説明

コイル部品及びその製造方法

【課題】ドラム型コアを用いたコイル部品において端子電極の半田の濡れ性の低下を防止する。
【解決手段】コイル部品は、巻芯部111及び一対の鍔部112,113を有するドラム型コア110と、鍔部112,113に設けられた端子電極141〜146と、巻芯部111に巻回された1次巻線及び2次巻線を備える。2次巻線は、一端からセンタータップまでのワイヤ132と、他端からセンタータップまでのワイヤ133とを含み、ワイヤ132,133は互いに沿った状態で巻芯部111に巻回されている。端子電極141,144の電極面積は、他の端子電極142,143,145,146よりも大きいことから、2次巻線を構成するワイヤ132,133の両端を端子電極に熱圧着する際に、端子電極141,144にかかる熱負荷を軽減することができ、端子電極141,144における半田の濡れ性の低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、ドラム型コアを用いたバルントランス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、アンテナなどに接続される伝送線路は不平衡伝送線路である一方、半導体ICなどの高周波回路に接続される伝送線路は平衡伝送線路である。このため、不平衡伝送線路と平衡伝送線路とを接続する場合、これらの間には不平衡信号及び平衡伝送信号を相互に変換するバルントランスが挿入される。ここで、不平衡信号とは固定電位(例えば接地電位)を基準としたシングルエンド型の信号を指し、平衡信号とは差動型の信号を指す。
【0003】
バルントランスとしては、特許文献1に記載されているようにメガネ型コアを用いたタイプや、特許文献2に記載されているようにトロイダルコアを用いたタイプが一般的である。しかしながら、メガネ型コアやトロイダルコアを用いたバルントランスは、全体のサイズが比較的大型であるとともに、巻線の巻回作業の自動化や表面実装が困難であるという問題があった。
【0004】
これに対し、特許文献3に記載されたドラム型コアを用いたバルントランスは、小型化が容易であるとともに、巻線の巻回作業の自動化や表面実装に適しているというメリットを有している。
【特許文献1】特開平11−135330号公報
【特許文献2】特開平8−115820号公報
【特許文献3】特開2005−39446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コモンモードフィルタなどのインダクタンス部品においては、2本の巻線のターン数が等しいことから、これら2本の巻線を同時に巻回することができる。これに対し、バルントランスは、1次巻線のターン数と2次巻線のターン数が一致するとは限らないことから、これらを同時に巻回することは困難である。また、1次巻線のターン数と2次巻線のターン数が一致する場合であっても、2次巻線からセンタータップを取り出す必要があることから、やはり全ての巻線を一度に巻回することは困難である。このような事情から、バルントランスにおいては、1次巻線と2次巻線とを同時に巻回するのではなく、別々に巻回して上下2層の巻線構造としている。そのため、1次巻線及び2次巻線の巻回では、それらを2回に分けて別々に巻回し、継線を行わなければならない。
【0006】
しかしながら、2回に分けて継線を行う場合、最初に継線された端子電極と隣接する端子電極に対して継線のための熱圧着を行うと、熱圧着時のヒーターチップからの熱によって最初に継線された端子電極の表面に酸化膜が形成され、半田の濡れ性が低下することにより、実装強度の低下や導通不良が起こるおそれがある。尚、このような問題は、バルントランスのみならずドラム型コアに巻回される巻線が二層構造となる種々のコイル部品において生じ得る。
【0007】
したがって、本発明の目的は、継線時の熱圧着の影響を抑えることができ、半田の濡れ性が良好な端子電極を有するドラム型コアを用いたコイル部品を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、半田の濡れ性が良好な端子電極を有するドラム型コアを用いたコイル部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるコイル部品は、巻芯部及び巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラム型コアと、鍔部に設けられた複数の端子電極と、巻芯部に巻回され両端が端子電極に接続された複数の巻線とを備え、複数の巻線の一部は巻芯部の内周側に巻回され、複数の巻線の少なくとも他の一部は巻芯部の外周側に巻回され、内周側に巻回された巻線が接続された端子電極の面積は、少なくとも外周側に巻回された巻線が接続された端子電極の面積よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、内周側に巻回された巻線が接続された端子電極の面積が外周側に巻回された巻線が接続された端子電極の面積よりも大きいことから、巻線の両端を端子電極に熱圧着により接続する際に、端子電極にかかる熱負荷を軽減することができ、端子電極の表面に酸化膜が形成されることによる半田の濡れ性の大幅な低下を防止することができる。また、電極面積を大きくしたことにより、熱負荷に起因する半田の濡れ性の低下を補償することができ、実装強度の低下や導通不良を防止することができる。
【0011】
本発明によるコイル部品は、巻芯部及び巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラム型コアと、鍔部に設けられた複数の端子電極と、巻芯部に巻回され両端が端子電極に接続された1次巻線と、巻芯部に巻回され両端及びセンタータップが端子電極に接続された2次巻線とを備え、2次巻線は、一端からセンタータップまでの第1のワイヤと、他端からセンタータップまでの第2のワイヤとを含み、第1のワイヤと第2のワイヤは互いに沿った状態で巻芯部に巻回されており、1次巻線及び2次巻線のいずれか一方は、巻芯部の外周側に巻回され、1次巻線及び2次巻線のいずれか他方は、巻芯部の内周側に巻回され、巻芯部の内周側に巻回された巻線が接続された端子電極の面積は、他の端子電極の面積よりも大きいことが好ましい。
