説明

ゲーミングチップ

【課題】簡易な構成でありながら、重量感のある非接触型の識別デバイスを備えたゲーミングチップを提供する。
【解決手段】本発明のゲーミングチップ10は、ボディー部11内に配置される識別デバイス12が、所定の重さのアンテナ121を備えており、該アンテナ121が重り部材として機能する構成である。従って、アンテナ121と回路素子123とを有して構成される非接触型の識別デバイス12を備えていながら、別途の重り部材を不要とすることができ、構造の簡素化、製造工程の簡素化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種遊技場などのゲームに用いられるゲーミングチップに関し、特に、カジノで用いられるゲーミングチップ(トークン)に関する。
【0002】
【従来の技術】
主としてカジノで用いられるゲーミングチップは、貨幣の代用であり、偽物の混入や不正行為を防ぐため、種々の対策が施されている。例えば、特許文献1には、ゲーミングチップを構成するボディー部内に、識別情報を記憶したメモリを備えた集積回路を有する識別デバイス(例えば、RFID(Radio Frequency Identification))を埋設し、検知器を用いてかかるメモリに記憶された識別情報を読み取ることにより真偽を判別可能なゲーミングチップが開示されている。特許文献2には、ボディー部の周囲にアンテナとなるコイルと、該コイルに電気的に接続されたコンデンサとからなる共振回路を備え、検知器から所定周波数の電気信号を送信することにより共振させ、検知器側の受信回路により変調信号を受信し、ゲーミングチップの真偽を判別する手段が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第6,021,949号明細書
【特許文献2】
米国特許第3,766,452号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、ゲーミングチップは、全体として、通常、円形(コイン型)に形成されると共に、ボディー部は、成形が容易であると共に、模様や色の付与が容易で、デザインの自由度が大きいことから、合成樹脂材料を用いて形成されることが多い。しかしながら、ゲーミングチップは、カジノにおいては、貨幣の代わりに用いられるものであり、重量感を出すため、合成樹脂材料を用いてボディー部を形成した場合には、ボディー部内に重り部材を埋設することが行われている。例えば、特許文献2に開示されたゲーミングチップは、アンテナを備えたRFIDなどの識別デバイスが内部に収容された硬質シェルをボディー部内に埋設しているが、かかる硬質シェルを形成する材料中には、所定量の非鉄金属粉末などを混入しており、該硬質シェルを重り部材として用いている。
【0005】
このように、ボディー部を合成樹脂材料から形成する場合には、重り部材の埋設が必須である一方で、ゲーミングチップの真偽判別を可能とするには、重り部材のほかに、上記のように非接触型の識別デバイスを埋設する必要があり、構造の複雑化、製造工程の複雑化を招くという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示されたゲーミングチップは、上記のように、硬質シェル中に非鉄金属粉末を含有させることにより重り部材として機能させている。これは、鉄板等の金属板の重り部材を用いた場合には、RFID等の識別デバイスの機能が損なわれるためであるが、RFIDのような非接触型の識別デバイスを有しないゲーミングチップでは、通常、重り部材として金属板(鉄板等)を用いている。従って、非接触型の識別デバイスを備えたものは、識別デバイスを有しないものと比較すると、一般に軽く、重量感に乏しい。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みなされたものであり、アンテナと回路素子とを有して構成される非接触型の識別デバイスを備えていながら、別途の重り部材を不要とすることができ、構造の簡素化、製造工程の簡素化を図ることができると共に、所望の重量を備えたゲーミングチップを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、合成樹脂材料から所定形状に形成されるボディー部を備えたゲーミングチップであって、
前記ボディー部内に配置されると共に、アンテナと、該アンテナに電気的に接続される回路素子とを備えてなる非接触型の識別デバイスを有し、
前記アンテナが、所定の重さを備え、重り部材として用いられることを特徴とするゲーミングチップを提供する。
請求項2記載の本発明では、前記アンテナが、所定の厚みを有するループ状の板状体から形成されていることを特徴とする請求項1記載のゲーミングチップを提供する。
請求項3記載の本発明では、前記アンテナを構成する板状体が、金属から形成されていることを特徴とする請求項2記載のゲーミングチップを提供する。
