説明

コネクタ

【課題】外部からの衝撃によってキャップ係止部が損傷しないように保護する。
【解決手段】本発明におけるコネクタは、コネクタハウジング1とリテーナ2とを備えている。コネクタハウジング1は合成樹脂製で、断面横長略方形のブロック状をなす本体部3と、本体部3の外周面に沿って筒状をなす外筒部4とからなる。フード部23の側面において小キャビティ5と対応する側の短辺位置と対向する仕切壁21のうち、上から2段目と3段目の雄タブ挿入孔20に対応するものは、一対のキャップ係止部28,28とされている。キャップ係止部28は、フード部23の前面壁17の内面から後方に向けて突出して設けられ、キャップ係止部28の上縁は撓み規制片13の下面と連結されることにより、撓み可能に形成されている。両キャップ係止部28,28のキャップ係止突部28A,28Aは、小キャビティ5の切欠き部15の前縁に対して係止可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップ状のリテーナを備えたコネクタの一般的構造としては、下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、前後方向に貫通するキャビティを備えたコネクタハウジングを有し、このコネクタハウジングの前面にはキャップ状のリテーナが装着可能となっている。リテーナの外面には弾性係止片が設けられ、コネクタハウジングの外面には弾性係止片に係止可能な係止突起が設けられることによって、リテーナをコネクタハウジングの前面に固定することが可能となっている。
【特許文献1】特開2000−182706公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このものは外部からの衝撃等によって係止部が損傷するおそれがある。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、外部からの衝撃によって係止部が損傷しないように保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに嵌合可能なコネクタハウジングのうちいずれか一方には、前後方向に貫通するキャビティを有する本体部と、その本体部の前面に冠着可能なキャップとを備えたコネクタであって、前記キャップの外周面から内方に離間した位置には、前記本体部に係止可能なキャップ係止部が設けられる構成としたところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記キャビティを構成する内壁の一部を切り欠くことにより切欠き部を設け、その切欠き部に対して前記撓み係止片が係止するところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記キャップは、前記本体部を内部に嵌合可能なフード部を有し、そのフード部の奥方には、他方のコネクタハウジングに設けられる雄タブが挿入される雄タブ挿入孔を区画する区画壁が設けられ、前記キャップ係止部は前記区画壁の内側に設けられ、かつ前記キャップ係止部と前記フード部の内面との間には前記キャップ係止部の撓み空間が保有されるところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記キャビティ内には撓み可能なランスが設けられ、前記区画壁には前記ランスの撓み空間内に進入することで前記ランスの撓み変形を規制する撓み規制部が突出して設けられ、前記キャップ係止部は、前記区画壁と前記撓み規制部とに連結して設けられるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によると、キャップ係止部をキャップの外周面から内方に離間した位置に設けたから、外部からの衝撃によってキャップ係止部が損傷しないように保護することができる。
【0009】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によると、キャビティを構成する内壁の一部を切り欠くことにより切欠き部を設け、キャップ係止部を切欠き部に係止させるようにしたから、キャビティを構成する内壁の外面に設けた突起に係止させるものに比べると、小型化することができる。