【0012】
また、本発明によるコイル部品の製造方法は、1次巻線及び2次巻線のいずれか一方を継線する第1の継線工程と、1次巻線及び2次巻線のいずれか他方を継線する第2の継線工程とを備え、第1の継線工程は、複数の端子電極のうち相対的に大きな面積を有する端子電極に巻線の一端及び他端を熱圧着する工程を含み、第2の継線工程は、複数の端子電極のうち相対的に小さな面積を有する端子電極に巻線の一端及び他端を熱圧着する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、1回目に継線される端子電極の面積が、2回目に継線される端子電極の面積よりも大きいことから、1回目に継線される端子電極に加えられる熱負荷の影響を軽減することができ、半田の濡れ性の低下を防止することができる。尚、本発明における「1次巻線」及び「2次巻線」とは、入力側及び出力側を定めるものではない。すなわち、便宜上、不平衡伝送線路に接続される側を「1次巻線」、平衡伝送線路に接続される側を「2次巻線」と定義しているに過ぎず、入力側及び出力側がいずれであっても構わない。
【0014】
2本のワイヤを互いに沿った状態で巻芯部に巻回する方法としては、いわゆるバイファイラ巻きが好適である。バイファイラ巻きは、コモンモードフィルタなどにおいてしばしば採用される巻回方法であるが、コモンモードフィルタにおいては1次巻線と2次巻線がバイファイラ巻きされるに過ぎない。これに対し、本発明では、2次巻線を構成する2本のワイヤの対称性に着目し、これら2本のワイヤをバイファイラ巻きのように互いに沿った状態で巻回しているのである。これにより、これまで着目されていなかった2次巻線間における対称性を大幅に高めることが可能となる。尚、「互いに沿った状態」とは、2本のワイヤが互いに接触しながら巻回されている状態に限定されるものではなく、一定のスペースを保ちながら巻回されている状態を含む。
【0015】
本発明において、複数の端子電極は、一方の鍔部に設けられ一方向から見てこの順に配置された第1乃至第3の端子電極と、他方の鍔部に設けられ一方向から見てこの順に配置された第4乃至第6の端子電極を含み、第1の端子電極の面積は、第2及び第3の端子電極の面積よりも大きく、第4の端子電極の面積は、第5及び第6の端子電極の面積よりも大きく、1次巻線は、巻芯部の内周側に巻回され、1次巻線の一端は第1の端子電極に接続され、1次巻線の他端は第4の端子電極に接続され、2次巻線は、巻芯部の外周側に巻回され、2次巻線の一端は第3の端子電極に接続され、2次巻線の他端は第6の端子電極に接続され、2次巻線のセンタータップのうち、第1のワイヤに属する部分は第5の端子電極に接続され、第2のワイヤに属する部分は第2の端子電極に接続されていることが好ましい。
【0016】
この場合において、本発明によるコイル部品の製造方法は、1次巻線の一端を第1の端子電極に熱圧着する工程と、1次巻線を巻芯部に巻回する工程と、1次巻線の他端を第4の端子電極に熱圧着する工程と、第1のワイヤの一端及び第2のワイヤの一端を第3及び第2の端子電極にそれぞれ熱圧着する工程と、第1のワイヤと第2のワイヤとを互いに沿った状態で巻芯部に巻回された1次巻線の上層に巻回する工程と、第1のワイヤの他端及び第2のワイヤの他端を第5及び第6の端子電極にそれぞれ熱圧着する工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
これによれば、端子電極が巻芯部の軸方向に延びるドラム型コアの中心線に対して端子電極を非対称に配置することができる。したがって、実装の方向性を有するバルントランスの向きを容易に確認することができる。また、巻芯部の軸を中心として一方の側に位置する第1及び第4の端子電極に不平衡伝送線路を接続し、巻芯部の軸を中心として他方の側に位置する第3及び第6の端子電極に平衡伝送線路を接続することができるため、伝送線路を構成する配線パターンの迂回などが不要となり、直線的且つ対称性の高い伝送線路とすることが可能となる。
【0018】
本発明の上記目的はまた、巻芯部及び巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラム型コアと、鍔部に設けられた複数の端子電極と、巻芯部に巻回され両端が端子電極に接続された1次巻線と、巻芯部に巻回され両端及びセンタータップが端子電極に接続された2次巻線とを備え、2次巻線は、一端からセンタータップまでの第1のワイヤと、他端からセンタータップまでの第2のワイヤとを含み、第1のワイヤと第2のワイヤは、互いに沿った状態で巻芯部に巻回されており、1次巻線及び2次巻線のいずれか一方は、巻芯部の外周側に巻回され、1次巻線及び2次巻線のいずれか他方は、巻芯部の内周側に巻回され、一対の鍔部のいずれか一方に設けられた複数の端子電極のうち、1次巻線が接続された第1の端子電極と、2次巻線が接続された端子電極のうち第1の端子電極に隣接して設けられた第2の端子電極との間の距離は、第2の端子電極と、2次巻線が接続された端子電極のうち第2の端子電極に隣接して設けられた第3の端子電極との間の距離よりも長いことを特徴とするコイル部品によっても達成される。
【0019】
この場合において、複数の端子電極は、一方の鍔部に設けられ一方向から見てこの順に配置された第1乃至第3の端子電極と、他方の鍔部に設けられ一方向から見てこの順に配置された第4乃至第6の端子電極を含み、第1の端子電極と第2の端子電極との間の距離は、第2の端子電極と第3の端子電極との間の距離よりも長く、第4の端子電極と第5の端子電極との間の距離は、第5の端子電極と第6の端子電極との間の距離よりも長く、1次巻線は、巻芯部の内周側に巻回され、1次巻線の一端は第1の端子電極に接続され、1次巻線の他端は第4の端子電極に接続され、2次巻線は、巻芯部の外周側に巻回され、2次巻線の一端は第3の端子電極に接続され、2次巻線の他端は第6の端子電極に接続され、2次巻線のセンタータップのうち、第1のワイヤに属する部分は第5の端子電極に接続され、第2のワイヤに属する部分は第2の端子電極に接続されていることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、1次巻線が接続された端子電極と、2次巻線が接続された端子電極のうち第1の端子電極に隣接して設けられた第2の端子電極との間の距離が引き離されていることから、端子電極を大きくする場合と同様、1回目に継線される端子電極に加えられる熱負荷の影響を軽減することができ、半田の濡れ性の低下を防止することができる。
