説明

コバルト合金、コバルト合金の製造方法、並びにこれから製造したインプラント及び製造物品

本発明の具体例は、重量%で、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、及び50を超えるコバルトを含むコバルト合金を加工する方法であって、合金を冷間加工し、時効し、その結果、時効後にコバルト合金は少なくともロックウェルC50の硬さを有することを含む方法を提供する。他の態様は、コバルト合金の少なくとも1つの部分を選択的に冷間加工し、それに続いて合金を時効する方法を提供し、このような時効後に、合金の選択的に冷間加工した部分は、選択的に冷間加工しなかった合金の部分よりも高い硬さ値を有する。本発明はまた、本発明の範囲内のコバルト合金、インプラント、及びコバルト合金から製造した製造物品を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の様々な具体例は一般に、コバルト合金、コバルト合金を加工する方法、及びこれから製造した製造物品に関する。より詳細には、本発明の特定の具体例は、合金の引張強さ、降伏強さ、硬さ、耐摩耗性、及び疲労強度を増大させるためにコバルト合金を加工する方法に関する。本発明の様々な具体例に従って加工した特定のコバルト合金は、製造物品、例えば、関節連結性医用インプラント(人工埋没材)において使用するのに適している。
【背景技術】
【0002】
コバルト合金は、高い引張強さ及び疲労強度、及び/または耐食性を必要とする様々な用途において有用である。例えば、本明細書において限定するものではないが、コバルト合金の特性が特に適した用途としては、医用補綴またはインプラント用途が挙げられる。特に、コバルト合金の疲れ特性は、股関節または膝関節インプラントのような周期的負荷にさらされるインプラントにおいて使用するために望ましく、一方、コバルト合金の耐食特性は生体適合性のために望ましい。より詳細には、一般に“コバルト−クロモリ”または“CoCrMo”合金と呼ばれる、クロム及びモリブデン合金添加を含むコバルト合金は、膝関節及び股関節交換の両方の関節連結性構成要素を形成するために、鋳造及び鍛練形態(cast and wrought form)の両方で広く使用されてきた。
【0003】
しかしながら、このような従来のコバルト合金から製造したインプラントの1つの欠点は、摩耗が理由となって、インプラントは使用中に劣化し得るという点である。本明細書において使用する“摩耗”という用語は、表面の少なくとも一部分と別の表面または物質の少なくとも一部分との間の相対的運動によって引き起こされた材料除去による表面の少なくとも一部分の劣化を意味する。例えば、特定のインプラント表面または“摩耗表面”が、使用中に実質的な摩耗にさらされることは周知である。本明細書において使用する“摩耗表面”という用語は、摩耗にさらされる表面の少なくとも一部分を意味する。
【0004】
インプラント摩耗表面の劣化は、最終的にはインプラントを交換する必要をもたらし得る。インプラント摩耗表面の劣化に関連する1つの特定の問題は、摩耗デブリ(wear debris)の発生である。本明細書において使用する“摩耗デブリ”という用語は、摩耗の最中に摩耗表面から除去される材料を指す。例えば、“金属−オン−ポリマー”関節連結性関節(すなわち、金属表面がポリマー表面上で関節連結する関節)においては、ポリエチレン摩耗デブリは、インプラント装置の交換を必要とする破損の主な原因である。さらに、“金属−オン−金属”関節連結性関節(すなわち、金属表面が別の金属表面上で関節連結する関節)の摩耗から発生した小さな高表面積の合金摩耗デブリが人体に及ぼす長期にわたる影響に関して懸念が報告されており、高血清コバルト及びクロムレベルがこのような関節の摩耗から観察されている。
【0005】
加えて、インプラント装置の設計は、装置を製造するために使用する材料の特性によって制限され得る。例えば、球関節インプラントにおいては、必要とするインプラントの大きなサイズが理由となって比較的に低い引張強さ及び/または疲労強度を有する材料からインプラントを製造した場合、ボールとソケットとの間の運動の範囲は制限されることがある。それに反して、より高い引張強さ及び/または疲労強度を有する材料を使用して製造した同じインプラントは、安全のより大きな余裕をもたらすと思われる。他に、より高強度の材料の使用は、より大きな範囲の運動を伴うより小さなインプラントの開発をもたらす可能性がある。加えて、より高強度の材料の使用は、より小さなボールサイズを取り入れた装置設計を可能にし、それによって金属−オン−ポリマー関節におけるポリエチレンカップの体積摩耗率を低減することができる。
【0006】
インプラント摩耗表面の硬さを増大させることは、使用中の摩耗デブリの発生に耐えることによって摩耗関連のインプラント破損の発生を低減することができるが、インプラントの硬さを増大させる試みは、インプラントの表面の窒化処理またはコーティングに焦点を合わせてきた。例えば、Shetty 等に付与された米国特許第5,308,412号は、コバルト−クロムをベースとする整形外科用インプラント装置の表面を硬化する方法を記載している。500°F〜2400°Fの範囲にわたる温度で窒素をインプラントの表面中に拡散させるのを可能にするのに十分な時間、分子状窒素ガスまたはイオン化した窒素にさらすことによって、インプラントデバイスを硬化する。窒素拡散は、硬化した拡散層及び硬化した外部表面層をもたらす。Shetty 等の第3欄、第21〜28行を参照されたい。Shetty 等によれば、使用する温度、時間、及び窒素ガス圧力に依存して、インプラントのヌープ硬さを最高5000KHNまで増大させることができる。Shetty 等の第6欄、第24〜26行を参照されたい。Davidsonに付与された米国特許第5,180,394号は、酸化ジルコニウム、窒化物、炭化物、または炭窒化物の耐摩耗性コーティングでコーティングした整形外科用インプラントを開示している。例えば、ジルコニウム含有合金表面層を従来のインプラント材料に施用し、その後処理して、インプラントの表面の酸化ジルコニウムの拡散接合層を形成することができる。Davidsonの第9欄、第53〜57行を参照されたい。
【0007】
改良された摩擦特性及び疲れ特性を有するコバルト合金も開示されている。例えば、Fehring 等に付与された米国特許第6,187,045号(B1)は、例えば、金属−オン−ポリマーインプラントデバイスのソケット部分を形成するために一般に使用される超高分子量ポリエチレン(または“UHMWPE”)を用い、改良された疲れ特性及び摩擦特性を有するコバルト合金を開示している。特に、Fehring 等のコバルト合金は、合金の摩擦特性及び疲れ特性を低下させる炭化物、窒化物、及びシグマ第2相を本質的に含まない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、インプラントデバイス表面のコーティングの利用は信頼性に対する懸念が理由となって普及せず、インプラントの実用寿命を増大させることができ、破損したインプラントを交換するために必要な修正手術(revision surgeries)の回数を低減できる整形外科用インプラントのための改良されたコバルト合金に対する必要が依然として存在する。特に、様々なコバルト合金組成と共に使用できるコバルト合金の引張強さ、降伏強さ、硬さ、耐摩耗性、及び疲労強度を増大させるための、コバルト合金を加工する費用効果的な方法を開発することは望ましいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、コバルト合金を加工する方法に関する。例えば、一つの態様は、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を加工する方法であって、コバルト合金を冷間加工することと、冷間加工したコバルト合金を900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと、を含む方法において、冷間加工したコバルト合金を時効した後に、コバルト合金は少なくともロックウェルC50の硬さを有する方法を提供する。