説明

コヒーレント光受信装置及び光通信システム

【課題】光部品の設定の要求精度が低く、簡素な光部品で構成できるコヒーレント光受信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るコヒーレント光受信装置は初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を用い、複数の局発光と信号光とのそれぞれの中間周波数信号をそれぞれ中間周波数信号と同じ周波数かつ互い位相揺らぎが揃い乗ずる際の初期位相が所定の関係である正弦波信号をそれぞれ乗ずるか、中間周波数信号の周波数差の自然数分の1の周期で中間周波数信号をサンプリングし、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が位相2πq/K、(q:0〜K−1)の出力となるように調整することで、光90度位相ハイブリッド回路を用いず、かつ1シンボル時間の半分以下の周期での位相変調による課題も引き起こすことなく、コヒーレント光検波を実現することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を位相ダイバーシティ受信方式で受信するコヒーレント光受信装置及びこれを備える光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント光通信の同期検波は、信号光と信号光に位相を追尾した局発光を混合することで光検波を行う。ここで、信号光と局発光の位相が整合していない場合、検波効率が劣化して信号が出力されなくなる。光位相同期ループを用いて位相を追尾しないでコヒーレント光検波を実現する方法として位相ダイバーシティ受信方式がある。
【0003】
位相ダイバーシティ受信方式は、光多端子結合回路を用いた光信号の位相と振幅との同時測定の発想に基づくものである。2相(同相と直角位相)ダイバーシティ受信方式を例に挙げると、光多端子結合回路として例えば、2入力4出力の光90度位相ハイブリッド回路を備える。この光90度位相ハイブリッド回路は、4端子の光多端子結合回路に相当し、局発光源部からの局発光と受信した信号光をそれぞれ異なる入力端に入力されると、π/2位相差が異なる4系列の混合光を出力する。ここで、4系列の混合光としたが、4系列の混合光で互いに、π位相差の異なる混合光を差動光検波せずに、互いにπ/2位相差が異なる混合光をそれぞれ光検波する場合は、4端子の光多端子結合回路として扱うが4出力の内の2出力を用いない2入力2出力の光90度位相ハイブリッド回路を用いて、互いにπ/2位相差が異なる2系列の出力でよい。
【0004】
2系列の差動光検波器2はそれぞれ、光90度位相ハイブリッド回路からの2組のπ位相差が異なる系列の混合光をそれぞれ差動光検波して電気信号に変換し、それぞれの位相差関係における中間周波信号を出力する。この2つの中間周波信号はそれぞれ復調回路で復調される。加算器はこの復調された信号をそれぞれ適当に加算して信号成分を出力する。これにより、信号光の位相状態に関らず、受信装置において一定以上の信号出力を得ることが可能となる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−192746号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dany−Sebastien Ly−Gagnon et al., “Unrepeated 210−km transmission with coherent detection and digital signal processing of 20−Gb/s QPSK Signal”,OFC2005, OTuL4.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光90度位相ハイブリッド回路等の光多端子結合回路を用いた位相ダイバーシティ方式によるコヒーレント光受信装置の構成は高価かつ複雑である。例えば、光90度位相ハイブリッド回路を空間光学系やPLC等の光部品で構成した場合、それら光回路で発生する相対的な光路差が温度や振動等の環境変化の影響を受けないように頑強に光路長差を保持するか又は光路差を補正する必要がある。例えば、1550nm帯の信号光の位相差を波長の1/100程度で調整するためには、15nmのオーダーで光路長差を保持又は補正する必要がある。このため、環境温度変動や振動等の外乱の影響を受けても、頑強に光路長差を保持し十分な精度を保てる高精度かつ変動耐性の高いコヒーレント受信器や、外乱の影響による位相誤差を軽減するように、光回路にフィードバックして補正を行うコヒーレント光受信装置がある。いずれのコヒーレント光受信装置も、光90度位相ハイブリッド回路の構成が高価になるか、又はフィードバック等の処理が複雑になるという課題をもつ。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、光部品の設定の要求精度が低く、簡素な光部品で構成できるコヒーレント光受信装置及びこれを備える光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係わるコヒーレント光受信装置は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を用い、信号光と局発光を光検波することでそれぞれ生成される中間周波数信号の周波数差の自然数分の1の周期で中間周波数信号をサンプリングするか、それぞれの中間周波数信号と同じ周波数でかつ互いの位相揺らぎが揃い乗ずる際の初期位相が所定の関係である正弦波信号を中間周波数信号にそれぞれ乗じて復調し、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が2πq/K、(q:0〜K−1)の出力となるように調整することで、従来の光90度位相ハイブリッド回路を用いずにコヒーレント光検波を実現することとした。
【0010】
具体的には、本発明に係るコヒーレント光受信装置は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を出力する局発光源部と、前記局発光源部が出力する前記局発光及び入力される信号光を混合し、混合信号光を出力する混合部と、前記混合信号光を光検波し、複数の前記局発光と前記信号光との間の中間周波数信号を出力する光検波部と、前記光検波部の出力する前記中間周波数信号をそれぞれ分離処理して前記信号光の信号成分を復調する処理部と、前記光検波部が出力する前記中間周波数信号の互いの位相が所定の関係となるように調整する調整部と、を備える。
【0011】
本コヒーレント光受信装置は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を用い、光検波部が出力する中間周波数信号の互いの位相が所定の関係となるように調整する。本コヒーレント光受信装置は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を用い、信号光と局発光を光検波することでそれぞれ生成される中間周波数信号の周波数差の自然数分の1の周期で中間周波数信号をサンプリングし、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号のサンプリングの際の位相が2πq/K、(q:0〜K−1)となるように調整する。光4端子結合回路に対応する2相ダイバーシティ方式であれば、中間周波数信号における位相差が4分の1周期となるように調整することで、信号光の直交する位相成分のそれぞれに対応する2つの中間周波数信号を周波数多重で同時に出力することができる。調整部での調整は、局発光間の周波数差をサンプリング周期の自然数倍とし、サンプリングの位相をサンプリングの際の中間周波数信号の位相が所定の位相、2相ダイバーシティ方式であればπ/2となるようにサンプリングの周期を調整する。このため、本コヒーレント光受信装置は、光90度位相ハイブリッド回路を用いずに、1つの光検波器で位相ダイバーシティ構成を実現できる。