【0021】
本発明において、端子電極は、巻芯部の軸方向に延びるドラム型コアの中心線を基準として非対称に配置されていることが好ましい。また、端子電極は、巻芯部の軸方向と直交方向に延びるドラム型コアの中心線を基準として線対称に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によれば、2層の巻線構造の上層に巻回される巻線を熱圧着により継線する際のすでに継線された端子電極が受ける影響を低減することができ、半田の濡れ性が良好な端子電極を有するコイル部品を提供することが可能となる。
【0023】
また、本発明によれば、半田の濡れ性が良好な端子電極を有するドラム型コアを用いたコイル部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明によるコイル部品の代表例であるバルントランスであって、第1の実施形態によるバルントランスの外観を示す略斜視図である。また、図2は本実施形態によるバルントランスの略断面図であり、図3は本実施形態によるバルントランスを実装面側から見た略底面図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、本実施形態によるバルントランス100は、ドラム型コア110と、板状コア120と、3本のワイヤ131〜133によって構成されている。ドラム型コア110は、巻芯部111と、巻芯部111の両端に設けられた一対の鍔部112,113とを有している。一方の鍔部112には、一方向から(図3に示す矢印Aから)見てこの順に配置された3つの端子電極141〜143が設けられている。他方の鍔部113には、同じ方向から(図3に示す矢印Aから)見てこの順に配置された3つの端子電極144〜146が設けられている。
【0027】
板状コア120は、ドラム型コア110の鍔部112,113の上部を連結するように配置されている。本発明において板状コア120を用いることは必須でないが、板状コア120を用いることによって閉磁路を形成すれば、高い磁気結合を得ることが可能となる。ドラム型コア110及び板状コア120は磁性材料からなり、特に限定されないが、NiZn系フェライト材料を用いることが好ましい。NiZn系フェライトは透磁率が比較的高いだけでなく、導電性が低いことから端子電極を直接形成することができるからである。但し、端子電極が形成されない板状コア120については、より透磁率の高いMgZn系フェライト材料を用いることも可能である。
【0028】
図3に示すように、3本のワイヤ131〜133はいずれも矢印Bに向かって時計回り(右回り)に巻回されている。図4は、ワイヤ131〜133と端子電極141〜146との接続関係を説明するための模式図である。図4に示すように、ワイヤ131の一端131aは端子電極141に接続され、他端131bは端子電極144に接続されている。本実施形態においては、ワイヤ131のターン数は8ターンである。また、ワイヤ132の一端132aは端子電極143に接続され、他端132bは端子電極145に接続されている。本実施形態においては、ワイヤ132のターン数は4ターンである。さらに、ワイヤ133の一端133aは端子電極142に接続され、他端133bは端子電極146に接続されている。本実施形態においては、ワイヤ133のターン数は4ターンである。
【0029】
図5は、本実施形態によるバルントランス100の等価回路図である。
【0030】
図5に示すように、本実施形態によるバルントランス100は、1次側端子Pとグランド端子GNDとの間に接続された1次巻線L11,L12と、2次側正極端子STと2次側負極端子SBとの間に接続された2次巻線L21,L22によって構成される。2次巻線L21とL22との接続点はセンタータップCTとして用いられる。
【0031】
本実施形態においては、ワイヤ131のうち一端131a側の4ターンが1次巻線L11を構成し、他端131b側の4ターンが1次巻線L12を構成する。また、ワイヤ132が2次巻線L21を構成し、ワイヤ133が2次巻線L22を構成している。したがって、端子電極141が1次側端子Pとして用いられ、端子電極143,146がそれぞれ2次側正極端子ST及び2次側負極端子SBとして用いられ、端子電極144がグランド端子GNDとして用いられ、端子電極142,145がセンタータップCTとして用いられることになる。
【0032】
図2及び図3に示すように、本実施形態では、1次巻線を構成するワイヤ131が内周側に巻回され、2次巻線を構成するワイヤ132,133が外周側に巻回されている。ここで、2次巻線を構成するワイヤ132,133は、巻芯部111にバイファイラ巻きされている。図2においては、断面にハッチングが施されているのがワイヤ132であり、断面に×印が付されているのがワイヤ133である。つまり、一方の鍔部112から他方の鍔部113に向かって(又はその逆方向に向かって)、ワイヤ132,133が交互に巻回されている。このため、ワイヤ132,133のnターン目(n=1〜4)となる部分は、互いに隣接することになる。
【0033】
このような巻回方式により、比較例である図6に示すように、巻芯部111のうち鍔部112側のエリア111aにワイヤ132をまとめて巻回し、巻芯部111のうち鍔部113側のエリア111bにワイヤ133をまとめて巻回するといった、いわゆるセクタ巻きを行った場合と比べて、これら2本のワイヤ132,133の対称性を非常に高く保つことが可能となる。これは、バイファイラ巻きにおいては2本のワイヤがほぼ均等に巻回されるのに対し、セクタ巻きではセンタータップCTとなる部分が巻芯部111の中央部に位置するため、センタータップCTを端子電極に接続するための配線部分において対称性の乱れが生じてしまうからである。
【0034】
