説明

コネクタ部材

【課題】リテーナのヒンジの破損を防いで耐久性・信頼性を高めるとともに、コネクタの嵌合作業をスムーズに行うことのできるコネクタ部材を提供することを目的とする。
【解決手段】ランスハウジング30において、リテーナ40の先端部40aの近傍にガイド壁39、39を設けるようにし、雄型コネクタ50の嵌合凹部53に、雌型コネクタ10を挿入していくときには、雌型コネクタ10をスムーズに挿入・嵌合させる。
また、ガイド壁39、39により、それらの間のリテーナ40が雄型コネクタ50のハウジング51に干渉するのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば配線基板に電線を接続するのに用いるコネクタ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、雄型コネクタと、この雄型コネクタに嵌合する雌型コネクタとが、例えば、自動車用の各種電子機器の回路基板と電線とを電気的に接続する目的で用いられている。
ここで、雄型コネクタ、雌型コネクタは、いずれも、樹脂等の絶縁材料からなるハウジングに、金属等の導電性材料からなる端子が複数本収容され、それぞれの端子に配線の一端が接続されているのが一般的である。
【0003】
近年においては、かかる自動車用の回路基板と電線とを電気的に接続する目的で用いられるコネクタにおいて、小型化が要求されている。
コネクタにおいては、端子のハウジングからの抜けを防止するため、ハウジングにランス(突起)が設けられている。コネクタの小型化に伴って内部構造が高密度化されるため、端子が小型化し、その結果、ランスも小型化することになる。ランスを小型化してしまうと端子を保持し得る力が小さくなり、端子の抜けを防止する機能も低下してしまう。
【0004】
そこで、ハウジングにリテーナを設け、リテーナにより、ハウジングに保持された端子の抜けを防止することが行われている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
図10に示すように、ハウジング1には、複数の端子を保持するためのスロット2が間隔を隔てて形成されている。各スロット2内には、電線の端部に接続された端子が挿入・保持されている。
そして、ハウジング1の一面側において、スロット2に挿入された各端子に臨む部分に開口3が形成されている。リテーナ4は、この開口3を塞ぐとともに、開口3内の端子を押さえ込んで保持する。
このようなリテーナ4は、ヒンジ5を介してハウジング1に一体に形成されている。リテーナ4は、ヒンジ5を中心に揺動することで、開口3から離間した状態と、開口3を塞いだ状態とで、開口3を開閉可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−8004号公報
【特許文献2】特開2001−332333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リテーナ4を備えたハウジング1の場合、相手側コネクタのハウジングと嵌合させるときに、リテーナ4のヒンジ5が相手側コネクタのハウジングと衝突し、破損してしまうことがある。
また、このヒンジ5が相手側コネクタのハウジングと干渉することにより、コネクタの嵌合作業がスムーズに行えないこともある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、リテーナのヒンジの破損を防いで耐久性・信頼性を高めるとともに、コネクタの嵌合作業をスムーズに行うことのできるコネクタ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもとになされた本発明のコネクタ部材は、導電性材料からなり、基端部が電線の一端に接続された端子と、端子の先端部が挿入されるスロットが形成されるとともに、端子の基端部側に臨む凹部が形成された、絶縁性材料からなるハウジングと、ハウジングの凹部に装着され、端子の基端部側の一端部において、ハウジングにヒンジ部を介して回動可能に連結されたリテーナと、を備え、ハウジングに、リテーナの両側に位置して、相手側コネクタに対するハウジングの挿入方向に連続する壁体が設けられていることを特徴とする。
このように、リテーナの両側に壁体を設けることで、相手側コネクタにハウジングを挿入するときに、リテーナが相手側コネクタに干渉して損傷するのを防ぐことができる。
【0009】
ここで、壁体は、ハウジングにおいて、相手側コネクタに対向する側からリテーナに向けて、そのハウジングからの突出高さが漸次高くなり、リテーナ近傍では、当該リテーナと同等以上の突出高さに形成されるよう形成することができる。
【0010】
また、ハウジングは、相手側コネクタに対向する側の第一の面とその反対側の第二の面以外に開口する開口凹部を有したハウジング本体と、ハウジング本体の開口凹部内に嵌め込まれ、端子を保持するリテーナを有したランスハウジングと、を備える二分割構造とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リテーナのヒンジ部の両側に壁体を設けることで、相手側コネクタにハウジングを挿入するときに、リテーナが相手側コネクタに干渉して損傷するのを防ぐことができ、耐久性・信頼性を高めるとともに、コネクタの嵌合作業をスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における雌型コネクタを示す図であり、(a)はロック部材側から見た斜視図、(b)はランスハウジングが収容される側から見た斜視図である。
