説明

コネクタ

【課題】フロント部材の端子保持室内に端子金具を支障なく挿入させ、且つ挿入された端子金具を確実に支持する。
【解決手段】端子収容室11の内壁面のうちランス12と対向する対向壁面15に、ガイド凹部17を形成し、端子保持室24の受け面28に、ガイド凹部17に連なる逃がし凹部30を形成し、角筒部41の対向外面47に、角筒部41の前端よりも後方の位置から突出してガイド凹部17の底面に摺接するガイド突起48を形成し、ガイド突起48から角筒部41の前端に至る寸法Laを、ガイド凹部17の前端と受け面28の後端との間隔Lbよりも大きくし、ガイド凹部17の底面を基準とする受け面28の高さHbを、対向外面47の高さHaより低くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に端子収容室が形成されたハウジングと、ハウジングの前端部に組み付けられるフロント部材とを備えて構成されるコネクタが開示されている。ハウジングにフロント部材を組み付けた状態では、フロント部材の後面を凹ませた形態の端子保持室が、端子収容室の前端の開口と対応するように位置し、端子収容室と端子保持室とによって構成されたキャビティ内に、後方から端子金具が挿入される。端子金具の挿入過程では、端子収容室の内壁に沿って形成したランスが、端子金具との干渉によって一時的に弾性撓みし、端子金具が正規挿入されると、弾性復帰したランスが端子金具に対して抜止めするように係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3491751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタでは、端子金具を挿入する際に、端子金具の前端部が端子保持室の後端の開口縁に干渉するのを防止する手段として、端子保持室の内壁面のうち端子金具を挟んでランスとは反対側に位置する内壁面に、端子金具の挿入方向に対して傾斜したガイド斜面を形成している。
【0005】
しかし、このガイド斜面は、端子金具の前端部を端子保持室の奥方(前方)へ案内するだけであって、端子保持室内に正しく挿入された状態の端子金具の前端部を支持する機能は発揮しない。つまり、ガイド斜面を形成したことによって、端子保持室の内壁面のうち端子金具の前端部を支持する面積が狭くなるのであって、そのために、端子金具の前端部を支持する機能の信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、フロント部材の端子保持室内に端子金具の前端部を支障なく挿入させ、且つ挿入された端子金具の前端部を確実に支持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、内部に端子収容室が形成されたハウジングと、前記ハウジングの前端部に組み付けられるフロント部材とを備え、前記ハウジングに前記フロント部材を組み付けた状態では、前記フロント部材の後面を凹ませた形態の端子保持室が、前記端子収容室の前端の開口と対応するように位置することで、前記端子収容室と前記端子保持室とによってキャビティが形成され、後方から前記キャビティに端子金具を挿入する過程では、前記端子収容室の内壁に沿って形成したランスが、前記端子金具の角筒部との干渉によって一時的に前記端子金具の挿入方向と交差する方向へ弾性撓みし、前記端子金具が正規挿入されて前記角筒部の前端部が前記端子保持室内に収容されると、弾性復帰した前記ランスが前記角筒部に対して抜止め可能に係止するようになっているコネクタにおいて、前記端子収容室の内壁面のうち前記ランスと対向する対向壁面には、前記端子金具の挿入方向に沿ったガイド凹部が形成され、前記端子保持室の内面のうち前記対向壁面に連なるように配された受け面には、前記ガイド凹部に連なるように配された逃がし凹部が形成され、前記角筒部の外面のうち前記対向壁面及び前記受け面と対向する対向外面には、前記端子金具の挿入方向において前記角筒部の前端よりも後方の位置から突出した形態であって、前記ガイド凹部の底面への摺接を可能とされたガイド突起が形成され、前記端子金具の挿入方向においては、前記ガイド突起から前記角筒部の前端に至る寸法が、前記ガイド凹部の前端と前記受け面の後端との間隔よりも大きい寸法とされ、前記ランスの弾性撓み方向においては、前記ガイド凹部の前記底面を基準とする前記受け面の高さが、前記ガイド凹部の前記底面を基準とする前記対向外面の高さよりも低くされているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ハウジングと前記フロント部材のうち少なくとも一方には、前記ハウジングに前記フロント部材を組み付けた状態において塑性変形することで、前記ハウジングと前記フロント部材が前記端子金具の挿入方向と交差する方向へ相対変位するのを規制する変位規制部が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
