説明

ゲートウェイ装置、通信システム、並びに通信制御方法及びプログラム

【課題】コアネットワーク設備に改良を施すこと無く、且つ既存のフェムト基地局を有効利用してプレゼンスサービス等のサービスを提供する。
【解決手段】通信システム1を構成するRAN−GW30は、無線基地局10に公衆網2を介して接続され、無線基地局10とコアネットワーク3との間のトラフィックを中継する。RAN−GW30は、予め定めたメッセージを中継した場合、無線基地局10に無線接続可能な移動端末40に対してサービスを提供するサーバ20に、前記サービスの提供を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートウェイ装置、通信システム、並びに通信制御方法及びプログラムに関し、特にフェムト基地局を用いてプレゼンスサービス等のサービスを提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内へ設置可能な無線基地局の開発が進められている。この無線基地局により形成されるセルは、そのカバーエリアが屋外に設置される無線基地局と比較して極めて小さいことから、一般にフェムトセルと呼ばれる。そこで、以降の説明においては、フェムトセルを形成する無線基地局をフェムト基地局と呼称する。これに対して、フェムトセルより大規模なセル(一般にマクロセルと呼ばれる)を形成する無線基地局をマクロ基地局と呼称し、フェムト基地局と区別することがある。
【0003】
また、フェムト基地局は、インターネット等の公衆網を経由して移動体通信網(コアネットワーク)に編入する。すなわち、フェムト基地局は、マクロ基地局とは異なり、基地局制御装置により制御されること無く動作する。フェムト基地局は、マクロ基地局のカバーエリアを補うために導入されることが多い。
【0004】
さらに、フェムト基地局は、そのサービスエリアが小さく且つ設置がマクロ基地局と比較して容易であることから、上記のような不感地帯での利用に限らず、設置場所に固有のサービスへの利用が検討されている。
【0005】
このようなサービスの一つに、「プレゼンス」と呼ばれるサービスがある。プレゼンスサービスは、或る人や物が或る場所に存在するか否かを、その人や物へとアクセスする主体に知れるようにするものである。プレゼンスサービスは、インターネットや無線LAN等を使用する通信システムで既に提供されている。
【0006】
フェムト基地局を用いてプレゼンスサービスを提供するケースとして、例えばショッピングモールが挙げられる。移動端末を所持するユーザが、フェムト基地局が店舗毎に設置されたショッピングモールを訪れたとする。この場合、移動端末が各フェムト基地局のサービスエリアへ進入する度毎に情報配信等のサービスを提供できれば、店舗の売り上げが伸びる可能性がある。
【0007】
例えば特許文献1に、移動端末が特定エリアへ進入した際に、特定のサービスを開始するシステムが記載されている。このシステムでは、無線基地局は、自局のサービスエリア内に移動端末が進入した際、移動端末のユーザ識別子を含む位置登録情報を交換局に対して送信する。交換局は、データベースを参照して、ユーザ識別子に対応するサービス起動条件情報を取得すると共に、位置登録情報がサービス起動条件情報に該当する場合に、サービス起動条件情報に基づくサービスを起動する。
【0008】
また、特許文献2には、フェムト基地局を用いた広告配信システムが記載されている。このシステムでは、フェムト基地局は、移動端末が所望の情報を取得するためにパケット通信を開始した際に、そのパケット通信に割り込ませて、自局とローカルに或いはインターネットを介して接続される記憶装置に格納される広告データを、移動端末に対して配信する。
【0009】
さらに、特許文献3には、フェムト基地局を用いた屋内機器制御システムが記載されている。このシステムでは、サーバが、自身とローカル接続されたフェムト基地局のサービスエリアへの移動端末の出入りをトリガとして、屋内機器を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−143634号公報
【特許文献2】特開2009−212663号公報
【特許文献3】特開2008−283648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の特許文献1〜3には、その導入が困難であるという課題があった。具体的には、上記の特許文献1では、既存のコアネットワーク設備に改良を加える必要がある。このため、導入に際してはコアネットワークの運用を停止しなければならない。この場合、コアネットワークに帰属する全ての移動端末が通信不可となる。また、トラフィックの増大に伴って、コアネットワークでの処理に負荷がかかる。また、上記の特許文献2及び3に記載のフェムト基地局は、一般的なフェムト基地局と異なり、コアネットワークへの編入に必要で無い特殊なインタフェースや通信機能を有する。このような特殊なインタフェースや通信機能の追加に伴ってフェムト基地局の価格が高額となるため、導入に際してはユーザに少なからず費用負担を強いることとなる。
