って、例として、粘度計またはレオメーターを使用して測定することができる。当業者であれば、温度およびずり速度等の因子が粘度測定に影響を及ぼす場合があることを認識する。特定の実施形態では、ブルックフィールド−コーンおよびプレート粘度計モデル VDV−III Ultraを使用して、CP40もしくは同等のスピンドルを用いて、およそ、およそ22.50±およそ10(1/秒)のずり速度で、またはブルックフィールド粘度計 モデルLVDV−Eを使用して、SC4−18もしくは同等のスピンドルを用いて、およそ26±およそ10(1/秒))のずり速度で、本発明の眼科用製剤の粘度を20℃±1℃の温度で測定する。
【0068】
張度増強剤
浸透圧を必要に応じて、典型的には張度増強剤により調節する。そのような薬剤は、例えば、イオン性および/または非イオン性のタイプであり得る。イオン性の張度増強剤の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、例えば、CaCl、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBrもしくはNaCl、NaSO、またはホウ酸等である。非イオン性の張度増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコールまたはデキストロースである。本発明の水性液剤は典型的には、等張化剤を用いて調節して、塩化ナトリウムの0.9%溶液またはグリセロールの2.5%溶液と同等である正常な涙液の浸透圧に近づける。約225〜400mOsm/kgの重量オスモル濃度が、好ましく、より好ましくは、280〜320mOsmである。しかし、特定の実施形態では、本発明の製剤は、400〜875mOsmの範囲の、より高い重量オスモル濃度を有する場合がある。
【0069】
可溶化剤
この局所製剤は、可溶化剤の存在を、特に、成分のうちの1つ以上が、懸濁液または乳濁液を形成する傾向がある場合には、さらに必要とすることがある。適切な可溶化剤として、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエーテル、シクロデキストリン(例えばアルファ−、ベータ−またはガンマ−シクロデキストリン、例えば、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化もしくはアルキルオキシカルボニル−アルキル化された誘導体、またはモノ−もしくはジ−グリコシル−アルファ−、ベータ−もしくはガンマ−シクロデキストリン、モノ−もしくはジ−マルトシル−アルファ−、ベータ−もしくはガンマ−シクロデキストリン、またはパノシル(panosyl)−シクロデキストリン)、ポリソルベート20、ポリソルベート80、あるいはそれらの化合物の混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、可溶化剤は、ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物、例えば、市販されている製品Cremophor EL(登録商標)またはCremophor RH40(登録商標)である。ヒマシ油とエチレンオキシドとの反応生成物は、眼に極めて良好に忍容される、特に良好な可溶化剤であることが証明されている。別の実施形態では、可溶化剤は、チロキサポールまたはシクロデキストリンである。使用する濃度はとりわけ、活性成分の濃度に依存する。添加する量は典型的には、活性成分を可溶化するのに十分な量である。例えば、可溶化剤の濃度は、活性成分の濃度の0.1〜5000倍である。
【0070】
例示的な本発明の製剤
一実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェンまたはその薬学的に許される塩を、唯一の活性成分として、0.01%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で、グリセロールを0.5%〜5%(v/v、または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で、かつ水を含み、pHは5超であり、重量オスモル濃度は290mOsm超である。特定の実施形態では、ケトチフェンの濃度は、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%または0.10%である。別の実施形態では、ケトチフェンの濃度は、0.15%、0.25%、0.35%、0.45%、0.55%、0.65%、0.75%、0.85%、0.95%または0.20%である。好ましい実施形態では、ケトチフェンは、フマル酸ケトチフェンである。一実施形態では、重量オスモル濃度は、400mOsm未満である。別の実施形態では、重量オスモル濃度は、290mOsm超かつ400mOsm未満、または前記範囲に属する任意の特定の値である。
【0071】
一実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェンまたはその薬学的に許容される塩を、唯一の活性成分として、製剤において、0.01%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で、グリセロールを0.5%〜5%(v/v)の濃度で、かつ水を含み、pHは、5超であるが、7未満である。特定の実施形態では、このケトチフェン製剤は、フマル酸ケトチフェンを、0.035%〜0.1%(w/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で含む。好ましくは、ケトチフェンは、フマル酸ケトチフェンである。この実施形態によれば、このケトチフェン製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含有しない。必要に応じて、この製剤は、過酸化水素以外の保存剤、好ましくは、0.005%〜0.02%(w/v)(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度の塩化ベンザルコニウム、または安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))を含む。特定の実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェンを0.1%(w/v)の濃度で、グリセロールを2%〜3%(v/v)の濃度で、かつ水を含む。別の特定の実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェンを0.035%(w/v)の濃度で、グリセロールを1%〜2%(v/v)の濃度で、かつ水を含む。特定の実施形態では、この製剤は、塩化ベンザルコニウムを0.01%(w/v)でさらに含む。特定の実施形態では、この製剤のpHは、5.5と6.5との間である。特定の実施形態では、この製剤のpHは、5.2、5.5、6または6.5である。
