説明

コヒーレントな紫外線または超紫外線の極短パルス発生システム

本発明は、概して、コヒーレントな紫外線(UV)または超紫外線(XUV)の極短パルスの発生に関し、より具体的に言うと、50kHzと数メガヘルツとの間に含まれる調節可能な周波数において、紫外線または超紫外線領域の、フェムト秒長さのパルスを生成することが可能な、極めて輝度の高い再集束可能な源に関する。本発明は、パルスを含むレーザビームを生成するように構成されたファイバレーザ装置(10)と、相互作用媒体を含む高調波発生装置(20)とを備えている。高調波発生装置(20)およびファイバレーザ装置(10)は、レーザビームが、少なくとも1013W/cmの電力で相互作用媒体に衝突してUV−XUVパルスを発生するように、結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、コヒーレントな紫外線(UV)または超紫外線(XUV)の極短パルス発生システムに関する。より具体的に言うと、本発明は、50kHzと数メガヘルツとの間に含まれる調節可能な周波数において、紫外線または超紫外線領域の、フェムト秒長さのパルスを生成することが可能な、極めて輝度の高い再集束可能な源に関する。
【背景技術】
【0002】
本章に記載される手段は、追求されたものであり得るが、必ずしも以前に想到または実施された手段ではない。それゆえ、他に記載のない限り、本章に記載される手段は、本願の特許請求の範囲に対する従来技術ではなく、また、本章に含めることで従来技術と認められるものではない。
【0003】
本明細書では、XUV放射とは、高感度に10nm〜350nmに広がる波長を有する放射として、理解されたい。
【0004】
XUV放射源を形成する場合、一般的には、ファイバベースのレーザシステムが検討される。このカテゴリーのシステムの中では、ファイバベースのレーザシステムのうち1つの下位集団だけが、100kHzよりも高い繰返し周波数にて、パルスを含むXUV放射を生成可能である。
【0005】
例えば、シンクロトロンシステムをこの目的に用いることを検討する人がいるかもしれない。これは、シンクロトロンシステムが、このような高い繰返し周波数において、XUVパルスを生成可能だからである。しかしながら、シンクロトロンシステムによって生成されたXUVパルスは、インコヒーレントである。さらに、シンクロトロンシステムは、特に高価である。
【0006】
また、外部の受動型ファブリペローキャビティの高次高調波発生モジュールに結合されたフェムト秒レーザシステムが中心に構築されたシステムを、検討する人がいるかもしれない。これらのシステムは、高い繰返し周波数において、コヒーレントな短いXUVパルスを生成することが可能である。けれども、外部の受動型ファブリペローキャビティは、ロックする必要があり、このことは、複合電子素子を用いなければならないことを意味している。さらに、XUVビームを効果的に抽出することは、特に困難である。
【0007】
したがって、上述の欠点を克服することが求められている。より具体的には、50kHzと数メガヘルツとの間に含まれる周波数において、紫外線または超紫外線領域の、フェムト秒長さのコヒーレントなパルスを生成することが可能な、パルス発生システムを提供することが求められている。
【発明の概要】
【0008】
これらの必要性に対処するために、本発明の第1の態様は、
・パルスを含むレーザビームを生成するように構成されたファイバレーザ装置と、
・相互作用媒体を含む高調波発生装置と、
を備える、コヒーレントなUV−XUVパルスを発生するシステムに関する。
【0009】
高調波発生装置およびファイバレーザ装置は、レーザビームが、少なくとも1013W/cmの電力で相互作用媒体に衝突して上記UV−XUVパルスを発生するように、結合されている。
【0010】
より具体的に言うと、ファイバレーザ装置によって生成されたパルスの周波数は、コヒーレントなUV−XUVパルスの発生周波数を、50kHzから数MHzまで調節するように構成することが可能であり得る。
【0011】
一実施形態では、ファイバレーザ装置は、チャープパルス増幅のための手段を備える。他の一実施形態では、ファイバレーザ装置は、フェムト秒の直接増幅のための手段を備える。
【0012】
相互作用媒体とレーザビームとの間の相互作用は、特に、高次高調波の周波数でXUVパルスを発生する。
【0013】
一実施形態では、ファイバレーザ装置は、ロッド型ファイバを備える。特に、ファイバレーザ装置は、Yb添加ラージモードエリアファイバ、Eb添加ラージモードエリアファイバ、または、Tu添加ラージモードエリアファイバを備えていてもよい。
