説明

コネクタおよび回転電機

【課題】 簡単な構造で異物の影響を抑制することが可能なコネクタおよび該コネクタを備えた回転電機を提供する。
【解決手段】 コネクタ12の本体12Aは、ハウジング600の内側に位置し、相手方のコネクタ11が接続される取付け口16Aと、ハウジング600の内壁と取付け口16Aとを隔てるように設けられ、ハウジング600内の水滴WRが取付け口16Aに侵入することを抑制する侵入抑制部17Aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよび回転電機に関し、特に、異物の影響を抑制する構造を有するコネクタおよび回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
センサ設置部などをシールする防水構造が従来から知られている。
【0003】
たとえば、実開平6−2232号公報においては、雨水等をシールするシール凸部を設け、出力ターミナルのショートを防止して、誤信号の出力を防止した電磁式回転センサが開示されている。
【0004】
また、特開2001−264349号公報においては、回転検出器と端子とを備え、端子におけるリード線に接続される部分を防水キャップで被覆した回転検出センサが開示されている。
【0005】
また、特開2000−217227号公報においては、垂直に配置された配線基板と、該配線基板に組みつけられた基板コネクタとの間にアライメント補正板が介在する電気接続箱が開示されている。ここで、アライメント補正板の上面では、該上面の左右両側が中央部に比して相対的に下方に傾斜している。上記公報においては、この傾斜部の設置により、配線基板に沿って流れ落ちた水分が、アライメント補正板の上面を上記傾斜に沿って左右両側に流れ落ちるとされている。
【0006】
また、特開平7−29631号公報においては、充電用コネクタの収容室の天井面に傾斜部を設け、収容室内面に付着した水分を伝わせて集水溝に誘導するようにしたコネクタ周辺の排水構造が開示されている。
【0007】
また、特開2000−50560号公報においては、外部からの高圧水の浸入を阻止する防壁を有するモータ用ブリーザが開示されている。
【0008】
また、特開平9−48250号公報においては、モータケースと変速機ケースとの合わせ面近傍に形成された空間とエアブリーザ室とを連通させる連通孔が設けられ、上記空間内での高温高圧化およびそれに伴なう結露を低減し、熱や空気に対するモータの負担を低減することが可能なエアブリーザ機構が開示されている。
【特許文献1】実開平6−2232号公報
【特許文献2】特開2001−264349号公報
【特許文献3】特開2000−217227号公報
【特許文献4】特開平7−29631号公報
【特許文献5】特開2000−50560号公報
【特許文献6】特開平9−48250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示されるようなシール部を設けたとしても、ハウジング内部に水分などの異物が侵入する場合がある。この結果、該コネクタに接続される素子の性能に影響を与える場合がある。
【0010】
上記特許文献3〜6においても、上記の問題を十分に解決できる構成は開示されていない。たとえば、特許文献3においては、異物が伝う「ハウジング内壁」と「コネクタ接続部」とを隔てるような防水構造は開示されていない。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構造で異物の影響を抑制することが可能なコネクタおよび該コネクタを備えた回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコネクタは、ハウジングに取付けられるコネクタであって、ハウジングの内側に位置し、他のコネクタが接続される取付部と、ハウジングの内壁と取付部とを隔てるように設けられ、ハウジング内の異物が取付部に侵入することを抑制する侵入抑制部とを備える。
【0013】
上記構成によれば、コネクタの取付部に異物が侵入することを抑制することができる。したがって、ハウジング内の異物が素子の性能に影響を与えることが抑制される。
【0014】
上記コネクタにおいて、侵入抑制部を取付部に対して上側に配置可能であることが好ましい。
【0015】
これにより、ハウジング内壁を伝って降下する異物がコネクタの取付部に侵入することを抑制することができる。
【0016】
上記コネクタにおいて、該コネクタをハウジングに取付けた状態で取付部の位置を変更可能であることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、侵入抑制部の位置を考慮せずにコネクタをハウジングに取付けることができるので、コネクタのハウジングへの取付が容易になる。
【0018】
上記コネクタにおいて、好ましくは、取付部の可変位置は、侵入抑制部が取付部への異物の侵入を抑制する第1の位置と、他のコネクタを取付部に接続することが第1の位置よりも容易になる第2の位置とを含む。
【0019】
上記構成によれば、取付部が第2の位置にある状態でコネクタと他のコネクタとを接続し、その後に取付部を第1の位置に移動させて侵入抑制部を機能させることができる。したがって、コネクタと他のコネクタとの接続が容易になる。
【0020】
上記コネクタにおいて、好ましくは、ハウジングの外側に設けられ、侵入抑制部の位置を示す表示部がさらに備えられる。
