説明

コネクタ

【課題】ホルダから増幅部を容易に取り外すことができるコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタは、アンテナに接続される接続端子11a,11bを有するホルダ10と、ホルダ10に係合し、接続端子11a,11bを介してアンテナから入力される信号を増幅する増幅部を有するアンプユニット20とを備える。ホルダ10の表面には、突起部16が形成され、アンプユニット20には、ホルダ10の突起部16に係合する係合爪29が形成される。アンプユニット20にホルダ10に対する係入方向と異なる方向へ所定以上の力が作用した場合、係合爪29が突起部16から係脱し、アンプユニット20とホルダ10との係合状態が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の窓ガラスに取り付けられ、テレビ放送などの電波を受信する車両用アンテナが知られている。かかる車両用アンテナと後段の装置との間には、車両用アンテナで受信した信号を増幅する増幅部を備えた車両用コネクタが配置される。
【0003】
例えば、特許文献1には、増幅部を保持するホルダにカバー部材を係合させて増幅部に対する絶縁性を担保し、ホルダの底面に形成された接続端子を、車両の窓ガラスに取り付けられた車両用アンテナへ接続する車両用コネクタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−035479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窓ガラスなどに取り付けられる車両用コネクタは、運転者の視界を遮らないようにピラー近傍に配置するなど、その設置場所に制約がある。また、車両用コネクタには増幅部が内蔵されていることから、窓ガラスへの設置後に保守管理のために増幅部を取り外すことがある。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の車両用コネクタでは、増幅部を保持するホルダに係合しているカバー部材をホルダから取り外すために、カバー部材に設けられた取り外し用つまみを撓ませなければならない。そのため、設置場所に制約がある中ではカバー部材の取り外し作業が困難な場合がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ホルダから増幅部を容易に取り外すことができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、アンテナに接続される接続端子を有するホルダと、前記ホルダに係合し、前記接続端子を介して前記アンテナから入力される信号を増幅する増幅部を有するアンプユニットとを備え、前記ホルダの表面には、突起部が形成され、前記アンプユニットには、前記ホルダの前記突起部に係合する係合部が形成され、前記アンプユニットに前記ホルダに対する係入方向と異なる所定以上の力が作用した場合、前記係合部が前記突起部から係脱し、前記アンプユニットと前記ホルダとの係合状態が解除されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるコネクタは、アンプユニットにホルダに対する係入方向と異なる向へ力が作用した場合、アンプユニットの係合部がホルダの突起部から係脱して、アンプユニットとホルダとの係合状態が解除されるので、ホルダから増幅部を内蔵するアンプユニットを容易に取り外すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例にかかる車両用コネクタの取り付け位置の説明図である。
【図2】図2は、実施例にかかる車両用コネクタの外観模式図である。
【図3】図3は、実施例にかかる車両用コネクタの構成を示す模式図である。
【図4】図4は、図3のA−A線断面模式図である。
【図5】図5は、ホルダへのアンプユニットの組み込み手順の説明図である。
【図6】図6は、アンプユニットの平面模式図である。
【図7】図7は、ケーブルが引っ張られることによってホルダからアンプユニットが取り外される場合の説明図である。
【図8】図8は、ケーブルを取り付けた車両用コネクタの平面模式図である。
【図9】図9は、他の係合爪および延伸部の構成の例を示す図である。
【図10】図10は、他の延伸部の構成の例を示す図である。