【0012】
従って、本発明の目的は、コアネットワーク設備に改良を施すこと無く、且つ既存のフェムト基地局を有効利用してプレゼンスサービス等のサービスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様に係るゲートウェイ装置は、自装置に公衆網を介して接続される無線基地局と、コアネットワークとの間のトラヒックを中継する中継手段と、前記中継手段で予め定めたメッセージが中継された場合、前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバに、前記サービスの提供を開始させる制御手段とを備える。
【0014】
また、本発明の一態様に係る通信システムは、無線基地局と、前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバと、前記無線基地局に公衆網を介して接続され、前記無線基地局とコアネットワークとの間のトラヒックを中継するゲートウェイと備える。前記ゲートウェイは、予め定めたメッセージを中継した場合、前記サーバに前記サービスの提供を開始させる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る通信制御方法は、ゲートウェイに用いる通信制御方法を提供する。この通信制御方法は、前記ゲートウェイに公衆網を介して接続される無線基地局と、コアネットワークとの間のトラヒックを中継し、予め定めたメッセージを中継した場合、前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバに、前記サービスの提供を開始させることを含む。
【0016】
さらに、本発明の一態様に係る通信制御プログラムは、ゲートウェイに、前記ゲートウェイに公衆網を介して接続される無線基地局と、コアネットワークとの間のトラヒックを中継する処理と、予め定めたメッセージを中継した場合、前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバに、前記サービスの提供を開始させる処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コアネットワーク設備に改良を施すこと無く、且つ既存のフェムト基地局を有効利用してプレゼンスサービス等のサービスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るゲートウェイの具体的な構成例を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る通信システムの第1の動作例を示したシーケンス図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る通信システムの第2の動作例を示したシーケンス図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る通信システムの第3の動作例を示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るゲートウェイ及びこれを適用する通信システムの実施の形態を、図1〜図5を参照して説明する。なお、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係る通信システム1は、無線基地局10と、サービス提供サーバ20と、RAN−GW(Radio Access Network Gateway)30とを含む。無線基地局10は、インターネット等の公衆網2を経由してコアネットワーク3に編入し、以てフェムト基地局として動作する。サービス提供サーバ20は、無線基地局20に無線接続可能な移動端末40に対して、所定のサービス(その詳細については後述する)を提供する。RAN−GW30は、無線基地局10とコアネットワーク3との間のトラフィックを中継する。
【0021】
なお、サービス提供サーバ20は、RAN−GW30とローカル接続されていても良い。また、図示を省略するが、コアネットワーク3には、1以上のマクロ基地局と、1以上の基地局制御装置(RNC:Radio Network Controller)とで構成されるRANが接続される。さらに、移動端末40には、携帯電話機や、無線通信機能を有するPC(Personal Computer)等を用いることができる。
【0022】
