説明

コイル部品およびその製造方法

【課題】高温リフローに対応でき、耐振性にも優れたコイル部品を提供することを目的とするものである。
【解決手段】Cuを主成分とするコイル電極12とCuを主成分とする端子電極16とが、Sn合金22中にCu3Snを核とする棒状金属化合物23が分散された半田で電気的および機械的に接続され、コイル電極12および半田を含む領域をモールド成形することにより外装体19を構成したコイル部品であり、このようにすることにより、半田が溶融しても外装体19の外に出てくることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に用いられるコイル部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年半田付けにおいて鉛フリー化が要求され、そのため半田付け温度が上昇し、コイル部品のように内部で半田付けを行っているものでは、リフロー半田付け時に内部の半田も溶けて外部まで出てくる可能性がある。このような課題に対して、半田中にCu球を混ぜ、金属化合物を生成させてこのCu球同士をつなぐことにより、半田が溶けても流動性を阻害するような方法が提案されている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−261105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成では、十分にCu球同士をつなぐためにはCu球の量を多くする必要がある。しかしながらCu球の割合が多くなってくると、いったん溶けた後半田の中にボイドが発生しやすく、コイル部品の内部接続等にCu球の割合が多い半田を用い、車載用等の振動が多く加わる機器に使われる場合に、この振動によって半田付け部が破断しやすくなる等の信頼性が課題となってくる。本発明はこの課題に対してリフロー半田付け時に半田が外部へ溶け出すことを防止するとともに、半田の中のボイドの発生を防ぎ、耐振性に優れたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、Cuを主成分とするコイル電極とCuを主成分とする端子電極とが、Sn合金中にCu3Snを核とする棒状金属化合物が分散された半田で電気的および機械的に接続され、コイル電極および半田付け部を含む領域をモールド成形することにより外装体を構成してなるものである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、リフロー半田付け時に内部の半田中のSn合金が溶融してもCu3Snを核とする棒状金属化合物が流動性を妨げ、外装体の外に半田が出てくることを防ぐことができるとともに、半田の中のボイドの発生を防ぎ、耐振性に優れたコイル部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の透視斜視図
【図2】図1におけるA部拡大図
【図3】図2におけるB−B線の断面図
【図4】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図5】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図6】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図7】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【図8】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態におけるコイル部品について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態におけるコイル部品の透視斜視図、図2は図1におけるA部拡大図、図3(a)は図2におけるB−B線の断面図、図3(b)は図3(a)におけるC部拡大図である。
【0011】
図1〜図3において、絶縁皮膜されたCu線11からなるコイル電極12が、巻芯13の両端に鍔14を有したドラムコア15の巻芯13に巻きつけられ、このドラムコア15から引き出されたコイル電極12と、ドラムコアの一方の鍔14に貼り付けられたりん青銅板からなる端子電極16とが半田付けにより電気的および機械的に接続され、コイル電極12および半田付けされた部分17を含む領域を、樹脂によりモールド成形して外装体19を形成することによりコイル部品を構成している。
【0012】
端子電極16は、外装体19の外部に一部を露出して実装基板(図示していない)と接続する外部接続電極部20と、外装体19の内部で外部接続電極部20から突出した内部接続電極部21とからなり、コイル電極12は内部接続電極部21と半田付けにより接続され、コイル電極12と半田付けされた部分17を含む領域を樹脂でモールド成形したものである。
【0013】
