説明

コイルばねコンタクト

【課題】被測定デバイス32に設けられたハンダボール34に対して、安定して弾接し得るコイルばねコンタクト30を提供する。
【解決手段】被測定デバイス38に設けられたハンダボール34と、検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16との間に介装されて、ハンダボール34とコンタクトパッド16を電気的接続させるコイルばねコンタクト30であって、中央部でコイル軸をハンダボール34側に2箇所偏寄するように形成し、偏寄した2箇所でハンダボール34にその頂部の両側位置で当接するようにし、両端部のコイル軸をコンタクトパッド16側に偏寄した部分でコンタクトパッド16に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定デバイスに設けられたハンダボールと、検査用治具に設けられた平板状のコンタクトパッドとの間に介装されて、ハンダボールとコンタクトパッドを電気的接続させるコイルばねコンタクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被測定デバイスに設けられた平板状のコンタクトパッドと、検査用治具に設けられた平板状のコンタクトパッドとの間に介装して、前記2つのコンタクトパッドを電気的接続させる従来のコイルばねコンタクトの技術を、特許出願人は、先に特開2002−93494号公報(以下、特許文献1と称する。)で提案している。この特許文献1で提案した技術を図4を参照して簡単に説明する。図4は、特許文献1で提案した従来のコイルばねコンタクトの構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【0003】
図4において、コイルばねコンタクト10は、導電性と弾性を有する導電線が密着巻きでコイル状とされ、さらにそのコイル軸が略逆V字状に形成されている。そして、検査用治具12側に配設される絶縁材からなるハウジング14により、略逆V字状の両端部が検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に当接するようにして、コイルばねコンタクト10が適宜に脱落しないように保持配設される。そして、コイルばねコンタクト10の略逆V字状の中央部は、ハウジング14から突出していて、被測定デバイス18に設けられた平板状のコンタクトパッド20に当接される。
【0004】
かかる構成からなる従来のコイルばねコンタクト10にあっては、略逆V字状のコイル軸の弾性変形および巻回されたコイル形状の弾性変形等により、検査用治具12側のコンタクトパッド16と被測定デバイス18側のコンタクトパッド20の間に介装されて、それぞれのコンタクトパッド16、20に弾接して、2つのコンタクトパッド16、20が電気的に接続される。
【特許文献1】特開2002−93494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の技術において、被測定デバイス18に平板状のコンタクトパッド20が設けられたものにあっては、何ら不具合はない。しかるに、近年、被測定デバイスに平板状のコンタクトパッド20に代えて、半球状のハンダボールが設けられたものがある。このハンダボールが設けられた被測定デバイスに対して、特許文献1記載のコイルばねコンタクト10を使用すると、略逆V字状の中央部がハンダボールの頂部に弾接して、この頂部を傷付ける虞がある。また、コイルばねコンタクト10の略逆V字状の中央部が、ハンダボールの頂部に僅かにずれて弾接すると、略逆V字状の中央部に頂部からより離れる方向にずれる力が作用し、巻回されたコイルが斜めに傾くことで、弾接位置が変化する。よって、弾接位置の精度および弾接状態の安定性の点から問題があった。
【0006】
本発明は、上述したごとき従来技術の事情に鑑みてなされたもので、被測定デバイスに設けられたハンダボールに対しても、安定して弾接し得るコイルばねコンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のコイルばねコンタクトは、被測定デバイスに設けられたハンダボールと、検査用治具に設けられた平板状のコンタクトパッドとの間に介装されて、前記ハンダボールと前記コンタクトパッドを電気的接続させるコイルばねコンタクトであって、コイル軸を前記ハンダボール側に2箇所偏寄するように形成し、前記偏寄した2箇所で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するようにし、前記ハンダボール側に偏寄した前記2箇所以外の部分で前記コンタクトパッドに当接するように構成されている。
【0008】
そして、前記コイル軸を前記ハンダボール側に2箇所偏寄するとともに、両端部を前記コンタクトパッド側にそれぞれ偏寄するように形成し、前記ハンダボール側に偏寄した前記2箇所で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、前記コンタクトパッド側に偏寄した前記両端部で前記コンタクトパッドに当接するように構成し得る。
【0009】
また、前記コイル軸を前記ハンダボール側に2箇所偏寄するとともに、両端部および中央部を前記コンタクトパッド側にそれぞれ偏寄するように形成し、前記ハンダボール側に偏寄した前記2箇所で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、前記コンタクトパッド側に偏寄した前記両端部および前記中央部で前記コンタクトパッドに当接するように構成しても良い。
【0010】
さらに、前記コイル軸を略V字状として、その両端部が前記ハンダボール側に偏寄するように形成し、前記両端部で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、前記略V字状に折り曲げた中央部で前記コンタクトパッドに当接するように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のコイルばねコンタクトにあっては、コイル軸を被測定デバイスに設けられたハンダボール側に2箇所偏寄するように形成し、偏寄した2箇所でハンダボールにその頂部の両側位置で当接するようにしたので、ハンダボールの頂部に傷が付くことがなく、しかも頂部の両側位置で当接することによりハンダボールの弾接位置がずれることがない。
