コプレーナストリップ線路に基づく方法および装置
コプレーナストリップ線路(CPS)を使用する定常波発振器(SWO)を含む、様々なコプレーナストリップ線路(CPS)を実装する方法および装置。一例としては、四分の一波長(λ/4)コプレーナストリップ線路定常波発振器(SWO)がある一方で、他の実装形態は、閉ループコプレーナストリップ線路構成を使用する。様々な観点において、SWOの構成は、発振器の品質係数Qを劇的に増大させる様々な機能を組み込むことによって、低電力消費の、高周波における正弦波性能を最適化するようにされている。特に、一観点において、コプレーナストリップ線路の長さに沿って異なるゲインを有する、多数増幅器を使用する、振幅依存専用分布増幅方式が、モード制御技法として使用される。別の観点においては、その単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが、コプレーナストリップ線路に沿った位置の、不連続関数または連続関数となるように構成された、コプレーナストリップ線路が、SWO損失を低減するために使用される。別の観点において、品質係数Qの向上が達成される一方で、同時に、SWOを伝播する波動の位相速度を低減し、それによって比較的小型のデバイスを製作することが容易になる。さらに別の観点では、SWOは、周波数調整能力を備えるように構成され、この周波数調整能力が、再び最適化されて、発振器周波数の重大な調整を容易化しながら、電力消費を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2003年7月23日付出願の「Methods and Apparatus for Implementing Standing Wave Sinusoidal Oscillators」という名称の、米国出願番号第60/489708号、および2004年1月2日付出願の「Methods and Apparatus for Implementing Standing Wave Sinusoidal Oscillators」という名称の米国特許出願第60/533904号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的にはコプレーナストリップ線路(CPS:coplanar striplines)に基づく半導体素子に関する様々な方法および装置に関する。いくつかの事例的な態様においては、正弦波信号源、より具体的には定常正弦波発振器(standing wave sinusoidal oscillators)が、コプレーナストリップ線路構成に基づいて実装される。
【0003】
背景
現在では日常生活の一部となった先端通信応用、例えばセルラー電話、無線ネットワーク、衛星放送および光ファイバ通信は、高速化と小型化に関してエレクトロニクスおよび関連技術の絶え間ない進歩に頼っており、それはすなわち、情報伝送の高速化と様々な通信関係機能を実行する集積回路の小型化である。しかしながら、システム設計者は、10ギガヘルツ(GHz)の帯域の高周波の使用に加えて、集積回路の原子スケールまでの小型化を期待しているので、従来型集積回路技術のいくつかの観点は、不適当で時代遅れとなり続けている。したがって、共通の設計課題は、動作を高速化し、しかもしばしばより小さなスペースに、よく知られた回路構成単位を実装するための新規の方法を見出すことに関する。場合によっては、そのような実装は、電磁波ベースの概念を利用し、半導体基板上に製作される伝送線路または導波路構成に関与する。
【0004】
伝送線路理論は、当該技術分野において十分に確立されている。一般的に、伝送線路は、例えば、信号源を負荷に接続するように誘導して、電力または情報を伝送する手段を提供する。伝送線路には、通常、誘電体によって隔てられた2つの平行な導体が含まれる。信号は、所与の伝送線路に沿って電磁波として伝播し、その伝送線路に関係する様々な物理的パラメータに加えて、その線路上の信号源および線路上の負荷に関係するパラメータが、波動伝播に影響を与える。
【0005】
図1a〜1eには、伝送線路の代表的な例を示してあり、その中には同軸ケーブル(図1a)、2線式線路(図1b)、平行平板型線路(parallel-plate line)もしくはプレーナ線路(planar line)(図1c)、導電板上の電線(図1d)、およびマイクロストリップ線路(図1e)がある。ここで、留意する価値があることは、これらの例のそれぞれは、2つの平行な導体で構成されることである。同軸ケーブルは、電気実験室やいくつかの一般消費者応用において、様々な電気装置の相互接続(例えば、TVセットのTVアンテナまたはケーブルフィードへの接続)のために、日常的に使用されている。マイクロストリップ線路は、様々な半導体製造技法に基づく集積回路において特に重要であり、この場合には、誘電体基板上に製造される(すなわち、誘電体で隔てられた)平行金属ストリップが電子要素同士を接続する。
【0006】
伝送線路は、より広い範疇である「導波路(waveguide)」の特殊な場合としてみなされることが多い。導波路とは、一般に、電磁放射を1点から別の点に誘導するように構成されたシステムを指している。しかしながら、いくつかの一般化した応用においては、導波路とは、本質的に囲われた導管(conduit)であり、そこを通過して電磁放射が、伝送線路に関して一般的に考えられているよりも、より緊密に閉じ込められた状態で伝播するものと認識されている。例えば、マイクロ波領域においては、2導体伝送線路と異なり、導波路は、中空の金属パイプまたは横断面が長方形、楕円形、もしくは円形であるチューブとして形成されることがある。光学領域においては、伝送線路はまったくサポートはされていないが、導波路は、低屈折率環境によって包囲された、固体誘電体フィラメント(例えば、光ファイバ)または薄い誘電体フィルムとして形成されることが多い。
【0007】
多くの応用において従来から扱われているように、伝送線路は、いくつかの重要な点において、より広い範疇の導波路といくぶん異なる意味で特徴づけることができる。例えば、第1に、伝送線路は、一般にDC(周波数/ゼロ)から超高周波(例えば、ミリ波およびマイクロ波範囲、約1GHzから100GHz)で動作するように構成される。しかしながら、導波路は、その特定の構造および寸法によって決まる、ある周波数より上でのみ動作が可能であり(「カットオフ周波数」)、そのために一般的にハイパスフィルタとして作用する。他方、約50GHzから300GHzのオーダーの超高周波においては、伝送線路は、従来からよく知られた伝送線路導体におけるスキン効果に加えて、導体を隔てる材料に関する誘電体損失のために、全体的に非効率的になってくるとみなされている。それに対して導波路では、従来から、この範囲の周波数においては、より大きな帯域幅および低い信号減衰(すなわち、より広い範囲の周波数応答および低い信号電力損失)が得られると考えられている。しかしながら、この周波数範囲の下端およびそれより下において、導波路は、従来から、応用分野によっては、特にさらなる小型化が通常目標とされる集積回路応用においては、寸法的に大きくなりすぎると考えられている。伝送線路と導波路のさらに別の差異は、伝送線路がTEM波(transverse electromagnetic wave)(すなわち、電界および磁界が波伝播方向に垂直に向いている波)だけをサポートできるのに対して、導波路は、一般に、多数の可能な電界構成(すなわち、モード)をサポートすることができる。
【0008】
マイクロエレクトロニクス回路の半導体製造において、高周波電気信号を伝える導波路および伝送線路は、従来から、様々な方法で実装されてきた。2つのそのような実装形態として、それぞれ、コプレーナ導波路(CPW:coplanar waveguide)およびコプレーナストリップ線路(CPS:coplanar stripline)と呼ばれている。図2Aおよび図2Bは、コプレーナ導波路を異なる視野で示してあるのに対して、図3Aおよび図3Bは、コプレーナストリップ線路を異なる視野で示してある。
【0009】
特に、図2Aには、半導体基板103上の誘電体層101上に配置された3つの平行な導体20A、40および20Bによって形成された、コプレーナ導波路50の横断面図を示してある。図2Bは、事例的なコプレーナ導波路デバイスを上から見下ろした上面図であり、このデバイスでは、中央導体40がその両端でパッド42A、42Bによって終端されており、導体20A、20Bは、その面内で導体40を完全に包囲するように電気的に接続して示してある(図2Aの横断面図は、図2Bの一点鎖線2A−2Aに沿った断面である)。図2Aおよび図2Bに示すように、導体20A、20Bの幅W1は、中央導体40の幅W2よりも大幅に大きい場合がある。