別の態様は、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を選択的に硬化する方法であって、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分を冷間加工することと、冷間加工したコバルト合金を900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと、を含む方法において、冷間加工したコバルト合金を時効した後に、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分は少なくとも560のヌープ硬さ数を有する方法を提供する。さらに別の態様は、重量%で、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高0.05までの炭素、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、最高0.15までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を加工する方法であって、コバルト合金を冷間加工し、その結果、冷間加工後にコバルト合金の少なくとも一部分は少なくともロックウェルC45の硬さを有することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の他の態様は、コバルト合金に関する。例えば、一つの態様は、重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金において、コバルト合金の少なくとも一部分は少なくともロックウェルC50の硬さを有するコバルト合金を提供する。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、インプラントを加工する方法に関する。例えば、一つの態様は、コバルト合金を含むインプラントを加工する方法であって、インプラントの少なくとも一部分を冷間加工することと、インプラントの少なくとも一部分を冷間加工した後にインプラントを900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと、を含む方法において、インプラントを時効した後に、冷間加工したインプラントの少なくとも一部分は少なくともロックウェルC50の硬さを有する方法を提供する。別の態様は、コバルト合金を含むインプラントを加工する方法であって、インプラントの少なくとも一部分を冷間加工することと、インプラントの少なくとも一部分を冷間加工した後にインプラントを900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと、を含む方法において、インプラントを時効した後に、冷間加工したインプラントの少なくとも一部分は少なくとも560のヌープ硬さ数を有する方法を提供する。
【0012】
本発明の他の態様は、インプラント及び製造物品に関する。例えば、一つの態様は、コバルト合金を含むインプラントであって、このコバルト合金が少なくともロックウェルC50の硬さを有する少なくとも一部分を含むインプラントを提供する。別の態様は、コバルト合金を含むインプラントであって、コバルト合金が少なくとも560のヌープ硬さ数を有する少なくとも一部分を含むインプラントを提供する。別の態様は、コバルト合金を含むインプラントであって、このコバルト合金が少なくとも10%の%伸びを有し少なくとも560のヌープ硬さ数を有する第1の部分、及び第1の部分に隣接し第1の部分のヌープ硬さ数未満のヌープ硬さ数を有する第2の部分を含むインプラントを提供する。さらに別の態様は、重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を含む製造物品において、合金の少なくとも一部分は少なくともロックウェルC50の硬さを有する製造物品を提供する。
【0013】
本発明の特定の態様は、添付の図と共に読むことでより良く理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の様々な態様は、従来のように加工したコバルト合金と比較して改良された引張強さ、硬さ、耐摩耗性、及び疲労強度を有するコバルト合金を提供するという点で有用である。さらに、本発明の特定の態様は、コバルト合金の表面硬さを修正し、同時に、従来のように加工したコバルト合金と同等の強靱で延性のあるコアを維持するという点で有用となり得る。
【0015】
医用インプラントデバイスにおいて使用するための鍛練コバルト合金は典型的に、"Standard Specification for Wrought Cobalt-28Chromium-6Molybendum Alloys for Surgical Implants," ASTM F1537-00, American Society for Testing and Materials (2001)(本明細書において参考のために特に引用する)において説明されている通りの幾つかの条件でインプラント製造業者に供給される。例えば、医用インプラントにおいて使用するのに適した温間加工した鍛練コバルト合金のための典型的な加工シーケンスは次の通り。まず、合金を空気または真空誘導プロセス(この両方は当分野において周知である)において溶解する。それに続いて、当分野において周知のように、合金を真空アーク精錬またはエレクトロスラグ精錬操作において精錬する。次に合金インゴットを熱加工して棒または異形材(shape configuration)にし、それに続いてインプラント製造業者に提供する。次いでインプラント製造業者は、例えば合金を機械加工及び/または鍛造することによって鍛練コバルト合金を成形して所望の形状にする。
【0016】
ASTM F1537−00において説明されているように、温間加工した状態の鍛練合金は典型的に、最高の入手可能な引張強さ及び硬さを有し、約170キロポンド/平方インチ(“ksi”)の最小の引張強さ、約120ksiの最小の0.2%−オフセット降伏強さ、及びおよそロックウェルC35(“HRC35”)の典型的な硬さを有する。本明細書において使用する“ロックウェルC”または“HRC”という用語とそれに続く数字は、ASTM E18−02(本明細書において参考のために特に引用する)に従って試験し、“C−スケール”を使用したロックウェル硬さ試験によって測定した材料の硬さを示す。
【0017】
しかしながら、先に検討したように、従来のように加工したコバルト合金は、その引張強さ、降伏強さ、硬さ、耐摩耗性、及び疲労強度に関連した制限を有する。下記により詳細に検討するように、本発明の様々な態様は、以下のもののうちの1つ以上を有するコバルト合金を提供するという点で有利となり得る:従来のように加工したコバルト合金と比較して、改良された引張強さ、改良された降伏強さ、改良された硬さ、改良された耐摩耗性、及び改良された疲労強度。
【0018】
本発明の様々な態様に従ってコバルト合金を加工する方法は、クロム及びモリブデン合金添加を含むコバルト合金(これに限定されるものではない)を加工する際に有用である。当業者であれば認識できるように、クロム及びモリブデン合金添加を含むコバルト合金の例えばASTM F1537−00において説明されているものは、医用若しくは外科用インプラントデバイス、またはプロテーゼ(“インプラント”)において使用するのに適している。例えば、本発明の様々な態様において有用なコバルト合金は、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を含む(これに限定されるものではない)。
【0019】
より詳細には、本発明の様々な態様において有用であると考えられているコバルト合金の特定の(非限定の)例としては、ASTM F1537−00の表1において“合金1”及び“合金2”と呼ばれる合金が挙げられる。ASTM F1537−00において説明されているように、“合金1”は、最高0.14重量%までの炭素、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、最高1.0重量%までのニッケル、最高0.75重量%までの鉄、最高1.0重量%までのケイ素、最高1.0重量%までのマンガン、最高0.25重量%までの窒素、及びコバルトを含む“低炭素合金”である。さらに、ASTM F1537−00によれば、“合金2”は、0.15〜0.35重量%の炭素、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、最高1.0重量%までのニッケル、最高0.75重量%までの鉄、最高1.0重量%までのケイ素、最高1.0重量%までのマンガン、最高0.25重量%までの窒素、及びコバルトを含む“高炭素合金”である。
