説明

コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影法

コヒーレント散乱X線からの既知の再構成法は非厳密再構成法を使用する。本発明によると、散乱X線光子の波数ベクトル移動量qの比較的幅広いスペクトルが収集される。投影データは、x−y−q空間における線積分として解析され、投影データは、いかなる線源軌道に沿った収集にも対応するように再ソートされる。これにより、厳密螺旋形再構成アルゴリズムが適用され、冗長データがより良い画質を得るために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇ビームが関心の対象に当てられるコヒーレント散乱(coherent-scatter)コンピュータ断層撮影法(CSCT)の分野に関する。特に、本発明は、コンピュータ断層撮影データの再構成を実行するデータ処理装置、関心の対象を検査するコンピュータ断層撮影装置、コンピュータ断層撮影データの再構成を実行する方法及びコンピュータ断層撮影データの再構成を実行するデータプロセッサ用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許公報US4751722号は、ビームの方向に関して1°ないし12°の角度内のコヒーレント散乱放射線の角度分布のレジストレーションの原理に基づく装置を記載している。米国特許公報US4751722号に記載されているように、弾性散乱放射線の主な部分は、12°未満の角度内に集中しており、前記散乱放射線は、明確な最大値を持つ特徴的な角度依存性を持ち、前記明確な最大値の位置は照射される物質自体により決定される。小さな角度におけるコヒーレント散乱放射線の強度の分布は、前記物質の分子構造に依存するので、(従来の透光テスト(transillumination)又はCTでは区別されることができない)等しい吸収能力を持つ異なる物質は、各物質に典型的なコヒーレント放射線の角度散乱の強度の分布によって区別されることができる。
【0003】
異なる対象材料を区別するためにこのようなシステムの改良された能力により、このようなシステムは、医療又は工業分野でより多くの応用を見つける。
【0004】
低角度散乱の主要な成分は、コヒーレント散乱である。コヒーレント散乱は、散乱サンプルの原子配置に依存する干渉効果を示すので、コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影法(CSCT)は、原理的に、2次元対象断面を横切る組織の分子構造における空間的変化を撮像する高感度な方法である。
【0005】
Harding他、“Energy-dispersive x-ray diffraction tomography” Phys. Med. Biol., 1990, Vol.35, No.1, 33-41は、多色性(polychromatic)放射線による対象内で励起されたコヒーレントX線散乱の固定角度におけるエネルギ解析に基づく断層撮影法を記載している。この方法によると、放射線ビームは、適切な開口システムを使用して作成され、鉛筆の形を持ち、したがってペンシルビームとも称される。ペンシルビーム源の反対側には、エネルギ解析に適した1つの検出器素子が、関心の対象により変更されたペンシルビームを検出するために配置される。
【0006】
CTと組み合わせた2次元検出器及び扇ビームの一次ビームを使用するコヒーレント散乱セットアップは、米国特許公報US6470067B1号に記載されている。多色性線源と組み合わせた角度分散セットアップの欠点は、ぼやけた散乱関数であり、これは、例えばSchneider他、“Coherent Scatter Computed Tomography Applying a Fan-Beam Geometry” Proc. SPIE, 2001, Vol.4320, 754-763に記載されている。
【0007】
医療用撮像又は非破壊試験の分野で競争力のあるモダリティになるために、実装される再構成アルゴリズムは、よい画質及び短い再構成時間の両方を保証するべきである。
【0008】
これまで、扇ビームCSCTで収集された投影データは、例えば代数的再構成法(ART)の助けで再構成される。ARTは、例えば、J. A. Grant他“A reconstruction strategy suited to x-ray diffraction tomography”, J.Opt. Soc. Am A12, 291-300 (1995)により高度に多用途であることが示されている。しかしながら、このような反復的な再構成の計算の複雑性により、このような方法は、比較的長い再構成時間を必要とする。
【0009】
更に、全ての既知のアプローチは、厳密でない再構成法を適用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、断層撮影データの改良された再構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された本発明の例示的実施例によると、上記目的は、エネルギ分解検出器素子(energy resolving detector elements)を有する検出器を使用することにより収集された少なくとも1つの部分的なスペクトルを有する収集されたCT(コンピュータ断層撮影)データから再構成されるコンピュータ断層撮影データの再構成を実行するデータ処理装置により解決されることができる。更に、前記収集されたCTデータ及び前記コンピュータ断層撮影データの少なくとも一方を記憶するメモリが備えられる。また、前記少なくとも1つの部分的なスペクトルを使用することにより波数ベクトル移動量(wave-vector transfer)を決定し、再構成体積を決定するように適合されたプロセッサも備えられる。再構成体積の寸法は、前記波数ベクトル移動量により決定される。前記波数ベクトル移動量は、前記再構成体積における曲線を表す。この場合、本発明の一態様によると、前記CTデータの再配置は、前記再構成体積内の所望の線源軌道に沿った収集に対応するように実行される。
【0012】
有利には、本発明のこの例示的実施例によるデータ処理装置は、前記検出器の読み出し部からの画像のような再構成データに対して準厳密(quasi-exact)再構成法を実行することができる。この文脈において、用語“再構成”は、前記検出器からの測定されたデータの読み出しから、例えばディスプレイ又はこれらの読み出しに基づく材料識別のような情報の出力部における実際に再構成されたデータの表示までのステップ又は処理をカバーするものとして理解されるべきである。
【0013】
再構成空間における曲線又は線積分としての投影データの解析及び使用された放射線源が所望の線源軌道に沿って移動される場合の収集に対応するような前記収集されたCTデータの適切な再ソートは、厳密螺旋形再構成アルゴリズムを実現することを可能にすることができる。
【0014】
換言すると、本発明のこの例示的実施例によると、前記放射線源は、データ収集に対して円のような第1の軌道に添って移動されることができる。この場合、前記データは、前記第1の軌道とは異なってもよい第2の軌道に沿って移動された放射線源を用いて収集されたかのようなデータに対応するように再配置される。前記第2の軌道は螺旋形であってもよい。
【0015】
請求項2に記載された本発明の他の例示的実施例によると、前記収集されたCTデータは、第1の線源運動で収集され、前記データは、第2の異なる線源運動で収集されたデータに対応するように前記再構成体積内に再配置される。例えば、前記第1の線源運動は円であってもよく、前記第2の線源運動は螺旋形であってもよい。前記収集されたCTデータのこの再順序付け又は再編成により、例えば、ここに参照により組み入れられるKatsevich “Analysis of an exact inversion algorithm for spiral cone-beam CT”, Phys. Med. Biol., vol. 47, p 2583-2597, 2002に記載されたように当技術分野において既知である厳密螺旋形再構成アルゴリズムは、前記データを準厳密に再構成するために使用されることができる。
【0016】
請求項3に記載された本発明の他の例示的実施例によると、フィルタ逆投影が、前記再構成体積内の双曲線であることができる曲線に沿って実行される。
【0017】
本発明の他の例示的実施例によると、前記再構成体積の3つの次元は、波数ベクトル移動量及び放射線源の回転面の2つの線形独立ベクトルにより定められる。更に、前記検出器は、放射線源、例えば多色性X線源の完全なエネルギスペクトルを達成することを可能にする2次元検出器である。これは、散乱X線光子の波数ベクトル移動量の比較的幅広いスペクトルを生じる。これにより、冗長データが収集され、前記冗長データはより良い画質を得るために使用されることができる。
【0018】
請求項5に記載された本発明の他の例示的実施例によると、前記収集されたCTデータの再配置が、Johnの方程式(John’s equation)を使用することにより実行される。請求項6に記載された本発明の他の例示的実施例によると、非常に単純な線形方程式が与えられ、これは、前記再構成体積内の螺旋形軌道のデータ収集を実行し、前記コンピュータ断層撮影データの速く、正確な、準厳密再構成を可能にする。
【0019】
請求項7に記載された本発明の他の例示的実施例によると、X線源の反対側の検出器ユニットに配置された散乱放射線検出器を持ち、前記散乱放射線源が前記X線源及び前記散乱放射線検出器の回転軸に平行な方向に前記X線源により生成された扇形X線ビームのスライス面に対してオフセットを持つように配置された、コンピュータ断層撮影装置が提供される。前記散乱放射線検出器は、複数のエネルギ分解検出器素子を有する。本発明のこの例示的実施例の一態様によると、前記散乱放射線検出器を使用することにより収集された前記収集されたCTデータの再配置は、前記X線源が前記再構成体積内の所望の線源軌道に沿って移動される場合の収集に対応するように実行される。換言すると、前記収集されたCTデータは、前記データ収集中に前記X線源の実際の運動とは異なり得る前記X線源及び前記散乱放射線検出器の所望の運動を用いて収集されたかのように再配置される。
【0020】
有利には、本発明のこの例示的実施例によると、例えばX線画像の準厳密螺旋形再構成を実行することができるコンピュータ断層撮影装置が提供される。有利には、これは、改良された画質及び速い再構成を可能にすることができる。
【0021】
請求項8に記載された本発明の他の例示的実施例によると、前記散乱放射線検出器は、2次元検出器、即ち例えば多色性X線源の完全なエネルギスペクトルを達成することを可能にすることができる2次元エネルギ分解検出器である。これは、散乱X線光子の波数ベクトル移動量の比較的幅広いスペクトルを生じることができる。前記再構成体積内の線積分としての投影データの解析、及び螺旋形線源軌道に沿って取られたかのようなデータの再ソートは、厳密螺旋形再構成アルゴリズムを適用することを可能にすることができる。更に、冗長データは、より良い画質を得るために使用されることができる。
【0022】
請求項9ないし11は、本発明によるコンピュータ断層撮影装置の他の例示的実施例を与える。
【0023】
請求項12に記載された本発明の他の例示的実施例によると、2次元エネルギ分解検出器であってもよいエネルギ分解検出器を用いて収集されたCTデータを、螺旋形線源軌道に沿った収集により取られたかのように再配置するステップを有するコンピュータ断層撮影データの再構成を実行する方法が提供される。
【0024】
有利には、本発明のこの例示的実施例によると、前記データの厳密再構成を可能にする非常に速く効率的な方法が提供されることができ、これは改良された画質を可能にすることができる。
【0025】
請求項13及び14は、本発明による前記方法の他の例示的実施例を与える。
【0026】
請求項15に記載された本発明の他の例示的実施例によると、コンピュータ断層撮影データの再構成を実行するデータプロセッサ用コンピュータプログラムが提供される。本発明による前記コンピュータプログラムは、好ましくは前記データプロセッサのワーキングメモリにロードされる。前記データプロセッサは、したがって、本発明の前記方法を実行するように備えられる。前記コンピュータプログラムは、CD−ROMのようなコンピュータ読取可能媒体に記憶されることができる。前記コンピュータプログラムは、WorldWideWebのようなネットワーク上で与えられることもでき、このようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされることができる。
【0027】
本発明の例示的実施例の要点は、円形の収集の間に収集されたデータ(即ち、例えば、2次元エネルギ分解検出器からのデータ読み出し)の再ソート又は外挿が、前記データがx−y−q空間又は再構成体積における収集に対して実際に使用される異なる線源軌道に沿った収集に対応するように実行されることであると見なされることができる。換言すると、例えば、円形の収集の間に収集されたデータは、螺旋形の線源軌道を用いた収集により取られたかのようにx−y−q空間においてデータを表すように再ソート及び/又は外挿される。有利には、これは、螺旋形線源軌道に適合された既知の再構成アルゴリズムが使用されることができるので、準厳密螺旋形再構成を可能にすることができる。更に、本発明の一態様によると、前記放射線源の完全なエネルギスペクトルを達成することを可能にする2次元エネルギ分解検出器が使用されることができ、これは、散乱光子の波数ベクトル移動量の比較的幅広いスペクトルを生じる。有利には、これは、改良された画質及び改良されたデータ再構成を可能にすることができる。