【0021】
上記構成によれば、ハウジングの外側から侵入抑制部が適切な位置にあるかを確認することが可能になる。
【0022】
上記コネクタにおいて、1つ例として、侵入抑制部はコネクタの本体を含む。また、他の例として、侵入抑制部はコネクタの本体に形成された溝部を含む。
【0023】
上記構成によれば、別段の部品を設けることなく異物の取付部への侵入を抑制する侵入抑制部を構成することができる。
【0024】
上記コネクタにおいて、さらに他の例として、取付部を覆うキャップ部材がさらに備えられ、侵入抑制部はキャップ部材を含む。
【0025】
上記構成によれば、キャップ部材によって異物の取付部への侵入を抑制する侵入抑制部を構成することができる。
【0026】
本発明に係る回転電気は、上記ハウジングとしてのケースと、ケース内に設けられた素子と、素子に接続された配線と、配線と他の配線とを接続する上記コネクタとを備える。
【0027】
異物の影響が抑制されたコネクタが用いられることにより、回転電機の性能が向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ハウジング内壁を伝う水分などの異物がコネクタ接続部に侵入することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明に基づくコネクタおよび回転電気の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0030】
なお、以下では、コネクタ部に接続される「素子」の一例としての「レゾルバ」について主に説明するが、本発明に係るコネクタが接続される「素子」は「レゾルバ」に限定されず、その他の素子にも同様の思想を適用することが可能である。たとえば、センサであれば、温度センサ、オイルレベルセンサおよび水位センサなどにおいても本発明の思想を適用することが可能である。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態1〜5に係るコネクタを含む駆動ユニットの構造の一例を概略的に示す図である。図1に示される例では、駆動ユニット1は、ハイブリッド車両に搭載される駆動ユニットであり、モータジェネレータ100と、レゾルバ200と、減速機構300と、ディファレンシャル機構400と、ドライブシャフト受け部500と、ハウジング600と、端子台700とを含んで構成される。
【0032】
モータジェネレータ100は、電動機または発電機としての機能を有する回転電機であり、軸受120を介してハウジング200に回転可能に取付けられた回転シャフト110と、回転シャフト110に取付けられたロータ130と、ステータ140とを有する。
【0033】
ロータ130は、鉄または鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成されたロータコアと、該ロータコアに埋設された永久磁石とを有する。永久磁石は、たとえば、ロータコアの外周近傍にほぼ等間隔を隔てて配置される。
【0034】
ステータ140は、リング状のステータコア141と、ステータコア141に巻回されるステータコイル142と、ステータコイル142に接続されるバスバー143とを有する。バスバー143は、ハウジング600に設けられた端子台700および給電ケーブル800Aを介してPCU(Power Control Unit)800と接続される。また、PCU800は、給電ケーブル900Aを介してバッテリ900に接続される。これにより、バッテリ900とステータコイル142とが電気的に接続される。
【0035】
ステータコア141は、鉄または鉄合金などの板状の磁性体を積層することにより構成される。ステータコア141の内周面上には複数のティース部(図示せず)および該ティース部間に形成される凹部としてのスロット部(図示せず)が形成されている。スロット部は、ステータコア141の内周側に開口するように設けられる。
【0036】
3つの巻線相であるU相、V相およびW相を含むステータコイル142は、スロット部に嵌り合うようにティース部に巻き付けられる。ステータコイル142のU相、V相およびW相は、互いに円周上でずれるように巻き付けられる。バスバー143は、それぞれステータコイル142のU相、V相およびW相に対応するU相、V相およびW相を含む。
【0037】
給電ケーブル800Aは、U相ケーブルと、V相ケーブルと、W相ケーブルとからなる三相ケーブルである。バスバー143のU相、V相およびW相がそれぞれ給電ケーブル800AにおけるU相ケーブル、V相ケーブルおよびW相ケーブルに接続される。
【0038】
モータジェネレータ100から出力された動力は、減速機構300からディファレンシャル機構400を介してドライブシャフト受け部500に伝達される。ドライブシャフト受け部500に伝達された駆動力は、ドライブシャフト(図示せず)を介して車輪(図示せず)に回転力として伝達されて、車両を走行させる。
【0039】
一方、ハイブリッド車両の回生制動時には、車輪は車体の慣性力により回転させられる。車輪からの回転力によりドライブシャフト受け部500、ディファレンシャル機構400および減速機構300を介してモータジェネレータ100が駆動される。このとき、モータジェネレータ100が発電機として作動する。モータジェネレータ100により発電された電力は、PCU800におけるインバータを介してバッテリ900に蓄えられる。
【0040】
