説明

ケースモールド型コンデンサ

【課題】自動車用等に使用されるケースモールド型コンデンサに関し、小型軽量化と低価格化を図り、しかも優れた耐湿性能を発揮することを目的とする。
【解決手段】断面小判形の素子1を複数個並列して外部接続用の端子部を一端に設けたバスバー2で夫々接続し、これらを上記素子1に設けられた一対の電極を垂直方向にしてケース3内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、上記ケース3内に樹脂モールドされた素子1の上端からモールド樹脂4の外表面までの樹脂厚みを12mm以下としたとき、上記素子1の小判形に形成された断面の長径をa、同短径をbとした場合の偏平率(a−b)/aを30%以下とした構成により、モールド樹脂4開口面から浸入した水分の影響を受ける部分を減少させることができるようになるため、耐湿性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサをケース内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、このようにHEV用として用いられる金属化フィルムコンデンサには、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化等が強く要求されるため、バスバーによって並列接続した複数の金属化フィルムコンデンサをケース内に収納し、このケース内にモールド樹脂を注型したケースモールド型コンデンサが開発され、実用化されている。
【0005】
図6(a)、(b)はこの種の従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した平面断面図と正面断面図であり、図6において、11は樹脂製のコンデンサケース、12はコンデンサ素子を示す。13aおよび13bは一体に連なる接続金具で、13aはコンデンサケース11に内蔵される部分、13bはコンデンサケース11から外部に出ている部分を示す。14はコンデンサ素子12を固定するエポキシ樹脂等の充填樹脂、15は電極部、16はコンデンサを外部に取り付けるための取り付け脚、17は充填樹脂14を注型する注型面を示す。
【0006】
そして、コンデンサ素子12は、図示しない金属化フィルムを巻回または積層してなり、電極部15を端面に設けている。そして接続金具13aを電極部15に接続し、この接続金具13b(13aと一体につながっている)を外部機器等と電気的に接続している。
【0007】
また、コンデンサケース11は、コンデンサ素子12全体と、接続金具13aを内蔵し、内部に充填樹脂14を充填させて固定している。なお、図6において、コンデンサケース11の底部(注型面17)は、樹脂充填する前は開口面であり、この面を、充填樹脂14を注型する面としている。さらに、この注型面17から接続金具13bがコンデンサケース11から外部に出ている。
【0008】
また、コンデンサケース11は、図6に示すように、取り付け脚16を有しており、外部機器等にビス等で取り付けできるようになっている。コンデンサケース11は、コンデンサ素子12を複数個内蔵するためにケース自体が大きく、取り付け脚16はコンデンサ全体の重量および衝突時の耐用から4箇所設けられ、四方に伸びた形状となっている。
【0009】
このように構成された従来のケースモールド型コンデンサは、充填樹脂14を注型する注型面17を取り付け脚16と同じ側にすると共に、接続金具13を注型面17から外部に出すようにすることで、接続金具13a、13bの外部機器等と接続するまでの距離を短くでき、これにより、接続金具13a、13bのインダクタンスを抑えることができるというものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2003−338425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来のケースモールド型コンデンサをハイブリッド自動車等に使用する場合には、特に、小型軽量化と低コスト化に加えて高い耐湿性能が要求されるため、コンデンサ素子12が収納されたコンデンサケース11内に充填する充填樹脂14の最適な設計が重要になるという課題があった。
【0012】
すなわち、小型軽量化と低コスト化を優先して充填樹脂14の量を少なくすると耐湿性能が低下し、また逆に、耐湿性能を優先して充填樹脂14の量を多くすると小型軽量化が図れないばかりでなくコスト高になるという表裏一体の関係にあるため、小型軽量化を優先して進める中で、如何にして高い耐湿性能を確保するかということが重要であった。
【0013】
本発明はこのような従来の課題を解決し、小型軽量化と低価格化を図り、しかも優れた耐湿性能を発揮することが可能な、ケースモールド型コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、断面小判形の素子を複数個並列して外部接続用の端子部を一端に設けたバスバーで夫々接続し、これらを上記素子に設けられた一対の電極を垂直方向にしてケース内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、上記ケース内に樹脂モールドされた素子の上端からモールド樹脂の外表面までの樹脂厚みを12mm以下としたとき、上記素子の小判形に形成された断面の長径をa、同短径をbとした場合の偏平率(a−b)/aを30%以下とした構成のものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によるケースモールド型コンデンサは、耐湿性能を支配するモールド樹脂開口面からの水分浸入に対して、必要最低限のモールド樹脂厚みを確保した状態で、素子の偏平率を30%以下とすることにより、モールド樹脂開口面から浸入した水分の影響を受ける部分を減少させることができるようになるため、耐湿性能を向上させることができるという効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態)
