説明

コネクタ

【課題】電源コンタクトに指などが接触することにより、感電ややけどをしてしまうことを防止し得るコネクタを提供すること。
【解決手段】比較的大きなサイズの電源コンタクトを有するコネクタにおいて、Z方向において電源コンタクト120の先端122よりもコネクタの嵌合面側に突出すると共にX方向において電源コンタクト120よりもコンタクト収容部142の底部142aからコンタクト収容部142内に向けて突出した突出部144をハウジング130に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的サイズの大きい電源コンタクトを有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタには、信号コンタクトやグランドコンタクトの他に、電源供給用の電源コンタクトを有するものもある。ここで、電源コンタクトは、そこにおける極端な電圧低下を防止すべく、例えば信号コンタクトなどと比較して大きなサイズを有しているのが一般的である。
【0003】
電源コンタクトの大きなサイズに起因してコネクタを扱う者が電源コンタクトに触れて感電したり、やけど等をする可能性があることを懸念し、様々な対策が考えられている。例えば、信号コンタクトを有する例ではないが、特許文献1には筒状の電源コンタクトの先端部を絶縁体で覆い且つ筒状の電源コンタクトの内部に絶縁性棒状体を設けることで、筒状の電源コンタクト内部に指が入り込んで指と電源コンタクトが接触してしまうことを防止している例が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−78079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、指が入り込むほど大きな筒状の電源コンタクトでなくとも指と電源コンタクトとが誤って接触してしまう可能性はあり、その場合、特許文献1に開示された手段では対応できない。
【0006】
また、特許文献1の電源コンタクトの先端部を覆う絶縁体に関しては、厚みを薄くすると、コネクタと相手方コネクタとの嵌合離脱時に破損してしまう恐れがある一方、厚みを厚くすると、コネクタが大型化するという問題がある。加えて、絶縁体をコンタクトに被覆するのは容易ではなく作業性が悪いという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、特許文献1とは異なる手段により、電源コンタクトに指などが接触してしまうことを防止し得るコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、第1のコネクタとして、
電源コンタクトと、前記電源コンタクトを収容するコンタクト収容部を有するハウジングとを備えたコネクタであって、
前記ハウジングには、前記コネクタを相手方コネクタに対して嵌合抜去する際の方向である第1方向において前記電源コンタクトの先端よりもコネクタの嵌合面側に突出すると共に前記第1方向に直交する第2方向において前記電源コンタクトよりも前記コンタクト収容部内に向けて突出した突出部が形成されている、コネクタが得られる。
【0009】
本発明によれば、第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記電源コンタクトよりも小さい信号コンタクトを更に備えており、
前記ハウジングには、前記信号コンタクトを保持するコンタクト保持部が更に形成されている、
コネクタが得られる。
【0010】
本発明によれば、第3のコネクタとして、第1又は第2のコネクタにおいて、
前記コンタクト収容部は、前記第1方向において底部を有する溝状に形成されており、
前記電源コンタクトは、前記溝状の前記コンタクト収容部の前記底部に配設されており、
前記突出部は、前記溝状の前記コンタクト収容部の前記底部に形成されている
コネクタが得られる。
【0011】
本発明によれば、第4のコネクタとして、第1乃至第3のコネクタのいずれかにおいて、
前記電源コンタクトには、前記電源コンタクトの前記先端から前記第1方向に向かって凹んだ凹部が形成されており、
前記突出部は、部分的に前記電源コンタクトの凹部内に配置されている
コネクタが得られる。
【0012】
本発明によれば、第5のコネクタとして、第1乃至第4のコネクタのいずれかであって、接続対象物に接続され且つ相手方シェルを有する前記相手方コネクタに嵌合されるコネクタにおいて、
前記ハウジングを覆うシェルを更に備えており、
前記シェルには、前記相手方シェルに接続される複数のシェル接触部と前記接続対象物に接続されるシェル端子部とが設けられている
コネクタが得られる。
【0013】
本発明によれば、第1乃至第5のコネクタのいずれかと嵌合する相手方コネクタであって、