レゾルバ200は、レゾルバロータ210と、レゾルバステータ220とを有する。レゾルバロータ210は、モータジェネレータ100の回転シャフト110に接続されている。また、レゾルバステータ220は、レゾルバステータコア221と、該コアに巻回されたレゾルバステータコイル222とを有する。上記レゾルバ200により、モータジェネレータ100のロータ130の回転角度が検出される。検出された回転角度は、コネクタ部10を介してPCU800へ伝達される。PCU800は、検出されたロータ130の回転角度と、外部ECU(Electrical Control Unit)からのトルク指令値とを用いてモータジェネレータ100を駆動するための駆動信号を生成し、その生成した駆動信号をモータジェネレータ100へ出力する。
【0041】
図2は、PCU800の主要部の構成を示す回路図である。図2を参照して、PCU800は、コンバータ810と、インバータ820と、制御装置830と、コンデンサC1,C2と、電源ラインPL1〜PL3と、出力ライン840U,840V,840Wとを含む。コンバータ810は、バッテリ900とインバータ820との間に接続され、インバータ820は、出力ライン840U,840V,840Wを介してモータジェネレータ100と接続される。
【0042】
コンバータ810に接続されるバッテリ900は、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池である。バッテリ900は、発生した直流電圧をコンバータ810に供給し、また、コンバータ810から受ける直流電圧によって充電される。
【0043】
コンバータ810は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとからなる。パワートランジスタQ1,Q2は、電源ラインPL2,PL3間に直列に接続され、制御装置830からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。リアクトルLは、バッテリ900の正極と接続される電源ラインPL1に一端が接続され、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に他端が接続される。
【0044】
このコンバータ810は、リアクトルLを用いてバッテリ900から受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。また、コンバータ810は、インバータ820から受ける直流電圧を降圧してバッテリ900を充電する。
【0045】
インバータ820は、U相アーム850U、V相アーム850VおよびW相アーム850Wからなる。各相アームは、電源ラインPL2,PL3間に並列に接続される。U相アーム850Uは、直列に接続されたパワートランジスタQ3,Q4からなり、V相アーム850Vは、直列に接続されたパワートランジスタQ5,Q6からなり、W相アーム850Wは、直列に接続されたパワートランジスタQ7,Q8からなる。ダイオードD3〜D8は、それぞれパワートランジスタQ3〜Q8のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ3〜Q8のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。そして、各相アームにおける各パワートランジスタの接続点は、出力ライン840U,840V,840Wを介してモータジェネレータ100の各相コイルの反中性点側にそれぞれ接続されている。
【0046】
このインバータ820は、制御装置830からの制御信号に基づいて、電源ラインPL2から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ100へ出力する。また、インバータ820は、モータジェネレータ100によって発電された交流電圧を直流電圧に整流して電源ラインPL2に供給する。
【0047】
コンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。また、コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0048】
レゾルバ200は、モータジェネレータ100の回転子の回転角度を検出して制御装置830へ出力する。ここで、制御装置830への出力は、配線13,14およびコネクタ部10を介して行なわれる。
【0049】
制御装置830は、モータジェネレータ100の回転子の回転角度、モータトルク指令値、モータジェネレータ100の各相電流値、およびインバータ820の入力電圧に基づいてモータジェネレータ100の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q8をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ820へ出力する。
【0050】
また、制御装置830は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ820の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ810へ出力する。
【0051】