【0012】
請求項2記載のコイルばねコンタクトにあっては、コイル軸を被測定デバイスに設けられたハンダボール側に2箇所偏寄するとともに、両端部を検査用治具に設けられたコンタクトパッド側にそれぞれ偏寄するように形成したので、偏寄した2箇所でハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、両端部でコンタクトパッドに当接し、弾接位置がずれることがないとともに安定した電気的接続が得られる。
【0013】
請求項3記載のコイルばねコンタクトにあっては、コイル軸を被測定デバイスに設けられたハンダボール側に2箇所偏寄するとともに、両端部および中央部を検査用治具に設けられたコンタクトパッド側にそれぞれ偏寄するように形成したので、偏寄した2箇所でハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、両端部および中央部でコンタクトパッドに当接し、ハンダボールの弾接位置がずれることがないとともにコンタクトパッドにより安定した電気的接続が得られる。
【0014】
請求項4記載のコイルばねコンタクトにあっては、コイル軸を略V字状として、その両端部が被測定デバイスに設けられたハンダボール側に偏寄するように形成したので、ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、V字状に折り曲げた中央部がコンタクトパッドに当接し、ハンダボールの弾接位置がずれることがなく、しかもコイル軸方向の寸法をに短く形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施例を図1を参照して説明する。図1は、本発明のコイルばねコンタクトの第1実施例の構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。図1において、図4に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0016】
図1において、図4に示すものと相違するところは、導電性と弾性を有する導電線が密着巻きでコイル状とされたコイルばねコンタクト30のコイル軸が、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34側に2箇所偏寄するように形成されている点にある。より具体的には、中央部の1ターンを挟んだ両側のそれぞれの1ターンがハンダボール34側に偏寄され、挟まれた中央の1ターンがやや凹んだ状態となるように形成される。なお、挟まれた中央の1ターンは検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に当接するまでには検査用治具12のコンタクトパッド16側に偏寄されるものでない。また、コイルばねコンタクト30のコイル軸の両端部は、図4の従来例と同様に、検査用治具12のコンタクトパッド16側に偏寄されている。そして、検査用治具12側に配設される絶縁材からなるハウジング44により、検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に両端部が当接するようにして、コイルばねコンタクト30が適宜に脱落しないように保持配設される。ここで、コイルばねコンタクト30の2箇所の偏寄された部分はハウジング44から突出していて、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34に当接される。
【0017】
かかる構成からなる第1実施例のコイルばねコンタクト30にあっては、2箇所偏寄した部分が、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34の頂部の両側位置に当接し、ハンダボール34の頂部に傷が付くことがなく、しかも頂部の両側位置で当接することによりハンダボール34の弾接位置がずれることがない。もって、弾接位置の精度が向上し、また弾接状態が安定する。
【0018】
次に、本発明の第2実施例を図2を参照して説明する。図2は、本発明のコイルばねコンタクトの第2実施例の構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のC−C断面矢視図である。図2において、図1および図4に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0019】
図2において、図1に示す第1実施例と相違するところは、コイルばねコンタクト40のコイル軸が被測定デバイス32に設けられたハンダボール34側に2箇所偏寄するように形成され、しかも2箇所偏寄された部分で挟まれる中央部が、検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に当接するように、検査用治具12のコンタクトパッド16側に大きく偏寄されている点にある。より具体的には、中央部の数ターンを挟んだ両側のそれぞれの1ターンがハンダボール34側に偏寄され、挟まれた中央部の数ターンが大きく凹んだ状態となって、その一部のターンが検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に当接するまで検査用治具12のコンタクトパッド16側に偏寄される。そして、コイルばねコンタクト40のコイル軸の両端部は、図1に示す第1実施例と同様に、検査用治具12のコンタクトパッド16側に偏寄されている。そして、検査用治具12側に配設される絶縁材からなるハウジング54により、検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に両端部と中央部が当接するようにして、コイルばねコンタクト40が適宜に脱落しないように保持配設される。ここで、コイルばねコンタクト40の2箇所の偏寄された部分はハウジング54から突出していて、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34に当接される。
【0020】