【0010】
通常の動作において、コプレーナ導波路50の導体20A、20Bは一緒に接地または基準電圧に電気的に接続されており、伝送すべき信号は中央導体40に流される。この点において、注目すべきことは、結合された接地導体20A、20Bは中央信号導体40よりも大幅に大きな面積を覆うために、コプレーナ導波路内の、それぞれの接地および信号導体は対称ではないことである。この構成は、一般に、「不平衡(unbalanced)」構成と呼ばれている。中央信号導体40の周りに大きな接地または参照電圧を配置することによって、電界を中央導体と接地または基準導体との間に領域に閉じ込め、それによって、波が伝播することのできる「導管(conduit)」が生成される。
【0011】
コプレーナ導波路と異なり、コプレーナストリップ線路は、対称型または平衡型の2導体デバイスである。図3A、3Bは、距離Sだけ隔てられた2つの実質的に同一の平行導体100A,100Bで構成された理想化無限コプレーナストリップ線路100の一例を、異なる視点の図で示している。特に、図3Aは、導体100A、100Bの横断面を示しており、これらは、例えば、基板103上の誘電体層101の上方に配置された金属線路とすることができる。図3Bは、基板上に配置された導体を見下ろす、上面図である(図3Aの横断面図は、図3Bにおける一点鎖線3A−3Aに沿った断面である)。
【0012】
図3Aおよび3Bから容易に観察されるように、コプレーナストリップ線路100の幾何学形状は、図2A、2Bに示すコプレーナ導波路50のそれと顕著に異なっている。特に、コプレーナ導波路50は、横断面に3つの導体を含むのに対して、コプレーナストリップ線路100は2つの導体だけを含む。さらに、それぞれ異なる幅を有してもよいコプレーナ導波路の接地導体20A、20Bおよび中央信号導体40とは異なり、コプレーナストリップ線路の導体100A、100Bは、図3A、3Bに示すように、実質的に同じ幅W3を有する。ここでも、コプレーナストリップ線路における、このような実質的に同一の平行導体の配列は、一般に、対称構成または「平衡」構成と呼ばれる。そのような対称または平衡の2つの導体構成によって、以下にさらに詳細を示すように、コプレーナストリップ線路上の差分信号(differential signals)が容易にサポートされる。対照的に、コプレーナ導波路の非対称または不平衡の構成は、差分信号をサポートせず、単に「シングルエンド型(single-ended)」信号(すなわち、接地電位を基準とする信号)だけをサポートする。
【0013】
従来からある多くの他のマイクロ波応用において、本質的にシングルエンドまたは不平衡のマイクロ波デバイスが普及しているために、コプレーナ導波路実装は、一般に、回路接続構造として好ましいものであった。また、コプレーナ導波路は、一般に、コプレーナストリップ線路よりも、大幅に損失が少ないと思われており、特に、マイクロ波周波数における基板への信号損失についてそうである。したがって、歴史的にいって、高周波マイクロエレクトロニクスデバイスに関する関連文献の多くが、コプレーナストリップ線路ではなく、非常に多くコプレーナ導波路を対象としている。コプレーナ導波路は、一般に、直列および並列(shunt:シャント)の能動型および受動型の回路構成要素の両方と容易に統合されると考えられている。さらに、コプレーナ導波路導体の寸法は、回路構成要素リード線幅に合わせて簡単に変えることによって、その他デバイスとの接続を容易にするとともに、同時に、相互接続されるデバイスと整合性のある、コプレーナ導波路に対する所望の特性インピーダンスを維持することができる。しかしながら、1つのトレードオフは、コプレーナ導波路は、中央信号導体の側面に位置する(flanking)、比較的幅の広い、複数の接地導体のために、大きなスペースをとることである。
【0014】
コプレーナ導波路とコプレーナストリップ線路の両方の様々な特性を、抵抗、インダクタンス、コンダクタンスおよびキャパシタンスなどの、電気回路理論に関する一般概念を使用して、少なくともある程度まで、モデル化することができる。しかしながら、波動ベース構造は、一般に、通常の電気ネットワークとは1つの本質的特徴において異なり、それは、動作周波数に対する大きさである。例えば、電気ネットワークの物理的寸法は、動作周波数に対応する波長よりもはるかに小さいが、これに対して、導波路および伝送線路に基づくデバイスの大きさは、通常、デバイスの動作周波数に対応する波長のかなりの割合となり、多数波長の長さになることさえある。したがって、抵抗、インダクタンス、コンダクタンスおよびキャパシタンスに関する要素は、一般電気回路において、集中パラメータ(lumped parameter)を有する個別構成要素(discrete component)として記述できるが、伝送線路および導波路は、その代わりに伝送線路/導波路の長さ全体にわたって分布する回路パラメータによって記述しなくてはならない。
【0015】
上記のことを考慮すると、図4Aおよび図4Bは、電気回路概念に基づく、分布「線路パラメータ」(distributed "line parameter")を含む、2つの異なる理論的伝送線路/導波路モデルを示している。特に、図4Aは、(図2および2Bに示すコプレーナ導波路50に適用可能な)「シングルエンド型」モデル30を示し、図4Bは、(図3A、3Bに示すコプレーナストリップ線路100に適用可能な)「差分」モデル32を示す。
【0016】
図4A、4Bのモデルにおいて、パラメータzは、波動伝播の方向における、伝送線路/導波路の長さに沿った距離を示す(ここで、dzは差分長を表す)。回路ベース線路パラメータは、図4A、4Bに、単位長さ当たり抵抗R、単位長さ当たりインダクタンスL、単位長さ当たりコンダクタンスG、単位長さ当たりキャパシタンスCとして示してあり、ここでRおよびLは直列要素であり、GおよびCは並列要素である。図4Bにおいて、直列要素RおよびLによる値は、やはりモデルの「差分」特性を示すために、モデル32の2つの同一の導体(例えば、Rdz/2およびLdz/2)の間で分割されている。
【0017】
コプレーナ導波路またはコプレーナストリップ線路を特徴づけるのに用いることのできる、線路パラメータR、L、G、Cは、コプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路を製造するのに使用される、材料のタイプ(例えば、誘電体、基板、および金属の構成要素)およびコプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路配列に関連する様々な寸法(例えば、導体の幅および厚さ、導体間の間隔、誘電体層の厚さ、その他)から直接的に得られる。より具体的には、所与の構造に関係する材料および寸法によって、一般に、構造と関係する様々な物理的性質、例えば有効誘電率εeff、透磁率μ、および様々な損失係数などが決まり、それらに線路パラメータR、L、GおよびCは基づいている。
【0018】
ここでも理解すべきことは、図4A、4Bに示すように、線路パラメータR、L、GおよびCは離散的または集中的ではなく、コプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路の全長に沿って一様に分布していることである。また、理解すべきことは、Rは導体の単位長さ当たりのAC抵抗(すなわち、「直列」抵抗)であるのに対して、Gは、導体を相互に、および基板から隔てる誘電体媒体による単位長さ当りのコンダクタンス(すなわち、「並列(shunt)」抵抗(シャント抵抗))であることである。
【0019】
コプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路の分布する、抵抗、コンダクタンス、インダクタンスおよびキャパシタンスによって、必然的に、所与の実装形態に固有の周波数特性を生じる。例えば、インダクタンスとキャパシタンスの全体エネルギー貯蔵関数は、インダクタンス/キャパシタンスと関連する抵抗/コンダクタンスに基づく、周波数依存性を有する。所与の伝送線路(または導波路)構成を含む、周波数依存性システムの周波数応答を特徴づける1つの一般的なパラメータは、通常は文献においてはQの記号で示される、「品質係数(quality factor)」である。