【0020】
一つの特定の(非限定の)例においては、コバルト合金は、重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金である。
【0021】
別の特定の(非限定の)例においては、コバルト合金は、重量%で、最高0.05までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、最高0.15までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金である。
【0022】
本発明の様々な(非限定の)態様に従って有用であると考えられているコバルト合金の他の(非限定の)例としては、米国特許第6,187,045号(B1)において開示されている組成が挙げられ、この開示を本明細書において参考のために特に引用する。
【0023】
先に検討したように、本発明の様々な態様に従ってコバルト合金を加工する一つの利点は、このコバルト合金は、改良された引張強さ、降伏強さ、硬さ、耐摩耗性、及び疲労強度を有することができるという点である。本発明による一つの(非限定の)態様においては、コバルト合金を加工する方法であって、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を冷間加工し、その結果、冷間加工後に、コバルト合金は、増大した硬さを有することを含む方法が提供される。冷間加工する適切な方法の(非限定の)例としては、圧延、引抜き、スエージング、ショットピーニング、及びレーザーピーニングが挙げられる。
【0024】
本発明の一つの特定の(非限定の)態様においては、コバルト合金を冷間加工することは、コバルト合金を冷間引抜きすることを含む。必要ではないが、冷間引抜きを行い、その結果、コバルト合金は、5%〜40%の範囲にわたる総断面減少率を有するようにすることができる。幾つかの(非限定の)態様においては、冷間引抜きを行い、その結果、コバルト合金は、10%〜25%の範囲にわたる総断面減少率を有する。
【0025】
別の特定の(非限定の)態様においては、コバルト合金を冷間加工することは、コバルト合金を冷間圧延することを含む。必要ではないが、冷間圧延を行い、その結果、合金は5%〜40%の範囲にわたる総厚さ減少率を有するようにすることができる。幾つかの(非限定の)態様においては、冷間圧延を行い、その結果、コバルト合金は、10%〜25%の範囲にわたる総厚さ減少率を有する。
【0026】
コバルト合金を冷間加工することは、材料中の転位密度の増大をもたらし、その結果として一般に合金の極限引張強さ、降伏強さ、及び硬さの増大をもたらし、同時に一般に合金の延性を低下させよう。さらに、面心立方(“fcc”)結晶構造(“fcc相”の)を有するマトリックス相を含む特定のコバルト合金を冷間加工することは、fcc相から六方最密(“hcp”)結晶構造(または“hcp相”)を有する相への少なくとも部分的変態をもたらし、これはまた材料の硬さ及び強度の増大をもたらし得る。こうした結晶構造中の原子の方位は当分野において周知であり、これは例えば、William Callister, Jr., Materials Science and Engineering : An Indroduction, 2nd Ed., John Wiley & Sons, Inc., New York (1991) at pages 32-36(本明細書において参考のために特に引用する)を参照されたい。
【0027】
コバルト及び多くのコバルト合金は、一般に高温で安定であって特定のタイプ及び量の合金元素を加えることによってより低い温度で、例えば室温で安定化できるfcc相を有することは当業者であれば了解されよう。さらに、コバルト及び多くのコバルト合金は、一般に低い温度でfcc相よりも安定なhcp相を有することは周知である。Chester Sims et al., Superalloys II, John Wiley & Sons, Inc., New York (1987) at pages 140-142(本明細書において参考のために特に引用する)を参照されたい。ASTM F1537−00において“合金1”及び“合金2”と呼ばれる組成を有する従来のコバルト合金は、合金添加のタイプ及び量並びに材料の加工履歴が部分的には理由となって室温で主としてfcc相を含もう。従って、このような従来のコバルト合金から製造したインプラントは、fcc相に関連する摩耗及び硬さ特性を有しよう。任意の特定の理論によって束縛されることを意図するものではないが、本願発明者らは、こうした合金を適切に冷間加工することによって、fcc相はhcp相へ少なくとも部分的に変態し、これはコバルト合金の硬さ及び強度の増大をもたらし得ると考えている。
【0028】
特定の用途の場合、冷間加工後のコバルト合金の特性は十分であり、その結果、合金のさらなる加工は必要ないだろう。例えば、本発明の一つの(非限定の)態様は、重量%で、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高0.05までの炭素、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、最高0.15までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を加工することを含み、これは、コバルト合金を冷間加工し、その結果、冷間加工後にコバルト合金の少なくとも一部分は少なくともロックウェルC45の硬さを有するようにすることによる。しかしながら、下記に検討するように、他の用途の場合、コバルト合金の引張強さ、降伏強さ、硬さ、耐摩耗性、または疲労強度をさらに増大させ、同時に合金中の少なくとも最小のレベルの延性を維持するために、コバルト合金をさらに加工することが望ましいことがある。
【0029】
従って、コバルト合金を上記に検討したように冷間加工した後に、本発明の幾つかの(非限定の)態様においては、冷間加工したが未時効のコバルト合金と比較して所望の特性をさらに増大させるために、コバルト合金を時効する。例えば、本明細書において限定するものではないが、冷間加工したコバルト合金を時効して、以下の特性:引張強さ、降伏強さ、硬さ、耐摩耗性、及び疲労強度のうちの1つ以上をさらに増大させることができ、同時に合金中の少なくとも最小のレベルの延性を維持できる。
【0030】
任意の特定の理論によって束縛されることを意図するものではないが、冷間加工及び時効後のコバルト合金の引張強さ、降伏強さ、硬さ、耐摩耗性、及び/または疲労強度の増大は、時効時に合金中に起きるさらなる構造変化と組み合わせて、冷間加工の最中のfcc相からhcp相へのコバルト合金の結晶構造の少なくとも部分的変態が理由となっていると考えられている。時効時に合金中に起きる構造変化は十分に理解されているわけではないが、冷間加工したコバルト合金を時効した後に合金の強度及び硬さの両方の実質的な増大を実現できることが本願発明者らによって観察された。
【0031】
しかしながら、所望の特性を実現するためには、冷間加工のタイプ及び量並びに時効時間及び温度の両方を制御しなければならない。本願発明者らは、冷間加工したコバルト合金を、過度に長時間、過度に高い温度で時効した場合、冷間加工したが未時効のコバルト合金と比較して、冷間加工したコバルト合金の時効後の特性は低下し得ることを観察した。再度、任意の特定の理論によって束縛されることを意図するものではないが、冷間加工したコバルト合金を、過度に長時間、過度に高い温度で時効した場合、コバルト合金は、時効の最中に回復及び再結晶を受けることがあるか、またはhcp相は望ましくないサイズ及び形に発達することがあり、これは上記に検討した特性の低下をもたらし得ると考えられている。さらに、十分な冷間加工がコバルト合金中に導入されない場合、時効は、より有効ではないか、または、場合によっては、所望の特性を与える上で無効であることがある。
