説明

コネクタ構造及び信号伝送装置

【課題】付加的な部品を用いることなく、差動信号の伝送における波形劣化を改善することができるコネクタ構造を提供する。
【解決手段】コネクタ30にフラットケーブル20の接続部20aを挿入して接続し、送信デバイス14からプリント配線基板10上の差動伝送線路15A,15Aに差動信号を入力すると、差動信号は差動伝送線路15A,15Aを伝送し、差動伝送線路15A,22A間の電磁結合若しくは静電結合又はそれらの両方により、フラットケーブル20の差動伝送線路22,22に伝達し、受信デバイス2に受信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ構造及び信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックプレーン基板上の長い配線や長距離ケーブルを伝搬するアナログ信号は、周波数が高くなるほど減衰が大きくなる。従って、平坦な周波数特性の信号を送信しても、受信端では高域側が減衰して受信される。その理由は、高周波損失、特に、誘電体損と表皮効果にあり、この減衰による特性は、概ね信号の周波数及び線路長に比例して大きくなるため、一般に、「ルートf特性」などと呼ばれている。
【0003】
ディジタル伝送の高速化においても、上記した高周波損失が阻害要因になる。そこで、一般には、非特許文献1に記載されるように、低域遮断特性の受動素子によるイコライザを伝送経路に挿入し、周波数特性の補償を行っている。
【0004】
また、伝送信号の周波数の減衰帯域を設定する第1の抵抗及び第1のコンデンサを並列接続し、第1の抵抗及び第1のコンデンサに上記周波数の減衰帯域の傾きを設定する第2の抵抗を並列接続し、且つ第1の抵抗に他端を接地する第1のコイルを直列接続してなる第1のフィルタと、この第1のフィルタと同一構成を有して第1のフィルタに直列接続された第2のフィルタとを有する等化フィルタを備えた信号送信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、信号経路に対して直列接続された2つの可変抵抗とコンデンサを並列接続し、可変抵抗の中間接続点とアース間に可変抵抗とインダクタを直列接続したイコライザ回路も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−136028号公報
【特許文献2】特開2003−168944号公報
【非特許文献1】MAXIM社 データシート「MAX3787バックプレーン及びケーブル用1Gbps〜12.5Gbpsパッシブイコライザ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、付加的な部品を用いることなく、差動信号の伝送における波形劣化を改善することができるコネクタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下のコネクタ構造を提供する。
【0008】
[1]差動信号を伝送する第1の差動伝送線路を有する第1の接続部と、前記第1の接続部に機械的に接続されたとき、前記第1の差動伝送線路との間の電磁結合若しくは静電結合又はそれらの両方により前記差動信号を伝達する第2の差動伝送線路を有する第2の接続部とを備えたコネクタ構造。
【0009】
[2]前記第1及び第2の差動伝送線路は、第1及び第2の接続部を機械的に接続したとき、空間を介して対向するように配置された前記[1]に記載のコネクタ構造。
【0010】
[3]前記第1及び第2の差動伝送線路のうち前記差動信号を受信する側の差動伝送線路の受信デバイス側の終端間、および前記差動信号を送信する側の差動伝送線路の送信デバイスと反対側の終端間はそれぞれ終端抵抗によって接続されている前記[1]に記載のコネクタ構造。
【0011】
[4]前記第1及び第2の差動伝送線路のうち前記差動信号を受信する側の差動伝送線路は、前記差動信号を送信する側の差動伝送線路の減衰特性と逆特性になるように線路幅、線路長、間隔が設定されていることを特徴とする前記[1]に記載のコネクタ構造。
【0012】
[5]前記第1の接続部は、前記第1の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられ、前記第2の接続部は、前記第2の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられた前記[1]に記載のコネクタ構造。
【0013】
[6]前記第1及び第2の接続部の一方の接続部は、前記第1又は第2の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられ、前記第1及び第2の接続部の他方の接続部は、前記第1又は第2の差動伝送線路を有する基板に設けられた前記[1]に記載のコネクタ構造。
【0014】
[7]差動信号を送信する差動信号送信回路と、前記差動信号送信回路から送信された前記差動信号を伝送する第1の差動伝送線路を有する第1の接続部と、前記第1の接続部に機械的に接続されたとき、前記第1の差動伝送線路との間の電磁結合若しくは静電結合又はそれらの両方により前記差動信号を伝達する第2の差動伝送線路を有する第2の接続部と、前記第2の差動伝送線路が伝送する前記差動信号を受信する差動信号受信回路とを備えた信号伝送装置。
