説明

コネクタ

【課題】厚さの異なる導電性布帛に容易に接続させることができるコネクタを提供する。
【解決手段】導電性布帛に電気的に接続されるコネクタにおいて、コネクタは、クリップ体1と、クリップ体1に嵌め込まれる環状体と、を備え、クリップ体1は、先端面Aから後端側へと所定の長さ切り込まれて形成され、導電性布帛を挟み込むためのスリット11と、スリット11に平行な両外側面Bの所定の長さの範囲Lに、両外側面Bの各々の全幅に亘って設けられた凹部12とを有し、環状体が、クリップ体1の凹部12に嵌め込まれたときに、スリット11の間隙が小さくなるようにクリップ体1に押圧力が加わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性布帛に電気的に接続されるコネクタに関する。更に詳しくは、本発明は、接続時に導電性布帛が有する導電糸等を束ねるなどの作業を必要とせず、厚さの異なる導電性布帛に容易に接続させることができ、導電性布帛の厚さ方向に押圧力が加わるとともに、十分な押圧力が維持されるため、電気的な接続が安定し、接触抵抗を低下させることができるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織物、編み物の構成糸の一部に導電糸を使用し、この導電糸に通電し、発熱させて昇温させる各種のヒータ部材が知られており、多くの用途において用いられている。例えば、車両、特に乗用車等のシートでは、シートクッションなどの表皮材の裏面にヒータ部材を貼着し、冬期等の寒冷時に乗員を下方等から暖めることができるシートが知られている。また、これらのヒータ部材では、通常、端部に接続用の帯状部材が取り付けられており、この帯状部材に接続されたコネクタが有する電線を介して電源から導電糸に給電されて導電糸が発熱し、ヒータ部材が昇温する構成となっている。
【0003】
また、車両において、乗員がシートに着座しているか否かの検知情報が、シートベルトの着用警告及びエアバッグ展開の可否判断等のために用いられている。例えば、車両のエアバッグ装置では、事故時にシートに乗員が着座していればエアバッグが展開され、乗員が着座していなければエアバッグが展開されないように制御されている。このように、乗員の着座の有無を検出するための種々の方法が知られており、その代表的なものとして、乗員の重量を検出するセンサ、及び静電容量を検出するセンサなどが挙げられる。そして、これらのセンサの場合は、導電性布帛に接続されたコネクタ及び電線を介して、外部の制御機器等に接続され、信号の遣り取りがなされ、制御されている。
【0004】
フラットな部材との電気的接続を行うコネクタとして、例えば、アーク用接触子を備え、平型導体部材に嵌合させるときにはアーク用接触子が導通のための接触子より先に接触し、引き離すときにはアーク用接触子が導通のための接触子より後に引き離される構成のフラットコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、このフラットコネクタでは、活線状態で嵌合、又は引き離しをしたときにアークが発生しても、導通のための接触子等が損傷しないと説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案 第3006448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたフラットコネクタでは、嵌合された平型導体部材は、接触片の弾性によるバネ力のみで押圧され、固定されているため、接触片の経時等による劣化によって押圧力が低下することがある。
また、導電性布帛が有する導電糸等と、コネクタとは、従来、導電糸等を束ねる、若しくは撚り合わせた上、圧着用スリーブ、スプライス等を用いてかしめる等の方法によって接続されていたが、工数がかかるとともに、専用の治具も必要であり、効率がよいとはいえない。
【0007】
本発明は前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、接続時に導電性布帛が有する導電糸等を束ねるなどの作業を必要とせず、厚さの異なる導電性布帛に容易に接続させることができ、電気的な接続が安定し、接触抵抗を低下させることができるコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
1.導電性布帛に電気的に接続されるコネクタにおいて、
前記コネクタは、クリップ体と、前記クリップ体に嵌め込まれる環状体と、を備え、
前記クリップ体は、先端面から後端側へと所定の長さ切り込まれて形成され前記導電性布帛を挟み込むためのスリットと、前記スリットに平行な両外側面の前記所定の長さの範囲に、前記両外側面の各々の全幅に亘って設けられた凹部とを有し、