【0010】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によると、キャップ係止部は区画壁の内側に設けられ、かつキャップ係止部とフード部の内面との間にはキャップ係止部の撓み空間が保有されるようにしたから、キャップ係止部の保護をより確実に行うことが可能となる。
【0011】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によると、キャップ係止部は、区画壁と撓み規制部とに連結して設けられるから、キャップ係止部の弾性反力が高くなり、本体部との係止力を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。本実施形態におけるコネクタは、コネクタハウジング1とリテーナ(本発明におけるキャップに相当する。)2とを備えている。コネクタハウジング1は合成樹脂製で、断面横長略方形のブロック状をなす本体部3と、本体部3の外周面に沿って筒状をなす外筒部4とからなる。尚、外筒部4の外面のうち左右方向両側には、一対の取付部9,9が突出して設けられている(図1や図2においては、切断箇所が異なっているため、対称には表れない。)。また、外筒部4において取付部9が設けられている面と直交する面には、図6に示すように、両コネクタハウジングの嵌合操作時における倍力機構として用いられるレバーを装着するための装着壁10が外筒部4の外面と対向状態で設けられている。装着壁10の内面には、レバーを回動可能に軸支するための回動軸11が内方に向けて突出して設けられている。
【0013】
本体部3の内部には、図6に示すように、前後方向(図6における紙面と直交する方向を基準として紙面手前側を前方とする。)に貫通する大小2種類のキャビティ5,6が複数個形成されている。図6における本体部3の略左半分には、相対的に大きめに形成された図示5個の大キャビティ6が上下2段に分かれて配され、本体部3の略右半分には、相対的に小さめに形成された図示17個の小キャビティ5が上下4段に分かれて配されている。一方、本体部3の外周面の奥部には、図2に示すゴム栓7が全周方向に沿って嵌着可能とされている。ゴム栓7は、リテーナ2の後述するフード部23の後端縁によって抜止め可能とされており、ゴム栓7の外周面には、全周方向に亘って突出する図示2個のリップ8が周設されている。本体部3の外周面と外筒部4の内周面との間には、図示しない相手側コネクタハウジングの筒状嵌合部が進入可能となっており、リップ8が本体部3の外周面と筒状嵌合部の内周面との間において挟持されることによって、本体部3の内部に水が浸入することが規制される。
【0014】
大小2種類のキャビティ5,6は、互いにほぼ同じ内部構造を有し、前後方向に貫く軸心を回動軸として180°回転させた配置となっている。以下の説明において、両キャビティ5,6が共通する構造の説明においては、小キャビティ5のみについて行い、その場合には、単にキャビティ5,6と記載する。キャビティ5,6内には、後方から図示しない端子金具が挿入可能となっており、端子金具はキャビティ5,6の前端部5A,6Aによって前止まりされる。キャビティ5,6の後方部分は、本体部3の後面から後方に突出する円筒状をなし、この中には、図示しない電線とともに端子金具の図示しないバレル部によって圧着された図示しないゴム栓が圧縮状態で挿入可能となっており、キャビティ5,6の後方から本体部3の内部に水が浸入することが規制される。
【0015】
小キャビティ5の前端側は、図1に示すように、大キャビティ6の前面より前方に突出しており、この突出した部分における隣り合う小キャビティ5間には、後述する仕切壁21を収容するための逃がし溝18が形成されている。一方、小キャビティ5の内部における底面部には、片持ち状に前方に向けて突出する形態であって、上下方向に撓み可能なランス5Bが形成されている。但し、小キャビティ5の底面部のうちランス5Bに面した部分は、図3に示すように、その底面部の奥部を残して前方がえぐられており、ランス5Bの撓み空間5Cが前方に臨んでいる。また、小キャビティ5間の隔壁のうちランス5Bの左右両側部分も同様にえぐられている。すなわち、ランス5Bは、ランス5Bを囲む内壁がえぐられることにより、前方に剥き出しとなった状態とされている。一方、大キャビティ6の上面部には、片持ち状に前方に向けて突出する形態であって、上下方向に撓み可能なランス6Bが形成されている。端子金具がキャビティ5,6の後方から挿入されて前端部5A,6Aによって前止まりされる正規挿入位置にまで至ると、ランス5B,6Bが端子金具に弾性的に係止して後方に抜止めされた状態に保持されるようになっている。