【0015】
[8]さらに、前記第1の差動伝送線路に高周波電流を印加する発振回路と、前記第2の差動伝送線路に接続された整流回路とを備えた前記[7]に記載の信号伝送装置。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、7に記載の発明によれば、付加的な部品を用いることなく、差動信号の伝送における波形劣化を改善することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、接続時の線路間の接触摩耗を防ぐことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、反射波を抑制することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、差動信号の減衰を補正することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、差動信号の送信側及び受信側にケーブルを用いることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、差動信号の送信側及び受信側の一方にケーブル、他方に基板を用いることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、差動信号受信回路側の電源を不要にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態に係るコネクタ構造は、差動信号を伝送する第1の差動伝送線路を有する第1の接続部と、第1の接続部に機械的に接続されたとき、第1の差動伝送線路との間の電磁結合若しくは静電結合又その両方により差動信号を伝達する第2の差動伝送線路を有する第2の接続部とを備える。
【0024】
第1及び第2の差動伝送線路は、第1及び第2の接続部を接続したとき、空間を介して対向するように配置されていてもよく、誘電体を介して対向するように配置されていてもよい。
【0025】
第1及び第2の差動伝送線路のうち差動信号を受信する側の差動伝送線路は、差動信号を送信する側の差動伝送線路の減衰特性と逆特性になるように線路幅、線路長、間隔が設定されている。
【0026】
第1の接続部は、第1の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられ、第2の接続部は、第2の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられていてもよい。また、第1及び第2の接続部の一方の接続部は、第1又は第2の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられ、第1及び第2の接続部の一方の接続部は、第1又は第2の差動伝送線路を有する基板に設けたものでもよい。
【0027】
第1又は第2の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けた第1又は第2の接続部は、相手の第2又は第1の接続部に機械的に接続できる構造を有していればよく、例えば、ケーブルの端部そのものでもよい。
【0028】
第1及び第2の接続部の接続方法は、係止片を係合溝に係合させる方法や、ねじを用いる方法や、ばねを用いる方法でもよい。
【0029】
上記の構成において、第1の接続部と第2の接続部とを接続し、第1の差動伝送線路に差動信号を入力すると、差動信号は第1の差動伝送線路を伝送し、第1及び第2の差動伝送線路間の電磁結合若しくは静電結合又はそれらの両方により、第2の差動伝送線路に伝達する。第2の差動伝送線路に伝達した差動信号は、第2の差動伝送線路を伝送する。
【0030】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコネクタ構造を適用した信号伝送装置を示す断面図である。なお、図1及び後述する図面においては、形状及び配置を分かり易くするため、差動伝送線路の厚みを誇張して図示している。
【0031】
この信号伝送装置1は、プリント配線基板10上の送信デバイス14から出力された差動信号をフラットケーブル20を介して受信デバイス2に伝送するものである。
【0032】
また、信号伝送装置1は、プリント配線基板10上に設けられたコネクタ(第1の接続部)30と、フラットケーブル20の接続部(第2の接続部)20aとを接続可能なコネクタ構造を有する。
【0033】
フラットケーブル20は、ポリエステル樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁基材21と、絶縁基材21の裏面21aに形成された差動伝送線路(第2の差動伝送線路)22,22と、差動伝送線路22,22の受信デバイス2側の終端間に接続された終端抵抗23とを備える。差動伝送線路22,22は、銅箔等による帯状の一対の配線パターンにより構成されている。
