説明

コネクタおよび回転電機

【課題】 簡単な構造で異物の影響を抑制することが可能なコネクタおよび該コネクタを備えた回転電機を提供する。
【解決手段】 コネクタ12は、コネクタ本体12Aと、相手方のコネクタ11と接合される接合部上に形成された複数の端子12B,12Cと、接合部におけるイオン成分などによる導電率の上昇を抑制する導電率抑制層16とを備える。導電率抑制層16は、コネクタ11に設けることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよび回転電機に関し、特に、異物の影響を抑制する構造を有するコネクタおよび回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気配線を接続するためのコネクタが従来から知られている。
【0003】
たとえば、特開平7−85925号公報においては、コネクタプラグの密閉性を保つシール部において、Oリングと該Oリングの外側に着脱自在な封水剤とが設けられた密閉型コネクタが開示されている。
【0004】
また、特開2002−151193号公報においては、樹脂製ハウジングの側面のうち、通電のために相手方コネクタと嵌合した場合に外側に露出する面をほぼ全面に亘って親水化処理したコネクタが開示されている。
【0005】
また、特開平9−7683号公報においては、端子周り領域には撥水化処理が施され、その周辺領域には親水化処理が施されたコネクタ構造が開示されている。
【0006】
また、特開2002−241566号公報においては、コネクタや電気・電子部品に用いられるジアリルフタレート樹脂成形材料が開示されている。
【0007】
また、実用新案登録第2566530号公報においては、中空ケースの内部に吸湿剤が収納された電気接続子の保護具が開示されている。
【0008】
また、特開2002−100438号公報においては、コネクタによる配線の接続部が防湿性袋により被覆され、必要に応じて該袋内にシリカゲルなどの吸湿剤を入れる配線コネクタの防水構造が開示されている。
【0009】
また、特開2001−313113号公報においては、シール体によってコネクタハウジング内への水分の侵入を防止した防水コネクタが開示されている。
【0010】
また、特開2000−50560号公報においては、外部からの高圧水の浸入を阻止する防壁を有するモータ用ブリーザが開示されている。
【0011】
また、特開平9−48250号公報においては、モータケースと変速機ケースとの合わせ面近傍に形成された空間とエアブリーザ室とを連通させる連通孔が設けられ、上記空間内での高温高圧化およびそれに伴なう結露を低減し、熱や空気に対するモータの負担を低減することが可能なエアブリーザ機構が開示されている。
【特許文献1】特開平7−85925号公報
【特許文献2】特開2002−151193号公報
【特許文献3】特開平9−7683号公報
【特許文献4】特開2002−241566号公報
【特許文献5】実用新案登録第2566530号公報
【特許文献6】特開2002−100438号公報
【特許文献7】特開2001−313113号公報
【特許文献8】特開2000−50560号公報
【特許文献9】特開平9−48250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
コネクタの接合部に侵入した異物の影響を抑制することは重要である。
【0013】
これに対し、上記特許文献1においては、端子の周囲に吸湿材を設け、コネクタ内に水が浸入した場合も、除湿を行ない絶縁劣化を防止することが開示されている。しかしながら、当該特許文献1に記載の構造においては、吸湿材がコネクタ本体とは別体で設けられており、その設置スペースなどが問題になる。上記特許文献2〜9においても、このような課題を解決するのに十分な構成は開示されていない。
【0014】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構造で異物の影響を抑制することが可能なコネクタおよび該コネクタを備えた回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るコネクタは、他のコネクタと接合される接合部を有する本体と、接合部に表面処理を施して形成され、該接合部における導電率の上昇を抑制する導電率抑制部とを備える。
【0016】
導電率抑制部が表面処理により設けられることで、別途の部材を設けない簡易な構成により、異物の影響を抑制することができる。
【0017】
上記コネクタの本体は、接合部において他のコネクタの本体と嵌合され、接合部は他のコネクタとの嵌合方向に延びる側面部分を有し、該側面部分に達するように導電率抑制部が設けられることが好ましい。
【0018】
これにより、導電率抑制部とコネクタまたは他のコネクタの本体側面とを擦り合わせながらコネクタどうしを嵌合させることができる。結果として、コネクタと他のコネクタとの隙間における導電率抑制部の充填率を向上させることができ、異物によるコネクタへの影響を抑制する効果を高めることができる。
【0019】
上記コネクタにおいて、好ましくは、接合部上に複数の端子がさらに備えられる。
【0020】
複数の端子が設けられたコネクタの接合部上に導電率抑制部が設けられることにより、接合部における導電率の上昇を抑制し、複数の端子間の短絡を抑制することができる。