【0016】
小キャビティ5の前端部5Aには、図6に示すように、相手側コネクタハウジングの図示しない雄タブを小キャビティ5内に挿入するための雄タブ挿通孔12が開口している。尚、雄タブ挿通孔12の前面孔縁部には、雄タブを小キャビティ5内に誘導するための傾斜面5Dが内方に向けて下り勾配をなすようにして形成されている。
大キャビティ6の前端部6Aには、小キャビティ5と同様にして、図示しない相手側の雄タブを大キャビティ6の内部に進入させるための雄タブ挿通孔19が開口している。また、前端部6Aにおいてランス6Bの撓み空間6Cの前方には、規制部挿通孔14が開口している。規制部挿通孔14は後述する撓み規制片13を大キャビティ6の内部に進入させるための挿通孔であり、撓み規制片13がランス6Bの撓み空間6C内に入り込んでランス6Bの撓み規制を行うようになっている。また、雄タブ挿通孔19と規制部挿通孔14とは連通しており、両挿通孔19,14の連通空間にはランス6Bが前方から臨むようになっている。図1に示す左から1列目の大キャビティ6(本体部3の左側面を構成する大キャビティ6)と2列目の大キャビティ6との間には、本体部3の前面から後方に向けて除肉することにより、前方に開口する肉抜き24が形成されている。
【0017】
全小キャビティ5のうち所定位置にあるものは、図1に示すように、切欠き部15を備えている。切欠き部15は、詳細には、図1に示す右から1列目の小キャビティ5(本体部3の右側面を構成する小キャビティ5)の右側面部、2列目の小キャビティ5の右側面部および4列目の小キャビティ5の左側面部において、前端部5Aのやや後方部分から後方に向けて直線状に切り欠くことによって形成されている。尚、右から1列目の小キャビティ5の切欠き部15については、他の切欠き部15よりも後方に向けて長めに切り欠かれている。これらの切欠き部15は、小キャビティ5の内壁を貫通して設けられ、右から2列目と4列目の小キャビティ5の切欠き部15については、小キャビティ5の内部と上記したえぐられた部分とを連通させている。
【0018】
一方、全大キャビティ6のうち肉抜き24に隣り合うものは、切欠き部16を備えている。切欠き部16は、詳細には、図1に示す左から1列目の大キャビティ6(本体部3の左側面を構成する大キャビティ6)の左側面部と肉抜き24の内側面を構成する両側面部において、前端部6Aのやや後方部分から後方に向けて直線状に切り欠くことによって形成されている。尚、左から1列目の大キャビティ6の切欠き部16については、他の切欠き部16よりも後方に向けて長めに切り欠かれている。これらの切欠き部16は、大キャビティ6の内壁を貫通して設けられ、大キャビティ6の内部と肉抜き24とを連通させている。
【0019】
リテーナ2は合成樹脂製で、本体部3の前面に冠着可能なキャップ状に形成されている。このリテーナ2は、その内部に本体部3を嵌合可能なフード部23と、そのフード部23の前面に形成された前面壁(本発明における区画壁に相当する。)17とを有している。リテーナ2を本体部3の前面に冠着するに際して、前面壁17においてキャビティ5,6と対応する位置には、図5に示すように、雄タブ挿入孔20が前後方向に貫通して設けられている。小キャビティ5側の雄タブ挿入孔20は、仕切壁21によって区画されて格子状に配されている。また、小キャビティ5側の雄タブ挿入孔20の内部には小キャビティ5の前端側の突出した部分が嵌合するようになっている。
【0020】
前面壁17の内面において大キャビティ6の規制部挿通孔14と対応する位置には、撓み規制片13が後方に向けて突出して設けられている。この撓み規制片13は、規制部挿通孔14を通じてランス6Bの撓み空間6C内に進入可能とされている。さらに、前面壁17の内面において肉抜き24と対応する位置には、区画リブ25が後方に向けて突出して設けられている。区画リブ25の後端のうち切欠き部16に対応する高さ位置には、突部25Aが形成されており、肉抜き24の内部に進入して切欠き部16の前縁と係止可能となっている。
【0021】