【0012】
光90度位相ハイブリッド回路を不要としたことで、外乱の影響による位相誤差が従来の構成と比べて無視でき、波長オーダーでの光部品の調整が不要となる。したがって、本発明は、光部品の設定の要求精度が低く、簡素な光部品で構成できるコヒーレント光受信装置を提供することができる。
【0013】
本発明に係るコヒーレント光受信装置の前記局発光源部は、1つの光を出力する光源と、正弦波信号を発振する発振器と、前記光源からの光を前記発振器からの正弦波信号で変調して複数の前記局発光を生成する変調器と、を有することを特徴とする。
【0014】
本局発光源部は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を出力することができる。
【0015】
本発明に係るコヒーレント光受信装置の前記局発光源部は、複数の前記中間周波信号の周波数差の絶対値が前記信号光の変調帯域の半分より大きくなる前記局発光を出力し、前記処理部は、複数の前記中間周波信号とそれぞれの中間周波数信号と同じ周波数でかつ互いの位相揺らぎが揃い乗ずる際の初期位相が所定の関係である正弦波信号をそれぞれ乗じ、前記調整部は、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が2πq/K、(q:0〜K−1)の位相の出力となるように正弦波信号の位相となるように調整することを特徴とする。
【0016】
中間周波信号、即ち局発光の周波数差を変調帯域の半分より大きく取ることで、信号のマークの中に中間周波信号が最大となる点が少なくとも1つ以上存在するため光信号を最も効率的に検波でき、位相揺らぎが揃い互いの初期位相が所定の関係にある局発光と信号光から生成される中間周波数信号に位相揺らぎが揃い互いの初期位相が所定の関係にある電気の正弦波信号を乗ずる際の電気の正弦波信号の位相を所定の関係に調整することで、光部品の設定の要求精度が低く、波長オーダーでの光部品の調整が不要であり、簡素な光部品で構成できるコヒーレント光受信装置を提供することができる。
【0017】
また、復調の際に、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が2πq/K、(q:0〜K−1)の位相の出力となるように正弦波信号の位相となるように位相揺らぎが揃い互いの初期位相が所定の関係にある電気の正弦波信号の位相を設定することで、中間周波数同士の位相差と、正弦波信号同士の位相差は信号光の位相と無相関にそれぞれの位相差の関係のみ一定に管理してコヒーレント光検波することができる。
【0018】
本発明に係るコヒーレント光受信装置の前記局発光源部は、光周波数の差が、前記信号光の帯域幅の2倍よりも小さく、かつ、前記信号光の光源スペクトル線幅及び前記局発光の光源スペクトル線幅よりも大きい局発光を出力し、
前記処理部は、位相が直交する前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、
前記AD変換器から出力されるデジタル信号を(C1)式で演算し、前記信号光に含まれるデータ情報を推定するための信号ベクトルs(t)を出力するデジタル演算器と、前記デジタル演算部が出力する前記信号ベクトルs(t)を識別処理し、前記信号光の信号成分を受信データとして出力する識別器と、を有し、
前記調整部は、複数の前記中間周波数信号の位相差が、前記デジタル演算器で前記中間周波数信号に乗ずる複数の正弦波信号の位相差と4分の1周期異なる位相差となるように調整することを特徴とする。
(式C1)
s(t)=[I’+jQ’]/[X+Y exp(−jw0t)]
ただし、前記中間周波数信号の振幅をX及びY、前記局発光の角周波数差をw0、虚数単位をjとする。
【0019】
光検波部の出力をAD変換し、デジタル信号処理することと、局発光間の位相差と角周波数差の設定を最適化したことで、差動光検波に要求される帯域幅を低減できる。
【0020】
本発明に係るコヒーレント光受信装置は、前記局発光の強度の比を変化させる強度比制御回路を更に備えることを特徴とする。強度比制御回路が局発光間の光強度を調整することでデジタル演算器が信号ベクトルの演算不能となることを回避することができる。
【0021】
本発明に係る光通信システムは、波長多重信号を伝送する光ファイバと、複数の前記コヒーレント光受信装置と、前記光ファイバを伝送する波長多重信号を分岐し、それぞれ前記コヒーレント光受信装置へ結合する光分岐器と、を備え、それぞれの前記コヒーレント光受信装置が1つの前記局発光源部を共用することを特徴とする。
【0022】
複数のコヒーレント光受信装置が1つの局発光源部を共有することで、部品点数を大幅に削減することが可能であり、機器製造コストや機器管理コストを大幅に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、光部品の設定の要求精度が低く、簡素な光部品で構成できるコヒーレント光受信装置及びこれを備える光通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るコヒーレント光受信装置を含む光通信システムを説明する図である。
【図2】本発明に係るコヒーレント光受信装置の局発光を説明する図である。
【図3】本発明に係るコヒーレント光受信装置の局発光を説明する図である。
【図4】本発明に係るコヒーレント光受信装置を含む光通信システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のコヒーレント光受信装置301を含む光通信システム401を説明する図である。光通信システム401は、光送信装置351とコヒーレント光受信装置301とが光ネットワーク352を介して接続されたものである。光送信装置351は、例えば強度変調やBPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSKなどのM相PSK(M−ary Phase Shift Keying)やM相DPSK(M−ary Differential Phase Shift Keying)、M相APSK(M−ary Amplitude and Phase Shift Keying)、M相QAM(M−ary Quadrature Amplitude Modulation)等の変調方式により光変調し、光信号として出力する。
【0027】
コヒーレント光受信装置301は、位相ダイバーシティ構成を採用せずに、実質的に位相ダイバーシティと等価の信号処理を行うことによってデータの取り出し処理(復調処理)を行う。即ち、光90度位相ハイブリッド回路を不要とすると共に、光検波器を1系列としている。具体的には、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を用い、局発光及び入力される信号光を混合し、混合信号光を光検波し、局発光と信号光との間の中間周波数信号をそれぞれ分離処理して中間周波数信号の互いの位相が所定の関係となるように調整することで、光90度位相ハイブリッド回路を用いず、かつ1シンボル時間の半分以下の周期での位相変調による課題も引き起こすことなく、コヒーレント光検波を実現することとした。
【0028】