【0020】
周波数依存性システムの品質係数Qは、一般に、システムのピーク周波数または共振周波数と、システムの周波数帯域幅の比(すなわち、システムの全周波数応答の半値点間の周波数範囲)として定義される。品質係数Qは、代替的に、システムに貯蔵される最大エネルギーと所与の期間内にシステムが失った合計エネルギーとの比と考えることもできる。前記のことを考慮すると、比較的大きなQを有するシステムは、一般的に、そのシステムが、比較的少ないエネルギー損失で、所与の共振周波数に近い周波数をサポートする点において、「周波数選択的」と考えられる。対照的に、比較的小さなQを有するシステムは、重要な周波数選好性を必ずしも有さず、いくぶん損失の多い(lossy)システムと考えられる。
【0021】
所与のコプレーナ導波路配設またはコプレーナストリップ線路配設の品質係数Qは、コプレーナ導波路またはコプレーナストリップ線路に沿った波動伝播に関連する様々なパラメータによって表すこともできる。再び、図3Bに示すコプレーナストリップ線路100を参照すると、事例的な位置依存電圧V(z)が、導体間に示されており、事例的位置依存性電流I(z)が、導体中を流れるのを示してあり、ここでzは波動伝播の方向に沿った距離を示す。コプレーナストリップ線路に沿った位置zの関数として電圧V(z)は、
【数1】
で表され、ここでV0は波の振幅であり、量(2πft−βz)は、波の位相(ラジアン単位)を表し、これは時間tおよび空間zの両方に依存する。もちろんのこと、fは波の周波数、βは、β=2π/λで定義される波の「位相定数」であり、本質的に、位相定数βは、各波長の移動距離に対して、波は2πラジアンの位相変化を生ずることを示す。最後に、αは、波が伝播するときの損失を表す減衰係数であり、これは波の全体振幅に影響を与える。すなわち、増大すると、より大きな損失を示し、相応して波の振幅V0は、e−αzの倍数で減少する。上述のように、品質係数Qは、位相定数βおよび減衰係数αによって表わし、比較的低損失の周波数依存システムに対しては、次式
【数2】
で近似することができる。
【0022】
伝送線路および導波路の別の重要な特徴パラメータは、波動が伝送線路または導波路に沿って伝播する速度が関係する。特に、一般にνで表わされる、伝送線路または導波路の位相速度は、所与の媒体内における波動の周波数fと波長λとの間に、ν=fλの関係をもたらし、その媒体の波動伝播の速度を表わす。したがって、所与の周波数fに対して、位相速度νが小さくなると、波長λは短くなる。位相速度νは、有効誘電率εeffおよび透磁率μなどのデバイスの特定の物理的特性から生ずる。図4Aおよび4Bに示すにモデルに対して、位相速度は、単位長当りのインダクタンスLおよび単位長当りのキャパシタンスCによって、次式
【数3】
で表わすことができる。
【0023】
回路寸法の減少は、改良型マイクロエレクトロニクスデバイス製造技術の重大な目標であり、文献においては、位相速度の低減を容易にする機能に基づく、マイクロ波デバイスの寸法低減に関して焦点が当てられてきた。ここでも、位相速度を低減すると、所与の動作周波数における対応する波長が減少することになる。共振器、発振器、インピーダンス整合ネットワーク、信号分配器および結合器、フィルタ、増幅器ならびに遅延などのデバイスを、伝送線路構成または導波路構成に基づいて実装することができる。上述のように、しばしば、そのようなデバイスの寸法は、ある所望の動作周波数範囲に対して、波長λと同等である。したがって、位相速度νを低下させることによって、より小型のデバイスを実現することができる。
【0024】
このことに留意して、マイクロ波分野において、様々な「遅波(slow-wave)」構造が1970年代から研究されてきた。ここでも、これらの研究の多くは、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)に関係し、これらには、所与の動作周波数または周波数範囲において位相速度および波長を低減し、それによってデバイス寸法を低減するように設計される特徴を組み入れたコプレーナ導波路が含まれる。遅波構造を実現するためのそのような特徴の一つには、「周期的負荷(periodically loaded)」コプレーナ導波路があり、この場合には、フローティング金属ストリップが3つのコプレーナ導波路導体の下方に周期的に配置され、かつ導体に直角方向に配向されている。フローティング金属ストリップの存在は、一般的には、伝播波動における電気的および磁気的エネルギーを空間的に分離すると考えられ、これによって、コプレーナ導波路の単位長さ当りキャパシタンスCが増大することになる。関係式
【数4】
にしたがって、そのような単位長さ当りキャパシタンスCが増大すると、小さな位相速度ν、したがって所要の周波数fにおいて小さな波長λを生じることになる。すなわち、これらの遅波特徴は、小型デバイスの製造を容易にすることができる。
【0025】
コプレーナ導波路に基づく従来型遅波マイクロ波構造において、波長λが減少すると、関係式β=2π/λに従って、対応する位相定数が増大する。しかしながら、関係式
【数5】
による、増大した位相定数βの品質係数Qに与える影響は、文献からは完全に明白ではなく、βの増大によるQの増大は期待されるが、遅波特徴のコプレーナ導波路の損失に与える影響は明確ではない。いくつかの報告においては、フローティング金属ストリップを組み入れたコプレーナ導波路遅波構造のQは、実際には、遅波構造の存在によって生じる損失αの増大によって、遅波構造を有さないコプレーナ導波路のそれよりも減少する可能性があることが示唆されている。したがって、ある種のコプレーナ導波路遅波構造において品質係数と位相速度との間にはトレードオフがある、すなわち、位相速度を低減して小型デバイスの実装を用にすることはできるが、より大きな損失が発生し、それによってデバイスの品質係数Qを低下させると思われる。
【0026】
要約
本開示は、一般的にはコプレーナストリップ線路(CPS)に基づく半導体デバイスに関わる様々な方法および装置に関する。
コプレーナ導波路(CPW)は、おそらく、マイクロ波回路デバイスおよび構造などの分野において過去にはより大きな注目を集めていたが、出願人らは、様々なコプレーナストリップ線路(CPS)構成によって、広範囲の応用のためのいくつかの有用な高速マイクロエレクトロニクスデバイスの製造を容易にすることができることを認識、理解した。
【0027】
コプレーナ導波路とコプレーナストリップ線路の間のいくつかの差異について、図2A、2B、3A、3Bと関係して考察した。例えば、コプレーナストリップ線路は、横断面において2導体の配設であるが、コプレーナ導波路は、横断面において3導体の配設であり、通常、コプレーナストリップ線路よりも大幅に大きなスペースを必要とする。コプレーナストリップ線路の2導体配設は、導体の対称性のために、「平衡」構成であり、これと対照的に、コプレーナ導波路は、3つの導波路導体(すなわち、2つの幅広の導体と1つの幅の狭い導体)間の強い非対称性のために、「不平衡」構成である。
【0028】
多くの回路応用に対して、おそらく、コプレーナストリップ線路とコプレーナ導波路の間の最も重要な差異は、コプレーナストリップ線路は、主として平衡構成のために、差分信号をサポートすることができるのに対して、コプレーナ導波路はそれができないことである。
信号が「ピックアップ」ノイズまたはその他の雑多なノイズによる汚染を受けやすい応用において、差分信号は、重要である。例えば、比較的長い距離にわたって、および/またはいくつかの信号またはその他の放射が存在する環境において転送される信号は、信号の完全性を害する、望ましくない歪みを受ける可能性がある。2つの導体を使用して差分方式で信号を移送することによって、両方の導体に沿って通常、ピックアップされるノイズを、(2つの導体のそれぞれの信号間の差分を観察することによって)差分信号を回復するときに、キャンセルすることができる。具体的には、導体上の通常モードノイズは、一方の導体上の信号から、他方の導体上の信号を差し引き、好ましくは差分信号だけを残すことによって、「除去(reject)」することができる。この概念は、通常、「同相除去(common-mode rejection)」と呼ばれる。
【0029】
