説明

コネクタユニット

【課題】スペーサによる端子金具の係止を確実にしてコネクタハウジングからの抜け出しを防止することができるコネクタユニットを提供する。
【解決手段】第一コネクタ1の第一コネクタハウジング12は、嵌合方向Xに沿って延びるとともに略環状に形成される内側面部16を有した嵌合凹部14を備え、内側面部16には、嵌合方向Xと直交して内方に突出した第一段部17が形成され、第二コネクタ2の第二コネクタハウジング22は、嵌合方向Xに沿って延びるとともに略柱状に形成される外側面部26を有した嵌合凸部24Aを備え、外側面部26には、第一段部17に対応して内方に凹んだ第二段部27が形成され、スペーサ23は、仮係止位置において、嵌合凸部24Aの外側面部26の一部と第二段部27との少なくとも2箇所から突出し、本係止位置において、外側面部26に没入するか又は外側面部26とフラットに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成し、ワイヤハーネス同士を接続したりワイヤハーネスと電子機器とを接続したりするために、互いに嵌合可能なコネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、多種多様な電子機器が搭載され、電子機器に電力や制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスが配索されている。ワイヤハーネスは、複数の電線と、コネクタとを備え、このコネクタを電子機器のコネクタや他のワイヤハーネスのコネクタに嵌合させることで、電子機器や他のワイヤハーネスに接続されている。
【0003】
このようなワイヤハーネスに用いられるコネクタとしては、コネクタハウジングと、該コネクタハウジングに収容されるとともに電線の端末に取り付けられる端子金具とを備えたものが一般的であり、使用環境や使用目的に応じた各種形態のコネクタが利用されている。また、コネクタとしては、端子金具として棒状の雄型端子金具を収容する所謂雄型コネクタと、筒状の雌型端子金具を収容する所謂雌型コネクタとがあり、これらの雄型コネクタと雌型コネクタとを嵌合させ、雌型端子金具に雄型端子金具を挿入することで、これら雄雌のコネクタが機械的かつ電気的に接続されるようになっている。
【0004】
また、コネクタハウジングは、端子金具を内部に収容する直線孔状の端子収容室と、端子収容室内に突出しかつ弾性変形自在に設けられて端子金具を端子収容室内に係止する係止ランスとを備えて形成されている。このようなコネクタにおいて、係止ランスによって端子金具を係止するだけでは係止力が不足し、製造工程等においてワイヤハーネスを引き回した際にコネクタハウジングから端子金具が抜け出す場合がある。このことから、コネクタハウジングから端子金具が抜け出ることを防止するために、係止ランスの係止に加えて端子金具の移動を規制してコネクタハウジングから外れないように本係止するものとして、スペーサを備えたコネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載されたコネクタ100は、図5〜図9に示すように、コネクタハウジング101と、スペーサ102と、電線Wが接続された雌型の端子金具(以下、雌端子と記す)103とを備えた所謂雌型コネクタである。このコネクタ100は、図7及び図9に示すように、コネクタハウジング111と、雄型の端子金具(以下、雄端子と記す)112とを備えた所謂雄型である相手方のコネクタ110と嵌合して機械的かつ電気的に接続される。コネクタハウジング101は、絶縁性の合成樹脂等から全体箱状に形成され、雌端子103を収容する端子収容室104と、スペーサ102を収容するスペーサ収容室105とを備えている。
【0006】
端子収容室104は、複数設けられて上下左右に互いに並設されるとともに、それぞれ直線状に延びており、長手方向の両端がコネクタハウジング101の端面に開口している。端子収容室104には、その長手方向(端子金具の挿入方向)に沿って雌端子103が挿入され、その挿入方向奥側の端子収容室104内部に臨んで係止ランス106が形成されている。スペーサ収容室105は、コネクタハウジング101の複数の外面のうち端子収容室104の長手方向と直交する一つの外面(図中の上面)から凹に形成され、それぞれの端子収容室104の長手方向略中央を横切って設けられている。
【0007】
スペーサ102は、絶縁性の合成樹脂等で構成され、スペーサ本体部107と、スペーサ収容室105に挿入される挿入部108とを備えている。スペーサ本体部107には、上段の端子収容室104内部に位置することで雌端子103の抜け出しを規制する規制部107Aが形成されている。挿入部108には、雌端子103が挿通可能な開口部108Aと、下段の端子収容室104内部に位置することで雌端子103の抜け出しを規制する規制部108Bとが形成されている。このようなスペーサ102は、スペーサ収容室105に挿入されると、先ず、図6及び図7に示すように、挿入部108の突起108Cがコネクタハウジング101に係止され、仮係止位置に位置付けられる。