さらに、制御装置830は、モータジェネレータ100によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ900を充電するため、コンバータ810およびインバータ820におけるパワートランジスタQ1〜Q8のスイッチング動作を制御する。
【0052】
このPCU800においては、コンバータ810は、制御装置830からの制御信号に基づいて、バッテリ900から受ける直流電圧を昇圧して電源ラインPL2に供給する。そして、インバータ820は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ100へ出力する。
【0053】
また、インバータ820は、モータジェネレータ100の回生動作によって発電された交流電圧を直流電圧に変換して電源ラインPL2へ出力する。そして、コンバータ810は、コンデンサC2によって平滑化された直流電圧を電源ラインPL2から受け、その受けた直流電圧を降圧してバッテリ900を充電する。
【0054】
図3は、レゾルバ200の主要な構成の一例を模式的に示した図である。
【0055】
図3を参照して、レゾルバ200におけるレゾルバロータ210は、楕円形状を有する。レゾルバステータコイルは、励磁用信号巻線222Aおよび検知用信号巻線222B,222Cを有する。ここで、検知用信号巻線222B,222Cは、電気的に互いに90°ずれて配置されている。レゾルバロータ210がモータジェネレータの回転シャフトとともに回転することにより、レゾルバロータ210と検知用信号巻線222B,222Cとの間のギャップ(たとえば図3中のL1,L2)が変化する。ここで、励磁用信号巻線222Aに交流電流を流すことにより、検知用信号巻線222B,222Cにはレゾルバロータ210の回転位置に応じた出力が発生し、この出力の差からレゾルバロータ210の回転位置(たとえば図3中のθ)を検出することができる。
【0056】
図3に示すように、コネクタ部10は、配線13側のコネクタ11と、配線14側のコネクタ12とを有する。コネクタ11,12の端子を接続することで、配線13,14が接続され、レゾルバ200と制御装置830とが電気的に接続される。ここで、配線13,14は、複数相(図3に示す例では6相)を有する配線であり、コネクタ部10は、上記複数相におけるそれぞれの相に対応した複数の端子を有する。
【0057】
ところで、ブリーザ機構などからハウジング600の内部に雨水が侵入したり、温度変化によってハウジング600内に結露水が発生したりする場合がある。また、水分とともに、イオン成分を比較的多く含む融雪剤などの不純物がハウジング600内に侵入する場合がある。これらがコネクタ部10に侵入することにより、上述した複数の端子間において導電率が上昇する。導電率が過度に上昇すると、レゾルバ200において相間の短絡が生じる場合がある。ここで、融雪剤などを含むイオン濃度が高い水分が侵入した場合は、即座に導電率が上昇する。また、結露水などイオン濃度が低い水分が侵入した場合であっても、端子金属からのイオンの析出などにより、徐々に導電率が上昇する。これに対し、以下に説明する実施の形態1〜5においては、後述する対策がなされることにより、端子間の短絡が抑制される。
【0058】
(実施の形態1)
図4は、実施の形態1に係るコネクタによる接続構造を示した図である。なお、図4において、矢印Gは重力方向を示し、矢印DR1はハウジング600の内側方向を示し、矢印DR2はハウジング600の外側方向を示す。
【0059】
図4に示されるコネクタ部10は、ハウジング600内の「素子」としてのレゾルバ200とハウジング600の外部に設けられるPCU800とを接続する配線13,14上に設けられる。そして、コネクタ部10は、配線13側のコネクタ11および配線14側のコネクタ12により構成される。コネクタ11,12は、それぞれ、コネクタ本体11A,12Aおよび接続端子(図4においては図示せず)を有する。
【0060】
コネクタ本体12Aは、ハウジング600の開口部に取付けられ、ハウジング600を貫通する。コネクタ本体12Aの外周には、Oリング15が設けられる。これにより、ハウジング600の開口部がシールされる。そして、コネクタ本体12Aは、ハウジング600の内側に取付け口16Aを有する。コネクタ本体11Aは、この取付け口16Aに嵌合される。
【0061】
ハウジング600内部には、結露により発生、または、外部から侵入した水滴WRが存在する場合がある。水滴WRは、重力に従って、ハウジング600の内壁を伝いながら、矢印DR0の方向に下降する。この結果、水滴WRは、コネクタ部10の近傍に達する。
【0062】
水滴WRが取付け口16A内に侵入すると、コネクタ部10が水滴WRの影響を受けることになる。したがって、水滴WRが取付け口16内に侵入することを抑制しながら、水滴WRを下降させることは重要である。
【0063】
これに対し、本実施の形態に係るコネクタ12は、取付け口16Aの上部に、水分などの異物の取付け口16Aへの浸入を抑制する侵入抑制部17Aを有する。これにより、水滴WRによるコネクタ部10への影響が抑制される。
【0064】
侵入抑制部17Aは、コネクタ本体12Aにより構成されており、取付け口16Aの上側に位置するように配設される。これにより、別段のキャップ部材やシール部材を設けることなく、簡易な構造により、取付け口16Aに水分が侵入することを抑制することができる。ここでは、ハウジング600の内壁を伝って下降する水滴WRが取付け口16Aに侵入することを抑制することができる。この結果、ハウジング600内の水分がレゾルバ200の性能に影響を与えることが抑制される。