【0072】
特定の実施形態では、このケトチフェン製剤は、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトチフェン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、21.25mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたもので、この製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は255mOsm/kgである。別の特定の実施形態では、このケトチフェン製剤は、眼アレルギー、特に、アレルギー性結膜炎を治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトチフェン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、28.75mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたもので、この製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は345mOsm/kgである。
【0073】
一実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェンまたはその薬学的に許容される塩を、唯一の活性成分として、0.01%〜0.20%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で、かつ1つ以上の代用涙液またはそれらの構成成分を含む。特定の実施形態では、このケトチフェン製剤は、フマル酸ケトチフェンを、0.035%〜0.1%(w/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で、かつ1つ以上の代用涙液またはそれらの構成成分を含む。好ましくは、ケトチフェンは、フマル酸ケトチフェンである。好ましくは、代用涙液またはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロース、または両方を含有する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で存在し、その結果得られる溶液の粘度は、60〜80cpiである。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.7%〜0.9%の濃度で存在する。また必要に応じて、この製剤は、保存剤、好ましくは、0.005%〜0.02%(w/v)(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度の塩化ベンザルコニウム、または安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))も含む。この製剤のpHは、好ましくは、4と7との間である。特定の実施形態では、この製剤のpHは、5.5と6.5との間である。特定の実施形態では、この製剤のpHは、5.2、5.5、6または6.5である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225mOsmと400mOsmとの間である。別の実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、400mOsmと875mOsmとの間である。
【0074】
一実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェン(0.001%〜0.20%もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)またはその薬学的に許容される塩を、オキシメタゾリンと組み合わせて含む。特定の実施形態では、ケトチフェンを、0.001%、0.005%、0.010%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.15%または0.20%の濃度で、オキシメタゾリンと組み合わせて製剤化する。特定の実施形態では、オキシメタゾリンは、この製剤において、0.001%と0.2%(w/v)との間、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で存在する。ケトチフェンおよびオキシメタゾリンのこの製剤のpHは、好ましくは、4と7との間、最も好ましくは、5.5と6.5との間(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225mOsmと400mOsmとの間(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。別の実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、400mOsmと875mOsmとの間(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。
【0075】
一実施形態では、ケトチフェンおよびオキシメタゾリンのこの製剤は、1つ以上の代用涙液をさらに含む。好ましくは、代用涙液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロース、または両方を含有する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で存在し、その結果得られる溶液の粘度は、60〜80cpi(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)である。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.7%〜0.9%(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で存在する。また必要に応じて、この製剤は、保存剤、好ましくは、0.005%〜0.02%(w/v)(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度の塩化ベンザルコニウム、または安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))も含む。この製剤のpHは、好ましくは、4と7との間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。特定の実施形態では、この製剤のpHは、5.5と6.5との間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。特定の実施形態では、この製剤のpHは、5.2、5.5、6または6.5である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225mOsmと400mOsmとの間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。別の実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、400mOsmと875mOsmとの間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。
