説明

コアレス超薄型プリント回路基板変圧器及びそれを利用した無接点バッテリ充電器

【課題】 移動端末機のサイズの小型化を制約しない新しい変圧器及び前記新しい変圧器を利用する無接点バッテリ充電器を提供する。
【解決手段】 PCB変圧器72を使用する無接点バッテリ充電器は、常用電源を高周波方形波に変換してPCB変圧器72の1次側76に印加する変換器100と、PCB変圧器72の1次側76に印加された方形波が発生した磁界によってPCB変圧器72の2次側78の巻線に誘導された起電力を直流に変換して充電回路に印加する充電器と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バッテリ充電器に関し、特に、無接点バッテリ充電器に関する。
【0002】
【従来の技術】携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パームトップ(Palm-top)コンピュータ、インターネットフォンなどのような携帯用情報通信及び演算機器は、充電バッテリをエネルギー源として使用するので、基本的にバッテリ充電器を必要とする。
【0003】現在、一般に用いられているのデスクトップ及び携帯用充電器は、バッテリとバッテリ充電器とを電気的に接触させる接触型の充電方式を採択している。しかしながら、接触型充電器は、幾つかの解決すべき問題点を有している。
【0004】第1に、接触不良による充電不良及びバッテリの寿命短縮の問題がある。第2に、充電器及び通信機器が湿気やほこりに曝される場合、システムの性能が低下する。第3に、外部に露出している充電用金属端子が使用者の衣服と接触する時に発生する静電気によって、通信機器の誤動作が発生するようになり、製品の信頼性が低下する。
【0005】前記のような問題点を解決するために、電気的に接触せずに、磁気結合を利用してバッテリを充電する無接点充電方式の適用のための研究が進んでいる。携帯用通信機器のために適用される前記のようなバッテリ充電器の場合、磁気コアを使用する従来の変圧器を磁気結合の媒体として使用する。この場合、磁気コアを使用して製作された変圧器の2次側が携帯用情報機器の内部に装着されるべきであるが、そうすると、前記携帯用情報機器のサイズが大きくなり、前記通信機器の形態も制約を受けるようになる。さらに、応用システムの機械的な強度も低下する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、磁気コアの不使用により、移動端末機のサイズの小型化を制約しない新しい変圧器を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、前記新しい変圧器を利用する無接点バッテリ充電器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記のような目的を達成するために、本発明の第1実施形態による超薄型プリント回路基板(Printed Circuit Board: 以下、PCBと称する)変圧器は、第1巻線が設置された第1プリント回路基板と、第2巻線が設置され、前記第1プリント回路基板から平行に垂直方向に一定の間隔を置いて配置された第2プリント回路基板と、から構成されることを特徴とする。
【0009】前記のような目的を達成するために、本発明の第2実施形態による無接点バッテリ充電器は、PCB変圧器の1次側を備え、常用電源を高周波方形波に変換して前記PCB変圧器の1次側に印加する変換器と、入力電圧をより低い電圧に変換してバッテリに供給する充電回路及びPCB変圧器の2次側を備え、前記PCB変圧器の1次側に印加された方形波が発生した磁界によって前記PCB変圧器の2次側の巻線に誘導された起電力を直流に変換して前記充電回路に印加する充電器と、から構成されることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明による好適な一実施形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一な構成要素及び部分には、可能な限り同一な符号及び番号を共通使用するものとする。そして、以下の説明では、具体的な回路の構成素子が示されているが、これに限られることなく本発明を実施できることは、当技術分野で通常の知識を有する者には自明である。また、下記説明において、本発明の要旨を明確にするために関連した公知機能または構成に対する具体的な説明は省略する。
【0011】本発明は、磁気コアを使用せず、一般的なPCB回路上に変圧器の巻線を設置したPCB変圧器を使用してバッテリの無接点充電を具現する方法及び無接点バッテリ充電器の回路構成に関する。
【0012】図1は、本発明の実施形態によるPCB変圧器の構造を示す。図1のように、PCB回路に巻線を設置した変圧器の1次側及び2次側を、平行に垂直方向に一定の間隔を置いて配置すると、PCB変圧器72の1次側76及び2次側78が磁気的に結合されて、無接点充電を可能とする。前記PCB変圧器72の長所は、変圧器を薄型(low-profile)に製作することができ、変圧器のサイズ及び形態を応用機器に応じて変形することができることにある。さらに、前記PCB変圧器72は、磁気コアを使用しないため、コストが低廉で、機械的な強度が非常に高い。また、前記PCB変圧器72をフレキシブルPCB(flexible PCB)を使用して製作すると、変圧器の重量及び高さをさらに低減することができる。
