説明

コネクタおよび車載用コネクタシステム

【課題】セキュリティ性の高い車両盗難防止機能を提案する。
【解決手段】車両に配索されるワイヤハーネスW/Hの一端に取り付けられるコネクタ12を車載ECU11のコネクタ嵌合部27に接続するコネクタシステムにおいて、コネクタ12は、ワイヤハーネスW/Hと車載ECU11との互いの信号線13を結ぶ回路を遮断/接続するリレー21と、コネクタ12がコネクタ嵌合部27から離脱された場合に異常であると判断する離脱判定部24と、離脱判定部24で異常検知されるとリレー21を遮断状態にする制御回路25とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよび車載用コネクタシステムに関し、特に、車両に搭載されるECUやワイヤハーネス等の電気部品を互いにコネクタ接続しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にはエンジン始動やドアロック等を制御するために様々なECU(電子制御ユニット)が搭載されており、ワイヤハーネス端末に接続されたコネクタをECUのコネクタ嵌合部に嵌合接続することでECUへの信号送受を行っている。
近年は、車両盗難防止策としてユーザ認証機能を有するECUが現れており、ドアロック認証やエンジン始動認証を行って車両盗難防止を図っている。
ドアロック認証は、ユーザが所有する電子キーと車載ECUとの間で無線通信を行い、ID認証が正常であればドアロックを解除する。
エンジン始動認証は、図4に示すように、エンジン始動要求ユニット2と、ID照合用ECU3と、エンジンECU4とが車載LANに接続されており、まずユーザが所有する携帯機1とエンジン始動要求ユニット2との間でID照合を行う(照合1)。その照合が正常であれば、次いで、エンジン始動要求ユニット2とID照合用ECU(エンジンECU4以外のECU)3との間で別のID照合を行う(照合2)。その照合が正常であれば、次いで、ID照合用ECU3とエンジンECU4との間で更に別のID照合を行う(照合3)。
【0003】
前記照合1は、具体的には幾つかのバリエーションがある。第1パターンとしては、所謂スマートキー(携帯機1)と、スマートECU(エンジン始動要求ユニット2)との間でID照合を行うもので、ユーザはスマートキーを携帯しているだけで自動的に無線通信して認証が行われる。第2パターンとしては、トランスポンダ付きキー(携帯機1)と、イモビライザ(エンジン始動要求ユニット2)との間でID照合を行うもので、キーをキーシリンダに挿入するとイモビライザとの間で無線通信して認証が行われる。第3パターンとしては、エンジンスタータリモコン(携帯機1)と、リモコンエンジンスタータECU(エンジン始動要求ユニット2)との間でID照合を行うもので、車外からのエンジンスタートが可能となる。
【0004】
近頃までは前記照合2の機能がなく、照合1および照合3のみを行うものが主流であったため、携帯機1、エンジン始動要求ユニット2およびエンジンECU4をセットで交換して車両を盗難する場合があった。その対策として、エンジン制御と無関係であり交換が困難な場所に設置される他のECUをID照合用ECU3として認証機能をもたせることで、車両盗難を好適に防止している。
しかしながら、万が一、盗難者が携帯機1、エンジン始動要求ユニット2、ID照合用ECU3およびエンジンECU4の全てをセットで交換してしまえば、車両の不正使用を検知することが困難となる。
【0005】
また、特開2004−152543号公報では、図5に示すように、ECU(コネクタ基板)7に接続されるコネクタ5にタグチップ6を内蔵すると共に、ECU7にはコネクタ嵌合部8の下方にアンテナ9をプリントパターンとして形成している車両盗難防止システムを開示している。本公報では、コネクタ5がECU7のコネクタ嵌合部8に装着されると、タグチップ6に記憶された固有の識別情報がアンテナ9を介してECU7に無線で読み取られ、識別情報が適正である場合にエンジンの始動を許可するようにしている。
しかしながら、前記公報の技術では、コネクタ5から一方的に発信される無線信号をECU7側で受信して認証作業を行う構成としているため、コネクタ5との認証作業を行わない別のECUに交換する等してしまえば、車両盗難が可能となる問題がある。