【0021】
上記コネクタにおいて、好ましくは、導電率抑制部は、接合部にイオン成分対処物質を塗布して形成される。
【0022】
イオン成分は、導電率を上昇させる大きな要因となる。したがって、接合部にイオン成分対処物質が塗布されることで、導電率の上昇を効果的に抑制することができる。また、コネクタにイオン成分対処物質を塗布することで、該物質の膨張、変色状態からそのコネクタが部品として使用できるものか否かを正確に探知することができ、コネクタが組み付けられるデバイスの組み立て後の不具合を回避することが可能になる。
【0023】
上記コネクタにおいて、1つの例として、イオン成分対処物質はイオン吸着物質である。
【0024】
これにより、イオン吸着物質にイオン成分を吸収させることができる。結果として、接合部における導電率の上昇を抑制することができる。
【0025】
上記コネクタにおいて、他の例として、イオン成分対処物質は吸水性物質である。
【0026】
これにより、吸水性物質に水分を吸収させてイオン成分の移動を抑制することができる。結果として、接合部における導電率の上昇を抑制することができる。
【0027】
本発明に係る回転電気は、ハウジングと、ハウジング内に設けられた素子と、素子に接続された配線と、配線と他の配線とを接続する上記コネクタとを備える。
【0028】
異物による影響が抑制されたコネクタが用いられることにより、回転電機の性能が向上する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡単な構造で、コネクタ部への異物の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明に基づくコネクタおよび回転電気の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0031】
なお、以下では、コネクタ部に接続される「素子」の一例としての「レゾルバ」について主に説明するが、本発明に係るコネクタが接続される「素子」は「レゾルバ」に限定されず、その他の素子にも同様の思想を適用することが可能である。たとえば、センサであれば、温度センサ、オイルレベルセンサおよび水位センサなどにおいても本発明の思想を適用することが可能である。
【0032】
図1は、本発明の1つの実施の形態に係るコネクタを含む駆動ユニットの構造の一例を概略的に示す図である。図1に示される例では、駆動ユニット1は、ハイブリッド車両に搭載される駆動ユニットであり、モータジェネレータ100と、レゾルバ200と、減速機構300と、ディファレンシャル機構400と、ドライブシャフト受け部500と、ハウジング600と、端子台700とを含んで構成される。
【0033】
モータジェネレータ100は、電動機または発電機としての機能を有する回転電機であり、軸受120を介してハウジング200に回転可能に取付けられた回転シャフト110と、回転シャフト110に取付けられたロータ130と、ステータ140とを有する。
【0034】
ロータ130は、鉄または鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成されたロータコアと、該ロータコアに埋設された永久磁石とを有する。永久磁石は、たとえば、ロータコアの外周近傍にほぼ等間隔を隔てて配置される。
【0035】
ステータ140は、リング状のステータコア141と、ステータコア141に巻回されるステータコイル142と、ステータコイル142に接続されるバスバー143とを有する。バスバー143は、ハウジング600に設けられた端子台700および給電ケーブル800Aを介してPCU(Power Control Unit)800と接続される。また、PCU800は、給電ケーブル900Aを介してバッテリ900に接続される。これにより、バッテリ900とステータコイル142とが電気的に接続される。
【0036】
ステータコア141は、鉄または鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成される。ステータコア141の内周面上には複数のティース部(図示せず)および該ティース部間に形成される凹部としてのスロット部(図示せず)が形成されている。スロット部は、ステータコア141の内周側に開口するように設けられる。
【0037】
3つの巻線相であるU相、V相およびW相を含むステータコイル142は、スロット部に嵌り合うようにティース部に巻き付けられる。ステータコイル142のU相、V相およびW相は、互いに円周上でずれるように巻き付けられる。バスバー143は、それぞれステータコイル142のU相、V相およびW相に対応するU相、V相およびW相を含む。
【0038】
給電ケーブル800Aは、U相ケーブルと、V相ケーブルと、W相ケーブルとからなる三相ケーブルである。バスバー143のU相、V相およびW相がそれぞれ給電ケーブル800AにおけるU相ケーブル、V相ケーブルおよびW相ケーブルに接続される。
【0039】
モータジェネレータ100から出力された動力は、減速機構300からディファレンシャル機構400を介してドライブシャフト受け部500に伝達される。ドライブシャフト受け部500に伝達された駆動力は、ドライブシャフト(図示せず)を介して車輪(図示せず)に回転力として伝達されて、車両を走行させる。