コヒーレント光受信装置301は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を用い、信号光と局発光を光検波することでそれぞれ生成される中間周波数信号とそれぞれの中間周波数信号と同じ周波数でかつ互いの位相揺らぎが揃い乗ずる際の初期位相が所定の関係である正弦波信号をそれぞれ乗じ、前記調整部は、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が2πq/K、(q:0〜K−1)の位相の出力となるように正弦波信号の位相となるように調整する。又は、コヒーレント光受信装置301は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を用い、信号光と局発光を光検波することでそれぞれ生成される中間周波数信号の周波数差の自然数分の1の周期で中間周波数信号をサンプリングし、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号のサンプリングの際の位相が2πq/K、(q:0〜K−1)となるように調整する。
【0029】
以下、コヒーレント光受信装置301の詳細について2相ダイバーシティ受信に即して、説明する。コヒーレント光受信装置301は、局発光源部10、調整部11、2入力2出力合波器の混合部12、差動光検波器13、処理部14を備える。
【0030】
局発光源部10は、コヒーレント光受信のための初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光からなる局発光ELを発生する。局発光源部10は単一の光源101からの光に、発振器102の周波数fmの正弦波信号で強度変調する変調器103を用いて変調をかける。これにより、光源101が出力した光に対して周波数fmの差分をもつサイドバンドを生じる。光源101から送出された光と、変調器103により生成されたサイドバンドにより、1つの光源101から3つの光を生成することが可能である。これら3つの光のうち、光分波器(不図示)を用いて任意の2つの光を選択してもよいし、光源101の出力光を抑圧することで、周波数間隔2fmの両方のサイドバンドのみ選択することも可能である。
【0031】
例えば、変調器103としてマッハツェンダ型光変調器を用い、発振器102によりfmの正弦波信号を印加し変調する。このとき、バイアス電圧を適当に選ぶと入力光の光周波数成分は抑圧され、入力光の光周波数に対し変調周波数fmだけの差分をもつサイドバンドを生じる(DSB−SC方式)。DSB−SC方式では、3つの光から局発光として二つの光を選択する必要がないことから、光源101の出力光パワーを有効に活用することができる。
【0032】
また、光源101から出力される角周波数wLの光の一部を音響光学変調器(Acousto−Optic Modulator:AOM)を用いて角周波数がw0(=2πf0)だけシフトし、その角周波数wL+w0の光と角周波数wLの光の混合した局発光ELを出力するとしてもよい。また、角周波数をw0だけシフトさせる周波数シフタや、FM変調器や、単側波帯(Single Side−Band:SSB)変調器等を用いて角周波数wL+w0の光と角周波数wLの光の混合した局発光ELを出力するとしてもよい。K相ダイバーシティ方式の場合は、それぞれ各周波数がw0の自然数倍離れたKの局発光ELを出力してもよい。
【0033】
いずれの場合も、局発光の光周波数間隔は、電気信号による発振器102の周波数精度で制御されているため、信号光の光周波数制御も容易になる。
【0034】
また、光源101として外部クロックで動作するモードロック光源を用いてもよいし、上記の条件を満たせばその他の光源を用いてよい。
【0035】
変調サイドバンドを用いるか、光の一部分を周波数シフトした光を出力する局発光源部10からの複数の局発光は、単一の光から生成しているので、各瞬間では、同一の初期位相と同一位相揺らぎを有する。なお、局発光毎の伝搬行路が異なる時は、局発光同士の位相関係の相関を保持するために、局発光を伝播する行路長差はコヒーレント長と比べて無視できる程度、例えばその1/10以下とする。
【0036】
ここで、局発光ELは、受信する信号光Esに対しfIF1及びfIF2だけ光周波数が離れた光とする。局発光源部10は、図2に示すように信号光とそれぞれ光周波数がfIF1、+fIF2離れ、かつ局発光間の光周波数がf0=fIF1+fIF2だけ離れた光を出力する。又は、局発光源部10は、図3に示すように2つの局発光の光周波数差がf0=fIF2−fIF1となるように配置し、信号光に対しそれぞれの局発光がfIF1、fIF2だけ光周波数が離れた光とすることでも、同様に2つの中間周波信号を得ることが可能である。いずれの場合も、fIF1≠fIF2である。
【0037】
また、出力信号を最も効率的に検波するためには、信号のマークの中に中間周波信号が最大となる点が少なくとも1つ以上存在すればよい。これは、中間周波信号の周波数差となる|fIF1−fIF2|を変調帯域の半分より大きく取ることで可能である。なお、ここで、局発光の光強度は等しく、後述する光受信装置301でのそれぞれに対応する光検波器の受信感度や中間周波数信号の利得と減衰を考慮した透過特性は等しいとする。異なる場合も、その光強度、受信感度、透過特性が同等となるように、光信号強度又は中間周波数信号強度を調整すればよい。
【0038】
混合部12の2×2合波器は、局発光EL及び受信した信号光Esを混合する。即ち、2×2合波器においては、調整部11からの局発光ELと受信した信号光Esとを混合させて、差動光検波器13へ出力する。
【0039】
差動光検波器13は、混合部12にて混合された混合信号の光について光検波する。即ち、差動光検波器13は混合部12からの混合光について差動光検波して、電気信号に変換する。
【0040】
処理部14は、差動光検波器13の出力した電気信号の内の、局発光ELに含まれる角周波数wLの光及び受信した信号光Esのビートによるwi (=2πfIF1)を搬送波とした中間周波数信号Xと、局発光ELに含まれる角周波数wL+w0の光及び受信した信号光Esのビートによるwi+w0(=2πfIF2)を搬送波とした中間周波数信号Yと、を送信側装置351での光変調方式に応じて処理する。中間周波信号Xは、周波数wiを中心に信号帯域幅の約2倍のスペクトル幅をもつとし、中間周波信号Yは、周波数wi+w0を中心に信号帯域幅の約2倍のスペクトル幅をもつとする。また、各中間周波信号X、Yのパワーの差分は、受信した信号光の位相状態等に依存して変動する。このとき、受信電子回路の帯域幅は、図1の例では信号帯域幅の4倍以上とすることが必要となる。なお、中間周波数wiが0Hzとなるように局発光の角周波数wLを設定した場合には、受信に用いる電気回路の帯域幅は信号帯域幅の3倍に近づく。
【0041】
処理部14で、中間周波数信号X、Yは、例えば、それぞれ同じ周波数の正弦波信号と乗ずることで復調される。それぞれの中間周波数信号と乗ずる正弦波信号は局発光源部の発振器102からの正弦波信号をそれぞれの中間周波数信号となるように周波数シフトしてもよい。また、図1に示すように局発光源部の発振器102とは異なる発振器を備え、一方の中間周波数信号を出力し、その出力の一部を他方の中間周波数信号となるように周波数シフトしてもよい。また、それぞれの中間周波数信号を出力する発振器を個別に備えてもよい。ただし、用いる発振器間の初期位相と位相揺らぎを揃えるように同調動作をしている。調整部(不図示)は、発振器からのそれぞれの中間周波数信号と同じ周波数でかつ互いの初期位相と位相揺らぎが揃った正弦波信号を中間周波数信号に乗ずる際に、正弦波信号の位相を位相調整器によって調整することで、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が2πq/K、(q:0〜K−1)の位相の出力となるように正弦波信号の位相となるように調整する。2相ダイバーシティ方式の場合は、π/2位相が異なる出力となるように設定する。2相ダイバーシティ方式の場合で、中間周波数信号XとYの位相揺らぎをΘx(t)とΘy(t)、それぞれ対応する正弦波信号の位相揺らぎをφx(t)とφy(t)とすると次式の関係となる。