【特許文献1】特開2004−152543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、セキュリティ性の高い盗難防止機能を提案することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、電線端末に取り付けられ、電気部品のコネクタ嵌合部に嵌合接続することで前記電線と前記電気部品との間の電気的な接続を行うコネクタにおいて、
前記電線と前記電気部品とを電気的に結合する回路を遮断/接続する回路開閉手段と、
前記コネクタに対する前記電気部品の接続異常を検知する異常検出手段と、
前記異常検出手段で異常検知されると前記回路開閉手段を遮断状態にする制御回路とを備えていることを特徴とするコネクタを提供している。
【0008】
前記構成とすると、コネクタが適正な電気部品と接続されていない異常を検知することで、コネクタ内に設けられた回路開閉手段により信号線等の回路が遮断状態に維持されるので、コネクタを介した信号送受が不可能となる。
したがって、第三者が適正な電気部品を接続せずに電線へ不正アクセスするのを防止することができる。
なお、前記コネクタを車両に適用する場合には、前記電線をワイヤハーネスとし、前記電気部品をECU(電子制御ユニット)等の各種電装品やワイヤハーネス等とするとよい。
【0009】
前記異常検出手段は、前記コネクタが前記電気部品のコネクタ嵌合部から離脱された場合に異常であると判断する離脱判定部を備えていると好ましい。
【0010】
前記構成とすると、コネクタが離脱されることでコネクタ内に設けられた回路開閉手段により信号線等の回路が遮断状態に維持されるので、コネクタを介した信号送受が不可能となる。したがって、第三者が電気部品を取り外して電線へ不正アクセスするのを防止することができる。
なお、一度離脱したコネクタを再びコネクタ嵌合部に接続しても回路開閉手段による信号線の遮断は維持されたままとしていることが好ましい。その場合には、メーカー等の許可された者のみが特別な治具を使用して設定をやり直さなければ、回路開閉手段を接続状態に戻すことができないようにするとよい。
【0011】
前記離脱判定部は、コネクタ嵌合時に前記電気部品のGND回路と接続され、GND入力が維持されている場合をコネクタ嵌合状態、GND入力が停止した場合をコネクタ離脱状態と判断していると好ましい。
【0012】
前記構成とすると、離脱判定部はGND回路に接続されてアースされているか否かを検出するだけで、コネクタの嵌合/離脱を判定することができるので、コネクタ嵌合離脱検出を安価かつ容易に実現することが可能となる。
なお、前記のように電気回路的に嵌合離脱検知を行う代わりに、コネクタの係止解除を検出する等の機械的な検知手段を設けてもよい。
【0013】
前記異常検出手段は、前記電気部品の識別コードと照合するための識別コードを保存する識別コード保存部と、前記識別コード保存部に保存された識別コードを前記電気部品側の識別コードに照合して不適正な場合に異常と判定する認証部とを備えていると好ましい。
【0014】
前記構成とすると、第三者が用意した別の電気部品をコネクタに接続しても、認証部により識別コードが一致せずに異常検知され、回路開閉手段により信号線が遮断状態に維持されるので、コネクタを介した電線への信号送受を不可能とすることができる。特に、前述した嵌合離脱検知と併せて用いれば、異常検知を二重で行うことができ、異常検知の確実性を高めることが可能となる。
【0015】
また本発明は、車両に配索されるワイヤハーネスの一端に取り付けられるコネクタを車載ECUのコネクタ嵌合部に接続するコネクタシステムにおいて、
前記コネクタは、前記ワイヤハーネスと前記車載ECUとを電気的に結合する回路を遮断/接続する回路開閉手段と、前記コネクタに対する前記車載ECUの接続異常を検知する異常検出手段と、前記異常検出手段で異常検知されると前記回路開閉手段を遮断状態にする制御回路とを備えていることを特徴とする車載用コネクタシステムを提供している。
【0016】
本発明者らは、車両盗難の際に盗難者が車載ECUを車両から取り外して交換できたとしても、車両に広範囲にわたって配索固定されたワイヤハーネスを取り外して交換することは困難であるという点に着目した。