【0040】
一方、ハイブリッド車両の回生制動時には、車輪は車体の慣性力により回転させられる。車輪からの回転力によりドライブシャフト受け部500、ディファレンシャル機構400および減速機構300を介してモータジェネレータ100が駆動される。このとき、モータジェネレータ100が発電機として作動する。モータジェネレータ100により発電された電力は、PCU800におけるインバータを介してバッテリ900に蓄えられる。
【0041】
レゾルバ200は、レゾルバロータ210と、レゾルバステータ220とを有する。レゾルバロータ210は、モータジェネレータ100の回転シャフト110に接続されている。また、レゾルバステータ220は、レゾルバステータコア221と、該コアに巻回されたレゾルバステータコイル222とを有する。上記レゾルバ200により、モータジェネレータ100のロータ130の回転角度が検出される。検出された回転角度は、コネクタ部10を介してPCU800へ伝達される。PCU800は、検出されたロータ130の回転角度と、外部ECU(Electrical Control Unit)からのトルク指令値とを用いてモータジェネレータ100を駆動するための駆動信号を生成し、その生成した駆動信号をモータジェネレータ100へ出力する。
【0042】
図2は、PCU800の主要部の構成を示す回路図である。図2を参照して、PCU800は、コンバータ810と、インバータ820と、制御装置830と、コンデンサC1,C2と、電源ラインPL1〜PL3と、出力ライン840U,840V,840Wとを含む。コンバータ810は、バッテリ900とインバータ820との間に接続され、インバータ820は、出力ライン840U,840V,840Wを介してモータジェネレータ100と接続される。
【0043】
コンバータ810に接続されるバッテリ900は、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池である。バッテリ900は、発生した直流電圧をコンバータ810に供給し、また、コンバータ810から受ける直流電圧によって充電される。
【0044】
コンバータ810は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置830からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。リアクトルLは、バッテリ900の正極と接続される電源ラインPL1に一端が接続され、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に他端が接続される。
【0045】
このコンバータ810は、リアクトルLを用いてバッテリ900から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。また、コンバータ810は、インバータ820から受ける直流電圧を降圧してバッテリ900を充電する。
【0046】
インバータ820は、U相アーム850U、V相アーム850VおよびW相アーム850Wからなる。各相アームは、電源ラインPL2,PL3間に並列に接続される。U相アーム850Uは、直列に接続されたパワートランジスタQ3,Q4からなり、V相アーム850Vは、直列に接続されたパワートランジスタQ5,Q6からなり、W相アーム850Wは、直列に接続されたパワートランジスタQ7,Q8からなる。ダイオードD3〜D8は、それぞれパワートランジスタQ3〜Q8のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ3〜Q8のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。そして、各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、出力ライン840U,840V,840Wを介してモータジェネレータ100の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
【0047】
このインバータ820は、制御装置830からの制御信号に基づいて、電源ラインPL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ100へ出力する。また、インバータ820は、モータジェネレータ100によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインPL2に供給する。
【0048】
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。また、コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0049】
レゾルバ200は、モータジェネレータ100の回転子の回転角度を検出して制御装置830へ出力する。ここで、制御装置830への出力は、配線13,14およびコネクタ部10を介して行なわれる。
【0050】
制御装置830は、モータジェネレータ100の回転子の回転角度、モータトルク指令値、モータジェネレータ100の各相電流値、およびインバータ820の入力電圧に基づいてモータジェネレータ100の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q8をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ820へ出力する。