差分信号を簡単にサポートし、それによって不要なノイズを同相除去する、コプレーナストリップ線路の能力は、ふたたび図3A、3Bを参照して、はっきりと観察することができる。特に、これらの図に示す、コプレーナストリップ線路100において、2つの事実上同一の導体100A、100Bのいずれも、信号接地またはその他の基準電位にある必要がなく、むしろ、コプレーナストリップ線路導体の両方が、それぞれ接地またはその他の電位を基準とする異なる信号を、それぞれに、かつ同時に搬送することができる。さらに、これらの導体は事実上、同一であり互いに近接しているので、それらはノイズピックアップにおいて、それらの環境に対して本質的に同じ反応をする。
【0030】
対照的に、(図2A、2Bに示すように)コプレーナ導波路は、「シングルエンド型」電気信号、すなわち接地電位を基準とする信号だけをサポートする。さらに、コプレーナ導波路は、通常、その信号導体と比較してその結合接地導体の寸法が大きいことから、本質的に不平衡である。したがって、コプレーナ導波路の導体は、ノイズピックアップにおいて、それらの環境に対して異なる反応をする。したがって、コプレーナ導波路は、差分信号を容易にはサポートせず、コプレーナ導波路に基づくデバイスは、コプレーナストリップ線路によって得られるノイズ低減能力を利用することができない。もちろん、コプレーナストリップ線路も、その2つの導体の内の一方が、接地またはその他の基準電位にあるように構成することができる。しかしながら、コプレーナストリップ線路の、差分信号をサポートする能力によって、コプレーナストリップ線路構成は、多くの回路用途に対して、コプレーナ導波路構成よりも著しく望ましいものとなる。
【0031】
前記のことを考慮すると、以下に開示するいくつかの態様は、いくつかの異なるマイクロエレクトロニクスデバイスの実装を容易にする、様々な機能を組み入れた、コプレーナストリップ線路に関係する。本開示によるコプレーナストリップ線路を組み入れることのできるデバイスの例としては、それに限定はされないが、インピーダンス整合デバイス、電力結合および電力分割用デバイス、遅延器、共振器、発振器、フィルタ、増幅器、ミクサ、その他があり、またそのようなデバイスのCMOS方式実装も含まれる。いくつかの事例的態様において、サイン波信号源、より具体的には定常正弦波発振器が、本開示による様々なコプレーナストリップ線路構成に基づいて実装される。
【0032】
以下にさらに考察するいくつかの態様は、結果として得られるデバイスの品質係数Qを劇的に増大させる、コプレーナストリップ線路実装の様々な機能に関する。例えば、そのような態様の様々な観点において、品質係数Qの20倍またはそれ以上の向上が、シリコン基板ならびに、その他の基板上で製造されるコプレーナストリップ線路デバイスに対して実現することができる。そのような向上は、そのような実装に基づく様々な回路デバイス(例えば、共振器、発振器)の性能の改善に、顕著かつ有利に寄与する。一態様においては、品質係数Qの向上が達成されるとともに、同時に、デバイス内を伝播する1つまたは2つ以上の波動の位相速度が低下し、それによって小型デバイスの製造が容易になる。さらに別の態様においては、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成(tapered coplanar stripline configuration)によって、位置依存線路パラメータが得られ、これを利用して顕著な高Qデバイスを達成することができる。
【0033】
例えば、本発明の一態様は、互いに平行であり、かつ実質的に第1の方向に沿って配向されている、第1の導体および第2の導体のみを含む、コプレーナストリップ線路(CPS)を備える、装置を目的とする。この態様の装置は、コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の直線状導電ストリップをさらに含む。この複数の直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であり、実質的に第1の方向に直角の第2の方向に沿って配向されている。この態様の一観点においては、この装置はシリコン基板をさらに含み、このシリコン基板の上に、少なくとも1つの誘電体、複数の直線状導電ストリップ、およびコプレーナストリップ線路が配置されている。別の観点においては、この装置は、約1Ghzから60Ghz以上の範囲の周波数を有する、コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの信号をサポートするように構成されている。さらに別の観点においては、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップは、約1Ghzから60Ghzの範囲における少なくとも1つの周波数に対してこの装置が少なくとも30の品質係数Qを有するように、配設される。
【0034】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの差分信号を移送する方法であって、少なくとも1つの差分信号を、実質的に第1の方向に沿って配向され、かつ複数の直線状導電ストリップに近接して配置された、コプレーナストリップ線路を介して移送する行為を含み、前記複数の直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であって、かつ第1の方向に直角な第2の方向に実質的に沿っている、前記方法を目的とする。
【0035】
本発明のさらに別の態様は、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスCが、コプレーナストリップ線路に沿った位置の、不連続関数または連続関数となるように構成された、コプレーナストリップ線路を目的としている。この態様の一観点においては、コプレーナストリップ線路導体間の間隔および導体それ自体の幅が、コプレーナストリップ線路に沿って変化する、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成が実装される。この態様の一観点においては、そのようなテーパー付き構成は、コプレーナストリップ線路の長さに沿って線路パラメータR、Gを有効に変えるとともに、同時に、コプレーナストリップ線路の一様な特性インピーダンスを実質的に維持して、局所反射を回避する。
【0036】
本発明の別の態様は、第1の導体および第2の導体を含むテーパー付きコプレーナストリップ線路を含む装置であって、該第1および第2の導体が実質的に第1の方向に沿って配向されており、前記第1および第2の導体の間の空所および前記第1および第2の導体の幅が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、前記装置を目的とする。この態様の装置は、テーパー付きコプレーナストリップ線路に近接して配置された複数の直線状導電ストリップをさらに含む。この複数の直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であるとともに、実質的に前記第1の方向に直角な第1の方向に沿って配向されている。
【0037】
本発明の他の態様は、一般的に、コプレーナストリップ線路に基づく定常正弦波発振器を実装する、様々な方法および装置を目的としている。
例えば、本発明の一態様は、周波数f0を有する少なくとも1つの電圧定常波を生成するように構成された、1/4波長(λ/4)コプレーナ定常波発振器(SWO)を目的としている。この態様のSWOはコプレーナストリップ線路を含み、このコプレーナストリップ線路は、2つの導体を含むとともに、1/4波長(λ/4)に等しいか、またはほぼ等しい長さLを有しており、λは、少なくとも1つの電圧定常波を構成する波動の位相速度によって周波数f0に関係づけられる。このSWOは、コプレーナストリップ線路の第1端の両導体間に配置された、少なくとも1つの増幅器をさらに含み、該2つの導体は、コプレーナストリップ線路の第2端において互いに連結されて、短絡回路を形成している。
【0038】
この態様の一観点において、SWOは、モード制御技術を使用して、高い周波数における正弦波性能を低電力消費で最適化するように構成されている。特に、この態様の一観点において、SWOは、コプレーナストリップ線路の長さに沿って異なるゲインを有する複数増幅器を利用する、専用分布増幅方式(tailored distributed amplification scheme)を使用する、本質的に単一モードデバイスとして構成されている。この態様のさらに別の観点においては、増幅器の異なるゲインは、コプレーナストリップ線路に沿った増幅器のぞれぞれの位置における、所望のモードの予期される振幅に少なくとも部分的に基づいていることにおいて、「振幅依存」である。
