説明

コネクタの勘合状態確認装置およびその方法

【課題】 コネクタの勘合状態を組立ラインにおいても容易に確認できるようにする。
【解決手段】 作業者に取り付けられた振動検出部によってコネクタの勘合時にコネクタで生じる振動を検出し(S1)、振動検出部で検出された振動を振動波形データに変換して送信し(S2)、振動波形データを受信して(S3)、振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成し(S4、S5)、生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較して(S6)コネクタの勘合状態の良否を判断する(S7、S8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの勘合状態を組立ラインにおいても容易に確認することができるコネクタの勘合状態確認装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両搭載機器の電子化が進むにしたがい、1車両当たりのコネクタ使用数が急増している。機器同士の電気的な接続を図るためのコネクタは、組立ラインにおいて作業者が手作業で勘合するが、コネクタ同士の勘合が適切に行われ、結線が確実に行われたか否かは、コネクタ勘合作業時の「カチ音」の有無、目視による「ロック爪のかかり具合」の確認、手操作による「勘合状態」の確認などすべてのコネクタについて実施することによって行っている。
【0003】
しかしながら、コネクタの勘合作業は、比較的音環境が悪く車両の狭小な部分で行っているために、上記の確認をすべてのコネクタについて確実に行うことが困難であるため勘合確認の十分な信頼性を担保することが難しく、また、その確認にある程度の時間を要するため作業効率向上の妨げにもなっている。
【0004】
このような不具合を解消する技術としては、下記特許文献1に示されているようなものがある。この技術は、検査用のスペーサーを各コネクタに追加し、スペーサーがコネクタに保持されているかいないかによって勘合が正常に行われているか否かを容易に目視判断できるようにしている。
【特許文献1】特開平5−74519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような従来の技術では、現在使用されているコネクタ数が1車両当たり数百かそれ以上と非常に多いため、検査用のスペーサーをすべてのコネクタに使用することはコスト的にも難しく、また、作業姿勢の悪い作業部位では目視判断も困難であるという数々の問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、コネクタの勘合状態を組立ラインにおいても容易に確認することができるコネクタの勘合状態確認装置およびその方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認装置は、コネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出するため作業者に取り付けられた振動検出手段と、当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する送信手段と、当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成するデータ処理手段と、当該データ処理手段により生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断する勘合状態良否判断手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するための請求項2に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認装置は、コネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出するため作業者に取り付けられた振動検出手段と、当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する送信手段と、当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成するデータ処理手段と、当該データ処理手段により生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断する勘合状態良否判断手段と、前記データ処理手段で受信された前記振動波形データの受信回数をカウントするカウント手段と、当該カウント手段でカウントされた受信回数をあらかじめ記憶されている基準カウント回数と比較して接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したか否かを判断する勘合作業終了判断手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
そして、上記目的を達成するための請求項13に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認方法は、作業者に取り付けられた振動検出手段によってコネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出する段階と、当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する段階と、当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成する段階と、生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断する段階と、を含むことを特徴とする。
【0010】