端子金具の挿入過程では、ランスの弾性復元力によって角筒部が対向壁面側へ押圧されることによって、ガイド突起がガイド凹部の底面に摺接し、ガイド突起がガイド凹部の前端に到達する前に、角筒部の前端部が端子保持室の受け面と対応する状態となる。その後、端子金具の挿入が進んで、ガイド突起がガイド凹部の前端を通過すると、角筒部の対向外面の前端部が受け面上を摺接し、そのまま端子金具は正規の挿入位置に到達する。
本発明によれば、フロント部材の受け面には、端子金具の挿入方向に対して傾斜したガイド斜面を形成する必要がないので、端子金具の挿入方向における受け面の形成領域を長く確保することができ、角筒部の前端部をフロント部材によって確実に支持することができる。
【0010】
<請求項2の発明>
ハウジングにフロント部材を組み付けた状態において、ハウジングとフロント部材との間で端子金具の挿入方向と交差する方向へのガタ付きが生じる場合は、ガイド突起の突出寸法を大きくして、ガイド凹部の底面を基準とする高さ方向において受け面と対向外面との高低差を大きく確保し、ガタ付きを吸収する必要がある。
これに対し本発明では、ハウジングにフロント部材を組み付けた状態において変位規制部を塑性変形させることで、ハウジングとフロント部材が端子金具の挿入方向と交差する方向へ相対変位するのを規制しているので、ガタ付きを吸収するためにガイド突起の突出寸法を大きく確保する必要がない。これにより、端子金具の小型化を図り、ひいてはコネクタ全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1において端子金具を挿入途中の状態を、端子挿入方向と平行に切断してあらわした断面図
【図2】端子金具の挿入が図1よりも少し進んだ状態を、端子挿入方向と平行に切断してあらわした断面図
【図3】端子金具の挿入が完了した状態を、端子挿入方向と平行に切断してあらわした断面図
【図4】図2の部分拡大図
【図5】端子金具の挿入途中の状態を、端子挿入方向と直角に切断してあらわした部分拡大断面図
【図6】ハウジングの側面図
【図7】ハウジングの平面図
【図8】ハウジングの正面図
【図9】ハウジングの背面図
【図10】フロント部材の平面図
【図11】フロント部材の側面図
【図12】フロント部材の正面図
【図13】フロント部材の背面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図13を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、ハウジング10と、ハウジング10に対して前方(図1〜3における左方)から組み付けられるフロント部材20と、ハウジング10内に後方から挿入される複数の端子金具40とを備えて構成されている。尚、以下の説明において、端子金具40の挿入方向と平行な方向と、前後方向とは同義で用いる。また、端子金具40の挿入方向を、単に端子挿入方向と記載する場合もある。
【0013】
ハウジング10は、合成樹脂製である。ハウジング10の内部には、前後方向に貫通する複数の端子収容室11が形成されている。図8,9に示すように、複数の端子収容室11は、上下3段に分かれていて、前方及び後方から見て千鳥配置となるように整列配置されている。上下3段の端子収容室11のうち、下段の端子収容室11はハウジング10の前端面に開口するように形成されており、この下段の端子収容室11は、本発明の構成要件には対応しない。一方、上段の端子収容室11と中段の端子収容室11は、その前端がハウジング10の前端面よりも後方に位置しており、この上段と中段の端子収容室11が、本発明の構成要件に相当する。
【0014】
図1〜3に示すように、ハウジング10には、各端子収容室11の内壁部のうち上壁部に沿って前方へ片持ち状に延出した形態のランス12が形成されている。ランス12の下面(端子収容室11に臨む面)には、係止突起13が形成されている。ランス12は、常には、ランス12自体の剛性により図3に示す係止位置に保持されており、ランス12が係止位置にあるときには、係止突起13が端子収容室11内における端子金具40の挿入経路内に進出している。また、ランス12は、外力の付与により図1,2に示す解除位置へ弾性撓みし得るようになっている。ランス12が解除位置へ変位した状態では、係止突起13が端子収容室11内における端子金具40の挿入経路から上方へ退避する。また、ランス12の係止位置から解除位置への変位方向は、後述するキャビティ25に対する端子金具40の挿入方向と交差する方向である。