前記環状体が、前記クリップ体の前記凹部に嵌め込まれたときに、前記スリットの間隙が小さくなるように前記クリップ体に押圧力が加わることを特徴とするコネクタ。
2.前記環状体は、内側面に凸部を有し、前記凸部が前記クリップ体の前記凹部に嵌め込まれる前記1.に記載のコネクタ。
3.前記環状体の内側面は、2組の互いに略平行の平面からなり、各々の平面間の寸法が異なっており、前記環状体を前記クリップ体に嵌め込むときに、前記環状体の前記内側面のうちのいずれか1組が、前記クリップ体の前記凹部に嵌め込まれる前記1.に記載のコネクタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコネクタでは、クリップ体はスリットと凹部とを有し、環状体がクリップ体に嵌め込まれたときに、クリップ体に押圧力が加わり、その結果、スリットに挟み込まれた導電性布帛の厚さ方向に押圧力が加わるとともに、十分な押圧力が維持されるため、電気的な接続が安定し、接触抵抗を低下させることもできる。更に、工数を削減させることもでき、コスト面でも有利である。
また、環状体は、内側面に凸部を有し、凸部がクリップ体の凹部に嵌め込まれる場合は、凸部が凹部に嵌め込まれ、スリットに挟み込まれた導電性布帛の厚さ方向により十分な押圧力が加わるとともに、この押圧力が維持される。
更に、環状体の内側面は、2組の互いに略平行の平面からなり、各々の平面間の寸法が異なっており、環状体をクリップ体に嵌め込むときに、環状体の内側面のうちのいずれか1組が、クリップ体の凹部に嵌め込まれる場合は、厚さが異なる導電性布帛であっても、所要の押圧力を加えることができるとともに、十分な押圧力が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ヒータ部材(導電性布帛)に電気的に接続された本発明のコネクタの一例及びこのコネクタに接続された電線の一部を説明するための平面図である。
【図2】本発明のコネクタが備えるクリップ体の一例、及び接続された電線の一部の平面図である。
【図3】図2のクリップ体の側面図である。
【図4】本発明のコネクタが備える環状体の一例を側方からみた模式的な断面図である。
【図5】図4の環状体と比べて凸部の高さが低い環状体の他の例を側方からみた模式的な断面図である。
【図6】クリップ体が有する凹部に、環状体が有する凸部が嵌め合わされ、クリップ体が有するスリットに接続部材(導電性布帛)の一端部が挟み込まれた様子を説明するための模式的な断面図である。
【図7】本発明のコネクタが備えるクリップ体の他の例の模式的な斜視図である。
【図8】図7のクリップ体に嵌め込まれて用いられる環状体の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図1〜8を参照して詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本発明のコネクタ(図1参照)は、導電性布帛(図1のヒータ部材101又は帯状部材102参照)に電気的に接続されるコネクタ10であって、クリップ体1(図2、3及び7参照)と、クリップ体1に嵌め込まれる環状体2(図4、5及び8参照)と、を備える。また、クリップ体1は、先端面A(図2、3参照)から後端側14(図2、3参照)へと所定の長さ(L)切り込まれて形成され、導電性布帛101又は102を挟み込むためのスリット11(図3、6及び7参照)と、スリット11に平行な両外側面B(図2、3参照)の長さLの範囲に、両外側面Bの各々の全幅に亘って設けられた凹部12とを有する(図2、3、6及び7参照)。更に、環状体2が、クリップ体1の凹部12に嵌め込まれたときに(図6参照)、スリット11の間隙が小さくなるようにクリップ体1に押圧力が加わる。これにより、スリット1に挟み込まれた導電性布帛(図1の導電性布帛102参照)に押圧力が加わり、固定される。このようにして、スリット1の内壁面と電線3とが電気的に接続され、導電性布帛101又は102と電線3とが電気的に接続される。
【0013】
[1]クリップ体
前記「クリップ体1」は、先端面Aから後端側14へと所定の長さL切り込まれて形成されたスリット11を有する。このスリット11は、クリップ体1の先端面Aから後端側14(電線3が接続されている側、図1〜3参照)へと、クリップ体1の全幅が所定の長さに亘って切り込まれて形成されている。即ち、クリップ体1の後端側14に位置する基端部Sから2片の布帛挟持用片1a(図3参照)が先端面Aに向かって延設されており、これら2片の布帛挟持用片1aの間にスリット11が形成されている。