【0028】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。
【0029】
本発明の例示的実施例は、以下の図面を参照して以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、本発明によるコンピュータ断層撮影の例示的実施例を示す。この例示的実施例を参照して、本発明は、手荷物内の爆発物のような危険な物質を検出する手荷物検査における応用について記載される。しかしながら、本発明が手荷物検査の分野の応用に制限されないが、例えば医療的応用における骨撮像又は組織タイプの識別のような他の医療又は産業的応用において使用されることもできる。
【0031】
図1に描かれた装置は、多色性の一次扇ビームを用いる場合でさえも、エネルギ分解検出器及び断層撮影再構成と組み合わせて良いスペクトル解像度を可能にする扇ビームCSCTスキャナである。図1に描かれた前記CSCTスキャナは、回転軸2の周りで回転可能なガントリ1を有する。ガントリ1は、モータ3を用いて駆動される。参照符号4は、本発明によると多色性放射線を放射するX線源のような放射線源を示す。
【0032】
参照符号5は、放射線源4から放射された放射線ビームを円錐形放射線ビーム6に形成する第1の開口システムを示す。更に、ダイアフラム又はスリットコリメータからなる他の開口システム9が備えられる。開口システム9は、放射線源から放射される放射線が扇ビーム11に形成されるようなスリット10の形式を取る。本発明のこの例示的実施例の変形例によると、第1の開口システム5は省略されることもでき、第2の開口システム9のみが備えられてもよい。
【0033】
扇ビーム11は、ガントリ1の中心、即ち前記CSCTスキャナの検査領域に配置された手荷物7を貫通し、検出器8に衝突するように向けられる。図1からわかるように、検出器8は、扇ビーム11のスライス面が検出器8の行又はライン15と交差するように放射線源4の反対側にガントリ1上に配置される。図1に描かれた検出器8は、夫々複数の検出器素子を有する7つの検出器ラインを有する。上述のように、検出器8は、主放射線検出器15、即ち検出器8の中央のラインが扇ビーム11のスライス面内になるように配置される。
【0034】
図1からわかるように、検出器8は、2種類の放射線検出器ライン、即ち図1の網掛け無しで示される第1の種類の検出器ライン30及び34と、エネルギ分解検出器セルからなる検出器ラインとを有する。本発明の一態様によると、これら第1の検出器素子(ライン30及び34)は、エネルギ分解検出器素子である。好ましくは、前記エネルギ分解検出器素子は、直接変換(direct-converting)半導体検出器である。直接変換半導体検出器は−シンチレーション無しで−前記放射線を電荷に直接的に変換する。好ましくは、これらの直接変換半導体検出器は、10%FWHMより良いエネルギ解像度を持ち、即ち、ΔEを前記検出器のエネルギ解像度の半値全幅(FWHM)としてΔE/E<0.1である。
【0035】
ライン30及び34のこのような検出器セルは、テルル化カドミウム即ちCdZnTe(CZT)ベースの検出器セルであってもよく、両方とも扇ビーム11のスライス面の外側である。換言すると、両方のエネルギ分解ライン30及び34は、回転軸2に平行な方向における前記スライス面からのオフセットを持つようにX線源4の反対側にガントリ1において配置される。検出器ライン30は、図1に描かれた回転軸2の方向について正のオフセットで配置され、ライン34は、図1に描かれた回転軸2の方向について前記スライス面から負のオフセットで配置される。
【0036】
検出器ライン30及び34は、前記CSCTスキャナの検査領域内の手荷物7から散乱された散乱放射線を受け又は測定するように、前記スライス面と平行になり、ガントリ1の回転軸2の正又は負の方向のオフセットで前記スライス面の外になるようにガントリ1において配置される。したがって、以下、ライン30及び34は、散乱放射線検出器とも称される。本発明の好適な実施例によると、エネルギ分解ライン30及び34は2次元エネルギ分解散乱放射線検出器を形成することに注意しなければならない。換言すると、好ましくは、複数のエネルギ分解ライン30及び34はライン15の両側に配置される。したがって、前記スライス面内に非エネルギ分解ライン15のみを有し、前記スライス面から離間して配置されたエネルギ分解ラインを有する検出器8は有利であることができる。したがって、以下で用語“散乱放射線検出器”が使用される場合、これは、手荷物7から散乱された光子を受けるように、扇ビーム11の扇面の外に配置されたエネルギ分解検出器セルの少なくとも2つのラインを持つ如何なる検出器をも含む。
【0037】
網掛けにより示される検出器8に備えられた第2の種類の検出器ラインはシンチレータセルである。特に、ライン15は、扇ビーム11のスライス面内にあり、前記検査領域内の手荷物7により生じた放射線源4により放射された放射線の減衰を測定するように構成される。図1に描かれるように、ライン15の左右に、シンチレータ検出器セルを含む他の検出器ラインが備えられてもよい。しかしながら、上で示されたように、シンチレータセルを持つ1つの検出器ライン、特に前記スライス面内のライン15のみが存在してもよく、検出器8の残りのラインはエネルギ分解ラインであってもよい。これにより、2次元エネルギ分解検出器(このような散乱放射線検出器)が備えられることができる。
【0038】
エネルギ分解ライン30及び34に関して既に示されたように、手荷物7により生じた前記スライス面内の扇ビーム11の一次ビームの減衰を測定するライン15のみの設備が十分であることができる。しかしながら、エネルギ分解ライン30及び34の場合、夫々複数のシンチレータセルを有する複数の検出器ライン32の設備は、前記CSCTスキャナの測定速度を更に増加することができる。以下、用語“一次放射線検出器”は、扇ビーム11の一次放射線の減衰を測定するシンチレータ又は同様な検出器セルの少なくとも1つのラインを含む検出器を参照するために使用される。
【0039】
本発明の好適な実施例によると、2次元エネルギ分解検出器が備えられるように、複数のエネルギ分解ライン30及び34が備えられる。これは、後で画質を向上するために使用されることができる追加の冗長データを集めることを可能にすることができる。更に、これは走査時間を減少することを可能にすることができる。