【0008】
スペーサ102が仮係止位置に位置付けられた状態において、挿入部108の開口部108Aと、上段の端子収容室104とが互いに連通し、挿入部108の下側の空間と、下段の端子収容室104とが互いに連通して、端子収容室104に雌端子103が挿入可能になる。そして、雌端子103を端子収容室104に挿入すると、係止ランス106が弾性変形して雌端子103の先端部の凹みを係止する。この雌端子103の仮係止状態において、係止ランス106を抜き取り治具等で弾性変形させれば、係止ランス106による係止を解除することで雌端子103をコネクタハウジング101から引き抜くことができる。
【0009】
そこで、仮係止位置に位置付けられたスペーサ102をさらにスペーサ収容室105に挿入していくと、図8及び図9に示すように、挿入部108の突起108Cがコネクタハウジング101の凹みに係止され、本係止位置に位置付けられる。スペーサ102が本係止位置に位置付けられると、スペーサ本体部107の規制部107Aが上段の端子収容室104内に突出し、挿入部108の規制部108Bが上段の端子収容室104内に突出して、各々の規制部107A,108Bで雌端子103の後端部を係止する。このように、本係止位置に位置付けられたスペーサ102は、雌端子103がコネクタハウジング101から抜け出ることを防止する。
【0010】
以上のようなスペーサ付きのコネクタ100では、図6及び図7に示すように、スペーサ102が仮係止位置に位置した状態では、スペーサ本体部107がコネクタハウジング101の上面から突出しており、このスペーサ本体部107に当接することから、相手方のコネクタ110をコネクタ100に嵌合させることができない。このようにコネクタ100と相手方のコネクタ110とが嵌合不能であることによって、スペーサ102が仮係止位置にあって本係止位置まで挿入されていないという、スペーサ102の中途挿入状態が検出できるようになっている。一方、図8及び図9に示すように、スペーサ102が本係止位置まで挿入されていれば、スペーサ本体部107がコネクタハウジング101から突出しないので、コネクタ100と相手方のコネクタ110とを嵌合させて機械的かつ電気的に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−326419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に示されたような従来のコネクタにおいて、相手方のコネクタとの嵌合を円滑にするために、互いのコネクタハウジングの嵌合部分には、所定のクリアランスが設けられることが一般的であり、スペーサが完全に本係止位置にない中途挿入状態であっても、スペーサの突出量がクリアランス以下であったり、嵌合方向に傾斜して押し込んだりすることによって、コネクタ同士が嵌合されてしまう場合があった。このようにスペーサが中途挿入状態のままでコネクタ同士が嵌合されてしまうと、端子金具の係止力が不十分となって、ワイヤハーネスを引き回した際にコネクタハウジングから抜け出してしまう可能性がある。
【0013】
本発明は、上記した点に鑑み、スペーサによる端子金具の係止を確実にしてコネクタハウジングからの抜け出しを防止することができるコネクタユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された本発明のコネクタユニットは、第一端子金具を収容する第一コネクタハウジングを有した第一コネクタと、第二端子金具を収容する第二コネクタハウジングを有した第二コネクタとを備え、該第一コネクタ及び該第二コネクタを互いに対向させつつ嵌合方向に押圧することで嵌合可能なコネクタユニットであって、前記第二コネクタは、前記第二端子金具が前記第二コネクタハウジング内から抜け出ることを許容する仮係止位置と、前記第二端子金具が前記第二コネクタハウジングから抜け出ることを規制する本係止位置と、に渡って移動自在に設けられるスペーサを備え、前記第一コネクタハウジングは、嵌合方向に沿って延びるとともに略環状に形成される内側面部を有した嵌合凹部を備え、前記内側面部は、嵌合方向と直交して内方に突出した第一段部を有して形成され、前記第二コネクタハウジングは、嵌合方向に沿って延びるとともに略柱状に形成される外側面部を有した嵌合凸部を備え、前記外側面部は、前記第一段部に対応して内方に凹んだ第二段部を有して形成され、前記スペーサは、仮係止位置において、前記嵌合凸部の前記外側面部の一部と前記第二段部との少なくとも2箇所から突出し、本係止位置において、前記外側面部に没入するか又は該外側面部とフラットに設けられることを特徴とする。