【0014】
また、クリップ体1は、スリット11に平行な両外側面Bのうちのスリット11が形成されている所定の長さの範囲に、両外側面Bの各々の全幅に亘って設けられた凹部12を有する。即ち、2片の布帛挟持用片1aの各々の外側面に凹部12が設けられている。そして、凹部12に環状体2が嵌め込まれることで、クリップ体1のスリット11の間隙が小さくなるように押圧力が加わる。これにより、スリット11に挟み込まれた導電性布帛101又は102に押圧力が加わり、コネクタ1が導電性布帛101又は102に接続され、固定される。
【0015】
更に、凹部12は、クリップ体1の両外側面Bの各々の全幅に亘って設けられるとともに、通常、2片のそれぞれの布帛挟持用片1aの幅方向と略平行な方向に全幅に亘って設けられる。また、凹部12は、布帛挟持用片1aの先端面(クリップ体1の先端面A)及び布帛挟持用片1aの基端部Sの各々から、先端面Aと基端部Sとの全長さの1/5以上、好ましくは1/4以上、特に好ましくは1/3以上離れた中間部に設けられることが好ましい。これにより、挟み込まれた導電性布帛101又は102に、より容易に、且つ十分な押圧力を加えることができる。
【0016】
凹部12の深さは、コネクタ10の通常の使用時に加わる衝撃や振動等によって嵌め込まれた環状体2が外れてしまわない限り、特に限定されない。凹部12の深さは、コネクタ10の全寸法、及び環状体2の形状、寸法等にもよるが、100μmから10mmとすることができ、1〜5mm、特に1〜3mmであることが好ましい。また、凹部12の幅(クリップ体1の長さ方向の寸法)も特に限定されず、コネクタ10の全寸法、及び環状体2の形状、寸法等にもよるが、3〜20mmとすることができ、5〜15mm、特に8〜13mmであることが好ましい。更に、凹部12の横断面の形状も特に限定されないが、正方形、長方形、台形等であってもよく、側壁面が円弧状、又は斜面であってもよい。側壁面が円弧状、又は斜面であれば環状体2をより容易に嵌め込むことができる。
【0017】
クリップ体1の材質はとくに限定されないが、成形が容易で、且つ十分な強度を有するクリップ体1とすることができる合成樹脂を用いることができる。合成樹脂は特に限定されないが、容易に変形しない十分な強度を有するとともに、剛性が高すぎて折損することがないクリップ体1とすることができる合成樹脂が好ましい。このような合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6等のポリアミド系樹脂等が好ましい。クリップ体1は、これらの合成樹脂を用いて、射出成形法等により所定形状に成形することができる。
【0018】
クリップ体1が合成樹脂製である場合、導電性布帛101又は102と、外部電源又は制御機器等とを電気的に接続させるため、クリップ体1が有する2片の布帛挟持用片1aの内側面には導電層15を配設する必要がある。この導電層15は、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔を接着剤等により貼着して配設してもよく、導電性塗料を塗布し、必要に応じて加熱し、乾燥等をして配設してもよい。また、スリット11に嵌め込まれる金属部材であってもよい。導電性布帛101又は102に電力を供給する、又は信号を伝送するための電線3等は、導電層15と電気的に接続されていればよく、その接続方法は特に限定されない。例えば、後端側に圧着スリーブ及びスプライス等を用いてかしめて接続してもよく、はんだ付けにより接続してもよい。
【0019】
クリップ体1は、銅、アルミニウム等の金属により形成することもでき、金属を用いるときも射出成形法等により所定形状に成形することができる。この場合、クリップ体1が有する2片の布帛挟持用片1aの内側面への導電層15の配設は必要ない。しかし、コネクタ10の外表面が導電体のままでは、通常、コネクタ10として使用することができないため、外表面を樹脂成形体で被覆する、外表面に樹脂コーティング層を形成する等の方法により、コネクタ10の外表面を電気的に絶縁する必要がある。
【0020】
また、クリップ体1は、合成樹脂又は金属等を用いて成形することができるが、前述のように、射出成形法等により一体に成形してもよく、各部、例えば、2片の布帛挟持用片1a、ストッパ13及び後端側14等を、個別に成形し、それぞれの部材を、材質等によってネジ止め、接合、溶接等の方法により結合して一体化してもよい。この場合、布帛挟持用片1a、ストッパ13及び後端側14等の各々の材質は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0021】
