説明

コネクタ

【課題】基板に備えられる電子部品の振動性能を向上し、コスト削減、スペースファクターの向上を実現する。
【解決手段】基板5に備えられるコネクタに、基板5に接続される電子部品の保持部2aを形成する。例えば、車載用インバータの制御基盤において、ゲートコネクタ1aの壁面に、ゲート抵抗保持部2aを備えた。ゲート抵抗保持部2aには、ゲート抵抗4が挿通され、固定される。耐振動性の高いゲートコネクタ1aにゲート抵抗4を固定することにより、基板5に備えられたゲート抵抗4の耐振動性能が向上する。なお、ゲート抵抗4を挟持して保持するゲート抵抗保持部をゲートコネクタに備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子部品保持機能を備えた制御基板用コネクタに関するものである。特に、車載用インバータの制御基板用コネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器等に用いられる制御基板に取り付けられた、抵抗等の電子部品の固定方法としては、特許文献1にあるように抵抗の底部に突起部を備え、該突起部を基板の穴部に挿入し固定している。
【0003】
しかしながら、TMD(Through Hole Mounting Device)部品は、プリント基板の部品穴にリード線(金属導体)を挿入し、はんだ付けによりプリント基板に固定、接続する部品であるので、TMD部品の底部に固定用の突起部を備えることができず、特許文献1のように固定できない。
【0004】
TMD部品の例として、ゲート抵抗が基板に取り付けられた様子を図4に示す。図4に示すように、ゲート抵抗4は、基板5に直立した状態でコネクタ7や他の電子部品11から離間して備えられている。
【0005】
そして、ゲート抵抗4のリード線9(金属導体)を基板5のはんだ部8に固定することにより、ゲート抵抗4が基板5に固定、接続されている。ゲート抵抗4は振動により破損するおそれがあるので、図4に示すように、各ゲート抵抗4は、ホットメルト6と呼ばれる材料で防振補強されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−251901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術で示したようなTMD部品は、図4の電子部品11のように、電子部品11が基板5に接するように備えると高い耐振動性がある。しかし、このように電子部品11を配置すると、電子部品11を備えるスペースが広くなってしまう。そこで、TMD部品を車載用インバータ等で使用する際、例えば図4のゲート抵抗4のように、基板5に対して立てて使用することが一般的である。したがって、TMD部品を車載用途に使用する場合、TMD部品本体の振動を抑制することが課題となる。
【0008】
したがって、本発明は、TMD部品等の電子部品の耐振動性能を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のコネクタは、基板に備えられるコネクタであって、前記コネクタの壁面に、前記基板に接続される電子部品を保持する保持部を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のコネクタによれば、耐振動性の高いコネクタに、電子部品を固定することができる。さらに、簡単な取付け操作で、電子部品を固定することができるので、ホットメルト等を用いて電子部品を固定するよりも、製造コスト削減効果が実現できる。
【0011】
前記保持部としては、前記電子部品が挿通される可撓性の部材が挙げられる。
【0012】
また、前記保持部を、前記電子部品を前記コネクタから分離可能に保持する可撓性の部材からなると、前記電子部品の装着及び脱離を簡単に行うことができる。
【0013】
そして、前記部品を分離可能に保持する保持部は、前記コネクタの壁面から突出するように設けられる少なくとも1対の可撓性の部材からなり、該可撓性の部材間に前記電子部品が挟持されることにより、前記電子部品を固定することができる。
【0014】
さらに、前記対となるお互いの部材が向かい合うように湾曲させると電子部品を確実に固定することができる。
【0015】
そして、前記コネクタの壁面に前記保持部によって保持される電子部品と当接する当接部を備えると、電子部品脱落防止効果に加えて、電子部品の基板に垂直方向の振動に対する耐振動性能を向上させることができる。
【0016】
さらに、前記保持される電子部品が、コネクタ付近に配置されるゲート抵抗であれば、スペースファクターの向上も実現できる。
【0017】
そして、本発明のコネクタを車載用インバータの制御基板に用いれば、車の振動に対しても基板に備えられる電子部品の十分な耐振動性を確保できる。
【発明の効果】
【0018】
したがって、以上の発明によれば、基板に備えられる電子部品の耐振動性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタの斜視図。
【図2】本発明の第2実施形態に係るコネクタの斜視図。
【図3】(1)本発明の第2実施形態に係るコネクタの第1変形例、(2)本発明の第2実施形態に係るコネクタの第2変形例、(3)本発明の第2実施形態に係るコネクタの第3変形例、(4)本発明の第2実施形態に係るコネクタの第4変形例。
【図4】従来技術に係るコネクタ及びゲート抵抗が基板に備えられた様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、コネクタの壁面(背面又は側面)に、コネクタ付近に備えられる電子部品を固定する保持部を備えたものである。耐振動性の高いコネクタに電子部品を固定することにより、電子部品の耐振動性を向上させるものである。