【0076】
一実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェン(0.03%〜0.20%、または前記範囲に属する任意の特定の値)を、ナファゾリン(napahzoline)と組み合わせて含む。特定の実施形態では、ケトチフェンを、0.04%〜0.08%、0.08%〜0.10%、0.10%〜0.15%もしくは0.15%〜0.20%(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で、ナファゾリンと組み合わせて製剤化する。その他の特定の実施形態では、ケトチフェンを、0.001%、0.005%、0.010%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.15%または0.20%の濃度で、ナファゾリンと組み合わせて製剤化する。特定の実施形態では、ケトチフェンおよびナファゾリンのこの製剤のpHは5超であり、重量オスモル濃度は400mOsm未満である。その他の実施形態では、この製剤のpHは、4.8と6.8との間、好ましくは、5.5と6.5との間(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。また必要に応じて、この製剤は、保存剤、好ましくは、0.005%〜0.02%(w/v)(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度の塩化ベンザルコニウム、または安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))も含む。
【0077】
一実施形態では、ケトチフェンおよびナファゾリンのこの製剤は、1つ以上の代用涙液またはそれらの構成成分をさらに含む。好ましくは、代用涙液もしくはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロース、または両方を含有する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で存在し、その結果得られる溶液の粘度は、60〜80cpi、または前記範囲に属する任意の特定の値である。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.7%〜0.9%、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で存在する。また必要に応じて、この製剤は、保存剤、好ましくは、0.005%〜0.02%(w/v)(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度の塩化ベンザルコニウム、または安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))も含む。この製剤のpHは5超であり、この製剤の重量オスモル濃度は400mOsm未満である。好ましくは、この製剤のpHは、5と7との間、最も好ましくは、5.5と6.5との間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。重量オスモル濃度は、好ましくは、225〜390mOsmの間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。
【0078】
一実施形態では、このケトチフェン製剤は、ケトチフェン(0.001%〜0.20%、または前記範囲に属する任意の特定の値)を、フルチカゾンと組み合わせて含む。特定の実施形態では、ケトチフェンを、0.001%、0.005%、0.010%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.15%または0.20%の濃度で、フルチカゾンと組み合わせて製剤化する。特定の実施形態では、フルチカゾンは、この製剤において、0.001%と0.2%(w/v)との間、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で存在する。好ましくは、フルチカゾンは、この製剤において、0.001%と0.01%(w/v)との間、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で存在する。特定の実施形態では、フルチカゾンは、この製剤において、0.005%(w/v)の濃度で存在する。ケトチフェンおよびフルチカゾンのこの製剤のpHは、好ましくは、4と7との間、最も好ましくは、5.5と6.5との間(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225mOsmと400mOsmとの間(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。別の実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、400mOsmと875mOsmとの間(または前記範囲に属する任意の特定の値)である。
【0079】