(式1)
Θx(t)−Θy(t)=φx(t)−φy(t)±kπ/2
(k=1,3,5,・・・) (1)
このとき復調後の中間周波数信号は、位相に依存しない定数項を1とすると次式で示される。
(式2)
cos(Θx(t)−φx(t))
cos(Θy(t)−φy(t)±kπ/2)=sin(Θx(t)−φx(t))
(2)
(2)式で示されるように、中間周波数同士の位相差と、正弦波信号同士の位相差は信号光と局発光の位相差と無相関にそれぞれの位相差の関係のみ一定であればよい。
【0042】
なお、調整部による位相の調整は明示的な位相調整器によって中間周波数信号との位相を(1)式に示す関係に保つように調整したが、中間周波数信号に乗ずる正弦波信号の乗ずるためのミキサまでの伝搬路長を予め(1)式が成立するようにすることで用いずともよい。逆に、中間周波数信号間の位相を(1)式に示す関係に保つように調整することに加えて、中間周波数信号と正弦波信号を乗じた後の出力の位相がそれぞれの中間周波数信号に対する出力で一定となるように調整するとしてもよい。更に、中間周波数信号に乗ずる正弦波信号間の位相の調整によって説明したが、局発光の伝搬距離を調整することで局発光間の位相を調整してもよい。局発光間の位相を調整する場合は中間周波数信号に乗ずる正弦波信号の位相を調整しなくともよい。また、中間周波数信号に乗ずる正弦波信号と局発光の両方を調整し、(1)式に示される関係としてもよい。局発光は混合部12を経由して差動光検波器13に入力される。この際の局発光の伝搬距離を、局発光間の位相を調整する場合は、差動光検波器13にて生成される中間周波数信号の位相が所定の関係、例えばπ/2異なるように調整する。
【0043】
例えば、光周波数差が2GHzで伝搬路の屈折率が1.5、光速が3×10m/sとすれば、2.5cm伝搬すれば位相が1回転する。このため、1/4位相調整する場合は、その1/4である0.625cmの単位で設定すればよい。なお、温度等の経時変化による、光源101からの伝搬路の長さおよび屈折率の変動が無視できれば、伝搬路の設定は一定であってもよい。例えば、位相がπ/40までずれてよいのであれば、屈折率を考慮した実効的な伝搬路長の変動が0.6mm以下であればよい。
【0044】
また、処理部14では、差動光検波器13の出力を予め電気濾波器(Band Pass Filter:BPF)で、各中間周波信号X,Yに分離した後に処理してもよい。電気濾波器(Band Pass Filter:BPF)で、各中間周波信号X,Yに分離した後で処理する場合、同じ周波数の正弦波信号を乗ずる代わりに、それぞれを2条検波等の包絡線検波で処理してもよい。
【0045】
また、コヒーレント光受信装置301は、(1)式を満たすように、信号光と局発光を光検波することでそれぞれ生成される中間周波数信号の周波数差の自然数分の1の周期で中間周波数信号をサンプリングし、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号のサンプリングの際の位相が2πq/K、(q:0〜K−1)となるように調整してもよい。即ちそれぞれの局発光に対応する位相差を一定のまま処理するようにサンプリングするためのサンプリング周期τと、中間周波数信号の周波数の差Δf(=w0/2π)との間には、全サンプリングで同一の符号の値のままサンプリングする場合はΔfτ=m(mは0以外の任意の整数)が、サンプリングの度に反対の符号の値としてサンプリングする場合はΔfτ=m/2(mは0以外の任意の整数)が、成立するようにしてもよい。サンプリングは、例えば、中間周波数信号に乗ずる正弦波信号を、サンプリングするタイミングでのみ乗ずることで行ってもよいし、サンプリングするタイミングでのみ中間周波数信号をミキサに入力するとしてもよいし、ミキサの出力をサンプリングするとしてもよい。一般に端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合もそれぞれの局発光に対応する中間周波数信号の周波数の差も同様である。なお、それぞれの中間周波数信号の周波数同士は異なる。
【0046】
更に、望ましくは、中間周波数信号を復調した際の位相が、サンプリングの機会によらず0とπ/2、0と−π/2、πとπ/2、πと−π/2のいずれか一つで固定的な関係となるように、位相を整合してサンプリングすることが望ましい。この場合、サンプリング毎に、中間周波数信号の復調した位相成分がサンプリング機会によらず一定となるので位相変調成分の処理が簡易となる。
【0047】
又、処理部での処理に際し、特許文献1と同様の処理を、光90度位相ハイブリッド回路の各出力の代わりに、それぞれの中間周波数信号に対して処理してもよい。
【0048】
なお、図1のコヒーレント光受信装置301は、2×2合波器のそれぞれでπ位相差が異なる出力を差動光検波するため2×2合波器の混合部12と差動光検波器13で構成されているが、混合部12を2×1合波器とし、差動光検波器13の代替として差動ではない単一入力の光検波器としてもよいし、合波器と差動検波器の一方を変更してもよい。また、コヒーレント光受信装置301は、複数の局発光を用いる代わりに、単一の局発光を用い、信号光の一部を周波数シフト又は強度変調し、その複数のサイドバンドと単一の局発光との中間周波数信号の位相差と正弦波信号の位相差が4分の1周期異なるように信号光を変調し、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が2πq/K、(q:0〜K−1)の位相の出力となるように正弦波信号の位相となるように調整してもよい。
【0049】
なお、偏波制御器15は、混合部15に入力される信号光の偏波状態を局発光の偏波状態に整合させるものである。例えば、偏波制御器15は、前述の無限追従自動偏波制御器により構成することができるし、直交する偏波で信号光と混合する2組の本願の受信機を備えた偏波ダイバーシティ構成としてもよいし、直交する偏波の複数の局発光の組、合計4つの局発光を用いて位相ダイバーシティに加えて偏波ダイバーシティを行う構成としてもよい。
【0050】
次に、コヒーレント光通信装置301を複数備える光通信システム(不図示)について説明する。本実施形を適用する光通信システムは、例えば、複数の光送信装置351と複数のコヒーレント光通信装置301を、光結合器と光ファイバ伝送路と光分岐器を介して接続する、マルチポイント−マルチポイント光通信システムである。
【0051】
光送信装置351側から送出された信号光は、光結合器を用いて全信号光を結合して波長多重信号とした後、光ファイバ伝送路へ伝送する。このとき、各信号光の波長は異なるよう設定する。例えば、光送信装置351から送信される信号光は、光周波数にしてfs1とし、fs2とし、以下同様に、nからの信号光はfsnとなるように送信する。なお、時分割多重も行う場合は、時分割多重を行う光送信器351同士で単一の光周波数を共用してもよい。光送信器351から送信される光は、更に光ファイバ伝送路中の光合分岐器によって合波され、コヒーレント光通信装置301に伝送される。各コヒーレント光通信装置301は、同様に信号光を復調して信号出力を得る。
【0052】