かかる構成からなる第2実施例のコイルばねコンタクト40にあっては、2箇所偏寄した部分が、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34の頂部の両側位置に当接し、ハンダボール34の頂部に傷が付くことがなく、しかも頂部の両側位置で当接することによりハンダボール34の弾接位置がずれることがない。もって、弾接位置の精度が向上し、また弾接状態が安定する。また、両端部と中央部で、検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に当接することで、検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16との電気的接続もより確実になされる。
【0021】
さらに、本発明の第3実施例を図3を参照して説明する。図3は、本発明のコイルばねコンタクトの第3実施例の構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のD−D断面矢視図である。図3において、図1と図2および図4に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0022】
図3において、図1に示す第1実施例と相違するところは、コイルばねコンタクト50のコイル軸が、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34側に両端側の2箇所が当接するとともに、中央部が検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に当接するように、検査用治具12のコンタクトパッド16側に大きく偏寄され、略V字状に形成されている点にある。そして、検査用治具12側に配設される絶縁材からなるハウジング64により、検査用治具12に設けられた平板状のコンタクトパッド16に中央部が当接するようにして、コイルばねコンタクト50が適宜に脱落しないように保持配設される。ここで、コイルばねコンタクト50の両端側の2箇所の偏寄された部分は、ハウジング64から突出していて、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34に当接される。
【0023】
かかる構成からなる第3実施例のコイルばねコンタクト50にあっては、両端側の2箇所の偏寄した部分が、被測定デバイス32に設けられたハンダボール34の頂部の両側位置に当接し、ハンダボール34の頂部に傷が付くことがなく、しかも頂部の両側位置で当接することによりハンダボール34の弾接位置がずれることがない。もって、弾接位置の精度が向上し、また弾接状態が安定する。そして、コイル軸方向の寸法を短くできるので、小型化が容易である。
【0024】
なお、上記実施例におけるハンダボール34に当接する2箇所の偏寄された部分の間隔は、上記実施例に限られず、ハンダボール34の大きさやコイルを形成する導電線の太さなどを考慮して適宜に設定されれば良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のコイルばねコンタクトの第1実施例の構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。
【図2】本発明のコイルばねコンタクトの第2実施例の構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のC−C断面矢視図である。
【図3】本発明のコイルばねコンタクトの第3実施例の構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のD−D断面矢視図である。
【図4】特許文献1で提案した従来のコイルばねコンタクトの構造を示し、(a)は使用状態における縦断面図であり、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【符号の説明】
【0026】
10、30、40、50 コイルばねコンタクト
12 検査用治具
14、44、54、64 ハウジング
16、20 コンタクトパッド
18、32 被測定デバイス
34 ハンダボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定デバイスに設けられたハンダボールと、検査用治具に設けられた平板状のコンタクトパッドとの間に介装されて、前記ハンダボールと前記コンタクトパッドを電気的接続させるコイルばねコンタクトであって、コイル軸を前記ハンダボール側に2箇所偏寄するように形成し、前記偏寄した2箇所で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するようにし、前記ハンダボール側に偏寄した前記2箇所以外の部分で前記コンタクトパッドに当接するように構成したことを特徴とするコイルばねコンタクト。
【請求項2】
請求項1記載のコイルばねコンタクトにおいて、前記コイル軸を前記ハンダボール側に2箇所偏寄するとともに、両端部を前記コンタクトパッド側にそれぞれ偏寄するように形成し、前記ハンダボール側に偏寄した前記2箇所で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、前記コンタクトパッド側に偏寄した前記両端部で前記コンタクトパッドに当接するように構成したことを特徴とするコイルばねコンタクト。
【請求項3】
請求項1記載のコイルばねコンタクトにおいて、前記コイル軸を前記ハンダボール側に2箇所偏寄するとともに、両端部および中央部を前記コンタクトパッド側にそれぞれ偏寄するように形成し、前記ハンダボール側に偏寄した前記2箇所で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、前記コンタクトパッド側に偏寄した前記両端部および前記中央部で前記コンタクトパッドに当接するように構成したことを特徴とするコイルばねコンタクト。
【請求項4】
請求項1記載のコイルばねコンタクトにおいて、前記コイル軸を略V字状として、その両端部が前記ハンダボール側に偏寄するように形成し、前記両端部で前記ハンダボールにその頂部の両側位置で当接するとともに、前記略V字状に折り曲げた中央部で前記コンタクトパッドに当接するように構成したことを特徴とするコイルばねコンタクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−77896(P2008−77896A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253717(P2006−253717)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】