さらに、上記目的を達成するための請求項14に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認方法は、作業者に取り付けられた振動検出手段によってコネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出する段階と、当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する段階と、当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成する段階と、生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断すると共に受信された振動波形データの受信回数をカウントしその受信回数をあらかじめ記憶されている基準カウント回数と比較して接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したか否かを判断する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された請求項1に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認装置によれば、コネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を作業者に取り付けられた振動検出手段で確実に捕らえ、その振動に基づいてコネクタの勘合状態の良否を判断するようにしているので、音環境のあまり良くない組立ラインであっても、また、作業姿勢の悪い作業部位であっても、コネクタの勘合状態を容易に確認することができる。また、その勘合確認は精度良く行うことができるため、その勘合確認の信頼性を向上させることができ、さらに、その勘合確認はコネクタの勘合作業と同時に終了してしまうので、組立の作業効率を向上させることができる。
【0012】
また、上記のように構成された請求項2に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認装置によれば、請求項1に係る発明の効果に加え、勘合作業の行われたコネクタの数も確認することができるようにしたので、コネクタの接続忘れを確実に防止することができる。
【0013】
そして、上記のように構成された請求項13に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認方法によれば、コネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を作業者に取り付けられた振動検出手段で確実に捕らえ、その振動に基づいてコネクタの勘合状態の良否を判断するようにしているので、音環境のあまり良くない組立ラインであっても、また、作業姿勢の悪い作業部位であっても、コネクタの勘合状態を容易に確認することができる。また、その勘合確認は精度良く行うことができるため、その勘合確認の信頼性を向上させることができ、さらに、その勘合確認はコネクタの勘合作業と同時に終了してしまうので、組立の作業効率を向上させることができる。
【0014】
さらに上記のように構成された請求項14に記載の発明に係るコネクタの勘合状態確認装置によれば、請求項13に係る発明の効果に加え、勘合作業の行われたコネクタの数も確認することができるようにしたので、請求項13に係る発明の効果に加え、コネクタの接続忘れを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係るコネクタの勘合状態確認装置およびその方法の実施形態を、実施形態1と実施形態2とに分けて、それぞれ図面に基づいて詳細に説明する。
[実施形態1]
本実施の形態に係る勘合状態確認装置は図1に示すように構成されている。
【0016】
図1は、本発明に係る勘合状態確認装置の概略構成図である。勘合状態確認装置10は、振動検出部12、送信部14、データ処理部20、勘合状態良否判断部30から構成される。
【0017】
振動検出部12は、車両に搭載された電子機器同士を結線する場合、コネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出する振動検出手段として用いられ、それはたとえば作業者の手部に取り付けられる。振動検出部12は具体的にはピエゾ素子などのセンサで構成される。
【0018】
送信部14は、振動検出部12で検出された振動を振動波形データに変換して外部に送信するものであって、送信手段として機能する。
【0019】
データ処理部20は、送信部14から送信された振動波形データを受信して振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成するものであって、データ処理手段として機能する。
【0020】
勘合状態良否判断部30は、データ処理部20により生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断するものであって、勘合状態良否判断手段として機能する。
【0021】
データ処理部20は、受信部22、フィルター24、FFT処理部26から構成される。
【0022】
受信部22は、送信部14から送信された振動波形データを受信する。
【0023】
フィルター24は、受信部22が受信した振動波形データから任意の周波数データを取り除くものであり、具体的にはローパスフィルターまたはハイパスフィルターによって構成される。
【0024】
FFT処理部26は、フィルター24によって任意の周波数データが取り除かれた振動波形データを高速フーリェ変換し判断用データを生成するものである。高速フーリェ変換(FFT)は、振動波形データにどのような周波数成分がどの程度の割合で含まれているのかを解析するために行うものである。FFT処理部26はFFT処理手段として機能する。
【0025】
勘合状態良否判断部30は、記憶部32、比較部34、判断部36から構成される。
【0026】