前記電源コンタクトに接続する相手方電源コンタクトを備えており、
該相手方電源コンタクトは、前記コネクタと前記相手方コネクタとを嵌合させる際に前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向において前記コネクタの前記突出部を挟むようにして前記電源コンタクト上を摺動させられる2つの接点部を備えている、相手方コネクタが得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電源コンタクトに対して指が接触してしまいそうな2つの方向において電源コンタクトよりも突出している突出部がハウジングと一体成型されていることから、電源コンタクトへ指などが接触することを防止することができる。
【0015】
また、突出部をハウジングに設けた(即ち、ハウジングと一体成型した)ことから小さな突出部に対しても十分な強度を持たせることができ、従って、コネクタの大型化を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態によるコネクタ組立体は、基板(接続対象物)間を接続するためのボード間コネクタ組立体であり、図1乃至図3に示されるレセプタクルコネクタ(コネクタ)100と、図4及び図5に示されるプラグコネクタ(相手方コネクタ)200とを備えている。
【0017】
図1から理解されるように、レセプタクルコネクタ100は、Z方向(第1方向)の前端においてプラグコネクタ200と嵌合するものであり、Y方向(第3方向)に長手を有し、X方向(第2方向)に短手を有するものである。本実施の形態におけるレセプタクルコネクタ100は、信号コンタクト110及び電源コンタクト120と、信号コンタクト110及び電源コンタクト120を保持するハウジング130と、ハウジング130を覆うシェル150と、ハウジング130の底部側において信号コンタクト110等を支持する支持基板160とを備えている。
【0018】
図1及び図2に示されるように、電源コンタクト120は、平板状の接触部を有しており、信号コンタクト110よりも大きいサイズを有するものである。特に図2に示されるように、本実施の形態における電源コンタクト120には、その先端122から−Z方向に向かって凹んだ凹部124が形成されている。
【0019】
図1に示されるように、ハウジング130は、Y方向における2つの端部132と、端部132間をそれぞれ接続する2つの側壁部134を備えており、端部132及び側壁部134とハウジング130の底部とで、−Z方向に凹んだ受容部130aが規定されている。端部132には、Y方向又は−Y方向に凹んだ凹部132aが形成されており、凹部132aのX方向における両側面にはそれぞれX方向及び−X方向に凹んだ溝状の接触部収容部132bが形成されている。また、側壁部134にも、X方向又は−X方向に凹んだ溝状の接触部収容部134aが形成されている。
【0020】
図1に示されるように、ハウジング130の受容部130a内には、それぞれY方向に長手を有し且つZ方向に向かって突出した第1島状部136及び第2島状部138が形成されている。図2に示されるように、第1島状部136のX方向における両側面には、信号コンタクト110を保持するためのコンタクト保持部140が形成されており、第2島状部138のX方向における両側面には、電源コンタクト120を収容するコンタクト収容部142が形成されている。本実施の形態におけるコンタクト収容部142はX方向又は−X方向に凹んだ溝状に形成されており、その底部142a上に電源コンタクト120が配設されている。
【0021】
図1乃至図3に示されるように、本実施の形態におけるハウジング130には、Z方向において電源コンタクト120の先端122よりもコネクタの嵌合面側に突出すると共にX方向又は−X方向において電源コンタクト120よりもコンタクト収容部142の底部142aからコンタクト収容部142内に向けて突出した突出部144が形成されている。より具体的には、突出部144は、電源コンタクト120の凹部124内にその一部が存するように配置されている。
【0022】
図1に示されるように、シェル150は、X方向及びY方向においてハウジング130を覆うものであり、その母材を折り曲げ加工することにより形成された複数のシェル接触部152,154と複数のシェル端子部156とを備えている。シェル接触部152,154はプラグコネクタ200の有する相手方シェル(後述)と接続するためのものであり、このうち、シェル接触部152は、Z方向に延びると共に凹部132a内に若干突出するようにして接触部収容部132b内に収容されており、シェル接触部154は、Z方向に延びると共に受容部130a内に若干突出するようにして接触部収容部134a内に収容されている。シェル端子部156は、基板(図示せず:レセプタクルコネクタ100の接続対象物)に接続されるものであり、本実施の形態においては支持基板160を介して−Z方向に向かって延びている。