【0051】
また、制御装置830は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ820の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ810へ出力する。
【0052】
さらに、制御装置830は、モータジェネレータ100によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ900を充電するため、コンバータ810およびインバータ820におけるパワートランジスタQ1〜Q8のスイッチング動作を制御する。
【0053】
このPCU800においては、コンバータ810は、制御装置830からの制御信号に基づいて、バッテリ900から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインPL2に供給する。そして、インバータ820は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ100へ出力する。
【0054】
また、インバータ820は、モータジェネレータ100の回生動作によって発電された交流電圧を直流電圧に変換して電源ラインPL2へ出力する。そして、コンバータ810は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を降圧してバッテリ900を充電する。
【0055】
図3は、レゾルバ200の主要な構成の一例を模式的に示した図である。
【0056】
図3を参照して、レゾルバ200におけるレゾルバロータ210は、楕円形状を有する。レゾルバステータコイルは、励磁用信号巻線222Aおよび検知用信号巻線222B,222Cを有する。ここで、検知用信号巻線222B,222Cは、電気的に互いに90°ずれて配置されている。レゾルバロータ210がモータジェネレータの回転シャフトとともに回転することにより、レゾルバロータ210と検知用信号巻線222B,222Cとの間のギャップ(たとえば図3中のL1,L2)が変化する。ここで、励磁用信号巻線222Aに交流電流を流すことにより、検知用信号巻線222B,222Cにはレゾルバロータ210の回転位置に応じた出力が発生し、この出力の差からレゾルバロータ210の回転位置(たとえば図3中のθ)を検出することができる。
【0057】
図3に示すように、コネクタ部10は、配線13側のコネクタ11と、配線14側のコネクタ12とを有する。コネクタ11,12の端子を接続することで、配線13,14が接続され、レゾルバ200と制御装置830とが電気的に接続される。ここで、配線13,14は、複数相(図3に示す例では6相)を有する配線であり、コネクタ部10は、上記複数相におけるそれぞれの相に対応した複数の端子を有する。
【0058】
ところで、ブリーザ機構などからハウジング600の内部に雨水が侵入したり、温度変化によってハウジング600内に結露水が発生したりする場合がある。また、水分とともに、イオン成分を比較的多く含む融雪剤などの不純物がハウジング600内に侵入する場合がある。これらがコネクタ部10に侵入することにより、上述した複数の端子間において導電率が上昇する。導電率が過度に上昇すると、レゾルバ200において相間の短絡が生じる場合がある。ここで、融雪剤などを含むイオン濃度が高い水分が侵入した場合は、即座に導電率が上昇する。また、結露水などイオン濃度が低い水分が侵入した場合であっても、端子金属からのイオンの析出などにより、徐々に導電率が上昇する。これに対し、本実施の形態においては、後述する対策がなされてることにより、相間の短絡が抑制される。
【0059】
図4は、本実施の形態に係るコネクタによる接続構造を示した図である。なお、図4において、矢印DR1はハウジング600の内側方向を示し、矢印DR2はハウジング600の外側方向を示す。
【0060】
図4に示されるコネクタ部10は、ハウジング600内の「素子」としてのレゾルバ200とハウジング600の外部に設けられるPCU800とを接続する配線13,14上に設けられる。そして、コネクタ部10は、配線13側のコネクタ11および配線14側のコネクタ12により構成される。コネクタ11,12は、それぞれ、コネクタ本体11A,12Aおよび接続端子(図4においては図示せず)を有する。
【0061】
コネクタ本体12Aは、ハウジング600の開口部に取付けられ、ハウジング600を貫通する。コネクタ本体12Aの外周には、Oリング15が設けられる。これにより、ハウジング600の開口部がシールされる。そして、コネクタ本体12Aは、ハウジング600の内側に取付け口としての接合部17を有する。コネクタ本体11Aは、この接合部17に嵌合される。接合部17における嵌合面は、コネクタ本体11A,12Aの嵌合方向に延びる側面部分17Aと、側面部分17Aと交差する方向に延びる底面部分17Bとを有する。
【0062】
ハウジング600内部には、結露により発生、または、外部から侵入した水滴が存在する場合がある。この水滴によるコネクタ部10への影響を抑制することは重要である。
【0063】