一実施形態では、ケトチフェンおよびフルチカゾンのこの製剤は、1つ以上の代用涙液またはそれらの構成成分をさらに含む。好ましくは、代用涙液またはその構成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロース、または両方を含有する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.5%〜1%(w/v)(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で存在し、その結果得られる溶液の粘度は、60〜80cpi、または前記範囲に属する任意の特定の値である。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、0.7%〜0.9%、または前記範囲に属する任意の特定の値の濃度で存在する。また必要に応じて、この製剤は、保存剤、好ましくは、0.005%〜0.02%(w/v)(もしくは前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度の塩化ベンザルコニウム、または安定化オキシクロロ錯体(Purite(登録商標))も含む。この製剤のpHは、好ましくは、4と7との間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。一実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、225mOsmと400mOsmとの間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。別の実施形態では、この製剤の重量オスモル濃度は、400mOsmと875mOsmとの間、または前記範囲に属する任意の特定の値である。
【0080】
安定性
本発明の製剤は、製剤化したケトチフェンおよびこの製剤のその他の任意選択の活性薬剤の化学的安定性をもたらす。「安定性」および「安定な」は、この文脈においては、所与の製造、調製、輸送および保存の条件下でのケトチフェンおよびその他の任意選択の活性薬剤の、化学的分解に対する耐性を指す。また、本発明の「安定な」製剤は、好ましくは、所与の製造、調製、輸送および/または保存の条件下でも、出発量または参照量の少なくとも90%、95%、98%、99%または99.5%を保持する。ケトチフェンおよびその他の任意選択の活性薬剤の量を、任意の当技術で認識されている方法、例えば、UV−Vis分光光度法および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)等を使用して決定することができる。
【0081】
特定の実施形態では、このケトチフェン製剤は、約20〜30℃の範囲の温度で、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、または少なくとも7週間安定である。その他の実施形態では、この製剤は、約20〜30℃の範囲の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも7カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも9カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも11カ月間、または少なくとも12カ月間安定である。一実施形態では、この製剤は、20〜25℃で、少なくとも3カ月間安定である。
【0082】
その他の実施形態では、このケトチフェン製剤は、約2〜8℃の範囲の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも14カ月間、少なくとも16カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも20カ月間、少なくとも22カ月間、または少なくとも24カ月間安定である。一実施形態では、この製剤は、2〜8℃で、少なくとも2カ月間安定である。
【0083】
その他の実施形態では、このケトチフェン製剤は、約−20℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも14カ月間、少なくとも16カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも20カ月間、少なくとも22カ月間、または少なくとも24カ月間安定である。一実施形態では、この製剤は、−20℃で、少なくとも6〜12カ月間安定である。
【0084】
特定の実施形態では、本発明のケトチフェン製剤は、0.10%までの濃度で、約20〜30℃の温度で、少なくとも3カ月間安定である。別の実施形態では、この製剤は、0.10%までの濃度で、約2〜8℃の温度で、少なくとも6カ月間安定である。
【0085】
使用方法
本発明のケトチフェン製剤は、眼アレルギーの症状、例として、眼の痒み、発赤および眼瞼腫張、ならびに関連の鼻の症状を治療および予防するのに有用である。好ましい実施形態では、本発明は、快適であり、眼に1日1回投与して、眼の痒みを和らげるのに有効である0.035%ケトチフェン製剤を提供する。
【0086】
本発明は、眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の、眼アレルギーを治療および予防する方法を提供し、これらの方法は、有効量のケトチフェンを含む薬学的組成物を、被験体の眼表面に投与するステップを含む。また特定の実施形態では、ケトチフェンの、眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の眼への投与は、このアレルギーに伴う1つ以上の鼻の症状を緩和するまたは低下させるのにも有効である。被験体は、好ましくは、ヒトであるが、別の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラットまたは非ヒト霊長類であってもよい。
【0087】
用語「有効量」は、眼アレルギーの症状を排除するまたは低下させるのに十分であるケトチフェンの量を意味する。特定の実施形態では、有効量は、眼アレルギーを治療および予防するのに十分な量である。「治療」は、この文脈においては、眼アレルギーの少なくとも1つの症状を低下または寛解させることを指す。「予防」は、この文脈においては、組成物を投与されない被験体と比べて、眼アレルギーに伴う症状の頻度を低下させること、またはそれらの症状の開始を遅延させることを指す。製剤におけるケトチフェンおよびその他の活性薬剤の有効量は、薬物の吸収速度、不活化速度および排泄速度、ならびに製剤からの化合物の送達速度に依存する。また、特定の投与量は、軽減させようとする状態の重症度によっても変化する場合がある。任意の特定の被験体のために、特定の投薬計画を、個体の必要性および組成物を投与するまたは組成物の投与を監督する人の専門的な判断に従って経時的に調節すべきであることをさらに理解されたい。典型的には、投薬計画は、当業者に公知の技法を使用して決定する。
【0088】
本発明の方法において使用することができる投薬計画の例として、これらに限定されないが、1日1回、1日2回、1日3回および1日4回が挙げられる。好ましい実施形態では、この方法は、本発明のケトチフェン製剤を被験体の眼に1日1回投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、投与は、1日2〜4回である。
【0089】