以下、実施の形態を用いて、本発明の特に全請求項に記載の発明について説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態によるケースモールド型コンデンサの構成を示した正面断面図、図2は同ケースモールド型コンデンサのモールド樹脂厚みによる耐湿性能を示した特性図であり、図1において、1は金属化フィルムコンデンサ(以下、素子1と呼ぶ)を示し、この素子1はポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面または両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルム(図示せず)を一対とし、上記金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向する状態で巻回し、両端面に亜鉛を溶射したメタリコン電極(図示せず)を夫々形成することによってP極電極とN極電極の一対の取り出し電極を設けて構成されたものである。
【0018】
2は上記素子1のP極電極またはN極電極に図示しない一端が接合されたバスバーであり、図示はしないがP極用とN極用の一対で用いられるものである。3は樹脂製(本実施の形態においてはPPS(ポリフェニレンサルファイト)を用いたが、これに限定されるものではない)の上面開放形のケース、4はこのケース3内に充填されたモールド樹脂であり、本実施の形態においてはエポキシ樹脂を用いたものである。
【0019】
次に、このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサのモールド樹脂4による耐湿性能の影響を確認する目的で、上記素子1とバスバー2間の距離aを1mmとした場合の、素子1の上端からモールド樹脂4の外表面までのモールド樹脂4の厚みbを変化させた場合の耐湿性能を試験した結果を図2に示す。
【0020】
なお、試験は、85℃、85%RHの雰囲気中に1000時間放置した後、DC500Vを1分間通電(at25℃)した時の漏れ電流LC(μA)を測定して評価したものであり、モールド樹脂4の厚みは12mm、9mm、8mm、7mm、5mmとした。
【0021】
図2から明らかなように、素子1の上端からモールド樹脂4の外表面までのモールド樹脂4の厚みbが耐湿性能に与える影響は大きく、同モールド樹脂4の厚みbが薄くなるほど耐湿性能が低下して漏れ電流LCが大きくなることが分かり、この結果から、漏れ電流LCを2μA未満に抑えようとすると、同モールド樹脂4の厚みbは8mm以上、好ましくは12mm以上必要であると言える。
【0022】
続いて、上記モールド樹脂4の厚みを12mmとしたときに、素子1の偏平率による耐湿性能の影響を確認する目的で、図3に示すように、素子1の小判形に形成された断面の長径をa、同短径をbとした場合の偏平率(a−b)/aが異なるサンプルを作製し、夫々の耐湿性能を試験した結果を図4に示す。
【0023】
なお、試験は、85℃、85%RHの雰囲気中に1000時間放置した後、DC500Vを1分間通電(at25℃)した時の単位容量当たりの漏れ電流LC(μA/μF)を測定して評価したものであり、素子1の偏平率は26%、38%、41%とした。
【0024】
図4から明らかなように、素子1の偏平率が耐湿性能に与える影響は大きく、偏平率が大きくなるほど耐湿性能が低下して漏れ電流LCが大きくなることが分かり、これは、図5に示すように、図中の上部側(図示はしないがモールド樹脂部分)から浸入してくる水分が一定の位置(図中の点線位置)まで達したと推定したときに、偏平率が大きい素子1aの方が偏平率が小さい素子1bよりも水分浸入の影響を受ける表面積が大きいことに起因し、これにより、より多くの水分が浸入して漏れ電流LCが悪化するものと思われる。
【0025】
従って、より高い耐湿性能を確保しようとすると、素子1の偏平率は30%以下であることが好ましく、このようにモールド樹脂4の厚みを12mmとしたときの素子1の偏平率を30%以下とすることにより、高い耐湿性能を発揮することができるようになることが分かり、設計上、どうしても偏平率が大きい素子1を使用しなければならない場合には、モールド樹脂4の厚みを増すか、あるいはモールド樹脂4に耐湿性に優れた添加剤等を混入する等の工夫が必要になることを意味するものであり、小型軽量化と低価格化を図り、しかも優れた耐湿性能を発揮することが可能なモールド樹脂4の最適設計に大きく貢献することができるようになるという格別の効果を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によるケースモールド型コンデンサは、小型軽量化と低価格化を図り、しかも優れた耐湿性能を発揮することができるという効果を有し、特に、ハイブリッド自動車等の自動車用分野のコンデンサとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態によるケースモールド型コンデンサの構成を示した正面断面図
【図2】同ケースモールド型コンデンサのモールド樹脂厚みによる耐湿性能の関係を示した特性図
【図3】同ケースモールド型コンデンサに使用される素子の偏平率を示した斜視図
【図4】同ケースモールド型コンデンサに使用される素子の偏平率による耐湿性能の関係を示した特性図
【図5】同ケースモールド型コンデンサに使用される素子の偏平率による水分浸入の状態を推定した概念図
【図6】(a)従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した平面断面図、(b)同正面断面図
【符号の説明】
【0028】
1、1a、1b 素子
2 バスバー
3 ケース
4 モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面に一対の電極が設けられた断面小判形の素子を複数個並列して外部接続用の端子部を一端に設けたバスバーで夫々接続し、これらを上記素子に設けられた一対の電極を垂直方向にしてケース内に収容し、少なくとも上記バスバーの端子部を除いて樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、上記ケース内に樹脂モールドされた素子の上端からモールド樹脂の外表面までのモールド樹脂厚みを12mm以下としたとき、上記素子の小判形に形成された断面の長径をa、同短径をbとした場合の偏平率(a−b)/aを30%以下としたケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
ケース内に充填されて素子を樹脂モールドするモールド樹脂としてエポキシ樹脂を用いた請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−200134(P2009−200134A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38255(P2008−38255)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】