[2]環状体
前記「環状体2」は、クリップ体1に嵌め込まれ、クリップ体1が有する2片の布帛挟持用片1aの各々の外側面に設けられた凹部12に嵌め合わされることで、クリップ体1のスリット11の間隙が小さくなるようにクリップ体1に押圧力が加わる。これにより、スリット11に挟み込まれた導電性布帛101又は102に押圧力が加わり、スリット11内の導電層15を介して導電性布帛101又は102と電気的に接続される。
【0022】
また、クリップ体1の凹部12と環状体2とは互いに嵌め合わせられ、固定されるため、通常、クリップ体1から環状体2が抜け落ちてしまうことはないが、環状体2を所定位置により確実に固定するため、環状体2の内側面に凸部21a、21b(図4、5参照)を設けることが好ましい。凸部21a、21bは、クリップ体1の外側面Bに設けられた凹部12に嵌め合わされる位置に、凹部12の形状及び寸法に合わせて設けることが好ましい。更に、凸部21a、21bは、凹部12の全長さに対応して設けられていてもよく、所定の間隔をおいて間欠的に設けられていてもよい。
【0023】
凸部21a、21bの高さは、コネクタ10の通常の使用時に加わる衝撃や振動等によって、環状体2が、嵌め合わされた凹部12から外れてしまわない限り、特に限定されない。凸部21a、21bの高さは、前述の凹部12の深さによって設定することが好ましい。また、凸部21a、21bの横断面の形状も前述の凹部12の横断面の形状によって設定することが好ましい。更に、この凸部21a、21bの側面全体、若しくは上端縁部を円弧面にする、又は傾斜面にすることもできる。これによって、環状体2をクリップ体1の凹部12により容易に嵌め込むことができる。但し、特に、凹部12の側壁面も円弧状、又は斜面であるときは、円弧面の形状及び傾斜角度は、嵌め込み易さと、十分な固定とを勘案して設定することが好ましい。
【0024】
環状体2の材質もとくに限定されず、合成樹脂及び金属等を用いることができる。環状体2は導電糸、通信線等と電気的に接続する必要がないため、成形が容易で、且つ十分な強度を有する環状体2とすることができる合成樹脂が用いられることが好ましい。合成樹脂は特に限定されないが、前述のクリップ体1の成形に用いる各種の合成樹脂を使用し、射出成形法等により所定形状の環状体2を成形することができる。尚、金属製の環状体2であってもよいが、この場合、環状体2の外表面も、樹脂成形体で被覆する、外表面に樹脂コーティング層を形成する等の方法により、電気的に絶縁することが好ましい。
【0025】
[3]クリップ体と環状体との嵌め合わせ
クリップ体1の凹部12と環状体2とは、前述のようにして嵌め合わせ、コネクタ10を導電性布帛101又は102に電気的に接続することができる。この場合、環状体2の内側面が、2組の互いに略平行の平面からなり、各々の平面間の寸法が異なっており、環状体2をクリップ体1に嵌め込むときに、環状体2の内側面のうちのいずれか1組が、クリップ体1の凹部12に嵌め込まれる形態とすることができる。
【0026】
例えば、環状体2の横断面が長方形であり、2組の互いに略平行の平面のうちの一方がクリップ体1の凹部12に嵌め合わされている形態とすることができる。この場合、クリップ体1の凹部12の部分の横断面の形状が長方形であり、互いに略同じ寸法であれば、嵌め合わせたときに殆ど空間が生じることがない。一方、クリップ体1から環状体2が抜け出てしまうことがない限り、環状体2と凹部12との間等に空間が生じる形態であってもよい。また、環状体2の少なくとも内形の横断面が長方形であるときは、短辺側又は長辺側を凹部12に嵌め合わせることで、凹部12間の厚さ方向の寸法が異なるクリップ体1に同じ環状体2を用いることができる。
【0027】
また、環状体2の内側面全体、若しくは内側の端縁部及びクリップ体1の凹部12の内側面全体、若しくは内側の端縁部、のうちの少なくとも一方を円弧面にする、又は傾斜面にすることもできる。これにより、環状体2をクリップ体1の凹部12により容易に嵌め込むことができる。また、環状体2の内側面に凸部21a、21b(図4、5参照)が設けられている場合は、この凸部21a、21bの側面全体、若しくは上端縁部を円弧面にする、又は傾斜面にすることもできる。これによっても、環状体2をクリップ体1の凹部12により容易に嵌め込むことができる。
【0028】