【0014】
相互作用媒体は、ガス、より具体的に言うと、不活性ガスを含んでいてもよい。また、相互作用媒体は、液体のターゲット、および/または、固体のターゲットを含んでいてもよい。
【0015】
一実施形態では、高調波発生装置は、ガスとレーザビームとが相互作用するように、ガスを閉じ込めるとともにレーザビームを案内するように構成された手段を備えていてもよい。
【0016】
他の一実施形態では、高調波発生装置は、ガスを包含するセルを備える。このガスを包含するセルには、ガスとレーザビームとが相互作用するように、レーザビームによって入力孔および出力孔が開けられている。
【0017】
他の一実施形態では、高調波発生装置は、ガスが充填された中空コアファイバを備えていてもよく、このガスが充填された中空コアファイバは、ガスとレーザビームとが相互作用するように配置されている。
【0018】
本システムは、コヒーレントなUV−XUVパルスを受信するように結合されたXUV分光測光器をさらに備えていてもよい。
【0019】
より具体的に言えば、XUVパルス発生装置は、強力レーザ赤外線パルスとガスとが相互作用している間に、高次高調波を発生させることによって、パルスを生成する。
【0020】
この強力レーザパルスは、アクティブファイバ内の極短フェムト秒(30〜1000fs)パルスの増幅に基づいたレーザ装置によって、生成される。
【0021】
第1の態様に係るシステムは、ファイバレーザを直接用いることによって、50kHzパルスと数メガヘルツパルスとの間に含まれる周波数において、極めて高次高調波の周波数を生成することが可能である。このことは、特に高強度のパルスが発生することによって、実現される。
【0022】
したがって、第1の態様に係るシステムは、高強度のファイバレーザの利点と、高次高調波パルスを有するXUV放射を発生する利点とを組み合わせることを可能にする。具体的には、本システムは、UVからXUVまでの広いスペクトル域に含まれる放射を生成することができる。この放射は、空間的および時間的にコヒーレントである。この放射は、再集束可能であり、高い輝度を有している。この放射の波長は極短である。さらに、この放射では、極めて高いXUVパルス周波数を実現することが可能である。この放射は、短い赤外線パルスと同期し、これにより、数ナノ秒から数ピコ秒の範囲であり得る時間分解能に達することが可能である。
【0023】
本発明は、高調波発生装置と、高い繰返し周波数のレーザとを含む、レーザシステム全体を対象としてもよい。また、本発明は、レーザポンプ法に限定されず、例えば低エネルギーパルスを供給するあらゆるレーザ源でもよい用途に対しては、高調波発生装置のみを対象としてもよい。さらに、本発明は、コヒーレントなXUVパルスを発生する方法にも関する。この方法では、高調波発生装置を、該高調波発生装置の駆動装置としてのファイバレーザ装置と一緒に用いる。
【0024】
本発明の他の一利点によれば、高調波発生装置とファイバレーザ装置とを組み合わせることによって、他の、シンクロトロンまたはレーザ注入された外部のファブリペローキャビティといった高い繰返し周波数のシステムと比べて、極めて小型かつ簡素なシステムが形成される。
【0025】
本発明の他の一利点によれば、パルス周波数は、50kHzから数MHzまで調節可能である。本システムは、例えばフェムト−レーザを用いたマイクロマシニングの場合に、異なる種類の放射(例えば、赤外線放射およびXUV放射)を同時に使用することを可能にする。このシステムは、ファブリペローキャビティと比べて、使用が極めて容易であり、ファイバ増幅システムに関する全ての利点(10Wよりも高い平均電力、安定性、ビームの品質(例えば、単一モード)、ダイオードレーザポンプ法、冷却システムが必要ない、など)を提供する。
【0026】
本発明の他の利点および特徴は、一例として以下に示される詳細な説明を読むことによって、明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明を、限定するためではなく、例示のために、添付の図面において説明する。図面では、同様の参照番号は、類似の素子を指している。
【図1】コヒーレントなXUVパルス発生システムを示す概略図である。
【図2】レーザ装置を示す概略図である。
【図3】適用可能な装置に結合された高調波発生装置を示す概略図である。