これに対し、本実施の形態に係るコネクタ12の本体12Aは、コネクタ本体11Aとの嵌合面上に導電率抑制層16を有する。導電率抑制層16は、底面部分17Bから側面部分17Aに達するように設けられている。なお、導電率抑制層16は、コネクタ本体11Aに設けられていてもよいし、コネクタ本体11A,12Aの双方に設けられていてもよい。
【0064】
導電率抑制層16は、たとえば、イオン吸着物質や吸水性物質(以下、イオン成分対処物質と称する場合がある。)を含んで構成される。イオン吸着物質は、イオン成分を吸収する。また、吸水性物質は、水分を吸収してイオン成分の移動を抑制する。このように、導電率抑制層16は、典型的には、イオン成分による導電率の上昇を抑制する「イオン成分対処部」である。ここで、イオン吸着物質としては、たとえばシリカゲルやマイクロポーラスマテリアル(MPM:Micro-Porous Material)などが考えられる。また、吸水性物質としては、活性炭などが考えられる。このような導電率抑制層16が設けられることにより、コネクタ本体11A,12Aの嵌合面上におけるイオン成分の移動が抑制される。また、導電率抑制層16が水分等を吸収して膨張することにより、コネクタ本体11A,12Aの密着度が高まり、接合部17への更なる異物の侵入が抑制される。結果として、コネクタ11,12の接合部において導電率の上昇が抑制される。
【0065】
導電率抑制層16は、コネクタ本体11A,12Aの嵌合面に表面処理を施すことにより形成される。これにより、別途の部材を設けない簡易な構成により、異物の影響を抑制することができる。
【0066】
導電率抑制層16を設けるための表面処理の一例として、コネクタ上にイオン成分対処物質を塗布することが考えられる。ただし、表面処理の方法はこれに限定されない。たとえば、表面処理の方法として、噴霧や蒸着が用いられてもよい。
【0067】
イオン成分対処物質は、好ましくは、部品(コネクタ)または製品(駆動ユニット)の運搬前(より好ましくは、コネクタ製造時)に予め塗布しておく。このようにすることで、イオン成分対処物質の膨張、変色状態などからコネクタの運搬状況(たとえば湿気状態など)を探知することができる。たとえば、シリカゲルは、水分を吸収することにより、変色および膨張する。
【0068】
駆動ユニット1を組み立てる場合、その部品としてのコネクタ11,12の運搬状況によっては、出荷当時保証されていたコネクタ11,12の品質が確保されない場合がある。これに対し、コネクタ本体11A,12Aにイオン成分対処物質が予め塗布されることにより、そのコネクタ11,12が部品として使用可能であるか否かを一目の下に検知することができる。この結果、確実に不良品の使用を中止し、または、取り代えることができる。特に、コネクタ部品は湿度に対して敏感であるため、運搬時における湿度状態を把握して、駆動ユニットの部品としての良否を判断することは重要である。また、通常は、湿度などによる部品の不具合は見た目では判別できず、最終製品の状態にまで組み立てて使用した後に発見される場合が多いが、本実施の形態に係るコネクタによれば、そのような事態が生じることを防止することができる。
【0069】
図5は、コネクタ部10のハウジング600への組付け過程を示した図である。図5を参照して、上述したように、Oリング15が設けられたコネクタ本体12Aが、ハウジング600の開口部に差し込まれた後、ハウジング600の内側から相手方のコネクタ本体11Aが嵌合される。ここで、接続部17の側面部分17Aにおいて、コネクタ11,12の嵌合方向に沿って導電率抑制層16が設けられていることで、導電率抑制層16とコネクタ本体11A,12Aの側面とを擦り合わせながらコネクタ本体11A,12Aを嵌合させることができる。結果として、コネクタ本体11A,12Aの隙間における導電率抑制層16の充填率を向上させることができる。
【0070】
図6は、コネクタ部10における接続端子の詳細を示した図である。図6を用いて、コネクタ11,12の接合部に異物が侵入した場合の影響について説明する。
【0071】
図6を参照して、コネクタ11は複数の端子11B,11Cを有し、コネクタ12は複数の端子12B,12Cを有する。凹状の端子11B,11Cにピン状の端子12B,12Cを差し込むことで、コネクタ11,12が電気的に接続される。
【0072】
端子11B,12Bと端子11C,12Cとは、それぞれ、複数相ケーブルである配線13,14における異なる相に対応する端子である。すなわち、端子11B,12Bは、配線13,14における1つの相に対応する端子であり、端子11C,12Cは、配線13,14における他の相に対応する端子である。したがって、コネクタ11,12の接合部に異物が侵入し、端子11B,12Bと端子11C,12Cとの間が電気的に導通すると、相間の短絡が生じ、レゾルバ200の機能が阻害される。これに対し、上記端子間に導電率抑制層16が設けられることで、端子間におけるイオン成分の移動が抑制され、相間の短絡が防止される。
【0073】
ところで、相間の短絡を抑制する手法として、アルミニウムからなる端子11B,11C,12B,12Cの表面をアルマイト処理することも考えられる。また、端子11B,11C,12B,12C上に樹脂モールディング(コーティング)層や金メッキ層を設け、それらの層を削りながら端子を接触させて導通を確保することが考えられる。上記により、端子金属からのイオン析出が抑制され、コネクタ11,12の接合部における導電率の上昇が抑制される。