【0015】
上記構成により、第一コネクタハウジングの嵌合凹部に第二コネクタハウジングの嵌合凸部を挿入して互いに嵌合させる際に、嵌合凹部の内側面部に嵌合凸部の外側面部が沿うとともに、第一段部に第二段部が沿いつつ嵌合凸部が挿入されることとなる。その際、スペーサが仮係止位置にあれば、嵌合凸部における外側面部の一部と第二段部との少なくとも2箇所からスペーサが突出することで、これらの少なくとも2箇所が嵌合凹部に当接する可能性があることから、スペーサが本係止位置まで挿入されずに中途挿入状態であることが検知しやすくなる。即ち、例え、嵌合凹部の内側面部と嵌合凸部の外側面部とに設けられたクリアランスよりもスペーサの突出量が小さかったとしても、互いに異なる2箇所にスペーサが突出した突出部があることで、嵌合凸部を挿入する際の微細な位置ずれや傾きとも相まって、2箇所の突出部のうちのいずれかが嵌合凹部に当接しやすくなり、これによりスペーサの中途挿入状態の検知精度を高めることができる。
【0016】
請求項2に記載された本発明のコネクタユニットは、請求項1に記載のコネクタユニットにおいて、前記嵌合凹部の前記第一段部と、前記嵌合凸部の前記第二段部と、の一方には、嵌合方向に沿って延びる案内溝が形成され、他方には、前記案内溝に挿通される突条が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成により、案内溝に沿って突条が案内されることで、嵌合凹部に嵌合凸部を挿入する際の互いの回転や傾斜を防止しつつ、嵌合方向に沿って真直ぐに挿入することができる。また、第一段部及び第二段部の一方に案内溝が設けられ他方に突条が設けられているので、第一段部と第二段部との挿入時の位置精度を高めることができる。
【0018】
請求項3に記載されたコネクタユニットは、請求項1又は2記載のコネクタユニットにおいて、前記嵌合凹部の内側面部は、嵌合方向と直交しかつ互いに交差する第一交差方向及び第二交差方向のうち、第一交差方向に沿った第一内側面と、第二交差方向に沿った第二内側面と、前記第一内側面に交差して該嵌合凹部の内方に延びる第一副内側面と、第二内側面に交差して該嵌合凹部の内方に延びて前記第一副内側面に連続する第二副内側面と、を備え、前記第一副内側面及び前記第二副内側面によって前記第一段部が構成され、前記嵌合凸部の外側面部は、前記嵌合凹部と嵌合した状態において、前記第一内側面と近接対向する第一外側面と、前記第二内側面と近接対向する第二外側面と、前記第一副内側面と近接対向する第一副外側面と、前記第二副内側面と近接対向する第二副外側面と、を備え、前記第一副外側面及び前記第二副外側面によって前記第二段部が構成され、前記第一外側面と前記第二副外側面とから仮係止位置にある前記スペーサが突出可能に設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記構成により、嵌合凹部の内側面部において、第一内側面、第二内側面、第一副内側面及び第二副内側面から、クランク状に屈曲して内向きに突出した出隅状の第一段部が構成され、嵌合凸部の外側面部において、第一外側面、第二外側面、第一副外側面及び第二副外側面から、クランク状に屈曲して内向きに凹んだ入隅状の第二段部が構成される。このような出隅状の第一段部と入隅状の第二段部とを互いに沿わせつつ、嵌合凹部に嵌合凸部を挿入することで、挿入時の位置精度を高めることができる。さらに、嵌合凸部の第一外側面と第二副外側面とは、第一副外側面を挟んで互いに離れて設けられることから、これらの第一外側面と第二副外側面とからスペーサが突出することで、スペーサの中途挿入状態の検知精度をより一層高めることができる。
【0020】
請求項4に記載されたコネクタユニットは、請求項3に記載のコネクタユニットにおいて、前記嵌合凹部の内側面部において、前記第二内側面が互いに対向する一対で設けられ、前記第一副内側面が前記第一内側面の両端に連続して一対で設けられ、該一対の第一副内側面の各々と前記一対の第二内側面の各々とに渡って前記第二副内側面が一対で設けられ、前記嵌合凸部の外側面部において、前記第二外側面が前記一対の第二内側面の各々に対応して一対で設けられ、前記第一副外側面が前記一対の第一副内側面の各々に対応して一対で設けられ、前記第二副外側面が前記一対の第二副内側面の各々に対応して一対で設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、嵌合凹部の内側面部において、第一内側面を挟んで各々一対の第二内側面、第一副内側面及び第二副内側面を設けたことで、左右対称な第一段部が構成され、これと同様に、嵌合凸部の外側面部において、左右対称な第二段部が構成される。