【0040】
1つのエネルギ分解ラインを用いて、波数ベクトル移動量に対する完全なスペクトルの一部のみが得られることができる。加えて、前記スペクトルは、前記スライス面又は走査面までの前記検出器ラインの距離により生じる下限値を持ちうる。したがって、2D(2次元)検出器を使用することは、波数ベクトル移動量のより幅広いスペクトルを生じることができる。特に、前記下限値は、比較的小さな値にシフトされることができる。更に、2D検出器は冗長データを生じることを可能にすることができる。本発明の例示的実施例の一態様によりこのデータを前処理することにより、これは厳密再構成法に対する入力として使用されることができる。
【0041】
図1からわかるように、検出器8の検出器セルはライン及び列に配置され、前記列は回転軸2に平行であり、前記ラインは扇ビーム11のスライス面に平行且つ回転軸2に垂直な平面内に配置される。
【0042】
開口システム5及び9の開口は、手荷物7の走査領域が扇ビーム11内であり且つ検出器8が完全な走査領域をカバーするように検出器8の寸法に適合される。有利には、これは、手荷物7に当てられる不要な余剰放射線を防ぐことを可能にする。手荷物7の走査中に、放射線源4、開口システム5及び9、並びに検出器8は、矢印16で示される方向にガントリ1に沿って回転される。放射線源4、開口システム5及び9、並びに検出器15を持つガントリ1の回転に対し、モータ3は、計算ユニット18に接続されたモータ制御ユニット17に接続される。
【0043】
図1において、手荷物7は、コンベヤベルト19上に配置される。上述のように本発明の例示的実施例によると、円形データ収集は、X線源4が円形線源軌道に沿って配置され、即ち手荷物7の運動無しで回転軸の周りで回転面において回転される場合に実行される。したがって、コンベヤベルト19は、X線源4が手荷物7の周りの円形運動(即ち円形収集)を実行して十分なデータ収集を可能にする場合に、前記手荷物が不動であるように動作される。この場合、手荷物7は、たとえばプリセットインクリメントにより移動され、この場合、手荷物7の他のスライスの他の走査は、コンベヤベルト19が動作されていない間に実行される。
【0044】
検出器8は計算ユニット18に接続される。計算ユニット18は、検出結果、即ち検出器8の検出器素子からの読み出しを受け、検出器8から、即ち扇ビーム11の一次放射線の減衰を測定するライン15及び32並びにエネルギ分解ライン30及び34からの走査結果に基づいて走査結果を決定する。これに加えて、計算ユニット18は、モータ3及び20又はコンベヤベルト19を用いてガントリ1の運動を調整するためにモータ制御ユニット17と通信する。
【0045】
計算ユニット18は、一次放射線検出器、即ち検出器ライン15及び32並びに散乱放射線検出器、即ちライン30及び34の読み出しから画像を再構成するように適合される。計算ユニット18により生成された画像は、インターフェース22を介してディスプレイ(図1に示されていない)に出力されることができる。
【0046】
データプロセッサにより実現されることができる計算ユニットは、検出器8の検出器素子から、即ちエネルギ分解ライン30及び34並びに扇ビーム11の一次放射線の減衰を測定するライン15及び32からの読み出しに対してフィルタ逆投影を実行するように適合されることができる。画像再構成の一部を形成する計算ユニット18において実行される逆投影は、図7を参照して更に詳細に説明される。
【0047】
更に、計算ユニット18は、ライン30及び34並びに15及び32の読み出しに基づいて手荷物7内の爆発物の検出に対して適合されることができる。これは、これらの検出ラインの読み出しから散乱関数を再構成し、以前の測定の間に決定された爆発物の特徴的測定値を含む表と比較することにより自動的に行われることができる。計算ユニット18が、検出器8から読み出された測定値が爆発物の特徴的測定値と一致することを決定する場合、計算ユニット18は、ラウドスピーカ21を介して警報を自動的に出力する。
【0048】
特に、計算ユニット18は、検出器8の読み出しから、特にエネルギ分解ライン30及び34の読み出しから収集された少なくとも1つの部分的なスペクトルを使用することにより波数ベクトル移動量の決定を実行するように適合されることができる。図1からわかるように、前記データは、x−y−z空間内の線源軌道に関して円形収集の間に収集される。
【0049】
この場合、測定されたデータは、x−y−q空間において線積分として解析され、ここでqは波数ベクトル移動量であり、x及びyは放射線源4の回転面における線形独立なベクトルである。この場合、前記測定されたデータは、x−y−q空間内の螺旋形軌道に沿った収集に対応するように再ソート及び外挿され、即ち螺旋形線源軌道に沿って取られたかのように並べ替えられる。この場合、前記データは、前記データが従来の螺旋形再構成アルゴリズム、例えば参照によりここに組み込まれるKatsevich “Analysis of an exact inversion algorithm for spiral cone-beam CT”, Phys. Med. Biol., vol.47, p.2583-2597, 2002に記載された再構成法に適用されることを可能にするように前処理されることができる。最後に、前記データは逆投影される。この逆投影は、波数ベクトル移動量のx−y−q空間における双曲線のような曲線に沿って実行されることができる。この動作は、図6を参照して更に詳細に説明される。
【0050】
図2ないし5の以降の記載の間に、図1で使用されたものと同じ参照番号は、同じ又は対応する要素に対して使用される。
【0051】
図2は、図1に描かれたCSCT走査システムの幾何学的構成の単純化された概略的表現図を示す。図2からわかるように、X線源4は、手荷物7を含むような、この場合には直径uを持ち、検出器8全体をカバーする扇ビーム11を放射する。対象領域の直径は、例えば100cmであってもよい。この場合、扇ビーム11の角度αは80°であることができる。このような構成において、X線源4から前記対象領域の中心までの距離vは約80cmであり、X線源4からの検出器8、即ち個々の検出器セルの距離は約w=150cmである。
【0052】
図2からわかるように、本発明の一態様によると、検出器セル又はラインは、前記セル又はラインが異なる散乱角度を有する不所望な放射線を測定することを防ぐためにコリメータ40を備えることができる。コリメータ40は、前記線源に向けて焦点を合わせることができるブレード(blades)又はラメラ(lamellas)の形式を取ることができる。前記ラメラの間隔は、前記検出器素子の間隔とは独立に選択されることができる。