【0013】図2は、図1のPCB変圧器を利用した携帯電話用の無接点バッテリ充電器の側面図である。変換器100は、常用電源を前記PCB変圧器72の駆動に適合した高周波方形波(square wave)に変換する。前記変換器100の上面には図1のPCB変圧器72の1次側76が装着される。
【0014】バッテリパック300の表面に図1のPCB変圧器72の2次側78を設置する。また、バッテリ充電及び制御のために必要な回路を小型に製作して、前記バッテリパック300の内部に装着する。
【0015】図2に示すように、前記バッテリパック300付きの携帯電話200を、前記バッテリパック300が下向きになるように前記変換器100の上面に置いて、前記バッテリパック300に無接点充電が始まるようにする。充電は、接触子140及び340を通して遂行される。
【0016】前記のような充電方式は、現在使用されている携帯電話やバッテリパックの形態及びサイズに大きな影響を与えずに、無接点充電を可能にする。この充電方式は、携帯電話だけでなく、PDA、パームトップ、及びインターネットフォンなどの携帯用情報通信及び演算機器に適用することができる。
【0017】図3は、図1のPCB変圧器72の2次側78をバッテリパック300の表面に装着した状態を示す。図4は、本発明の実施形態による携帯電話用の無接点バッテリ充電器の構成を示す。
【0018】前記無接点バッテリ充電器は、前記PCB変圧器72の1次側76を含む変換器100と、前記PCB変圧器72の2次側78を含む充電器とから構成される。
【0019】前記PCB変圧器72の2次側78は、前記バッテリパック300の表面に装着され、前記充電器に関連した回路は、前記バッテリパック300の内部に設置される。前記バッテリパック300の内部に点線で表示される部分が充電器である。
【0020】前記変換器100は、ダイオード整流器D1乃至D4、出力キャパシター(output capacitor)C1、インバータ(inverter)110、及びPCB変圧器72の1次側76から構成される。
【0021】前記変換器100に印加された常用電源Vsは、前記ダイオード整流器D1乃至D4及び出力キャパシターC1から構成された整流回路を経て直流に変換された後、前記インバータ110の入力端に印加される。前記インバータ110に印加された直流電圧は、高周波方形波に変換された後、前記PCB変圧器72の1次側76に印加される。
【0022】前記PCB変圧器72の1次側76に印加された方形波は、磁界(magnetic field)を発生し、この磁界は、前記PCB変圧器72の2次側78の巻線80に起電力を誘導する。前記PCB変圧器72の2次側78の巻線80に誘導された前記起電力は、ダイオード整流器D5乃至D8及びキャパシターC2から構成される整流回路によって直流に変換されて充電回路320に印加される。
【0023】前記充電回路320は、入力電圧をより低い電圧に変換してリチウムイオンバッテリBATに印加する。制御及び監視回路360は、前記バッテリBATの電圧及び電流を感知し、前記感知された信号に基づいて適切な制御信号を発生して前記充電回路320に供給する。さらに、前記制御及び監視回路360は、前記バッテリBATの電圧を感知して前記バッテリBATの充放電状態を点検し、前記バッテリの状態に対する情報を携帯電話の内部に伝達する。
【0024】図5は、本発明の他の実施形態による無接点バッテリ充電器の詳細回路を示す。1次側変換器の核心回路であるインバータ110は、ハーフブリッジ(half-bridge)直列共振インバータ(series resonant inverter)から構成される。
【0025】参照符号C3及びC4は、入力電圧を二分するためのキャパシターであり、Q1及びQ2は、モス(MOS)型の電界効果トランジスタスイッチである。参照符号T1は、磁気コアを使用する一般的な降圧変圧器であり、T2は、本発明の実施形態によるPCB変圧器である。
【0026】前記キャパシターC1の両端に印加された電圧は、キャパシターC3及びC4によって二分され、スイッチQ1及びQ2のスイッチング作用によって方形波に変換された後、キャパシターC5を経て降圧変圧器T1の1次側に印加される。ここで、前記キャパシターC5は、直流成分を遮断し、前記変圧器T1は、前記PCB変圧器T2の1次側に印加される方形波のサイズを小さくする。
【0027】キャパシターC6は、共振キャパシターであり、前記PCB変圧器T2の漏れインダクタンスと結合して直列共振回路を形成する。前記PCB変圧器T2の2次側に誘導された電圧は、前記整流回路を経て充電回路320に印加される。
【0028】前記インバータ110は、下記のように、前記PCB変圧器T2の短所が効果的に克服できる回路方式を採択したことである。