上述のように、環状体2,凹部12、凸部21a、21bに円弧面又は傾斜面を設ける場合、円弧面又は傾斜面は、少なくとも、クリップ体1の先端側となる側、即ち、環状体2をクリップ体1に挟み込む側に設けられておればよい。円弧面又は傾斜面は、クリップ体1の後端側となる側にも設けられていてもよいが、特にその必要はない。更に、円弧面の円弧がより緩やかであり、傾斜面の傾斜角度がより小さい場合は、環状体2のクリップ体1の凹部12への嵌め込みはより容易になるが、クリップ体1と環状体2とを互いに十分に固定することができないこともあるため、円弧面の形状及び傾斜角度は、嵌め込み易さと、十分な固定とを勘案して設定することが好ましい。
【0029】
また、クリップ体1の凹部12と環状体2とは互いに嵌め合わせられ、固定されるため特に環状体2の内側面に凸部21a、21bが設けられた場合、通常、クリップ体1から環状体2が抜け落ちてしまうことはないが、環状体2がクリップ体1の先端側へ抜けてしまうのを防止するため、クリップ体1の先端側にストッパ13を設けることが好ましい。ストッパ13は、クリップ体1の先端部にフランジ部を設けて形成することができ、このフランジ部は、クリップ体1の先端部の全周に亘って設けられていてもよく、所定間隔をおいて間欠的に設けられていてもよい。尚、ストッパ13を設けた場合、クリップ体1に環状体2を嵌め込んだときに、環状体2の先端側の側面がストッパ13の後端面に当接するようにすれば、クリップ体1と環状体2とを互いに十分に固定することができ、環状体2がクリップ体1から抜け落ちてしまうのをより確実に防止することができる。
【0030】
更に、クリップ体1と環状体2とは、図7、8のような形態とすることもできる。この場合、クリップ体1の凹部12が設けられていない側の両側面には、その後端側14から凹部12を越えて先端側まで、環状体2が有する凸部21a、21bのうちのクリップ体1の凹部12に嵌め合わされる一方の凸部ではない他方の凸部(一方の凸部が21aであれば他方の凸部は21b、一方の凸部が21bであれば他方の凸部は21a)を収容するための凸部収容用溝部16が設けられる。
【0031】
上述の図7、8の形態では、クリップ体に設けられる凹部12及び凸部収容用溝部16の各々の横断面の形状と深さ、並びに環状体2の内側面に設けられる凸部21a、21bのそれぞれの横断面の形状と高さ、は環状体2をクリップ体1の凹部12に嵌め込み、固定することができればよく、それぞれ適宜設定することができる。また、凹部12及び凸部収容用溝部16の各々の深さ、並びに凸部21a、21bのそれぞれの対向面間の間隔によって、導電性布帛の厚さに応じた押圧力を加えることができ、各々の形状と寸法によっては、凸部収容用溝部16と、収容される凸部21a又は21bとの間に殆ど空間を生じることなく、外観のよいコネクタ10とすることもできる。
【0032】
[4]導電性布帛
前記「導電性布帛」(例えば、ヒータ部材として用いられる導電性布帛101、導電性布帛101の側端部に取り付けられ導電性布帛101に電力を供給するための接続部材である導電性布帛102等)は、織物であってもよく、編み物であってもよい。織物も特に限定されず、平織り、綾織り、朱子織り等のいずれの織り組織であってもよい。また、編み物も特に限定されず、緯編み及び経編みのいずれの編み組織であってもよい。更に、織物及び編み物に用いる非導電糸の材質も特に限定されず、植物系及び動物系の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド及びポリエステル等の合成樹脂からなる合成繊維等を用いてなる糸が挙げられる。これらの非導電糸は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、これらの非導電糸は、通常、比抵抗が10Ω・cmを超え、絶縁性である。
【0033】
(1)ヒータ部材
導電性布帛が、例えば、車両、特に乗用車等のシートに用いられるヒータ部材(図1の導電性布帛101)、及びこのヒータ部材に接続される電力供給用の帯状部材(図1の導電性布帛102)等である場合、織物及び編み物の構成糸の一部として、通電可能な導電性の繊維状材料であり、特にJIS K 7194に準拠して測定した比抵抗(体積抵抗率)が100〜10−12Ω・cmの導電糸が用いられる。このような導電糸としては、例えば、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、ステンレス鋼及び耐熱鋼等の鋼、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン等からなる金属線、及び炭素繊維などが挙げられる。
【0034】