【0015】
図1〜3,8に示すように、ハウジング10には、その前面を凹ませた形態の収容空間14が形成されている。図8に示すように、収容空間14は、正面形状が略方形をなしていて、上段の端子収容室11の全体と、中段の端子収容室11の全体と、下段の各端子収容室11における上半分領域とに対応している。これにより、図1〜3に示すように、上段の端子収容室11の前端の開口と中段の端子収容室11の前端の開口は、ハウジング10の前端よりも後方に位置していて、収容空間14内に臨んでいる。また、上段及び中段の端子収容室11に形成されているランス12の係止突起13は、前後方向(端子挿入方向と平行な方向)において端子収容室11の前端部とほぼ同じ位置に配置されている。
【0016】
以下、上段と中段の端子収容室11(以下、単に端子収容室11という)について説明する。尚、図1〜3に示す断面図においては、上段と中段のうち上段側の端子収容室11のみを図示している。端子収容室11の内壁面のうちの底壁面は、端子金具40の挿入方向と交差する上下方向(即ち、ランス12の弾性撓み方向と略平行な方向)において、端子金具40を挟んでランス12と反対側に位置する対向壁面15となっている。図4に示すように、対向壁面15の前端部には、前方に向かって下り勾配となるように傾斜したテーパ面16が形成されている。テーパ面16の前端は収容空間14に臨んでいる。
【0017】
図1〜5に示すように、対向壁面15には、端子金具40の挿入方向と平行なガイド凹部17が形成されている。ガイド凹部17は、図1〜3に示すように、端子収容室11の全長に亘って形成されている。図5,8,9に示すように、ガイド凹部17の正面形状(端子挿入方向と直角に切断した断面形状)は、略半円形をなしている。端子挿入方向と交差する幅方向(左右方向)において、ガイド凹部17の形成位置は、端子収容室11の中心よりも側方へずれた(片寄った)位置となっている。この幅方向におけるガイド凹部17のずれ方向は、端子収容室11の上壁面(対向壁面15と反対側の壁面)に形成した誤挿入規制溝18(図5,9を参照)のずれ方向と同じ方向である。
【0018】
また、図1〜3,6〜8に示すように、ハウジング10には、その外周面(即ち、上下両面と左右両側面)から突出した形態の複数の変位規制部19が形成されている。変位規制部19の前端部は傾斜部となっている。この変位規制部19はハウジング10にフロント部材20を組み付けた状態で塑性変形するようになっている。
【0019】
フロント部材20は、合成樹脂製であり、図1〜3,10〜13に示すように、前面壁21と、前面壁21の外周から全周に亘って後方へ片持ち状に延出した筒状嵌合部22と、前面壁21から後方へ突出するとともに筒状嵌合部22で包囲された形態の端子保持部23とを一体に形成したものである。端子保持部23には、上段の端子収容室11と中段の端子収容室11とに対応する複数の端子保持室24が、端子保持部23の後面(ハウジング10への組付け状態において収容空間14の奥端面と対向する面)を個別に凹ませた形態で形成されている。尚、端子保持部23の下方には、下段の端子収容室11と対応する空間が確保されている。
【0020】
図1〜3に示すように、フロント部材20は、ハウジング10に対して前方から組み付けられる。組付けに際しては、筒状嵌合部22がハウジング10の前端部を全周に亘って包囲するとともに、端子保持部23を収容空間14内に嵌入させる。そして、フロント部材20がハウジング10に正しく組みつけられた状態では、ハウジング10の前端面が、フロント部材20の前面壁21に対して当接又は接近して対向するとともに、端子保持部23の後端面が、収容空間14の奥端面に対して接近して対向する状態となる。そして、各端子保持室24が、夫々、対応する端子収容室11の前方に接近して対応するように位置する。換言すると、各端子保持室24の後端の開口が、夫々、対応する端子収容室11の前端の開口に対して接近して対向(連通)する状態となる。そして、端子収容室11と、端子収容室11の前方に僅かな隙間を空けて連なる端子保持室24とによって、端子金具40を挿入するためのキャビティ25が形成されている。