【図4】XUV分光計とビーム輸送とを備える適用可能な装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、図1を参照する。図1には、一実施形態に係る、コヒーレントなXUVパルス発生システムが概略的に示されている。上記システムは、レーザ装置10、高調波発生装置20、および、適用可能な装置30を備えている。上記システムは、フェムト秒長さまたはピコ秒長さのXUVパルスを、典型的には50kHzと数メガヘルツとの間に含まれる周波数において供給することが可能となっている。レーザ装置10は、ファイバレーザ装置、例えば、超ラージコアのアクティブファイバレーザ装置を中心に形成されている。具体的には、これらのファイバは、ロッド型ファイバであってもよいが、出力が単一モードで維持される限り、任意の種類の超ラージモードエリアファイバを用いてもよい。レーザ装置は、Yb添加ラージモードエリアファイバを用いてもよい。このようなファイバの構造は、特に、特許文献「US2006/0176911」に開示されている。また、レーザ装置は、Eb添加ラージモードエリアファイバ、または、Tu添加ラージモードエリアファイバを用いてもよい。
【0029】
レーザ装置10は、レーザビームを出力部まで供給するように組み立てられている。レーザ装置10の出力部は、集束手段15に結合されており、レーザビームが、集束手段を通り抜けて、集束されて出てくるようになっている。集束手段15は、高調波発生装置20内に含まれていてもよい。高調波発生装置20は、集束手段15の出力部において、集束されたレーザビームを受信するように、配置されている。高調波発生装置20は、集束されたレーザビームから、高次高調波パルスを含むXUV放射ビームを発生することが可能である。このため、高調波発生装置20は、ターゲットの役割を果たす、集束されたレーザビームが衝突する媒体を含んでいる。レーザ装置10は、高調波発生装置20のターゲットに、少なくとも1013W/cmの電力を供給することが可能である。適用可能な装置30は、XUV放射ビームを受信するために、高調波発生装置に結合されている。適用可能な装置30とは、例えば、適用チャンバ、XUV分光測光器などの特徴付け手段、整形手段、および/または、輸送手段である。
【0030】
ここで、図2を参照する。図2には、レーザ装置10の一実施形態が概略的に示されている。レーザ装置10は、発振器110、スペクトル拡張ステージ120、ストレッチャーユニット130、パルス選別器140、増幅器150、および圧縮機ユニット160を備えている。レーザ装置10の出力部は、圧縮機ユニット160の出力部に結合されている。
【0031】
発振器110は、フェムト秒シードレーザ源として機能する。例えば、発振器110は、半導体可飽和吸収ミラー(SESAM)を用いた、受動的にモードロックされたYb:KGWレーザである。典型的には、発振器110は、10MHzの周波数にて、平均電力が1.7Wの、400フェムト秒長さのパルスを生成することが可能である。これらのパルスは、フーリエ変換が制限されており、1030nmの中心波長を中心に2.5nmのスペクトル幅を有している。
【0032】
スペクトル拡張ステージ120は、自己位相変調を誘発させるスペクトル拡張ステージであり、スペクトルを拡張させるとともに、発振器110によって供給されたパルスの持続時間を短縮するために用いられる。これらの目的を実現するために、スペクトル拡張ステージ120は、40μmコア径の受動型のフォトニック結晶ファイバでの、自己位相変調を含むことができる。このファイバの長さは、半値全幅(FWHM)で測定して最大8nm幅の平坦なスペクトルを得るように選択され、典型的には5cmである。
【0033】
スペクトル拡張ステージ120の出力部におけるパルスは、ストレッチャーユニット130に再び向けられる。ストレッチャーユニット130は、mmあたり1740ラインの密度の格子を有する透過格子をベースにしたオフナー(Offner)型ストレッチャーであってもよい。ストレッチャーユニット130は、パルスの持続時間を、600psまで増大させることが可能である。
【0034】
パルス選別器140は、ストレッチャーユニット130からパルスを受信するように、配置されている。パルス選別器140は、パルス繰返し周波数を適合させるために用いられる。具体的には、パルス選別器140は、パルス繰返し周波数が100kHzと1MHzとの間に含まれるように、パルス繰返し周波数を低減するために用いられる。パルス選別器140の出力部において、パルスの平均電力は、ミリワットレベルの範囲にある。パルス選別器140は、例えば、音響光学変調器であり、典型的には、石英ベースの音響光学変調器である。