動作において、RAN−GW30は、所定のメッセージ(例えば、移動端末40からの位置更新要求(Location Updating Request))の中継をトリガとして、サービス提供サーバ20に、サービスの提供を開始させる。
【0023】
このため、通信システム1においては、コアネットワーク3の設備には何ら改良を施すこと無く、且つ無線基地局10には一般的なフェムト基地局を用いて、プレゼンスサービス等のサービスを提供することができる。
【0024】
以下、本実施の形態の具体的な構成例及び動作例を、図2〜図5を参照して詳細に説明する。
【0025】
図2に示すように、RAN−GW30は、中継部31と、制御部32とを備えている。この内、中継部31は、無線基地局10とコアネットワークの間で種々のメッセージを中継する。一方、制御部32は、サービス開始管理部33を含む。サービス開始管理部33は、コピーフラグと、サービス開始フラグとを管理する。
【0026】
ここで、コピーフラグは、無線基地局10のIMSI(International Mobile Subscriber Identity)、移動端末40のIMSI、移動端末40の位置情報(緯度、経度等)、及び移動端末40の通信状態に関する情報(発信中、着信中、通話中等の状態を示す情報)を取得すべきメッセージを判別するための情報である。なお、以降の説明においては、無線基地局10のIMSIをIMSI.Femtoと表記し、移動端末40のIMSIをIMSI.UEと表記する。また、移動端末40の通信状態に関する情報を、通信状態情報と呼称する。
【0027】
コピーフラグに例えばLOCATION UPDATING REQUESTが設定されている場合、制御部32は、中継部31でLOCATION UPDATING REQUESTが中継された際に、LOCATION UPDATING REQUEST中のIMSI.Femto、IMSI.UE、位置情報、及び通信状態情報をコピーして保持する。
【0028】
一方、サービス開始フラグは、サービス提供サーバ20によるサービス開始のトリガとすべきメッセージを判別するための情報である。
【0029】
サービス開始フラグに例えばLOCATION UPDATING REQUESTが設定されている場合、制御部32は、中継部31でLOCATION UPDATING REQUESTが中継された場合に、保持しているIMSI.Femto、IMSI.UE、位置情報、及び通信状態情報の少なくとも一つを含めたサービス起動メッセージを、サービス提供サーバ200に送信する。
【0030】
また、無線基地局10は、無線通信部11と、制御部12とを備えている。この内、無線通信部11は、アンテナを介して移動端末40との無線通信を行う。一方、制御部12は、無線基地局10全体の制御に加えて、公衆網2及びRAN−GW30を介して、コアネットワーク3との通信を行う。
【0031】
さらに、サービス提供サーバ20は、サービス管理部21と、制御部22とを備えている。この内、サービス管理部21は、サービス内容を管理する。ここで、サービス内容には、外部サーバ50に情報配信を要求することや、家電機器60を制御すること等が含まれる。
【0032】
一方、制御部22は、サービス提供サーバ20全体の制御に加え、サービス起動メッセージをRAN−GW30から受信した場合には、サービス管理部22で管理されるサービス内容を参照し、サービス起動メッセージに含まれる情報に応じたサービスを開始する。サービス起動メッセージにIMSI.Femtoが含まれる場合、制御部22は、無線基地局の設置場所を特定すると共に、その場所に固有のサービスを提供できる。サービス起動メッセージにIMSI.UEが含まれる場合、制御部22は、移動端末を特定すると共に、その移動端末に固有のサービスを提供できる。サービス起動メッセージに位置情報が含まれる場合、制御部22は、無線基地局の設置場所と比較してより正確な移動端末の存在位置に固有のサービスを提供できる。サービス起動メッセージに通信状態情報が含まれる場合、制御部22は、移動端末の通信状態に応じたサービスを提供できる。
【0033】
以下、本実施の形態の動作を説明するが、まず、移動端末40からの位置更新に係るメッセージをトリガとしてサービスを開始する場合の動作例(1)を、図3を参照して説明する。次に、移動端末40からの発信に係るメッセージをトリガとしてサービスを開始する場合の動作例(2)を、図4を参照して説明する。最後に、移動端末40への着信に係るメッセージをトリガとしてサービスを開始する場合の動作例(3)を、図5を参照して説明する。
【0034】