そこで、前記構成のように、車載ECU側ではなくワイヤハーネス側のコネクタに信号線等の回路の切断/接続を行う回路開閉手段を内蔵し通信遮断機能を持たせることで、車載ECUが別のものに交換されたとしてもコネクタを介した信号送受が不可能となり、車両盗難を確実に防止することができる。
なお、車載ECUとしては、エンジンの点火等の制御を行うエンジンECUや、ドアロックの解錠/施錠の制御を行うドアロックECUや、電子キー認証を行う所謂スマートキーシステムに用いるスマートECUなどが挙げられる。
【0017】
前記異常検出手段は、前記コネクタが前記コネクタ嵌合部から離脱された場合に異常であると判断する離脱判定部を備えていると好ましい。
前記構成とすると、コネクタが離脱されることでコネクタ内に設けられた回路開閉手段により信号線等の回路が遮断状態に維持されるので、コネクタを介した信号送受が不可能となり、車両盗難を好適に防止することができる。
【0018】
前記車載ECUは、接地されたGND回路を備え、
前記離脱判定部は、コネクタ嵌合時に前記車載ECUの前記GND回路と接続され、GND入力が維持されている場合をコネクタ嵌合状態、GND入力が停止した場合をコネクタ離脱状態と判断していると好ましい。
【0019】
前記構成とすると、離脱判定部はGND回路と接続されてアースされているか否かを検出するだけで、コネクタの嵌合/離脱を判定することができるので、コネクタ嵌合離脱検出を安価かつ容易に実現することが可能となる。
【0020】
前記車載ECUは、ECU識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記コネクタは、コネクタ識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記異常検出手段は、前記ECU識別コードと前記コネクタ識別コードとを照合して不適正な場合に異常と判定する認証部を備えていると好ましい。
【0021】
前記構成とすると、盗難者が用意した別のECUをコネクタに接続しても、認証部により識別コードの不一致が検知され、回路開閉手段により信号線等の回路が遮断状態に維持されるので、コネクタを介した信号送受が不可能となり、車両盗難を好適に防止することができる。
なお、車載ECUおよびコネクタの夫々の識別コード保存部に記憶されたECU識別コードおよびコネクタ識別コードは、コネクタがコネクタ嵌合部より離脱されたことを検知した場合に、互いの認証関係を保ちながら変更される構成としていると好適である。
【0022】
また本発明は、車両に配索される第一ワイヤハーネスの一端に取り付けられるコネクタを車載ECUのコネクタ嵌合部に接続し、かつ、前記第一ワイヤハーネスの他端に第二ワイヤハーネスの一端と接続する中継コネクタを取り付けている車載用コネクタシステムであって、
前記中継コネクタは、前記第一ワイヤハーネスと前記第二ワイヤハーネスとを電気的に結合する回路を遮断/接続する回路開閉手段と、前記第一ワイヤハーネスおよび前記コネクタを介した前記車載ECUと前記中継コネクタとの接続の異常を検知する異常検出手段と、前記異常検出手段で異常検知されると前記回路開閉手段を遮断状態にする制御回路とを備えていることを特徴とする車載用コネクタシステムを提供している。
【0023】
前記構成とすると、例えば盗難者によりコネクタが破壊される等の異常があっても中継コネクタで信号線等の回路が遮断されるので、中継コネクタを介した信号送受が不可能となり、車両盗難を好適に防止することができる。
なお、コネクタと中継コネクタとの離反距離となる第一ワイヤハーネスの長さを長尺にすれば、車載ECUを交換しようとする盗難者から中継コネクタに手が届かないので、防犯性をより一層高めることができる。
【0024】
前記異常検出手段は、前記第一ワイヤハーネスが切断された場合に異常であると判断する切断判定部を備えていると好ましい。
【0025】
前記構成とすると、盗難者が第一ワイヤハーネスを切断することで車載ECUをコネクタと一緒に取り外したとしても、中継コネクタの回路開閉手段により信号線等の回路が遮断状態に維持されるので、中継コネクタを介した信号送受が不可能となり、車両盗難を好適に防止することができる。
【0026】
前記車載ECUは、接地されたGND回路を備え、