【0032】
従って、本発明の一つの(非限定の)態様においては、冷間加工したコバルト合金を900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効し、その結果、冷間加工したコバルト合金を時効した後に、コバルト合金は少なくともロックウェルC50の硬さを有する。例えば、本明細書において限定するものではないが、コバルト合金をこの態様に従って冷間加工した後に、コバルト合金の少なくとも一部分はhcp結晶構造を含むことができる。従って、本明細書において限定するものではないが、本発明のこの態様に従って形成したコバルト合金は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有するfcc相マトリックスを含むことができる。
【0033】
本発明の別の(非限定の)態様においては、冷間加工したコバルト合金を1000°F〜1200°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効し、その結果、冷間加工したコバルト合金を時効した後に、コバルト合金は、少なくともロックウェルC53の硬さ、少なくとも210キロポンド/平方インチの0.2%−オフセット降伏強さ、及び少なくとも260キロポンド/平方インチの引張強さを有する。
【0034】
本発明はさらに、少なくとも1つの選択された部分の硬さを増大させるためにコバルト合金の少なくとも1つの選択された部分を加工する方法を予定している。例えば、本発明の一つの(非限定の)態様は、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を選択的に硬化する方法を提供する。この方法は、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分を冷間加工することと、それに続いて、冷間加工したコバルト合金を900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと、を含む。時効後に、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分は、少なくとも560のヌープ硬さ数(“KHN”)を有する。この(非限定の)態様によれば、少なくとも1つの選択された部分は、合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を含むことができ、冷間加工したコバルト合金を時効した後に、コバルト合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分は、少なくとも560のKHNを有する。
【0035】
任意の特定の理論によって束縛されることを意図するものではないが、本願発明者らは、時効の前にコバルト合金の一部分を選択的に冷間加工することによって、特に、合金の表面部分を冷間加工することによって、硬化した表面及び強靱な“コア”を有するコバルト合金を製造することができると考えている。本明細書において使用する“表面”という用語は、合金の外面から内部に約0.4ミリメートル(“mm”)以下延在する領域を意味する。本明細書において使用する“コア”または“サブサーフェス”という用語は、合金の表面の内部の領域を意味する。例えば、時効の前にコバルト合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を冷間加工し、その結果、時効後に、コバルト合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分は、コバルト合金のサブサーフェスまたはコア領域を超える硬さを有するようにすることができる。コバルト合金をこのようにして予め選択的に冷間加工することによって、コバルト合金の選択された部分は、硬化した合金に関連する摩耗特性を有することができ、同時にコバルト合金はそのバルク延性の多くを保持できる。本明細書において限定するものではないが、このような構造は、耐摩耗性及び靱性の両方をコバルト合金に与える際に有利であると考えられている。
【0036】
例えば、本発明の一つの態様は、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分を冷間加工することを含む。選択的冷間加工は、コバルト合金の選択された部分の加工を可能にする当分野において周知の冷間加工の任意の方法を含むことができる。コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分を冷間加工する適切な方法の例としては、スエージング、ショットピーニング、及びレーザーピーニングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。選択的に冷間加工した後に、コバルト合金を時効し、その結果、時効後に、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分は、合金の選択されない部分よりも高い硬さを有する。
【0037】
例えば、本明細書において限定するものではないが、合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分のショットピーニングによって、コバルト合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を選択的に冷間加工できる。その後、コバルト合金を900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することができる。選択的に冷間加工したコバルト合金を時効した後に、冷間加工したコバルト合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分は少なくとも560のKHNを有し得るが、合金のサブサーフェスまたはコア領域を含んでよい合金の選択されない部分は560未満のKHNを有し得る。別の(非限定の)態様においては、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分は、レーザーピーニングによって選択的に冷間加工できる合金の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を含むことができる。
【0038】
ヌープ硬さ測定を一般に、ASTM E384−99(本明細書において参考のために特に引用する)に従って行う。ヌープ硬さ試験は一般に“微小押込”硬さ試験("microindentation" hardness test)であると考えられており、これを使用して、先に説明したロックウェル硬さ試験のような“マクロ押込”硬さ試験("macroindentiation" hardness test)を使用して測定するには小さ過ぎるかまたは薄過ぎる合金の特定の領域の硬さを測定することができる。ASTM E384−99の3ページを参照されたい。従って、冷間加工のために選択されたコバルト合金の少なくとも1つの部分がコバルト合金の表面の少なくとも一部分を含む場合、ヌープ硬さ測定を好ましくは使用して、時効後のコバルト合金の表面の少なくとも一部分の硬さを測定する。
【0039】
あるいは、少なくとも1つの選択された部分が表面及びサブサーフェス領域の両方を含み、少なくとも1つの選択された部分がロックウェル硬さ試験に適合した厚さを有する場合、先に説明したロックウェル硬さ試験のようなマクロ押込硬さ試験を使用して、合金の少なくとも1つの選択された部分の硬さを測定することができる。ASTM E18−02の5〜6ページを参照されたい。例えば、本明細書において限定するものではないが、本発明の別の態様においては、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を選択的に硬化する方法は、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分を冷間加工することを含む。この(非限定の)態様によれば、少なくとも1つの選択された部分は、コバルト合金の表面及びサブサーフェス領域の両方を含む。冷間加工後に、コバルト合金を炉中で900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効する。時効後に、コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分は、少なくともロックウェルC50の硬さを有する。