本実施形態の場合、複数の光送信装置351から送出された信号光をそれぞれコヒーレント光通信装置301によって受信するために、各コヒーレント光通信装置301に光位相同期受信器を配置する場合と比べ、光送信器351からの信号光の異なる位相に応じて位相同期を行う必要がないので局発光源部10を一つに集約することができる。本実施例では、局発光源部10が単一であるので、各コヒーレント光通信装置301に精緻な調整が必要又は高精度な光90度位相ハイブリッド回路をそれぞれ用いた位相ダイバーシティ受信器を送信機毎に配置する場合と比べ、簡易な構成となる。更に、局発光源部10は複数のマルチポイント−マルチポイントの光通信システム又は複数のポイント−マルチポイントの光通信システムで共用することも可能である。そのため、光位相同期受信器と比べて部品点数を大幅に削減することが可能であり、光90度位相ハイブリッド回路を用いた位相ダイバーシティ受信器と比べて光部品点数を大幅に削減することが可能である。このため、機器製造コストや機器管理コストを大幅に低減することが可能となる。なお、複数のコヒーレント光通信装置301で局発光源部10を共用する場合、更に中間周波数信号に乗ずる正弦波を出力する発振器を共用する場合はそれらの伝搬距離をコヒーレント光通信装置301間で揃えるか、個別に調整する。
【0053】
このように、本実施形態の場合、光90度位相ハイブリッド回路を用いた構成と異なり、一組の局発光を複数の受信装置で共用することができるので、光90度位相ハイブリッド回路を用いた構成よりもスケーラビリティに優れる利点もある。
【0054】
以上の説明で、2相ダイバーシティ方式に即して説明を加えたが、一般に端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合は位相差が2π/K、2π2/K、・・・、2π(K-1)/Kとなるようにすれば同様である。なお、本実施形態の、局発光の偏波を直交偏波として、2×2分波器を光90度位相ハイブリッド回路とすれば偏波ダイバーシティに適用することもできる。
【0055】
従来のコヒーレント光受信装置では光90度位相ハイブリッド回路において、受信した信号光と局発光との2系列の混合光として、信号光と局発光の位相差がπ/2ずつ異なる複数の混合光を生成していた。そして、これら4出力の混合光それぞれを異なる2つの光検波器で光検波していた。これに対し、本実施形態のコヒーレント光受信装置301は、初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を局発光源部10が出力し、その複数の局発光を用いるので、所定のサンプリング周期で、位相関係が直交する2つの中間周波数信号(第1系列と第2系列)を周波数多重で同時に出力する。このため、複雑な光位相ループや、光90度位相ハイブリッド回路や高速の位相変調器を用いず、1つの差動光検波器で位相ダイバーシティ構成を実現できる。このため、受信した信号光を簡単な光部品を用いた構成により、電気信号に変換することができるので高速化に対応しつつ、小型化、構成の簡素化を図ることができる。
【0056】
(実施形態2)
図4は実施形態2のコヒーレント光受信装置302を含む光通信システム402を2相ダイバーシティの場合で説明する図である。コヒーレント光受信装置302は、図1のコヒーレント光受信装置301とは異なる局発光源部20と処理部24を備える。
【0057】
コヒーレント光受信装置302は、局発光源部20、2×2合波器の混合部12、差動光検波器13、処理部24を備える。処理部24は、アナログ/デジタル変換器121(AD変換器:Analog to Digital変換器)、デジタル演算器122、識別部123、正弦波信号源をなす発振器124、分周器125及びパターン発生部126を備える。
【0058】
局発光源部20は、発振器102からの出力を受けた変調器103により、後述する処理部24の発振器124で発生する正弦波信号の整数分の1の周波数で互いに異なる周波数の2つの局発光を出力する。具体的には、角周波数wL及び角周波数wL+w0の局発光を多重した局発光ELを生成する。この局発光ELの複数の局発光間の周波数差Δf(=w0/2π)は、受信する信号光Esの帯域幅の2倍よりも小さく、かつ、信号光Esを発生する光源のスペクトル線幅(半値全幅)及び上記局発光ELを発生する光源のスペクトル線幅(半値全幅)よりも大きい周波数である。ここで変調器103に発振器102から出力する正弦波信号は、処理部24の発振器124で発生する正弦波信号と位相が整合したものであることが処理部24での処理の簡易化の観点から望ましい。
【0059】
局発光源部20は、例えば、光源101、変調器103、光周波数依存の可変光減衰器105(Variable Optical Attenuator:VOA)、光分岐器106、モニタ回路107及び強度比制御回路108を組み合わせて構成される。
【0060】
光源101は、角周波数wLを有する光を出力する。光源101のスペクトル線幅(半値全幅)は、例えば100kHz〜10MHz程度とすることができる。
【0061】
変調器103は、光源101からの光の一部の角周波数を、分周器104から供給される周波数信号の角周波数w0だけシフトさせる周波数シフタである。変調器103は、例えば、一般的なFM変調器や音響光学変調器、強度変調器、SSB変調器である。変調器103が強度変調器である場合、キャリアを抑圧し、上下のサイドバンドを用いれば、光源101の出力する光の角周波数はwL0の代わりにwL0+w0/2とし、分周器104から供給される周波数信号の角周波数はw0/2とする。また、光源101からの光の一部の光周波数を変更することができない場合は、光源101からの光を分岐し分岐した一方の光の光周波数を変更し、他方の光周波数をそのままとし、両者の偏波状態を揃えて合波する構成としてもよい。
【0062】
周波数w0(=2πf0)は例えば、信号光が40Gbit/sのQPSK又はDQPSK信号光の場合、信号帯域幅は約20GHzとなるので、その2倍の約40GHzより小さく、かつ、局発光源部20内の光源101及び信号光の光源のスペクトル幅100kHz〜10MHzよりも大きくなるようにすればよいので、この場合の周波数f0は、例えば100MHz〜1GHzの範囲に設定する。
【0063】
VOA105は、その減衰量が光周波数で異なる減衰器であり、局発光が入力され、複数の局発光間の強度比を変更する。その変更する強度比は、後述する強度比制御回路108からの出力信号に従って可変制御される。また、VOA105は減衰器である代わりにその増幅量が光周波数で異なる増幅器であってもよい。また、VOA105は変調器103で生成する各局発光の強度比を調整することに替えてもよい。また、複数の局発光を分岐して一方あるいは両方に減衰器を経由して再び両者の偏波状態を揃えて合波する構成としてもよい。複数の局発光の分岐再合波は上述の変調器103とVOA105で共用してもよい。
【0064】
なお、光源101、変調器103、及びVOA105のそれぞれの間は、例えば、偏波保持ファイバ、光導波路又は空間光学系などを用いて光結合され、各々の間を伝搬する光の偏波状態が保持されている。
【0065】
光分岐器106は、局発光ELの一部をモニタ光として分岐してモニタ回路107に出力する。モニタ回路107は、光分岐器106からのモニタ光を用いて、局発光ELに含まれる角周波数wL及びwL+w0それぞれの局発光の強度(振幅)を検出し、その比をモニタする。強度比制御回路108は、モニタ回路107のモニタ結果及び後述するデジタル演算器122の演算結果に応じて、VOA105の減衰量を変化させるための制御信号を生成し、その制御信号をVOA105に出力する。
【0066】
混合部12は、局発光源部10からの局発光と受信した信号光とを混合させる2×2合波器である。2×2合波器の一方の入力ポートには、光伝送路等を介してコヒーレント光受信装置302に入力される角周波数wsの信号光Esが局発光と偏波が揃った状態入力され、他方の入力ポートには、局発光源部10から出力される局発光ELが入力される。2×2合波器は、入力される信号光及び局発光を合成し、光位相が概ね互いにπ異なる2組の光を出力する。
【0067】