【図11】図11は、他の係合部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるコネクタの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。例えば、この実施例ではコネクタの一例として車両用コネクタを挙げて説明するがこれに限定されるものではない。なお、以下においては、説明の便宜上、X軸の正方向を前方とし、Y軸の正方向を左方向とし、Z軸の正方向を上方とする。
【実施例】
【0012】
図1は、本実施例にかかる車両用コネクタの取り付け位置の説明図である。図1に示すように、本実施例にかかる車両用コネクタ1は、自動車などの車両の窓ガラス2に配置された車両用アンテナ3に接続される。かかる車両用コネクタ1は、車両用アンテナ3によって受信した信号を増幅し、ケーブル70を介して増幅した信号を受信機5へ出力する。なお、ケーブル70として、例えば、同軸ケーブルなどが用いられる。
【0013】
車両用アンテナ3の給電端子4a,4bは、運転者の視界を遮らない位置、例えば、フロントガラスやリアガラスなどの窓ガラス2のうちピラー近傍に配置される。そして、かかる給電端子4a,4bに車両用コネクタ1の接続端子11a,11bが接続される。
【0014】
なお、図1に示す例では、窓ガラス2の側方内側に車両用コネクタ1が取り付けられるが、車両用コネクタ1の設置場所は、これに限られるものではない。例えば、窓ガラス2の上方内側に車両用アンテナ3の給電端子4a,4bが配置される場合、車両用コネクタ1は窓ガラス2の上方内側に取り付けられる。
【0015】
車両用アンテナ3は、例えば、アナログテレビ放送、ワンセグ放送、又は12セグ放送(地上波デジタルテレビ放送)を受信できるアンテナである。受信機5は、車両用コネクタ1およびケーブル70を介して車両用アンテナ3で受信した信号を取得し、かかる信号に基づき、不図示の表示装置にテレビ画面を表示させる。
【0016】
なお、車両用アンテナ3は、テレビ放送の電波を受信するものとして説明するが、これに限定されるものではなく、テレビ放送以外の電波を受信するようにしてもよい。また、車両用アンテナ3は、窓ガラス2の内側に取り付けられるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、窓ガラス2以外の場所に取り付けられるようにしてもよい。
【0017】
次に、実施例にかかる車両用コネクタ1の構成について図面を参照して具体的に説明する。図2は、本実施例にかかる車両用コネクタ1の外観模式図である。図2に示すように、車両用コネクタ1は、車両用アンテナ3に接続されるホルダ10と、ホルダ10に組み込まれるアンプユニット20とを備える。
【0018】
ホルダ10の底部には、車両用アンテナ3の給電端子4a,4bに接続される接続端子11a,11bが形成される。かかるホルダ10は、例えば、両面テープなどの粘着材によって車両用アンテナ3が形成された窓ガラス2に固着され、窓ガラスに組み付けられる。これにより、ホルダ10の接続端子11a,11bが車両用アンテナ3の給電端子4a,4bに結合される。
【0019】
アンプユニット20は、接続端子11a,11bを介して車両用アンテナ3から入力される信号を増幅する増幅回路が形成された回路基板23(増幅部の一例に相当)を有し、ホルダ10に係合する。
【0020】
また、アンプユニット20の後端部側には、ケーブル70のコネクタ71が接続可能となっており、ケーブル70を介して車両用アンテナ3によって受信された信号が車両用コネクタ1から受信機5へ出力される。
【0021】
本実施例にかかる車両用コネクタ1では、後述するように、ホルダ10とアンプユニット20との係合状態を解除する通常の方法を採ることが困難な場合であっても、ケーブル70を所定以上の力で引っ張ることによって、ホルダ10を破損することなく、該ホルダ10からアンプユニット20を取り外すことができるように、ホルダ10とアンプユニット20とが係合される。
【0022】
そのため、例えば、車両用コネクタ1が窓ガラス2のピラー近傍に配置される場合のように作業領域が制限される場合であっても、ホルダ10からアンプユニット20を容易に取り外すことができる。
【0023】
しかも、例えば、作業者が誤って工具等をケーブル70に引っかけてしまいケーブル70が強く引っ張られた場合であっても、ホルダ10からアンプユニット20が外れ、ホルダ10の破損が防止される。
【0024】
ホルダ10が破損してしまうと、該ホルダ10を設置した窓ガラス2ごと交換しなければならなくなり、メンテナンスのための作業時間および費用の負担が大きくなるといった問題が発生するが、本実施例にかかる車両用コネクタ1では、かかる問題を解消することができる。なお、ケーブル70が強く引っ張られるのは、上述の例以外に、例えば、子供のいたずらなどがある。