【0065】
コネクタ12は、ハウジング600に取付けた状態で矢印DR3の方向に回転可能である。したがって、コネクタ12をハウジング600に取付けた状態で取付け口16Aの位置および方向を変更することが可能である。この結果、取付け口16Aおよび侵入抑制部17Aの位置を考慮せずにコネクタ12をハウジング600に取付けることができるので、コネクタ12のハウジング600への取付が容易になる。
【0066】
本実施の形態においては、コネクタ12をハウジング600に取付けた後、取付け口16Aが上側に開口するようにした状態でコネクタ11,12を接続する。これにより、コネクタ11,12を上側から見た状態で該コネクタの接続を行なうことができるので、コネクタ11,12の接続が行ないやすくなる。その後、コネクタ12を回転させて取付け口16Aを下側に向ける。これにより、侵入抑制部17Aを機能させることができる。
【0067】
ここで、取付け口16Aが下側に開口する位置は「第1の位置」であり、取付け口16Aが上側に開口する位置は「第2の位置」である。
【0068】
コネクタ12には、ハウジング600の外側に設けられ、コネクタ12の回転位置を示す表示部18が設けられる。これにより、ハウジング600を密閉した後においても、ハウジング600の外側から侵入抑制部17Aの回転位置を確認することが可能になる。
【0069】
図5は、コネクタ部10のハウジング600への組付け過程を示した図である。図5を参照して、上述したように、Oリング15が設けられたコネクタ本体12Aが、ハウジング600の開口部に差し込まれた後、ハウジング600の内側から相手方のコネクタ本体11Aが嵌合される。
【0070】
図6は、コネクタ部10における接続端子の詳細を示した図である。図6を用いて、取付け口16Aに水滴WRが侵入した場合の影響について説明する。
【0071】
図6を参照して、コネクタ11は複数の端子11B,11Cを有し、コネクタ12は複数の端子12B,12Cを有する。凹状の端子11B,11Cにピン状の端子12B,12Cを差し込むことで、コネクタ11,12が電気的に接続される。
【0072】
端子11B,12Bと端子11C,12Cとは、それぞれ、複数相ケーブルである配線13,14における異なる相に対応する端子である。すなわち、端子11B,12Bは、配線13,14における1つの相に対応する端子であり、端子11C,12Cは、配線13,14における他の相に対応する端子である。したがって、取付け口16Aに水滴WRが侵入し、端子11B,12Bと端子11C,12Cとの間が電気的に導通すると、相間の短絡が生じ、レゾルバ200の機能が阻害される。これに対し、上記の侵入抑制部17Aが設けられることで、水滴WRの侵入が抑制され、相間の短絡が防止される。
【0073】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係るコネクタ12は、ハウジング600の内側に位置し、「他のコネクタ」としてのコネクタ11が接続される「取付部」としての取付け口16Aと、ハウジング600の内壁と取付け口16Aとを隔てるように設けられ、ハウジング600内の水滴WRが取付け口16Aに侵入することを抑制する侵入抑制部17Aとを備える。
【0074】
本実施の形態に係るモータジェネレータ100は、内部にロータ130およびステータ140が設けられる「ケース」としてのハウジング600と、ハウジング600内に設けられたレゾルバ200と、レゾルバ200に接続された配線13と、配線13と「他の配線」としての配線14とを接続するコネクタ部10とを備える。
【0075】
コネクタ部10において、水滴WRの影響を受けにくいコネクタ12が用いられることにより、レゾルバ200における相間の短絡が抑制される。結果として、水分によるレゾルバ200の機能の低下が抑制され、モータジェネレータ100の性能が向上する。
【0076】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係るコネクタによる接続構造を示した図である。図7に示されるコネクタ部10においては、コネクタ本体12Aに溝部17Bが形成されている。本実施の形態は、溝部17Bが「侵入抑制部」を構成する点を特徴とする。
【0077】
図7を参照して、溝部17Bは、ハウジング600の内壁に沿うように、コネクタ本体12Aの外周上に形成される。コネクタ12におけるコネクタ11への差し込み部16Bは、溝部17Bよりもハウジング600の内側に設けられる。差し込み部16Bは、「他のコネクタ」としてのコネクタ11が接続される「取付部」を構成する。
【0078】
ハウジング600の内壁に沿って矢印DR0の方向に下降する水滴WRは、溝部17Bに流入し、コネクタ本体12Aの外周に沿って溝部17B内を流れた後、コネクタ部10の下方に流れ落ちる。したがって、水滴WRがコネクタ11,12の接合部に侵入することが抑制されている。
【0079】
以上のように、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、別段のキャップ部材やシール部材を設けることなく、簡易な構造により、コネクタ11,12の接合部に水分が侵入することを抑制することができる。