記憶部32は、コネクタの勘合状態の良否を判断するために用いる基準データを記憶するものであって、記憶手段として機能する。なお、基準データは、車種、コネクタの種類、接合順序に関するデータを属性として持っている。このため、勘合状態良否判断部30は、コネクタの勘合状態を、車種、コネクタの種類、接合順序を勘案して判断することができる。
【0027】
比較部34は、FFT処理部26から出力される判断用データのレベル(ピークレベル)と記憶部32に記憶されている基準データのレベルとを比較するものであって、比較手段として機能する。比較時に使用する基準データは、その属性を見て合致したものを比較の対象とする。
【0028】
判断部36は、比較の結果、判断用データのレベルが基準データのレベルよりも大きければコネクタの勘合状態は良好であると判断し、判断用データのレベルが基準データのレベル以下であればコネクタの勘合状態は不良であると判断する。
【0029】
図2は、振動検出部12と送信部14の取り付け場所の一例を示す図である。図2に示すように、振動検出部12は、コネクタ勘合時、コネクタのロック手段が他の部材のロック手段に嵌まり込むときに生ずる振動、たとえばコネクタロックアームがコネクタロック孔に係合するときに生じる振動が検出しやすいように、作業者が装着する手袋の指の付け根部分に両面接着テープなどの接着手段によって取り付ける。また、送信部14はコネクタの勘合作業の邪魔にならないように、その手袋の手首部に取り付ける。なお、振動検出部12と送信部14は、その場所に限られず、たとえば作業者の手部であればどこでも良い。ただ、振動検出部12は、コネクタ勘合時の振動が取り込み易く勘合作業の邪魔にならない上記のような位置、またはその手袋の内側の手首部に取り付けるのが好ましい。さらに、作業者の指または手首のいずれかに装着するベルトに取り付けるようにしても良い。要は、振動検出部12は、コネクタ同士を勘合させるときに「カチッ」という音と共に生じる振動を効率的に捉えることができる位置に取り付ければ良い。
【0030】
図3〜図7は、コネクタ勘合時の振動が振動検出部12の位置によってどのように捕らえられるのかを説明するための図である。図3は振動検出部12の取り付け位置として選定した作業者の親指内側、親指外側、手首外側のそれぞれの部分を示す図であり、図4は振動検出部12の取り付け位置として選定したコネクタの中央部分を示す図である。
【0031】
図3に示す親指内側に振動検出部12を取り付けてコネクタの勘合作業を行ったときに捕らえられた振動波形データは、図5に示してあるような波形を呈している。勘合作業を行うときには両手の親指と人差し指でそれぞれのコネクタを摘み、コネクタ同士を押し付けてコネクタロックアームをコネクタロック孔に係合させるが、このとき親指にはコネクタを摘む力がかかっているので、低い周波数の山なりの波形が現れる。この山の頂点付近から一瞬大きく落ち込んでいる線が、コネクタロックアームがコネクタロック孔に係合したときに生じる振動である。本発明に係る勘合状態確認装置はFFT処理部26を備えているので、図5に示すような波形の振動波形データであっても、コネクタ勘合時の振動成分(線状の波形)のみを取り出すことができる。コネクタ勘合時の振動成分(判断用データと等価)の振幅(レベル)が基準データのレベルよりも大きければコネクタが正常に勘合されたと判断される。
【0032】
図3に示す親指外側または手首外側に振動検出部12を取り付けてコネクタの勘合作業を行ったときに捕らえられた振動波形データは、図6に示してあるような波形を呈している。親指外側または手首外側に振動検出部12を取り付けたときには親指内側に取り付けたときと違ってコネクタを摘むときの力はかからないので、図に示すような線状の波形が現れるだけである。図6において、左側にある線状の振幅の大きな波形が振動検出部12を親指外側に取り付けた場合に得られたものであり、右側にある線状の振幅の小さな波形が振動検出部12を手首外側に取り付けた場合に得られたものである。この場合も、コネクタ勘合時の振動成分の振幅が基準データのレベルよりも大きければコネクタが正常に勘合されたと判断される。
【0033】
図4に示すコネクタの中央部分に振動検出部12を取り付けてコネクタの勘合作業を行ったときに捕らえられた振動波形データは、図7に示してあるような波形を呈している。この波形も振動検出部12を親指外側または手首外側に取り付けたときに得られた波形と同様である。このことから、親指外側または手首外側に振動検出部12を取り付けてもコネクタの勘合作業の良否は十分正確に判断可能であることがわかる。このため、本発明に係る勘合状態確認装置では、振動検出部12を作業者の手部、好ましくは作業者の指または手首部に取り付けるようにしている。
【0034】
次に、本実施形態に係る勘合状態確認装置の動作を図8に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。なお、このフローチャートは本発明に係る勘合状態確認方法の手順を示すものでもある。
【0035】
まず作業者は、図2に示すような親指の付け根部分に振動検出部12が取り付けられている手袋を装着し、コネクタの勘合作業を開始する。コネクタが勘合されると、コネクタロックアームがコネクタロック孔に係合するときに振動が発生するが、振動検出部12はその振動を作業者の指を介して間接的に検出する(S1)。次に、送信部14は振動検出部12で検出された振動を振動波形データに変換して無線により送信する。たとえば、図6に示したような波形のデータが送信される(S2)。そして、受信部22によって振動波形データが受信される(S3)。
【0036】
受信された振動波形データからはフィルター24によって任意の周波数データが取り除かれ、勘合状態の判断がし易くなるように加工される(S4)。そして、FFT処理部26は、さらにフィルター24によって任意の周波数データが取り除かれた振動波形データを高速フーリェ変換し判断用データを生成する(S5)。
【0037】