【0021】
ハウジング10に組み付けられたフロント部材20は、筒状嵌合部22の側壁部に形成したロックアーム26(図11,13を参照)を、ハウジング10の外側面のロック孔27(図6を参照)に係止させることによって組付け状態に保持される。また、ハウジング10の外周に形成した複数の変位規制部19が、筒状嵌合部22の内周に密着した状態で塑性変形を生じる。この変位規制部19の塑性変形に伴う摩擦力により、フロント部材20は、ハウジング10に対して、上下方向及び左右方向(即ち、端子挿入方向と交差する方向)への相対変位、及び前後方向(即ち、端子挿入方向と平行な方向)への相対変位を規制された状態に保持される。
【0022】
図1〜4に示すように、端子保持室24の底面(即ち、端子保持室24の内面のうち端子収容室11の対向壁面15に連なるように位置する面)のうち後端部を除いた領域は、受け面28となっている。そして、端子収容室11の底面のうち、受け面28の後端から端子保持部23の後端面に至る領域は、端子金具40の挿入方向に対し後方に向かって下り勾配となるように傾斜した誘導斜面29となっている。つまり、受け面28の後方(端子収容室11に近い側)には、誘導斜面29が連なっている。
【0023】
図1〜5に示すように、受け面28には、端子挿入方向に沿って延びる逃がし凹部30が形成されている。この逃がし凹部30は、端子収容室11の中央位置から幅方向においてガイド凹部17と同じ方向へずれた(片寄った)配置となっている。つまり、逃がし凹部30は、ガイド凹部17に連なるように配されている。また、図5に示すように、逃がし凹部30の背面形状(端子挿入方向と直角に切断した断面形状)は、ガイド凹部17と同じく略半円形をなしている。また、前面壁21には、各端子収容室11と対応するように前後方向に貫通したタブ挿入口31が形成されている。
【0024】
端子金具40は、所定形状に打ち抜いた金属板材に曲げ加工等を施すことにより、図1〜3に示すように、全体として前後方向に細長く成形されている。端子金具40は、その前端部に角筒部41を形成した雌形の端子であり、後端部に形成した電線圧着部42には電線43の端末部が導通可能に固着されている。角筒部41の内部には、角筒部41を構成する上板部の前端から折り返し状に延出した周知の形態の弾性接触片44が収容されており、前方からタブ挿入口31を通って角筒部41内に挿入された相手側端子のタブ(図示省略)は、弾性接触片44と角筒部41の底板部(上板部とは上下逆の位置に配された板部)との間で弾接的に挟まれた状態で導通可能に接触するようになっている。また、上板部には、角筒部41の前後方向における中央よりも少し後方の領域を切欠することにより、ランス12の係止突起13を係止させるための係止孔45が形成されている。
【0025】
図5に示すように、角筒部41の上板部には、その前端部から上方(角筒部41の外方)へ突出した形態のスタビライザ46が形成されている。このスタビライザ46は、幅方向において、角筒部41の中央からガイド突起48と同じ方へ片寄った配置となっている。端子金具40をキャビティ25に挿入する際には、スタビライザ46が、端子収容室11と端子保持室24の誤挿入規制溝18内を移動するようになっている。また、端子金具40を上下反転した不正な姿勢、又は左右に90°傾いた不正な姿勢でキャビティ25に挿入しようとした場合には、スタビライザ46とガイド突起48が、端子収容室11の後端の開口縁と干渉することによって、端子金具40の不正な姿勢での挿入が規制されるようになっている。
【0026】
図4,5に示すように、角筒部41の底板部の下面(外面)は、端子収容室11の対向壁面15及び端子保持室24の受け面28と対向する対向外面47となっている。図1〜5に示すように、この対向外面47の前端部には、底板部の一部を下方(角筒部41の外方)へ略半球状に叩き出すことによってガイド突起48が形成されている。端子挿入方向及びガイド突起48の突出方向の両方向に対して略直交する側方から見たときに、ガイド突起48は略半円状(弧状)をなしている。ガイド突起48は、幅方向において角筒部41の中央よりも側方(ガイド凹部17及び逃がし凹部30と同じ方向)へ片寄った配置となっている。前後方向においては、ガイド突起48は、その全体が角筒部41の前端よりも後方に配されている。
【0027】