特定の実施形態では、1日1回の投与(q.d.)が、眼アレルギーの症状を緩和するのに有効である。しかしまた、特定の投与量を、被験体の年齢、性別、種および状態を含めた、いくつかの因子に基づいて選択することもできる。また、有効量は、in vitroにおける試験系または動物モデルから誘導された用量反応曲線から外挿することもできる。
【0090】
好ましい実施形態では、本発明の製剤は、有効量のケトチフェン(またはその薬学的に許容される塩)を、眼アレルギーを治療および予防するための唯一の活性薬剤として含有する。特定の実施形態では、眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の、眼アレルギーを治療および予防するための方法は、眼アレルギーを治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としてのケトチフェン(またはその薬学的に許容される塩)、グリセロールおよび塩化ベンザルコニウムを含む眼科用製剤を、被験体の眼に局所投与するステップを含み、ケトチフェンの濃度は、0.01%〜0.20%、好ましくは、0.02%〜0.04%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)であり、この製剤におけるグリセロールの濃度は、2%〜3%(v/v)、または前記範囲に属する任意の特定の値であり、この製剤のpHは、5.0と7との間、好ましくは、5.0と6.5との間、最も好ましくは、約5.5であり、この製剤の重量オスモル濃度は、290mOsm超かつ400mOsm未満であり、この製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含まない。
【0091】
別の特定の実施形態では、眼アレルギーを治療および予防するための方法は、有効量のケトチフェンまたはその薬学的に許容される塩を含む眼科用製剤を、眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の眼に投与するステップを含み、ケトチフェンの濃度は、約0.035%(w/v)であり、この製剤のpHは約5.5であり、この製剤の重量オスモル濃度は、300〜350mOsmの間(または前記範囲に属する任意の特定の値)であり、この製剤は、代用涙液、過酸化水素、およびケトチフェン以外の任意の活性成分を含まない。
【0092】
例えば、眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の、眼アレルギーを治療および予防するための方法は、眼アレルギーを治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトチフェン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、21.25mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたケトチフェン製剤を、被験体の眼に局所投与するステップを含み、この製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は255mOsm/kgである。さらなる実施例では、眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の、眼アレルギーを治療および予防するための方法は、眼アレルギーを治療および予防するための、製剤における唯一の活性薬剤としての0.481mg/mLフマル酸ケトチフェン(0.350mg/mLケトチフェン塩基と同等)、0.10mg/mL塩化ベンザルコニウム、28.75mg/mLグリセロールを含み、pHを5.5に調節し、精製水を適量加えて1mLとしたケトチフェン製剤を、被験体の眼に局所投与するステップを含み、この製剤は、代用涙液、ポリマーの、粘膜接着性ビヒクル、および過酸化水素を含まず、この製剤の重量オスモル濃度は345mOsm/kgである。
【0093】
必要に応じて、意図する使用(すなわち、眼アレルギーの症状の緩和)に有効である1つ以上の追加の活性成分を、ケトチフェンと組み合わせて、眼アレルギーを治療および予防することができる。いくつかの活性薬剤を本発明の組成物中に製剤化して組み合わせて使用すると、任意の個々の構成成分の必要投与量を低下させることができる。これは、異なる構成成分の効果の開始および持続期間が補完的であり得るからである。そのような組合せ療法においては、異なる活性薬剤を、一緒または別個にも、同時または1日のうちの異なる時間にも送達することができる。
【0094】
一実施形態では、ケトチフェンを、オキシメタゾリン、ナファゾリンおよびフルチカゾンのうちの1つ以上と共に製剤化し、眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の眼に1日1回投与する。特定の実施形態では、この組合せ製剤を、1日に1、2または3回投与する。
【0095】
包装物
本発明の製剤を、単回用量製品または複数回用量製品のいずれかとして包装することができる。単回用量製品は、包装物を開封するまでは無菌であり、包装物中の組成物は全てが、患者の一方または両方の眼への単回の適用において消費されることを意図する。包装物の開封後に組成物の無菌性を維持するための抗菌性保存剤の使用は、一般に不必要である。
【0096】
また、複数回用量製品も、包装物を開封するまで無菌である。しかし、容器中の組成物を全て消費するまでに、組成物のための容器を何回も開く場合があることから、複数回用量製品は、容器の反復開封および取扱いの結果として、組成物が微生物に汚染されてしまわないことを確実にするのに十分な抗菌活性を有さなければならない。この目的で必要な抗菌活性レベルは、当業者には周知であり、公式刊行物、例として、米国薬局方(「USP」)およびその他の国の対応する刊行物に特定されている。眼科用医薬品の微生物汚染に対する保存についての仕様、および特定の製剤の保存剤の有効性を評価するための手順の詳細な記載が、それらの刊行物に提供されている。米国では、保存剤の有効性の標準は一般に、「USP PET」要件と呼ばれている。(頭字語「PET」は、「保存剤有効試験(preservative efficacy testing)」を表す)。
【0097】