【0021】
以下、コネクタとして、本発明をゲートコネクタへ適用した場合を例に説明をする。
【0022】
本発明の第1実施形態に係るコネクタについて図1を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタが基板に取り付けられた様子を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るゲートコネクタ1aは、その背面にゲート抵抗4を保持するためのゲート抵抗保持部2aを備える。
【0025】
基板5には、ゲートコネクタ1a及びゲート抵抗4が取り付けられる。ゲート抵抗4のリード線9を基板5のはんだ部8にはんだ付けすることにより、ゲート抵抗4がゲートコネクタ1aに固定、接続される。
【0026】
ゲート抵抗4は、ゲート抵抗保持部材3aに挿通され、ゲートコネクタ1aに保持される。そして、ゲート抵抗4のリード線9をはんだ部8に形成された穴に挿通した後、はんだ付けすることによりゲート抵抗4が基板5に固定、接続される。
【0027】
ゲート抵抗保持部2aは、ゲート抵抗4が挿通される可撓性の保持部材3aより形成されている。
【0028】
ゲート抵抗保持部材3aの内径の形状は、保持する電子部品の形状に応じて適宜選択すればよい。そして、ゲート抵抗保持部材3aの内径の大きさは、備えられたゲート抵抗4を保持できる径となるよう(例えば、ゲート抵抗4の径よりもやや小さい径)に設定される。
【0029】
また、ゲート抵抗保持部材3aにゲート抵抗4が挿通されたときに、ゲート抵抗4がゲート抵抗保持部2aから脱離することを防止する係止部をゲートコネクタ1a又はゲート抵抗保持部材3aに備えてもよい。なお、この保持部材3aの材質としては、金属及び合成樹脂等が例として挙げられる。
【0030】
ここで、本発明の第1実施形態のゲートコネクタ1aを固定手段として、ゲート抵抗4が基板5に固定、接続される手順を説明する。
【0031】
まず、基板5にゲートコネクタ1aが備えられる。次に、ゲートコネクタ1aのゲート抵抗保持部材3aにゲート抵抗4が挿通される。そして、ゲート抵抗4のリード線9をはんだ部8に形成された穴に挿通した後、はんだ付けすることによりゲート抵抗4が基板5に固定、接続される。
【0032】
したがって、ゲート抵抗4が耐振動性の高いゲートコネクタ1aに固定されるので、基板5上でのゲート抵抗4の耐振動性が向上する。さらに、簡単な取付け操作で、電子部品を固定することができるので、ホットメルト等を用いて電子部品を固定するよりも、製造コスト削減効果が実現できる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態に係るコネクタについて、図2を参照して説明する。図2は、本願の第2実施形態に係るコネクタ及びゲート抵抗が基板に取り付けられた様子を示す斜視図である。
【0034】
図2に示すように、本発明の第2実施形態に係るゲートコネクタ1bは、その背面にゲート抵抗4を保持するためのゲート抵抗保持部2bを備えるものである。
【0035】
基板5には、ゲートコネクタ1b及びゲート抵抗4が取り付けられる。ゲート抵抗4のリード線9は、基板5のはんだ部8にはんだ付けされている。
【0036】
ゲート抵抗保持部2bは、1対の可撓性の保持部材3bがゲートコネクタ1bの背面に突出して備えられることにより構成される。ただし、保持部材3bは、2対以上備えてもよい(他の実施例でも同様)。また、保持部材3bの材質として金属又は合成樹脂等が例として挙げられる。
【0037】
この保持部材3b間に、ゲート抵抗4が挟持される。すなわち、ゲート抵抗保持部2bにゲート抵抗4を押し付けると、保持部材3bが外側に撓む(弾性変形する)ことで、ゲート抵抗4が保持部材3bの間に備えられる。そして、保持部材3b間に介在したゲート抵抗4は、保持部材3bの復元力により保持される。
【0038】
ここで、本発明の第2実施形態に係るゲートコネクタ1bを固定手段として、ゲート抵抗4が基板5に取り付けられる手順を説明する。
【0039】
まず、基板5にゲートコネクタ1bが備えられる。そして、ゲートコネクタ1bに形成されたゲート抵抗保持部2bにゲート抵抗4を押し付けると、ゲート抵抗4がゲート抵抗保持部材3bに挟持される。このようにして、ゲート抵抗4をゲートコネクタ1bに保持した後に、ゲート抵抗4のリード線9をはんだ部8に形成された穴に挿通し、リード線9をはんだ付けすることによりゲート抵抗4が基板5に固定、接続される。
【0040】
また、ゲート抵抗4のリード線9を基板5のはんだ部8にはんだ付けしてから、ゲート抵抗4をゲート抵抗保持部2bに押し付け、ゲート抵抗4をゲートコネクタ1bに保持させてもよい。
【0041】
なお、電子部品の脱落防止機構として、ゲートコネクタ1bに備えられる保持部材3bの端部に係止部(凹凸部等)を備えてもよい。
【0042】
本発明の第2実施形態に係るゲートコネクタによれば、第1実施形態に係るゲートコネクタ1aの作用効果に加えて、ゲート抵抗4の取付け又は交換作業が簡単になる効果が得られる。
【0043】
本発明の第2実施形態に係るコネクタの変形例について図3を参照して説明する。
【0044】
図3(1)〜(4)は、それぞれ、本発明の第2実施形態の第1〜第4変形例に係るゲートコネクタ1c〜1fとゲート抵抗保持部2c〜2fの斜視図である。
【0045】
第2実施形態では1対の保持部材3bがゲート抵抗4を挟持しているのに対して、図3(1)に示す第1変形例のように、両者が向かい合うように可撓性の保持部材3cを湾曲させている。
【0046】