【0039】
より一般的には、本発明の一態様は、コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、コプレーナストリップ線路に沿って変化するように振幅を分布させて、コプレーナストリップ線路損失を克服する行為を含む、前記方法を目的としている。本発明の別の態様は、コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、前記少なくとも1つの電圧定常波の発振モードを制御する行為を含む、前記方法を目的としている。これらの態様の様々な観点において、振幅依存分布増幅を利用して、低損失単一モード動作を促進することができる。
【0040】
本発明の別の態様は、コプレーナストリップ線路構成を利用するSWOであって、前記コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の直線状導電ストリップを含む、前記SWOを目的としている。前記複数の直線状ストリップは、本質的に互いに平行であり、実質的に、前記第1の方向に直角の第2の方法に沿って配向されている。この態様の一観点において、コプレーナストリップ線路導体および複数の直線状導電ストリップは、品質係数向上と、コプレーナストリップ線路導体上の電圧定常波の成分の位相速度低減とを実現するために、相互に配設される。
【0041】
本発明の別の態様は、テーパー付きストリップ線路構成を利用して、SWOによる電力消費を大幅に低減する、SWOを目的としている。この態様の一観点においては、SWOの構成は、低単長さ当りコンダクタンス(低G)のコプレーナストリップ線路領域が、最大電圧振幅が期待される箇所、またはその近傍の箇所に配置され、それによって基板への電力消費が減少するようにされる。さらに、別の観点では、低い単位長さ当り抵抗(低R)のコプレーナストリップ線路領域が、最大電流が期待される箇所、またはその近傍の箇所に配置され、それによって伝送線路それ自体からの電力消費(すなわち、直列損失)が低減される。
【0042】
本発明の別の態様は、コプレーナストリップ線路SWOであって、専用分布増幅方式、コプレーナストリップ線路の近傍に配置された複数の直線状導電ストリップ、およびテーパー付きコプレーナストリップ線路構成の内の1つまたは2つ以上を利用し、それによってモード制御を実現して、発振器の全電力消費を低減する、前記コプレーナストリップ線路SWOを目的とする。
さらに別の態様において、SWOは、周波数調整可能性を備えて構成され、この周波数調整可能性は、さらに電力消費を低減し、同時に発振器周波数の有効な調整を容易にするように最適化される。例えば、本発明の一態様は、コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの電圧定常波の周波数を制御する方法であって、少なくとも1つの周波数制御デバイスを、前記少なくとも1つの電圧定常波の最大振幅と、前記少なくとも1つの電圧定常波のゼロ電圧ノードとの間のほぼ中間点にある位置に、コプレーナストリップ線路に沿って配置する行為を含む、前記方法を目的とする。
【0043】
本発明の別の態様は、リング共振器コプレーナストリップ線路実装に基づく、閉ループ(例えば、円形)SWOを目的とする。特に、この態様のSWOは、2つの導体を有する閉ループコプレーナストリップ線路、および第1の場所に前記2つの導体の間に配置された、少なくとも1つの増幅器を含む。この2つの導体は、第1の場所と異なる第2の場所で互いに接続されて、前記少なくとも1つの電圧定常波に対するゼロ電圧ノードをもたらす。この態様の様々な観点において、専用分布増幅方式、コプレーナストリップ線路に近接して配置された複数の直線状導電ストリップ、およびテーパー付きコプレーナストリップ線路構成の内の1つまたは2つ以上を、閉ループ構造と共に使用することができる。別の観点においては、発振器内に重大な損失が含まれるのを回避するように特定の共振器トポロジを使用して、コプレーナストリップ線路導体の交差結合を含む、特定の増幅器構成を利用して、単一モード動作が容易化される。
【0044】
前記の概念のすべての組合せおよび以下により詳細に考察する追加の概念は、本明細書において開示する発明の主題事項の一部として企図するものであることを認識すべきである。特に、本開示に添付のクレームの発明事項のすべての組合せは、本明細書において開示される発明主題事項の一部として企図するものである。
【0045】
詳細な説明
添付の図面は、拡大縮小するために製図することを意図したものではない。図面において、様々な図に示されている、同一またはほぼ同一の構成要素のそれぞれは、同一の番号で表わしてある。分かりやすくするために、すべての図面において、すべての構成要素にラベル付けすることはしていない。
上記の要約に考察したように、本開示の様々な態様は、コプレーナスプリット線路(CPS)に基づく半導体デバイスに関する方法および装置を目的としている。本出願人らは、多様なコプレーナストリップ線路構成によって、多数の応用に対する、いくつかの有用な高速マイクロエレクトロニクスデバイスを形成することができることを認識、理解した。本開示による様々な概念を組み入れたCPSベースデバイスの例としては、それに限定はされないが、インピーダンス整合デバイス、電力結合および分割用のデバイス、遅延器、共振器、発振器、フィルタ、増幅器、ミクサ、その他があり、そのようなデバイスのCMOSベース実装も含まれる。
【0046】
一般に、本発明の様々な態様によるストリップ線路実装に基づく高速マイクロエレクトロニクスデバイスは、約1GHzから約100GHzまでの範囲における差分信号をサポートすることができるが、本開示はこれらの点において限定されないことを理解すべきである。例えば、本明細書に開示された概念に基づくいくつかの実装においては、デバイスは、多様な周波数範囲で動作するように構成して、シングルエンド信号または差分信号のいずれもサポートすることができる。
【0047】
以下にさらに詳しく考察する態様において、CPSベースデバイスには、結果として得られるデバイスの品質係数Qを劇的に増大させる様々な機能を組み入れることができる。さらに、品質係数Qの向上を達成するとともに、同時にデバイス中を伝播する1つまたは2つ以上の波動の位相速度を低減し、それによって比較的小型のデバイスの製造を容易にすることができる。
以下に続く節では、様々なデバイスにおいて汎用可能な本開示による、異なるコプレーナストリップ線路構成に関する態様を、最初に提示する。この開示のその後の節では、定常波発振器(SWO)の例を含めて、様々なコプレーナストリップ線路構成に基づくデバイスのいくつかの具体例を挙げる。本明細書において考察する実施例は、本開示の基礎となるいくつかの顕著な概念を示すことを一義的な目的とするものであること、および本発明は、本明細書において考察するいずれの実装形態またはいずれの特定の実施例にも限定されないことを理解すべきである。
【0048】
I.浮遊導体配列(floating conductor arrays)を備えるコプレーナストリップ線路
図5Aおよび図5Bは、それぞれ、本発明の一態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、装置60の実施例を示す、斜視図および横断面図である。図5Aの上左隅に、x軸36、y軸38およびz軸34を含む座標系が、装置60の斜視図の全体方向を示しており、同様に図5Bでは、上左隅のy軸38およびz軸34が、横断面図がx軸36に平行な方向に沿っていることを示している。
【0049】
図5Aに示すように、この装置は、本質的に互いに平行で、実質的にz軸34に平行な第1の方向に沿って配向された、第1の導体100Aおよび第2の導体100Bを有する、コプレーナストリップ線路100を含む。装置60は、また、コプレーナストリップ線路100に近接して配置された本質的に直線状の導電ストリップの配列62を含む。配列62を構成する直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であり、配列62は、実質的に、第1の方向に直角である第2の方向に沿って配向されている。この態様の一観点においては、図5Aに示すように、第2の方向は、本質的にx軸36に平行、すなわちコプレーナストリップ線路100がそれに沿って配向されている第1の方向と直交している。図5A、5Bに示す配列に描かれている導電ストリップの数は、一義的に説明の目的のものであり、本発明は、配列62における導電ストリップのいかなる特定の数にも限定されないことを理解すべきである。