半田付けされた部分17はSn−Ag−Cu合金からなるSn合金22の中に、Cu3Snを核とする棒状金属化合物23が分散された状態となっている。
【0014】
この棒状金属化合物23は、中心部分が棒状のCu3Snであり、その周囲をCu6Sn5で覆っている状態となっている。
【0015】
ここで棒状とは、その長さが幅の5倍以上の形状となっているものを意味している。
【0016】
以上のように構成することにより、コイル部品がプリント基板に実装されリフロー半田付けを行う際に、リフロー半田炉の約250℃の雰囲気にさらされ、半田付けされた部分17のSn合金22は液相温度が220℃程度であるため溶融するものの、Cu3Snを核とする棒状金属化合物23は融点が400℃以上であるため溶融せず、これらの棒状金属化合物23がSn合金22中に分散されているため、容易に流動することができず、溶融したSn合金22が外装体19の外に出ることを防ぐことができる。
【0017】
次に本発明の一実施の形態におけるコイル部品の製造方法について図4〜図8を用いて説明する。
【0018】
まず図4のように、端子電極16に、ドラムコア15を貼り付ける。
【0019】
端子電極16は、厚さが0.1mmのりん青銅板をプレス加工して形成したもので、一対の外部接続電極部20と、この外部接続電極部20から突出してコイル電極12を接続する内部接続電極部21とを一体に形成したものであり、本実施の形態では、一対の外部接続電極部20を枠部24で連接することによりフープ状に形成して連続的に生産できるようにしている。
【0020】
また、この枠部24にはドラムコア15にコイル電極12を巻き付ける際にCu線11を仮止めする一対の突起部25を設けている。
【0021】
そして、このときフープ状の端子電極16の表面は、Snメッキされたものであっても良い。
【0022】
ドラムコアは、Ni−Zn系フェライトコアなどからなり、円柱形状の巻芯13の両端に円板形状の鍔14を有した形状をしており、円板形状の鍔14の直径寸法が1.5mm〜2.5mm、巻芯13と両端の鍔14をあわせた高さ寸法が、0.8mm〜1.5mm程度のものを用い、本実施の形態では、鍔14の直径寸法が1.8mm、高さ寸法が1.35mmのドラムコアを用いている。
【0023】
そして、ドラムコア15を端子電極16の一対の外部接続電極部20部間にまたがるように接着剤等を用いて貼り付ける。
【0024】
次に図5のように、Cu線11をドラムコア15に所定回数巻き付けてコイル電極12を形成する。
【0025】
Cu線11は、ポリウレタン樹脂などの絶縁樹脂からなる絶縁皮膜を有した線径が0.03mm〜0.08mm程度のものを用い、一旦、枠部24に形成した一方の突起部25に1ターン以上巻きつけて仮止めした後、一方の端子電極16の内部接続電極部21に引きかけて沿わせ、ドラムコア15の巻芯13に所定回数巻き付ける。その後、他方の端子電極16の内部接続電極部21部に引きかけて沿わせ、他方の突起部25に1ターン以上巻き付けて巻き終わり側を仮止めする。
【0026】
このようにしてCu線11をドラムコア15に巻芯13に巻き付けてコイル電極12を形成する。本実施の形態では線径が0.03mmのCu線11を150ターン巻回してコイル電極12を形成している。
【0027】
その後、Cu線11を切断することなくフープ状の隣接するドラムコア15にコイル電極12を連続して形成する。このとき複数個のドラムコアはCu線11によってつながった状態となっている。
【0028】
次に、半田付けする部分に対応する内部接続電極部21に沿った部分のCu線11の絶縁皮膜を、炭酸ガスレーザ(図示していない)により剥離した後、半田ペースト26を塗布する。
【0029】
半田ペースト26を塗布する方法は、ディスペンサーによるものやピン転写によるものなどがあるが、本実施の形態のように、半田付けする内部接続電極部21の面積が0.3mm×0.2mm程度の狭い場合には、ピン転写による塗布が好ましい。
【0030】
そして、図6のようにYAGレーザ光27を半田ペースト26に照射することにより半田付けを行う。半田ペースト26は、Sn−3Ag−0.5Cu合金を用いたSn合金22からなる直径約30μmの半田粒子に、直径約7μmのCu球を混合し、さらにフラックスを混ぜたものを用いている。
【0031】
このときCu球の混合割合を重量比で約10%としている。またYAGレーザ光27の照射時間は約0.25秒とし、これによって半田の温度は約450℃まで上がるようにしている。
【0032】
このようにYAGレーザ光27によって半田の温度を急激に高い温度まで上げることにより、半田ペースト26に混合したCu球あるいはコイル電極12、端子電極16のCuとSn合金22とが反応し、Cu3Snを核とする棒状金属化合物23を生成する。
【0033】
この棒状金属化合物23の大きさは、幅約1〜8μm、長さはその幅寸法の5倍以上となっている。
【0034】