【0029】第1に、降圧変圧器T1は、回路の効率が低下することを防止する。前記PCB変圧器T2は、一般の変圧器に比べて磁化インダクタンス(magnetizing inductance)が小さい。従って、前記降圧変圧器T1を使用しない場合、磁化電流(magnetizing current)が増加しすぎて、前記インバータの効率が低下する。
【0030】第2に、前記PCB変圧器T2は、一般の変圧器に比べて漏れインダクタンスが比較的大きい。従って、前記インバータ110は、前記PCB変圧器T2の漏れインダクタンスを共振インダクタンスとして活用して回路の効能を高める。
【0031】一方、前記本発明の詳細な説明では具体的な実施形態に挙げて説明してきたが、本発明の範囲内で様々な変形が可能であるということは勿論である。従って、本発明の範囲は前記実施形態によって限られるべきでなく、特許請求の範囲とそれに均等なものによって定められるべきである。
【0032】
【発明の効果】前述してきたように、本発明は、超薄型PCB変圧器を使用する無接点バッテリ充電器を具現することにより、携帯用機器を小型化することができる。前記PCB変圧器は、その材質によって重量及び高さを低減することができ、それによって、前記携帯用機器をさらに小型化することができる。また、変圧器のサイズ及び形態を応用機器に応じて適切に変形することができるので、その形態を制約しないという長所がある。また、前記PCB変圧器は、磁気コアを使用しないため、コストが低廉で、機械的な強度が高くなり、製品の信頼度を高める。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態によるPCB変圧器の構造を示す図である。
【図2】 図1のPCB変圧器を利用した携帯電話用の無接点バッテリ充電器の側面図である。
【図3】 図1のPCB変圧器の2次側がバッテリパックの表面に装着された状態の示す図である。
【図4】 本発明の実施形態による携帯電話用の無接点バッテリ充電器の概略的な構成を示す図である。
【図5】 本発明の他の実施形態による携帯電話用の無接点バッテリ充電器の詳細回路を示す図である。
【符号の説明】
72 PCB変圧器
74 巻線
76 PCB変圧器の1次側
78 PCB変圧器の2次側
80 巻線
100 変換器
140 接触子
200 形態電話
300 バッテリパック
320 充電回路
340 接触子
360 制御及び監視回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 携帯用電子装置を充電するためのバッテリ充電器に使用されるプリント回路基板変圧器において、巻線が設置された第1プリント回路基板と、巻線が設置され、前記第1プリント回路基板から平行に垂直方向に一定の間隔を置いて配置された第2プリント回路基板と、から構成されることを特徴とするプリント回路基板変圧器。
【請求項2】 前記第1プリント回路基板は変圧器の1次側を構成し、前記第2プリント回路基板は変圧器の2次側を構成することを特徴とする請求項1記載のプリント回路基板変圧器。
【請求項3】 前記巻線は、前記各プリント回路基板の表面の中央から放射状に設置されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプリント回路基板変圧器。
【請求項4】 無接点バッテリ充電器において、プリント回路基板変圧器の1次側を備え、常用電源を高周波方形波に変換した後、前記変換された方形波を前記プリント回路基板変圧器の1次側に印加する変換器と、入力電圧をより低い電圧に変換してバッテリに供給する充電回路及びプリント回路基板変圧器の2次側を備え、前記プリント回路基板変圧器の1次側に印加された方形波が発生した磁界によって前記プリント回路基板変圧器の2次側の巻線に誘導された起電力を直流に変換して前記充電回路に印加する充電器と、から構成されることを特徴とする無接点バッテリ充電器。
【請求項5】 前記充電器は、バッテリパックの内部に設置されることを特徴とする請求項4記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項6】 前記プリント回路基板変圧器の2次側は、前記バッテリパックの内部の表面に装着されることを特徴とする請求項5記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項7】 前記変換器は、前記常用電源を整流して直流に変換する整流回路と、前記直流電圧を高周波方形波に変換して前記プリント回路基板変圧器の1次側に印加するインバータと、から構成されることを特徴とする請求項4記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項8】 前記整流回路は、常用電源入力端に接続されるダイオード整流器と、前記ダイオード整流器と前記インバータとの間に接続される出力キャパシターと、から構成されることを特徴とする無接点バッテリ充電器。