【0050】
同様に図5A、5Bの両方に示してあるように、装置60は、少なくともコプレーナストリップ線路100と導電ストリップの配列62との間に配置された、少なくとも1つの誘電体101、ならびに該誘電体、前記導電ストリップの配列、およびコプレーナストリップ線路がその上に配置された基板103を含む。この態様の一観点においては、誘電体101はシリコン酸化物とすることができるが、本発明はこの点において限定されるものではなく、その他の誘電体を様々な実装形態で使用することができる。この態様の別の観点においては、基板103はシリコンとすることができる。しかしながら、このときも本発明はこの点において限定されるものではなく、他の基板(例えば、GaAs、SiGe、その他)を様々な実装形態において使用することができる。図5Bを参照すると、この態様の別の観点によれば、コプレーナストリップ線路100(図5Bの視野ではそれの導体100Bだけが見える)が第1の面64に配置され、直線状導電ストリップの配列62が、第1の面と本質的に平行な第2の面66に配置され、その結果、第1の面および第2の面の両方に対する垂線65が、コプレーナストリップ線路の一方の導体および配列62の少なくとも1つの導電ストリップの両方を通過するのがわかる。
【0051】
図5A、5Bに示す態様の装置60の別の観点によれば、この装置は、一般に、約1ギガヘルツ(GHz)から約100GHzの範囲にある周波数を有する、コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの信号をサポートするように構成されている。より具体的には、この装置は、約10GHzから60GHzの範囲にある周波数を有する、コプレーナストリップ線路上の信号をサポートするように構成することができる。様々な実装形態において、差分信号(またはシングルエンド信号)を、コプレーナストリップ線路の導体100A、100Bに沿って移送し、その間に、直線状導電ストリップの配列を、導体100A、100Bに対して浮遊電位(floating electric potential)に維持することができる。以下にさらに詳細に考察するように、浮遊導体配列62がコプレーナストリップ線路100に近接している結果として、装置の品質係数Qが、配列62を備えない従来型コプレーナストリップ線路(例えば、図3A、3Bを参照)において一般的に観察されるそれに対して、劇的に増大する。
【0052】
例えば、図5A、5Bの態様の一観点において、コプレーナストリップ線路100および直線状導電ストリップの配列62の配設は、装置の品質係数Qが、約1GHzから少なくとも60GHzの範囲の少なくとも1つの周波数に対して少なくとも30となるようにされている。別の観点においては、コプレーナストリップ線路および直線状導電ストリップの配列の配設は、装置の品質係数Qが、約1GHzから少なくとも60GHzの範囲の少なくとも1つの周波数に対して、少なくとも50となるようにされている。さらに別の観点では、コプレーナストリップ線路および直線状導電ストリップの配列の配設は、装置の品質係数Qが、約1GHzから少なくとも60GHzの範囲の少なくとも1つの周波数に対して、少なくとも70となるようにされている。以下にさらに詳細に考察するように、前記の特性を達成することは、少なくとも部分的には、装置の様々な構成要素の特有の寸法、構成要素間の特有の間隔、および装置に使用する材料のタイプを選択することによっている。
【0053】
この態様のさらに別の観点によれば、図5A、5Bの装置60における浮遊導体配列62の存在によって、デバイス中を伝播する1つまたは2つ以上の波動の位相速度が減少する結果ともなり、それによって比較的小型のデバイスの製造が容易になる。このような浮遊導体配列の「遅波(slow wave)」効果は、その他の構造と関係して知られており、このような構造においては、そのような浮遊導体による導波路または伝送線路への周期的負荷によって、伝播中の波動(複数を含む)における電気的および磁気的エネルギーが空間的に分離されるものと一般的に考えられている。そのような電気的および磁気的なエネルギーの分離の結果として、その構造の単位長さ当りキャパシタンスCが増大する。関係式
【数6】
に従って、そのように単位長さ当りキャパシタンスCが増大した結果として、位相速度νは小さくなり、したがって所与の信号周波数fにおいて波長λが小さくなる。
【0054】
装置60におけるQ向上効果および位相速度低減効果の両方の考察を容易にするために、ある数の様々な構成要素の寸法および構成要素間の間隔に加えて、装置に使用される材料のいくつかの物理的特性(例えば、誘電率εおよび導電率σ)を、図5Aおよび図5Bに示してある。
例えば、コプレーナストリップ線路100についてx軸36に平行な方向に沿った、第1および第2の導体100A、100Bのそれぞれの幅68を、図5AにWの記号で示してある。同様に、第1と第2の導体の間の間隔70または距離を、Sの記号で示してある。それに応じて、コプレーナストリップ線路100の全体幅の寸法72を図5Aに記号Dで示してあり、ここでD=2W+Sである。y軸38に平行な方向に沿った、導体100A、100Bのそれぞれの厚さ74を、図5A、5Bの両方にtcpsの記号で示してある。最後に、装置60のz軸34に平行な方向に沿った、コプレーナストリップ線路100の全体長さ96を、図5A、5Bの両方に、LCPSの記号で示してある。
【0055】
直線状導電ストリップの配列62について、x軸に平行な方向に沿った、各ストリップの長さ76を、図5AにlSで表わしてある。同様に、図5A、5Bの両方に示してある、z軸34に平行な方向に沿った各ストリップの幅78をdAで表わし、それに対して、(やはり、図5A、5Bに示してある)配列の隣接するストリップ間の、この方向に沿った間隔80をdBで表わしてある。配列62のストリップのそれぞれに対する、y軸に平行な方向に沿った厚さ84を、図5A、5Bの両方に、tstripで表わしてあり、これに対して、第1の面64(この面内にコプレーナストリップ線路100が存在する)と第2の面66(この面内に配列62が存在する)との間の、この方向に沿った距離82を、dsで表わしてある。
【0056】
図5A、5Bに示す装置60の誘電体101および基板103について、第2の面66と基板103の上部境界との間の、y軸に平行な方向に沿った誘電体厚さまたは距離86を、図5A、図5Bの両方にddieで表わし、誘電体の誘電率90をεdieで表わしてある。同様に、y軸に平行な方向に沿った基板厚さまたは距離88をdsubで表わし、基板の誘電率92をεsubで表わし、基板の導電率94をσsubで表わしてある。
【0057】
一般的に、上述のように、出願人らは、装置60の様々な構成要素の特有の寸法、構成要素間の特有の間隔、および装置に使用される材料のタイプの選択によって、装置が有効に信号を搬送することのできる周波数範囲が決まるだけでなく、装置において実現されるQ向上および位相速度低減の程度が決まることを、認識、理解した。特に、シミュレーションプロセスおよび経験的プロセスの両方によって、Q向上および位相速度低減の一方または両方について、装置60の全体構成、より具体的には配列62の導電ストリップの長さls、幅dAおよび間隔dBに関して、多数の有用な一般則が確立されている。
【0058】
例えば、図5A、5Bの態様の一観点によれば、一般的に、大幅なQ向上のための好ましい条件としては、配列62の導電ストリップの長さlsおよびコプレーナストリップ線路100の全体幅Dがほぼ等しい、構成が含まれる。より具体的には、一観点において、導電ストリップの長さlsがコプレーナストリップ線路の全体幅Dよりもわずかに大きい(例えば、約10%以上まで)構造において、劇的なQ向上が認められる。
【0059】
その他の観点においては、大幅なQ向上のための好適な条件としては、各導電ストリップの幅dAと隣接する導電ストリップ間の間隔dBとの少なくとも一方が、コプレーナストリップ線路の全体幅Dよりも大幅に小さい構成が挙げられる。より具体的には、好適なQ向上構成としては、以下の条件の1つまたは2つ以上が認められる構成が挙げられる:幅dAおよび間隔dBが、コプレーナストリップ線路の全体幅Dよりも少なくとも1桁分小さい;導電線路の幅dAおよび導電線路間の間隔dBが、コプレーナストリップ線路の全体幅Dよりもほぼ1桁分小さい;および幅dAおよび間隔dBがほぼ等しい。