【図2】図1に示した雌型コネクタを構成するハウジング本体を示す図であり、(a)はロック部材側から見た斜視図、(b)はランスハウジングが収容される側から見た斜視図である。
【図3】図2のハウジング本体を、ランスハウジングが収容される側であって、図2(b)とは反対側から見た斜視図である。
【図4】ランスハウジングを示す図であり、(a)はハウジング本体の収容凹部の底面に対向する側から見た斜視図、(b)はハウジング本体の外部に露出する側から見た斜視図である。
【図5】雌型コネクタを雄型コネクタに嵌合させる前の状態を示す図であり、(b)は雄端子の位置における断面図、および(a)の要部拡大図である。
【図6】ランスハウジングとハウジング本体の係合構造を示す図であり、(a)はランスハウジングの前部に設けられたロック片の位置における断面図、(b)はランスハウジングの後部に設けられたロック片の位置における断面図、(c)はランスハウジングの両側に設けられたロック片の位置における端子挿入方向に直交する断面における断面図である。
【図7】雄型コネクタの斜視図である。
【図8】雌型コネクタと雄型コネクタとが嵌合した状態を示す図であり、ロック部材の位置における断面図である。
【図9】雌型コネクタと雄型コネクタとが嵌合した状態を示す図であり、雄端子の位置における断面図である。
【図10】従来の雌型コネクタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、雌型コネクタ10は、ハウジング本体(ハウジング)20と、ランスハウジング30とから形成されている。
【0014】
図2、図3に示すように、ハウジング本体20は、ブロック状のランスハウジング30を収容するため、一方の側に向けて開口した収容凹部(凹部)21を備えている。
ハウジング本体20において、収容凹部21の四方を囲む壁部22において、後に詳述する雄型コネクタ50に対向する側の前面22aには、雄型コネクタ50の雄端子が挿入される端子挿入孔23が形成され、前面22aに対向する後面22bには、ランスハウジング30で保持する雌端子(端子)31が一端に接続された配線が導出される配線導出孔24が形成されている。
【0015】
また、図2(a)に示すように、ハウジング本体20には、雄型コネクタ50に係合するためのロック部材25が形成されている。このロック部材25は、雄型コネクタ50に対向する側が固定端とされ、その反対側が自由端とされた片持ちビーム25aと、片持ちビーム25aの表面に形成された係合突起25bと、片持ちビーム25aの自由端に形成された操作部25cと、を有する。
【0016】
また、図2、図3に示すように、収容凹部21内には、ランスハウジング30と係合するための係合凹部26、27、28が複数形成されている。
【0017】
図4、図5に示すように、ランスハウジング30には、複数の雌端子31を保持するための筒状のスロット32が複数形成されている。これらスロット32は、ランスハウジング30において雄型コネクタ50に対向する側である前面30aに一端が開口し、前面30aに対向する後面30bに向けて連続して形成されている。これらスロット32は、ランスハウジング30において、前面30aに直交する天面30cと平行な方向に間隔を隔てて並べて配置されている。
【0018】
各スロット32内には、雌端子31が挿入されて保持されている。ランスハウジング30の後面30b側には、天面30c側に開口する凹部33が形成されている。この凹部33は、スロット32の後方に位置しており、スロット32に先端部側が保持された雌端子31の後部が凹部33内に位置している。
【0019】
ランスハウジング30の後面30bには、凹部33内に連通する連通孔34が形成されている。この連通孔34を通して、ランスハウジング30の後方から電線の一端が凹部33内に挿入され、凹部33内の雌端子31に接合されている。
【0020】
ランスハウジング30の天面30cには、凹部33の開口を塞ぐリテーナ40が、ヒンジ部41を介して一体に形成されている。
リテーナ40は、ヒンジ部41を中心として回動自在に設けられた矩形のプレート部42と、プレート部42において、凹部33に対向する側に一体に設けられた突起43とが一体に形成された構成を有している。
ヒンジ部41は、プレート部42において、ランスハウジング30の後面30bに近い側の一辺に沿って設けられている。これにより、リテーナ40は、ランスハウジング30の前面30aに近い側の先端部40aがヒンジ部41を中心として揺動し、凹部33を塞いだ状態と、凹部33(ランスハウジング30の天面30c)から離間した状態とで開閉可能となっている。
【0021】
リテーナ40の突起43をランスハウジング30に押し込んで凹部33を塞ぐと、この状態で、突起43が凹部33内に位置する雌端子31の段部に突き当たる。これによって、電線が引っ張られる等しても、雌端子31がランスハウジング30から引き抜かれるのを防止する。
【0022】
図4(a)、図6に示すように、ランスハウジング30の底面30d側には、ハウジング本体20の収容凹部21に形成された係合凹部26、27、28に係合するロック片36、37、38が複数形成されている。このようなランスハウジング30は、底面30d側からハウジング本体20の収容凹部21に収容し、ロック片36、37、38を係合凹部26、27、38に係合させることで、ハウジング本体20に装着されてこれらが一体化される。
【0023】