【0040】
本発明の様々な(非限定の)態様はさらに、下記に詳細に説明するコバルト合金を予定している。本発明の一つの(非限定の)態様においては、コバルト合金は、重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含み、少なくともロックウェルC50の硬さを有する。本明細書において限定するものではないが、この(非限定の)態様によれば、合金の少なくとも一部分はhcp結晶構造を含むことができる。例えば、本明細書において限定するものではないが、コバルト合金は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有するfcc相マトリックスを含むことができる。さらに、本明細書において限定するものではないが、本発明のこの態様によるコバルト合金は、冷間加工し、時効した合金とすることができる。合金を冷間加工し、時効する適切な方法は、上で詳細に説明した。
【0041】
本発明によるコバルト合金の別の(非限定の)態様においては、コバルト合金は、重量%で、最高0.05までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、最高0.15までの窒素、及びコバルトを含み、ここで、コバルト合金の少なくとも一部分は、hcp結晶構造を含む。例えば、本明細書において限定するものではないが、コバルト合金は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有するfcc相マトリックスを含むことができる。さらに、この(非限定の)態様によるコバルト合金は、少なくともロックウェルC50の硬さを有することができ、冷間加工し、時効することができる。
【0042】
先に検討したように、クロム及びモリブデン合金添加を含むコバルト合金は、医用または外科用インプラント用途において一般に使用される。こうしたコバルト合金を使用してよい医用または外科用インプラントの(非限定の)例としては、以下のものが挙げられる:股関節及び膝関節インプラント(これらに限定されるものではない)を含む整形外科用インプラント;肩インプラント;関節連結性構成要素(これに限定されるものではない)を含む脊椎構成要素及びデバイス;ワイヤ、ケーブル、及びステント(これらに限定されるものではない)を含む心臓血管構成要素及びデバイス;並びにプレート及びねじ(これらに限定されるものではない)を含む骨折固定デバイス。下記に説明するように、本発明の特定の(非限定の)態様は、コバルト合金を含むインプラント及びコバルト合金を含むインプラントを加工する方法を予定している。
【0043】
本発明の一つの(非限定の)態様は、コバルト合金を含むインプラントを加工する方法を提供する。この(非限定の)態様による方法は、インプラントの少なくとも一部分を冷間加工することと、インプラントの少なくとも一部分を冷間加工した後にインプラントを900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと、を含み、ここで、インプラントを時効した後に、冷間加工したインプラントの少なくとも一部分は少なくともロックウェルC50の硬さを有する。本明細書において限定するものではないが、少なくともロックウェルC50の硬さを有するインプラントの少なくとも一部分は、インプラントの表面及びサブサーフェス領域の両方を含むことができる。例えば、少なくともロックウェルC50の硬さを有するインプラントの少なくとも一部分は、インプラントの摩耗表面の少なくとも一部分及び摩耗表面に隣接するサブサーフェス領域を含むことができる。あるいは、本明細書において限定するものではないが、インプラントの少なくとも一部分は、例えば、球関節インプラントの“ボール”部分を含むことができる。さらに、少なくともロックウェルC50の硬さを有するインプラントの少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有するfcc相マトリックスを含むことができる。
【0044】
別の態様においては、コバルト合金を含むインプラントを加工する方法は、インプラントの少なくとも一部分を冷間加工することと、インプラントの少なくとも1つの部分を冷間加工した後にインプラントを900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと、を含み、ここで、インプラントを時効した後に、冷間加工したインプラントの少なくとも一部分は少なくとも560のKHNを有する。必要ではないが、この(非限定の)態様によれば、少なくとも560のKHNを有するインプラントの少なくとも一部分は、インプラントの摩耗表面の少なくとも一部分を含むことができる。さらに、少なくとも560のKHNを有するインプラントの少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有するfcc相マトリックスを含むことができる。
【0045】
本発明の様々な(非限定の)態様によるインプラントをここから検討する。本発明の一つの(非限定の)態様は、コバルト合金を含むインプラントにおいて、コバルト合金は少なくとも560のKHNを有する少なくとも一部分を含むインプラントを提供する。本明細書において限定するものではないが、この態様によれば、少なくとも560のKHNを有するコバルト合金の少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有するfcc相マトリックスを含むことができる。さらに、この態様によるコバルト合金は、冷間加工し、時効した合金とすることができる。
【0046】
その上、上記の態様によれば、インプラントの摩耗表面の少なくとも1つの領域は、少なくとも560のKHNを有するコバルト合金の少なくとも一部分を含むことができる。先に検討したように、インプラント摩耗表面の劣化は特に問題のあるものとなり、インプラントの破損をもたらし得る。さらに、表面硬さを増大させるためにコバルト合金の表面を窒化処理する従来の方法は、窒化物層に関して信頼性の懸念を提起し得る。従って、本発明のこの(非限定の)態様によるインプラントは、コバルト合金の表面を窒化処理する必要無しに増大した硬さを有する摩耗表面を提供するという点で特に有利となり得る。従って、必要ではないが、この態様によれば、少なくとも560のKHNを有するコバルト合金の少なくとも一部分は、5原子%未満の窒素を含む非窒化処理表面である。
【0047】
本発明の別の(非限定の)態様においては、インプラントは、コバルト合金を含み、コバルト合金は、少なくともロックウェルC50の硬さを有する少なくとも一部分を含む。本明細書において限定するものではないが、インプラントの表面及びサブサーフェス領域の両方は、少なくともロックウェルC50の硬さを有するコバルト合金の少なくとも一部分を含むことができる。さらに、この態様によれば、少なくともロックウェルC50の硬さを有するコバルト合金の少なくとも一部分は、5原子%未満の窒素を含み得る。本明細書において限定するものではないが、この態様によるコバルト合金は、冷間加工し、時効した合金とすることができる。
【0048】
本発明によるインプラントのさらに別の(非限定の)態様においては、インプラントは、少なくともロックウェルC50の硬さを有する少なくとも一部分を含むコバルト合金を含み、少なくともロックウェルC50の硬さを有する少なくとも一部分は、hcp結晶構造を含む。例えば、本明細書において限定するものではないが、少なくともロックウェルC50の硬さを有する少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を含むfcc相マトリックスを含むことができる。