特に限定されるものではないが、本実施形態による端子電極141〜146は、鍔部112,113の表面に形成された銀ペーストの焼き付け電極にNiメッキ及びSnメッキが施されたものである。上述のように、ドラム型コア110の材料としてNiZn系フェライトを用いた場合には、端子電極を直接形成することが可能である。一方、ワイヤ131〜133の材料としては、導電率が高く安価なCuを用いることが好ましい。ワイヤを端子電極に継線する場合には、ワイヤの端末を端子電極に熱圧着することにより継線することができる。
【0035】
図3に示すように、一方の鍔部112に設けられた端子電極141〜143のうち、ワイヤ131の一端が接続される端子電極141の面積は、鍔部112に設けられた他の端子電極142,143の面積よりも大きく設定されている。同様に、他方の鍔部113に設けられた端子電極144〜146のうち、ワイヤ131の他端が接続される端子電極144の面積は、鍔部113に設けられた他の端子電極145,146の面積よりも大きく設定されている。すなわち、2層の巻線構造のうち下層の巻線(1次巻線)の両端が接続される端子電極の面積は、上層の巻線(2次巻線)の両端やセンタータップが接続される端子電極の面積よりも大きい。したがって、詳細は後述するが、継線時に一対の端子電極141,144にかかる熱負荷に起因する半田の濡れ性低下を補償することができる。
【0036】
本実施形態においては、鍔部112,113の長手方向に沿った端子電極141,144の幅W1を広げることにより電極面積を大きくしているが、鍔部112,113の長手方向と直交する端子電極141,144の幅W2を広げることにより電極面積を大きくしてもよく、幅W1,W2の両方を広げることにより電極面積を大きくしてもよい。さらに、鍔部112,113の底面のみならず側面に形成された端子電極(図1参照)の面積を大きくすることにより、端子電極全体の面積を大きくしてもよい。端子電極141,144の面積は、他の端子電極の1.1倍以上2倍以下であることが好ましく、1.4倍以上2倍以下であることが特に好ましい。端子電極141,144の面積が小さすぎると半田の濡れ性の低下を防止する効果が得られず、大きすぎるとドラム型コア110を大型化しなければならず、小型化の要求を満たすことができなくなるからである。電極サイズの一例を挙げれば、端子電極141,144の面積は2.0×1.0mm、端子電極142,143,145,146の面積は1.2×1.0mmとすることができる。
【0037】
本実施形態においては、端子電極141,144の大きさは同一であり、端子電極142,143,145,146の大きさは同一である。よって、端子電極141〜146は、巻芯部111の軸方向と直交方向に延びるドラム型コア110の中心線に対して線対称なレイアウトとなっている。一方、端子電極141〜146は、巻芯部111の軸方向に延びるドラム型コア110の中心線に対して非対称なレイアウトとなっている。したがって、回路的に実装の方向性を有するバルントランス100をプリント基板上に実装する際、端子電極のレイアウトから実装の方向性を容易に確認することができる。
【0038】
図7は、本実施形態によるバルントランス100を搭載するためのプリント基板上における配線パターンを示す図である。
【0039】
図7に示すプリント基板上の搭載領域150は、バルントランス100を搭載するための領域であり、4つのランドパターン151〜154が設けられている。ランドパターン151は不平衡伝送線路PLに接続されるパターンであり、バルントランス100の端子電極141(1次側端子P)に接続される。ランドパターン152はグランド配線GNDLに接続されるパターンであり、バルントランス100の端子電極144(グランド端子GND)及び端子電極142,145(センタータップCT)に共通接続される。ランドパターン153,154は一対の平衡伝送線路STL,SBLに接続されるパターンであり、それぞれバルントランス100の端子電極143(2次側正極端子ST)及び端子電極146(2次側負極端子SB)に接続される。
【0040】
このようなレイアウトにより、不平衡伝送線路PLを搭載領域150から見て矢印Cの方向へ直線的に形成することができるとともに、一対の平衡伝送線路STL,SBLを搭載領域150から見て矢印Dの方向へ平行且つ直線的に形成することができる。これにより、プリント基板上における配線パターンの迂回などが不要となることから、配線パターンの占有面積が必要以上に増大することがなく、しかも、配線パターンの対称性を確保することが可能となる。これにより、装置全体の小型化と信号品質の向上を両立させることが可能となる。
【0041】
本実施形態においては、ランドパターン151,152の面積がランドパターン153,154よりも大きいことが好ましい。パルストランス100の実装では、端子電極141,144をランドパターン151,152に接続し、端子電極143,146をランドパターン153,154に接続しなければならないが、端子電極の面積の大小関係とランドパターンの面積の大小関係が一致していれば、パルストランス100の実装の向きを容易に確認することができる。したがって、端子電極141,144をランドパターン153,154に誤って接続し、端子電極143,146をランドパターン151,152に誤って接続するといった誤接続を防止することができる。
【0042】
このように、本実施形態によるバルントランス100は、巻芯部111の内周側に巻回される1次巻線を構成するワイヤ131の両端が圧着される端子電極141,144の電極面積が相対的に大きいことから、2次巻線を構成するワイヤ132,133の両端を端子電極に熱圧着する際に、端子電極141,144にかかる熱負荷を軽減することができ、端子電極141,144の表面に酸化膜が形成されることによる半田の濡れ性の大幅な低下を防止することができる。また、電極面積を大きくしたことにより、熱負荷に起因する半田の濡れ性の低下を補償することができ、実装強度の低下や導通不良を防止することができる。さらに、端子電極141,144の電極面積が他の端子電極よりも大きいことにより、非対称な電極レイアウトを実現でき、実装の方向性が明らかな構造とすることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、2次巻線を構成する2本のワイヤ132,133がバイファイラ巻きされていることから、これらをセクタ巻きした場合と比べて、2本のワイヤの対称性132,133を非常に高く保つことが可能となる。その結果、特に高域において良好なアンプリチュードバランスやフェーズバランスを得ることが可能となる。しかも、全てのワイヤ131〜133が同一方向に巻回されているため、巻芯部111においてワイヤの交差などが生じない。このため、ショート不良などが発生し難く、製品の信頼性を高めることも可能となる。