【0025】
図3は、本実施例にかかる車両用コネクタ1の構成を示す模式図である。図3に示すように、ホルダ10は、底壁12、側壁13および前壁14を備え、上面および後端部側が開口する略箱状部材である。側壁13によってアンプユニット20の側面が覆われ、前壁14によってアンプユニット20の前面が覆われる。
【0026】
ホルダ10の底壁12には、接続端子11a,11bが上面側および下面側へそれぞれ露出するように配置される。ホルダ10の側壁13は、後方側の一部が切り欠かれて構成されており、前方側側壁13aよりも後方側側壁13bの高さが低くなっている。前方側側壁13aの後端には、前方に向けて凹状となる切欠部15が形成される。かかる切欠部15によってホルダ10に組み込まれたアンプユニット20の上下および前方への移動が規制される。
【0027】
また、後方側側壁13bの上面および切欠部15はスライド部の機能も備え、かかる後方側側壁13bの上面および切欠部15によってアンプユニット20が前後方向にスライド可能に案内される。
【0028】
前方側側壁13aの中央上面側には、それぞれ前方に向けて高くなる傾斜面17が形成された台形状の突起部16が形成され、かかる突起部16によってホルダ10に組み込まれたアンプユニット20の後方への移動が規制される。
【0029】
なお、ホルダ10に組み込まれたアンプユニット20の下方への移動は、ホルダ10の底壁12によって規制され、ホルダ10に組み込まれたアンプユニット20の左右への移動は、ホルダ10の側壁13によって規制される。
【0030】
このように構成されるホルダ10は、インサート成形によって形成される。具体的には、インサート成形用金型内に挿入した接続端子11a,11bの周りに樹脂を注入することによって、図4に示すように、接続端子11a,11bと樹脂とを一体化させる。図4は、図3のA−A線断面模式図である。なお、接続端子11a,11bのばね部60a,60bへ樹脂が進入しないように、インサート成形用金型には逃げ空間が設けられ、かかる逃げ空間にばね部60a,60bが配置される。
【0031】
次に、アンプユニット20について説明する。アンプユニット20は、図3に示すように、ケース部材21と、カバー部材22とを備える。かかるケース部材21とカバー部材22とが係合して形成される空間内に回路基板23(図2参照)が収納される。
【0032】
アンプユニット20の底面には開口部が設けられ、かかる開口部からばね性を有する接続端子24a,24bが下方に突出する。ホルダ10の接続端子11a,11bは、図4に示すように、アンプユニット20と対向する底壁12の上面側から露出している。
【0033】
そのため、アンプユニット20がホルダ10に係合して組み込まれることによって、アンプユニット20の接続端子24a,24bがホルダ10の接続端子11a,11bに接触し、接続端子24a,24bと接続端子11a,11bとの電気的な接続が行われる。
【0034】
アンプユニット20の両側壁25には、後端側から外側へ突出する細長状の突出部26が形成される。かかる突出部26がホルダ10の切欠部15に挿入されることよってホルダ10に組み込まれたアンプユニット20の上下方向および前方への移動が規制される。突出部26の前方先端は、円弧状に形成されており、これにより、ホルダ10の切欠部15への進入を容易にしている。
【0035】
また、両側壁25には、突出部26の後方に連接する突出部52が形成されており、かかる突出部52によって突出部26の強度を向上させている。突出部52の下面は、ホルダ10の後方側側壁13bの上面に位置し、後方側側壁13bの上面をスライド可能である。
【0036】
また、アンプユニット20は、延伸部28と係合爪29とを備え、左右方向から見て略コ字状に形成される。具体的には、アンプユニット20の後端側に隆起部32が形成されており、隆起部32の上部からホルダ10への係入方向である前方に延伸部28が延伸し、かかる延伸部28の先端に係合爪29が形成される。
【0037】
延伸部28は断面視方形状に形成されて、前後方向に延伸する。係合爪29は、左右方向から見て三角形状に形成されており、前方に向けて下方に傾斜する傾斜面37と、後方に向けて上方に傾斜する傾斜面38とを有する。すなわち、係合爪29には、ホルダ10への係入方向側である前方に傾斜面37が形成され、ホルダ10からの係脱方向側である後方に傾斜面38が形成される。かかる係合爪29は、略一定の厚みに形成され、その上部に凹部が形成される。