左右方向に延びる仕切壁21の内面において小キャビティ5側の雄タブ挿入孔20の下方には、撓み規制部21Aが後方に向けて突出して設けられている。左右方向に隣り合う撓み規制部21Aは互いに連結されて、全体として横方向に長い一枚板状とされている。また、仕切壁21において雄タブ挿入孔20と撓み規制部21との間には、ランス5Bの解除操作を行う図示しない解除治具を挿入するための治具挿入孔20Aが前後方向に貫通して設けられている。さらに、治具挿入孔20Aの下縁から撓み規制部21Aの前後方向略中央にかけては、治具挿入孔20Aと同一幅をもって切り欠かれている。この切り欠きによって、撓み規制部21Aは取付強度が低下することになるため、撓み規制部21Aには、次述する補強リブ21Bが設けられている。
【0022】
上下方向に延びる仕切壁21の内面には、補強リブ21Bが後方に向けて突出して設けられている。補強リブ21Bは、前後方向において撓み規制部21Aと同一突出高さを有し、撓み規制部21Aと補強リブ21Bが互いに直交する方向に連結されることで、撓み規制部21Aが上下方向に撓み変形するのを規制するように補強している。全補強リブ21Bのうちリテーナ2を本体部3の前面に冠着する際に上記したえぐられた部分と対応する補強リブ21Bについては、その下縁側が撓み規制部21Aの上面と連結されており、そのえぐられた部分を閉止する構成とされている。これとともに、撓み規制部21Aは、ランス5Bの撓み空間5C内に入り込んでランス5Bの撓み変形を規制するようになっている。
【0023】
フード部23の側面において小キャビティ5と対応する側の短辺位置には、上下一対の仮係止撓み片22が配されている。仮係止撓み片22は、図3に示すように、フード部23の前縁(前面壁17の外周縁)から後方に向けて切り欠くことにより開口26を設けておき、開口26の内部において開口26の前後両端に接続することにより、前後方向に長い両持ち状をなし、かつ内外方向に撓み可能に形成されている。両仮係止撓み片22の内側後端部には、突部22Aが内方に突出して設けられ、図6に示す本体部3の右側面を構成する小キャビティ5のうち、上から1段目と4段目の小キャビティ5の切欠き部15の前縁に対して係止可能となっている。仮係止撓み片22の突部22Aが切欠き部15の前縁に係止する位置(仮係止位置)では、撓み規制片13および撓み規制部21Aがランス5B,6Bの撓み空間5C,6Cより前方に待避してランス5B,6Bの撓み変形が許容された状態にあって、リテーナ2が本体部3から前方へ外れるのを規制している。
【0024】
一方、フード部23の側面において大キャビティ6と対応する側の短辺位置には、仮係止突部27が配されている。仮係止突部27は、前後方向に細長い形状のスリットを上下方向に対向状態で設けて、これらのスリットによって囲まれた領域をブリッジ片30とし、このブリッジ片30の内面側において、前後方向に沿って突条30Aを設けて、この突条30Aの後端を内方に突出した形状とすることにより形成されている。仮係止突部27は、リテーナ2が仮係止位置にあるときに大キャビティ6の切欠き部16の前縁に係止可能となっており、仮係止撓み片22とともにリテーナ2が本体部3から前方へ外れるのを規制している。尚、ブリッジ片30の突条30Aは、リテーナ2が後述する本係止位置にあるときには、図2に示すように、切欠き部16内に入り込んで大キャビティ6の内壁の一部を構成するようになっている。
【0025】
全補強リブ21Bのうち上から1段目と2段目の撓み規制部21Aの両側縁のうちフード部23の左側面(フード部23の側面において小キャビティ5と対応する側の短辺側の側面)と対向する側縁は、略方形の板状をなす一対のキャップ係止部28,28とされている。キャップ係止部28は、前後方向において撓み規制部21Aと同一突出高さを有し、その外周縁のうち互いに直交する両側縁がフード部23の内部と連結されている。すなわち、本実施形態においてキャップ係止部28は、その前縁が前面壁17の内面と連結され、その上縁が撓み規制部21Aの左側縁と連結されている。そのため、キャップ係止部28は、その後縁下端側を自由端として捲り上がるようにして撓み変形可能とされている。その撓み空間は、キャップ係止部28とフード部23の左側面との間に保有されている。キャップ係止部28の下縁(撓み規制片13に連結された側縁と対向する側縁)における雄タブ挿入孔20に面した側縁部であって前後方向略中央には、キャップ係止突部28Aが突出して設けられている。両キャップ係止突部28A,28Aは、本体部3の側面において小キャビティ5と対応する側の短辺を構成する小キャビティ5のうち上から2段目と3段目の小キャビティ5の切欠き部15の前縁に対して係止可能となっている。