【0060】
さらに他の観点によれば、好ましいQ向上構成としては、以下の条件の1つまたは2つ以上が認められる構成が挙げられる:各導電ストリップの幅dAと隣接する導電ストリップ間の間隔dBの内の少なくとも一方が、コプレーナストリップ線路の全体長さLCPSよりも大幅に小さい;幅dAおよび間隔dBは、コプレーナストリップ線路の全体長さLCPSよりも少なくとも1桁分小さい;導電線路の幅dAおよび導電線路間の間隔dBが、コプレーナストリップ線路の全体長さLCPSよりもほぼ1桁分小さい;および幅dAおよび間隔dBがほぼ等しい。
【0061】
図6A、6B、6Cは、図5A、5Bに示す装置60に対する、上述の様々な寸法および間隔に対する様々な異なる値(すなわち、配列62の導電ストリップの長さls、各導電ストリップの幅dA、および隣接する導電ストリップ間の間隔dB)を使用する、シミュレーション品質係数Q(グラフの縦軸)対GHzで表わした信号周波数(グラフの水平軸)についてのある数のプロットを示す3つのグラフである。ここで理解すべきことは、図6A、6B、6Cのグラフを得るためにシミュレートされた特定の構造は、単に事例であること、および本開示に従う様々な措置は、シミュレートされた事例に限定されないことである。このシミュレートされたデバイスおよびそれから生成された結果についての考察は、本明細書においては、一義的に、Q向上のための事例的な好適な条件について、上述した概念のいくつかを説明するためのものである。
【0062】
図6A、6B、6Cのグラフに反映されるシミュレーションにおいて、図5A、5Bに示す装置60の基板103は、厚さdsubが250ミクロン、誘電率εsubが11.9、導電率σsubが10ジーメンス/メートルのシリコンである。誘電体101は、厚さddieが5.155ミクロン、誘電率εdieが4.0であるシリコン酸化物である。コプレーナストリップ線路100の導体100A、100Bのそれぞれの幅Wは80ミクロンであり、これら導体間の間隔Sは60ミクロンであり、その結果として、コプレーナストリップ線路の全体幅Dは220ミクロンである。各導体100A、100Bの厚さtcpsは0.925μであり、コプレーナストリップ線路と配列62との間の間隔dsは1.0ミクロンであり、各導電ストリップの厚さtstripは0.64ミクロンである。最後に、シミュレートされた装置の長さLCPSは400ミクロンである。
【0063】
図6A、6B、6Cのグラフの結果となる、すべてのシミュレーションのための定数として前記の値を使用して、配列62の導電ストリップの長さls、各導電ストリップの幅dA、および隣接する導電ストリップ間の間隔dBを、それぞれその他と独立に変化させて、装置の品質係数Qに与える影響を観察した。以下の表1には、図6A、6B、6Cのグラフの結果となるシミュレーションに使用される、これらのパラメータに対する様々な値を要約してあり、続いてグラフについてのより詳細な考察を行う。表1を参照して、図6A、6B、6Cに示す各プロットは、シミュレートされた異なる装置を表わす。
【0064】
【表1】
【0065】
図6Aは、それぞれ、導電ストリップが3つの異なる長さlsを有し、その一方で、幅dAおよび間隔dBは両方ともそれぞれ5ミクロンに一定に保持されている、装置を表わす3つのプロット150、152、154を示している。特に、プロット150は、(コプレーナストリップ線路の幅Dよりもわずかに長い)240ミクロンの長さlsを反映し、プロット152は、(コプレーナストリップ線路の幅Dよりも大幅に長い)400ミクロンの長さlsを反映し、プロット154は、(コプレーナストリップ線路の幅Dよりも短い)180ミクロンの長さlsを反映している。
【0066】
図6Aのグラフから、lsがコプレーナストリップ線路の幅Dにほぼ等しいか、わずかに長い、シミュレートされた装置において、30GHz近くの周波数で、約65の最高品質係数Qが得られることがすぐにわかる。しかしながら、図9Aと関連して以下にさらに考察するように、ここで理解すべきことは、図6Aにおけるシミュレートされた装置のそれぞれは、同様の寸法および材料を使用するが、導電金属ストリップの配列62を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置と比較して、顕著なQ向上を達成することである。特に、配列62を備えないそのようなデバイスの品質係数Qは、約5〜60GHzの範囲の周波数範囲において10より低い値に留まる(図9Aのプロット176を参照)。したがって、(例えば、図5A、5Bに示す)そのような装置に配列62を追加すると、一般的に、導電ストリップの広範囲の異なる長さlsに対して、この周波数範囲の全体を通して顕著なQ向上が得られる。
【0067】
図6Bは、それぞれ、導電ストリップが4つの異なる幅dAを有し、一方で、ストリップの長さlsは240ミクロンに一定に、ストリップ間の間隔dBは5ミクロンに一定に保持されている、装置を表わす4つのプロット156、158、160、162を示している。特に、プロット156は、5ミクロンの(すなわち間隔dBに等しい)幅dAを反映し、したがってこのプロットは、図6Aに示すプロット150と同一である。図6Bのプロット158は、(間隔dBよりもはるかに小さい)1ミクロンの幅dAを反映し、プロット160は、(間隔dBの2倍の)10ミクロンの幅dAを反映し、プロット162は(間隔dBよりもはるかに大きい)20ミクロンの幅dAを反映している。
【0068】
図6Bのグラフからすぐに分かるように、幅dAおよび間隔dBの両方が、コプレーナストリップ線路100の全体幅Dおよび長さLCPSよりもはるかに小さい、5ミクロンである、シミュレートされた装置において、30GHz付近の周波数において約65の最高品質係数Qが得られる。しかしながら、ここでも理解すべきことは、図6Bのシミュレートされたデバイスのそれぞれは、(幅dAが間隔dBよりもはるかに大きい)プロット162によって表わされるデバイスを例外として、同様の寸法および材料を使用するが、導電ストリップの配列62を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置と比較して、顕著なQ向上(Q>10)を達成することである(例えば、図9Aのプロット176を参照)。図6Bのプロット162の場合には、間隔dBと比較して大幅に大きい幅dAのために、導電ストリップが、配列に類似するよりも、コプレーナストリップ線路の下方の導電プレートに類似し始めることになり、それによって、装置における損失が減少し、品質係数Qを向上させるという配列62の役割が弱まる。
【0069】
図6Cは、それぞれ、隣接する導電ストリップ間の4つの異なる間隔dBを有する装置を表わす、4つのプロット164、166、168、170を示しており、一方で、ストリップの長さlsは240ミクロン一定、各ストリップの幅dAは5ミクロン一定に保持されている。特に、プロット164は、5ミクロンの(すなわち、幅dAに等しい)間隔dBを反映し、プロット166は、(幅dAの2倍の)10ミクロンの間隔dBを反映し、プロット168は、(幅dAよりもはるかに大きい)20ミクロンの間隔dBを反映し、プロット170は、(幅dAよりもはるかに小さい)0.5ミクロンの間隔dBを反映する。
【0070】
ここで理解すべきことは、図6Cのプロット164は、図6Bのプロット156および図6Aのプロット150と同一である、すなわち幅dAおよび間隔dBの両方が5ミクロンであり、これらのプロットに対して、図6A、6Bのシミュレーションにおいて30GHz付近の周波数で65の最高Qが得られたことである。しかしながら、図6Cのグラフから、留意すべき興味深い点は、プロット166から、間隔dBが10ミクロン、幅dAが5ミクロンであるシミュレートされた装置において、30GHz付近の周波数において、約70のわずかに高い品質係数Qが得られることである。また、プロット166から注目すべき点は、この構成について、図6Cにおけるシミュレーションに対する最高Qとして75が、約35GHzの周波数において得られることである。
【0071】