なお、下記の動作例(1)〜(3)では、サービス提供サーバ20とRAN−GW30との間の通信がSIP(Session Initial Protocol)に則して行われる場合を扱うが、この通信は、SIP以外のプロトコル(MAP、XMPP、HTTP等)に則して行われても良い。また、無線通信方式としてWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式を採用する場合を扱うが、LTE(Long Term Evolution)方式等の他の無線通信方式を採用しても良い。この場合も、以降の説明が同様に適用される。
【0035】
[動作例(1)]
図3に示すように、無線基地局10は、コアネットワーク3への編入時、RAN−GW30との相互通信により、自局10とRAN−GW30との間でIPsecトンネルを確立する(ステップS0)。
【0036】
移動端末40は、LAI(Location Area Information)の更新(normal location updating)を行う場合(ステップS1)、LOCATION UPDATING REQUESTを無線基地局10に送信する(ステップS2)。
【0037】
LOCATION UPDATING REQUESTを受信すると、無線基地局10は、移動端末40が自局10のサービスエリアへ進入したことを検知する。この時、無線基地局10は、端末登録要求をRAN−GW30に送信する(ステップS3)。
【0038】
RAN−GW30は、移動端末40をコアネットワーク3側に受け入れても良いと判断した場合、端末登録受入を無線基地局10へ応答する(ステップS4)。
【0039】
端末登録受入を受信すると、無線基地局10は、LOCATION UPDATING REQUESTをRAN−GW30へ転送する。RAN−GW30は、LOCATION UPDATING REQUESTを、コアネットワーク3へ更に転送する (ステップS5)。
【0040】
この後、コアネットワーク3は、NAS(Non Access Stratum)に則した移動端末40との相互通信により、移動端末40を認証する(ステップS6)。
【0041】
認証が終了すると、コアネットワーク3は、LOCATION UPDATING ACCEPTをRAN−GW30に送信する。RAN−GW30は、LOCATION UPDATING ACCEPTを無線基地局10へ転送する。無線基地局10は、LOCATION UPDATING ACCEPTを移動端末40へ更に転送する(ステップS7)。
【0042】
今、図2に示したサービス開始管理部33に、無線基地局10のIMSI.Femto及び移動端末40のIMSI.UEと、LOCATION UPDATING REQUESTが設定されたコピーフラグ及びサービス開始フラグとが対応付けて管理されているとする。この場合、RAN−GW30は、無線基地局10からコアネットワーク3へLOCATION UPDATING REQUESTを中継した場合に、LOCATION UPDATING REQUEST中の情報(IMSI.Femto、IMSI.UE、位置情報、通信状態情報)を設定したSIP−REGISTERを、上記のサービス起動メッセージとしてサービス提供サーバ200に送信する(ステップS8)。なお、サービス起動メッセージには、SIP−REGISTERと同等の機能を実現できるのであれば、SIPで定義されている他のメッセージを用いても良い。
【0043】
SIP−REGISTERを受信すると、サービス提供サーバ20は、SIP−200 OK(etc)をRAN−GW30へ返信する(ステップS9)。そして、サービス提供サーバ20は、サービス管理部21を参照し、SIP−REGISTERに含まれる情報(無線基地局100のIMSI.Femto、移動端末40のIMSI.UE、移動端末40の位置情報、移動端末40の通信状態情報)に対応するサービスを開始する(ステップS10)。
【0044】
例えば、サービス提供サーバ20は、移動端末40のIMSI.UEに対応付けて管理されている他の移動端末(図示せず)宛てに所定のメールを送信する。より具体的には、子供により所持される移動端末40が宅内に設置された無線基地局10に在圏すると(すなわち、子供が帰宅すると)、サービス提供サーバ20は、親により所持される他の移動端末宛てに子供の帰宅を知らせるメールを送信する。また、サービス提供サーバ20は、無線基地局10のIMSI.Femtoに対応付けて管理されている家電機器60を起動(例えば、照明機器を点灯)する。或いは、無線基地局10が店舗に設置される場合を例に取ると、サービス提供サーバ20は、外部サーバ50に対して、当該店舗に関する情報を移動端末40へ配信するよう要求する。
【0045】
このように、本動作例においては、無線基地局10のサービスエリアへの移動端末40の進入をトリガとして、移動端末40を所持するユーザに対して種々のサービスを提供できる。
【0046】