前記切断判定部は、前記第一ワイヤハーネスおよび前記コネクタを介して前記GND回路と接続され、GND入力が維持されている場合を正常状態、GND入力が停止した場合をハーネス切断状態と判断していると好ましい。
【0027】
前記構成とすると、離脱判定部はGND回路と接続されてアースされているか否かを検出するだけで、第一ワイヤハーネスを介して車載ECUが適正に接続されているかを判定することができるので、第一ワイヤハーネスの切断検出を安価かつ容易に実現することが可能となる。
【0028】
前記車載ECUは、ECU識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記中継コネクタは、中継コネクタ識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記異常検出手段は、前記ECU識別コードと前記中継コネクタ識別コードとを照合して不適正な場合に異常と判定する認証部を備えていると好ましい。
【0029】
前記構成とすると、盗難者が用意した別のコネクタを第一ワイヤハーネスに接続しても、認証部により識別コードの不一致が検知され、回路開閉手段により信号線等の回路が遮断状態に維持されるので、中継コネクタを介した信号送受が不可能となり、車両盗難を好適に防止することができる。
なお、車載ECUおよび中継コネクタの夫々の識別コード保存部に記憶されたECU識別コードおよび中継コネクタ識別コードは、第一ワイヤハーネスが途中で切断されたことを検知した場合に、互いの認証関係を保ちながら変更される構成としていると好適である。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明より明らかなように、本発明のコネクタによれば、コネクタが適正な電気部品と接続されていない異常を検知することで、コネクタ内の回路開閉手段により信号線等の回路が遮断状態に維持されるので、コネクタを介した信号送受が不可能となり第三者の不正アクセスを防止することができる。
また、本発明の車載用コネクタシステムによれば、車両の広範囲にわたって配索固定されるワイヤハーネス側のコネクタに回路開閉手段を内蔵して通信遮断機能を持たせており、盗難者は通信遮断機能を車両から取り外すことが困難となるので、セキュリティ性が向上する。
さらに、車両に配索されるワイヤハーネスを第一ワイヤハーネスと第二ワイヤハーネスに分割して中継コネクタで接合し、中継コネクタに回路開閉手段を内蔵して通信遮断機能を持たせれば、盗難者が第一ワイヤハーネスを切断して車載ECUをコネクタと共に取り外したとしても、中継コネクタの通信遮断機能は車両に残るので、セキュリティ性が更に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の車載用コネクタシステム10を示す。
車両に配索される結束電線であるワイヤハーネスW/Hの一端に取り付けられたコネクタ12を車載ECU11(本実施形態では例えばエンジンECUとする)のコネクタ嵌合部27に接続している。
【0032】
ワイヤハーネスW/Hは、信号線13と電源線14とを備えている。
車載ECU11は、ワイヤハーネスW/Hの信号線13と電気的に接続されてエンジンの点火等を制御する機能を有するアプリケーション部15と、認証用のECU識別コードを記憶している識別コード保存部16と、識別コード保存部16に記憶されたECU識別コードをコネクタ12側に所定の周期で送信する発信部17と、接地(アース)されたGND回路18と、ワイヤハーネスW/Hの電源線14と電気的に接続されて車載ECU11の各回路へ給電を行う電力回路19とを備えている。なお、車載ECU11の基板には直付コネクタであるコネクタ嵌合部27を取り付けている。
【0033】
コネクタ12は、ワイヤハーネスW/Hと車載ECU11との互いの信号線13を結ぶ回路を遮断/接続するリレー(回路開閉手段)21と、ワイヤハーネスW/Hと車載ECU11との互いの電源線14を結ぶスルー回路26と、スルー回路26から給電される制御基板20とを備えている。なお、リレー21は、車両出荷時にはクローズ状態となっている。
【0034】
制御基板20は、識別コード保存部22と、認証部23と、離脱判定部24と、制御回路25とを備えている。