【0053】
図1及び2に描かれた折り曲げられた検出器8の代わりに、平らな検出器アレイを使用することも可能である。
【0054】
図3は、図1のCSCTスキャナで使用された検出器の幾何学的構成の他の概略的表現図を示す。図1を参照して既に説明されたように、検出器8は、1、2又はそれ以上のエネルギ分解検出器ライン30及び34、並びに手荷物7により引き起こされた一次扇ビームの減衰を測定する複数のライン15及び32を有することができる。図3からわかるように、好ましくは、検出器8は、ライン15及び32の1つのライン、好ましくは検出器8の中央のライン15が扇ビーム11のスライス面内にあり、これにより一次放射線の減衰を測定するように構成される。矢印42で示されるように、X線源4及び検出器8は、円形収集を実行するために異なる角度からの投影を収集するように、回転面において前記手荷物の周りを一緒に回転される。
【0055】
図3に描かれるように、検出器8は複数の列tを有する。
【0056】
図4は、本発明を更に説明するために図1に描かれた前記CSCTスキャナの幾何学的構成の他の概略的表現図を示す。図4において、唯一のライン15及び唯一のライン30を有する検出器46が描かれている。ライン15は、この場合にはスリットコリメータである開口システム9により形成され及び前記放射線源又はX線源4を用いて生成された扇ビーム11のスライス面内に配置される。ライン15は、例えばシンチレータセル又は扇ビーム11の一次ビームの減衰を測定するのに適した他のセルを有し、前記対象領域又は検査領域内の関心の対象により引き起こされた一次扇ビームの減衰の積分測定を可能にする。
【0057】
図4に描かれたライン30はエネルギ分解セルを含む。図4からわかるように、ライン30は、扇ビーム11のスライス面に平行に、しかし前記面の外に配置される。換言すると、ライン30は、前記スライス面に平行な面内にライン15と平行に配置される。
【0058】
参照番号44は散乱放射線、即ち前記手荷物のような関心の対象により散乱された光子を示す。図4からわかるように、前記散乱放射線は、前記スライス面を離れ、ライン30の検出器セルに衝突する。
【0059】
図5は、図1のCSCTスキャナの検出器の幾何学的構成の側面図を示す。図5は、図4の側面図を示すように意図されることもできるが、しかしながら、1つのライン30及び1つのライン15の設備のみの代わりに、図5において、ライン30とライン15との間に複数の検出器ライン32が備えられる。ライン30の検出器素子Diはエネルギ分解検出器素子である。検出器素子Diは、前記一次扇ビームのスライス面から固定された距離aを持つように配置される。本発明の一態様によると、列tの各検出器素子Diに対して、及び各投影Φ(図3参照)に対して、強度スペクトルI(E,t,Φ)が測定される。円形の走査経路に沿った複数の投影Φに対するこの測定を実行して、3次元データセットが収集される。各対象画素は3つの座標(x,y,q)により記述される。したがって、本発明の一態様によると、画像を再構成するために、又は前記3次元データセットから他の情報を再構成するために、3D→3D再構成法が使用されることができる。
【0060】
図6は、マルチラインCSCTスキャナの例示的実施例の概略図を示す。このスキャナは、図1を参照して説明されたものと同一であってもよいエネルギ分解検出器素子の複数のラインを有する検出器48を備える。放射線源9は、X線の扇ビームを生成するようにコリメータ手段を備える。検出器48及び放射線源49の配置は、検出器48が中心に焦点を合わせられるようにされる。図6に描かれた図は、x−y面、即ち放射線源49及び検出器48の回転面の中から走査処理を更に明確にするために走査面又はスライス面に平行である。図6からわかるように、放射線源49と検出器48との間の距離は“SD”と示され、線源49と回転の中心47との間の距離はSにより示され、散乱中心と検出器48との間の距離はdにより示され、放射線を受ける検出器素子と前記走査面又はスライス面との間の距離はaにより与えられ、hは検出器48の高さを示す。
【0061】
z座標軸は、放射線源49の回転面の中心における法線、即ち放射線源49の回転軸である。y座標は前記放射線源の回転面内にある。
【0062】
図6からわかるように、以下の説明に対し、例えば多色性X線源49及びD検出器49を有するCSCTスキャナが考慮される。前記検出器は、図1を参照して説明されたものと同様であってもよいエネルギ分解検出器素子を有する、又はからなる。放射されるX線は、扇ビームが放射線47の中心の周りの領域に配置された前記関心の対象を放射するようにコリメートされている。
【0063】
本発明の例示的実施例によると、以下の動作の方法は、CSCTデータを再構成するために、即ち検出器8及び48の読み出しから画像を再構成するために、上記のスキャナ又は図1を参照して記載されたスキャナに適用されることができる。
【0064】
ステップ1:データは、x−y−z空間における線源軌道について円形収集の間に測定される。換言すると、放射線源4及び49並びに検出器8及び48が回転面において関心の対象の周りを回転される間に、読み出しは検出器8又は48から集められる。前記読み出しは、測定されたデータ又は収集されたCSCTデータと称される。前記測定されたCSCTデータは、x−y−q空間における線積分として解析され、ここでqは波数ベクトル移動量を表す。前記波数ベクトル移動量の計算は後で記載される。
【0065】
ステップ2:前記収集されたCSCTデータは、x−y−q空間における螺旋形軌道に沿った収集に対応するように再ソート及び外挿される。
【0066】
ステップ3:例えば、参照によりここに組み込まれるKatsevich “Analysis of an exact inversion algorithm for spiral cone-beam CT”, Phys. Med. Biol., vol.47, p.2583-2597, 2002に記載されている厳密再構成法のような従来の螺旋形再構成アルゴリズムにより前記データを前処理するために、他のステップが実行されてもよい。
【0067】
ステップ4:次いで、前記再ソート及び/又は外挿されたデータは逆投影されることができる。この逆投影は、x−y−q空間における曲線に沿って実行されることができる。これらの曲線は、例えば双曲線であってもよい。
【0068】
この動作、特にステップ2は、以下により詳細に説明される。
【0069】
CSCTは、コヒーレント散乱形式因子F2(q)を再構成するためにコヒーレント散乱X線を使用する。コヒーレント散乱X線に対する微分断面dσRayleigh/dΩは、
【数4】