【0038】
延伸部28は弾性を有しており、係合爪29に上下方向に力が働いた場合、延伸部28の先端が上下に移動し、係合爪29を上下方向に移動可能としている。
【0039】
ここで、ホルダ10に対するアンプユニット20の組み込み手順について説明する。図5は、ホルダ10へのアンプユニット20の組み込み手順の説明図である。なお、ホルダ10はすでに窓ガラス2に取り付けられた状態であるとする。
【0040】
まず、図5(a)に示すように、ホルダ10の後方にアンプユニット20を位置させる。そして、アンプユニット20を前方に移動させ、図5(b)に示すように、アンプユニット20の突出部52の下面を後方側側壁13bの上面に位置させる。なお、アンプユニット20をホルダ10の後方から図5(b)に示す状態にするのではなく、アンプユニット20をホルダ10の上方から図5(b)に示す状態にすることもできる。
【0041】
次に、突出部52の下面を後方側側壁13bの上面に当接した状態(図5(b)参照)で、アンプユニット20を後方から押すことによって、突出部52が後方側側壁13bの上面に沿って前方にスライドする。
【0042】
後方側側壁13bをガイドとしてアンプユニット20をスライドしていくと、図5(c)に示すように、係合爪29が突起部16に接触する。突起部16は、係合爪29の係入方向側である後方側に傾斜面17を有しており、かかる傾斜面17が係合爪29の傾斜面37に接触する。
【0043】
この状態からさらにアンプユニット20を後方から押すと、図5(d)に示すように、延伸部28の先端が上方に移動しつつ、突起部16の傾斜面17に沿って係合爪29が前方に移動する。このとき、突出部26が切欠部15内へ挿入されるため、アンプユニット20の上方への移動が規制される。そのため、アンプユニット20が継続して前方へ移動する。
【0044】
なお、係合爪29の傾斜面37と突起部16の傾斜面17とを同程度の傾斜角にすることによって、係合爪29が突起部16の傾斜面17上を円滑に移動することが可能となる。また、係合爪29の傾斜面37は、図6に示すように、前方へ向けて左右幅が小さくなるように構成されており、これによっても、ホルダ10に対するアンプユニット20の係合をより円滑に行うことができる。図6は、アンプユニット20の平面模式図である。
【0045】
図5(d)に示す状態から、アンプユニット20をさらに後方から押し続けると、突出部26の先端が切欠部15の先端に当たって、アンプユニット20の前方への移動が規制される。このとき、係合爪29は、図5(e)に示すように、突起部16を越えた位置になり、係合爪29と突起部16とが係合状態になる。
【0046】
このように、アンプユニット20の上下方向および前方への移動が突出部26と切欠部15とによって規制され、アンプユニット20の後方への移動が係合爪29と突起部16との係合によって規制される。そのため、アンプユニット20がホルダ10と係合状態になる。かかる係合が行われることによって、アンプユニット20がホルダ10に組み込まれる。なお、アンプユニット20の左右方向への移動は、ホルダ10の側壁13によって規制される。
【0047】
その後、図5(f)に示すように、ケーブル70の先端に形成されたコネクタ71をアンプユニット20の後端側に設けられた接続部(図示せず)に接続することで、車両用コネクタ1の設置が完了する。
【0048】
そして、ホルダ10からアンプユニット20を取り外す場合は、例えば、1本の指で係合爪29を突起部16の高さよりも上方に持ち上げながら、アンプユニット20を後方に移動させるだけで係合爪29と突起部16との係合状態を解除することができる。そのため、車両用コネクタ1が狭いスペースに設置されたとしても、ホルダ10からアンプユニット20を容易に取り外すことができる。
【0049】
さらに、本実施例にかかる車両用コネクタ1では、例えば、通常の解除方法(係合爪29を持ち上げて解除する上述の方法)でホルダ10からアンプユニット20を取り外すのが困難な場合、アンプユニット20にケーブル70を接続した状態で、ケーブル70を引っ張ることによって、ホルダ10を破損することなく、該ホルダ10からアンプユニット20を取り外すことができる。また、作業者が意図せずケーブル70を強く引っ張ってしまった場合であっても、同様に、ホルダ10を破損することなく、該ホルダ10からアンプユニット20を取り外すことができる。
【0050】