識別コード保存部22は、認証用のコネクタ識別コードを記憶している。
認証部23は、発信部17から受信したECU識別コードを識別コード保存部22のコネクタ識別コードと照合し、一致する場合に正常、不一致の場合に異常と判定する。
離脱判定部24は、車載ECU11のGND回路18と導通接続されてGND入力が維持されている場合をコネクタ嵌合状態、GND入力が停止した場合をコネクタ離脱状態と判断する。
【0035】
制御回路25は、離脱判定部24によりコネクタ12がコネクタ嵌合部27から離脱されたと異常検知された場合に、リレー21をオープンにして遮断状態に維持する。また、認証部23で照合が合わず異常検知された場合にも、リレー21をオープンにして遮断状態に維持する。
なお、一旦コネクタ嵌合が外されると、離脱判定部24にGNDを再び入力してもリレー21は接続状態に戻らない設定としており、メーカー等が特殊な治具を使って設定をやり直さなければリレー21を接続状態に戻すことはできない。
【0036】
次に、車載ECU11がコネクタ12から取り外された際の処理について説明する。
以下、車載ECU11の不適切な交換を二重にチェックしてセキュリティ性を高めている。第1に、盗難者がコネクタ12をコネクタ嵌合部27から離脱して車載ECU11を取り外すと、GND回路18からコネクタ12側へのGND入力が停止するのを離脱判定部24が検知し、コネクタ12が離脱されたと判断する。次いで、制御回路25は、離脱判定部24からのコネクタ離脱信号を受信して、リレー21をクローズ状態からオープン状態にして信号線13を遮断する。よって、盗難者が再びECUをコネクタ12に接続したとしても信号線13を介した通信を行うことができず、車両盗難を防止することができる。
【0037】
第2に、盗難者が車載ECU11を交換して別のECUをコネクタ12に接続した場合には、コネクタ12が、ECUから受信したECU識別コードを自己の識別コード保存部22に記憶されたコネクタ識別コードと認証部23で照合すると不一致となり異常と判定される。すると、制御回路25は、認証部23から異常信号を受信して、リレー21をオープンにして信号線13を遮断状態に維持する。
【0038】
以上のように、二重チェック機能を設けることで、例えば、盗難者が何らかの手段を使ってコネクタ12の離脱判定部24へのGND入力を保持したまま車載ECU11を別のものに交換したとしても、認証部23による照合チェックを行うことで異常検知することができ、車両盗難を防止することが可能となる。
また、リレー21を有するコネクタ12は、車両の広範囲にわたって配索固定されたワイヤハーネスW/H側に取り付けられているので、盗難者が車両から取り外して交換することが困難となり、車両盗難防止の確実性が向上する。
【0039】
図2は第2実施形態の車載用コネクタシステム30を示す。
第1実施形態との相違点は、車載ECU11に接続されるワイヤハーネスを分割して中継コネクタ32で連結している点である。
【0040】
車両に配索される第一ワイヤハーネスW/H1の一端に取り付けられたコネクタ31を車載ECU11のコネクタ嵌合部27に接続すると共に、ワイヤハーネスW/H1の他端に取り付けられた中継コネクタ32を第二ワイヤハーネスW/H2の一端のコネクタ33に嵌合接続している。
【0041】
車載ECU11は、第1実施形態と同様の構成であるため同一符号を付して説明を省略する。
コネクタ31は、電源線34、GND線35、認証用信号線36および信号線37を中継コネクタ32と車載ECU11との間でそのまま通過接続するスルーコネクタとしている。
【0042】
中継コネクタ32は、第一ワイヤハーネスW/H1と第二ワイヤハーネスW/H2との互いの信号線37を結ぶ回路を遮断/接続するリレー(回路開閉手段)39と、第一ワイヤハーネスW/H1と第二ワイヤハーネスW/H2との互いの電源線34を結ぶスルー回路44と、スルー回路44から給電される制御基板38とを備えている。なお、リレー39は、車両出荷時にはクローズ状態となっている。
【0043】
制御基板38は、識別コード保存部40と、認証部41と、切断判定部42と、制御回路43とを備えている。
識別コード保存部40は、認証用のコネクタ識別コードを記憶している。