【0034】
プリント配線基板10は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁基材11と、絶縁基材11の表面11aに形成された複数の電極パッド12と、複数の電極パッド12に半田ボール13を介して接続された上記送信デバイス14と、絶縁基材11の表面11aに設けられた上記コネクタ30とを備える。
【0035】
また、プリント配線基板10は、コネクタ30の内部の絶縁基材11の表面11aに形成された差動伝送線路(第1の差動伝送線路)15A,15Aと、差動伝送線路15A,15Aの一端に一端が接続された差動伝送線路15B,15Bと、絶縁基材11の裏面11bに形成され、差動伝送線路15B,15Bの他端に一端が接続された差動伝送線路15C,15Cと、差動伝送線路15C,15Cの他端に一端が接続され、他端が複数の電極パッド12のうち2つの電極パッド12に接続された差動伝送線路15D,15Dと、差動伝送線路15A,15Aの他端に一端が接続された伝送線路16,16と、絶縁基材11の裏面11bに設けられ、伝送線路16,16の他端に接続された終端抵抗17とを備える。
【0036】
終端抵抗17は、差動伝送線路15A,15A及び伝送線路16,16と同一のインピーダンスを有しており、例えば、50Ωの抵抗を用いている。
【0037】
絶縁基材11の表面11a及び裏面11bに設けられた差動伝送線路15A,15A,15C,15Cは、銅箔等による帯状の配線パターンにより形成することができる。絶縁基材11内に垂直に設けられた差動伝送線路15B,15B,15D,15D、及び伝送線路16,16は、スルーホールめっきによって形成することができる。
【0038】
受信デバイス2は、例えば、LSI(Large Scale Integration)チップにより構成されており、フラットケーブル20を介して受信した差動信号を増幅する差動信号受信回路(図示せず)と、差動信号受信回路からの出力信号を波形整形する波形整形回路(図示せず)とを備える。
【0039】
コネクタ30は、ポリカーボネート等の樹脂から形成されたコネクタハウジング31を有する。コネクタハウジング31は、差動伝送線路15A,15Aと、差動伝送線路15A,15Aの長さに対応した長さのフラットケーブル20の接続部20aとを収容する収容部31aを有する。
【0040】
図2は、送信デバイス14から受信デバイス2に至る差動信号の伝送路の部分のみを示す斜視図である。フラットケーブル20の差動伝送線路22,22は、差動伝送線路15C,15Cと比べて長い線路長を有している。フラットケーブル20の少なくとも接続部20aの差動伝送線路22,22は、例えば、厚さ1〜100μm、幅10〜500μmを有し、所定の距離10〜500μmを隔てて互いに平行に配置されている。接続部20aの長さは、伝達損失を少なくする観点よりある程度の長さ、例えば、5000μmを必要とする。
【0041】
差動伝送線路22,22の終端間に接続された終端抵抗23は、差動伝送線路22,22の特性インピーダンスと同一のインピーダンスを有しており、例えば、50Ωの抵抗を用いている。
【0042】
差動伝送線路15A,15Aは、例えば、厚さ1〜100μm、幅10〜500μmを有し、所定の距離10〜500μmを隔てて互いに平行に配置されている。また、差動伝送線路15A,15Aは、フラットケーブル20の接続部20aの差動伝送線路22,22との間は、例えば、所定の距離5〜100μmを隔てて対向して配置されている。
【0043】
図3は、コネクタ30を示し、(a)は、図1のA−A線断面図、(b)は、(a)のB−B線断面図である。
【0044】
コネクタハウジング31は、プリント配線基板10の絶縁基材11の表面11aに設けられた下部31bと、下部31b上に設けられた側部31cと、側部31c上に設けられた上部31dとを備える。
【0045】
コネクタ30は、収容部31a内に一対のばね32を備えており、一対のばね32によりフラットケーブル20の絶縁基材21をコネクタハウジング31の下部31bへ押圧するように構成されている。
【0046】
図4は、図1のフラットケーブル20の接続部20aの結合線路部の単位長あたりの等価回路である。本等価回路は集中定数回路ではなく分布定数回路をなしており、単位長あたりの等価回路が連なったものとして記述される。
【0047】
すなわち、差動伝送線路22,22及び差動伝送線路15C,15Cの4本の線路全てについて、単位長あたりの自己インダクタンス、抵抗、全ての組み合わせの相互インダクタンス、線間容量を定義した梯子モデルとなる。
【0048】
等価回路は、差動伝送線路22,22に対応する抵抗41A,41B及びインダクタ43A,43Bと、差動伝送線路15A,15Aに対応する抵抗41C,41D及びインダクタ43C,43Dと、差動伝送線路22,22間に存在するコンデンサ42Aと、差動伝送線路22と差動伝送線路15A,15Aとの間に存在するコンデンサ42B,42C,42D,42Eと、差動伝送線路15A,15A間に存在するコンデンサ42Fとにより表すことができる。各インダクタ43A〜43Dは、他の各インダクタとの間の相互インダクタンスをも有している。