ここで、本実施例にかかる車両用コネクタ1では、ホルダ10を破損することなく、該ホルダ10からアンプユニット20を取り外すことが重要である。その理由として、通常の解除方法(係合爪29を持ち上げて解除する方法)とは異なる特異な解除方法(ケーブル70を引っ張って解除する方法)を行うと、ホルダ10に対して意図しない力が加わり、該ホルダ10が破損する恐れがある。そして、ホルダ10が破損してしまうと、該ホルダ10を設置した窓ガラス2ごと交換しなければならなくなり、メンテナンスのための作業時間および費用の負担が大きくなるといった問題が発生する。
【0051】
そこで、本実施例にかかる車両用コネクタ1では、ケーブル70を強く引っ張った場合でも、ホルダ10を破損することなく、該ホルダ10からアンプユニット20を取り外すことができる構成を実現している。
【0052】
以下、ケーブル70が引っ張られることによってホルダ10からアンプユニット20が取り外される場合について、図7を参照して具体的に説明する。図7は、ケーブル70が引っ張られることによってホルダ10からアンプユニット20が取り外される場合の説明図である。
【0053】
図7(a)に示すように、例えば、通常の解除方法(係合爪29を持ち上げて解除する上述の方法)でホルダ10からアンプユニット20を取り外すのが困難な場合、作業者は、ケーブル70を後方に所定以上の力で引っ張る。後方は、アンプユニット20からのケーブル70の引き出し方向である。従って、作業者は、容易にケーブル70を後方に引っ張ることができる。
【0054】
ケーブル70が後方に引っ張られると、アンプユニット20に引張力が作用する。かかる引張力が所定以上の力である場合、図7(b)に示すように、延伸部28の先端が上方に移動し、係合爪29が下方に移動していく。
【0055】
これは、係合爪29の後方側に傾斜面38が形成されているために、係合爪29が突起部16を押す力が上方へも向かうためである。このように係合爪29に上方へ付勢力が作用すると、延伸部28の先端が上方に付勢され、延伸部28の先端が上方に移動する。
【0056】
延伸部28の先端が上方に移動すると、突起部16の前方上端に対する係合爪29の接触位置が移動し、これにより、アンプユニット20が後方に移動する。そして、引き続きケーブル70を引っ張ることによって、図7(c)に示すように、ホルダ10の突起部16とアンプユニット20の係合爪29との係合状態が解除される。すなわち、ホルダ10とアンプユニット20との係合状態が解除される。
【0057】
本実施例にかかる車両用コネクタ1では、アンプユニット20とホルダ10との係合力(係合強度)が、車両用アンテナ3の設置対象である窓ガラス2とホルダ10との結合力(結合強度)よりも弱く、また、ホルダ10を破損する力(破損強度)よりも弱くなるように、突起部16と係合爪29が形成される。そのため、ホルダ10を破損することなく、ホルダ10からアンプユニット20を容易に取り外すことができる。
【0058】
このように、本実施例にかかる車両用コネクタ1では、ホルダ10の表面に形成された突起部16に係合する係合爪29がアンプユニット20に設けられている。そして、アンプユニット20にホルダ10に対する係入方向と異なる方向である後方へ所定以上の力が作用した場合、ホルダ10を破損することなく、係合爪29が突起部16から係脱して、アンプユニット20とホルダ10との係合状態が解除される。
【0059】
従って、作業者は、車両用コネクタ1が車両に設置された後、アンプユニット20又はケーブル70を後方に引っ張ることによって、ホルダ10を破損することなく、ホルダ10からアンプユニット20を容易に取り外すことができる。そのため、ホルダ10から増幅部を備えるアンプユニット20を容易に取り外すことができる。これにより、メンテナンスのための作業時間および費用の負担が大きくなるといった問題を解消することが可能となる。すなわち、ホルダ10が破損した場合、該ホルダ10を設置した窓ガラス2ごと交換しなければならなくなり、メンテナンスのための作業時間および費用の負担が大きくなるが、本実施例にかかる車両用コネクタ1では、かかる問題を解消することが可能となる。
【0060】
特に、車両用コネクタ1が窓ガラス2のピラー近傍に配置される場合、作業領域が制限されることになるが、ケーブル70を後方に引っ張ることによって、ホルダ10を破損することなく、ホルダ10からアンプユニット20を容易に取り外すことができる。
【0061】
また、作業者が意図せずケーブル70を強く引っ張ってしまった場合であっても、同様に、ホルダ10を破損することなく、該ホルダ10からアンプユニット20を取り外すことができるため、誤作業によって発生する障害を未然に防止することができる。