認証部41は、車載ECU11の発信部17から受信したECU識別コードを識別コード保存部40のコネクタ識別コードと照合し、一致する場合に正常、不一致の場合に異常と判定する。
切断判定部42は、車載ECU11のGND回路18と導通接続されてGND入力が維持されている場合を正常状態、GND入力が停止した場合をハーネス切断状態と判断する。
制御回路43は、切断判定部42により第一ワイヤハーネスW/H1が切断されたと異常検知された場合に、リレー39をオープンにして遮断状態に維持する。
【0044】
中継コネクタ32と嵌合するコネクタ33は、電源線34および信号線37を中継コネクタ32と第二ワイヤハーネスW/H2との間でそのまま通過接続するスルーコネクタとしている。
【0045】
次に、第一ワイヤハーネスW/H1が切断された際の処理について説明する。
第1に、盗難者が車載ECU11とコネクタ31とを一緒に取り外すために第一ワイヤハーネスW/H1を切断すると、GND回路18から中継コネクタ32側へのGND入力が停止するのを切断判定部42が検知し、第一ワイヤハーネスW/H1が切断されたと判断する。次いで、制御回路43は、切断判定部42からのハーネス切断信号を受信して、リレー39をクローズ状態からオープン状態にして信号線37の導通を遮断する。よって、盗難者が用意した別のECUを切断後の第一ワイヤハーネスW/H1に接続したとしても信号線37を介した通信を行うことができず、車両盗難を防止することが可能となる。
【0046】
第2に、第一ワイヤハーネスW/H1を切断して別のECUを接続した場合には、中継コネクタ32は、ECUから受信したECU識別コードを自己の識別コード保存部40に記憶されたコネクタ識別コードと認証部41で照合し、不一致となることで異常と判定する。すると、制御回路43は、認証部41から異常信号を受信して、リレー39をオープンにして信号線37を遮断状態に維持する。
【0047】
以上のように、二重チェック機能を設けることで、例えば、盗難者が何らかの手段を使って中継コネクタ32の切断判定部42へのGND入力を保持したままECUを別のものに交換したとしても、認証部41による照合チェックを行うことで異常検知することができ、車両盗難を防止することが可能となる。
また、中継コネクタ32は、第一ワイヤハーネスW/H1を介して車載ECU11と離れた場所に設置され、車載ECU11を交換しようとする盗難者から中継コネクタ32に手が届かないので、セキュリティ性が飛躍的に向上する。
【0048】
図3は第3実施形態を示す。
第2実施形態との相違点は、中継コネクタ58のみならずコネクタ51にも制御基板55を設けている点である。
【0049】
車両に配索される第一ワイヤハーネスW/H1の一端に取り付けられたコネクタ51を車載ECU11のコネクタ嵌合部27に接続すると共に、ワイヤハーネスW/H1の他端に取り付けられた中継コネクタ58を第二ワイヤハーネスW/H2の一端のコネクタ33に嵌合接続している。なお、中継コネクタ58は、第一ワイヤハーネスW/H1を介して車載ECU11と離れた場所に設置して、盗難者から手が届かないようにする。
【0050】
車載ECU11は、第1実施形態と同様の構成であるため同一符号を付して説明を省略する。
コネクタ51は、ワイヤハーネスW/Hと車載ECU11との互いの電源線60を結ぶスルー回路56と、ワイヤハーネスW/Hと車載ECU11との互いの信号線63を結ぶスルー回路57と、スルー回路57から給電される制御基板52とを備えている。
【0051】
制御基板52は、識別コード保存部53と、認証部54と、離脱判定部24と、制御回路55とを備えている。
識別コード保存部53は、車載ECU11との間で認証するための第一コネクタ識別コードと、中継コネクタ58との間で認証するための第二コネクタ識別コードとを記憶している。
認証部54は、発信部17から受信したECU識別コードを識別コード保存部53の第一コネクタ識別コードと照合し、一致する場合に正常、不一致の場合に異常と判定する。
【0052】
離脱判定部24は、車載ECU11のGND回路18と導通接続されてGND入力が維持されている場合をコネクタ嵌合状態、GND入力が停止した場合をコネクタ離脱状態と判断する。