比較部34は、現在コネクタ勘合作業が行なわれている車種、現在勘合しようとしているコネクタの種類、コネクタ勘合作業で指定されている接合順序などを勘案して、記憶部32に記憶されている基準データの中から適切な基準データを読み込み、FFT処理部26から出力される判断用データのレベルと読み込んだ基準データのレベルとを比較する(S6)。判断部36は、判断用データのレベルが基準データのレベルよりも大きければ(S6:YES)、コネクタの勘合状態は良好であると判断し(S7)、判断用データのレベルが基準データのレベル以下であれば(S6:NO)、コネクタの勘合状態は不良であると判断する(S8)。なお、判断結果はたとえば図示しない表示装置に出力され、勘合状態のOK、NGが表示される。
[実施形態2]
本実施の形態に係る勘合状態確認装置は図9に示すように構成されている。
【0038】
図9は、本発明に係る勘合状態確認装置の概略構成図である。勘合状態確認装置100は、振動検出部12、送信部14、データ処理部20、勘合状態良否判断部30、カウンター40、勘合作業終了判断部50、報知部60、車両情報提供部70から構成される。
【0039】
図9の勘合状態確認装置100において図1の勘合状態確認装置10と全く同一の符番が付されている部分は図1の勘合状態確認装置10のその部分と全く同一の機能を有しているので、その説明は省略する。
【0040】
カウンター40は、受信部22で受信された振動波形データの受信回数をカウントするものであり、カウント手段として機能する。
【0041】
勘合作業終了判断部50は、カウンター40でカウントされた受信回数をあらかじめ記憶されている基準カウント回数と比較して接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したか否かを判断するものであって、勘合作業終了判断手段として機能する。
【0042】
報知部60は、前記勘合作業終了判断部50によってすべてのコネクタの勘合作業が終了したと判断され、なおかつ、勘合状態良否判断部30ですべてのコネクタの勘合状態が良好であると判断されたときに、コネクタの勘合作業が正常に終了したことを報知するものであって、報知手段として機能する。
【0043】
車両情報提供部70は、勘合状態良否判断部30で用いる基準データおよび勘合作業終了判断部50で用いる基準カウント回数を車種ごとに提供するために設けられているものであって、車両情報提供手段として機能する。
【0044】
勘合作業終了判断部50は、記憶部52、比較部54、判断部56によって構成される。
【0045】
記憶部52は、接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したか否かを判断するために用いる基準カウント回数を記憶するものであって、記憶手段として機能する。なお、基準カウント回数は、車種ごとに設定されている。
【0046】
比較部54は、カウンター40によってカウントされた受信回数と記憶部52に記憶されている基準カウント回数とを比較するものであって、比較手段として機能する。
【0047】
判断部56は、比較の結果、受信回数が基準カウント回数と一致したときに接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したと判断する。
【0048】
次に、本実施形態に係る勘合状態確認装置の動作を図10に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。なお、このフローチャートは本発明に係る勘合状態確認方法の手順を示すものでもある。
【0049】
まず作業者は、車両情報提供部70を用いて、これからコネクタの勘合作業を行なおうとする車種、その車種に対応する基準カウント回数および基準データを勘合作業終了判断部50と勘合状態良否判断部30に対して入力する。なお、基準データは、車種、コネクタの種類、接合順序に関するデータを属性として持っている。このため、勘合状態良否判断部30は、コネクタの勘合状態を、車種、コネクタの種類、接合順序を勘案して判断することができる(S11)。次に、作業者は、図2に示すような親指の付け根部分に振動検出部12が取り付けられている手袋を装着し、コネクタの勘合作業を開始する。コネクタが勘合されると、コネクタロックアームがコネクタロック孔に係合するときに振動が発生するが、振動検出部12はその振動を作業者の指を介して間接的に検出する(S12)。次に、送信部14は振動検出部12で検出された振動を振動波形データに変換して無線により送信する。たとえば、図6に示したような波形のデータが送信される(S13)。そして、受信部22によって振動波形データが受信される(S14)。なお、振動検出部12は、親指の付け根部位にのみ取り付けた例を図示したが、さらに、人差し指の部位にも取り付け、両方の検出値を送信部14で合成して、振動波形データに変換するようにしても良い。
【0050】
受信された振動波形データからはフィルター24によって任意の周波数データが取り除かれ、勘合状態の判断がし易くなるように加工される(S15)。そして、FFT処理部26は、さらにフィルター24によって任意の周波数データが取り除かれた振動波形データを高速フーリェ変換し判断用データを生成する(S16)。そして、カウンター40は受信部22で受信された振動波形データの受信回数をカウントする(S17)。
【0051】
比較部34は、現在コネクタ勘合作業が行なわれている車種、現在勘合しようとしているコネクタの種類、コネクタ勘合作業で指定されている接合順序などを勘案して、記憶部32に記憶されている基準データの中から適切な基準データを読み込み、FFT処理部26から出力される判断用データのレベルと読み込んだ基準データのレベルとを比較する(S18)。判断部36は、判断用データのレベルが基準データのレベル以下であれば(S18:NO)、コネクタの勘合状態は不良であると判断する(S19)。判断用データのレベルが基準データのレベルよりも大きければ(S18:YES)、次に判断部56が、受信回数が基準カウント回数と一致するか否かを判断する。基準カウント回数は現在コネクタ勘合作業が行なわれている車種を考慮して判断する(S20)。受信回数が基準カウント回数と一致していなければ(S20:NO)、その勘合作業に予定されている個数のコネクタの接続が終了していないのであるから、次のコネクタの勘合状態を判断させるため、S12のステップに戻る。一方、受信回数が基準カウント回数と一致していれば(S20:YES)、その勘合作業に予定されている個数のコネクタの接続が終了したのであるから、すべてのコネクタの勘合が正常に行われたと判断し(S21)、その結果を報知部60に表示させる(S22)。なお、報知部60にはS19において勘合状態は不良であると判断された場合にもその旨が表示される。