により与えられ、ここでreは古典論的電子半径を示し、Θは入射X線と散乱X線との間の角度を示す。角度Θの光子の偏角(deviation)を引き起こす波数ベクトル移動量qは、対応するX線光子のエネルギE,プランク定数h及び光速cを用いて、
【数5】

により規定される。小さな角度、例えばここで0ないし5°の関心の角度構成での散乱に対し、sin(Θ/2)はΘ/2で近似されることができ、式(2)は、
【数6】

と書き下されることができる。
【0070】
図6によると、散乱角度は、前記検出器からの散乱中心の距離dと、走査面からの散乱放射線を受ける前記検出器素子の距離aとにより与えられ、即ち、
【数7】

である。
【0071】
式(3)と一緒に、これは、
【数8】

を生じる。
【0072】
x−y−q空間、式(5)は双曲線を記述する。これらの双曲線は、直線により近似されることができる。幾つかの可能性の中にあるのは、例えば、直線の下の面積が対応する双曲線の面積と一致するような近似である。他の近似がここに記載される。前記直線は、前記関心領域の始点(dmax)及び終点(dmin)において前記双曲線と交差し、即ち、
【数9】

である。
【0073】
実際の経路が、x−y−q空間における螺旋形軌道に沿った収集に対応するように再ソート及び外挿されることができる、図1及び6に描かれたような走査システムが考慮される。仮想的な近隣軌道に対する円形軌道で測定されたデータの外挿は、Johnの方程式を使用することにより行われる。Johnの方程式のアイデアは、3次元空間を通る線積分の空間が4次元であり、したがって、ここに参照により組み込まれるS. K. Patch, “Consistency conditions upon 3D CT data and the wave equation”, Phys. Med. Biol. 47, 2637-2650及び米国特許広報6173030(1999)に記載されるように、対象関数から線積分関数への写像が追加の次元を作成するというものである。
【0074】
図7a及び7bは、Johnの方程式のアイデアを更に説明するための概略図である。仮想的な線源位置

に対する図7bの線積分は、図7aに示される

に対する線源位置に対して測定された線積分から外挿される。
【0075】
これは、参照によりここに組み込まれるS. K. Patch “Computation of unmeasured third-generation VCT views from measured views”, IEEE Trans. Med. Img. MI-21, 801-813に記載されるように測定されたデータから測定されていないもの(unmeasured)を構成するために使用される線積分空間における冗長性を暗示する。Johnの方程式は、参照によりここに組み込まれるM. Defrise, F. Noo, H. Kudo, “Improved 2D rebinning of helical cone-beam CT data using John’s equation”, Proc. 2002 IEEE Nuclear Science and Medical Imaging Symbosium, Norfolk (VA), Paper M10-74に記載されるように幾何学パラメータのセットに対して以下のようにパラメータ化され、
【数10】

ここでRは前記仮想的な線源位置から等しい中心までの距離であり、uは中心放射線からさらされる検出器列までの扇方向の距離である。線積分はgにより示され、変数に対する線積分の導関数は添え字により表される。測定された線積分gから、線積分

は、
【数11】

により仮想的な線源位置

に対して外挿されることができる。
【0076】
したがって、式(7)は

について解かれなければならない。式(7)の
【数12】

への変形及びuに関する部分積分は、
【数13】

を生じ、これは仮想的な線源位置

に対する線積分である。
【0077】
前記収集及び外挿されたデータは、ここで、x−y−q空間における螺旋形軌道に沿った収集に対応するように再ソートされることができる。