従って、仮係止位置にあるスペーサが左右の第二段部の各々から突出することで、これらのスペーサの突出部と左右の第一段部との当接がさらに検知しやすくできる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明によれば、嵌合凸部の外側面部における互いに異なる2箇所からスペーサが突出可能になっていることで、突出したスペーサが嵌合凹部に当接しやすくなって中途挿入状態を容易に検知することができる。従って、検知した中途挿入状態のスペーサを本係止位置に挿入し直すことにより、スペーサが中途挿入状態のままで第一コネクタと第二コネクタとが嵌合されることを未然に防ぎ、本係止位置に挿入し直したスペーサによって端子金具の移動を確実に規制することで、第二コネクタハウジングからの端子金具の抜け出しを防止することができる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、第一段部と第二段部との間で案内溝に沿って突条が案内され、第一段部と第二段部とが互いに所定の相対位置で挿入されることで、スペーサが中途挿入状態の場合に、第二段部から突出したスペーサが第一段部に当接しやすくなり、この当接を高精度に検知することができる。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、第一段部と第二段部との相対位置の精度を高めるとともに、少なくとも2箇所で突出するスペーサの突出部が互いに離隔して設けられることで、スペーサが中途挿入状態の場合の検知精度を高めることができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、第一外側面を挟んで左右に第二段部が設けられているので、これらの第一外側面と左右一対の第二段部における第二副外側面と、の少なくとも3箇所から中途挿入状態のスペーサが突出し、これらのスペーサの突出部が嵌合凹部の内側面部に対してさらに当接しやすくでき、中途挿入状態の検知精度をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態にかかるコネクタユニットの第一コネクタを示す正面図である。
【図2】前記コネクタユニットの第二コネクタを示す正面図である。
【図3】前記第一コネクタと第二コネクタとの嵌合状態を示す図である。
【図4】前記第一コネクタと第二コネクタとの非嵌合状態を示す図である。
【図5】従来のスペーサ付きコネクタを示す斜視図である。
【図6】前記従来のコネクタの仮係止状態を示す断面図である。
【図7】図6にA−A線で示す前記従来のコネクタの断面図である。
【図8】前記従来のコネクタの本係止状態を示す断面図である。
【図9】図8にB−B線で示す前記従来のコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態にかかるコネクタユニットを、図1〜図4を参照して説明する。本実施形態のコネクタユニットは、図1に示す第一コネクタとしての雄型コネクタ1と、図2に示す第二コネクタとしての雌型コネクタ2と、の一対で構成されている。これらの雄型コネクタ1及び雌型コネクタ2は、自動車などに配索されるワイヤハーネスや電子機器等に設けられ、雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とが互いに嵌合することで、ワイヤハーネス同士やワイヤハーネスと電子機器とを電気的に接続するものである。なお、以下では、雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とが嵌合される方向(各図の紙面直交方向)をコネクタの嵌合方向Xと呼ぶ。また、嵌合方向Xと直交する平面(各図の紙面に平行な面)内の直交二方向を、それぞれ第一交差方向Y及び第二交差方向Zと呼び、各図において矢印Y,Zで示す。
【0028】
雄型コネクタ1は、図1に示すように、第一端子金具としての複数の雄端子11と、雄端子11を収容するコネクタハウジング(第一コネクタハウジング)12とを備えている。雄端子11は、導電性の板金に打ち抜き加工と折り曲げ加工が施されて先端が棒状に形成され、この先端がコネクタハウジング12から図1の紙面手前側に向かって突出して設けられている。また、雄端子11の後端部には、図示しない電線の芯線が圧着され、この電線がコネクタハウジング12から外(図1の紙面奥側)に延びて設けられている。
【0029】