請求項4記載の本発明では、前記金属が、鉄、真ちゅう又は銅であることを特徴とする請求項3記載のゲーミングチップを提供する。
請求項5記載の本発明では、前記アンテナの重さが、8〜18gの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のゲーミングチップを提供する。
請求項6記載の本発明では、前記非接触型の識別デバイスが、前記回路素子としてコンデンサを用いた共振回路、前記回路素子として発光素子を用いた発光回路、又は、前記回路素子としてメモりを含む集積回路を備えたRFIDのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のゲーミングチップを提供する。
請求項7記載の本発明では、前記ボディー部が、合成樹脂材料を、前記アンテナを備えた非接触型の識別デバイスの周囲にモールドすることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載のゲーミングチップを提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を更に詳しく説明する。図1は、本発明の一の実施形態に係るゲーミングチップ10を示す分解斜視図である。この図に示したように、本実施形態のゲーミングチップ10は、ボディー部11と、非接触型の識別デバイス12とを備えて構成される。
【0010】
ボディー部11は、合成樹脂材料から形成され、通常、任意の厚みを有し、平面視で円形(コイン型)に形成されるが、その形状は限定されるものではなく、楕円形や略方形等に形成することももちろん可能である。本実施形態のゲーミングチップ10は、識別デバイス12がボディー部11内に配置された形態であればよく、加工手段は限定されるものではない。例えば、識別デバイス12を成形型内に配置して、射出成形により、該識別デバイス12の回りにボディー部11をリング状にモールドし、さらにボディー部11の一部となるラベル11a,11bにより識別デバイス12の上下面を被覆して形成することができる。また、ラベル11a,11bを用いることなく、成形型内に配置した識別デバイス12の周囲及び上下面に合成樹脂材料をモールドして、ボディー部11を形成することもできる。なお、ラベル11a,11bは、識別デバイス12の保護のため、比較的硬質の合成樹脂(例えば、ボディー部11と同じ合成樹脂材料)から形成され、識別デバイス12の上下面に接着等の手段により貼着される。
【0011】
非接触型の識別デバイス12としては、図1、図3及び図4に示したように、アンテナ121と、該アンテナ121に配線122を介して電気的に接続される回路素子123とを備えて構成されている。本実施形態では、回路素子123として、ダイオード123bに接続された発光素子としての発光ダイオード(LED)123aを用いており、本実施形態の識別デバイス12は、かかるダイオード123bに接続されたLED123aと上記アンテナ121とにより、発光回路として構成されている。従って、後述する検知器20において、電気信号をアンテナ121により受信すると、その受信電力によりダイオード123bを介してLED123aが発光する。そして、検知器20においてこのLED123aの発光を検出することにより、ゲーミングチップ10の真偽を判断する。
【0012】
本実施形態においては、このようにLED123aが発光するか否かによりゲーミングチップ10の真偽を判別するものであることから、ボディー部11内に配置された場合に、LED123aの光が外部に漏れる構成とする必要がある。従って、図1及び図2に示したように、識別デバイス12の上下面をラベル11a,11bにより被覆する場合には、例えば、該ラベル11a,11bを、光を透過可能な材料から形成し、光が外部に漏れるように構成する必要がある。ラベル11a,11bを用いずに、合成樹脂材料により識別デバイス12の上下面も一体に被覆してしまう場合には、合成樹脂材料として、光を透過可能な材料を用いることが必要である。
【0013】
識別デバイス12を構成するアンテナ121は、所定の重さ有するものを用いる。これにより、識別デバイス12の構成部材の一つであるアンテナ121を重り部材として機能させることができるため、ボディー部11内に識別デバイス12とは別途の重り部材を配設する必要がなくなり、構造の簡易化、製造工程の簡略化が図れる。また、識別デバイスとは別途の重り部材を配設する場合には、重り部材として、識別デバイスの機能を阻害しない材料からなるものを用いる必要があるが、本実施形態によれば、アンテナ121自体が、重り部材として機能するため、アンテナとしての機能を有している限り、材料は限定されるものではない。但し、重りとしての機能を容易に発揮させることができることから、金属から形成することが好ましい。特に、入手の容易性、価格、はんだ付けの便宜性等に鑑みると、鉄、真ちゅう又は銅を用いることが好ましい。鉄、真ちゅう又は銅からなる板状体(鉄板等)から製作した場合には、ゲーミングチップ10として所定の大きさ(直径、厚み)に形成されるボディー部11内に配置可能な大きさで、所望の重さのものが容易に得られる。なお、アンテナ121は、8〜18gの範囲であることが好ましく、12〜15gの範囲であることがより好ましい。