なお、RAN−GW30は、移動端末40によるマクロ基地局から無線基地局10へのハンドオーバ(例えば、コアネットワーク3から無線基地局10へのRANAP(RAN Application Part) RELOCATION REQUESTの中継)をトリガとして、サービスを起動しても良い。
【0047】
また、RAN−GW30内の制御部32は、サービスの起動に先立ち、移動端末40がサービスの提供対象すべき移動端末か否かを判定しても良い。具体的には、制御部32は、コピーフラグに設定されたメッセージ中のIMSI.UEが、予めサービスの提供を許可した移動端末のIMSI.UEと一致するか否かを判定する。
【0048】
さらに、RAN−GW30は、LOCATION UPDATING REQUESTを中継した後であれば、サービス起動メッセージとしてのSIP−REGISTERを、いつサービス提供サーバ200に送信しても良い。
【0049】
[動作例(2)]
図4に示すように、無線基地局10とRAN−GW30との間でIPsecトンネルが確立しているものとする(ステップS20)。
【0050】
移動端末40は、発信を開始する場合、無線基地局10にCM Service Requestを送信する(ステップS21)。
【0051】
CM Service Requestを受信すると、無線基地局10は、移動端末40がコアネットワーク3への接続が許可された移動端末であるか否かを照合する(ステップS21)。例えば、無線基地局10は、White Listに予め登録された移動端末のみをコアネットワーク3への接続対象とする。
【0052】
照合が完了すると、コアネットワーク3は、移動端末40を認証する(ステップS23)。この認証処理は、3GPPに準拠して実行される。
【0053】
この後、移動端末40は、SETUPを、無線基地局10及びRAN−GW30を介してコアネットワーク3に送信する(ステップS24)。これに応じて、コアネットワーク3は、CALLPROCを、RAN−GW30及び無線基地局10を介して移動端末40に送信する(ステップS25)。
【0054】
この後、コアネットワーク3は、RAB(Radio Access Bearer) ASSIGNMENT REQUESTを、RAN−GW30を介して無線基地局10に送信する(ステップS26)。これに応じて、無線基地局10は、自局10と移動端末40との間にDTCH(Dedicated Traffic Channel)を確立する(ステップS27)と共に、RAB ASSIGNMENT RESPONSEを、RAN−GW30を介してコアネットワーク3へ返信する(ステップS29)。
【0055】
そして、コアネットワーク3は、着信側の移動端末(図示せず)からの呼び出し(ALERT)を、RAN−GW30及び無線基地局10を介して移動端末40へ転送する(ステップS29)。
【0056】
そして、移動端末40は、着信側の移動端末との呼が接続された場合、通話を開始する(CONNECT、CONNECT ACK、ACK)(ステップS30)。
【0057】
上記の発信処理と並行して、RAN−GW30は、例えばALERT中の情報(無線基地局10のIMSI.Femto、移動端末40のIMSI.UE、移動端末40の位置情報、移動端末40の通信状態情報)を設定したSIP−NOTIFYを、上記のサービス起動メッセージとしてサービス提供サーバ200に送信する(ステップS31)。なお、サービス起動メッセージには、SIP−NOTIFYと同等の機能を実現できるのであれば、SIPで定義されている他のメッセージを用いても良い。
【0058】
SIP−NOTIFYを受信すると、サービス提供サーバ20は、SIP−200 OK(etc)をRAN−GW30へ返信する(ステップS32)。そして、サービス提供サーバ20は、サービス管理部21を参照し、SIP−NOTIFYに含まれる情報(無線基地局100のIMSI.Femto、移動端末40のIMSI.UE、移動端末40の位置情報、移動端末40の通信状態情報)に対応するサービスを開始する(ステップS10)。
【0059】
例えば、サービス提供サーバ20は、外部サーバ50に、移動端末40の通信状態を所定の宛先へ配信させる。より具体的には、外部サーバ50がインスタントメッセンジャーの管理サーバであり、ユーザが、PC(Personal Computer)上でインスタントメッセンジャーを操作している最中に、移動端末40を用いて発信した場合を例に取ると、サービス提供サーバ20は、ユーザが発信中(又は通話中)であるという現況を、管理サーバを介してインスタントメッセンジャーの通信相手に知らせる。
【0060】
このように、本動作例においては、移動端末40が継続して無線基地局10に在圏している状況で、例えば発信を実施することをトリガとして、移動端末40を所持するユーザに対して種々のサービスを提供できる。