【0052】
つまり、上記の処理では、生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断すると共に受信された振動波形データの受信回数をカウントしその受信回数をあらかじめ記憶されている基準カウント回数と比較して接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したか否かを判断し、すべてのコネクタの勘合作業が終了したと判断され、なおかつ、すべてのコネクタの勘合状態が良好であると判断されたときに、前記コネクタの勘合作業が正常に終了したことが報知部60に報知されることになる。
【0053】
なお、本実施形態では、車両情報の入力を作業者が行うものを例示したが、車両の搬送に伴って、その車両の車両情報をホストコンピュータから自動的に入力されるようにしても良い。
【0054】
以上の実施形態によれば、コネクタの勘合の良否を振動に基づいて行うようにしたので、音感知方式とは異なり、たとえ現場の音環境が悪くとも、コネクタの勘合の良否を極めて正確に判断できしかもその判断をコネクタの勘合とほぼ同時に行うことができる。なお、現場でも振動が生じているが、この振動はコネクタ勘合時の振動とは異なるので、FFT処理によって両振動を明確に分離することが可能である。このため、たとえ振動の多く発生している現場であっても、コネクタの勘合の良否を極めて正確に判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、コネクタの勘合作業を行うすべての生産ラインにおいて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る勘合状態確認装置の概略構成図である。
【図2】振動検出部と送信部の取り付け場所の一例を示す図である。
【図3】振動検出部の取り付け位置として選定した作業者の親指内側、親指外側、手首外側のそれぞれの部分を示す図である。
【図4】振動検出部の取り付け位置として選定したコネクタの中央部分を示す図である。
【図5】親指内側に振動検出部を取り付けてコネクタの勘合作業を行ったときに捕らえられた振動波形データを示す図である。
【図6】親指外側または手首外側に振動検出部を取り付けてコネクタの勘合作業を行ったときに捕らえられた振動波形データを示す図である。
【図7】コネクタの中央部分に振動検出部を取り付けてコネクタの勘合作業を行ったときに捕らえられた振動波形データを示す図である。
【図8】図1に示した勘合状態確認装置の動作フローチャートである。
【図9】本発明に係る勘合状態確認装置の他の実施形態の概略構成図である。
【図10】図9に示した勘合状態確認装置の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10、100 勘合状態確認装置、
12 振動検出部、
14 送信部、
20 データ処理部、
22 受信部、
24 フィルター、
26 FFT処理部、
30 勘合状態良否判断部、
32 記憶部、
34 比較部、
36 判断部、
40 カウンター、
50 勘合作業終了判断部、
52 記憶部、
54 比較部、
56 判断部、
60 報知部、
70 車両情報提供部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出するため作業者に取り付けられた振動検出手段と、
当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する送信手段と、
当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成するデータ処理手段と、
当該データ処理手段により生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断する勘合状態良否判断手段と、
を有することを特徴とするコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項2】
コネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出するため作業者に取り付けられた振動検出手段と、
当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する送信手段と、
当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成するデータ処理手段と、
当該データ処理手段により生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断する勘合状態良否判断手段と、
前記データ処理手段で受信された前記振動波形データの受信回数をカウントするカウント手段と、
当該カウント手段でカウントされた受信回数をあらかじめ記憶されている基準カウント回数と比較して接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したか否かを判断する勘合作業終了判断手段と、
を有することを特徴とするコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項3】
さらに、