【0014】
また、形状や構造も限定されるものではない。但し、本実施形態では、図1及び図3に示したように、所定の厚みを備えた板状体を環状にくり抜くと共に、環状部121aの一部を切り離す切り欠き部121bを形成したループ状に形成している。なお、本明細書において、ループ状とは、一部が切り欠かれた環状のものである限り、略円形のものに限らず、略角形や略星形など、種々の形状のものを含むことはもちろんである。このような形状とすることにより、アンテナ121を容易に形成でき、加工工程、加工コストを軽減できる。そして、切り欠き部121bを隔てた各ループ終端部の内側面のそれぞれに、配線122をはんだ付けし、上記した回路素子123を接続し、本実施形態の識別デバイス12を構成している。
【0015】
ここで、識別デバイス12としては、上記した重り部材として機能するアンテナ121を有する非接触型のものであればよい。従って、回路素子123として、上記LED123aからなる発光素子ではなく、コンデンサを用いることにより、コイルとなる上記アンテナ121と共に共振回路を構成し、該共振回路を識別デバイス12とすることもできる。また、回路素子123として、メモリ(ROM、RAMなど)を有する集積回路を用いることにより、上記アンテナ121と共にRFIDを構成し、該RFIDを識別デバイス12とすることもできる。なお、識別デバイス12をこのように共振回路やRFIDから構成した場合には、ボディー部11やラベル11a,11bを、上記のように光を透過可能な構成とする必要はない。
【0016】
上記したゲーミングチップ10は、検知器20を用いて検査される。本実施形態では、識別デバイス12として、ダイオード123bとLED123aとを備えた発光回路から構成されているため、図5〜図7に示した構成の検知器20を用いている。以下に、かかる検知器20の構成を詳細に説明するが、もちろん、これはあくまで一例であり、検知器20の構成は、ゲーミングチップ10に埋設される識別デバイス12の種類等に応じて異なる。例えば、識別デバイス12が共振回路であれば、検知器20としては電気信号の送受信回路を備えたものが用いられ、RFIDの場合には、送受信回路を備えた、メモリの情報を読み書き可能なリーダ/ライタが用いられる。
【0017】
本実施形態の検知器20は、ゲーミングチップ10の装填口21aを備えた本体ケース21と、本体ケース21に装着された基板22とを備えて構成される。本体ケース21内には、装填口21aから挿入されるゲーミングチップ10を所定位置で保持する保持部21b(図6(b)参照)が設けられていると共に、この保持部21bの上方と下方のうちの少なくとも一方(本実施形態では両方)に、フォトトランジスタ等の光センサQ3,Q4が設けられている(図6(a),(b)参照)。また、保持部21bの後方(奥側)には、図6(b)に示したように、マイクロスイッチ24が配設されており、ゲーミングチップ10を保持部21bに位置させると、マイクロスイッチ24の接点が接触し、ON動作するようになっている。基板22には、トランジスタQ1,Q2、警告手段としてのバイブレータ25、発振回路26、送信アンテナ27等が搭載され、ぞれぞれ、図7に示したような回路構成で接続されている。
【0018】
かかる構成の検知器20を用いてゲーミングチップ10を検査する際には、図5に示したように、まず、装填口21aから検査対象であるゲーミングチップ10を保持部21bに挿入する。ゲーミングチップ10が挿入されるとマイクロスイッチ24がON動作し、発振回路26がONになり、送信アンテナ27を介して電気信号が送信される。ゲーミングチップ10が本実施形態のもの(例えば、特定のカジノで使用される正常(本物)のゲーミングチップ)である場合には、ボディー部11に保持された上記アンテナ121により、かかる電気信号を受信し、その受信電力がダイオード123bを介してLED123aに供給され発光する。LED123aが発光すると、検知器20に設けられた光センサQ3,Q4の少なくとも一方により受光し、トランジスタQ2がONになり、トランジスタQ1がOFFになるため、バイブレータ25は振動しない。
【0019】
これに対し、ゲーミングチップが偽物である場合には、保持部21bに該ゲーミングチップを装填して、発振回路26及び送信アンテナ27を介して電気信号を送信しても、ゲーミングチップは反応せず、該ゲーミングチップからの光の供給が得られないため、光センサQ3,Q4は反応しない。このため、トランジスタQ2がOFFになって、トランジスタQ1がONになり、バイブレータ25が振動し、偽物であることが検知できる。
【0020】