【0061】
なお、RAN−GW30は、IMSI.Femto、IMSI.UE、位置情報、及び通信状態情報を取得可能であれば、これらの情報をいつ取得しても良い。また、これらの情報を取得した後であれば、RAN−GW30は、サービス起動メッセージとしてのSIP−NOTIFYを、いつサービス提供サーバ200に送信しても良い。
【0062】
[動作例(3)]
図5に示すように、無線基地局10とRAN−GW30との間でIPsecトンネルが確立しているものとする(ステップS40)。
【0063】
コアネットワーク3は、上記の動作例(2)で示した発信側の移動端末からのSETUPの受信をトリガとして、着信側の移動端末40にPagingを送信する(ステップS41)。これに応じて、移動端末40は、Paging Resを、コアネットワーク3へ返信する(ステップS42)。
【0064】
この後、コアネットワーク3は、移動端末40に対する認証処理、及び3G無線秘匿を行う(ステップS43及びS44)。そして、コアネットワーク3は、SETUPを移動端末40に送信する(ステップS45)。これに応じて、移動端末40は、CALLCONFをコアネットワーク3へ返信する(ステップS46)。
【0065】
そして、コアネットワーク3は、RAB ASSIGNMENT REQUESTを無線基地局10に送信する(ステップS47)。これに応じて、無線基地局10は、自局10と移動端末40との間にDTCHを確立する(ステップS48)と共に、RAB ASSIGNMENT RESPONSEをコアネットワーク3へ返信する(ステップS49)。
【0066】
そして、移動端末40は、発信側の移動端末へのALERTを、コアネットワーク3に送信する(ステップS50)。発信側の移動端末との呼が接続された場合、移動端末40は、通話を開始する(CONNECT、ACK、CONNECT ACK)(ステップS51)。
【0067】
上記の着信処理と並行して、RAN−GW30は、例えばALERT中の情報(無線基地局10のIMSI.Femto、移動端末40のIMSI.UE、移動端末40の位置情報、移動端末40の通信状態情報)を設定したSIP−NOTIFYを、上記のサービス起動メッセージとしてサービス提供サーバ200に送信する(ステップS52)。なお、サービス起動メッセージには、SIP−NOTIFYと同等の機能を実現できるのであれば、SIPで定義されている他のメッセージを用いても良い。
【0068】
SIP−NOTIFYを受信すると、サービス提供サーバ20は、SIP−200 OK(etc)をRAN−GW30へ返信する(ステップS53)。そして、サービス提供サーバ20は、サービス管理部21を参照し、SIP−NOTIFYに含まれる情報(無線基地局100のIMSI.Femto、移動端末40のIMSI.UE、移動端末40の位置情報、移動端末40の通信状態情報)に対応するサービスを開始する(ステップS54)。
【0069】
例えば、ユーザが外出先等の遠隔地から自宅に設置した無線基地局10のサービスエリア内の移動端末40に対して発信すると、サービス提供サーバ20は、ユーザの帰宅に先立って、家電機器60(例えば、エアコン)を起動する。また、例えば、サービス提供サーバ20は、通信状態情報を参照して移動端末40が着信中の状態に在ることを検知すると、家電機器60としてのブザー装置にブザー音を鳴動させ、以てユーザに移動端末40への着信を効果的に知らせる。
【0070】
このように、本動作例においては、移動端末40への着信をトリガとして、移動端末40を所有するユーザに対して種々のサービスを提供できる。
【0071】
なお、上記の実施の形態によって本発明は限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。
【0072】
例えば、上記の実施の形態に示したRAN−GW30の各処理を、コンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することもできる。この場合、当該プログラムを、コンピュータ内のプロセッサが実行可能なようにメモリ等の記憶媒体に格納すると好適である。或いは、当該プログラムは、既存の中継装置に組み込まれたファームウェアへのプラグインとして提供しても良い。
【0073】
また、上記の実施の形態では、移動端末の識別情報としてIMSI.UEを用いたが、システムの構成如何によっては必ずしもRAN−GW30でIMSI.UEを取得できるとは限らない。IMSIの代わりにTMSIが得られた場合、RAN−GW30は、コアネットワーク3に対して、取得したIMSIに対応するIMSIを問い合わせても良い。また、IMSIの代わりに移動端末の電話番号が得られた場合には、RAN−GW30は、この電話番号を移動端末の識別情報として利用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、ゲートウェイ装置、通信システム、並びに通信制御方法及びプログラムに適用され、特にフェムト基地局を用いてプレゼンスサービス等のサービスを提供する用途に適用される。
