説明

コネクタ

【課題】端子金具の不正な姿勢での挿入を確実に規制する。
【解決手段】コネクタは、ゴム栓ホルダ60の貫通孔61と一括ゴム栓50のシール孔51を順に通過してハウジング10の端子収容室13に挿入される端子金具40と、端子金具40の外面から突出する規制突起44と、端子金具40が端子収容室13に挿入された状態では、貫通孔61を貫通した状態となる電線46と、端子収容室13内に臨むように設けられ、端子金具40が不正な姿勢で端子収容室13に挿入されたときに、途中で、規制突起44を干渉させることで端子金具40の挿入動作を規制する規制部17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の端子収容室が形成されたハウジングと、端子収容室と対応する複数のシール孔が形成され、ハウジングの後端部に取り付けられた一括ゴム栓と、シール孔と対応する複数の貫通孔が形成され、一括ゴム栓の後面と対向するように取り付けられることで一括ゴム栓を取り付け状態に保持するゴム栓ホルダと、貫通孔とシール孔を順に通過して端子収容室に挿入される端子金具とを備えたコネクタが開示されている。
【0003】
貫通孔には、端子金具の外面の凸部と対応する凹部が形成されており、端子金具が正しい姿勢で挿入されるときには、凸部が凹部を通過することによって、端子金具の挿入動作が可能となる。また、端子金具が不正な姿勢(例えば、反転した姿勢)で挿入されようとしたときには、凸部が貫通孔の孔縁と干渉することによって、端子金具の挿入動作が阻止される。このように、特許文献1のコネクタにおいては、ゴム栓ホルダに、端子金具の不正な姿勢での挿入を防止する手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2813620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコネクタでは、端子金具が端子収容室内に挿入されると、端子金具に接続されて端子金具の後方へ導出された電線は、貫通孔に貫通された状態となる。そのため、電線の外径が大きくて、端子金具の挿入方向と平行に視たときに、電線の外周部が端子金具の外面から突出する形態である場合は、貫通孔の内面と端子金具の外面との間のクリアランスが大きくなる。このような形態のものに対し、特許文献1に記載されたゴム栓ホルダで端子金具の不正な姿勢での挿入を規制する手段を適用しても、凸部と凹部との嵌合代が不足したり、凸部と凹部の嵌合代を確保できなったりするため、端子金具の不正な姿勢の挿入を規制する効果は期待できない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具の不正な姿勢での挿入を確実に規制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の端子収容室が形成されたハウジングと、前記端子収容室と対応する複数のシール孔が形成され、前記ハウジングの後端部に取り付けられた一括ゴム栓と、前記シール孔と対応する複数の貫通孔が形成され、前記一括ゴム栓の後面と対向するように取り付けられることで前記一括ゴム栓を前記ハウジングへの取り付け状態に保持するゴム栓ホルダと、前記ゴム栓ホルダの後方から前記貫通孔と前記シール孔を順に通過して前記端子収容室に挿入される端子金具と、前記端子金具の外面から前記端子収容室への挿入方向と交差する方向へ突出する規制突起と、前記端子金具の後端部に接続され、前記端子金具が前記端子収容室に挿入された状態では、前記貫通孔を貫通した状態となる電線と、前記端子収容室内に臨むように設けられ、前記端子金具が不正な姿勢で前記端子収容室に挿入されようとしたときに、前記規制突起を干渉させることで前記端子金具の挿入動作を規制する規制部とを備えているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記端子収容室の内壁面から突出した形態であって、前記規制部を構成する固定側干渉部と、前記端子収容室に臨むように前記ハウジングに取り付けられ、前記端子収容室に対する前記端子金具の挿入を許容する仮係止位置と、前記端子収容室に挿入された前記端子金具に対して抜止め可能に当接する本係止位置との間での変位を可能とされたリテーナと、前記リテーナに形成され、前記リテーナが仮係止位置にあるときに、前記規制部を構成する可動側干渉部とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記端子収容室の内壁に形成されたランスと、前記端子金具の外面から前記端子収容室への挿入方向と交差する方向へ突出した形態であって、前記ランスに当接することで、前記端子収容室に挿入された前記端子金具を抜止めする抜止め突起と、前記端子収容室内に臨むように設けられ、前記端子金具が正規の姿勢で前記端子収容室に挿入されるときに前記抜止め突起を通過させる逃がし凹部と、前記端子金具の外面から前記端子収容室への挿入方向と交差する方向へ突出した形態であって、前記規制突起が前記規制部と干渉した状態において、前記逃がし凹部の内面に当接することで、前記端子金具の姿勢の傾きを抑制する傾き抑制突起とを備えているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記貫通孔における前記端子金具の貫通方向と平行に投影した仮想投影面上において、前記電線の外周部の一部のみが前記端子金具の外面から突出するようになっており、前記貫通孔の内周が、前記電線の外面に沿った形状の電線用回避凹部と、前記端子金具の外面に沿った形状の端子用位置決め凹部とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
端子金具が不正な姿勢で端子収容室に挿入されるのを規制する規制部は、端子収容室内に臨む位置、即ち端子金具の挿入過程における電線の移動経路よりも前方の位置に配置されている。したがって、規制部の形状、位置、寸法等は、電線の外径寸法の影響を受けることなく、規制突起の形状、位置、寸法に合わせて好適な形態にすることができる。したがって、本発明によれば、電線の外径寸法と端子金具の大きさとの関係に左右されることなく、端子金具の不正な姿勢での挿入を確実に規制することができる。
【0011】
<請求項2の発明>
規制部を、端子収容室の内壁面の固定側干渉部と、リテーナの可動側干渉部とによって構成しているので、規制突起と規制部との干渉代を十分大きく確保することが可能である。
【0012】
<請求項3の発明>
逃がし凹部の内面に傾き抑制突起を当接させて、端子金具の姿勢の傾きを抑制したので、端子金具の姿勢の傾きに起因して規制部に対する規制突起の干渉代が減少することを、防止できる。
【0013】
<請求項4の発明>
貫通孔における端子金具の貫通方向と平行に投影した仮想投影面上において、電線の外周部の一部のみが端子金具の外面から突出するようになっている場合、貫通孔を電線に外接するような方形状に形成してしまうと、貫通孔内において端子金具の姿勢が定まらない。本発明では、貫通孔の内周に、電線の外面に沿った形状の電線用回避凹部と、端子金具の外面に沿った形状の端子用位置決め凹部とを形成したので、端子用位置決め凹部に端子金具の外周部が嵌合することによって、端子金具の姿勢の傾きが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1のコネクタにおいてリテーナが本係止位置にある状態をあらわす断面図
【図2】リテーナが仮係止位置にある状態をあらわすコネクタの断面図
【図3】端子金具の側面図
【図4】端子金具の平面図
【図5】図3のA−A線断面図
【図6】リテーナが本係止位置にある状態の端子収容室をあらわす背面図
【図7】リテーナが仮係止位置にあって、端子収容室に端子金具が正しい姿勢で挿入されている状態をあらわす背面図
【図8】リテーナの端子挿通孔33の形状をあらわす背面図
【図9】リテーナが仮係止位置にあって、端子収容室に端子金具が上下範囲した不正な姿勢で挿入されている状態をあらわす背面図
【図10】端子金具に傾き抑制突起42が形成されていないことが原因で、端子金具が傾いている様子を仮想的にあらわした背面図
【図11】ゴム栓ホルダの貫通孔に端子金具が挿入されている状態をあらわす背面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図11を参照して説明する。図1,2に示すように、本実施形態のコネクタは、ハウジング10と、リテーナ30と、複数の端子金具40と、複数本の電線46と、一括ゴム栓50と、ゴム栓ホルダ60とを備えて構成されている。尚、以下の説明において、前後の方向は、図1,2における右方を前方とし、左方を後方とする。また、上下の方向及び左右の方向については、各部品を後方から視た図5〜11を基準とする。
【0016】
図1,2に示すように、ハウジング10は、ハウジング本体11と、ハウジング本体11の前端部に組み付けられたフロント部材12とを備え構成されている。ハウジング10の内部には、前後方向に貫通する複数の端子収容室13が形成されている。各端子収容室13の前端部には、その下面壁に沿って前方へ片持ち状に延出するランス14が形成されている。ハウジング10には、その上下両面に開放された取付孔15が形成されている。取付孔15は、ランス14よりも後方の位置において、全ての端子収容室13に連通している。取付孔15には、上方からリテーナ30が組み付けられている。
