説明

コウジ菌の液体培養液を利用した植物性タンパク質源からの固形調味料の製造方法、その方法によって製造される固形調味料、汎用食品調味料、ソース、ドレッシング、醤油、及び加工食品

滅菌された大豆、脱脂大豆及び小麦グルテンからなる群から選択される少なくとも一つの植物性タンパク質源とコウジ菌の液体培養液とを混合して、無食塩及び無菌条件下で植物性タンパク質源を分解させる段階;及び分解物を乾燥して固形調味料を得る段階を含む、固形調味料の製造方法、その方法により製造される固形調味料、その固形調味料を含む汎用食品調味料、ソース、ドレッシング、醤油または味噌、または加工食品を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、コウジ菌の液体培養物を利用して、植物性タンパク質源から固形調味料を製造する方法、前記方法によって製造された固形調味料、その固形調味料を含む汎用食品調味料、ソース、ドレッシング、醤油または味噌、及び加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
食品の味を向上させる方法として、グルタミン酸ナトリウム(MSG:Monosodium Glutamate)が代表的に使われている。1908年日本の池田博士が昆布からMSGを分離して以来、核酸系成分(イノシン酸ナトリウム/グアニル酸ナトリウム)が食品に良い風味を与える風味増強成分であると同定されている。
【0003】
経済が発展するにつれて、消費者は、食品に対する味品質の高級化を要求しており、既存の味よりは、さらに「熟成」され、かつ「豊富」な味を食品に付与することを所望している。このような熟成され、かつ豊富な味を、日本では「コク味」と表現しており、韓国では「深み味」や「豊かな風味」と表現する。
【0004】
通常、食品にこのようなコクを付与するために、よく発酵または熟成された味噌や醤油を使用することもある。醤油および味噌内に存在するペプチドとアミノ酸とが、味の主な役割を行うと推測され、ペプチドとアミノ酸とは、製造工程中にコウジ菌のタンパク質分解酵素によって、原料である小麦や大豆タンパク質が高濃度の食塩下で長時間分解されて生成される。
【0005】
味噌及び醤油は、昔から伝来された農産物の長期保存技術と調味料製造技術とによってつくられる。味噌及び醤油の製造方法は、公知である。この製造方法を応用した多くの特許出願がされている。また、タンパク質から前記ペプチドとアミノ酸とを得るために、市販のタンパク質分解酵素を利用する方法が、韓国特許公開第1998−0200076号公報(特許文献1))に記載されている。しかし、この方法では、コスト面や味品質面で限界がある。
【0006】
コウジ菌を酵素源として使用して分解する方法が、日本国特開第2004−201678号(特許文献2)及び第2003−289826号(特許文献3))に開示され、また、コウジ菌抽出液を利用するタンパク質分解方法が日本国特開第1993−084050号(特許文献4)に開示されている。しかし、コウジ菌の操作が複雑であり、雑菌の汚染を防ぐために、多量の塩やアルコールを添加する必要がある。このような添加物は、酵素の作用を阻害するので、分解時間が長くなる。また、多量の塩は、製品の汎用性を阻害する。
【0007】
液体コウジ菌を利用する方法も報告されている。例えば、日本国特開第2004−313113号(特許文献5)には、節類圧出残渣に液体コウジ菌を添加し、アルコール濃度を2ないし5%に維持したまま、50℃以上で節類圧出残渣を分解させることを特徴とする調味料の製造方法が開示されている。しかし、この方法によれば、液体コウジ菌による植物性タンパク質源の分解は、開放系、例えば、攪拌器の上をラップで覆ったほどの開放系で進められるため、雑菌に汚染される可能性がある。この方法では、これを緩和または防止するために、反応液中に2〜5%のアルコールを添加している。また、チラミン及びヒスタミンのような不揮発性アミン類の含量を減少させるために、50℃以上の高温で酵素分解を行っている。
【0008】
アルコールのような、雑菌汚染を防止する添加物を有しない純粋コウジ菌培養液を利用して植物性タンパク質源を分解し、ペプチド含有固形調味料を製造する方法は、報告されていない。
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開第1998−0200076号公報
【特許文献2】日本国特開第2004−201678号
【特許文献3】日本国特開第2003−289826号
【特許文献4】日本国特開第1993−084050号
【特許文献5】日本国特開第2004−313113号
【発明の開示】
【0010】
発明の詳細な説明
課題