【0035】
増幅器150は、前置増幅器154と後置増幅器158とに分かれている。前置増幅器154は、パルス選別器140の出力部に結合されている。前置増幅器154は、パルスの平均電力を、該パルスが後置増幅器158に注入される前に、ワットレベルまで増大することを可能にする。ファイバ前置増幅器は、エアークラッド型のフォトニック結晶ファイバを備えていてもよい。このファイバの長さは1.5mであり、そのコア径は40μmである。このファイバは、170μmのクラッド内径を有しており、976nmにおいて発光するダイオードによってポンピングされる。後置増幅器158は、超ラージモードエリアロッド型のフォトニック結晶ファイバを備えていてもよい。モードフィールド径は70μm程度の長さであり、これは、3850μmの有効モードフィールド面積に相当する。ポンピング波と添加されたコアとが大きく重畳していることによって、必要なファイバの長さが1.2mまで制限され、小信号のポンプ光吸収量は、976nmにおいて30dB/mである。これら2つの、信号放射およびポンピング放射用のマイクロ構造体は、1.5mmの溶融シリカロッドに包囲されている。よって、ファイバの熱放散能力が増大するとともに、案内される弱い増幅波の伝送損が低減される。ファイバは、ポンプと増幅されたビームとの両方を二重に案内(dual guiding)することを確保する。後置増幅器158は、電力に無関係に回折が制限されたビーム(M2<1.25)を供給することが可能である。
【0036】
後置増幅器158の出力部における、ストレッチされるとともに増幅されたパルスは、再圧縮されるために、圧縮機ユニット160、例えば、mmあたり1740ラインの密度の格子を有する透過格子ベースの圧縮機まで導かれる。例えば、この格子を、パルスに対してリトロー(Littrow)角度(64°)にて用いて、85%の回折効率を提供する。これによって、結果的に、ダブルパス圧縮機の総合効率は、約52%となる。圧縮前は、繰返し周波数が1MHz、および、平均電力レベルが56Wであったことを考慮すると、圧縮後のパルスの平均電力レベルは、高感度の28Wである。この平均電力レベルまでは、熱光学上または熱加工上の問題は観測されていない。レーザ装置10の出力部は、圧縮機ユニット160の出力部に結合されている。
【0037】
レーザ装置は、極めて小型であり、サブ300fsパルスを、300fsよりも短い間、供給することができる。ここで、パルスエネルギーは、繰返し周波数が100kHzの場合の100μJから、繰返し周波数が1MHzの場合の28μJまで及ぶ。
【0038】
ここで、図3を参照する。図3では、適用可能な装置30に結合された高調波発生装置20の一実施形態が概略的に示されている。本実施形態では、適用可能な手段30は、XUV分光計に対応する。高調波発生装置20は、真空状態の内部キャビティ205を有する相互作用チャンバを備えている。内部キャビティ205内の圧力は、およそ10−3バールであることが好ましい。レーザ装置10によって発生したレーザビームは、高調波発生装置20の入力として受信され、集束手段15を通り抜けるように導かれる。その後、レーザビームは、内部キャビティ205内の焦点Fに集束される。集束手段15は、例えば、およそ100mmの焦点距離を有するレンズまたはミラーである。内部キャビティ205の中には、相互作用媒体が持続的に供給され、ジェット220を形成している。例えば、キャピラリチューブを用いて、噴出ガス、例えば、アルゴン、ネオン、および/または、クリプトンといった不活性ガスを供給してもよい。キャピラリチューブの先端は、焦点Fにすぐ近接して位置している。キャピラリの直径は、120〜170μmの範囲であり、好ましくは約150μmである。こうして、噴出ガスが、内部キャビティ205の中に入り、ターゲットとして用いられ、ここでレーザビームが集束される。レーザビームと原子ガスとの間の相互作用によって、XUV放射ビームが発生する。利用可能なパルスエネルギーが100μJであるレーザビームのピーク強度は、焦点Fにおいて、7.12×1013W/cmである。一実施形態では、キャピラリチューブ220の先端の位置を正確に調節して、レーザ/ガスの相互作用、特に接点を制御するために、電動式並進ステージが用いられる。
【0039】