【0049】
本発明によるインプラントにおいて使用するのに適したコバルト合金は、先に検討したコバルト合金を含む。例えば、本明細書において限定するものではないが、コバルト合金は、重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むことができる。
【0050】
本発明の別の(非限定の)態様においては、インプラントは、重量%で、最高0.14までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を含む。
【0051】
本発明の別の(非限定の)態様においては、インプラントは、重量%で、最高0.05までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、最高0.15までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を含む。
【0052】
本発明のさらに別の(非限定の)態様においては、インプラントは、重量%で、0.15〜0.35の炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を含む。
【0053】
本発明によるインプラントのさらに別の(非限定の)態様においては、インプラントは、コバルト合金を含み、コバルト合金は、少なくとも10%の%伸びを有し、少なくとも560のKHNを有する第1の部分及び第1の部分に隣接し、第1の部分のKHN未満のKHNを有する第2の部分を含む。さらに、この態様によれば、少なくとも560のKHNを有するコバルト合金の第1の部分は、5原子%未満の窒素を含み得る。
【0054】
本明細書において限定するものではないが、上記の態様によれば、インプラントの摩耗表面の少なくとも1つの領域は、コバルト合金の第1の部分を含むことができ、インプラントのサブサーフェス領域は、コバルト合金の第2の部分を含むことができる。例えば、本明細書において限定するものではないが、図1に示すように、一般に10で示すインプラント(概略で断面を示す)は、摩耗表面12及びサブサーフェス領域16を含むことができる。インプラント10の摩耗表面12は、少なくとも560のKHNを有するコバルト合金の第1の部分14を含むことができ、摩耗表面12に隣接するサブサーフェス領域16は、コバルト合金の第1の部分14(これは図1に陰影によって概略で示す)よりも小さいKHNを有するコバルト合金の第2の部分18を含むことができる。
【0055】
本発明の(非限定の)態様は、最高0.35重量%までの炭素、26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、最高1.0重量%までのニッケル、最高0.75重量%までの鉄、最高1.0重量%までのケイ素、最高1.0重量%までのマンガン、最高0.25重量%までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を含む製造物品をさらに含み、コバルト合金は、少なくともロックウェルC50の硬さ及び/または少なくとも560のKHNを有する。本発明による製造物品の例としては以下のものが挙げられる(これらに限定されるものではない):股関節及び膝関節インプラントを含む整形外科用インプラント;肩インプラント;関節連結性構成要素を含む脊椎構成要素及びデバイス;ワイヤ、ケーブル、及びステントを含む心臓血管構成要素及びデバイス;並びにプレート及びねじを含む骨折固定デバイス。
【実施例】
【0056】
本発明の具体例をここから、以下の特定の(非限定の)例によって示す。
実施例1
ASTM F1537−00に与えられる低炭素“合金1”組成を有するコバルト合金のインゴットを次の通り作製した。当分野において周知のように、合金を真空誘導溶解し、それに続いてエレクトロスラグ還元プロセスにおいて精錬した。得られたインゴットを熱間圧延によって熱加工して、直径約0.39インチを有する棒にした。それに続いて棒を冷間引抜きによって冷間加工して、20%断面減少率を実現した。その後、冷間加工した棒から採取した試料を、下記の表1に示すように時効処理にさらした。
【0057】
以下の特性を、引抜きしたまま及び時効したままの棒の両方に関して測定した:極限引張強さ(“UTS”)、0.2%オフセット降伏強さ(“0.2%YS”)、%伸び(“Elong%”)、%断面減少率(“RA%”)、及びロックウェルC硬さ(“HRC”)。UTS、0.2%YS、Elong%、及びRA%を、ASTM E8−01に従って決定した。HRC値をASTM E18−02に従って決定した。比較のために、322本の従来のように温間加工した(“圧延したまま”)棒のUTS、0.2%YS、Elong%、及び%RAの平均値も表1に含む。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から了解されるように、引抜きしたまま(すなわち、冷間加工したが未時効)の試料のUTS及び0.2%YS値の両方共、圧延したまま(すなわち、温間加工したのみ)の試料の平均UTS及び0.2%YSよりも高い。さらに、引抜きしたままの試料のElong.%及び%RAは、圧延したままの試料の平均値よりも低いが、引抜きしたままの材料の延性は、医用インプラント用途を含む多くの用途の場合に依然として許容可能であると考えられる。
【0060】
最高約1500°Fまでの温度で1〜24時間時効した試料もまた、圧延したままの試料の平均UTS及び0.2%YS値よりも高いUTS及び0.2%YS値を示した。引抜きしたままの試料と比較して、1〜24時間最高約1200°Fまでの温度で時効した試料は、より高いUTS、0.2%YS、及びHRC値を有した。さらに、引抜きしたままの試料と比較して改良されたHRC値も、1〜24時間最高約1500°Fまでの温度で時効した後に観察された。
【0061】
本明細書において限定するものではないが、増大したUTS、0.2%YS、及びHRC値を有し、同時にコバルト合金中の少なくとも最小のレベルの延性を維持することが望ましい特定の医用インプラント用途の場合、この特定の合金に関して1〜24時間最高約1200°Fまでの温度で時効することは適切な特性を与えるようであると考えられる。加えてこの特定の合金に関して、本明細書において限定するものではないが、より高いHRC値が望ましい場合、1〜24時間約1100°Fの温度で時効することは、50を超えるHRC値を提供することができ、少なくとも53のHRC値を提供できる。
【0062】
実施例2
上記の実施例1に説明したように形成した追加のコバルト合金棒を、次の通り選択的に冷間加工した。圧延したままの心なし研削棒を、550回のショットで強度(intensity)0.008〜0.0012にし、400%被覆(coverage)で工業的にショットピーニングした。ショットピーニング後に、棒を1100°Fで1時間熱処理し、空冷した。断面試料を時効した棒から切断し、微小硬さ試験用に作製した。300グラムの負荷を使用して、ヌープ微小硬さの読みをASTM E384−99に従って取った。第1のヌープ微小硬さの読みを試料の外面にできる限り近くで取り、それに続いて読みを試料の中心に向かって、すなわち棒のコアに向かって0.05mm増分で移動して取った。ヌープ微小硬さ試験の結果を、試料の外面からの距離の関数として下記の表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2から了解されるように、棒の表面の部分は、棒のサブサーフェス領域よりも高い硬さを有する。実施例2における硬化の深さは、ショットピーニングから観察される最大残留応力の深さと一致すると考えられる。しかしながら、他の選択的冷間加工プロセス、例えば、限定するものではないが、最大残留応力の深さの4倍の増大を与えることができると考えられるレーザーピーニングプロセスを用いて、より深い硬化の結果が予想できると考えられる。
【0065】
実施例3