【0049】
図4から明らかなように、等価回路は、差動伝送線路22,22と差動伝送線路15A,15A自身及び他の線路との間に存在する抵抗、コンデンサ及びインダクタによって表され、別途追加した部品は存在しない。従って、等価回路の各定数は、差動伝送線路22,22、及び差動伝送線路15A,15Aの寸法、形状、線間距離等によって決定することができる。
【0050】
図5は、図4の等価回路の減衰特性を示す特性図である。図5において、特性aは、フラットケーブル20の差動伝送線路22,22の減衰量−周波数特性を示し、特性bは、プリント配線基板10の差動伝送線路15A,15Aの減衰量−周波数特性を示している。そして、特性cは、特性aと特性bを合成した減衰量−周波数特性である。
【0051】
特性aに示すように、差動伝送線路22,22は、周波数fが高くなるにつれて減衰量が徐々に増大する。一方、特性bに示すように、差動伝送線路15A,15Aは、周波数fが高くなるにつれて接続部20aの差動伝送線路22,22と差動伝送線路15A,15Aとの間の静電結合や電磁結合が大きくなるために減衰量が徐々に減少し、或る周波数fh以上では、ほぼ一定になる。
【0052】
以上のように、特性aと特性bとでは、特性が逆であるため、両者を組み合わせると、数kz帯(fl)から800MHz帯(fh)まで平坦で、且つ、それ以上の周波数域でもほぼ平坦な特性cが得られ、全周波数でほぼ平坦な減衰量の特性を得ることができる。
【0053】
特性bの低周波数域の減衰量は、差動伝送線路22,22、差動伝送線路15A,15Aのそれぞれの幅、長さ、ペア線路間の間隔、差動伝送線路22,22と差動伝送線路15A,15Aとの間の距離等を適宜変更することにより、調整することができる。
【0054】
(第1の実施の形態の動作)
次に、第1の実施の形態に係る信号伝送装置1の動作を説明する。
【0055】
まず、フラットケーブル20の接続部20aをコネクタ30の収容部31aに差し込むと、フラットケーブル20の絶縁基材21は、ばね32によってコネクタ30に保持され、フラットケーブル20がコネクタ30に機械的に接続される。
【0056】
そして、送信デバイス14から送信信号として差動信号が出力されると、差動信号は、半田ボール13、電極パッド12、及び差動伝送線路15D,15D、15C,15C、15B,15B、15A,15Aを伝送する。
【0057】
差動伝送線路15A,15Aを伝送する差動信号は、差動伝送線路15A,15Aの終端に向かって進行し、整合負荷となる終端抵抗17に到達する。
【0058】
これと同時に、差動信号は、差動伝送線路15A,15Aを伝送する過程で、フラットケーブル20の差動伝送線路22,22との間の誘導性結合若しくは容量性結合、又は誘導性結合及び容量性結合の両方により差動伝送線路15A,15Aから差動伝送線路22,22に伝達し、受信デバイス2に入力する。受信デバイス2に力した差動信号は、差動信号受信回路で増幅された後、波形整形回路等へ出力される。
【0059】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るコネクタ構造を適用した信号伝送装置の要部を示し、(a)は、コネクタ分離状態を示す斜視図、(b)は、コネクタ接続状態を示す斜視図である。図7は、図6(b)のC−C線断面図である。
【0060】
この信号伝送装置1は、図示しない送信デバイスから出力された差動信号を第1のフラットケーブル5A及び第2のフラットケーブル5Bを介して図示しない受信デバイスに伝送するものである。
【0061】
また、信号伝送装置1は、第1のフラットケーブル5Aの端部に設けられた第1のコネクタ(第1の接続部)6Aと、第2のフラットケーブル5Bの端部に設けられた第2のコネクタ(第2の接続部)6Bとを接続可能なコネクタ構造を有する。
【0062】
第1のフラットケーブル5Aは、ポリエステル樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁基材50Aと、絶縁基材50Aの表面50aに形成された銅等の配線パターンからなる第1の差動伝送線路51A,51Aと、第1の差動伝送線路51A,51Aの終端間に接続された後述する終端抵抗とを備える。
【0063】
第2のフラットケーブル5Bは、ポリエステル樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁基材50Bと、絶縁基材50Bの裏面50bに形成された銅等の配線パターンからなる第2の差動伝送線路51B,51Bと、第2の差動伝送線路51B,51Bの受信デバイス側の終端間に接続された終端抵抗とを備える。
【0064】
第1のコネクタ6Aは、ポリカーボネート等の樹脂から形成された第1のコネクタハウジング60Aを有している。第1のコネクタハウジング60Aは、第1のフラットケーブル5Aを収容するケーブル収容部61と、後述する第2のコネクタハウジングが嵌合する嵌合部62と、第2のコネクタ6Bの係止片が係合する一対の係合溝63,63とを備える。
【0065】