ガスとレーザビームとの相互作用を可能にするために、他のガス−レーザ相互作用手段を用いて、高調波発生効率を向上させてもよい。例えば、適切なガス−レーザ相互作用手段は、毛管作用によってガスを内部キャビティ205の中に充填する手段であってもよい。この手段は、ガスを閉じ込め、かつレーザビームを案内するように、配置される。このような手段は、特に、ガス−レーザ相互作用の持続時間の長さを延長させることが可能である。別の適切なガス−レーザ相互作用手段は、ガスセルであってもよい。ガスセルにおいては、レーザビームによって直接、入力孔および出力孔を、自動的にアラインメントして開けることが可能である。別の適切なガス−レーザ相互作用手段は、ガスが充填された中空コアファイバであってもよい。これらのガス−レーザ相互作用手段は、特に、記事「“High harmonic generation in a gas-filled hollow-core photonic” - Applied Physics B: Lasers and Optics - Springer Berlin / Heidelberg - ISSN 0946-2171 (Print) 1432-0649 (Online) - Volume 97, Number 2 / octobre 2009 - DOI 10.1007/s00340-009-3771-x - Pages 369-373 - Subject Collection Physics and Astronomy <http://www.springerlink.com/physics-and-astronomy/> - Springer Link Date mardi 13 octobre 2009」に記載されている。
【0040】
コヒーレントなXUVパルス発生システムの一実施形態では、レーザ装置は、ガスが充填された中空コアファイバを有する高調波発生装置20に結合された、フェムト秒の直接増幅のための手段を備えている。実際、「“High harmonic generation (HHG) in a Kagome-type hollow-core photonic crystal fiber (HC-PCF)* Heckl, O.H.; Baer, C.R.E.; Krankel, C.; Marchese, S.V.; Schapper, F.; Holler, M.; Sudmeyer, T.; Robinson, J.S.; Tisch, J.W.G.; Couny, F.; Light, P.; Benabid, F.; Russell, P.S.J.; Keller, U. - Lasers and Electro-Optics 2009 and the European Quantum Electronics Conference. CLEO Europe - EQEC 2009. European Conference on Volume , Issue , 14-19 June 2009 Page(s):1 - 1 Digital Object Identifier 10.1109/CLEOE-EQEC.2009.5192106」といった文献に記載されているように、従来のバルクレーザ装置に結合された中空コアファイバが生成する高調波は、440nJのエネルギーしか有さない。また、文献「“2008年1月15日 / Vol. 33, No. 2 / OPTICS LETTERS 107 Stretcher-free high energy nonlinear amplification of femtosecond pulses in rod-type fibers Y. Zaouter,1,3,* D. N. Papadopoulos,2 M. Hanna,2 J. Boullet,1 L. Huang,1 C. Aguergaray,1 F. Druon,2 E. Mottay,3 P. Georges,2 and E. Cormier1”」にて説明されているように、フェムト秒の直接増幅のための手段を備えるファイバベースのレーザは、1000nJのエネルギーを有する極めて短い衝撃を生成することが可能である。
【0041】
図3に示されるような適用可能なチャンバ30は、XUV放射ビームを受信するために相互作用チャンバ20に結合されており、XUV分光計を含んでいる。XUV分光計は、入射スリット230と、mmあたり600ラインの密度の格子を有するXUV反射回折格子240と、回折されたビームを特徴付けるために用いられる位置感応検出器250とを有する。この検出器250は、例えば、16ビットの冷却CCDカメラ上に映し出される蛍光スクリーンに結合された、二重多チャネルプレート(MCP)検出器である。XUV分光計は、格子240を回転させて、XUVビーム放射の入射角を調整する電動装置をさらに備えていてもよい。その結果、検出器250は、30nm〜100nmの波長範囲を対象とすることが可能である。入射スリットにより透過が制限されているにもかかわらず、また、格子の回折効率が低いためXUV分光計の総合効率が1/1000よりも低くなるにもかかわらず、検出器250は、明確かつ良好に規定された高次高調波を観測することが可能である。ガス/レーザ相互作用の形状も、XUV分光計の設計も、極めて高い光子束を処理するために、著しく最適化されている。