前記勘合作業終了判断手段によってすべてのコネクタの勘合作業が終了したと判断され、なおかつ、勘合状態良否判断手段で当該すべてのコネクタの勘合状態が良好であると判断されたときに、前記コネクタの勘合作業が正常に終了したことを報知する報知手段を有することを特徴とする請求項2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項4】
さらに、
前記勘合状態良否判断手段で用いる基準データおよび前記勘合作業終了判断手段で用いる基準カウント回数を車種ごとに提供する車両情報提供手段を有することを特徴とする請求項2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項5】
前記振動検出手段と前記送信手段とは、作業者の手部に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項6】
前記振動検出手段は、作業者の手袋の指部または手首部のいずれかに、あるいは作業者の指または手首のいずれかに装着するベルトに取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項7】
前記コネクタで生じる振動は、コネクタの勘合時に当該コネクタのロック手段が他の部材のロック手段に嵌まり込むときに生ずる振動であることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項8】
前記データ処理手段は、
受信した振動波形データから任意の周波数データを取り除くフィルターを含み、
当該フィルターによって判断用データが生成されることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項9】
前記データ処理手段は、
受信した振動波形データを高速フーリェ変換するFFT処理手段を含み、
当該FFT処理手段によって判断用データが生成されることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項10】
前記勘合状態良否判断手段は、
前記基準データを記憶する記憶手段と、
前記基準データのレベルと前記判断用データのレベルとを比較する比較手段と、を含み、
当該比較の結果、前記判断用データのレベルが前記基準データのレベルよりも大きければ前記コネクタの勘合状態は良好であると判断し、前記判断用データのレベルが前記基準データのレベル以下であれば前記コネクタの勘合状態は不良であると判断することを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項11】
前記勘合作業終了判断手段は、
前記基準カウント回数を記憶する記憶手段と、
前記受信回数と前記基準カウント回数とを比較する比較手段と、を含み、
当該比較の結果、前記受信回数が前記基準カウント回数と一致したときに接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したと判断することを特徴とする請求項2に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項12】
前記基準データは、車種、コネクタの種類、接合順序に関するデータを属性として持っていることを特徴とする請求項4または10に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項13】
前記基準カウント回数は、車種ごとに設定されていることを特徴とする請求項11に記載のコネクタの勘合状態確認装置。
【請求項14】
作業者に取り付けられた振動検出手段によってコネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出する段階と、
当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する段階と、
当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成する段階と、
生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断する段階と、
を含むことを特徴とするコネクタの勘合状態確認方法。
【請求項15】
作業者に取り付けられた振動検出手段によってコネクタの勘合時に当該コネクタで生じる振動を検出する段階と、
当該振動検出手段で検出された振動を振動波形データに変換して送信する段階と、
当該振動波形データを受信して前記振動波形データから勘合状態の判断に不要なデータを除去することにより判断用データを生成する段階と、
生成された判断用データをあらかじめ記憶されている基準データと比較してコネクタの勘合状態の良否を判断すると共に受信された振動波形データの受信回数をカウントしその受信回数をあらかじめ記憶されている基準カウント回数と比較して接続すべきすべてのコネクタの勘合作業が終了したか否かを判断する段階と、
を含むことを特徴とするコネクタの勘合状態確認方法。
【請求項16】
さらに、
すべてのコネクタの勘合作業が終了したと判断され、なおかつ、すべてのコネクタの勘合状態が良好であると判断されたときに、前記コネクタの勘合作業が正常に終了したことを報知する段階を含むことを特徴とする請求項15に記載のコネクタの勘合状態確認方法。
【請求項17】
前記基準データは、車種、コネクタの種類、接合順序に関するデータを属性として持っていることを特徴とする請求項15に記載のコネクタの勘合状態確認方法。
【請求項18】
前記勘合状態良否判断手段で用いる基準データおよび前記勘合作業終了判断手段で用いる基準カウント回数は、車種ごとに提供されることを特徴とする請求項15に記載のコネクタの勘合状態確認方法。

【図1】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−221971(P2006−221971A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34419(P2005−34419)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】