制御回路55は、離脱判定部24によりコネクタ51がコネクタ嵌合部27から離脱されたと異常検知された場合に、制御線59を介して中継コネクタ58の制御回路68に指令してリレー69をオープンにして遮断状態に維持する。また、認証部54で照合が合わず異常検知された場合にも、同じくリレー69をオープンにして遮断状態に維持する。
【0053】
中継コネクタ58は、第一ワイヤハーネスW/H1と第二ワイヤハーネスW/H2との互いの信号線63を結ぶ回路を遮断/接続するリレー69と、第一ワイヤハーネスW/H1と第二ワイヤハーネスW/H2との互いの電源線60を結ぶスルー回路70と、スルー回路70から給電される制御基板64とを備えている。なお、リレー69は、車両出荷時にはクローズ状態となっている。
【0054】
制御基板64は、識別コード保存部65と、認証部66と、切断判定部42と、制御回路68とを備えている。
識別コード保存部65は、コネクタ51との間で認証するためのコネクタ識別コードを記憶している。
認証部66は、コネクタ51から受信した第二識別コードを識別コード保存部65のコネクタ識別コードと照合し、一致する場合に正常、不一致の場合に異常と判定する。
切断判定部67は、車載ECU11のGND回路18とコネクタ51を介して導通接続されてGND入力が維持されている場合を正常状態、GND入力が停止した場合をハーネス切断状態と判断する。
制御回路64は、切断判定部42により第一ワイヤハーネスW/H1が切断されたと異常検知された場合に、リレー69をオープンにして遮断状態に維持する。
【0055】
中継コネクタ58と嵌合するコネクタ33は、電源線60および信号線63を中継コネクタ58と第二ワイヤハーネスW/H2との間でそのまま通過接続するスルーコネクタとしている。
【0056】
以上の構成とすると、盗難者が車載ECU11および中継コネクタ58を車両から取り外して他のものと交換したとしても、コネクタ51との認証が正しく行われず、車両盗難を防止することができる。なお、コネクタ51のスルー回路57にリレーを設け、認証部54での認証が不正常である場合や、離脱判定部24でコネクタ離脱が検知された場合に該リレーをオープンにする構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態の車載用コネクタシステムを示すブロック図である。
【図2】第2実施形態の車載用コネクタシステムを示すブロック図である。
【図3】第3実施形態の車載用コネクタシステムを示すブロック図である。
【図4】従来例を示す図面である。
【図5】別の従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0058】
10、30、50 車載用コネクタシステム
11 車載ECU(電気部品)
12、31、51 コネクタ
13、37、63 信号線
14、34、60 電源線
16、22、40、53、65 識別コード保存部
18 GND回路
21、39、69 リレー(回路開閉手段)
23、41、54、66 認証部
24 離脱判定部
25、43、55、68 制御回路
27 コネクタ嵌合部
32、58 中継コネクタ
42、67 切断判定部
W/H ワイヤハーネス(電線)
W/H1 第一ワイヤハーネス
W/H2 第二ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線端末に取り付けられ、電気部品のコネクタ嵌合部に嵌合接続することで前記電線と前記電気部品との間の電気的な接続を行うコネクタにおいて、
前記電線と前記電気部品とを電気的に結合する回路を遮断/接続する回路開閉手段と、
前記コネクタに対する前記電気部品の接続異常を検知する異常検出手段と、
前記異常検出手段で異常検知されると前記回路開閉手段を遮断状態にする制御回路とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記コネクタが前記電気部品のコネクタ嵌合部から離脱された場合に異常であると判断する離脱判定部を備えている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記離脱判定部は、コネクタ嵌合時に前記電気部品のGND回路と接続され、GND入力が維持されている場合をコネクタ嵌合状態、GND入力が停止した場合をコネクタ離脱状態と判断している請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記異常検出手段は、前記電気部品の識別コードと照合するための識別コードを保存する識別コード保存部と、前記識別コード保存部に保存された識別コードを前記電気部品側の識別コードに照合して不適正な場合に異常と判定する認証部とを備えている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