図4,5に拡大して示すように、端子金具40をキャビティ25に挿入する過程では、ガイド突起48の突出端(端子金具40の対向外面47からの突出寸法が最も大きい下端)の摺接点48Pがガイド凹部17の底面のうち最も低い前後方向の線状摺接部17S上を摺接する。そして、図4に示すように、端子挿入方向と交差する上下方向(即ち、ランス12の弾性撓み方向と概ね平行な方向)において、ガイド突起48の摺接点48Pの対向外面47からの突出寸法(寸法公差の範囲内における最小寸法)Haは、ガイド凹部17の深さ寸法Da(寸法公差の範囲内における最大寸法)よりも大きく設定されている。ガイド突起48の突出寸法Haは、ガイド突起48がガイド凹部17の底面に当接している状態において、ガイド凹部17の線状摺接部17Sを基準とする対向外面47(角筒部41の下面)の高さ寸法と同じである。また、ガイド凹部17の深さ寸法Daは、線状摺接部17Sを基準とする対向壁部15の高さ寸法と同じである。
【0028】
同じく、上下方向において、線状摺接部17Sを基準とする受け面28の高さ寸法Hb(公差の範囲内の寸法)は、線状摺接部17Sを基準とする対向外面47の高さ寸法Ha(ガイド突起48の突出寸法)よりも低く、且つ、線状摺接部17Sを基準とする対向壁面15の高さ寸法Da(ガイド凹部17の深さ寸法)と同じか、それよりも大きい寸法である。また、逃がし凹部30の深さ寸法Db(寸法交差の範囲内における最小寸法)は、ガイド突起48の突出寸法Ha(寸法公差の範囲内における最大寸法)と同じか、それよりも大きい寸法である。また、端子挿入方向と平行な前後方向において、ガイド突起48の摺接点48P(ガイド凹部17の底面との接触部)から角筒部41の前端に至る寸法La(寸法公差の範囲内における最小寸法)は、ガイド凹部17の前端(収容空間14の奥端面)と受け面28の後端との間隔Lb(寸法公差の範囲内における最大寸法)よりも大きい寸法である。また、端子収容室11の前端(ガイド凹部17の前端)と端子収容室11の後端(誘導斜面29の後端)との間には、前後方向の隙間が空いている。
【0029】
次に、本実施形態の作用を説明する。ハウジング10にフロント部材20を組み付けた状態における、端子金具40の挿入行程を説明する。端子金具40を後方からキャビティ25に挿入する過程では、スタビライザ46が誤挿入規制溝18内を移動するとともに、ガイド突起48がガイド凹部17内を移動する。そして、角筒部41の上板部の前端縁がランス12の係止突起13に当接すると、それ以降は、端子金具40の挿入が進むのに伴って、ランス12が係止位置からそれよりも上方の解除位置へ弾性撓みさせられる。すると、角筒部41は、ランス12の弾性復元力によって下方へ押圧され、ガイド突起48の摺接点48Pがガイド凹部17の線状摺接部17S上を摺動することになる。このとき、角筒部41の下面(対向外面47)は、端子収容室11の対向壁面15に対し上方へ離間した非接触状態を保つ。
【0030】
このまま端子金具40の挿入が進み、図1に示すように、ガイド突起48がガイド凹部17の前端近くまで到達すると、角筒部41の前端が、端子収容室11の前端を通過して収容空間14内に突出し、端子収容室11の後端に接近する。この状態でも、ランス12は弾性撓みしたままなので、角筒部41は下方(対向壁面15側)へ押圧されている。そして、図1の状態の直後に、図2,4に示すように、ガイド突起48の摺接点48Pがガイド凹部17の底面(線状摺接部17S)に当接したままで、角筒部41の前端部が端子収容室11内に進入して、角筒部41の前端部の対向外面47(下面)が、端子収容室11の受け面28の後端部に対して上から接近して対向した状態となる。このとき、線状摺接部17Sを基準とする受け面28の高さ寸法Hbは、線状摺接部17Sを基準とする対向外面47の高さ寸法Haよりも低いので、角筒部41の前端は、端子保持部23の後端面や誘導斜面29と干渉することはない。また、ランス12は弾性撓みしたままである。
【0031】
そして、図2,4に示す状態の直後に、ガイド突起48がガイド凹部17の前端から外れ、これに伴って、ランス12の弾性復元力により角筒部41が僅かに下方へ変位して、対向外面47が受け面28に当接(載置)する。この後は、対向外面47が受け面28上を摺接しながら、角筒部41の前端部が端子収容室11内に進入していく。この間、ガイド突起48は逃がし凹部30内に進入するのであるが、逃がし凹部30の深さ寸法Dbは、ガイド突起48の突出寸法Haと同じか、それよりも大きい寸法となっているので、対向外面47が受け面28に摺接する状態、即ち角筒部41が受け面28によって下から支持される状態が保たれる。
【0032】