は、前記走査システムの回転の中心から仮想線源までのベクトルであるとする。前記螺旋形軌道は、
【数14】

を生じ、ここでαはx軸に関する角度線源位置を示す。
【0078】
特定の範囲において、q∈[qmin,qmax]の各値は、線型方程式
【数15】

により表されることができ、これはx−y−q空間における螺旋形軌道のデータ収集を果たす。この記述により、再構成処理に対して冗長データを使用するために、螺旋形データ収集に対する開始点としてオフセットα0を規定することが可能である。これは、より良い画質を生じることができる。
【0079】
上述のステップ1ないし4、特にステップ3は、図1ないし5を参照して記載され且つ描かれたCSCTスキャナ、図6に描かれたスキャナ及び図9に描かれたデータ処理装置に適用及び実装されることができる。
【0080】
図8は、前記検出器からの前記散乱中心の距離dに依存する波数ベクトル移動量qの特性に対する一例を示す。夫々、回転の中心に対する前記線源の距離Sは570mmに選択され、前記回転の中心に対する前記検出器の距離は470mmである。前記回転の中心に対する仮想的な線源の距離Rは470mmに選択される。前記検出器は、回転の中心において0.75×0.75mm2のサイズを持つ20行のエネルギ分解素子からなると仮定される。前記X線源は、20ないし160keVのエネルギのスペクトルを生じる。直径160mmの対象が前記回転の中心に配置される。許容されるqの値の範囲は、前記対象のサイズ、前記検出器の寸法及び前記エネルギスペクトルにより規定される。与えられた例において、q∈[0.03,1.61]及び全てのqの値は、式(12)により記述されることができる。q=1.0nm-1における仮想的な線源位置に対する直線は、式(8)による外挿により得られる。
【0081】
図8からわかるように、散乱中心と検出器との間の距離dに依存する波数ベクトル移動量の特性が描かれている。所定のエネルギEに対し、走査面又はスライス面に対して距離aを持つ特定の検出器素子は、双曲線により記述されるqの値の下で前記対象を通る放射線に沿って配置された散乱中心から放射線を受ける。前記直線は、対応する双曲線に対する近似である。E、h及び前記対象の直径により決定されるqminないしqmaxの範囲において、前記波数ベクトル移動量に対するあらゆる値が式(12)により表されることができる。前記直線は、仮想的な線源位置Rにおいて交差する。
【0082】
図9は、上述のステップ1ないし4を実行するデータ処理装置の例示的実施例を示す。図9からわかるように、中央処理ユニット(CPU)又は画像プロセッサ1は、前記検出器からの読み出し又は最後に再構成されたデータを記憶するメモリ2に接続される。前述のように、前記データは、図1及び6に描かれるようなCSCTスキャナにより収集されることができる。画像プロセッサ1は、更に複数の入出力ネットワーク又は他の診断装置に接続されてもよい。画像プロセッサ1は、更に画像プロセッサ1において計算又は適合された情報又は画像を表示するディスプレイ4(例えばコンピュータモニタ)に接続される。オペレータは、図1に描かれていないキーボード5及び/又は他の入出力装置を介してデータプロセッサ1と相互作用することができる。
【0083】
上述の本発明は、例えば、医療撮像の分野に応用されてもよい。しかしながら、上述のように、本発明は、非破壊試験又は手荷物検査の分野にも応用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明によるCSCTスキャナの例示的実施例の概略的表現図を示す。
【図2】コヒーレント散乱放射線の測定に対する図1のCSCTスキャナの幾何学的構成の概略的表現図を示す。
【図3】図1のCSCTスキャナの幾何学的構成の他の概略的表現図を示す。
【図4】本発明を更に説明するために図1のCSCTスキャナの測定の幾何学的構成の他の概略的表現図を示す。
【図5】図1のCSCTスキャナの幾何学的構成の側面図の概略的表現図を示す。
【図6】本発明の他の例示的実施例によるマルチラインCSCTスキャナの概略的表現図を示す。
【図7a】Johnの方程式のアイデアを説明する概略図である。
【図7b】Johnの方程式のアイデアを説明する概略図である。
【図8】本発明を更に説明するための散乱中心と検出器との間の距離Dに依存する波数ベクトル移動量qの特性を示す。
【図9】本発明によるデータ処理装置の例示的実施例の単純化された概略的表現図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ断層撮影データの再構成を実行するデータ処理装置において、前記コンピュータ断層撮影データが、エネルギ分解検出器素子を有する検出器を使用することにより収集された少なくとも1つの部分的なスペクトルを有する収集されたCTデータから再構成され、前記収集されたCTデータ及び前記コンピュータ断層撮影データの少なくとも一方を記憶するメモリが設けられ、少なくとも以下の動作、即ち前記少なくとも1つの部分的なスペクトルを使用することにより波数ベクトル移動量を決定する動作と、再構成体積を決定する動作であって、前記再構成体積の寸法が前記波数ベクトル移動量により決定され、前記波数ベクトル移動量が前記再構成体積内の曲線を表す、当該再構成体積を決定する動作と、前記収集されたCTデータを前記再構成体積における所望の線源軌道に沿った収集に対応するように再配置する動作とを実行するように適合されたプロセッサが設けられるデータ処理装置。
【請求項2】
前記収集されたCTデータは、放射線源が第1の線源軌道に沿って移動される収集の間に収集され、前記収集されたCTデータが、前記第1の線源軌道とは異なる前記再構成体積内の第2の線源軌道に沿った収集に対応するように再配置され、前記第1の線源軌道が円形であり、前記第2の線源軌道が螺旋形である、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、更に、前記再構成体積内の前記曲線に沿ったフィルタ逆投影を実行するように適合される、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記再構成体積が、更に、回転面の2つの線形独立なベクトルにより決定され、前記検出器が2次元検出器である、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記収集されたCTデータを前記再構成体積内の螺旋形線源軌道に沿った収集に対応するように再配置する動作が、Johnの方程式を使用することにより実行される、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記収集されたCTデータを前記再構成体積内の螺旋形線源軌道に沿った収集に対応するように再配置する動作が、以下の式、
【数1】