上述の導電性布帛101は面状のヒータ部材として有用であり、車両用のシートクッション及びシートバックの他、ホットカーペット、電気毛布、家庭用電動マッサージシート、屋外及びバイク用ヒータ付きジャケット、及び融雪用ヒータなどの、昇温させ、暖めることが必要とされる各種の製品に利用することができる。特に乗用車等の車両のシートのように屋内ではないところで用いられる製品を暖めるヒータ部材として有用である。このヒータ部材(導電性布帛101)は、導電糸が、接続部材(導電性布帛102)及びワイヤーハーネス等を介して制御ユニット(ECU等)などに接続され、電源から供給される電力により発熱し、昇温する。
【0035】
(2)各種センサ
導電性布帛としては、自動車に備えられるシート着座センサ等の各種のセンサが挙げられる。このシート着座センサは、車両用シートの座面又は背もたれに乗員の着座を検出するための検出用電極を設け、人体によって生じる静電容量の変化等を計測することにより着座の有無を検知するセンサである。
【0036】
上述のようなシート着座センサを用いて乗員の着座の有無を検知する方法としては、検出用電極と車両接地間の静電容量の増加を計測するもの、及び人体による検出用電極近傍の電界の変化を検出するもの等の種々の検出方式が挙げられる。また、シート着座センサの検出用電極として、導電性布帛を用いることにより、シートの通気性及び質感等を損なうことなく、優れた耐久性等を有する検出用電極とすることができる。
【0037】
導電性布帛は車載用近接センサの用途においても用いることができる。車載用近接センサは、人体の近接又は接触を検出する電極を備え、この検出用電極によって検出される浮遊容量及び地面との間の静電容量の変化等を計測することにより、人体の近接又は接触を検知するものである。この静電容量式の車載用近接センサでは、検出用電極を介する充放電による電圧の変化、及びインピーダンスの変化等によって、浮遊容量及び静電容量の変化が検出される。
【0038】
上述のような車載用近接センサの検出用電極として、導電性布帛を用いることにより、配設の自由度が高く、優れた意匠性を有する電極とすることができる。また、検出用電極の形状及び寸法等を任意に設計することができるとともに、寸法が長い、及び/又は面積の広い検知領域を有する車載用近接センサとしても用いることができる。
【0039】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ヒータ部材、各種センサ等の導電性布帛に電気的に接続されるコネクタの技術分野において利用することができる。特に、導電性布帛が、車両用シートに用いられるヒータ部材、及び車両に備えられるシート着座センサ等の各種のセンサ等である場合に有用である。
【符号の説明】
【0041】
101、102;導電性布帛、10;コネクタ、1;クリップ体、11;スリット、12;凹部、13;ストッパ、14;クリップ体の後端側、15;導電層、16;凸部嵌め込み部、1a;布帛挟持用片、2;環状体、21a、21b;凸部、A;クリップ体の先端面、B;クリップ体の外側面、L;両外側面の所定の長さ、S;クリップ体の後端側に位置する基端部、3;電線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性布帛に電気的に接続されるコネクタにおいて、
前記コネクタは、クリップ体と、前記クリップ体に嵌め込まれる環状体と、を備え、
前記クリップ体は、先端面から後端側へと所定の長さ切り込まれて形成され前記導電性布帛を挟み込むためのスリットと、前記スリットに平行な両外側面の前記所定の長さの範囲に、前記両外側面の各々の全幅に亘って設けられた凹部とを有し、
前記環状体が、前記クリップ体の前記凹部に嵌め込まれたときに、前記スリットの間隙が小さくなるように前記クリップ体に押圧力が加わることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記環状体は、内側面に凸部を有し、前記凸部が前記クリップ体の前記凹部に嵌め込まれる請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記環状体の内側面は、2組の互いに略平行の平面からなり、各々の平面間の寸法が異なっており、前記環状体を前記クリップ体に嵌め込むときに、前記環状体の前記内側面のうちのいずれか1組が、前記クリップ体の前記凹部に嵌め込まれる請求項1に記載のコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−84473(P2013−84473A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224169(P2011−224169)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】