コネクタハウジング12は、絶縁性の合成樹脂等で構成され、複数の雄端子11を収容する箱状のハウジング本体13と、ハウジング本体13の前方側に設けられる嵌合凹部14と、雌型コネクタ2に係合する係合部15とを備えている。ハウジング本体13には、雄端子11を収容する図示しない端子収容室が設けられ、端子収容室から該ハウジング本体13の前面壁13Aを貫通した雄端子11の先端部が嵌合凹部14内に位置している。
【0030】
嵌合凹部14は、全体矩形状かつ係合部15の部分が切欠かれた環状であるとともに、前面壁13Aを底面として前方側(図1の紙面手前側)に開口した断面凹状に形成されている。この嵌合凹部14は、嵌合方向Xに沿って延びる内側面部16を備えている。内側面部16は、係合部15と反対側にて第一交差方向Yに沿って延びる第一内側面16Aと、図中左右に対向して第二交差方向Zに沿って延びる一対の第二内側面16Bと、第一内側面16Aの両端部から第二交差方向Zの内方(図中上側)に延びる一対の第一副内側面16Cと、第二内側面16Bの端部からそれぞれ第一交差方向Yの内方に延びて第一副内側面16Cに連続する一対の第二副内側面16Dと、第二内側面16Bの他の端部からそれぞれ第一交差方向Yの内方に延びる一対の第三内側面16Eとを有している。
【0031】
このような嵌合凹部14の内側面部16には、第一副内側面16Cと第二副内側面16Dとによって、嵌合方向Xに交差して該嵌合凹部14の内方に突出した出隅状の第一段部17が一対形成されている。さらに、内側面部16には、一対の第一副内側面16Cから第一交差方向Yに向かって突出し、かつ嵌合方向Xに沿って延びる一対の突条18が形成されている。また、第三内側面16Eの端部には、第二交差方向Zの外方に延びる第四内側面16Fが連続し、互いに対向する一対の第四内側面16F間に係合部15が両持ち状態で架設されている。係合部15は、第四内側面16F間に架設される梁部15Aと、この梁部15Aの略中央から嵌合方向Xに交差して嵌合凹部14の内方に突出する係合突起15Bとを有している。
【0032】
雌型コネクタ2は、図2に示すように、第二端子金具としての複数の雌端子21と、雌端子21を収容するコネクタハウジング(第二コネクタハウジング)22と、コネクタハウジング22に挿入されるスペーサ23とを備えている。雌端子21は、導電性の板金に打ち抜き加工と折り曲げ加工が施されて、四角筒状の電気接触部と、その後方の電線接続部とを有して形成されている。雌端子21の電気接触部は、コネクタハウジング22の前面壁22Aに形成された貫通孔を介して外部に臨んで設けられ、前方側から雄端子11が電気接触部に挿入可能になっている。また、雌端子21の電線接続部には、図示しない電線の芯線が圧着され、この電線がコネクタハウジング22から外(図2の紙面奥側)に延びて設けられている。
【0033】
コネクタハウジング22は、絶縁性の合成樹脂等で構成され、複数の雌端子21を収容する箱状のハウジング本体24と、雄型コネクタ1の係合部15に係合するロック部25とを備えている。ハウジング本体24は、雌端子21を収容する図示しない端子収容室と、スペーサ23を収容する図示しないスペーサ収容室とを備えている。端子収容室には、ハウジング本体24の後方側から挿入された雌端子21を係止する図示しない係止ランスが設けられている。スペーサ収容室は、ロック部25の反対側において嵌合方向Xと交差して開口し、挿入されたスペーサ23を仮係止位置(図2に示す位置)と本係止位置との2位置で係止可能に構成されている。
【0034】
ハウジング本体24は、正面視で凸字形の八角柱状であり、その周面には嵌合方向Xに沿って延びる外側面部26を備え、該ハウジング本体24の前部が雄型コネクタ1の嵌合凹部14に挿入されて嵌合する嵌合凸部24Aとされている。外側面部26は、ロック部25と反対側にて第一交差方向Yに沿って延びる第一外側面26Aと、図中左右にて第二交差方向Zに沿って延びる一対の第二外側面26Bと、第一外側面26Aの両端部から第二交差方向Zの内方(図中上側)に延びる一対の第一副外側面26Cと、第二外側面26Bの端部からそれぞれ第一交差方向Yの内方に延びて第一副外側面26Cに連続する一対の第二副外側面26Dと、第二外側面26Bの他の端部同士に渡って第一交差方向Yに延びる第三外側面26Eとを有している。
【0035】
このような嵌合凸部24Aの外側面部26には、第一副外側面26Cと第二副外側面26Dとによって、嵌合方向Xに交差して該嵌合凸部24Aの内方に凹んだ入隅状の第二段部27が一対形成されている。さらに、外側面部26における一対の第一副外側面26Cには、嵌合方向Xに沿って延びる案内溝28が形成され、これらの案内溝28に雄型コネクタ1の突条18が挿通されるようになっている。
【0036】
