説明

ケーブル接続部用常温収縮チューブ及びケーブル接続部

【課題】耐外傷性が良好で、拡径伸長状態での破断が生じにくい上に、永久伸び特性・応力緩和特性にも優れるケーブル接続部用常温収縮チューブ、及びそのような常温収縮チューブを備えたケーブル接続部を提供する。
【解決手段】ケーブル接続部用常温収縮チューブ7は、(A)エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、(B)プロセスオイル60〜100質量部、(C)サブ5〜30質量部、及び(D)シリカ50〜80質量部を含有する組成物の架橋体からなる。また、ケーブル接続部は、前記ケーブル接続部用常温収縮チューブを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)等のケーブルの接続に使用される常温収縮チューブ、及びそのような常温収縮チューブを用いたケーブル接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CVケーブル等の電力ケーブルの中間接続部及び終端接続部、あるいは通信ケーブルの端末等における接続部においては、防水、保護、絶縁補強等を目的として常温収縮チューブが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この常温収縮チューブは、エチレンプロピレンゴム等の弾性ゴム材料で作られた筒状体であり、常温で収縮状態となる。このため、装着する際には、予め常温収縮チューブを押し広げる(以下、拡径という)必要があり、この拡径状態を維持するためにインナーコアと称する拡径保持部材が常温収縮チューブ内に挿入される(通常、インナーコアが内部に装着された状態、つまりインナーコア付き常温収縮チューブとして保管される)。そして、インナーコアが挿入された状態で、装着すべき箇所に配置され、その後、インナーコアを引き抜くことにより、常温収縮チューブが収縮して所定の位置に装着される。
【0004】
このような常温収縮チューブにおいては、拡径のため、伸び特性に優れること、インナーコア引き抜き後の被装着面に対する密着性を確保するため、永久伸び特性及び応力緩和特性(圧縮永久ひずみ)が良好であること、使用時及び保管時(拡径時)において耐外傷性に優れること等が要求される。
【0005】
しかしながら、従来の常温収縮チューブは、これらの要求特性を必ずしも十分に満足するものではなく、特に、保管時の拡径伸長状態で傷が付くと、軸方向に破断が生じやすいという問題があった。拡径時の破断を防止するためには、100%モジュラス等を小さくして柔軟性を付与し、拡径時の欠陥部への応力集中を緩和するとともに、引裂強さを高めればよいが、柔軟性を付与し引裂強さを高めると永久伸び特性・応力緩和特性が不良となり、その結果、被装着面に対する密着性が低下し、所期の保護機能、防水機能等が得られなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−87664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、耐外傷性が良好で、拡径伸長状態での破断が生じにくい上に、永久伸び特性・応力緩和特性にも優れるケーブル接続部用常温収縮チューブ、及びそのような常温収縮チューブを備えたケーブル接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、(A)エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、(B)プロセスオイル60〜100質量部、(C)サブ5〜30質量部、及び(D)シリカ50〜80質量部を含有する組成物の架橋体からなることを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のケーブル接続部用常温収縮チューブにおいて、前記組成物は、(A)エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、(B)プロセスオイル70〜90質量部、(C)サブ10〜20質量部、及び(D)シリカ60〜70質量部を含有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のケーブル接続部用常温収縮チューブにおいて、(B)成分のプロセスオイルは、パラフィン系プロセスオイルであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブにおいて、(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体のジエン成分が、エチリデンノルボルネン(ENB)であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブにおいて、前記組成物は、(a)デュロメータ硬さ40〜50、(b)100%モジュラス0.60〜0.80MPa、(c)300%モジュラス1.50〜2.00MPa、(d)引張強さ7.0〜15.0MPa、(e)伸び800〜1000%、(f)引裂強さ20〜30N/mm、(g)永久伸び5.0〜10.0%、(h)圧縮永久ひずみ13〜25%であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブにおいて、ケーブル接続部の防水保護チューブ用途に使用されるものであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブを備えたことを特徴とするケーブル接続部である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐外傷性が良好で、拡径伸長状態での破断が生じにくい上に、永久伸び特性・応力緩和特性にも優れるケーブル接続部用常温収縮チューブ、及びそのような常温収縮チューブを備えたケーブル接続部を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るケーブル接続部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明のケーブル接続部用常温収縮チューブは、(A)エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体をベース樹脂とし、このベース樹脂100質量部に対し、(B)プロセスオイル60〜100質量部、(C)サブ5〜30質量部、及び(D)シリカ50〜80質量部を含有する組成物の架橋体から構成される。
【0019】
(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体は、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、エチレン及びプロピレンに、ジエン成分としてエチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等を共重合させたものが使用される。エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
(B)成分のプロセスオイルは、特に限定されるものではなく、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイルのいずれであってもよいが、引裂強さの点からパラフィン系プロセスオイルが好ましい。プロセスオイルは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
このプロセスオイルの含有量は、ベース樹脂のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、60〜100質量部である。プロセスオイルの含有量が60質量部未満では、組成物の硬度が大きくなり、引裂強さが低下する。また、100質量部を超えると、永久伸び特性、応力緩和特性が低下する。プロセスオイルの含有量の好ましい範囲は、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、70〜90質量部である。
【0022】
(C)成分のサブは、ファクチスとも称されるもので、黒サブ、白サブ、飴サブ等が知られているが、いずれも使用可能であり、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、天満サブ化工(株)製の無硫黄U−8、無硫黄U−10(以上、いずれも商品名)が好ましく使用される。これらの無硫黄U−8、無硫黄U−10は、天然植物油を架橋したものであり、環境負荷が少ない点から好ましい。サブは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
このサブの含有量は、ベース樹脂のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、5〜30質量部である。サブの含有量が5質量部未満では、引裂強さが低下し、30質量部を超えると、永久伸び特性、応力緩和特性が低下する。サブの含有量の好ましい範囲は、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、10〜20質量部である。
【0024】
(D)成分のシリカは、特に限定されるものではないが、本発明の目的のためには、高分散性シリカの使用が好ましく、特に、応力緩和特性の点から、CTAB比表面積が75〜170m/gで、かつBET比表面積が150〜250m/gのものを使用することが好ましい。このような物性を有する市販品を例示すると、例えば、Huber(株)製のZeopol 8715、Zeopol 8745、PPG製のHisil 2000、ローディア製のZeosil 1165MP、Zeosil 1115MP、デグサ(株)製のBV 3380、アクゾ(株)製のパーカシル K1430(以上、いずれも商品名)等が挙げられる。シリカは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
このシリカの含有量はベース樹脂のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、50〜80質量部である。含有量が50質量部未満では、引裂強さが低下し、拡径伸長状態で破断が生じやすくなる。また、80質量部を超えると、永久伸び特性、応力緩和特性が低下する。シリカの含有量の好ましい範囲は、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、60〜70質量部である。
【0026】