【0023】
上述したように、本実施の形態によるレセプタクルコネクタ100には、Z方向及びX方向(−X方向)の2つの方向において電源コンタクト120よりも突出した突出部144が形成されていることから、レセプタクルコネクタ100を扱う者の指が電源コンタクト120に触れてしまうこと等を防止することができる。
【0024】
かかるレセプタクルコネクタ100の相手方コネクタであるプラグコネクタ200は、図4に示されるように、相手方信号コンタクト210及び相手方電源コンタクト220と、それらを保持する相手方ハウジング230と、相手方ハウジング230に取り付けられた相手方シェル250とを備えている。
【0025】
本実施の形態における相手方電源コンタクト220は、図4及び図5に示されるように、くの字状に折り曲げられた2つの接触部222を有しており、そのX方向又は−X方向の頂点が電源コンタクト120と接触させられる接点部222aとなっている。この接点部222aは、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ200とを嵌合させる際にY方向においてレセプタクルコネクタ100の突出部144を挟むようにして電源コンタクト120上を摺動させられるものである。本実施の形態における相手方電源コンタクト220は、2つの接点部222aを有するものであればよく、その形状は二股形状であってもよいし、一対のピンコンタクトで構成されていてもよい。
【0026】
図4に示されるように、相手方ハウジング230には、受容部130aに受容される被受容部232と、被受容部232からY方向及び−Y方向に突出した凸部234とが形成されており、更に、被受容部232には、第1受容凹部236及び第2受容凹部238が形成されている。これら第1受容凹部236及び第2受容凹部238は、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ200とを嵌合させる際に第1島状部136及び第2島状部138をそれぞれ受容するためのものである。図4及び図5から理解されるように、第1受容凹部236には、相手方信号コンタクト210を保持するための相手方コンタクト保持部240が形成されており、第2受容凹部238には、相手方電源コンタクト220を収容するための相手方コンタクト収容部242が形成されている。一つの相手方コンタクト収容部242には、X方向又は−X方向に向かって凹み且つZ方向に沿って延びる収容溝244が2つ形成されており、接点部222aがX方向において変位可能となるように相手方電源コンタクト220の接触部222がそれら収容溝244にそれぞれ収容されている。
【0027】
図4に示されるように、相手方シェル250は、主として、被受容部232のX方向における側面を覆うようにして、相手方ハウジング230に取り付けられている。本実施の形態においては、相手方シェル250の端部252は、凸部234の側部から上部にかけても部分的に覆っている。
【0028】
このような構成を有するレセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ200とを嵌合させる際には、レセプタクルコネクタ100の受容部130a内にプラグコネクタ200の被受容部232を挿入すると共にレセプタクルコネクタ100の凹部132aにプラグコネクタ200の凸部234を挿入する。これにより、レセプタクルコネクタ100のシェル端子部152,154とプラグコネクタ200の相手方シェル250との接続が図られる。また、上記の嵌合の際には、レセプタクルコネクタ100の第1島状部136及び第2島状部138がプラグコネクタ200の第1受容凹部236及び第2受容凹部238内にそれぞれ受容される。これにより、信号コンタクト110は相手方信号コンタクト210に接続され、電源コンタクト120は相手方電源コンタクト220に接続される。ここで、本実施の形態におけるプラグコネクタ200は、Y方向において離間して設けられた2つの接点部222aを一つの電源コンタクト120に対応させていることから、レセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ200とを嵌合させる際にレセプタクルコネクタ100の突出部144をY方向において挟むようにして2つの接点部222aを電源コンタクト上において摺動させることができる。このように、本実施の形態によれば、突出部144を設けたとしても、その存在を意識することなく、従来のコネクタ組立体と同様の操作によりレセプタクルコネクタ100とプラグコネクタ200とを嵌合させることができる。
【0029】