差動光検波器13は、混合部12で混合された混合信号の光について光検波する。具体的には、差動光検波器13は、2×2合波器から出力される光位相がπ異なる各光を受光して差動光検波を行う。ここで、2×2合波器のそれぞれのπ位相差が異なる出力を差動光検波するため2×2合波器と差動光検波器13で構成されているが、2×2合波器を2×1合波器とし、差動光検波器の代わりに差動ではない単一入力の光検波器としてもよいし、合波器と差動検波器の一方を変更してもよい。
【0068】
AD変換器121は、差動光検波器13から入力されるアナログ電気信号を、正弦波信号源を発生する発振器124からの正弦波信号をサンプリングタイミングとしてデジタル信号に変換してデジタル演算器122に出力する。
【0069】
デジタル演算器122は、AD変換器121からのデジタル信号を用い、デジタル演算処理を行うことを通じ、受信した信号光の電界の振幅情報及び位相情報について、実部と虚部とからなる情報を得ることにより推定を行う。ここで、デジタル演算器122は、受信した信号光の1シンボルあたり位相状態「0」に対応する局発光と受信した信号光との混合光に由来する第1系列のデジタル信号(I)と、位相状態「π/2」に対応する局発光と受信した信号光との混合光に由来する第2系列のデジタル信号(Q)と、を取り込むことができる。これにより、デジタル演算器122においては、演算処理により、受信した信号光の光電界の振幅情報及び位相情報について、実部と虚部とからなる情報を得ることができる。
【0070】
識別部123は、デジタル演算器からの演算結果に基づいて受信データの識別処理を行うデータ識別部である。識別部123は、デジタル演算器122にて振幅及び位相情報が推定された結果としてのデジタル信号を用い、送信側装置351での光変調方式に応じて受信データの識別処理を行う。識別部123がこのように識別することでコヒーレント光受信装置は、信号光のデータの再生を行うことができる。
【0071】
なお、デジタル演算器122は、通常は受信した信号光に含まれる受信データのビットレートよりも低い動作正弦波信号周波数で動作する。
【0072】
発振器124は、AD変換器121へのサンプリングタイミングを規定する正弦波信号を発生する発振回路である。デジタル演算器122は、上述の受信データの取り出しのための演算処理の結果に基づいて、発振器124で発生する正弦波信号の位相と周波数等を位相状態「0」に対応する局発光が位相状態「0」に対応し、位相状態「π/2」に対応する局発光が位相状態「π/2」に相当するように制御する。これにより、デジタル演算器122は、AD変換器121からのデジタル信号について、例えば分周器125が行う正弦波信号の分周数に応じた並列処理によって上述のデジタル演算処理を行う。
【0073】
分周器125は、発振器124からの正弦波信号を分周して、デジタル演算器122への動作正弦波信号として出力する。これにより、デジタル演算器122は、AD変換器121からのデジタル信号について、分周数に応じた並列処理によって上述のデジタル演算処理を行うことができる。デジタル演算器122が1シンボル当たりの1組の第1系列及び第2系列のデジタル信号を単位にして演算処理できるように、分周器125は、AD変換器121のサンプリング周波数が、デジタル演算器122の動作正弦波信号よりも少なくとも2倍となるように分周比を設定する。
【0074】
更に、分周器125の分周数を2の整数N倍の分周数(2×N分周)とすることで、上述の第1系列(I)のデジタル信号についての演算と、第2系列(Q)のデジタル信号についての演算を一組とした場合、デジタル演算器122はN並列の並列演算処理を実行することができる。
【0075】
なお、AD変換器121及びデジタル演算器122は、予め単一モジュールとして一体化して構成することができる。このようにすれば、AD変換器121及びデジタル演算器122としての接続のための配線等を予めモジュール内で配線設計することができるので、装置の小型化や配線負荷の軽減の観点から有利である。AD変換器121及びデジタル演算器122は、差動光検波器13で電気信号に変換された中間周波数信号について、正弦波信号に基づくデジタル信号処理(アナログ/デジタル変換処理及びデジタル演算処理)を通じ、受信した信号光に含まれる受信データを取り出すための処理を行う受信データ処理部を構成する。
【0076】
信号光の伝送ビッレートをZ、信号光の多値変調数をm[1シンボル当たりの情報量]はlogm(bit/symbol)、1シンボル当たりの第1系列(I)及び第2系列(Q)のデジタル信号の取得回数をhとすると、発振器124では2hZ/logmの周波数を有する正弦波信号を発生させて、この正弦波信号に同期してAD変換器121はサンプリングを行う。
【0077】
次に、動作を説明する。受信する信号光及び局発光は、例えば、次式に示す電界ベクトルEs(t)及びEL(t)によって表されるものとする。
(式3)
Es(t)=Asexp{j(wst+Os(t))}s(t) (3)
(式4)
EL(t)
=[AL1+AL2exp{j(w0t)}]exp{j(wLt+OL(t))}
(4)
ここで、s(t)は受信した信号光のデータに対応した信号ベクトル、Asは受信した信号光の振幅、wsは受信した信号光の平均角周波数、Os(t)は受信した信号光の光位相揺らぎ、AL1は1方の局発光の振幅、AL2は他方の局発光の振幅、wLは一方の局発光の平均角周波数、w0は局発光間の角周波数差、OL(t)は局発光の光位相揺らぎ、tは時間、jは虚数単位をそれぞれ表す。
【0078】
ここれらの受信した信号光Es及び局発光ELが2×2合波器で混合された後、差動光検波器13で光検波された複素電流は、次式によって定義される。この複素電流の実部Iが一方の局発光に関する中間周波数信号に相当し、虚部Qが他方の局発光に関する中間周波数信号に相当する。
(式5)
I+jQ
=RAsAL1exp{j(wst+Os(t)−wLt−OL(t))}s(t)
+RAsAL2exp{j(wst+Os(t)−wLt−OL(t)−w0t}s(t)
(≡[RAsAL1exp{j(θ1(t))}+RAsAL2exp{j(θ2(t))}]s(t))
=exp{j(wst+Os(t)−wLt−OL(t))}[RAsAL1+RAsAL2exp{−j(w0t)}]s(t)
=exp{j(θ(t))}[RAsAL1+RAsAL2exp{−j(w0t)}]s(t) (5)
ここで、次式を満たすものとする。
(式6)
(RAsAL1)+(RAsAL2)=1 (6)
次に、(5)式について、光周波数wLの局発光に由来する項に着目し、信号光と局発光の周波数差及び相対位相雑音の補償を行うと、補償後の複素電流I’+jQ’は、次式となる。
(式7)
I’jQ’=[RAsAL1+RAsAL2exp{−j(w0t)}]s(t) (7)
【0079】
ここで、上記の補償の方法の一例について説明する。差動光検波器から出力される複素電流信号は、この補償に関連する技術として、例えば、非特許文献1には、受信した信号光が4値の位相偏移変調(Phase Shift Keying:PSK)方式の場合に、該受信した信号光と局発光の位相差θ(t)を計算する方法が示されており、この拡張により、m値のPSK方式の場合には、次式の関係に従って近似的に計算できることが示される。
(式8)
θ(t)≒(1/m)(1/Δt)∫arg{(I+jQ)}dt (8)
そこで、本発明では(8)式と同様にして、(5)式に含まれる光周波数wLの局発光の位相差θ1(t)及び光周波数wL+w0の局発光の位相差θ2(t)の各近似値を、次式に従って計算する。
(式9)
θ1(t)≒(1/m)(1/Δt)∫arg{(I+jQ)}dt
θ2(t)≒(1/m)(1/Δt)∫arg{([I+jQ]exp{−j(w0t)})}dt (9)