【0042】
ここで、図4を参照する。図4には、XUV分光計とビーム輸送とを備える適用可能な装置30の一実施形態が概略的に示されている。本実施形態では、XUV放射ビームは、ガラスプレート300によって反射される。ガラスプレート300は、入射視射角(grazing incidence angle)に近い角度を形成するために、XUV放射ビームに相対して配置された被覆プレートである。XUV放射ビームは、その後、IR基本ビームとXUVビームとに分けられ、それぞれ独立して制御され得る。上記基本ビームは、ガラスプレート300を透過する。上記XUVビームは、その後、トロイダルミラー310によって再集束される。そして、再集束されたXUVビームは、スペクトル選択が必要ならば、格子320によって分散されるか、高時間分解能が必要ならば、格子320の代わりに第2のガラスプレートによって反射される。ガラスプレート300によって透過されたIRビームは、その後、強度および焦点の形状について制御され、遅延手段330によってXUVビームよりも遅延される。そして、IRビームは、IR再集束手段340によって再集束されたXUVビームと同じ場所で再集束されて、想定可能な時間分解能を有するIR−XUV実験を行うことが可能となる。
【0043】
本発明は、多くの分野に適用可能である。本発明は、例えば、化学または原子物理学(「フェムト化学」)用の、極めて高い繰返し周波数のプローブシステムに適用可能である。また、本発明は、産業界においても、例えば、補助装置を使ったレーザアブレーション、または、(赤外線放射とXUV放射とを関連付けることによる)マイクロマシニングにも適用可能である。さらに、本発明は、ナノスケールの特徴付け、および/または、測定学にも適用可能である。より具体的に言うと、本発明の有効な用途は、極めて高い周波数のナノリソグラフィーであり、また(例えば、化粧品の用途の)光励起であり得る。
【0044】
「備える」、「含む」、「包含する」、「含有する」、「である」、および、「を有する」といった表現は、明細書およびその関連する特許請求の範囲を解釈する場合、包括的なものと理解されるべきである。すなわち、明確に記載されていない他の部材または構成要素が存在し得ると解釈されるべきである。また、単数形で記載したものは、複数形の記載を含むことでもあり、その逆もまた当てはまると、解釈されるべきである。データが、視聴覚のデータと呼ばれる場合、実施形態の説明に他に記載がない限り、このデータは、音声のみ、ビデオのみ、静止画像のみ、または、これらの組み合わせを示すことが可能である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態であると現在考えられるものについて、図示および説明してきたが、本発明の実際の範囲から逸脱することなく、他にも様々な変形を行ってもよいし、同等のものと置き換えてもよいことは、当業者に理解されよう。また、多くの変形を、ここに記載される本発明の中心概念から逸脱することなく行い、特定の状況を本発明の教示に適合させてもよい。さらに、本発明の一実施形態は、上述の全ての特徴を含まなくてもよい。したがって、本発明は、決して、開示される特定の実施形態に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を包含することを、意図するものである。
【0046】
本発明の範囲から逸脱することなく、明細書内に記載された様々なパラメータを変更してもよいし、記載された、および/または、特許請求の範囲において特定された様々な実施形態を組み合わせてもよいことは、当業者は容易に認識するであろう。
【0047】
特許請求の範囲内の参照番号は、特許請求の範囲を限定するものではなく、特許請求の範囲の読み易さを向上させるために挿入されたものに過ぎないことを、明記する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレントなUV−XUVパルスを発生するシステムであって、
パルスを含むレーザビームを生成するように構成されたファイバレーザ装置(10)と、