【0062】
ケーブル70は、図7(b)に示すように、延伸部28および係合爪29と同程度の高さに位置する。そのため、ケーブル70の引張力のほとんどがアンプユニット20の後方への引張力に変換され、ケーブル70の引張力を効率的に係合爪29へ伝えることができる。
【0063】
また、図8に示すように、ケーブル70は、アンプユニット20の後端側の左右中央から引き出されることから、これによっても、ケーブル70の引張力を効率的に係合爪29へ伝えることができる。図8は、ケーブル70を取り付けた車両用コネクタ1の平面模式図である。
【0064】
また、アンプユニット20又はケーブル70が引っ張られた際に、仮に、係合爪29が破損した場合であっても、ホルダ10は破損しておらず、カバー部材22のみを交換すればよいため、ホルダ10を取り外すなどの作業を行う必要がなく、この点でも作業性に優れている。
【0065】
本実施例にかかる車両用コネクタ1では、アンプユニット20に強い引張力が加わった場合、ホルダ10の突起部16が破損しにくい構成としており、アンプユニット20に強い引張力が加わった場合、係合爪29や延伸部28を敢えて破損するような構成にすることによって、より一層、ホルダ10を破損しないような構成にもできる。図9および図10は、上述した係合爪29および延伸部28の構成とは異なる係合爪および延伸部の構成の例を示す図である。
【0066】
図9(a)に示すように、係合爪29と延伸部28との間にスリット30を形成することによって、係合爪29が破損しやすいように構成する。そして、次の第1および第2の条件を満たすように、スリット30を形成する。すなわち、ある範囲の引張力がアンプユニット20の後方へ向けて作用した場合には、図7(c)に示す場合と同様に、係合爪29が破損することなく、アンプユニット20とホルダ10との係合状態が解除される(第1の条件)。また、所定以上の強い引張力がアンプユニット20の後方へ向けて作用した場合には、図9(b)に示すように、係合爪29が破損する(第2の条件)。
【0067】
また、図10に示すように、延伸部28に開孔部31を形成することによって、延伸部28の強度を低下させ、延伸部28が破損しやすいようにしてもよい。この場合も、スリット30と同様に、ある範囲の引張力がアンプユニット20の後方へ向けて作用した場合には、延伸部28が破損することなく、アンプユニット20とホルダ10との係合状態が解除されるようにする。一方、所定以上の強い引張力がアンプユニット20の後方へ向けて作用した場合には、延伸部28が破損するようにする。
【0068】
このように、例えば、図9および図10に示す構成とすることで、アンプユニット20を破損する力(破損強度)は、アンプユニット20とホルダ10との係合力(係合強度)より大きいものの、窓ガラス2とホルダ10との結合力(結合強度)やホルダ10を破損する力(破損強度)よりも小さくなる。かかる構成においても、通常は、所定の力でケーブル70を引っ張ることによって、ホルダ10およびアンプユニット20は破損することなく、アンプユニット20とホルダ10との係合状態が解除される。しかし、なんらかの不具合でアンプユニット20がホルダ10から係脱しないような場合には、作業者はより強くケーブル70を引っ張る。そのため、このような場合には、敢えてアンプユニット20を破損させることで、ホルダ10が窓ガラス2から外れてしまったり、ホルダ10が破損してしまったりすることを防止しつつ、アンプユニット20をホルダ10から取り外し可能としている。
【0069】
なお、車両用コネクタ1を含む破損のレベルとして、アンプユニット20のホルダ10からの離脱(レベル1)、アンプユニット20の破損(レベル2)、音響機器側の信号線の破損(レベル3)、ホルダ10の破損(レベル4)の4段階がある。レベル1では、部品の破損はないため、アンプユニット20をホルダ10へ再度挿入するだけでよく、部品交換等は必要としない。レベル2では、アンプユニット20の交換だけで済むため、比較的簡単に修理することができる。レベル3では、信号線の交換等が必要となり、車内の壁部材を剥がす等の作業が生じ、やや修理が困難となる。レベル4では、窓ガラス2の交換が必要となり、修理作業が大規模となり、費用がかさむ。これは、窓ガラス2にホルダ10が組み付けられているからである。本実施例にかかる車両用コネクタ1では、上述した構成とすることで、少なくとも、レベル3またはレベル4となることを防止するようにしており、これにより、メンテナンスのための作業時間および費用の負担が大きくなるといった問題を解消することが可能となる。例えば、ケーブル70が強く引っ張られた場合、アンプユニット20がホルダ10から外れることから、音響機器とケーブル70との接続を保護することができ、これにより、レベル3の状態になることを防止することができる。また、ケーブル70が強く引っ張られた場合であっても、ホルダ10を破損させることなく、アンプユニット20がホルダ10から外れることから、これにより、レベル4の状態になることを防止することができる。