このとき、(9)式における積分時間幅は、複数の局発光の周波数差の逆数、すなわち、2π/w0よりも十分に大きく、かつ、受信した信号光の平均周波数と局発光の平均周波数との周波数差の最大値の逆数、すなわち、1/max(|wL−ws|/2π|)よりも十分に小さい。なお、受信した信号光がDQPSK方式の場合、mの値は4である。なお、上記の補償方法は一例であり、本発明に他の構成の補償方法を適用することも可能である。
【0080】
(9)式によりθx(t)及びθy(t)の各近似値が計算されると、前述の(5)式に含まれるRAsAL1及びRAsAL2の比が、次式により近似的に求められる。
(式10)
RAsAL1:RAsAL2
≒∫|exp{−j(θ1(t))}(I+jQ)}|dt
:∫|exp{−j(θ2(t))}(I+jQ)}|dt (10)
ただし、(10)式における積分時間幅は、複数の局発光間の周波数差の逆数2π/w0(=1/f0)よりも十分に大きい。
【0081】
(10)式の関係に従って求められたRAsAL1及びRAsAL2の比と、(6)式の関係とを用いることにより、RAsAL1及びRAsAL2の値を算出する。このRAsAL1及びRAsAL2の値と、差動光検波器13から出力される中間周波数信号の電流値と、発振器124の周波数から算出したw0(=2πf0)を(7)式をs(t)について解いて分母を有理化して信号ベクトルs(t)の値を演算する。このs(t)は、デジタル演算器122から出力される受信した信号光電界の振幅及び位相の推定した結果に相当する。
(式11)
s(t)
=[I’+jQ’]/[RAsAL1+RAsAL2exp{−j(w0t)}]
=[I’+jQ’][RAsAL1+RAsAL2exp{j(w0t)]/[1+2RAsAL1RAsAL2cos(w0t)] (11)
したがって、信号ベクトルs(t)の演算値を基に、識別部123において、受信した信号光の変調方式に対応した閾値に従ってデータの識別処理を実行することにより、受信データの再生が可能になる。
【0082】
ただし、上記(11)式は、次の(12)式の条件で発散するため、このような状態を回避するための措置が必要である。
(式12)
cos(w0t)=−1/[2RAsAL1RAsAL2] (12)
(12)式が成立するのは、(4)式を考慮すると次式の場合のみである。
(式13)
RAsAL1=RAsAL2=√2/2 (13)
したがって、(13)式の条件に近づいた場合には、例えば、複数の局発光の振幅比を変化させることにより、前述の(11)式の関係が発散して信号ベクトルs(t)の演算が不能になる状態を回避することが可能になる。
【0083】
局発光源部20において、光源101から出力される角周波数wLの光の一部が変調器103により角周波数がw0だけシフトされる。変調器103からの光はVOA105に入力されて、角周波数wLと角周波数wL+w0の複数の局発光間の強度(振幅)比が調整され、角周波数差がw0の複数の局発光からなる局発光ELとなる。
【0084】
局発光ELが2×2合波器に送られると共に、その一部が光分岐器106で分岐されてモニタ回路107に送られる。モニタ回路107では、局発光ELに含まれる各局発光の強度(振幅)の比がモニタされ、そのモニタ結果が強度比制御回路108に伝えられる。
【0085】
強度比制御回路108は、モニタ回路107のモニタ結果及びデジタル演算器122の演算結果に応じてVOA105の減衰量を変化させる。
【0086】
2×2合波器に入力された局発光ELは、角周波数wSを有する受信した信号光Esと合成され、光位相差がπ異なる各光が差動光検波器13に出力される。差動光検波器13では、2×2合波器からの出力光が差動光検波13される。これにより、局発光ELに含まれる角周波数wLの局発光と受信した信号光Esとのビートによる中間周波数wiを有する信号Iが差動光検出器13から出力されると共に、局発光ELに含まれる角周波数wL+w0の局発光と受信した信号光Esとのビートによる中間周波数wi+w0を有する信号Qが差動光検出器13から出力される。
【0087】
ここで、中間周波信号I,Qは、周波数差が信号帯域幅の2倍よりも小さく、かつ、信号光源及び局発光源部20のスペクトル線幅よりも大きくなるように設定されているため、各々のスペクトルが周波数軸上で重なり合うようになる。これにより、差動光検波器13及びそれらより後段に配置される電子回路に要求される帯域幅は、例えば、信号帯域幅の2倍程度で済むようになる。なお、中間周波数fIF1及びfIF2が0Hz近傍となるように局発光の角周波数wLを設定した場合には、要求される帯域幅を信号帯域幅と同程度まで狭くすることができる。
【0088】
差動光検波器13から出力される中間周波信号I,QがAD変換器121で高速にAD変換され、中間周波信号I,Qに対応したデジタル信号系列がデジタル演算器122に入力される。デジタル演算器122では、(3)式〜(11)式に対応した一連のアルゴリズムに従ってデジタル信号処理が実行され、信号ベクトルs(t)の値が演算される。また、その演算過程で求められるRAsAL1及びRAsAL2の値が上記(13)式の条件に近づくと、当該情報がデジタル演算器122から局発光源部20内の強度比制御回路108に伝えられ、強度比制御回路108によりVOA105が制御されることで、局発光ELに含まれる局発光間の強度の比が変えられ、(11)式が発散して信号ベクトルs(t)の演算が不能になってしまうことが回避される。
【0089】
そして、デジタル演算器122における信号ベクトルs(t)の演算値が識別部123に伝えられると、識別部123では、受信した信号光の変調方式に対応した閾値に従って、信号ベクトルs(t)の演算値がどのデータ値に該当するかの識別処理が実行され、その識別結果が受信データとして出力される。
【0090】
以上のように、受信信号のAD変換及びデジタル信号処理を組合せ、局発光ELに含む局発光間の角周波数差w0の設定を最適化したことにより、差動光検波器等に要求される帯域幅を低減できる。
【0091】
なお、デジタル演算器122において信号ベクトルs(t)の演算にあたっては、上述の式(11)に示すように、一方の局発光に与えるべき周波数差w0についての三角関数sin(w0t),cos(w0t)を演算する必要がある。ここで周波数差を与えるための周波数信号を独立した発振回路から供給されるように構成する場合、w0tの設定値としては一定範囲の値を取ることが考えられるため、デジタル演算器122は、発振回路の発振周波数に応じた三角関数sin(w0t),cos(w0t)の値を予めテーブル構成で蓄積しておく必要がある。
【0092】
この場合、局発光源部20で用いる発振器102とデジタル演算器122を同期することが望ましい。例えば、分周器125が発振器124で発生する正弦波信号を整数分の1分周した正弦波信号を、局発光間の周波数差(図2であればfIF1+fIF2、図3であれば(fIF2−fIF1)を規定する周波数信号とすることにより、AD変換器121でのサンプリングタイミング毎のsin(w0t)及びcos(w0t)の値に規則性をもたせ、サンプリングタイミングに対応した信号ベクトルs(t)の演算を簡素化させてもよい。
【0093】
AD変換器121のサンプリング周波数(即ち、発振器124からの正弦波信号周波数)を1/Tとし、パターン発生器126において発振器124からの正弦波信号を4分の1分周する場合について例示する。この場合、AD変換器121でのサンプリングが、タイミング番号♯0,♯1,・・・,♯6の順番で行われる場合においては、サンプリング時刻はそれぞれTを用いて0,T,・・・,6Tと表記することができる。
【0094】