【0017】
図1,2,6,7,9に示すように、端子収容室13の下面壁には、取付孔15の後方に隣接する部分を突出させた形態の固定側干渉部16が、端子収容室13の全幅(左右方向全領域)に亘って形成されている。固定側干渉部16の後面は、前方に向かって上り勾配となるように傾斜している。固定側干渉部16は、端子収容室13内における端子金具40の挿入経路に臨むように配置されている。また、固定側干渉部16は、後述する可動側干渉部35とともに、規制部17を構成する。図6,7,9,10に示すように、固定側干渉部16には、端子収容室13の幅方向(左右方向)における中央よりも少し右寄りの部分を略半円弧状に切欠した形態の下面側干渉回避凹部18が形成されている。
【0018】
図6,7,9に示すように、端子収容室13の上面壁には、取付孔15の後方に隣接するように突部19と、逃がし凹部20と、上面側干渉回避凹部21とが形成されている。突部19は、端子収容室13の幅方向における左端部に配置されている。逃がし凹部20は、突部19の下面よりも上方へ凹んだ形体であり、端子収容室13の幅方向(左右方向)における中央部に配置されている。上面側干渉回避凹部21は、突部19の下面よりも上方であり且つ逃がし凹部20よりも下方の高さまで凹ませた形態であり、端子収容室13の幅方向(左右方向)における右端部に配置されている。
【0019】
図1,2に示すように、リテーナ30は、取付孔15内に収容される本体部31と、本体部31の上端縁から前方へ延出した形態の操作部32とを一体に形成したものである。本体部31には、前後方向に貫通する複数の端子挿通孔33が、各端子収容室13と対応するように形成されている。図1,2,6,8に示すように、端子挿通孔33の上面には、係止突起34が形成されている。リテーナ30は、ハウジング10に対し仮係止位置(図2,7,9を参照)と、仮係止位置よりも下方の本係止位置(図1,6を参照)とに保持されるようになっている。
【0020】
図7に示すように、端子収容室13に対する端子金具40の挿入方向と平行に後方から端子収容室13を視た仮想投影面上において、リテーナ30が仮係止位置にある状態では、係止突起34が端子金具40の挿入経路から上方へ退避するので、端子収容室13に対する端子金具40の挿入動作が許容される。同じく仮想投影面上において、リテーナ30が本係止位置に移動すると、図6に示すように、係止突起34が、端子金具40の挿入経路上(即ち、突部19の下面より更に下方)へ進出し、挿入済みの端子金具40に対して係止突起34が係止することにより、端子金具40が抜止めされるようになっている。
【0021】
図7,9に示すように、端子挿通孔33の内周には、リテーナ30が仮係止位置にあるときに、上記仮想投影面上において、固定側干渉部16における下面側干渉回避凹部18よりも左側の領域の上面から、上方(端子金具40の挿入経路側)に進出する可動側干渉部35が形成されている。可動側干渉部35は、端子収容室13内における端子金具40の挿入経路に臨むように配置されている。リテーナ30が本係止位置へ移動すると、可動側干渉部35は、固定側干渉部16の上面よりも下方へ移動する。
【0022】
図1〜4に示すように、端子金具40は、全体として前後方向に細長く、端子金具40の前端側領域には角筒部41が形成されている。図3,5,7に示すように、角筒部41の下面には、傾き抑制突起42が形成されている。傾き抑制突起42は、端子金具40が上下反転した不正な姿勢で端子収容室13に挿入されたときに、端子金具40の姿勢の傾きを抑制することにより、規制部17と規制突起44との干渉代を確保するためのものである。
【0023】
図3〜5,7に示すように、角筒部41の上面には、抜止め突起43と規制突起44が形成されている。図1に示すように、抜止め突起43は、端子金具40が端子収容室13内の正規位置まで挿入されたときに、ランス14と係止することにより端子金具40を抜止めする。図4,5,7に示すように、この抜止め突起43は、幅方向(左右方向)における角筒部41の中央位置に配置されている。図9に示すように、規制突起44は、端子金具40が上下反転した不正な姿勢で端子収容室13に挿入されたときに、規制部17と干渉することによって端子金具40の挿入動作を規制するためのものである。図4,5,7に示すように、規制突起44は、幅方向における中央よりも右寄りの位置(幅方向における右半分の領域)に配置されている。また、図3,4に示すように、前後方向において、規制突起44は抜止め突起43よりも前方に配置されている。