コバルト合金棒を温間圧延によって作製した。温間圧延した状態で(“比較試料”)、及び、1100°Fで1時間及び24時間時効した後に(“試料A”)試験するために試料を採取した。棒の残りを冷間圧延によって冷間加工して、20%断面減少率を実現し、続いて1100°Fで1時間時効した(“試料B”)。室温引張試験及び硬さ試験を試料の各々に関して実行した。こうした試験の結果を下記の表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3から了解されるように、試料Bは、比較試料及び試料Aの両方と比較して、強度及び硬さの大きな増大を示す。比較試料と比較して、強度及び硬さの同様の増大は試料Aに関して観察されなかった。実際に、試料Aに関して観察された引張強さ及び硬さ値は、温間加工した材料に一般的なものである。
【0068】
本明細書において限定するものではないが、本発明の様々な態様に従って選択的に冷間加工したコバルト合金の冷間加工した領域の特性は、選択的に加工したコバルト合金を時効した後に、試料Bの特性と同様であろうし、一方、選択的に冷間加工したコバルト合金の選択されない領域(すなわち、選択的に冷間加工しなかった領域)の特性は、時効後に、試料Aの特性と同様であろうと考えられる。
【0069】
実施例4
試料Bの材料(上記の実施例3に説明した)に関して、材料を1100°Fで1時間時効した後に疲れ試験を行った。完全に逆に曲げた(fully reversed bending)(R=−1)試料Bの材料の場合の107サイクル後のランアウト応力(runout stress)を、室温で平滑回転ビーム疲れ試験(smooth rotating beam fatigue test)を使用して決定した。疲れ試験の結果を、実施例2の比較試料の材料に関して行った同様の試験の結果と共に下記の表4に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
表4に示す結果から了解されるように、本発明の一つの態様に従って加工した試料Bは、比較試料よりも高いランアウト応力を有する。
本説明が、本発明の明確な理解に適した本発明の態様を示すことは理解できるはずである。当業者には明白であり、従って本発明のより良い理解を促進しないような本発明の特定の態様は、本説明を簡略化するために提示していない。本発明を特定の具体例に関連して説明してきたが、当業者であれば、前述の説明を検討することにより、本発明の多くの修正及び変形例を用いることができることを認識できよう。このような本発明の全ての変形例及び修正は、前述の説明及び請求の範囲によって包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の特定の態様によるインプラントの概略断面図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を加工する方法であって:
前記コバルト合金を冷間加工することと;
冷間加工したコバルト合金を900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと;
を含む方法において、前記冷間加工したコバルト合金を時効した後に、前記コバルト合金は少なくともロックウェルC50の硬さを有する、方法。
【請求項2】
前記冷間加工したコバルト合金は1000°F〜1200°Fの範囲にわたる温度で時効される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷間加工したコバルト合金を時効した後に、前記コバルト合金は少なくともロックウェルC53の硬さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷間加工したコバルト合金を時効した後に、前記コバルト合金は、少なくとも210キロポンド/平方インチの0.2%−オフセット降伏強さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記冷間加工したコバルト合金を時効した後に、前記コバルト合金は、少なくとも260キロポンド/平方インチの極限引張強さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記コバルト合金は、重量%で、最高0.35までの炭素、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、及び最高0.25までの窒素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コバルト合金は、重量%で、最高0.14までの炭素、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、及び最高0.25までの窒素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コバルト合金は、重量%で、最高0.05までの炭素、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、及び最高0.15までの窒素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コバルト合金を冷間加工し、前記コバルト合金の少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有する前記fcc相マトリックスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コバルト合金は、重量%で、0.15〜0.35の炭素、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、及び最高0.25までの窒素をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記冷間加工は、圧延、引抜き、スエージング、ショットピーニング、及びレーザーピーニングのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記冷間加工は引抜きを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記引抜きを行い、その結果、前記コバルト合金は、5%〜40%の範囲にわたる総断面減少率を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記総断面減少率は10%〜25%の範囲にわたる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記冷間加工は圧延を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記圧延を行い、その結果、前記コバルト合金は、10%〜25%の範囲にわたる総厚さ減少率を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コバルト合金は、完全に逆に曲げる107サイクルの間のランアウト応力が少なくとも130キロポンド/平方インチを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
26〜30重量%のクロム、5〜7重量%のモリブデン、及び50重量%を超えるコバルトを含むコバルト合金を選択的に硬化する方法であって:
コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分を冷間加工することと;
冷間加工したコバルト合金を900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと;
を含む方法において、前記冷間加工したコバルト合金を時効した後に、前記コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分は少なくとも560のヌープ硬さ数を有する、方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの選択された部分は、前記コバルト合金の表面の少なくとも一部分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する前記コバルト合金の少なくとも1つの選択された部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有する前記fcc相マトリックスを含む、請求項18に記載のコバルト合金。