【0044】
図8(a)乃至(e)は、バルントランス100の製造方法を説明するための模式図である。
【0045】
バルントランス100の製造では、まず端子電極141〜146が形成されたドラム型コア110と3本のワイヤ131〜133を用意する。
【0046】
次に、図8(a)に示すように、1次巻線となるワイヤ131の一端131aを端子電極141に熱圧着して固定する。なお、熱圧着では、ワイヤの先端を端子電極に接触させながら400〜800℃程度に加熱されたヒーターチップ160を端子電極に押し当てて、ワイヤの先端を端子電極に融着させる。これにより、ワイヤの先端は端子電極と電気的且つ機械的に接続された状態となる。
【0047】
次に、図8(b)に示すように、ワイヤ131をドラム型コア110の巻芯部111に所定のターン数(例えば8ターン)で巻回した後、ワイヤ131の他端131bを端子電極144に熱圧着して固定する。
【0048】
次に、図8(c)に示すように、2次巻線となるワイヤ132の一端132aとワイヤ133の一端133aを端子電極143,142にそれぞれ熱圧着して固定する。このとき、端子電極142と隣接する端子電極141にもヒーターチップ160からの熱が間接的に加わり、その熱負荷によって端子電極141の表面状態が変化するが、本実施形態においては、端子電極141の面積が相対的に大きく設定され、熱の影響が分散されることから、端子電極141の全面が大きく変化することはない。また、端子電極の表面が多少変化したとしても、電極面積が大きいことから、必要な半田の濡れ性を確保することができる。よって、端子電極141の表面における半田の濡れ性の低下を防止することができる。
【0049】
次に、図8(d)に示すように、ワイヤ132,133を巻芯部111に所定のターン数(例えば4ターン)で巻回する。特に、ワイヤ132,133はバイファイラ巻きされ、巻芯部111に巻回されたワイヤ131の露出面に重ねて巻回される。これにより、バルントランス100は上下2層の巻線構造となる。上述の通り、2次巻線を構成する2本のワイヤ132,133をバイファイラ巻きした場合には、これらをセクタ巻きした場合と比べて、ワイヤ132,133の対称性を非常に高く保つことが可能となる。したがって、特に高域において良好なアンプリチュードバランスやフェーズバランスを得ることが可能となる。
【0050】
次に、図8(e)に示すように、ワイヤ132,133の他端132a,133aを端子電極145,146にそれぞれ熱圧着して固定する。このとき、端子電極145と隣接する端子電極144にもヒーターチップ160からの熱が間接的に加わり、その熱負荷によって端子電極144の表面状態が変化するが、本実施形態においては、端子電極144の面積が相対的に大きく設定され、熱の影響が分散されることから、端子電極144の全面が大きく変化することはない。また、端子電極の表面が多少変化したとしても、電極面積が大きいことから、必要な半田の濡れ性を確保することができる。よって、端子電極144の表面における半田の濡れ性の大幅な低下を防止することができる。以上により、本実施形態によるバルントランス100が完成する。
【0051】
次に、本発明の好ましい第2の実施形態について説明する。
【0052】
図9は、本発明の第2の実施形態によるバルントランスの略断面図であり、図10は、本実施形態によるバルントランスを実装面側から見た略底面図である。
【0053】
図9に示すように、本実施形態によるバルントランス200は、2次巻線を構成するワイヤ132,133が内周側に巻回され、1次巻線を構成するワイヤ131が外周側に巻回されている点を特徴としている。また、ワイヤ132,133は、巻芯部111にバイファイラ巻きされている。図9においても、断面にハッチングが施されているのがワイヤ132であり、断面に×印が付されているのがワイヤ133である。つまり、一方の鍔部112から他方の鍔部113に向かって(又はその逆方向に向かって)、ワイヤ132,133が交互に巻回されている。このため、ワイヤ132,133のnターン目(n=1〜4)となる部分は、互いに隣接することになる。
【0054】
また、図10に示すように、一方の鍔部112に設けられた端子電極141〜143のうち、ワイヤ133の一端が接続される端子電極142の面積は、鍔部112に設けられた他の端子電極141,143の面積よりも大きく設定されている。同様に、他方の鍔部113に設けられた端子電極144〜146のうち、ワイヤ132の他端が接続される端子電極145の面積は、鍔部113に設けられた他の端子電極144,146の面積よりも大きく設定されている。すなわち、2層の巻線構造のうち下層の巻線(2次巻線)の両端が接続される端子電極の面積は、上層の巻線(1次巻線)の両端やセンタータップが接続される端子電極の面積よりも大きい。その他の構成は第1の実施形態によるバルントランス100と実質的に同一であることから、同一の構成要素に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
このように、本実施形態によるバルントランス200は、巻芯部111の内周側に巻回される2次巻線を構成するワイヤ133の一端が圧着される端子電極142及びワイヤ132の他端が圧着される端子電極145の電極面積が相対的に大きいことから、1次巻線を構成するワイヤ131の両端を端子電極141,144に熱圧着する際に、端子電極142,145にかかる熱負荷を軽減することができ、端子電極142,145の表面に酸化膜が形成されることによる半田の濡れ性の大幅な低下を防止することができる。また、電極面積を大きくしたことにより、熱負荷に起因する半田の濡れ性の低下を補償することができ、実装強度の低下や導通不良を防止することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、2次巻線を構成する2本のワイヤ132,133がバイファイラ巻きされていることから、これらをセクタ巻きした場合と比べて、2本のワイヤの対称性132,133を非常に高く保つことが可能となる。その結果、特に高域において良好なアンプリチュードバランスやフェーズバランスを得ることが可能となる。しかも、全てのワイヤ131〜133が同一方向に巻回されているため、巻芯部111においてワイヤの交差などが生じない。このため、ショート不良などが発生し難く、製品の信頼性を高めることも可能となる。