車両に配索されるワイヤハーネスの一端に取り付けられるコネクタを車載ECUのコネクタ嵌合部に接続するコネクタシステムにおいて、
前記コネクタは、前記ワイヤハーネスと前記車載ECUとを電気的に結合する回路を遮断/接続する回路開閉手段と、前記コネクタに対する前記車載ECUの接続異常を検知する異常検出手段と、前記異常検出手段で異常検知されると前記回路開閉手段を遮断状態にする制御回路とを備えていることを特徴とする車載用コネクタシステム。
【請求項6】
前記異常検出手段は、前記コネクタが前記コネクタ嵌合部から離脱された場合に異常であると判断する離脱判定部を備えている請求項5に記載の車載用コネクタシステム。
【請求項7】
前記車載ECUは、接地されたGND回路を備え、
前記離脱判定部は、コネクタ嵌合時に前記車載ECUの前記GND回路と接続され、GND入力が維持されている場合をコネクタ嵌合状態、GND入力が停止した場合をコネクタ離脱状態と判断している請求項6に記載の車載用コネクタシステム。
【請求項8】
前記車載ECUは、ECU識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記コネクタは、コネクタ識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記異常検出手段は、前記ECU識別コードと前記コネクタ識別コードとを照合して不適正な場合に異常と判定する認証部を備えている請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の車載用コネクタシステム。
【請求項9】
車両に配索される第一ワイヤハーネスの一端に取り付けられるコネクタを車載ECUのコネクタ嵌合部に接続し、かつ、前記第一ワイヤハーネスの他端に第二ワイヤハーネスの一端と接続する中継コネクタを取り付けている車載用コネクタシステムであって、
前記中継コネクタは、前記第一ワイヤハーネスと前記第二ワイヤハーネスとを電気的に結合する回路を遮断/接続する回路開閉手段と、前記第一ワイヤハーネスおよび前記コネクタを介した前記車載ECUと前記中継コネクタとの接続の異常を検知する異常検出手段と、前記異常検出手段で異常検知されると前記回路開閉手段を遮断状態にする制御回路とを備えていることを特徴とする車載用コネクタシステム。
【請求項10】
前記異常検出手段は、前記第一ワイヤハーネスが切断された場合に異常であると判断する切断判定部を備えている請求項9に記載の車載用コネクタシステム。
【請求項11】
前記車載ECUは、接地されたGND回路を備え、
前記切断判定部は、前記第一ワイヤハーネスおよび前記コネクタを介して前記GND回路と接続され、GND入力が維持されている場合を正常状態、GND入力が停止した場合をハーネス切断状態と判断している請求項10に記載の車載用コネクタシステム。
【請求項12】
前記車載ECUは、ECU識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記中継コネクタは、中継コネクタ識別コードを記憶する識別コード保存部を備え、
前記異常検出手段は、前記ECU識別コードと前記中継コネクタ識別コードとを照合して不適正な場合に異常と判定する認証部を備えている請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の車載用コネクタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−164706(P2006−164706A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353317(P2004−353317)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】