単回用量包装物構成の使用により、組成物中の抗菌性保存剤の必要性が排除され、このことは、医学的な視点では、重要な利点となる。これは、眼科用組成物を保存するために活用されている従来の抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)は、眼の過敏を、特に、眼乾燥状態または先在する眼の過敏に苦しむ患者において引き起こす場合があるからである。しかし、現時点で利用可能な単回用量包装物構成、例として、「形成充填密封(form,fill and seal)」として公知のプロセスにより調製された小さな体積のプラスチックバイアルには、製造者および消費者にとっていくつかの欠点がある。これらの単回用量包装物システムの主要な欠点は、はるかにより多くの量の包装材料を必要とすることであり、このことは、無駄が多く費用がかかり、かつ消費者にとっても不都合である。また、消費者が、1または2滴を眼に適用した後、指示に従ってその単回用量容器を廃棄することなく、それに代わって、開封した容器およびその中に残っているいくばくかの組成物をとっておいて、後に使用するリスクもある。単回用量製品のこの不適切な使用は、単回用量製品の微生物汚染のリスク、およびそれに伴って、汚染された組成物を眼に適用した場合の眼感染のリスクを生み出す。
【0098】
本発明の製剤は、好ましくは、「即時使用」水溶液として製剤化するが、本発明の範囲に属する代替の製剤も企図する。したがって、例えば、この眼科用液剤の活性成分、界面活性剤、塩、キレート化剤もしくはその他の構成成分、またはそれらの混合物を、凍結乾燥してもよく、あるいは別の場合には、乾燥粉末または錠剤として提供して、(例えば、脱イオンまたは蒸留)水に用時溶解してもよい。この溶液は自己保存性(self−preserving nature)であることから、滅菌水を必要としない。
【0099】
キット
本発明は、本発明の液体のまたは凍結乾燥したケトチフェン製剤を充填した1つ以上の容器を含む医薬のパックまたはキットを提供する。一実施形態では、この製剤は、ケトチフェンの水性製剤である。一実施形態では、この製剤は、凍結乾燥されている。好ましい実施形態では、この液体のまたは凍結乾燥した製剤は、無菌である。一実施形態では、このキットは、1つ以上の容器中の本発明の液体のまたは凍結乾燥した製剤、および1つ以上のその他の、眼アレルギーの治療および予防に有用な予防剤または治療剤を含む。これら1つ以上のその他の予防剤または治療剤は、ケトチフェンと同じ容器中にあってもよく、または1つもしくは複数のその他の容器中にあってもよい。好ましくは、ケトチフェンは、約0.25%(w/v)〜約1.0%(w/v)(または前記範囲に属する任意の特定の値)の濃度で製剤化し、局所眼投与に適している。特定の実施形態では、このキットは、単位剤形のケトチフェンを含有する。
【0100】
特定の実施形態では、このキットは、眼アレルギーの治療および予防において使用する(例えば、本発明のケトチフェン製剤を、単独で、または別の予防剤または治療薬剤と組み合わせて使用する)ための指示、ならびに副作用情報および1つ以上の投与経路についての投薬情報をさらに含む。必要に応じて、そのような容器(複数可)には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が規定する書式の通知が伴い、この通知は、その機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の承認を示している。これらの指示材料は典型的には、書面によるまたは印刷された材料を含むが、そのようなものに限定されない。本発明は、そのような指示を保存し、最終使用者にそれらを伝えることができる任意の媒体を企図する。そのような媒体として、これらに限定されないが、電子保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)等が挙げられる。そのような媒体は、そのような指示材料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含むことができる。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載する製剤を包装および/または保存および/または使用するためのキット、ならびに本明細書に記載する方法を実行するためのキットを提供する。これらのキットは、輸送、使用および保存のうちの1つ以上の態様を促進するようにデザインすることができる。
【0102】
本明細書において言及する刊行物および特許は全て、それぞれの個々の刊行物または特許が、特異的かつ個々に参照により組み込まれていることを示すかのごとく、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【実施例】
【0103】
本発明を、以下の実施例を参照することによりさらに定義するが、これらの実施例には、本発明の範囲を限定する意味はない。材料および方法の両方に対する多くの改変形態を、本発明の目的および関心から逸脱することなく実行することができることが当業者には明らかとなる。
【0104】
(実施例1)
第2相二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施して、ビヒクル(N=16)と比較して、ケトチフェン0.035%眼科用製剤(N=16)(表1に示す)の有効性を評価した。表1に示すフマル酸ケトチフェン、塩化ベンザルコニウムおよびグリセロールの単位分量はそれぞれ、mg/mlとして示す。
【0105】
【表1】

表1に示す、この製剤の重量オスモル濃度は、USP<785>に従って、凝固点降下により決定した。表1に示す、この製剤の重量オスモル濃度は、255mOsm/kgであることを決定した。
【0106】
被験体は、スクリーニングのための2回の訪問(アレルゲンの滴定および確認)をし、それに続いて、薬物評価のための訪問をした。薬物評価のための訪問では、1滴の盲検試験医薬品を両眼に点眼し、快適さ評価を行った。16時間後に、被験体を、アレルゲンを用いて誘発し、アレルギーの評価を行った。眼の痒みを、0〜4(0=痒みが、ほとんどない〜ない、4=極度の痒み)のスケールで主観的に評定するのを被験体に依頼した。これらの結果から、1滴のケトチフェン0.035%眼科用液剤は、結膜のアレルゲン誘発(CAC)の16時間前に投与した場合、眼アレルギーに伴う眼の痒みを予防したことが実証されている(表2および図1を参照されたい)。ケトチフェン液剤を投与した群とビヒクルを投与した群との間の差は、臨床的(≧1単位の差)にも、統計的(P<0.05)にも有意であった。また、快適さも、滴投与後に、0〜10(0=極めて快適、10=極めて不快)のスケールで、各被験体により主観的に評価された。図2に示すように、0.035%ケトチフェン液剤は、眼へ点眼しても、非常に快適かつ忍容性良好であった。
【0107】