そして、端子金具40が正規の挿入位置まで到達すると、図3に示すように、係止孔45が係止突起13と対応する位置まで前進するので、ランス12が解除位置から係止位置へ弾性復帰し、係止突起13が係止孔45に対して後方から係止し、これによって、端子金具40が抜止め状態に保持される。
【0033】
上述のように、本実施形態のコネクタは、端子収容室11の内壁面のうちランス12と対向する対向壁面15に、端子挿入方向に沿ったガイド凹部17を形成し、端子保持室24の内面のうち対向壁面15に連なるように配された受け面28に、ガイド凹部17に連なるように配された逃がし凹部30を形成し、角筒部41の外面のうち対向壁面15及び受け面28と対向する対向外面47に、端子挿入方向において角筒部41の前端よりも後方の位置から突出した形態であって、ガイド凹部17の底面への摺接を可能とされたガイド突起48を形成している。そして、端子挿入方向においては、ガイド突起48におけるガイド凹部17との摺接点48Pから角筒部41の前端に至る寸法Laを、ガイド凹部17の前端と受け面28の後端との間隔Lbよりも大きい寸法とし、ランス12の弾性撓み方向においては、ガイド凹部17の底面の線状摺接部17S(ガイド突起48の摺接領域)を基準とする受け面28の高さHbを、線状摺接部17Sを基準とする対向外面47の高さHaよりも低くしている。
【0034】
この構成によれば、端子金具40の挿入過程では、ランス12の弾性復元力によって角筒部41が対向壁面15側へ押圧されることによって、ガイド突起48がガイド凹部17の底面に摺接し、ガイド突起48がガイド凹部17の前端に到達する前に、角筒部41の前端部が端子保持室24の受け面28と対応する状態となる。その後、端子金具40の挿入が進んで、ガイド突起48がガイド凹部17の前端を通過すると、角筒部41の対向外面47の前端部が受け面28上を摺接し、そのまま端子金具40は正規の挿入位置に到達する。
【0035】
したがって、本実施形態によれば、フロント部材20の受け面28には、端子金具40の挿入方向に対して傾斜したガイド斜面を長い距離に亘って形成する必要がないので、端子金具40の挿入方向における受け面28の形成領域を長く確保することができ、角筒部41の前端部をフロント部材20によって確実に支持することができる。つまり、本実施形態のコネクタによれば、フロント部材20の端子保持室24内に端子金具40の角筒部41を支障なく挿入させ、且つ挿入された角筒部41を確実に支持することができるのである。
【0036】
また、ハウジング10にフロント部材20を組み付けた状態において、ハウジング10とフロント部材20との間で端子金具40の挿入方向と交差する上下又は左右方向へのガタ付きが生じる場合は、ガイド突起48の突出寸法を大きくして、ガイド凹部17の底面を基準とする高さ方向において受け面28と対向外面47との高低差を大きく確保し、ガタ付きを吸収する必要がある。
【0037】
これに対し本実施形態では、ハウジング10にフロント部材20を組み付けた状態において変位規制部19を塑性変形させることで、ハウジング10とフロント部材20が端子金具40の挿入方向と交差する方向へ相対変位するのを規制しているので、ガタ付きを吸収するためにガイド突起48の突出寸法を大きく確保する必要がない。これにより、端子金具40の小型化を図り、ひいてはコネクタ全体の小型化を図ることができる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、端子金具が、角筒部を前端部に配した雌形の端子である場合について説明したが、本発明は、端子金具が、角筒部の前端から細長いタブを突出させた雄形の端子である場合にも適用できる。
(2)上記実施形態では、受け面の後方に、端子金具の挿入方向に対して傾斜した誘導斜面を連ねた形成としたが、受け面の後方に誘導斜面を設けない形態としてもよい。
(3)上記実施形態では、対向壁面の前端部に、端子金具の挿入方向に対して傾斜したテーパ面を形成したが、対向壁面の前端部にテーパ面を形成しない形態としてもよい。
(4)上記実施形態では、ガイド突起を端子金具の幅方向中央位置から側方へ外れた位置に配置したが、ガイド突起は、端子金具の幅方向中央位置に配置してもよい。
(5)上記実施形態では、ガイド突起の形状が、端子金具の挿入方向及びガイド突起の突出方向の両方向に対して略直交する側方から見たときに、略半円状(弧状)をなすようにしたが、ガイド突起の側方から見た形状は、台形や三角形等、円弧部を有しない形状であってもよくも直線部と円弧部を組み合わせた形状であってもよい。