スペーサ23は、スペーサ本体部23Aと、このスペーサ本体部23Aから延びてハウジング本体24のスペーサ収容室に挿入される図示しない挿入部とを備える。スペーサ本体部23Aには、嵌合凸部24Aの第一外側面26Aに平行な第一スペーサ外面部23Bと、一対の第二副外側面26Dの各々に平行な一対の第二スペーサ外面部23Cとが設けられている。スペーサ23の挿入部には、スペーサ23全体がスペーサ収容室に収容された本係止位置において、端子収容室の内部に位置して雌端子21に当接可能な図示しない規制部が形成されている。この本係止位置において、第一スペーサ外面部23Bは、第一外側面26Aとフラットになるか、または第一外側面26Aに没入し、第二スペーサ外面部23Cは、第二副外側面26Dとフラットになるか、または第二副外側面26Dに没入する。一方、図2に示す仮係止位置において、スペーサ23の規制部は雌端子21に当接せず、第一スペーサ外面部23Bは、第一外側面26Aから第二交差方向Zに突出し、第二スペーサ外面部23Cは、第二副外側面26Dから第二交差方向Zに突出する。
【0037】
ロック部25は、第三外側面26Eから突出して門形に形成された保護部25Aと、この保護部25Aの内部にて第三外側面26Eに立設されて前面壁22Aよりも前方に延びるロックアーム25Bとを備える。ロックアーム25Bの先端部には、雄型コネクタ1の係合部15の係合突起15Bを受け入れて係合する係合凹部25Cが形成されている。即ち、雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とを嵌合させる際に、ロックアーム25Bの先端部が係合部15の梁部15A下側に入り込み、梁部15A及びロックアーム25Bが弾性変形しつつ、係合突起15Bと係合凹部25Cとが係合することで、雄型コネクタ1と雌型コネクタ2との嵌合がロックされる。一方、ロックアーム25Bを押圧して弾性変形させ、係合凹部25Cと係合突起15Bとの係合を外すことでロックが解除され、雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とを引き抜くことができる。
【0038】
以上の雄型コネクタ1と雌型コネクタ2との嵌合手順としては、先ず、コネクタハウジング12に複数の雄端子11を収容して雄型コネクタ1を組み立て、コネクタハウジング22に複数の雌端子21を収容するとともに、スペーサ23をスペーサ収容室に本係止位置まで挿入して雌型コネクタ2を組み立てておく。このような雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とを互いの前面側、つまり雄型コネクタ1の嵌合凹部14側と、雌型コネクタ2のコネクタハウジング22の前面壁22A側とを対向させ、嵌合方向Xに沿って互いに接近させつつ嵌合凹部14に嵌合凸部24Aを挿入する。この際、嵌合凹部14の内側面部16と嵌合凸部24Aの外側面部26とは、互いに摺接するか微小な隙間を介して近接しつつ相対移動する。
【0039】
具体的には、図3に示すように、内側面部16と外側面部26とにおける各々の第一内側面16Aに第一外側面26Aが沿い、第二内側面16Bに第二外側面26Bが沿い、第一副内側面16Cに第一副外側面26Cが沿い、第二副内側面16Dに第二副外側面26Dが沿い、第三内側面16Eに第三外側面26Eが沿って、嵌合凹部14に嵌合凸部24Aが挿入される。即ち、嵌合凹部14の第一段部17に嵌合凸部24Aの第二段部27が近接対向した状態で嵌合方向Xに相対移動することとなる。さらに、嵌合凹部14の突条18が嵌合凸部24Aの案内溝28に挿通されて案内されることで、第二交差方向Zに沿った嵌合凹部14と嵌合凸部24Aとの相対移動が規制されている。
【0040】
このように嵌合凹部14と嵌合凸部24Aとの各面が互いに近接対向することから、嵌合方向X以外の方向への移動や回転が規制された状態で、雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とを互いにさらに押圧して、嵌合凹部14に嵌合凸部24Aを深く挿入する。これにより、雄型コネクタ1の複数の雄端子11がそれぞれ対応した雌型コネクタ2の雌端子21に挿入されるとともに、係合部15とロック部25とが係合して雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とが嵌合状態でロックされる。以上のように、雌型コネクタ2のスペーサ23が本係止位置まで挿入され、該スペーサ23が嵌合凸部24Aから突出していない状態であれば、雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とを円滑に嵌合させることができる。
【0041】