第2のコネクタ6Bは、ポリカーボネート等の樹脂から形成された第2のコネクタハウジング60Bを有している。第2のコネクタハウジング60Bは、第2のフラットケーブル5Bを収容するケーブル収容部64と、第1のコネクタ6Aの係合溝63,63に係合する一対の係止片65,65とを備える。
【0066】
図8は、第1のフラットケーブル5Aから第2のフラットケーブル5Bに至る差動信号の伝送路の部分のみを示す斜視図である。
【0067】
第1のフラットケーブル5Aの少なくとも第1のコネクタ6A内の第1の差動伝送線路51A,51Aは、例えば、厚さ1〜100μm、幅10〜500μmを有し、所定の距離10〜500μmを隔てて互いに平行に配置されている。
【0068】
終端抵抗52Aは、第1の差動伝送線路51A,51Aの特性インピーダンスと同一のインピーダンスを有しており、例えば、50Ωの抵抗を用いている。
【0069】
受信デバイス側の終端抵抗は、第2の差動伝送線路51B,51Bの特性インピーダンスと同一のインピーダンスを有しており、例えば、50Ωの抵抗を用いている。
【0070】
第2のフラットケーブル5Bの少なくとも第2のコネクタ6B内の第2の差動伝送線路51B,51Bは、例えば、厚さ1〜100μm、幅10〜500μmを有し、所定の距離10〜500μmを隔てて互いに平行に配置されている。また、第1及び第2のコネクタ6A,6Bを接続したとき、第2の差動伝送線路51B,51Bは、第1のフラットケーブル5Aの第1の差動伝送線路51A,51Aとの間は、例えば、所定の距離5〜100μmを隔てて対向して配置される。第1の差動伝送線路51A,51Aと第2の差動伝送線路51B,51Bが重なる長さは、伝達損失を少なくする観点よりある程度の長さ、例えば、5000μmを必要とする。
【0071】
[第3の実施の形態]
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置を示す接続図である。本実施の形態は、第1の実施の形態において、送信側から受信側に電源供給を行うための電源供給回路を追加したものである。
【0072】
電源供給回路70は、送信デバイス14側に設置されて、所定周波数の連続波を発生し、これをプリント配線基板10上の差動伝送線路15A,15Aの一端へ出力する発振手段としての発振回路71と、フラットケーブル20の差動伝送線路22,22の他端に接続されて、差動伝送線路15A,15Aから差動伝送線路22,22に誘導された高周波信号を整流して直流電圧を得る整流回路72とを備えて構成されている。
【0073】
発振回路71は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxcide Semiconductor)デバイス、抵抗(R)及びコンデンサ(C)を用いて構成されており、f=1/(2.2CR)の周波数の信号を発振する。なお、発振回路71は、送信デバイス14内のクロック回路の出力を代用することもできる。
【0074】
整流回路72は、同一仕様の4つのダイオード721A〜721Dと、その整流出力間に接続された平滑コンデンサ722とを備えて構成されている。線路端のダイオード・ブリッジの実効インピーダンスが整合終端条件に近いことが望ましく、この場合はダイオード入り口側の終端抵抗23は不要となる。
【0075】
ダイオード721A〜721Dは、ブリッジ整流回路を構成しており、同一方向に直列接続されたダイオード721A,721Bの接続点とダイオード721A,721Bの接続点とが差動伝送線路22,22の他端に接続されている。
【0076】
(電源供給回路の動作)
発振回路71が高周波数で発振すると、その発振信号は差動伝送線路15A,15Aの一端に印加される。差動伝送線路15A,15Aには、差動伝送線路22,22が容量結合若しくは誘導結合、又は容量結合及び誘導結合おにより結合されているため、発振回路71からの高周波信号は、差動伝送線路22,22に伝送され、整流回路72に入力される。
【0077】
整流回路72は、差動伝送線路22,22からの高周波信号、即ち交流波をダイオード721A〜721Dで整流した直流電圧を平滑コンデンサ722に印加する。平滑コンデンサ722は、ダイオード721A〜721Dからの脈流波を平滑し、リップル分を除去する。平滑コンデンサ722の端子電圧は、受信デバイス2の差動信号受信回路の電源端子に電源として印加される。
【0078】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、上記第3の実施の形態では、電源生成用の高周波信号の伝送線路と差動信号の伝送線路とを共用化したが、それぞれ別個に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコネクタ構造を適用した信号伝送装置を示す断面図である。
【図2】図2は、送信デバイスから受信デバイスに至る差動信号の伝送路の部分のみを示す斜視図である。
【図3】図3は、コネクタを示し、(a)は、図1のA−A線断面図、(b)は、(a)のB−B線断面図である。
【図4】図4は、図1のフラットケーブルの接続部の結合線路部の単位長あたりの等価回路である。