本発明は、植物性タンパク質源をコウジ菌の液体培養液及び雑菌の汚染なしに低温で反応させて、うま味及び味の持続性に優れた固形調味料を製造する方法を提供する。
【0011】
本発明は、さらに、前記方法によって製造される固形調味料を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、前記固形調味料を含む汎用食品調味料を提供する。
【0013】
本発明は、さらに、前記固形調味料を含むソース、ドレッシング、醤油または味噌、または加工食品を提供する。
【0014】
解決手段
本発明の一局面により、滅菌された大豆、脱脂大豆及び小麦グルテンからなる群から選択される少なくとも一つの植物性タンパク質源とコウジ菌の液体培養液とを混合して、無食塩及び無菌条件下で前記植物性タンパク質源を分解させる段階;及び前記分解物を乾燥して固形調味料を得る段階を含む、固形調味料の製造方法を提供する。
【0015】
コウジ菌は、アスペルギルス・オリゼ(Aspegillus oryzae)、または、アスペルギルス・ソーヤ(Aspegillus sojae)でもよいが、それらに限定されない。これらのコウジ菌の培養に使われる培地は、食塩、すなわち、塩化ナトリウムが含まれていないものならば、任意でよい。好ましくは、前記培地は、脱脂大豆を含む培地である。コウジ菌を培養する温度は、コウジ菌の生育が可能であってぺプチダーゼなどの酵素を生産できる温度ならば、特別に限定されないが、好ましくは、25℃ないし35℃である。
【0016】
植物性タンパク質源は、大豆、脱脂大豆または小麦グルテンでもよい。小麦グルテンは、グルタミンを多量含有しており、醤油および味噌の良い風味のために主な役割を担う。大豆または脱脂大豆は、良い風味と豊かな風味とを付与する原料として有効である。前記植物性タンパク質源は、10μmないし1mm、好ましくは、50ないし250μmの平均粒子サイズを有する。
【0017】
前記植物性タンパク質源は、植物性タンパク質源中の空気の除去により調製してもよい。前記空気の除去は、公知の任意の方法によってなされる。例えば、前記空気の除去は、真空において前記植物性タンパク質源を処理する、または、前記植物性タンパク質源中の空気を窒素に置換することによってなされる。これにより、前記植物性タンパク質源を含む溶液中に泡が発生することを予防しうる。また、泡は、滅菌を妨害することが公知であるため、空気を除去することによって、滅菌をさらに効率的に行いうる。
【0018】
前記液体培養液は、アスペルギルス・オリゼ及びアスペルギルス・ソーヤからなる群から選択されたコウジ菌を、滅菌された脱脂大豆0.5ないし3.0%、酵母抽出物0.1ないし1.5%、ブドウ糖0.5ないし2.5%、リン酸カリウム0.1ないし1.0%、硫酸マグネシウム0.01ないし0.1%、及び残りの割合の水を含む液体培地中で培養することにより調製され得る。
【0019】
本固形調味料製造方法は、前記植物性タンパク質源分解後に、前記分解物を80℃ないし100℃の範囲の温度で10ないし40分間加熱して酵素を失活させる段階をさらに含んでもよい。このような熱処理によって、酵素を失活させて均一な製品を製造できるだけでなく、偶然に添加される雑菌を滅菌する役割を行う。
【0020】
また、本固形調味料製造方法は、前記酵素活性後に、前記分解物を濾過する段階をさらに含んでもよい。このような濾過過程によって、分解物中の固形成分を除去しうるだけでなく、雑菌を除去しうる。
【0021】
植物性タンパク質源の分解工程は、20℃ないし50℃の範囲の温度で6時間ないし7日間、好ましくは、1日ないし5日間行われる。このようなタンパク質分解に要する時間は、液体培養液の酵素力価、利用される植物性タンパク質源によって異なってよく、また、得られる調味料によって所望のレベルに適切に制御されうる。
【0022】
本方法において、前記タンパク質分解は、食塩が実質的に存在しない滅菌された条件下で行われることを特徴とする。コウジ菌の酵素は、食塩に対する耐性が低いため、分解段階が食塩の濃度が高い条件下で行われる場合には、酵素反応が阻害されて反応時間が長くなる。味噌及び醤油のように、非滅菌状態の基質を分解する場合には、一般的に、少なくとも10%の食塩が含まれているため、植物性タンパク質源の酵素分解及び熟成に数カ月ないし1年の期間が必要である。また、製品に多量含まれている食塩は、製品の汎用性を制限する。本発明の態様では、前記の問題を克服するために、無食塩状態でタンパク質分解を行う。
【0023】
植物性タンパク質源では、特性上滅菌過程中に膨化やゲル化が起きやすく、実質的な滅菌状態に達し難い。特に、タンパク質の濃度が上昇するほどより顕著である。
【0024】