【0026】
キャップ係止突部28Aが切欠き部15の前縁に係止する位置(本係止位置)では、撓み係止片13がランス5B,6Bの撓み空間5C,6C内に入り込んでランス5B,6Bの撓み変形が規制された状態にあって、リテーナ2が仮係止位置へ移動するのを規制している。尚、リテーナ2が本係止位置にあるときには、図4に示すように、仮係止撓み片22の突部22Aが切欠き部15内に収容可能となるように、本体部3の右側面(本体部3の側面のうち小キャビティ5と対応する側の短辺側)を構成する小キャビティ5の切欠き部15の後端位置が設定されている。また、全補強リブ21Bのうち本体部3の右側面から2列目と4列目の小キャビティ5の切欠き部15の前縁と対応する位置には、本係止突部29が内方に突出して設けられており、リテーナ2が本係止位置にあるときに、本係止突部29は切欠き部15の前縁に係止するようになっている。
【0027】
本実施形態は以上のような構造であって、続いてその作用を説明する。
まず、端子金具を後方からキャビティ5,6の内部に挿入する。端子金具は正規挿入位置まで挿入されると、前端部5A,6Aによって前止まりされるとともに、ランス5B,6Bが係止することによって後方へ抜止めされた状態に保持される。
上記に先立って、リテーナ2はコネクタハウジング1の本体部3の前面に組み付けられて、仮係止位置まで押し込まれる。リテーナ2の押し込みに際しては、リテーナ2の仮係止撓み片22が小キャビティ5の前端部に当接し、外方に撓み変形しつつ小キャビティ5の前端部を乗り越えると復帰し、切欠き部15の前縁に係止する。これとともに、仮係止突部27が大キャビティ6の前端部に当接し、外方に撓み変形しつつ大キャビティ6の前端部を乗り越えると復帰し、切欠き部16の前縁に係止する。こうして、リテーナ2が仮係止位置に到達すると、撓み規制片13と撓み規制部21Aとが撓み空間5C,6Cの前方に待避した位置にあって、リテーナ2が仮係止撓み片22の突部22Aと仮係止突部27とによって前方へ抜止めされた状態に保持される。
【0028】
次に、仮係止位置にあるリテーナ2を本係止位置まで押し込む。リテーナ2の押し込みに際しては、区画リブ25の突部25Aが肉抜き孔24の前端部に当接し、肉抜き孔24の両内側面を左右方向に拡開変形させつつ、肉抜き孔24の内部に入り込み肉抜き孔24の両内側面が復帰すると、切欠き部16の前縁に係止する。これとともに、キャップ係止部28のキャップ係止突部28Aが小キャビティ5の前端部に当接し、外方に撓み変形しつつ小キャビティ5の前端部を乗り越えると復帰し、切欠き部15の前縁に係止する。また、本係止突部29も同様に、小キャビティ5の前端部に当接し、外方に撓み変形しつつ小キャビティ5の前端部を乗り越えると復帰し、切欠き部15の前縁に係止する。この間、補強リブ21Bは、上記したえぐられた部分を閉止しつつ、撓み規制片13と撓み規制部21Aとは、それぞれランス5B,6Bの撓み空間5C,6C内に入り込んで、ランス5B,6Bの撓み変形を規制する。こうして、リテーナ2が本係止位置に到達すると、撓み規制片13と撓み規制部21Aによって端子金具が二重で抜止めされた状態に保持されるとともに、区画リブ25の突部25Aとキャップ係止突部28Aと本係止突部29とによって、リテーナ2が本係止位置に保持される。
【0029】
以上のように本実施形態においては、フード部23の内側に配されたキャップ係止部28が小キャビティ5の切欠き部15に係止されるようにしたから、外部からの衝撃によってキャップ係止部28が損傷しないように保護することができる。また、小キャビティ5の側面を構成する内壁の一部を切り欠くことにより切欠き部15を設け、キャップ係止部28が切欠き部15に係止するようにしたから、小キャビティ5を構成する内壁の外面に突起を設けておき、この突起に対してキャップ係止部28が係止するものに比べると、小型化が可能である。さらに、キャップ係止部28は、小キャビティ5と対応する側のフード部23の短辺位置より内側において撓み可能としたから、キャップ係止部28の保護がより確実となる。これらに加えて、キャップ係止部28は、その前縁と上縁がそれぞれ前面壁17と撓み規制部21Aとに連結するから、キャップ係止部28の弾性反力が高まり、切欠き部15に対する係止力を高めることが可能となる。