このとき、Δw=1/4Tとなることから、タイミング番号♯0〜♯6でのw0tは0からπ/2ずつ増加していく。したがって、タイミング番号♯0〜♯6でのcosw0tは、順に、1,0,−1,0,1,0,−1となり、タイミング番号♯7以降も含めて4値(1,0,−1,0)の値が循環する循環数列を構成する。同様に、タイミング番号♯0〜♯6でのsinw0tについても、順に、0,1,0,−1,0,1となり、タイミング番号♯7以降も含めて4値(0,1,0,−1)の値が循環する循環数列を構成する。
【0095】
したがって、仮に分周器125での分周比を「1」とする場合においても、デジタル演算器122での演算の際には、sin(w0t),cos(w0t)の値をテーブル構成で蓄積していることまでは必要ではなく、sin(w0t),cos(w0t)の値については上述の簡易な循環数列についての値を導出し、演算を単純化させることができる。
【0096】
また、分周器125での分周比を「2」として、デジタル演算器122での演算をチャンネルch1及びチャンネルch2により2並列化する場合には、サンプリングタイミングに従って入力されるデジタル信号に基づく信号ベクトルs(t)の演算をチャンネルch1及びch2で交互に行うことができるので、チャンネルch1,ch2毎のsin(w0t),cos(w0t)の値の割当てを更に単純化させることができる。
【0097】
すなわち、デジタル演算器122をなすチャンネルch1での信号ベクトルs(t)の演算の際に割り当てられるsin(w0t)は固定値0であり、cos(w0t)の値は交互に現れる2値(1,−1)の値となる。一方、チャンネルch2ではsin(w0t)は交互に現れる2値(1,−1)の値となり、cos(w0t)の値は固定値0となる。
【0098】
更に、分周器での分周比を「4」として、パターン発生器126で発生される周波数信号と分周器125での分周によって得られる正弦波信号とを実質的に同一の周波数とする場合には、デジタル演算器122での演算をチャンネルch1〜ch4により4並列化することになるが、各チャンネルch1〜ch4でのsin(w0t),cos(w0t)の値の割当てを更に単純化できる。
【0099】
この場合には、各チャンネルch1〜ch4では常にw0tは位相平面上では同一の点を取ることになるので、正弦及び余弦の値についても常に固定値とすることができる。即ち、各チャンネルch1〜ch4におけるsin(w0t)はそれぞれ固定値0,1,0,−1であり、cos(w0t)はそれぞれ固定値1,0,−1,0となる。
【0100】
なお、パターン発生器126で発生される周波数信号は、発振器124からの正弦波信号周波数の1/4であることには限定されるものではない。この場合においても、特に分周器125での分周によって得られる正弦波信号をパターン発生器126で発生される周波数信号の周波数に合致させることで、デジタル演算器122での演算の際に用いられるsin(w0t),cos(w0t)の値を固定値することができる。
【0101】
これにより、上述の信号ベクトルs(t)を求める(11)式において、分母のcos(w0t)の項(Δφ0を加味すれば、cos(w0t−Δφ0))と、分子のej(w0t)(Δφ0を加味すれば、ej(w0t−Δφ0))の項と、をチャンネル毎に定数とすることができるので、演算負荷を大幅に軽減できる。特に、分周器125とパターン発生器126については共用化すれば、上述のごとくデジタル演算器122の演算を単純化させることができるほか、装置構成も単純化させることが可能となる。
【符号の説明】
【0102】
10、20:局発光源部
12:混合部
13:差動光検波器
14、24:処理部
15:偏波制御器
16:差動光検波器
101:光源
102:発振器
103:変調器
104:分周器
105:VOA
106:分岐器
107:モニタ回路
108:強度比制御回路
121:AD変換器
122:デジタル演算器
123:識別器
124:発振器
125:分周器
126:パターン発生器
301、302:コヒーレント光受信装置
351:光送信装置
352:光ネットワーク
401、402:光通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期位相と位相揺らぎが揃った複数の局発光を出力する局発光源部と、
前記局発光源部が出力する前記局発光及び入力される信号光を混合し、混合信号光を出力する混合部と、
前記混合信号光を光検波し、複数の前記局発光と前記信号光との間の中間周波数信号を出力する光検波部と、
前記光検波部の出力する前記中間周波数信号をそれぞれ分離処理して前記信号光の信号成分を復調する処理部と、
前記光検波部が出力する前記中間周波数信号の互いの位相が所定の関係となるように前記局発光間の位相関係を調整する調整部と、
を備えるコヒーレント光受信装置。
【請求項2】
前記局発光源部は、
1つの光を出力する光源と、
正弦波信号を発振する発振器と、
前記光源からの光を前記発振器からの正弦波信号で変調して複数の前記局発光を生成する変調器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のコヒーレント光受信装置。
【請求項3】
前記局発光源部は、複数の前記中間周波信号の周波数差の絶対値が前記信号光の変調帯域の半分より大きくなる前記局発光を出力し、
前記処理部は、複数の前記中間周波信号とそれぞれの中間周波数信号と同じ周波数でかつ互いの位相揺らぎが揃い乗ずる際の初期位相が所定の関係である正弦波信号をそれぞれ乗じ、
前記調整部は、端子数がKの光多端子結合回路と同等とするダイバーシティ方式の場合に各端子に対応する中間周波数信号の出力が2πq/K、(q:0〜K−1)の位相の出力となるように正弦波信号の位相となるように調整すること
を特徴とする請求項1又は2に記載のコヒーレント光受信装置。
【請求項4】
前記局発光源部は、
光周波数の差が、前記信号光の帯域幅の2倍よりも小さく、かつ、前記信号光の光源スペクトル線幅及び前記局発光の光源スペクトル線幅よりも大きい局発光を出力し、
前記処理部は、
位相が直交する前記中間周波数信号をデジタル信号に変換するAD変換器と
前記AD変換器から出力されるデジタル信号を(C1)式で演算し、前記信号光に含まれるデータ情報を推定するための信号ベクトルs(t)を出力するデジタル演算器と、
前記デジタル演算部が出力する前記信号ベクトルs(t)を識別処理し、前記信号光の信号成分を受信データとして出力する識別器と、を有し、
前記調整部は、
複数の前記中間周波数信号の位相差が、前記デジタル演算器で前記中間周波数信号に乗ずる複数の正弦波信号の位相差と4分の1周期異なる位相差となるように調整すること
を特徴とする請求項1又は2に記載のコヒーレント光受信装置。
(式C1)
s(t)=[I’+jQ’]/[X+Y exp(−jw0t)]
ただし、前記中間周波数信号の振幅をX及びY、前記局発光の角周波数差をw0、虚数単位をjとする。
【請求項5】
前記局発光の強度の比を変化させる強度比制御回路を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のコヒーレント光受信装置。
【請求項6】
波長多重信号を伝送する光ファイバと、
請求項1から5のいずれかに記載の複数のコヒーレント光受信装置と、
前記光ファイバを伝送する波長多重信号を分岐し、それぞれ前記コヒーレント光受信装置へ結合する光分岐器と、
を備え、それぞれの前記コヒーレント光受信装置が1つの前記局発光源部を共用することを特徴とする光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−151752(P2012−151752A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9985(P2011−9985)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】