本方法では、粒子サイズ10μmないし1mm、好ましくは、50ないし250μmのタンパク質粉末を使用して、滅菌過程中に粉末内の熱伝逹を容易にした。また、高濃度のタンパク質滅菌時に問題となる気泡形成を抑制するために、滅菌前に溶液内に微細な窒素気泡を注入して溶液内の空気を窒素に置換するか、または溶液を真空で処理して、空気を除去した。特に、工程の規模が大きくなるほど窒素注入の重要性が増大した。静置滅菌の場合、滅菌を妨害するタンパク質塊の生成が容易であるので、攪拌滅菌するか、または連続式滅菌器を使用する。また、タンパク質分解中の外気の吸入による汚染を防止するために、培地において正圧を維持する。したがって、培養液中で雑菌の汚染がないと考えられるので、食塩の添加なしにタンパク質分解が行われる。
【0025】
図1は、本発明の一態様にかかる固形調味料製造方法を例示するフローチャートである。
【0026】
本発明の方法によって製造された固形調味料は、アミノ酸及びペプチド含量が高く、かつ、食塩の含量が低い固形調味料を、雑菌の汚染なしに速かに製造しうる。特に、本発明の方法によって製造された調味料は、ペプチド含量が特に高いことが特徴である。
【0027】
したがって、本発明の他の局面により、固形調味料の総乾燥重量に対して15ないし45%のペプチドを含む、固形調味料を提供する。
【0028】
本発明の固形調味料は、優秀な良い風味を有する。本発明の固形調味料に対する感覚検査は、次のように行った。まず、前記固形調味料に対して、グルタミン酸含量を分析し、その濃度がグルタミン酸ナトリウムの閾値である0.03%となるように希釈した。この希釈液につき、0.03%のグルタミン酸ナトリウム溶液を基準に感覚検査を行った。サンプル溶液のの良い風味が0.03%のグルタミン酸ナトリウムより非常に強い場合には、サンプル溶液を、0.03%のグルタミン酸ナトリウム溶液と同等な良い風味強度を有するまでさらに希釈した。感覚検査は、訓練された10人のパネルによって実施された。
【0029】
本発明の別の局面により、本発明の固形調味料を有効成分とする汎用食品調味料を提供する。このような汎用食品調味料は、前記固形調味料成分以外に、当技術分野で通常使用される賦形剤、希釈剤などをさらに含んでもよい。
【0030】
本発明の前記汎用食品調味料は、任意の形状、例えば、液状または顆粒形態を有する調味料でありうる。
本発明の別の局面により、前記固形調味料を含むソース、ドレッシング、醤油および味噌、または加工食品を提供する。
【0031】
有利な効果
本発明の固形調味料の製造方法によれば、植物性タンパク質源から、低食塩濃度、優秀な良い風味、および長い味の持続性といった特性を有する固形調味料を、迅速に、雑菌の汚染なしに製造しうる。
【0032】
本発明により製造される、固形調味料、汎用食品調味料、ソース、ドレッシング、醤油、及び加工食品は、優秀な良い風味、および長い味の持続性を有する。
【0033】
本発明の、上述した、および他の特徴および利点は、添付の図面を参照し、本発明の例示的な態様を詳細に記載することにより、より明白となるであろう。
【0034】
発明の形態
以下、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態の態様であってよく、本明細書に記載の態様に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの態様は、本開示が十分かつ完全となることを目的として提供される。以下、特別に言及しない限り、「%」は、重量%を意味する。
【0035】
実施例
実施例1:脱脂大豆の無食塩及び無菌条件下における酵素分解−脱脂大豆の最適粒子サイズの選択
5Lの培養器に脱脂大豆2g、酵母抽出物2g、ブドウ糖4g、リン酸カリウム0.6g及び硫酸マグネシウム0.1gに蒸溜水2Lを添加して、120℃で30分間培地を加圧滅菌した。
【0036】
得られた滅菌された培地に純粋培養したアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)胞子を接種し、雑菌汚染がないように密閉された条件下、500rpm、30℃で36時間、1/1vvmで培養して、300U/mLのプロテアーゼ活性を有する酵素液を得た。酵素活性は、カゼインを基質として、培養液自体の酵素活性を30℃で測定した。
【0037】