【0080】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3に係るコネクタによる接合構造を示した図である。図8に示されるコネクタ部10においては、コネクタ11,12の接合面16Cを覆う「キャップ部材」としてのゴムキャップ17Cが設けられる。本実施の形態は、ゴムキャップ17Cが「侵入抑制部」を構成する点を特徴とする。接合面16Cは、「他のコネクタ」としてのコネクタ11が接続される「取付部」を構成する。
【0081】
ゴムキャップ17Cは接合面16C上からコネクタ本体12Aの側面を覆うように設けられる。これにより、ゴムキャップ17Cは、接合面16Cへの水滴WRの侵入を防止するとともに、ハウジング600の開口部をシールすることができる。すなわち、ゴムキャップ17Cは、コネクタ本体12Aの外周に配設されるシール材(実施の形態1,2におけるOリング15)の役割をも果たす。
【0082】
ハウジング600の内壁に沿って矢印DR0の方向に下降する水滴WRは、ゴムキャップ17Cの外周に沿ってコネクタ部10の下方に流れ落ちる。したがって、水滴WRがコネクタ11,12の接合面16Cに侵入することが抑制されている。
【0083】
図9は、図8における矢印IXの方向から見たゴムキャップ17Cの平面図である。図9を参照して、ゴムキャップ17Cには切り込み部CUTが設けられる。これにより、コネクタ12およびゴムキャップ17Cをハウジング600に取付けた状態で、コネクタ11および配線13をゴムキャップ17Cの内側に入れて、コネクタ11,12を接続することができる。
【0084】
実際にコネクタ11,12を接続する際は、まず、切り込み部CUTを上側に向け、コネクタ11,12を接続した後に、コネクタ12を矢印DR3の方向に回転させて切り込み部CUTを下側に向ける。これにより、コネクタ11,12を上側から見た状態で該コネクタの接続を行なうとともに、コネクタ11,12の接続後においては、ゴムキャップ17Cを「侵入抑制部」として機能させることができる。なお、ハウジング600の外側には、コネクタ12の回転位置を示す表示部18が設けられる。これにより、ハウジング600を密閉した後においても、ハウジング600の外側から切り込み部CUTの回転位置を確認することが可能になる。
【0085】
以上のように、本実施の形態においても、実施の形態1,2と同様に、コネクタ11,12の接合部に水分が侵入することを抑制することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図10は、実施の形態4に係るコネクタによる接続構造を示した図である。図10を参照して、本実施の形態においては、コネクタ12の取付け口16Dからハウジング600の内壁上に達する通路19が設けられる。本実施の形態は、仮にコネクタ11,12の接合部に水滴WRが侵入した場合でも、その水分を速やかに排出させる「排水流路」を有することを特徴とする。
【0087】
通路19は、コネクタ本体12Aおよびハウジング600に孔部を設けることにより形成される。したがって、コネクタ本体12Aに形成された孔部の開口位置とハウジング600に形成された孔部の開口位置とを合わせる必要がある。開口位置は、コネクタ12を矢印DR3の方向に回転させて合わせられる。なお、ハウジング600の外側には、コネクタ12の回転位置を示す表示部18が設けられる。これにより、ハウジング600を密閉した後においても、ハウジング600の外側から孔部の開口位置を合わせることが可能になる。
【0088】
以上のように、本実施の形態においては、コネクタの接合部に侵入した水分を速やかに排出することができる。
【0089】
(実施の形態5)
図11は、実施の形態5に係るコネクタによる接続構造を示した図である。また、図12は、図11における矢印XIIの方向から見たコネクタの平面図である。図11,図12に示される接合構造は、コネクタ12の取付け口16Eに侵入した水分を速やかに排出させる「排水流路」としての溝部20を有する。本実施の形態は、上記「排水流路」が、コネクタ本体12Aを加工することにより設けられることを特徴とする。
【0090】
本実施の形態においては、実施の形態4のように、上記「排水流路」を形成するためにハウジング600に孔部を設ける必要はない。また、コネクタ本体12Aおよびハウジング600にそれぞれ形成された孔部の開口位置を合わせる必要もない。ただし、溝部20をコネクタ11,12の接合部に対して下側に位置させる必要がある。溝部20の位置は、ハウジング600に取付けられたコネクタ12を矢印DR3の方向に回転させて調整される。なお、ハウジング600の外側には、コネクタ12の回転位置を示す表示部18が設けられる。これにより、ハウジング600を密閉した後においても、ハウジング600の外側から溝部20の位置を調整することが可能になる。
【0091】
また、溝部20には傾斜部21が設けられている。これにより、水分が溝部20内を流れやすくなる。結果として、コネクタ11,12の接合部からの水分の排出が促進される。
【0092】
以上のように、本実施の形態においては、コネクタの接合部に侵入した水分を速やかに排出することができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した各実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。また、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態1〜5に係るコネクタを含む駆動ユニットの構造の一例を概略的に示す図である。