相互作用媒体を含む高調波発生装置(20)とを備え、
上記高調波発生装置および上記ファイバレーザ装置は、上記レーザビームが、少なくとも1013W/cmの電力で上記相互作用媒体に衝突して上記UV−XUVパルスを発生するように、結合されている、システム。
【請求項2】
上記ファイバレーザ装置(10)によって生成された上記パルスの周波数は、上記コヒーレントなUV−XUVパルスの発生周波数を、50kHzから数MHzまで調節するように構成することが可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記ファイバレーザ装置は、チャープパルス増幅のための手段を備えている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
上記ファイバレーザ装置は、フェムト秒の直接増幅のための手段を備えている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
上記相互作用媒体と上記レーザビームとの間の相互作用は、高次高調波の周波数で上記XUVパルスを発生する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
上記ファイバレーザ装置(10)は、ロッド型ファイバを備えている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
上記ファイバレーザ装置(10)は、Yb添加ラージモードエリアファイバを備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
上記ファイバレーザ装置(10)は、Eb添加ラージモードエリアファイバを備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
上記ファイバレーザ装置(10)は、Tu添加ラージモードエリアファイバを備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
上記相互作用媒体はガスを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
上記相互作用媒体は不活性ガスを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
上記相互作用媒体は、液体のターゲットまたは固体のターゲットを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
上記高調波発生装置は、上記ガスと上記レーザビームとが相互作用するように、上記ガスを閉じ込めるとともに上記レーザビームを案内するように構成された手段を備えている、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項14】
上記高調波発生装置は、上記ガスを包含するセルを備え、当該ガスを包含するセルには、上記ガスと上記レーザビームとが相互作用するように、上記レーザビームによって入力孔および出力孔が開けられている、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項15】
上記高調波発生装置は、ガスが充填された中空コアファイバを備え、当該ガスが充填された中空のコアファイバは、上記ガスと上記レーザビームとが相互作用するように配置されている、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項16】
上記コヒーレントなUV−XUVパルスを受信するように結合されたXUV分光測光器をさらに備えている、請求項1〜15のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−515940(P2012−515940A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546818(P2011−546818)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050853
【国際公開番号】WO2010/084202
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(506066777)サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティ フィック セーエヌエールエス (22)
【Fターム(参考)】