なお、検知器20は、かかる構成に限定されるものではなく、異なる回路構成とすることももちろん可能である。また、上記と逆に、本実施形態(本物)のゲーミングチップ10を装填した際に、バイブレータ25が振動し、偽物を装填した際にバイブレータ25が振動しない構成とすることもできる。また、警告手段としては、バイブレータに限らず、LEDを用いて発光させる手段、ブザーなどによって音を発生させる手段、液晶ディスプレイに真偽を表示させる手段、あるいは、これらを複数組み合わせた手段等を用いることができる。さらに、ゲーミングチップ10に内蔵される識別デバイス12の種類によっても異なることは上記したとおりである。要は、識別デバイス12の出力を何らかの手段により検知でき、真偽判別のための警告を発することができるものであればよく、図5及び図6に示したような箱形のものに限らず、ゲート型等の検知器であってもよい。
【0021】
【発明の効果】
本発明のゲーミングチップは、ボディー部内に配置される識別デバイスが、所定の重さのアンテナを有しており、該アンテナが重り部材として機能する構成である。従って、アンテナと回路素子とから構成される非接触型の識別デバイスを備えていながら、別途の重り部材を不要とすることができ、構造の簡素化、製造工程の簡素化を図ることができる。また、従来のように、識別デバイスとは別途の重り部材を配設する場合には、重り部材として、識別デバイスの機能を阻害しない材料からなるものを用いる必要があったが、本発明によれば、アンテナ自体が重り部材として機能するため、アンテナとしての機能を有する限り、材料は限定されるものではない。従って、アンテナの構成材料として鉄板等を用いることができ、非接触型の識別デバイスを備えていながら、重量感のあるゲーミングチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係るゲーミングチップを示す分解斜視図である。
【図2】図2は、上記ゲーミングチップの概略断面図である。
【図3】図3(a)は、上記ゲーミングチップで用いた識別デバイスの平面図であり、図3(b)は斜視図である。
【図4】図4は、識別デバイスの回路図である。
【図5】図5は、上記実施形態に係るゲーミングチップの検査器の一例を概略的に示す外観図である。
【図6】図6(a)は、上記検査器を概略的に示す正面図であり、図6(b)は、上記検査器を概略的に示す平面図である。
【図7】図7は、上記検査器の回路図の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 ゲーミングチップ
11 ボディー部
11a,11b ラベル
12 識別デバイス
121 アンテナ
122 配線
123 回路素子
123a LED
123b ダイオード
20 検査器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料から所定形状に形成されるボディー部を備えたゲーミングチップであって、
前記ボディー部内に配置されると共に、アンテナと、該アンテナに電気的に接続される回路素子とを備えてなる非接触型の識別デバイスを有し、
前記アンテナが、所定の重さを備え、重り部材として用いられることを特徴とするゲーミングチップ。
【請求項2】
前記アンテナが、所定の厚みを有するループ状の板状体から形成されていることを特徴とする請求項1記載のゲーミングチップ。
【請求項3】
前記アンテナを構成する板状体が、金属から形成されていることを特徴とする請求項2記載のゲーミングチップ。
【請求項4】
前記金属が、鉄、真ちゅう又は銅であることを特徴とする請求項3記載のゲーミングチップ。
【請求項5】
前記アンテナの重さが、8〜18gの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載のゲーミングチップ。
【請求項6】
前記非接触型の識別デバイスが、前記回路素子としてコンデンサを用いた共振回路、前記回路素子として発光素子を用いた発光回路、又は、前記回路素子としてメモりを含む集積回路を備えたRFIDのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のゲーミングチップ。
【請求項7】
前記ボディー部が、合成樹脂材料を、前記アンテナを備えた非接触型の識別デバイスの周囲にモールドすることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載のゲーミングチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−149408(P2006−149408A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−360037(P2002−360037)
【出願日】平成14年12月11日(2002.12.11)
【出願人】(500124220)株式会社マツイ・ゲーミング・マシン (3)
【Fターム(参考)】