保持部材3cを湾曲させることにより、ゲート抵抗等の電子部品をゲートコネクタ1cに固定したときに保持部材3c全体で電子部品を支えることができ、電子部品の脱落を防止することができる。したがって、電子部品の耐振動性能が向上する。
【0047】
一方、図3(2)に示す第2変形例では、先端が向かい合うように可撓性の保持部材3dを湾曲させることにより電子部品の脱落防止効果を向上させている。
【0048】
つまり、保持部材3dに円筒状のゲート抵抗を保持した場合、先端だけが湾曲していると保持部材3dが大きく変形する。したがって、保持部材3dの復元力も大きくなり電子部品を固定する力がより大きくなる。
【0049】
さらに、ゲートコネクタ1dから離間して設置される電子部品を固定することも可能となる。つまり、基板の電子部品の配置に柔軟に対応でき、また、異なる形状の電子部品を保持することも可能となる。
【0050】
図3(3)に示す第3変形例では、可撓性の保持部材3eで電子部品を保持するとともに、当接部10をゲートコネクタ1eに備えることにより、電子部品の耐振動性を向上する。
【0051】
第3変形例のように、ゲートコネクタ1eに電子部品の下端部と当接するように当接部10を備えると、電子部品の上下方向の耐振動性が向上する。当接部10は、電子部品の上端部に当接するように備えてもよい。また、当接部10を電子部品の側面に当接するようにゲートコネクタ1eに備えると、電子部品が保持部材3eと当接部10に挟持されることで耐振動性が向上する。
【0052】
つまり、当接部10が備えられる場所は、図3(3)に示すように電子部品の下端部に備えるだけでなく、電子部品に当接する場所であればどこに備えてもよい。
【0053】
また、図3(4)に示す第4変形例では、可撓性の保持部材3fを基板(図示省略)に対して斜めに備える。
【0054】
第4変形例のように、電子部品を基板に対して斜めに保持するように、保持部材3fを配置すると、ゲートコネクタ1fに電子部品を固定した後にはんだ付けする際、作業性が向上する。さらに、ゲート抵抗が直立してない状態でゲートコネクタ1fゲートに保持されるので、より一層耐振動性が向上する。
【0055】
以上のように、本発明に係るコネクタによれば、基板上でコネクタの周辺に配置される電子部品をコネクタに固定することにより、電子部品の耐振動性能が向上する。
【0056】
また、電子部品の固定方法は、例えば、実施形態で説明したように、ゲート抵抗をゲートコネクタに備えられるゲート抵抗保持部に押し付ける(又は挿通する)だけなので簡単に行える。さらに、従来のようにホットメルトによる固定を行わないので、製造コストを削減することができる。
【0057】
本発明に係るコネクタは、特に、車載用インバータの制御基盤に備えられるTMD部品の固定に用いると耐振動性能向上に効果がある。
【0058】
なお、図1〜図3を参照して説明した本発明の実施形態において、電子部品としてゲート抵抗4を例示したが、ゲートコネクタ(1a〜1f)で保持する電子部品は、ゲート抵抗4に限定するものではなく耐振動性を向上させたい電子部品を適宜選択し、ゲートコネクタ(1a〜1f)に固定すればよい。また、1つのゲートコネクタに固定される電子部品の個数は、特に限定しない。また、コネクタもゲートコネクタに限定するものではない。
【符号の説明】
【0059】
1a〜1f、7…ゲートコネクタ(コネクタ)
2a〜2f…ゲート抵抗保持部(保持部)
3a〜3f…保持部材(可撓性の部材)
4…ゲート抵抗(電子部品)
5…基板
8…はんだ部
9…リード線
10…当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に備えられるコネクタであって、
前記コネクタの壁面に、前記基板に接続される電子部品を保持する保持部を備えた
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記保持部は前記電子部品が挿通される可撓性の部材からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記保持部は前記電子部品を前記保持部から分離可能に保持する可撓性の部材からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記保持部は、前記コネクタの壁面から突出するように設けられる少なくとも1対の可撓性の部材からなり、
前記可撓性の部材間に前記電子部品が挟持される
ことを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記可撓性の部材は、対となるお互いの部材が向かい合うように湾曲している
ことを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記コネクタの壁面には前記保持部によって保持される電子部品と当接する当接部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記保持される電子部品は、ゲート抵抗である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記基板に備えられるコネクタは、ゲートコネクタである
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記基板は、車載用インバータの制御基板である
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−160964(P2010−160964A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2465(P2009−2465)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】