【0070】
なお、上述の実施例では、ホルダ10の側壁13の上端に突起部16を形成することとしたが、突起部16の配置はこれに限定されるものではない。例えば、側壁13の内側又は外側に突起部16を設けてもよい。
【0071】
また、上述の実施例では、突起部16に係合する係合部として、係合爪29を一例に挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、延伸部28の先端に、貫通孔45を有する部材46を係合部として設け、かかる係合部の貫通孔45内に突起部16を位置させることで、突起部16に係合させるようにしてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかるコネクタは、保守管理などの作業性を向上させたい場合や誤作業によって発生する障害を未然に防止する場合に有効であり、特に、車両の窓ガラス上に形成される車両用アンテナの接続端子と接続する技術への適用に適している。
【符号の説明】
【0074】
1 車両用コネクタ
3 車両用アンテナ
5 受信機(後段の機器)
10 ホルダ
11a,11b 接続端子
13a 前方側側壁
13b 後方側側壁(スライド部)
15 切欠部(スライド部)
16 突起部
17 突起部の傾斜面
20 アンプユニット
23 回路基板(増幅部)
26 突出部
28 延伸部
29 係合爪(係合部)
37,38 係合爪の傾斜面
70 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナに接続される接続端子を有するホルダと、
前記ホルダに係合し、前記接続端子を介して前記アンテナから入力される信号を増幅する増幅部を有するアンプユニットと
を備え、
前記ホルダの表面には、突起部が形成され、
前記アンプユニットには、前記ホルダの前記突起部に係合する係合部が形成され、
前記アンプユニットに前記ホルダに対する係入方向と異なる方向へ所定以上の力が作用した場合、前記係合部が前記突起部から係脱して、前記アンプユニットと前記ホルダとの係合状態が解除されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記アンプユニットと前記ホルダとの係合力は、前記アンテナの設置対象と前記ホルダとの結合力および前記ホルダを破損する力よりも弱いことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ホルダには、
前記アンプユニットをスライドさせ、前記係合部を前記突起部へ向けて案内するスライド部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記突起部は、
前記係合部の係入方向側に傾斜面を有することを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記アンプユニットは、
前記ホルダへの係入方向に延伸する延伸部と、
前記延伸部の先端に前記係合部として形成された係合爪と
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記係合爪は、
前記ホルダへの係入方向側と前記ホルダからの係脱方向側のそれぞれに傾斜面を有することを特徴とする請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記係合爪と前記延伸部との間にスリットが形成されたことを特徴とする請求項5又は6に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−51186(P2013−51186A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189897(P2011−189897)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】