【0024】
図1〜4に示すように、端子金具40の後端側領域に形成した電線圧着部45には、電線46が接続され、接続された電線46は、端子金具40の後方へ略同軸状に延出されている。図11に示すように、電線46の外径は、角筒部41の上下寸法及び左右寸法よりも大きい。したがって、後述するゴム栓ホルダ60の貫通孔61における端子金具40の貫通方向と平行に投影した仮想投影面上においては、電線46の外周部の一部が、角筒部41(端子金具40)の外面から外側へ突出している。
【0025】
図1,2に示すように、一括ゴム栓50は、ハウジング10の後端部に取り付けられている。一括ゴム栓50には、前後方向に貫通する複数のシール孔51が、端子収容室13と対応する配置で形成されている。端子金具40を端子収容室13に挿入する過程では、端子金具40がシール孔51を拡径するように弾性変形させながら通過する。そして、端子金具40が端子収容室13内に正しく挿入された状態では、電線46がシール孔51の内周に液密状に密着する。
【0026】
図1,2に示すように、ゴム栓ホルダ60は、一括ゴム栓50の後面に当接又は接近して対向するようにハウジング10に組み付けられている。ゴム栓ホルダ60には、前後方向に貫通する複数の貫通孔61が、シール孔51及び端子収容室13と対応するように配置されて形成されている。ゴム栓ホルダ60は、一括ゴム栓50がハウジング10から離脱しないように組み付け状態に保持するためのものである。
【0027】
貫通孔61の開口形状は全体として概ね方形であるが、図11に示すように、貫通孔61に対する端子金具40の貫通方向と平行に投影した仮想投影面上においては、貫通孔61の内周を凹ませた形態の、4つの電線用回避凹部62と、1つの端子用位置決め凹部63とが形成されている。電線用回避凹部62は、貫通孔61の上面、下面、左側面及び右側面を円弧状に凹ませた形態であり、電線46の外周形状に沿った形状である。端子用位置決め凹部63は、貫通孔61の右上角部を、凹ませた形態である。端子金具40が正しい姿勢で貫通孔61に進入すると、規制突起44が端子用位置決め凹部63内を通過するようになっている。この端子用位置決め凹部63の形状は、端子金具40の外周のうち規制突起44の外面(上面及び右側面)の形状に沿った形状である。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。端子金具40の挿入はリテーナ30を仮係止位置に保持した状態で行われる。端子金具40は、ゴム栓ホルダ60の後方から貫通孔61とシール孔51を順に通過して、端子収容室13内に収容される。端子金具40が貫通孔61に挿入されると、規制突起44が端子用位置決め凹部63に嵌合することにより、端子金具40の姿勢が、挿入方向と平行な軸線周りに傾くことが防止され、端子金具40は、所定の位置に位置決めされる。また、端子金具40の挿入途中では、規制突起44が上面側干渉回避凹部21内を通過し、抜止め突起43が逃がし凹部20内を通過し、傾き抑制突起42が下面側干渉回避凹部18内を通過する。
【0029】
端子金具40が正規位置まで挿入されると、ランス14と抜止め突起43との係止により、端子金具40が抜止めされる。全ての端子金具40を挿入し終わったら、リテーナ30を本係止位置へ移動させる。すると、係止突起34が角筒部41の後端縁に係止することにより、端子金具40が抜止めされる。
【0030】
端子金具40が上下反転した不正な姿勢で挿入された場合は、角筒部41の前端部がリテーナ30の端子挿通孔33に侵入したところで、図9に示すように、規制突起44が、規制部17を構成する固定側干渉部16に当接し、この規制突起44の当接により、それ以上の端子金具40の挿入動作が規制される。また、傾き抑制突起42が、逃がし凹部20内に進入してその左側の内側面、つまり突部19の右外側面に当接し、この傾き抑制突起42の当接により、端子金具40の反時計周り方向の姿勢の傾き(端子金具40の挿入方向と平行な軸線を中心とする回転)が規制される。
【0031】
もし、傾き抑制突起42が形成されていない場合は、図10に示すように、端子金具40が大きく傾いて、規制突起44と固定側干渉部16との干渉代が減少するので、不正な姿勢での端子金具40の挿入を規制する機能の信頼性が低下する。これに対し、本実施形態では、端子金具40の姿勢の傾きを抑制しているので、規制突起44と固定側干渉部16との干渉代を、十分大きく確保することができる。
【0032】