【0057】
図11(a)乃至(e)は、バルントランス200の製造方法を説明するための模式図である。
【0058】
バルントランス200の製造では、まず端子電極141〜146が形成されたドラム型コア110と3本のワイヤ131〜133を用意する。
【0059】
次に、図11(a)に示すように、2次巻線となる2本のワイヤ132,133の一端132a,133aを端子電極143,142にそれぞれ熱圧着して固定する。上述したように、熱圧着では、ワイヤの先端を端子電極に接触させながら400〜800℃程度に加熱されたヒーターチップ160を端子電極に押し当てて、ワイヤの先端を端子電極に融着させる。これにより、ワイヤの先端は端子電極と電気的且つ機械的に接続された状態となる。
【0060】
次に、図11(b)に示すように、ワイヤ132,133をドラム型コア110の巻芯部111に所定のターン数(例えば4ターン)で巻回する。このとき、ワイヤ132,133をバイファイラ巻きすることにより、ワイヤ132,133を互いに沿った状態で巻芯部111に所定のターン数(例えば4ターン)で巻回する。上述の通り、2次巻線を構成する2本のワイヤ132,133をバイファイラ巻きした場合には、これらをセクタ巻きした場合と比べて、ワイヤ132,133の対称性を非常に高く保つことが可能となる。したがって、特に高域において良好なアンプリチュードバランスやフェーズバランスを得ることが可能となる。その後、ワイヤ132,133の他端132a,133aを端子電極145,146に熱圧着によりそれぞれ固定する。
【0061】
次に、図11(c)に示すように、1次巻線となるワイヤ131の一端131aを端子電極141に熱圧着して固定する。このとき、端子電極141と隣接する端子電極142にもヒーターチップ160からの熱が間接的に加わり、その熱負荷によって端子電極142の表面状態が変化するが、本実施形態においては、端子電極142の面積が相対的に大きく設定され、熱の影響が分散されることから、端子電極142の全面が大きく変化することはない。また、端子電極の表面が多少変化したとしても、電極面積が大きいことから、必要な半田の濡れ性を確保することができる。よって、端子電極142の表面における半田の濡れ性の大幅な低下を防止することができる。
【0062】
次に、図11(d)に示すように、ワイヤ131を巻芯部111に所定のターン数(例えば8ターン)で巻回する。特に、ワイヤ131は、巻芯部111に巻回されたワイヤ132,133の露出面に重ねて巻回される。これにより、バルントランス200は上下2層の巻線構造となる。
【0063】
次に、図11(e)に示すように、ワイヤ131の他端131bを端子電極144に熱圧着して固定する。このとき、端子電極114と隣接する端子電極145にもヒーターチップ160からの熱が間接的に加わり、その熱負荷によって端子電極145の表面状態が変化するが、本実施形態においては、端子電極145の面積が相対的に大きく設定され、熱の影響が分散されることから、端子電極144の全面が大きく変化することはない。また、端子電極の表面が多少変化したとしても、電極面積が大きいことから、必要な半田の濡れ性を確保することができる。よって、端子電極145の表面における半田の濡れ性の低下を防止することができる。以上により、本実施形態によるバルントランス200が完成する。
【0064】
次に、本発明の好ましい第3の実施形態について説明する。
【0065】
図12は、本発明の第3の実施形態によるバルントランスを実装面側から見た略底面図である。
【0066】
図12に示すように、本実施形態によるバルントランス300は、端子電極141〜146の面積は同一であるが、端子電極141,142間の距離D1が、端子電極142,143間の距離D2よりも長く設定されており、同様に、端子電極141,142間の距離D1が、端子電極142,143間の距離D2よりも長く設定されていることを特徴としている。その他の構成は第1の実施形態によるバルントランス100と実質的に同一であることから、同一の構成要素に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施形態においては、図2に示すような1次巻線が内周側、2次巻線が外周側とする巻線構造であってもよく、図9に示すような2次巻線が内周側、1次巻線が外周側とする巻線構造であってもよい。前者の場合には、端子電極141,144が端子電極142,145から離れていることから、2次巻線となるワイヤ132,133の両端を端子電極に熱圧着する際に、端子電極141,144にかかる熱負荷を軽減することができる。また、後者の場合には、端子電極142,145が端子電極141,144から離れていることから、1次巻線となるワイヤ131の両端を端子電極に熱圧着する際に、端子電極142,145にかかる熱負荷を軽減することができる。
【0068】