本実施の形態においては電源用に用いられる電源コンタクトについて説明してきたが、電源コンタクトは電源用のみならず高電圧用又は高電流用等に用いられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態によるレセプタクルコネクタを示す斜視図である。
【図2】図1のレセプタクルコネクタにおける電源コンタクトとその近傍を示す部分拡大斜視図である。
【図3】図1のレセプタクルコネクタにおけるハウジングのコンタクト収容部を示す部分拡大上面図である。
【図4】本発明の実施の形態によるプラグコネクタを示す斜視図である。
【図5】図4のプラグコネクタにおける相手方電源コンタクトとその近傍を示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
100 レセプタクルコネクタ(コネクタ)
110 信号コンタクト
120 電源コンタクト
122 先端
124 凹部
130 ハウジング
130a 受容部
132 端部
132a 凹部
132b 接触部収容部
134 側壁部
134a 接触部収容部
136 第1島状部
138 第2島状部
140 コンタクト保持部
142 コンタクト収容部
144 突出部
150 シェル
152 シェル接触部
154 シェル接触部
156 シェル端子部
160 支持基板
200 プラグコネクタ(相手方コネクタ)
210 相手方信号コンタクト
220 相手方電源コンタクト
222 接触部
222a 接点部
230 相手方ハウジング
232 被受容部
234 凸部
236 第1受容凹部
238 第2受容凹部
240 相手方コンタクト保持部
242 相手方コンタクト収容部
244 収容溝
250 相手方シェル
252 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源コンタクトと、前記電源コンタクトを収容するコンタクト収容部を有するハウジングとを備えたコネクタであって、
前記ハウジングには、前記コネクタを相手方コネクタに対して嵌合抜去する際の方向である第1方向において前記電源コンタクトの先端よりもコネクタの嵌合面側に突出すると共に前記第1方向に直交する第2方向において前記電源コンタクトよりも前記コンタクト収容部内に向けて突出した突出部が形成されている、コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記電源コンタクトよりも小さい信号コンタクトを更に備えており、
前記ハウジングには、前記信号コンタクトを保持するコンタクト保持部が更に形成されている、
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタにおいて、
前記コンタクト収容部は、前記第1方向において底部を有する溝状に形成されており、
前記電源コンタクトは、前記溝状の前記コンタクト収容部の前記底部に配設されており、
前記突出部は、前記溝状の前記コンタクト収容部の前記底部に形成されている
コネクタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコネクタにおいて、
前記電源コンタクトには、前記電源コンタクトの前記先端から前記第1方向に向かって凹んだ凹部が形成されており、
前記突出部は、部分的に前記電源コンタクトの凹部内に配置されている
コネクタ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコネクタであって、接続対象物に接続され且つ相手方シェルを有する前記相手方コネクタに嵌合されるコネクタにおいて、
前記ハウジングを覆うシェルを更に備えており、
前記シェルには、前記相手方シェルに接続される複数のシェル接触部と前記接続対象物に接続されるシェル端子部とが設けられている
コネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコネクタと嵌合する相手方コネクタであって、
前記電源コンタクトに接続する相手方電源コンタクトを備えており、
該相手方電源コンタクトは、前記コネクタと前記相手方コネクタとを嵌合させる際に前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向において前記コネクタの前記突出部を挟むようにして前記電源コンタクト上を摺動させられる2つの接点部を備えている、相手方コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−67510(P2010−67510A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233643(P2008−233643)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】