【請求項21】
重量%で、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高0.05までの炭素、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、最高0.15までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を加工する方法であって、前記コバルト合金を冷間加工し、その結果、冷間加工後に前記コバルト合金の少なくとも一部分は少なくともロックウェルC45の硬さを有することを含む方法。
【請求項22】
重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金において、前記コバルト合金の少なくとも一部分は少なくともロックウェルC50の硬さを有する、コバルト合金。
【請求項23】
少なくともロックウェルC50の硬さを有する前記コバルト合金の少なくとも一部分はhcp相を含む、請求項22に記載のコバルト合金。
【請求項24】
少なくともロックウェルC50の硬さを有する前記コバルト合金の少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有する前記fcc相マトリックスを含む、請求項22に記載のコバルト合金。
【請求項25】
前記コバルト合金は冷間加工され、時効された合金である、請求項22に記載のコバルト合金。
【請求項26】
前記コバルト合金は、重量%で、最高0.05までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高0.75までのニッケル、最高0.35までの鉄、最高0.50までのケイ素、最高0.50までのマンガン、最高0.15までの窒素、及びコバルトを含む、請求項22に記載のコバルト合金。
【請求項27】
コバルト合金を含むインプラントを加工する方法であって:
前記インプラントの少なくとも一部分を冷間加工することと;
前記インプラントの少なくとも一部分を冷間加工した後に前記インプラントを900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと;
を含む方法において、前記インプラントを時効した後に、冷間加工した前記インプラントの少なくとも一部分は少なくともロックウェルC50の硬さを有する、方法。
【請求項28】
前記インプラントを時効した後に、少なくともロックウェルC50の硬さを有する前記インプラントの少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有する前記fcc相マトリックスを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
コバルト合金を含むインプラントを加工する方法であって:
前記インプラントの少なくとも一部分を冷間加工することと;
前記インプラントの少なくとも一部分を冷間加工した後に前記インプラントを900°F〜1300°Fの範囲にわたる温度で1時間〜24時間の範囲にわたる時間時効することと;
を含む方法において、前記インプラントを時効した後に、冷間加工した前記インプラントの少なくとも一部分は少なくとも560のヌープ硬さ数を有する、方法。
【請求項30】
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する前記インプラントの少なくとも一部分は、前記インプラントの摩耗表面の少なくとも一部分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する前記インプラントの少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を有する前記fcc相マトリックスを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
コバルト合金を含むインプラントであって、前記コバルト合金は、少なくともロックウェルC50の硬さを有する少なくとも一部分を含む、インプラント。
【請求項33】
少なくともロックウェルC50の硬さを有する前記コバルト合金の少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を含む前記fcc相マトリックスを含む、請求項32に記載のインプラント。
【請求項34】
前記コバルト合金は冷間加工され、時効された合金である、請求項32に記載のインプラント。
【請求項35】
前記コバルト合金は、重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含む、請求項32に記載のインプラント。
【請求項36】
ロックウェルC50の硬さを有する前記コバルト合金の少なくとも一部分は、5原子%未満の窒素を含む、請求項32に記載のインプラント。
【請求項37】
コバルト合金を含むインプラントであって、前記コバルト合金は少なくとも560のヌープ硬さ数を有する少なくとも一部分を含む、インプラント。
【請求項38】
前記インプラントの摩耗表面の少なくとも1つの領域は、少なくとも560のヌープ硬さ数を有する前記コバルト合金の少なくとも一部分を含む、請求項37に記載のインプラント。
【請求項39】
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する前記コバルト合金の少なくとも一部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を含む前記fcc相マトリックスを含む、請求項37に記載のインプラント。
【請求項40】
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する前記コバルト合金の少なくとも一部分は、5原子%未満の窒素を含む、請求項37に記載のインプラント。
【請求項41】
コバルト合金を含むインプラントであって、前記コバルト合金は、少なくとも10%の%伸びを有し、
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する第1の部分;及び
前記第1の部分に隣接し、前記第1の部分のヌープ硬さ数未満のヌープ硬さ数を有する第2の部分;
を含む、インプラント。
【請求項42】
前記インプラントの摩耗表面は、前記コバルト合金の前記第1の部分を含み、前記インプラントのサブサーフェス領域は、前記コバルト合金の前記第2の部分を含む、請求項41に記載のインプラント。
【請求項43】
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する少なくとも1つの部分は、fcc相マトリックス中に分布したhcp相の1つ以上の領域を含む前記fcc相マトリックスを含む、請求項41に記載のインプラント。
【請求項44】
少なくとも560のヌープ硬さ数を有する前記第1の部分は、5原子%未満の窒素を含む、請求項41に記載のインプラント。
【請求項45】
重量%で、最高0.35までの炭素、26〜30のクロム、5〜7のモリブデン、最高1.0までのニッケル、最高0.75までの鉄、最高1.0までのケイ素、最高1.0までのマンガン、最高0.25までの窒素、及びコバルトを含むコバルト合金を含む製造物品において、前記合金の少なくとも一部分は少なくともロックウェルC50の硬さを有する、製造物品。
【請求項46】
前記製造物品は、整形外科用インプラント、肩インプラント、脊椎構成要素、心臓血管構成要素、及び骨折固定デバイスからなる群から選択される、請求項45に記載の製造物品。

【公表番号】特表2007−502372(P2007−502372A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532365(P2006−532365)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/010066
【国際公開番号】WO2005/007909
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【Fターム(参考)】