これらの結果は、この製剤は、安定、快適であり、16時間の作用の持続期間を維持する有効性を示すという点で驚くべき結果であった。作用のこの持続期間は、1日1回投薬を示している。歴史的なデータ(Berdyら Clinical Ther 2002年;Zaditor FDA Summary Basis of Approval)に基づくと、この有効性は、現時点で上市されている0.025%ケトチフェン(1日2回投薬について承認されている)の有効性よりも優れている。これは、この0.035%液剤は、1回の投薬/日のみを必要とするに過ぎず、にもかかわらず、上市されている0.025%液剤とまさしく同程度に快適であるからである。また、この製剤は、日本において現時点で上市されている0.05%液剤よりも優れている。0.05%液剤は、快適さのレベルが低く、BID(すなわち、1日2回)およびQID(すなわち、1日4回)の投与に限って承認されている。また、ケトチフェン0.035%を用いると、プラセボと比較して、CACの7分後における鼻うっ血も統計的に有意に低下した。
【0108】
【表2】

(実施例2)
二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施して、ビヒクル(N=4)と比較して、別のケトチフェン0.035%眼科用製剤(N=4)(表3に示す)の有効性を評価した。表3に示すフマル酸ケトチフェン、塩化ベンザルコニウムおよびグリセロールの単位分量はそれぞれ、mg/mlとして示す。
【0109】
【表3】

表3に示す、この製剤の重量オスモル濃度は、USP<785>に従って、凝固点降下により決定した。表3に示す、この製剤の重量オスモル濃度は、345mOsm/kgであることを決定した。
【0110】
公知のアレルゲンを投与すると、アレルギー応答を示すことが分かっている被験体が、薬物評価のための訪問をした。薬物評価のための訪問では、1滴の盲検試験医薬品を両眼に点眼し、快適さ評価を行った。16時間後に、被験体を、アレルゲンを用いて誘発し、眼の痒みおよび結膜の発赤のアレルギーの評価を行った。
【0111】
これらの結果から、1滴のケトチフェン0.035%眼科用液剤は、結膜のアレルゲン誘発(CAC)の16時間前に投与した場合、眼アレルギーに伴う眼の痒みを予防したことが実証されている(図3を参照されたい)。ケトチフェン液剤を投与した群とビヒクルを投与した群との間の差は、臨床的(≧1単位の差)にも、統計的(P<0.05)にも有意であった。
【0112】
また、忍容性および滴の快適さも、滴投与後に、0〜10(0=極めて快適および10=極めて不快)のスケールで評価した。図4に示すように、0.035%ケトチフェン液剤は、眼へ点眼しても、非常に快適かつ忍容性良好であった。
【0113】
これらの結果は、この製剤が、安定、極めて快適であり、少なくとも16時間、最長24時間の作用の持続期間を維持する有効性を有するという点で驚くべき結果であった。この作用の持続期間は、1日1回のみの投薬を示している。それに比べて、Zaditor(商標)として商業的に公知である、現時点で上市されている0.025%ケトチフェン液剤(0.025%ケトチフェン、pH5.5、210〜300mOsm/kg)は、1日2回の投薬に限って承認されており、比較し得るCACモデルにおいて、眼の痒みを最長12時間低下させるのに有効性を示すのみに過ぎない(Center for Drug Evaluation and Research、NDA 21−066、Ketotifen fumarate ophthalmic solution、22頁(1998年/12月/31日)を参照されたい)。さらに比較すると、日本において現時点で上市されている0.05%ケトチフェン製剤は、快適さ/忍容性のレベルが低く、BID(すなわち、1日2回)およびQID(すなわち、1日4回)の投薬に限って承認されている。これらの結果から、ケトチフェン濃度の最低限の増加(すなわち、本明細書で使用する0.035%ケトチフェン対Zaditor(商標)(0.025%ケトチフェン))により、痒みの緩和時間により定義した場合、有効性の最低限の増加を上回る増加が発生する(少なくとも16時間、最長24時間)ことが予想外に実証されている。本明細書において記載し、試験する、好ましい0.035%ケトチフェン濃度は、2倍ものAPI濃度(0.05%)を有する現時点で販売されているケトチフェン製品と比較して最も有利に働き、以前の0.05%製剤は、0.025%を上回る利益をもたらすことが示されず、一方、本明細書に記載する製剤は、QD投薬(すなわち、1日1回の投薬)を維持することはさらに驚くべきことである。
【0114】
さらに、歴史的なデータは、痒みを低下させる有効性における用量反応関係が、0.025%、0.05%、0.1%および0.15%の濃度の範囲のケトチフェン眼科用液剤については観察されなかったことを示している。用量範囲試験のこの同じ有効性解析により、Zaditor(商標)について、0.025%ケトチフェンを選択することが支持された。これは、この濃度が、効能を示す最も低い濃度であることが示されたからである(Center for Drug Evaluation and Research、NDA 21−066、Ketotifen fumarate ophthalmic solution、14頁(1998年/12月/31日)を参照されたい)。したがって、本明細書に記載するケトチフェン0.035%眼科用液剤の1滴を使用して達成された、この優れた16時間の有効性は、Zaditor(商標)の承認のために得られた歴史的なデータを考慮すると、驚くべきおよび予想外の結果であった。
【0115】
さらに、本明細書に記載する0.035%ケトチフェン液剤を使用した場合のこの16時間の有効性は、0.025%ケトチフェン液剤のZaditorを使用して、6および8時間の時点において達成された有効性よりも優れている(Center for Drug Evaluation and Research、NDA 21−066巻、Ketotifen fumarate ophthalmic solution、22頁(1998年/12月/31日)を参照されたい)。
【0116】
低いpH(すなわち、pH5.5)を有する0.035%ケトチフェン液剤が、代用涙液構成成分またはその他の遮蔽剤(masking agent)を含まなくても、眼へ点眼しても非常に極めて快適であって、より高い濃度のケトチフェンに伴うことが当技術分野では一般に公知である刺痛/灼熱痛の感覚を予防することは、さらに驚くべきかつ予想外なことである。理論に縛られる意図はないが、本明細書に記載する0.035%製剤の優れた特性は一部、組み合わせると、優れた快適さおよび有効性をもたらす最適なケトチフェン濃度(すなわち、0.035%)および最適な重量オスモル濃度(345mOsm/kg)を同定したことによるものである。この最適な重量オスモル濃度によりもたらされる快適さは、眼におけるケトチフェンの滞留時間を増加させることによって、以前から市販されている製剤を上回る有効性の増加をもたらす。
【0117】