一方、図4に示すように、雌型コネクタ2のスペーサ23が本係止位置まで挿入されずに、該スペーサ23の第一スペーサ外面部23Bが第一外側面26Aから突出し、第二スペーサ外面部23Cが第二副外側面26Dから突出した状態(中途挿入状態)では、スペーサ23の規制部が雌端子21に当接せず、雌端子21がコネクタハウジング22から抜け出す可能性がある。このようなスペーサ23の中途挿入状態で雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とを嵌合させようとすると、突出した第一スペーサ外面部23Bが嵌合凹部14の第一内側面16A近傍に当接し、第二スペーサ外面部23Cが第二副内側面16D近傍に当接することで、嵌合凸部24Aを円滑に挿入することができず、スペーサ23の中途挿入状態であることが検知できる。
【0042】
この際、突条18が案内溝28に挿通されて案内されることにより、第二交差方向Zに沿った嵌合凹部14と嵌合凸部24Aとの相対移動が規制されているので、その第二交差方向Zに突出した第一スペーサ外面部23B及び第二スペーサ外面部23Cが嵌合凹部14に当接しやすくなって、スペーサ23の中途挿入状態を高精度に検知することができる。また、第一スペーサ外面部23Bが突出する第一外側面26Aを挟んで、左右に第二スペーサ外面部23Cが突出する第二副外側面26Dが設けられ、即ち、嵌合凹部14の第一段部17と嵌合凸部24Aの第二段部27とが左右対称で設けられているので、嵌合凹部14に挿入する際に嵌合凸部24Aが回転したり傾斜したりした場合であっても、スペーサ23の中途挿入状態を容易に検知することができる。
【0043】
本実施形態によれば、スペーサ23が中途挿入状態のままで雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とを嵌合させようとしても、嵌合凸部24Aの互いに異なる位置から突出する第一スペーサ外面部23B及び第二スペーサ外面部23Cが嵌合凹部14に当接することで、スペーサ23の中途挿入状態を高精度に検知することができる。即ち、嵌合凹部14の第一段部17と嵌合凸部24Aの第二段部27とが近接対向するように形成するとともに、第二段部27の第二副外側面26Dから第二スペーサ外面部23Cが突出し、この第二副外側面26Dよりも第二交差方向Zにずれた第一外側面26Aから第一スペーサ外面部23Bが突出することで、これらが嵌合凹部14と当接しやすくなってスペーサ23の中途挿入状態の検知精度を高めることができる。従って、スペーサ23が中途挿入状態のままで雄型コネクタ1と雌型コネクタ2とが嵌合されることを未然に防ぎ、本係止位置に挿入し直したスペーサ23によって雌端子21の移動を確実に規制することで、コネクタハウジング22からの雌端子21の抜け出しを防止することができる。
【0044】
なお、前記実施形態では、雄型端子金具である雄端子11を備えた雄型コネクタ1を第一コネクタとし、雌型端子金具である雌端子21を備えた雌型コネクタ2を第二コネクタとしたが、本発明における第一及び第二のコネクタが備える端子金具の形態は限定されない。即ち、第一コネクタが雌型端子金具を備え、第二コネクタが雄型端子金具を備えたものであってもよく、各コネクタに設けられる端子金具の形態は任意に選択することが可能である。
【0045】
また、前記実施形態では、雌型コネクタ2にスペーサ23を設けたが、雄型コネクタ1にもスペーサを設けてもよい。この場合に、雄型コネクタ1に設けたスペーサが仮係止位置にある場合に、このスペーサが嵌合凹部14の内部に突出するように構成すれば、突出したスペーサと雌型コネクタ2の嵌合凸部24Aとの当接によって、スペーサの中途挿入状態を検知することができる。
【0046】
また、前記実施形態では、雄型コネクタ1及び雌型コネクタ2には、それぞれ13個の雄端子11及び雌端子21が設けられていたが、端子金具の数や配列などは特に限定されない。
【0047】
また、前記実施形態の雌型コネクタ2では、嵌合凸部24Aが正面視で凸字形の八角柱状に形成され、これに対応した嵌合凹部14を有して雄型コネクタ1が形成されていたが、嵌合凹部や嵌合凸部の形状としては、前記実施形態に限定されない。即ち、嵌合凹部の第一段部及び嵌合凸部の第二段部は、それぞれ1箇所ずつに設けられてもよいし、3箇所以上に設けられてもよい。
【0048】
さらに、第一段部を構成する第一副内側面16Cと第二副内側面16Dとが、互いに直交するものに限らず、これと同様に、第二段部を構成する第一副外側面26Cと第二副外側面26Dとが互いに直交していなくてもよい。即ち、第一段部及び第二段部の形状や、設置箇所、設置数は、前記実施形態に限定されるものではなく、前述したような本発明の作用効果を得られる範囲において適宜に変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るコネクタユニットは、例えば自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成するコネクタや、電子機器側に設けられてワイヤハーネス等が接続されるコネクタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 雄型コネクタ(第一コネクタ)