また、固定側干渉部16の後面は、正しい姿勢で挿入された端子金具40の挿入動作を円滑にするための傾斜面となっている。そのため、端子金具40を過度に強く押し込んだ場合には、規制突起44が傾斜面上を擦れながら前進し、端子金具40が不正な姿勢のままで挿入されていくことが懸念される。しかし、本実施形態では、固定側干渉部16よりも前方(挿入方向における奥方)に、可動側干渉部35が存在しているので、この可動側干渉部35に規制突起44が突き当たることによって、端子金具40の不正な姿勢での挿入が防止される。
【0033】
上述のように、本実施形態1のコネクタは、複数の端子収容室13が形成されたハウジング10と、端子収容室13と対応する複数のシール孔51が形成された一括ゴム栓50と、シール孔51と対応する複数の貫通孔61が形成されたゴム栓ホルダ60と、ゴム栓ホルダ60の後方から貫通孔61とシール孔51を順に通過して端子収容室13に挿入される端子金具40と、端子金具40の外面から端子収容室13への挿入方向と交差する方向へ突出する規制突起44と、端子金具40の後端部に接続され、端子金具40が端子収容室13に挿入された状態では、貫通孔61を貫通した状態となる電線46と、端子収容室13内に臨むように設けられ、端子金具40が不正な姿勢で端子収容室13に挿入されたときに、規制突起44を干渉させることで端子金具40の挿入動作を規制する規制部17とを備えている。
【0034】
この構成によれば、端子金具40が不正な姿勢で端子収容室13に挿入されるのを規制する規制部17は、端子収容室13内に臨む位置、即ち端子金具40の挿入過程における電線46の移動経路よりも前方の位置に配置されている。したがって、規制部17の形状、位置、寸法等は、電線46の外径寸法の影響を受けることなく、規制突起44の形状、位置、寸法に合わせて好適な形態にすることができる。したがって、本実施形態によれば、電線46の外径寸法と端子金具40の大きさとの関係に左右されることなく、端子金具40の不正な姿勢での挿入を確実に規制することができる。
【0035】
また、本実施形態のコネクタは、端子収容室13の内壁面から突出した形態であって、規制部17を構成する固定側干渉部16と、端子収容室13に臨むようにハウジング10に取り付けられ、端子収容室13に対する端子金具40の挿入を許容する仮係止位置と、端子収容室13に挿入された端子金具40に対して抜止め可能に当接する本係止位置との間での変位を可能とされたリテーナ30と、リテーナ30に形成され、リテーナ30が仮係止位置にあるときに、規制部17を構成する可動側干渉部35とを備えている。規制部17を、端子収容室13の内壁面の固定側干渉部16と、リテーナ30の可動側干渉部35とによって構成しているので、規制突起44と規制部17との干渉代を十分大きく確保することが可能である。
【0036】
また、端子収容室13の内壁に形成されたランス14と、端子金具40の外面から端子収容室13への挿入方向と交差する方向へ突出した形態であって、ランス14に当接することで、端子収容室13に挿入された端子金具40を抜止めする抜止め突起43と、端子収容室13内に臨むように設けられ、端子金具40が正規の姿勢で端子収容室13に挿入されるときに抜止め突起43を通過させる逃がし凹部20と、端子金具40の外面から端子収容室13への挿入方向と交差する方向へ突出した形態であって、規制突起44が規制部17と干渉した状態において、逃がし凹部20の内面に当接することで、端子金具40の姿勢の傾きを抑制する傾き抑制突起42とを備えている。この構成によれば、逃がし凹部20の内面に傾き抑制突起42を当接させて、端子金具40の姿勢の傾きを抑制したので、端子金具40の姿勢の傾きに起因して規制部17に対する規制突起44の干渉代が減少することを、防止できる。
【0037】
また、本実施形態では、貫通孔61における端子金具40の貫通方向と平行に投影した仮想投影面上において、電線46の外周部の一部のみが端子金具40の外面から突出するようになっているのであるが、この場合、貫通孔61を電線46に外接するような方形状に形成してしまうと、貫通孔61内において端子金具40の姿勢が定まらない。そこで、本実施形態では、貫通孔61の内周に、電線46の外面に沿った形状の電線用回避凹部62と、端子金具40の外面に沿った形状の端子用位置決め凹部63とを形成した。これにより、端子用位置決め凹部63に端子金具40の外周部が嵌合することによって、端子金具40の姿勢の傾きが防止される。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、規制部を、端子収容室の内壁面に形成した固定側干渉部と、リテーナに形成した可動側干渉部とによって構成したが、規制部は、端子収容室の内壁面だけに形成してもよく、リテーナだけに形成してもよい。