このように、本実施形態によるバルントランス300は、一方の鍔部112に設けられた端子電極141〜143のうち、1次巻線が接続された端子電極141と、2次巻線が接続された端子電極142,143のうち端子電極141に隣接して設けられた端子電極142との間の距離D1は、端子電極142とこれに隣接して設けられた端子電極143との間の距離D2よりも長いことから、外周側に巻回された巻線の両端を端子電極に熱圧着する際に、内周側の巻線が既に接続された端子電極にかかる熱負荷を軽減することができ、当該端子電極における半田の濡れ性の低下を防止することができる。同様に、他方の鍔部113に設けられた端子電極144〜146のうち、1次巻線が接続された端子電極144と、2次巻線が接続された端子電極145,146のうち端子電極144に隣接して設けられた端子電極145との間の距離D1は、端子電極145とこれに隣接して設けられた端子電極146との間の距離D2よりも長いことから、外周側に巻回された巻線の両端を端子電極に熱圧着する際に、内周側の巻線が既に接続された端子電極にかかる熱負荷を軽減することができ、当該端子電極の表面に酸化膜が形成されることによる半田の濡れ性の低下を防止することができる。さらに、端子電極141,144と隣接電極との距離D1が、他の端子電極間の距離D2よりも長いことにより、非対称な電極レイアウトを実現でき、これによりバルントランス100の実装の方向性が明らかな構造とすることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、2次巻線を構成する2本のワイヤ132,133がバイファイラ巻きされていることから、これらをセクタ巻きした場合と比べて、2本のワイヤの対称性132,133を非常に高く保つことが可能となる。その結果、特に高域において良好なアンプリチュードバランスやフェーズバランスを得ることが可能となる。しかも、全てのワイヤ131〜133が同一方向に巻回されているため、巻芯部111においてワイヤの交差などが生じない。このため、ショート不良などが発生し難く、製品の信頼性を高めることも可能となる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0071】
例えば、上記各実施形態においては、2次巻線を構成する2本のワイヤがバイファイラ巻きされているが、互いに沿った状態で巻回されている限り、バイファイラ巻きに限定されるものではない。したがって、図21に示すように、2本のワイヤ11,12がツイストされてなるツイストワイヤ10を用い、このようなツイストワイヤ10を巻芯部に巻回することにより2次巻線として利用しても構わない。
【0072】
また、上記各実施形態においては、ドラム型コア110の鍔部112,113の底面に導電性ペーストを直接形成した後、メッキを施すことにより端子電極を形成しているが、本発明はこのような構成に限定されず、例えばコの字状の電極金具を鍔部112,113の側面から嵌め込むことにより、端子電極を機械的に取り付けることも可能である。
【0073】
また、本明細書においては、第3の実施形態を第1及び第2の実施形態と別々に説明しているが、第1の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせて構成することも可能であり、第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせることも可能である。すなわち、最初に巻回される巻線が継線される端子電極の面積を大きくし、且つ、隣接する端子電極との距離が長くなるように各端子電極を形成してもよい。さらに、端子電極の数は、一対の鍔部に3つずつである必要はなく、例えば一対の鍔部に4つずつ形成することも可能である。
【0074】
さらに、上記各実施形態では、本発明による効果が顕著なバルントランスを例に挙げているが、本発明はバルントランスに限定されるものではなく、ドラム型コアに対して巻回される巻線が二層構造となる各種コイル部品に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態によるバルントランス100の外観を示す略斜視図である。
【図2】バルントランス100の略断面図である。
【図3】バルントランス100を実装面側から見た略底面図である。
【図4】ワイヤ131〜133と端子電極141〜146との接続関係を説明するための模式図である。
【図5】バルントランス100の等価回路図である。
【図6】比較例のバルントランスの略断面図である。
【図7】バルントランス100を搭載するためのプリント基板上における配線パターンを示す図である。
【図8】バルントランス100の製造方法を説明するための模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態によるバルントランス200の略断面図である。
【図10】バルントランス200を実装面側から見た略底面図である。
【図11】バルントランス200の製造方法を説明するための模式図である。
【図12】本発明の第3の実施形態によるバルントランス300を実装面側から見た略底面図である。
【符号の説明】
【0076】
100,200,300 バルントランス
110 ドラム型コア
111 巻芯部
112 一方の鍔部
113 他方の鍔部
120 板状コア
131〜133 ワイヤ
131a〜133a ワイヤの一端
131b〜133b ワイヤの他端
141〜146 端子電極
150 搭載領域
151〜154 ランドパターン
160 ヒーターチップ
L11,L12 1次巻線
L21,L22 2次巻線
CT センタータップ
GND グランド端子
GNDL グランド配線
P 1次側端子
PL 不平衡伝送線路
ST 2次側正極端子
SB 2次側負極端子
STL,SBL 平衡伝送線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部及び前記巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラム型コアと、
前記鍔部に設けられた複数の端子電極と、
前記巻芯部に巻回され両端が前記端子電極に接続された複数の巻線とを備え、
前記複数の巻線の一部は前記巻芯部の内周側に巻回され、
前記複数の巻線の少なくとも他の一部は前記巻芯部の外周側に巻回され、
前記内周側に巻回された巻線が接続された端子電極の面積は、少なくとも前記外周側に巻回された巻線が接続された端子電極の面積よりも大きいことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記複数の巻線は、前記巻芯部に巻回され両端が前記端子電極に接続された1次巻線と、前記巻芯部に巻回され両端及びセンタータップが前記端子電極に接続された2次巻線を含み、
前記2次巻線は、一端から前記センタータップまでの第1のワイヤと、他端から前記センタータップまでの第2のワイヤとを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは互いに沿った状態で前記巻芯部に巻回されており、