を使用することにより実行され、ここでqは前記波数ベクトル移動量であり、

はX線源の仮想的な位置であり、hはプランク定数であり、cは光速であり、αは回転面における前記X線源の角度位置を示し、Eは対応するX線光子のエネルギであり、dは前記対応するX線光子の散乱中心から前記検出器までの距離を示し、dmin及びdmaxは前記再構成体積内の前記曲線の関心領域の始点及び終点である、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
関心の対象を検査するコンピュータ断層撮影装置において、前記コンピュータ断層撮影装置が、X線源及び散乱放射線検出器を持つ検出器ユニット並びにデータプロセッサを有し、前記検出器ユニットが前記関心の対象を受ける検査領域を通って延在する回転軸の周りで回転可能であり、前記X線源がスライス面において前記検査領域内の前記関心の対象を貫通するように適合された扇形X線ビームを生成し、前記散乱放射線検出器が、前記検出器ユニットにおいて前記回転軸に平行な方向に前記スライス面に対するオフセットを持つようにして前記X線源と反対側に配置され、前記散乱放射線検出器が複数の第1の検出器素子を含み、前記複数の第1の検出器素子がエネルギ分解検出器素子であり、前記データプロセッサが、少なくとも以下の動作、即ち前記散乱放射線検出器を使用することにより収集されたスペクトルを使用することにより波数ベクトル移動量を決定する動作と、再構成体積を決定する動作であって、前記再構成体積の寸法が前記波数ベクトル移動量により決定され、前記波数ベクトル移動量が前記再構成体積内の曲線を表す、当該再構成体積を決定する動作と、前記X線源が前記再構成体積内の所望の線源軌道に沿って移動される収集に対応するように前記収集されたCTデータを再配置する動作とを実行するように構成される、コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記散乱放射線検出器が2次元検出器である、請求項7に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記散乱放射線検出器が前記関心の対象から散乱された散乱放射線を受けるように構成されるように、前記散乱放射線検出器が、前記検出器ユニットにおいて前記回転軸に沿ったオフセットを持つようにして前記スライス面に平行且つ前記スライス面の外に前記X線源の反対側に配置され、前記収集されたCTデータは、前記X線源が第1の線源軌道に沿って移動される収集の間に収集され、前記収集されたCTデータが、前記第1の線源軌道とは異なる前記再構成体積内の第2の線源軌道に沿った収集に対応するように再配置され、前記第1の線源軌道が円形であり、前記第2の線源軌道が螺旋形である、請求項7に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記収集されたCTデータは、放射線源が回転面において関心の対象の周りを回転される円形の収集の間に収集され、前記プロセッサが、更に、前記再構成体積内の前記曲線に沿ってフィルタ逆投影を実行するように適合され、前記再構成体積が、更に、前記回転面の2つの線形独立なベクトルにより決定される、請求項7に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記収集されたCTデータを前記再構成体積内の螺旋形線源軌道に沿った収集に対応するように再配置する動作が、以下の式、
【数2】

を使用することにより実行され、ここでqは前記波数ベクトル移動量であり、

はX線源の仮想的な位置であり、hはプランク定数であり、cは光速であり、αは回転面における前記X線源の角度位置を示し、Eは対応するX線光子のエネルギであり、dは前記対応するX線光子の散乱中心から前記散乱放射線検出器を含む検出器までの距離を示し、dmin及びdmaxは前記再構成体積内の曲線の関心領域の始点及び終点である、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項12】
コンピュータ断層撮影データの再構成を実行する方法において、前記コンピュータ断層撮影データが、エネルギ分解検出器素子を有する検出器を使用することにより収集された少なくとも1つの部分的なスペクトルを有する収集されたCTデータから再構成され、前記方法が、前記少なくとも1つの部分的なスペクトルを使用することにより波数ベクトル移動量を決定するステップと、再構成体積を決定するステップであって、前記再構成体積の寸法が前記波数ベクトル移動量により決定され、前記波数ベクトル移動量が前記再構成体積内の曲線を表す、当該再構成体積を決定するステップと、前記収集されたCTデータを前記再構成体積における所望の線源軌道に沿った収集に対応するように再配置するステップとを有する方法。
【請求項13】
前記収集されたCTデータは、放射線源が第1の線源軌道に沿って移動される収集の間に収集され、前記収集されたCTデータが、前記第1の線源軌道とは異なる前記再構成体積内の第2の線源軌道に沿った収集に対応するように再配置され、前記第1の線源軌道が円形であり、前記第2の線源軌道が螺旋形であり、前記検出器が2次元検出器である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記収集されたCTデータを前記再構成体積内の螺旋形線源軌道に沿った収集に対応するように再配置するステップが、以下の式
【数3】

を使用することにより実行され、ここでqは前記波数ベクトル移動量であり、

はX線源の仮想的な位置であり、hはプランク定数であり、cは光速であり、αは回転面における前記X線源の角度位置を示し、Eは対応するX線光子のエネルギであり、dは前記対応するX線光子の散乱中心から前記検出器までの距離を示し、dmin及びdmaxは前記再構成体積内の曲線の関心領域の始点及び終点である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ断層撮影データの再構成を実行するデータプロセッサ用コンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータ断層撮影データが、エネルギ分解検出器素子を有する検出器を使用することにより収集された少なくとも1つの部分的なスペクトルを有する収集されたCTデータから再構成され、前記コンピュータプログラムが、前記少なくとも1つの部分的なスペクトルを使用することにより波数ベクトル移動量を決定する動作と、再構成体積を決定する動作であって、前記再構成体積の寸法が前記波数ベクトル移動量により決定され、前記波数ベクトル移動量が前記再構成体積内の曲線を表す、当該再構成体積を決定する動作と、前記収集されたCTデータを前記再構成体積における所望の線源軌道に沿った収集に対応するように再配置する動作とを前記データプロセッサに実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−508560(P2007−508560A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534863(P2006−534863)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051968
【国際公開番号】WO2005/036467
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】