【符号の説明】
【0075】
1 通信システム
2 公衆網
3 コアネットワーク
10 無線基地局(フェムト基地局)
11 無線通信部
12, 22, 32 制御部
20 サービス提供サーバ
21 サービス管理部
30 RAN−GW
31 中継部
33 サービス開始管理部
40 移動端末
50 外部サーバ
60 家電機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置に公衆網を介して接続される無線基地局と、コアネットワークとの間のトラヒックを中継する中継手段と、
前記中継手段で予め定めたメッセージが中継された場合、前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバに、前記サービスの提供を開始させる制御手段と、
を備えたゲートウェイ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御手段は、前記メッセージとして、前記移動端末からの位置更新に係るメッセージが中継された場合に、前記サーバに前記サービスの提供を開始させる、ゲートウェイ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御手段は、前記メッセージとして、前記移動端末による他の無線基地局から前記無線基地局へのハンドオーバに係るメッセージが中継された場合に、前記サーバに前記サービスの提供を開始させる、ゲートウェイ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御手段は、前記メッセージとして、前記移動端末からの発信に係るメッセージが中継された場合に、前記サーバに前記サービスの提供を開始させる、ゲートウェイ装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記制御手段は、前記メッセージとして、前記移動端末への着信に係るメッセージが中継された場合に、前記サーバに前記サービスの提供を開始させる、ゲートウェイ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、
前記制御手段は、前記サービスの開始に際して、前記メッセージに含まれる前記無線基地局の識別情報、前記移動端末の識別情報、前記移動端末の位置情報、及び前記移動端末の通信状態に関する情報の少なくとも一つを前記サーバへ通知する、ゲートウェイ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、
前記制御手段は、前記メッセージに含まれる前記移動端末の識別情報が予め定めた移動端末の識別情報と一致する場合に、前記サーバに前記サービスの提供を開始させる、ゲートウェイ装置。
【請求項8】
無線基地局と、
前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバと、
前記無線基地局に公衆網を介して接続され、前記無線基地局とコアネットワークとの間のトラヒックを中継するゲートウェイと、を備え、
前記ゲートウェイは、予め定めたメッセージを中継した場合、前記サーバに前記サービスの提供を開始させる、通信システム。
【請求項9】
ゲートウェイに用いる通信制御方法であって、
前記ゲートウェイに公衆網を介して接続される無線基地局と、コアネットワークとの間のトラヒックを中継し、
予め定めたメッセージを中継した場合、前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバに、前記サービスの提供を開始させる、
ことを含む通信制御方法。
【請求項10】
ゲートウェイに、
前記ゲートウェイに公衆網を介して接続される無線基地局と、コアネットワークとの間のトラヒックを中継する処理と、
予め定めたメッセージを中継した場合、前記無線基地局に無線接続可能な移動端末に対してサービスを提供するサーバに、前記サービスの提供を開始させる処理と、
を実行させるための通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−124908(P2011−124908A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282727(P2009−282727)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】