このように多くの大きな棒状金属化合物23をSn合金22の中に分散させることにより、リフロー温度でSn合金22が溶融しても、その流動性を妨げることにより、半田が外装体19の外部に溶け出すことをなくすことができる。
【0035】
Cu球は混合しなくても、コイル電極12のCu線11あるいは端子電極16のりん青銅のCuとSn合金22とにより、Cu3Snを核とする棒状金属化合物23を生成することが可能であるが、より多くの棒状金属化合物23を生成するためには、Cuを少し混合することが望ましい。
【0036】
但しCu球の量が多くなると半田内にボイドが生じやすくなるため、重量比で20%以下とすることが望ましい。
【0037】
また棒状金属化合物23をより良く分散させるためには、Cu球の大きさをSn合金22の1/3以下にすることが望ましい。
【0038】
なおSn合金22に混ぜるCuは十分に混合されるものであれば球状のものでなくてもかまわない。
【0039】
またCu3Snを核とする棒状金属化合物23を生成するためには、高い温度の方が有利であり、400℃以上とすることが必要である。
【0040】
但しCuの融点を超えないようにする必要がある。さらに加熱する時間は短いほどよく、0.5秒以下とすることが望ましい。
【0041】
さらにYAGレーザ光27を照射する前に、半田付けする部分の半田ペースト26をあらかじめ100〜150℃程度まで予備加熱しておく方が望ましい。
【0042】
このようにすることにより、フラックス中の揮発性の高い余分な成分を飛ばしておくことができ、ボイドの発生をさらに抑制することができる。
【0043】
次に図7のように、コイル電極12を含むドラムコア15および端子電極16の半田付けされた部分17を含む全体をエポキシ樹脂によりモールド成形して外装体19を形成する。
【0044】
なおこの外装体19には、エポキシ樹脂に磁性体粉を分散させたものを用いてもかまわない。
【0045】
次に端子電極16の外部接続電極部20の余剰部分および外装体19からはみ出ているCu線11を切断することによりフープ材から切り離し、端子電極16の外部接続電極部20を外装体19の底面に向けて折り曲げることにより図8のようなコイル部品が完成する。
【0046】
なお、本実施の形態では、端子電極16をフープ状に連続して形成したもので説明したが、個片のものでもよく、また、外部接続電極部20から突出する内部接続電極部21を設けたもので説明したが、内部接続電極部21を設けずに外装体19内部の外部接続電極部20にコイル電極12を半田付けして接続してもよく、本実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るコイル部品およびその製造方法は、リフロー半田付け時に半田が外部へ溶け出すことを防止するとともに、半田の中のボイドの発生を防ぎ、耐振性に優れたコイル部品を提供することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0048】
11 Cu線
12 コイル電極
13 巻芯
14 鍔
15 ドラムコア
16 端子電極
17 半田付けされた部分
19 外装体
20 外部接続電極部
21 内部接続電極部
22 Sn合金
23 棒状金属化合物
24 枠部
25 突起部
26 半田ペースト
27 YAGレーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuを主成分とするコイル電極とCuを主成分とする端子電極とが、Sn合金中にCu3Snを核とする棒状金属化合物が分散された半田で電気的および機械的に接続され、前記コイル電極および前記半田を含む領域をモールド成形することにより外装体を構成してなることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
Sn−Ag−Cu合金からなるSn合金粒子とフラックスとを混ぜた半田ペーストを、Cuを主成分とするコイル電極とCuを主成分とする端子電極とを接続するように配置し、レーザで前記半田ペーストを溶融させることにより、Cu3Snを核とする棒状金属化合物を形成しながら前記コイル電極と前記端子電極とを電気的および機械的に接続し、前記コイル電極をモールド成形することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記半田ペーストにはさらにCu粉末が混合されていることを特徴とする請求項2記載のコイル部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98280(P2013−98280A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238364(P2011−238364)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】