【0074】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係るコネクタ12は、コネクタ本体12Aと、「他のコネクタ」としての相手方のコネクタ11と接合される接合部17上に形成された複数の端子12B,12Cと、接合部17におけるイオン成分などによる導電率の上昇を抑制する「導電率抑制部」としての導電率抑制層16とを備える。導電率抑制層16は、コネクタ11に設けることも可能である。
【0075】
また、本実施の形態に係る回転電機は、ハウジング600と、ハウジング600内に設けられたレゾルバ200と、レゾルバ200に接続される配線13と、配線13と「他の配線」としての配線14とを接続するコネクタ11,12とを備える。
【0076】
複数の端子間の短絡が抑制されたコネクタ11,12が用いられることにより、レゾルバ200における相間の短絡が抑制される。結果として、相間短絡によるレゾルバ200の機能の低下が抑制され、駆動ユニット1におけるモータジェネレータ100の性能が向上する。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係るコネクタを含む駆動ユニットの構造の一例を概略的に示す図である。
【図2】図1に示されるPCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図3】図1,図2に示されるレゾルバの主要な構成の一例を模式的に示した図である。
【図4】本発明の1つの実施の形態に係るコネクタによる接続構造を示した図である。
【図5】図4に示される接続構造のハウジングへの組付け過程を示した図である。
【図6】図4に示される接続構造における接続端子の詳細を示した図である。
【符号の説明】
【0079】
1 駆動ユニット、10 コネクタ部、11,12 コネクタ、11A,12A コネクタ本体、11B,11C,12B,12C 端子、13,14 配線、15 Oリング、16 導電率抑制層、17 接合部、17A 側面部分、17B 底面部分、100 モータジェネレータ、110 回転シャフト、120 軸受、130 ロータ、140 ステータ、141 ステータコア、142 ステータコイル、143 バスバー、200 レゾルバ、210 レゾルバロータ、220 レゾルバステータ、221 レゾルバステータコア、222 レゾルバステータコイル、222A 励磁用信号巻線、222B,222C 検知用信号巻線、300 減速機構、400 ディファレンシャル機構、500 ドライブシャフト受け部、600 ハウジング、700 端子台、800 PCU、800A,900A 給電ケーブル、810 コンバータ、820 インバータ、830 制御装置、840U,840V,840W 出力ライン、850U U相アーム、850V V相アーム、850W W相アーム、900 バッテリ、C1,C2 コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L リアクトル、PL1,PL2,PL3 電源ライン、Q1〜Q8 パワートランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のコネクタと接合される接合部を有する本体と、
前記接合部に表面処理を施して形成され、該接合部における導電率の上昇を抑制する導電率抑制部とを備えた、コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタの本体は、前記接合部において前記他のコネクタの本体と嵌合され、
前記接合部は前記他のコネクタとの嵌合方向に延びる側面部分を有し、
前記側面部分に達するように前記導電率抑制部が設けられた、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接合部上に設けられた複数の端子をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記導電率抑制部は、前記接合部にイオン成分対処物質を塗布して形成される、請求項1から請求項3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記イオン成分対処物質はイオン吸着物質である、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記イオン成分対処物質は吸水性物質である、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
ハウジングと、
前記ハウジング内に設けられた素子と、
前記素子に接続された配線と、
前記配線と他の配線とを接続する請求項1から請求項6のいずれかに記載のコネクタとを備えた、回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−269206(P2006−269206A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84267(P2005−84267)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】