(6)上記実施形態では、ガイド突起が、端子金具の反転して不正な姿勢での挿入を防止するための逆挿入防止手段を兼ねるようにしたが、ガイド突起は、端子金具をフロント部材の受け面に確実に移行させるための専用のガイド手段であってもよい。
(7)上記実施形態では、角筒部を構成する板状部(底板部)の一部を外面側へ叩き出すことによってガイド突起を形成したが、ガイド突起は、切り起こしによって形成してもよい。
(8)上記実施形態では、端子金具の挿入方向において、ランスのうちの挿入過程の端子金具と摺接する部位(係止突起)を、対向壁部(端子収容室)の前端部と対応する位置に配したが、ランスにおける端子金具との摺接部(係止突起)は、対向壁部(端子収容室)の前端から大きく後方へずれた位置に配置してもよい。
(9)上記実施形態では、フロント部材をハウジングに組み付けた状態で、対向壁面と受け面の近傍においてフロント部材とハウジングとの間に前後方向(端子金具の挿入方向と平行な方向)に隙間が空くようにしたが、このような隙間が空かない形態としてもよい。
(10)上記実施形態では、変位規制部をハウジングのみに形成したが、変位規制部は、フロント部材のみに形成してもよく、ハウジングとフロント部材の両方に形成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…ハウジング
11…端子収容室
12…ランス
15…対向壁面
17…ガイド凹部
19…変位規制部
20…フロント部材
24…端子保持室
25…キャビティ
28…受け面
30…逃がし凹部
41…角筒部
47…対向外面
48…ガイド突起
La…ガイド突起から角筒部の前端に至る寸法
Lb…ガイド凹部の前端と受け面の後端との間隔
Ha…ガイド凹部の底面を基準とする対向外面の高さ
Hb…ガイド凹部の底面を基準とする受け面の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に端子収容室が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの前端部に組み付けられるフロント部材とを備え、
前記ハウジングに前記フロント部材を組み付けた状態では、前記フロント部材の後面を凹ませた形態の端子保持室が、前記端子収容室の前端の開口と対応するように位置することで、前記端子収容室と前記端子保持室とによってキャビティが形成され、
後方から前記キャビティに端子金具を挿入する過程では、前記端子収容室の内壁に沿って形成したランスが、前記端子金具の角筒部との干渉によって一時的に前記端子金具の挿入方向と交差する方向へ弾性撓みし、
前記端子金具が正規挿入されて前記角筒部の前端部が前記端子保持室内に収容されると、弾性復帰した前記ランスが前記角筒部に対して抜止め可能に係止するようになっているコネクタにおいて、
前記端子収容室の内壁面のうち前記ランスと対向する対向壁面には、前記端子金具の挿入方向に沿ったガイド凹部が形成され、
前記端子保持室の内面のうち前記対向壁面に連なるように配された受け面には、前記ガイド凹部に連なるように配された逃がし凹部が形成され、
前記角筒部の外面のうち前記対向壁面及び前記受け面と対向する対向外面には、前記端子金具の挿入方向において前記角筒部の前端よりも後方の位置から突出した形態であって、前記ガイド凹部の底面への摺接を可能とされたガイド突起が形成され、
前記端子金具の挿入方向においては、前記ガイド突起から前記角筒部の前端に至る寸法が、前記ガイド凹部の前端と前記受け面の後端との間隔よりも大きい寸法とされ、
前記ランスの弾性撓み方向においては、前記ガイド凹部の前記底面を基準とする前記受け面の高さが、前記ガイド凹部の前記底面を基準とする前記対向外面の高さよりも低くされていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングと前記フロント部材のうち少なくとも一方には、前記ハウジングに前記フロント部材を組み付けた状態において塑性変形することで、前記ハウジングと前記フロント部材が前記端子金具の挿入方向と交差する方向へ相対変位するのを規制する変位規制部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−54106(P2012−54106A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195934(P2010−195934)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】