前記1次巻線及び前記2次巻線のいずれか一方は、前記巻芯部の外周側に巻回され、
前記1次巻線及び前記2次巻線のいずれか他方は、前記巻芯部の内周側に巻回されることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記複数の端子電極は、前記一方の鍔部に設けられ一方向から見てこの順に配置された第1乃至第3の端子電極と、前記他方の鍔部に設けられ前記一方向から見てこの順に配置された第4乃至第6の端子電極を含み、
前記第1の端子電極の面積は、前記第2及び前記第3の端子電極の面積よりも大きく、
前記第4の端子電極の面積は、前記第5及び前記第6の端子電極の面積よりも大きく、
前記1次巻線は、前記巻芯部の前記内周側に巻回され、
前記1次巻線の前記一端は前記第1の端子電極に接続され、
前記1次巻線の前記他端は前記第4の端子電極に接続され、
前記2次巻線は、前記巻芯部の前記外周側に巻回され、
前記2次巻線の前記一端は前記第3の端子電極に接続され、
前記2次巻線の前記他端は前記第6の端子電極に接続され、
前記2次巻線の前記センタータップのうち、前記第1のワイヤに属する部分は前記第5の端子電極に接続され、前記第2のワイヤに属する部分は前記第2の端子電極に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
巻芯部及び前記巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部を有するドラム型コアと、
前記鍔部に設けられた複数の端子電極と、
前記巻芯部に巻回され両端が前記端子電極に接続された1次巻線と、
前記巻芯部に巻回され両端及びセンタータップが前記端子電極に接続された2次巻線とを備え、
前記2次巻線は、一端から前記センタータップまでの第1のワイヤと、他端から前記センタータップまでの第2のワイヤとを含み、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、互いに沿った状態で前記巻芯部に巻回されており、
前記1次巻線及び前記2次巻線のいずれか一方は、前記巻芯部の外周側に巻回され、
前記1次巻線及び前記2次巻線のいずれか他方は、前記巻芯部の内周側に巻回され、
前記一対の鍔部のいずれか一方に設けられた複数の端子電極のうち、前記1次巻線が接続された第1の端子電極と、前記2次巻線が接続された端子電極のうち前記第1の端子電極に隣接して設けられた第2の端子電極との間の距離は、前記第2の端子電極と、前記2次巻線が接続された端子電極のうち前記第2の端子電極に隣接して設けられた第3の端子電極との間の距離よりも長いことを特徴とするコイル部品。
【請求項5】
前記複数の端子電極は、前記一方の鍔部に設けられ一方向から見てこの順に配置された第1乃至第3の端子電極と、前記他方の鍔部に設けられ前記一方向から見てこの順に配置された第4乃至第6の端子電極を含み、
前記第1の端子電極と前記第2の端子電極との間の距離は、前記第2の端子電極と前記第3の端子電極との間の距離よりも長く、
前記第4の端子電極と前記第5の端子電極との間の距離は、前記第5の端子電極と前記第6の端子電極との間の距離よりも長く、
前記1次巻線は、前記巻芯部の前記内周側に巻回され、
前記1次巻線の前記一端は前記第1の端子電極に接続され、
前記1次巻線の前記他端は前記第4の端子電極に接続され、
前記2次巻線は、前記巻芯部の前記外周側に巻回され、
前記2次巻線の前記一端は前記第3の端子電極に接続され、
前記2次巻線の前記他端は前記第6の端子電極に接続され、
前記2次巻線の前記センタータップのうち、前記第1のワイヤに属する部分は前記第5の端子電極に接続され、前記第2のワイヤに属する部分は前記第2の端子電極に接続されていることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記端子電極は、前記巻芯部の軸方向に延びる前記ドラム型コアの中心線を基準として非対称に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記端子電極は、前記巻芯部の軸方向と直交方向に延びる前記ドラム型コアの中心線を基準として線対称に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
請求項2に記載のコイル部品の製造方法であって、
前記1次巻線及び前記2次巻線のいずれか一方を継線する第1の継線工程と、
前記1次巻線及び前記2次巻線のいずれか他方を継線する第2の継線工程とを備え、
前記第1の継線工程は、前記複数の端子電極のうち相対的に大きな面積を有する端子電極に前記巻線の一端及び他端を熱圧着する工程を含み、
前記第2の継線工程は、前記複数の端子電極のうち相対的に小さな面積を有する端子電極に前記巻線の一端及び他端を熱圧着する工程を含むことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載のコイル部品の製造方法であって、
前記1次巻線の一端を前記第1の端子電極に熱圧着する工程と、
前記1次巻線を前記巻芯部に巻回する工程と、
前記1次巻線の他端を前記第4の端子電極に熱圧着する工程と、
前記第1のワイヤの一端及び前記第2のワイヤの一端を前記第3及び第2の端子電極にそれぞれ熱圧着する工程と、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとを互いに沿った状態で前記巻芯部に巻回された前記1次巻線の上層に巻回する工程と、
前記第1のワイヤの他端及び前記第2のワイヤの他端を前記第5及び第6の端子電極にそれぞれ熱圧着する工程とを備えることを特徴とするコイル部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−93216(P2010−93216A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264643(P2008−264643)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】