(2)上記実施形態では、リテーナを備えたコネクタについて説明したが、本発明は、リテーナを備えないコネクタにも適用できる。
(3)上記実施形態では、端子金具の傾きを抑制する機能を兼ね備える逃がし凹部を、端子収容室の内壁面のみに形成したが、端子金具の傾きを抑制する機能を兼ね備える逃がし凹部は、端子収容室とリテーナの両方に形成してもよく、リテーナのみに形成してもよい。
(4)上記実施形態では、端子金具の抜止め手段である抜止め突起との干渉を回避するための逃がし凹部が、端子金具の傾きを抑制する手段としての機能を兼ね備えるようにしたが、本発明によれば、逃がし凹部が端子金具の傾きを抑制する機能を兼ね備えない形態としてもよい。この場合、端子金具の傾きを抑制する手段として、逃がし凹部とは別に専用の傾き抑制手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…ハウジング
13…端子収容室
14…ランス
16…固定側干渉部
17…規制部
20…逃がし凹部
30…リテーナ
35…可動側干渉部
40…端子金具
42…傾き抑制突起
43…抜止め突起
44…規制突起
46…電線
50…一括ゴム栓
51…シール孔
60…ゴム栓ホルダ
61…貫通孔
62…電線用回避凹部
63…端子用位置決め凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子収容室が形成されたハウジングと、
前記端子収容室と対応する複数のシール孔が形成され、前記ハウジングの後端部に取り付けられた一括ゴム栓と、
前記シール孔と対応する複数の貫通孔が形成され、前記一括ゴム栓の後面と対向するように取り付けられることで前記一括ゴム栓を前記ハウジングへの取り付け状態に保持するゴム栓ホルダと、
前記ゴム栓ホルダの後方から前記貫通孔と前記シール孔を順に通過して前記端子収容室に挿入される端子金具と、
前記端子金具の外面から前記端子収容室への挿入方向と交差する方向へ突出する規制突起と、
前記端子金具の後端部に接続され、前記端子金具が前記端子収容室に挿入された状態では、前記貫通孔を貫通した状態となる電線と、
前記端子収容室内に臨むように設けられ、前記端子金具が不正な姿勢で前記端子収容室に挿入されようとしたときに、前記規制突起を干渉させることで前記端子金具の挿入動作を規制する規制部とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記端子収容室の内壁面から突出した形態であって、前記規制部を構成する固定側干渉部と、
前記端子収容室に臨むように前記ハウジングに取り付けられ、前記端子収容室に対する前記端子金具の挿入を許容する仮係止位置と、前記端子収容室に挿入された前記端子金具に対して抜止め可能に当接する本係止位置との間での変位を可能とされたリテーナと、
前記リテーナに形成され、前記リテーナが仮係止位置にあるときに、前記規制部を構成する可動側干渉部とを備えていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子収容室の内壁に形成されたランスと、
前記端子金具の外面から前記端子収容室への挿入方向と交差する方向へ突出した形態であって、前記ランスに当接することで、前記端子収容室に挿入された前記端子金具を抜止めする抜止め突起と、
前記端子収容室内に臨むように設けられ、前記端子金具が正規の姿勢で前記端子収容室に挿入されるときに前記抜止め突起を通過させる逃がし凹部と、
前記端子金具の外面から前記端子収容室への挿入方向と交差する方向へ突出した形態であって、前記規制突起が前記規制部と干渉した状態において、前記逃がし凹部の内面に当接することで、前記端子金具の姿勢の傾きを抑制する傾き抑制突起とを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記貫通孔における前記端子金具の貫通方向と平行に投影した仮想投影面上において、前記電線の外周部の一部のみが前記端子金具の外面から突出するようになっており、
前記貫通孔の内周が、前記電線の外面に沿った形状の電線用回避凹部と、前記端子金具の外面に沿った形状の端子用位置決め凹部とを備えて構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−84350(P2013−84350A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221547(P2011−221547)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】