【図2】図1に示されるPCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図3】図1,図2に示されるレゾルバの主要な構成の一例を模式的に示した図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るコネクタによる接続構造を示した図である。
【図5】図4に示される接続構造のハウジングへの組付け過程を示した図である。
【図6】図4に示される接続構造における接続端子の詳細を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るコネクタによる接続構造を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係るコネクタによる接続構造を示した図である。
【図9】図8における矢印IXの方向から見たキャップ部材の平面図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係るコネクタによる接続構造を示した図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係るコネクタによる接続構造を示した図である。
【図12】図11における矢印XIIの方向から見たコネクタの平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 駆動ユニット、10 コネクタ部、11,12 コネクタ、11A,11B コネクタ本体、11B,11C,12B,12C 端子、13,14 配線、15 Oリング、16A,16D,16E 取付け口、16B 差し込み部、16C 接合面、17A 侵入抑制部、17B 溝部、17C ゴムキャップ、18 表示部、19 通路、20 溝部、21 傾斜部、100 モータジェネレータ、110 回転シャフト、120 軸受、130 ロータ、140 ステータ、141 ステータコア、142 ステータコイル、143 バスバー、200 レゾルバ、210 レゾルバロータ、220 レゾルバステータ、221 レゾルバステータコア、222 レゾルバステータコイル、222A 励磁用信号巻線、222B,222C 検知用信号巻線、300 減速機構、400 ディファレンシャル機構、500 ドライブシャフト受け部、600 ハウジング、700 端子台、800 PCU、800A,900A 給電ケーブル、810 コンバータ、820 インバータ、830 制御装置、840U,840V,840W 出力ライン、850U U相アーム、850V V相アーム、850W W相アーム、900 バッテリ、C1,C2 コンデンサ、CUT 切り込み部、D1〜D8 ダイオード、L リアクトル、PL1,PL2,PL3 電源ライン、Q1〜Q8 パワートランジスタ、WR 水滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに取付けられるコネクタであって、
前記ハウジングの内側に位置し、他のコネクタが接続される取付部と、
前記ハウジングの内壁と前記取付部とを隔てるように設けられ、前記ハウジング内の異物が前記取付部に侵入することを抑制する侵入抑制部とを備えた、コネクタ。
【請求項2】
前記侵入抑制部を前記取付部に対して上側に位置させることが可能である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングに取付けた状態で前記取付部の位置を変更することが可能である、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記取付部の可変位置は、前記侵入抑制部が前記取付部への異物の侵入を抑制する第1の位置と、前記他のコネクタを前記取付部に接続することが前記第1の位置よりも容易になる第2の位置とを含む、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングの外側に設けられ、前記侵入抑制部の位置を示す表示部をさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記侵入抑制部は前記コネクタの本体を含む、請求項1から請求項5のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記侵入抑制部は前記コネクタの本体に形成された溝部を含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記取付部を覆うキャップ部材をさらに備え、
前記侵入抑制部は前記キャップ部材を含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項9】
前記ハウジングとしてのケースと、
前記ケース内に設けられた素子と、
前記素子に接続された配線と、
前記配線と他の配線とを接続する請求項1から請求項8のいずれかに記載のコネクタとを備えた、回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−269207(P2006−269207A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84268(P2005−84268)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】