【0030】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0031】
(1)本実施形態においては、キャップの代表例としてフロントリテーナを例示して説明したが、本発明によると、本体部の前面に冠着可能であればリテーナ機能を備えている必要はない。
【0032】
(2)本実施形態においては、キャビティ5,6の内壁を貫通するようにして切欠き部15,16を形成しているが、本発明によれば、引っ掛けて係止させる構造をとるにあたっては、必ずしも貫通する必要はない。
【0033】
(3)本実施形態においては、フード部23の内面とキャップ係止部28との間にキャップ係止部28の撓み空間を設けるようにしているが、本発明によれば、キャップ係止部28がフード部23の内部に設けられていればよく、キャップ係止部28の撓み空間はフード部23の外部に及んでもよい。
【0034】
(4)本実施形態においては、キャップ係止部28は、前面壁17と撓み規制部21Aとの双方に連結して設けられているが、いずれか一方に連結されているものでもよく、要は、キャップ係止部28をフード部23の内部に設けたものであればキャップ係止部28を設ける位置は前面壁17および撓み規制部21Aに限定されない。
【0035】
(5)本実施形態においては、切欠き部15,16は、キャビティ5,6を構成する内壁を貫通することにより設けられているが、区画リブ25の突部25Aとキャップ係止突部28Aが係止可能な構造であればよく、切欠き部15,16を設ける場所は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態1においてリテーナをコネクタハウジングに装着する前の状態を示す側断面図
【図2】そのリテーナを本係止位置に装着した状態を示す側断面図
【図3】そのリテーナをコネクタハウジングに装着する前の状態を示す縦断面図
【図4】そのリテーナを本係止位置に装着した状態を示す縦断面図
【図5】そのリテーナの正面図
【図6】そのコネクタハウジングの正面図
【図7】そのコネクタハウジングの一部切欠き平面図
【図8】そのコネクタハウジングの側面図
【符号の説明】
【0037】
1…コネクタハウジング
2…リテーナ(キャップ)
3…本体部
5…小キャビティ
5B…ランス
5C…撓み空間
6…大キャビティ
15…切欠き部
16…切欠き部
17…前面壁(区画壁)
20…雄タブ挿入孔
21A…撓み規制部
23…フード部
28…キャップ係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能なコネクタハウジングのうちいずれか一方には、前後方向に貫通するキャビティを有する本体部と、その本体部の前面に冠着可能なキャップとを備えたコネクタであって、
前記キャップの外周面から内方に離間した位置には、前記本体部に係止可能なキャップ係止部が設けられることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記キャビティを構成する内壁の一部を切り欠くことにより切欠き部を設け、その切欠き部に対して前記撓み係止片が係止することを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記キャップは、前記本体部を内部に嵌合可能なフード部を有し、そのフード部の奥方には、他方のコネクタハウジングに設けられる雄タブが挿入される雄タブ挿入孔を区画する区画壁が設けられ、前記キャップ係止部は前記区画壁の内側に設けられ、かつ前記キャップ係止部と前記フード部の内面との間には前記キャップ係止部の撓み空間が保有されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記キャビティ内には撓み可能なランスが設けられ、前記区画壁には前記ランスの撓み空間内に進入することで前記ランスの撓み変形を規制する撓み規制部が突出して設けられ、前記キャップ係止部は、前記区画壁と前記撓み規制部とに連結して設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−165190(P2007−165190A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362120(P2005−362120)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】