要約すると、本明細書に記載する0.035%ケトチフェン製剤は、歴史的なデータ(Berdyら Clinical Ther 2002年;Zaditor FDA Summary Basis of Approval)に基づくと、現時点で上市されている0.025%ケトチフェン(1日2回投薬について承認されている)の有効性および快適さよりも、予想外に優れた有効性および快適さのプロファイルを有する。これは、この0.035%液剤は、1回の投薬/日のみを必要とするに過ぎず、にもかかわらず、上市されている0.025%液剤とまさしく同程度に快適であったからである。また、本明細書に記載する0.035%ケトチフェン製剤の快適さおよび有効性は、快適さのレベルが低く、BID(すなわち、1日2回)およびQID(すなわち、1日4回)の投薬に限って承認されている、日本において現時点で上市されている0.05%液剤よりも優れている。
【0118】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、認識し、または日常的な実験だけを使用して確認することができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲により包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用製剤であって、前記製剤における唯一の活性薬剤としてのケトチフェン、またはその薬学的に許容される塩を含み、ケトチフェンの濃度が0.01%〜0.02%(w/v)であり、前記製剤のpHが5と6.5との間であり、前記製剤が、代用涙液および過酸化水素を含まず、前記製剤の重量オスモル濃度が、290mOsm超かつ400mOsm未満である、眼科用製剤。
【請求項2】
ケトチフェンの濃度が0.02%〜0.04%である、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項3】
ケトチフェンの濃度が0.035%である、請求項2に記載の眼科用製剤。
【請求項4】
前記ケトチフェンが、フマル酸ケトチフェンの形態である、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項5】
グリセロールをさらに含む、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項6】
グリセロールの濃度が、2%〜3%(v/v)である、請求項5に記載の眼科用製剤。
【請求項7】
塩化ベンザルコニウムをさらに含む、請求項6に記載の眼科用製剤。
【請求項8】
塩化ベンザルコニウムの濃度が、0.005%〜0.02%(v/v)である、請求項7に記載の眼科用製剤。
【請求項9】
安定化オキシクロロ錯体をさらに含む、請求項6に記載の眼科用製剤。
【請求項10】
眼科用製剤であって、前記製剤における唯一の活性薬剤としてのケトチフェン、またはその薬学的に許容される塩、2%〜3%グリセロール、および0.01%塩化ベンザルコニウムを含み、ケトチフェンの濃度が0.035%(w/v)からであり、前記製剤のpHが5.5との間であり、前記製剤が、代用涙液および過酸化水素を含まず、前記製剤の重量オスモル濃度が、290mOsm超かつ400mOsm未満である、眼科用製剤。
【請求項11】
ナファゾリン、オキシメタゾリンおよびフルチカゾンからなる群から選択される追加の活性薬剤をさらに含む、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項12】
代用涙液をさらに含む、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項13】
前記代用涙液が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースである、請求項12に記載の眼科用製剤。
【請求項14】
保存剤をさらに含み、前記保存剤が、塩化ベンザルコニウムまたは安定化オキシクロロ錯体((Purite(登録商標))である、請求項13に記載の眼科用製剤。
【請求項15】
粘膜接着性のポリマービヒクルをさらに含む、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項16】
前記粘膜接着性のポリマービヒクルが、Durasite(登録商標)である、請求項15に記載の眼科用製剤。
【請求項17】
pHが5.5である、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項18】
水性製剤である、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項19】
単回用量単位の形態である、請求項1に記載の眼科用製剤。
【請求項20】
保存剤を含まない、請求項19に記載の眼科用製剤。
【請求項21】
眼アレルギーの治療および予防を必要とする被験体の眼に眼科用製剤を局所投与することによって、眼アレルギーを治療および予防するための方法であって、前記眼科用製剤が、前記製剤における唯一の活性薬剤としてのケトチフェン、またはその薬学的に許容される塩を含み、ケトチフェンの濃度が、0.01%〜0.20%(w/v)であり、前記製剤のpHが、5と6.5との間であり、前記製剤が、代用涙液および過酸化水素を含まず、前記製剤の重量オスモル濃度が、290mOsm超かつ400mOsm未満である、方法。
【請求項22】
前記眼アレルギーが、アレルギー性結膜炎である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記眼科用製剤を1日1回投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ケトチフェンが、フマル酸ケトチフェンの形態である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記眼科用製剤が、ナファゾリン、オキシメタゾリンまたはフルチカゾンからなる群から選択される活性薬剤をさらに含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−520880(P2012−520880A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500802(P2012−500802)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/023315
【国際公開番号】WO2010/107525
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508221866)アーシエックス セラピューティックス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】