常温収縮チューブを形成する組成物には、有機過酸化物等の架橋剤を配合することができる。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。架橋剤としては、なかでも永久伸び特性の点からジクミルパーオキサイドが好ましい。有機過酸化物は、通常、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部に対し、2〜6質量部配合される。
【0027】
また、架橋剤として有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を配合すると耐外傷性や応力緩和特性をさらに向上させることができる。架橋助剤としては、例えば、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、N,N′−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、多官能性メタクリレートモノマー等が挙げられる。架橋助剤の配合量は、例えば、メタクリル酸亜鉛では、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部に対し、通常、1〜5質量部、好ましくは、2〜4質量部配合される。また、N,N′−m−フェニレンジマレイミドでは、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部に対し、通常、0.5〜3質量部、好ましくは、0.5〜1.5質量部配合される。
【0028】
組成物には、さらに、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体に通常配合される、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、着色剤、難燃剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、軟化剤、可塑剤、その他の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。また、シリカ以外の無機充填剤も、本発明の効果を阻害しない範囲で使用してもよい。
【0029】
本発明の常温収縮チューブは、上記各成分をニーダ等を用いて均一に混合してゴムコンパウンドを得、これをチューブ状に成形した後、常法により架橋させることにより得られる。
【0030】
このようにして得られる常温収縮チューブは、耐外傷性が良好で、拡径伸長状態での破断が生じにくい上に、永久伸び特性・応力緩和特性にも優れている。したがって、これを用いて信頼性の高いケーブル接続部を形成することができる。
【0031】
本発明の常温収縮チューブは、(a)デュロメータ硬さが40〜50であることが好ましく、46〜49であることがより好ましい。デュロメータ硬さが40未満では、引裂強さが低下し、50を超えると、柔軟性が低下して拡径伸長状態での破断が生じやすくなる。デュロメータ硬さは、JIS K 6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―硬さの求め方)のタイプAデュロメータにより測定される。
【0032】
また、本発明の常温収縮チューブは、(b)100%モジュラスが0.60〜0.8MPaで、(c)300%モジュラスが1.50〜2.00MPaであることが好ましく、(b)100%モジュラスが0.60〜0.70MPa、(c)300%モジュラスが1.50〜1.60MPaであることがより好ましい。100%モジュラス及び300%モジュラスのいずれか一方でも前記値を超えると、柔軟性が低下して拡径伸長状態での破断が生じやすくなる。また、いずれか一方でも前記値に満たないと、永久伸び特性が低下する。
【0033】
また、本発明の常温収縮チューブは、(d)引張強さが7.0〜15.0MPaで、(e)伸びが800〜1000%であることが好ましく、(b)引張強さが8.0〜10.0MPaで、(e)伸びが900〜1000%であることがより好ましい。引張強さ及び伸びのいずれか一方でも前記値に満たないと、拡径時に常温収縮チューブが破断しやすくなる。また、いずれか一方でも前記値を超えると、応力緩和特性が低下する。なお、100%モジュラス、300%モジュラス、引張強さ及び伸びは、JIS K 6251(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張特性の求め方)に準拠して測定される。
【0034】
また、本発明の常温収縮チューブは、(f)引裂強さ20〜30N/mmであることが好ましく、25〜30N/mmであることがより好ましい。引裂強さが20N/mm未満では、拡径時に常温収縮チューブが破断しやすくなる。また、30N/mmを超えると永久伸び特性が低下する。引裂強さは、JIS K 6252(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引裂強さの求め方)に準拠して測定される。
【0035】