2 雌型コネクタ(第二コネクタ)
11 雄端子(第一端子金具)
12 コネクタハウジング(第一コネクタハウジング)
14 嵌合凹部
16 内側面部
16A 第一内側面
16B 第二内側面
16C 第一副内側面
16D 第二副内側面
17 第一段部
18 突条
21 雌端子(第二端子金具)
22 コネクタハウジング(第二コネクタハウジング)
23 スペーサ
24A 嵌合凸部
26 外側面部
26A 第一外側面
26B 第二外側面
26C 第一副外側面
26D 第二副外側面
27 第二段部
28 案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端子金具を収容する第一コネクタハウジングを有した第一コネクタと、第二端子金具を収容する第二コネクタハウジングを有した第二コネクタとを備え、該第一コネクタ及び該第二コネクタを互いに対向させつつ嵌合方向に押圧することで嵌合可能なコネクタユニットであって、
前記第二コネクタは、前記第二端子金具が前記第二コネクタハウジング内から抜け出ることを許容する仮係止位置と、前記第二端子金具が前記第二コネクタハウジングから抜け出ることを規制する本係止位置と、に渡って移動自在に設けられるスペーサを備え、
前記第一コネクタハウジングは、嵌合方向に沿って延びるとともに略環状に形成される内側面部を有した嵌合凹部を備え、前記内側面部は、嵌合方向と直交して内方に突出した第一段部を有して形成され、
前記第二コネクタハウジングは、嵌合方向に沿って延びるとともに略柱状に形成される外側面部を有した嵌合凸部を備え、前記外側面部は、前記第一段部に対応して内方に凹んだ第二段部を有して形成され、
前記スペーサは、仮係止位置において、前記嵌合凸部の前記外側面部の一部と前記第二段部との少なくとも2箇所から突出し、本係止位置において、前記外側面部に没入するか又は該外側面部とフラットに設けられることを特徴とするコネクタユニット。
【請求項2】
前記嵌合凹部の前記第一段部と、前記嵌合凸部の前記第二段部と、の一方には、嵌合方向に沿って延びる案内溝が形成され、他方には、前記案内溝に挿通される突条が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタユニット。
【請求項3】
前記嵌合凹部の内側面部は、嵌合方向と直交しかつ互いに交差する第一交差方向及び第二交差方向のうち、第一交差方向に沿った第一内側面と、第二交差方向に沿った第二内側面と、前記第一内側面に交差して該嵌合凹部の内方に延びる第一副内側面と、第二内側面に交差して該嵌合凹部の内方に延びて前記第一副内側面に連続する第二副内側面と、を備え、前記第一副内側面及び前記第二副内側面によって前記第一段部が構成され、
前記嵌合凸部の外側面部は、前記嵌合凹部と嵌合した状態において、前記第一内側面と近接対向する第一外側面と、前記第二内側面と近接対向する第二外側面と、前記第一副内側面と近接対向する第一副外側面と、前記第二副内側面と近接対向する第二副外側面と、を備え、前記第一副外側面及び前記第二副外側面によって前記第二段部が構成され、
前記第一外側面と前記第二副外側面とから仮係止位置にある前記スペーサが突出可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタユニット。
【請求項4】
前記嵌合凹部の内側面部において、前記第二内側面が互いに対向する一対で設けられ、前記第一副内側面が前記第一内側面の両端に連続して一対で設けられ、該一対の第一副内側面の各々と前記一対の第二内側面の各々とに渡って前記第二副内側面が一対で設けられ、
前記嵌合凸部の外側面部において、前記第二外側面が前記一対の第二内側面の各々に対応して一対で設けられ、前記第一副外側面が前記一対の第一副内側面の各々に対応して一対で設けられ、前記第二副外側面が前記一対の第二副内側面の各々に対応して一対で設けられていることを特徴とする請求項3に記載のコネクタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62104(P2013−62104A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199071(P2011−199071)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】