また、ランスハウジング30の天面30c側には、リテーナ40の両側に、それぞれガイド壁(壁体)39が形成されている。このガイド壁39は、ランスハウジング30の前面30a側から後面30b側に向けて天面30cから直交する方向への突出高さが漸次高くなり、リテーナ40の先端部40aの近傍においては、先端部40aと同等以上の高さを有するよう形成されている。
【0024】
図7に示すように、雄型コネクタ50は、ハウジング51と、ハウジング51に保持された雄端子52と、から形成されている。
ハウジング51には、雌型コネクタ10のハウジング本体20およびランスハウジング30を受け入れる嵌合凹部53が形成されている。嵌合凹部53の内周面には、ハウジング本体20のロック部材25の係合突起25bが係合するロック爪54が形成されている。雄型コネクタ50の嵌合凹部53に、雌型コネクタ10を挿入していくと、ロック部材25が弾性変形することで、係合突起25bがロック爪54を乗り越える。すると、図8に示すように、ロック部材25の弾性変形が復元し、係合突起25bがロック爪54に噛み合うことで、雌型コネクタ10と雄型コネクタ50が互いに嵌め合う。
そして、ロック部材25の自由端に形成された操作部25cを押圧することで、係合突起25bとロック爪54との係合が解除され、雌型コネクタ10を嵌合凹部53から引き抜くことが可能となっている。
【0025】
また、図5に示すように、嵌合凹部53には、雌型コネクタ10が挿入され、ロック部材25の係合突起25bがロック爪54に係合した状態において、ランスハウジング30の天面30c側から突出したリテーナ40を収容するリテーナ収容段部55が形成されている。
そして、図5(b)に示すように、雄型コネクタ50の嵌合凹部53に、雌型コネクタ10を挿入していくときには、ランスハウジング30に形成された、リテーナ40の両側のガイド壁39、39が、リテーナ収容段部55の端部55aに突き当たる。
ガイド壁39、39はランスハウジング30の前面30a側から後面30b側に向けて、天面30cから直交する方向への突出高さが漸次高くなるよう形成されているので、雌型コネクタ10をさらに挿入していくと、ガイド壁39、39とリテーナ収容段部55の端部55aとが擦れあいながら、雌型コネクタ10が雄型コネクタ50の嵌合凹部53に挿入されていく。
【0026】
そして、雌型コネクタ10が雄型コネクタ50の嵌合凹部53に完全に挿入され、係合突起25bがロック爪54に噛み合った状態では、図9に示すように、ランスハウジング30に保持された雌端子31と、雄型コネクタ50に保持された雄端子52とが電気的に接続される。
【0027】
このようにして、ランスハウジング30において、リテーナ40の先端部40aの近傍にガイド壁39、39を設けるようにしたので、雄型コネクタ50の嵌合凹部53に、雌型コネクタ10を挿入していくときには、雌型コネクタ10をスムーズに挿入・嵌合させることができる。
また、ガイド壁39、39により、それらの間のリテーナ40が雄型コネクタ50のハウジング51に干渉するのを防ぐことができる。これにより、リテーナ40が損傷するのを防ぐことができ、耐久性・信頼性を高めることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、ガイド壁39、39をランスハウジング30に設けるようにしたが、これらガイド壁39、39は、ハウジング本体20に設けることができ、その場合も上記と同様の効果を得ることができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10…雌型コネクタ、20…ハウジング本体(ハウジング)、21…収容凹部(凹部)、22…壁部、30…ランスハウジング、31…雌端子(端子)、32…スロット、33…凹部、39…ガイド壁(壁体)、40…リテーナ、40a…先端部、41…ヒンジ部、50…雄型コネクタ、51…ハウジング、52…雄端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料からなり、基端部が電線の一端に接続された端子と、
前記端子の先端部が挿入されるスロットが形成されるとともに、前記端子の基端部側に臨む凹部が形成された、絶縁性材料からなるハウジングと、
前記ハウジングの前記凹部に装着され、前記端子の前記基端部側の一端部において、前記ハウジングにヒンジ部を介して回動可能に連結されたリテーナと、を備え、
前記ハウジングに、前記リテーナの両側に位置して、相手側コネクタに対する前記ハウジングの挿入方向に連続する壁体が設けられていることを特徴とするコネクタ部材。
【請求項2】
前記壁体は、前記ハウジングにおいて、前記相手側コネクタに対向する側から、前記リテーナに向けて、そのハウジングからの突出高さが漸次高くなり、前記リテーナ近傍では、当該リテーナと同等以上の突出高さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ部材。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記相手側コネクタに対向する側の第一の面とその反対側の第二の面以外に開口する開口凹部を有したハウジング本体と、
前記ハウジング本体の前記開口凹部内に嵌め込まれ、前記端子を保持するリテーナを有したランスハウジングと、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−142089(P2012−142089A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291864(P2010−291864)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】