基質として使われた脱脂大豆の粒子サイズによる影響を評価するために、脱脂大豆粒子の平均粒子サイズを変えてサンプル溶液を調製した。4種類の脱脂大豆を調製した。未粉砕の脱脂大豆、および、2mm、1mm及び250μmの粒子サイズの脱脂大豆をそれぞれ有する水溶液を、濃度2で調製し、各溶液を、5Lのステンレス製培養器を利用して攪拌しつつ滅菌した。滅菌されたそれぞれの基質を予め滅菌された1Lのフラスコに200mLずつ入れて、前記培養液を無菌状態で50mLずつ添加した後、密閉された状態で40〜45℃で弱く攪拌しつつ、72時間酵素分解した。培養液内の菌糸体は、濾過や破砕工程なしにそのまま培養液と共に使用し、菌糸体の内部または細胞壁に結合されているプロテアーゼも分解過程中に遊離してタンパク質加水分解に寄与した。それぞれのタンパク質加水分解物を85℃で20分間加熱して酵素を失活させた後に冷却し、6,000rpmで20分間遠心分離して上澄液を得た。この上澄液の微生物汚染による異臭をパネル評価によって判別し、その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1のように、基質として使われる脱脂大豆の粒子サイズが1mm以下の場合、良好な滅菌が得られた。したがって、実施例2〜4では、平均粒子サイズを1mm以下に調整した基質のみを使用し、以後、濾過工程の便宜のため、最小粒子サイズは10μmに調整した。
【0040】
実施例2:脱脂大豆からの粉末調味料のパイロットスケール製造
500Lのステンレス製培養器に150Lの脱脂大豆3重量%、酵母抽出物1.5重量%、ブドウ糖1.5重量%、リン酸カリウム0.5重量%及び硫酸マグネシウム0.05重量%に該当する量を入れて120℃で20分間加圧滅菌した。前記培養器内に純粋培養したアスペルギルス・ソーヤ胞子を接種して、雑菌の汚染がないように密閉された条件下、300rpm、30℃で70時間、1/2vvmで培養して200U/mLのタンパク質分解酵素活性を有する酵素液を得た。
【0041】
別途のステンレス製容器に20%濃度の脱脂大豆粉末水溶液を製造し、窒素ガスを攪拌しつつ注入した。このとき、タンパク質溶液内の置換程度は、DO測定機を利用して測定し、溶液内の酸素濃度が最大飽和濃度0ないし5%となった時に置換が完了したと見なした。作製した溶液を120℃で0.5時間、100rpmで攪拌滅菌した後に40℃に冷却した。冷却された脱脂大豆粉末溶液に前記酵素液150Lを無菌状態で培養液に混合し、滅菌された空気を注入して内圧を0.1気圧に維持した状態で、43℃で120時間酵素反応させた。この酵素反応液を90℃で30分間加熱して酵素を失活させた後、0.1μmの濾過膜で濾過して透過液を真空濃縮し、Brix40流動層乾燥器で顆粒化した。その結果、総乾燥重量に対し窒素8.7%、ペプチド32.6%、グルタミン酸3.5%の、豊かな風味を有する黄褐色の顆粒を得られた。加水分解度は、総窒素に対するアミノ-窒素量の割合で計算し、総タンパク質量(総窒素量×6.25)から総アミノ酸量を除外したものをペプチド含量として計算した。
【0042】
得られた顆粒をグルタミン酸濃度が0.03%となるように希釈し、希釈液をサンプル溶液として調製した。対照溶液として0.03%のグルタミン酸を使用した。感覚評価は、10人のパネルによって、前記サンプル溶液の味を前記対照溶液と比較することによってなされた。その結果、本発明の実施例2により製造されたサンプル溶液は、非常に良い風味及び味の持続性を有した。
【0043】
実施例3:感覚評価
実施例2により製造されたサンプル溶液を再び希釈し、別のサンプル溶液を調製した。本発明の実施例3により製造されたサンプル溶液の良い風味が、実施例2により製造されたサンプル溶液のそれと同一であると回答したパネル数を計数し、結果を表2に示した。
【0044】
【表2】

【0045】
良い風味の平均強度は、それぞれの希釈倍数と該当するパネル数とを乗算した後に総パネル数で割って求め、表2での平均強度は、(4×1+6×4+8×3+10×2)/10=7.2であって、グルタミン酸ナトリウムに対して7.2倍であった。
【0046】
前記と同様の方法で、味の持続性(サンプル溶液の味が消えるまでに要する時間)を測定した場合、味の持続性が長いため、希釈倍数が大きくなった。その結果を表3に表した。
【0047】
【表3】

【0048】
平均持続性は、グルタミン酸ナトリウムの14.4倍であった。
【0049】
実施例4:脱脂大豆からの粉末調味料の量産スケール製造
3000Lのステンレス培養器で脱脂大豆60kg、酵母抽出物15kg、ブドウ糖60kg、リン酸カリウム46kg、硫酸マグネシウム1.5kgを蒸溜水2400Lに溶解した後、125℃で30分間滅菌した後に50℃まで冷却させた。その後、翌日120℃で30分間追加滅菌した後に30℃に冷却した。前記培地と同じ組成の滅菌培地10Lを含む15Lの培養器において、アスペルギルス・ソーヤを30℃で24時間予備培養した後、培養液を無菌状態で3000Lのステンレス培養器に添加して、30〜32℃、350rpm、1/2vvmで30時間追加培養した。最終培養液の酵素活性は、600U/mLであった。
【0050】