【図5】図5は、図4の等価回路の減衰特性を示す特性図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態に係るコネクタ構造を適用した信号伝送装置の要部を示し、(a)は、コネクタ分離状態を示す斜視図、(b)は、コネクタ接続状態を示す斜視図である
【図7】図7は、図6(b)のC−C線断面図である。
【図8】図8は、第1のフラットケーブルから第2のフラットケーブルに至る差動信号の伝送路の部分のみを示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置を示す接続図である。
【符号の説明】
【0080】
1…信号伝送装置、2…受信デバイス、5A…第1のフラットケーブル、5B…第2のフラットケーブル、5a,5b…接続部、6A…第1のコネクタ、6B…第2のコネクタ、10…プリント配線基板、11…絶縁基材、11a…表面、11b…裏面、12…電極パッド、13…半田ボール、14…送信デバイス、15A〜15D…差動伝送線路、16…伝送線路、17…終端抵抗、20…フラットケーブル、20a…接続部、21…絶縁基材、21a…裏面、22…差動伝送線路、23…終端抵抗、30…コネクタ、31…コネクタハウジング、31a…収容部、31b…下部、31c…側部、31d…上部、41A〜41D…抵抗、42A〜42F…コンデンサ、43A〜43D…インダクタ、50A,50B…絶縁基材、50a…表面、50b…裏面、51A…第1の差動伝送線路、51B…第2の差動伝送線路、52A…終端抵抗、60A…第1のコネクタハウジング、60B…第2のコネクタハウジング、61…ケーブル収容部、62…嵌合部、63…係合溝、64…ケーブル収容部、65…係止片、70…電源供給回路、71…発振回路、72…整流回路、721A〜721D…ダイオード、722…平滑コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号を伝送する第1の差動伝送線路を有する第1の接続部と、
前記第1の接続部に機械的に接続されたとき、前記第1の差動伝送線路との間の電磁結合若しくは静電結合又はそれらの両方により前記差動信号を伝達する第2の差動伝送線路を有する第2の接続部とを備えたコネクタ構造。
【請求項2】
前記第1及び第2の差動伝送線路は、第1及び第2の接続部を機械的に接続したとき、空間を介して対向するように配置された請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
前記第1及び第2の差動伝送線路のうち前記差動信号を受信する側の差動伝送線路の受信デバイス側の終端間、および前記差動信号を送信する側の差動伝送線路の送信デバイスと反対側の終端間はそれぞれ終端抵抗によって接続されている請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
前記第1及び第2の差動伝送線路のうち前記差動信号を受信する側の差動伝送線路は、前記差動信号を送信する側の差動伝送線路の減衰特性と逆特性になるように線路幅、線路長、間隔が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項5】
前記第1の接続部は、前記第1の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられ、
前記第2の接続部は、前記第2の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられた請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項6】
前記第1及び第2の接続部の一方の接続部は、前記第1又は第2の差動伝送線路を有するケーブルの端部に設けられ、
前記第1及び第2の接続部の他方の接続部は、前記第1又は第2の差動伝送線路を有する基板に設けられた請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項7】
差動信号を送信する差動信号送信回路と、
前記差動信号送信回路から送信された前記差動信号を伝送する第1の差動伝送線路を有する第1の接続部と、
前記第1の接続部に機械的に接続されたとき、前記第1の差動伝送線路との間の電磁結合若しくは静電結合又はそれらの両方により前記差動信号を伝達する第2の差動伝送線路を有する第2の接続部と、
前記第2の差動伝送線路が伝送する前記差動信号を受信する差動信号受信回路とを備えた信号伝送装置。
【請求項8】
さらに、前記第1の差動伝送線路に高周波電流を印加する発振回路と、
前記第2の差動伝送線路に接続された整流回路とを備えた請求項7に記載の信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−28597(P2010−28597A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189288(P2008−189288)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】