また、本発明の常温収縮チューブは、(g)永久伸びが5.0〜10.0%であることが好ましく、8.0〜9.0%であることがより好ましい。永久伸びが10.0%を超えるとインナーコア引き抜き後の被装着面に対する密着性が低下する。また、5.0%に満たないと拡径時に常温収縮チューブが破断しやすくなる。永久伸びは、JIS K 6273(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張り永久ひずみ、伸び率及びクリープ率の求め方)に準拠して測定される。
【0036】
また、本発明の常温収縮チューブは、(h)圧縮永久ひずみが13〜25%であることが好ましく、13〜18%であることがより好ましい。圧縮永久ひずみが25%を超えると拡径時のインナーコア引き抜き後の被装着面に対する密着性が低下する。また、13%に満たないと伸び特性が低下する。圧縮永久ひずみは、JIS K 6262(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方)に準拠し測定される。
【0037】
次に、本発明の常温収縮チューブを用いたケーブル接続部について説明する。
【0038】
図1は、本発明の常温収縮チューブを用いたケーブル接続部の一例を示す縦断面図である。この例は、本発明の常温収縮チューブをケーブル接続部の防水保護チューブとして用いた例である。
【0039】
図1において、符号1は、接続すべき1対の電力ケーブルを示している。これらの各電力ケーブル1、1は端部が段剥ぎされ、それぞれケーブル導体2及びケーブル絶縁体3が露出している。ケーブル導体2同士は導体接続管4により接続されており、導体接続管4上にはケーブル絶縁体3、3間に跨って絶縁筒5が装着されている。絶縁筒5は、絶縁性を有する絶縁筒本体5aの内周面及び外周面にそれぞれ半導電性を有する内部電極5b及び外部電極5cを設けた構造を有する。そして、この絶縁筒5の外側には編組メッシュ6が設けられ、さらに、その編組メッシュ6を覆うように本発明の常温収縮チューブ7が装着されている。
【0040】
常温収縮チューブ7は、使用前に、内部にインナーコアと称する筒状の拡径保持部材を挿入して拡径状態を維持し、ケーブルを通し、所定の位置に配置させたところで、支持材を抜き去ることにより装着させたものである。支持材を抜き去ることにより、常温収縮チューブ7が縮径し、所定の位置に固定される。
【0041】
常温収縮チューブ7の両端部にはケーブル1(ケーブルシース8)に跨ってさらに絶縁テープ9が巻回されており、また、ケーブル外部半導電層(図示なし)上には、ACPテープ等の半導電性融着テープ10が巻回されている。
【0042】
このように構成されるケーブル接続部においては、防水保護チューブとして、(A)エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、(B)プロセスオイル60〜100質量部、(C)サブ5〜30質量部、及び(D)シリカ50〜80質量部を含有する組成物の架橋体からなる常温収縮チューブが使用されているので、常温収縮チューブ自身の破断が防止されるとともに、常温収縮チューブと絶縁筒との密着性も良好である。したがって、優れた防水性を維持することができる。
【0043】
なお、上記実施形態は、本発明の常温収縮チューブを防水保護チューブとして用いた中間接続部の例であるが、本発明はこのような例に限定されるものではなく、導体接続管上に装着する絶縁補強チューブ等としても使用することができる。また、接続部も中間接続部に限らず、ケーブル終端部等にも適用可能である。絶縁補強チューブとして用いた場合には、信頼性の高い絶縁補強体を形成することができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体(EPDM;ダウ(株)製 商品名
Nordel IP4570)100質量部、シリカ(Huber(株)製 商品名 Zeopol 8745)53質量部、パラフィン系プロセスオイル63質量部、サブ(天満サブ化工(株)製 商品名 無硫黄U−8)7質量部、酸化防止剤(大内新興化学工業社製 商品名 ノクラックMB)2質量部、脂肪酸系滑剤3質量部、活性剤の酸化亜鉛(活性剤(1)と表記)5質量部、同活性剤のポリエチレングリコール(活性剤(2)と表記)1質量部、着色剤のカーボンブラック2質量部、加硫剤のジクミルパーオキサイド8質量部、加硫助剤のメタクリル酸亜鉛3質量部を75Lニーダにて均一に混練した後、チューブ状に押し出し、0.6MPa、180℃で80分間加熱加硫して、外径37mm、長さ670mm、肉厚4.5mmの常温収縮チューブを作製した。また、これとは別に、混練物を8インチロールでシート状に押し出し、170℃×25分間のプレス成形加硫を行って、2mm厚のシートを作製した。
【0046】
(実施例2〜8、比較例1〜5)
実施例1と同様にして、表1に示す成分を表1に示す量で用いて、常温収縮チューブ及びシートを作製した。実施例1で用いた成分以外の成分は次の通りである。
焼成クレー
加硫助剤:N,N′−m−フェニレンジマレイミド
【0047】
各実施例及び各比較例で得られたシートについて、デュロメータ硬さ、100%及び300%モジュラス、引張強さ、伸び、引裂強さ、永久伸び、及び圧縮永久ひずみを測定した。また、各実施例及び各比較例で得られた常温収縮チューブについて、保管試験及び水密試験を行い、その特性を評価した。測定方法、評価方法等は次の通りである。
【0048】
[デュロメータ硬さ]
JIS K 6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―硬さの求め方)に規定するタイプAデュロメータにより測定した。