一方、10KLのステンレス培養器で7KLの脱脂大豆30%の滅菌溶液(窒素置換後、チューブ式熱交換器で120℃、30分の連続対流により滅菌)を入れて、45℃で60時間酵素反応を行った。このとき、外気による汚染を防止するために、容器内圧を0.2気圧に維持した。この反応液を加熱して連続対流加熱管に入れて90℃で20分加熱した後、50℃に冷却してフィルタプレスで濾過した。この濾過液を0.5μmの膜に通過させた後、Brix40濃縮器で濃縮し、濃縮溶液に賦形剤としてデキストリンを30%まで添加し、噴霧乾燥して、微黄色の調味料粉末を調製した。調味料粉末は、その総乾燥重量に対して窒素6.8%、ペプチド21.7%、およびグルタミン酸3.4%からなった。
【0051】
本発明により、植物性タンパク質源を無菌状態で分解するために、1mmないし10μmの平均粒子サイズを有する脱脂大豆を使用し、溶液内の空気を窒素に置換し、攪拌滅菌により滅菌して塊化を防止し、分解中に正圧を維持することによって雑菌の汚染を防止し、これにより、植物性タンパク質源から優れた特性を有する固形調味料を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一態様にかかる固形調味料製造方法を例示するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌された大豆、脱脂大豆及び小麦グルテンからなる群から選択される少なくとも一つの植物性タンパク質源とコウジ菌の液体培養液とを混合して、無食塩及び無菌条件下で前記植物性タンパク質源を分解させる段階と、
前記分解物を乾燥して固形調味料を得る段階と、
を含む固形調味料の製造方法。
【請求項2】
前記コウジ菌の液体培養液は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)からなる群から選択されたコウジ菌を、滅菌された脱脂大豆0.5ないし3.0%、酵母抽出物0.1ないし1.5%、ブドウ糖0.5ないし2.5%、リン酸カリウム0.1ないし1.0%、硫酸マグネシウム0.01ないし0.1%、及び残りの割合の水を含む液体培地内で培養することにより調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
植物性タンパク質源の分解後に、前記分解物を80ないし100℃の範囲の温度で10ないし40分間加熱して酵素を失活させる段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酵素失活の後に、前記分解物を濾過する段階をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記植物性タンパク質源の分解工程は、20℃ないし50℃の範囲の温度で6時間ないし7日間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記植物性タンパク質源は、10μmないし1mmの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記植物性タンパク質源は、植物性タンパク質源中の空気の除去により調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記空気の除去は、真空において前記植物性タンパク質源を処理する、または、前記植物性タンパク質源中の空気を窒素に置換することによってなされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項の方法を用いて製造された固形調味料であって、固形調味料の総乾燥重量に対して15ないし45%のペプチドを含む、固形調味料。
【請求項10】
請求項9に記載の固形調味料を有効成分として含む、汎用食品調味料。
【請求項11】
請求項9に記載の固形調味料を含む、ソース、ドレッシング、醤油または味噌、または加工食品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−505653(P2009−505653A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527849(P2008−527849)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003337
【国際公開番号】WO2007/024111
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508013124)シージェイ チェイルジェダン コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】