【請求項9】 前記バッテリの電圧及び電流を感知し、前記感知された信号に基づいて所定の制御信号を発生して前記充電回路に供給する制御及び監視回路をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項10】 前記制御及び監視回路は、前記バッテリの電圧を感知することで前記バッテリの充放電状態を点検し、前記バッテリの状態に対する情報を、前記バッテリから動作電源の供給を受ける通信端末機の内部に伝達することを特徴とする請求項9記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項11】 前記バッテリの電圧を感知して前記バッテリの充放電状態を点検し、前記バッテリ状態に対する情報を、前記バッテリから動作電源の供給を受ける通信端末機の内部に伝達する制御及び監視回路をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項12】 前記バッテリは、リチウムイオンバッテリであることを特徴とする請求項4記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項13】 前記変換器は、ハーフブリッジ直列共振インバータであることを特徴とする請求項7記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項14】 前記インバータは、入力電圧を二分するための2つのキャパシターと、スイッチング作用によって前記二分された電圧を方形波に変換する2つのスイッチと、磁気コアを使用し、前記プリント回路基板変圧器の1次側に印加される方形波のサイズを小さくする降圧変圧器と、から構成されることを特徴とする請求項13記載の無接点バッテリ充電器
【請求項15】 前記各スイッチは、モス型電界効果トランジスタスイッチであることを特徴とする請求項14記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項16】 前記2つのスイッチの接続点と前記降圧変圧器の1次側との間に直流成分を遮断するためのキャパシターをさらに備えることを特徴とする請求項14記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項17】 前記降圧変圧器の2次側と前記プリント回路基板変圧器の1次側との間に接続され、前記プリント回路基板変圧器の漏れインダクタンスと結合して直列共振回路を形成する共振キャパシターをさらに備えることを特徴とする請求項14記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項18】 前記プリント回路基板変圧器は、中央から放射状に巻線が設置された第1プリント回路基板と、中央から放射状に巻線が設置され、前記第1プリント回路基板から平行に垂直方向に一定の間隔を置いて配置された第2プリント回路基板と、から構成されることを特徴とする請求項4記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項19】 前記第1プリント回路基板は変圧器の1次側を構成し、前記 第2プリント回路基板は変圧器の2次側を構成することを特徴とする請求項18記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項20】 前記バッテリパックは、携帯電話に装着され、充電された電圧を内部バッテリに前記携帯電話の動作電源として供給することを特徴とする請求項5記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項21】 前記通信端末機は、携帯電話であることを特徴とする請求項10または請求項11記載の無接点バッテリ充電器。
【請求項22】 第1プリント回路基板上に中央から放射状に巻線が設置されたプリント回路基板変圧器の1次側、常用電源を整流して直流電圧に変換する整流回路、及び前記直流電圧を高周波方形波に変換して前記プリント回路基板変圧器の1次側に印加するインバータを備える変換器と、前記第1プリント回路基板から平行に垂直方向に一定の間隔を置いて配置された第2プリント回路基板上に中央から放射状に巻線が設置されたプリント回路基板変圧器の2次側、入力電圧をより低い電圧に変換してバッテリに供給する充電回路、及び前記プリント回路基板変圧器の1次側に印加された方形波が発生した磁界によって前記プリント回路基板変圧器の2次側の巻線に誘導された起電力を直流に変換して前記充電回路に印加する整流回路を有する充電器と、から構成されることを特徴とする無接点バッテリ充電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−262468(P2002−262468A)
【公開日】平成14年9月13日(2002.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−401058(P2001−401058)
【出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【Fターム(参考)】