[100%及び300%モジュラス]
JIS K 6251(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張特性の求め方)に基づいて100%及び300%伸長時の引張応力をそれぞれ測定した。
[引張強さ、伸び]
JIS K 6251に基づいて測定した。
[引裂強さ]
JIS K 6252(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引裂強さの求め方)に基づいて測定した。
[永久伸び]
JIS K 6273(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張り永久ひずみ、伸び率及びクリープ率の求め方)に規定される短冊状試験片を200%伸長した状態で70℃の恒温槽中に24時間保持した後、開放し、開放30分後の標線間距離を測定し、伸長前の標線間距離に対する伸長後の標線間距離の変化率を求めた。
[圧縮永久ひずみ]
JIS K 6262(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方)に準拠し、150℃で72時間の条件で圧縮率25%として測定した。
[保管試験]
拡径率(拡径前の常温収縮チューブの直径に対する拡径後の直径の変化率)300%に拡径した常温収縮チューブを70℃で10日間保管し、破断の有無を調べた。チューブに破断が認められなかった場合を「○」、破断が認められた場合を「×」で示した。
[水密試験]
常温収縮チューブを用いて図1に示すような直線接続部を組み立て、約10kPaの圧力下、1時間放置し、接続部内への水の浸入の有無を調べた。水の浸入が認められなかった場合を「○」、水の浸入が認められた場合を「×」で示した。
【0049】
これらの結果を表1の下欄に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、実施例1〜8ではいずれもデュロメータ硬さ、100%及び300%モジュラス、引張強さ、伸び、引裂強さ、永久伸び、圧縮永久ひずみ、保管試験、水密試験において、良好な結果が得られた。さらに、エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、プロセスオイル70〜90質量部、(C)サブ10〜20質量部、及びシリカ60〜70質量部とすることにより、100%及び300%モジュラス、引張強さ、伸び、引裂強さ、永久伸び、圧縮永久ひずみにおいて、極めて良好な結果が得られた(実施例4、5)。
【符号の説明】
【0052】
1…電力ケーブル、2…ケーブル導体、3…ケーブル絶縁体、4…導体接続管、5…絶縁筒、6…編組メッシュ、7…常温収縮チューブ、8…ケーブルシース、9…絶縁テープ、10…半導電性融着テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、(B)プロセスオイル60〜100質量部、(C)サブ5〜30質量部、及び(D)シリカ50〜80質量部を含有する組成物の架橋体からなることを特徴とするケーブル接続部用常温収縮チューブ。
【請求項2】
前記組成物は、(A)エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体100質量部あたり、(B)プロセスオイル70〜90質量部、(C)サブ10〜20質量部、及び(D)シリカ60〜70質量部を含有することを特徴とする請求項1記載のケーブル接続部用常温収縮チューブ。
【請求項3】
(B)成分のプロセスオイルは、パラフィン系プロセスオイルであることを特徴とする請求項1または2記載のケーブル接続部用常温収縮チューブ。
【請求項4】
(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体のジエン成分が、エチリデンノルボルネンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブ。
【請求項5】
前記組成物は、(a)デュロメータ硬さ40〜50、(b)100%モジュラス0.60〜0.80MPa、(c)300%モジュラス1.50〜2.00MPa、(d)引張強さ7.0〜15.0MPa、(e)伸び800〜1000%、(f)引裂強さ20〜30N/mm、(g)永久伸び5.0〜10.0%、(h)圧縮永久ひずみ13〜25%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブ。
【請求項6】
ケーブル接続部の防水保護チューブ用途に使用されるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のケーブル接続部用常温収縮チューブを備えたことを特徴とするケーブル接続部。

【図1】
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【公開番号】特開2012−16212(P2012−16212A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151953(P2010−151953)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】