いかなる場合にも、図6Cのシミュレーションにおいて、幅dAおよび間隔dBの寸法の両方が、コプレーナストリップ線路100の全体長さDおよび長さLCPSよりはるかに小さい。また、図6Cのシミュレートされたデバイスのそれぞれは、同様の寸法および材料を有するが、導電ストリップの配列62を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置(例えば、図9Aのプロット176を参照)と比較して、顕著なQ向上(Q>10)を達成する。図6Cのプロット170の場合には、間隔dB(0.5ミクロン)と比較して大幅に大きい幅dA(5ミクロン)によって、劇的効果のいくぶん小さいQ向上が生じるのは、やはり導電ストリップが、配列に類似するよりも、コプレーナストリップ線路の下方の導電プレートに類似し始め、それによって装置における損失を低減し品質係数Qを向上するという配列62の役割が弱まるためである。
【0072】
図7A、7B、7Cは、それぞれグラフ6A、6B、6Cのグラフに示すシミュレーションに対応する、「減速係数(slowing factor)」または位相速度減少(グラフの垂直軸)対GHz単位の信号周波数(グラフの水平軸)のプロットを示す、3つのグラフである。特に、図7Aのプロット150’、152’、154’は、図6Aのプロット150、152、154と同一のシミュレーション条件(表1参照)に対応するのに対して、図7B、7Cのプロットは、図6B、6Cのプロットと同様に対応する。図7A、7B、7Cのグラフにおいて、また本明細書の別の場所で考察したように、「減速係数」は、c/νとして定義され、ここでcは空気中での波動速度を表わし(すなわち、
【数7】
)、νは所与のシミュレートされたコプレーナストリップ線路に基づく装置内での位相速度を表わす。
【0073】
図7A、7B、7Cのグラフにおいて容易に観察されるように、表1に与えられる寸法に基づき、シミュレートされた装置のすべては、ある有意な程度の位相速度低減を示す。しかしながら、ここで興味深いことは、図7A、7B、7Cのグラフにおいて最大程度の位相速度低減を示すプロット(すなわち、プロット152’、156’、および170’)は、すべての場合において、図6A、6B、6Cのグラフにおいて最大程度のQ向上を示すプロットに、必ずしも対応しないことである(例えば、図6Aのプロット150と図7Aのプロット150’とを比較のこと)。したがって、これらのグラフは、本開示による様々なCPSベース装置を設計して、特定の用途に対して装置を「最適化する」際の、評価可能な程度の許容範囲を示している。言い換えると、本開示による装置の様々な構成要素のための具体的な寸法は、少なくとも部分的に、所与の応用における(位相速度低下に関係する)小型化および(品質係数Qに関係する)損失のそれぞれの重要性に基づいて、選択することができる。
【0074】
ここでも、理解すべきことは、図6A、6B、6C、7A、7B、7Cのグラフを得るためにシミュレートされた特定の構造は単に事例に過ぎないこと、および本開示によう様々な装置は、これらの事例に使用される、その特定の材料および寸法に限定されないことである。しかしながら、要約すると、これらのシミュレーションは、全体的に、本発明の様々な態様によるコプレーナストリップ線路に基づく装置において、大幅なQ向上および位相速度低減の両方が実現できることを実証している。また、これらのシミュレーションは、Q向上および位相速度低減を認めることのできるような装置の構成に対する注目すべきガイドラインを与える。
【0075】
図8は、本発明のさらに別の態様による装置60Aの(図5Bのそれと同様の)横断面を示す図である。図8において、装置60Aは、本質的に直線状導電ストリップの2つの配列62A、62Bを含み、配列の一方62Aは第2の面66に配置され、配列の別のもの62Bは、第1の面64および第2の面66に本質的に平行な第3の面67に配置されている。図8に示す態様の一観点によれば、配列62A、62Bの導電ストリップは、交互して配設されており、それによって第1、第2および第3の面の垂線はいずれも、配列62Aの導電ストリップおよび配列62Bの導電ストリップの両方は通過しない。図8の装置60Aに使用される複数の配列62A、62Bは、一般的に、図5A、5Bに示す装置60と比較して、さらなる位相速度低減を容易にしながら、同時に、導電ストリップの配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置と比較して、計測可能な程度のQ向上を維持する。
【0076】
図9A、9Bは、図8の複数配列装置60A、図5A、5Bの単一配列装置60、および導電ストリップの配列(複数を含む)を備えない同様な寸法のコプレーナストリップ線路装置(例えば、図3A、3Bを参照)に基づくシミュレーションの結果を比較する、それぞれ品質係数Q対周波数)、および減速係数もしくは位相速度低減対周波数の、2つのグラフを示している。具体的には、図9Aにおいて、プロット172は、単一配列装置60に対するQ対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット174は、複数配列装置60Aに対するQ対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット176は、導電ストリップの配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路装置に対するQ対周波数のシミュレーション結果を表わす。図9Bにおいて、プロット172’は、単一配列装置60に対する減速係数対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット174’は、複数配列装置60Aに対する減速係数対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット176’は、導電ストリップの配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路装置に対する減速係数対周波数のシミュレーション結果を表わす。
【0077】
図9A、9Bのグラフにおいて、ここでも、図6A、6B、6Cに表わすシミュレーションと関係して上述したものと同じ材料パラメータ(εdie、εsub、σsub)および基板厚さdsubを有する、シリコン基板およびシリコン酸化物誘電体が、すべてのシミュレートされた装置において使用されている。さらに、コプレーナストリップ線路寸法W、S、D、LCPS、tcpsは、図6A、6B、6Cに関係して上述したものと同一である。図9Aおよび図9Bの単一配列装置および複数配列装置のシミュレーションに対して、各導電ストリップの長さlsは240ミクロン、各ストリップの幅dAは5ミクロン、同一配列の隣接ストリップ間の間隔dBは5ミクロン、各導電ストリップの厚さtstripは0.64ミクロンである。図8を参照すると、複数配列装置に対して、第1と第2の面の間と同様に、第2および第3の面の間の距離dsは、1.0ミクロンであり、第3の面67と基板103の境界との間の誘電体厚さddieは、3.515ミクロンである。
【0078】
図9Aですぐにわかるように、プロット174で表わされている、複数配列装置は、(プロット172で表わされている)単一配列装置と同程度の高い品質係数Qを達成はしないが、複数配列および単一配列の装置の両方とも、プロット176で表わされている、配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路を基にする装置と比較して、ある有意なレベルのQ向上を達成する。より具体的には、(本質的にシリコン基板上のコプレーナストリップ線路を表わす)プロット176は、約5GHzから60GHzの間の周波数範囲のほとんどの部分に対して、Qは10より大幅に低いままであるのに対して、プロット172、174は、この周波数範囲のほとんどに対して、Qは10より大幅に高いままである。
【0079】
図9Bにおいてすぐにわかるように、プロット174’で表わされている複数配列装置は、プロット172’で表わされている単一配列装置よりも、大幅に高い減速係数または位相速度低減を達成する。しかしながら、ここでも、単一配列装置および複数配列装置の両方とも、プロット176’で表わされている、配列(複数を含む)を備えないストリップ線路に基づく装置と比較して、大幅な位相速度低減を達成する。
【0080】
さらに別の態様においては、異なる数および配設の導電ストリップの複数配列を、コプレーナストリップ線路と一緒に使用して、Q向上と位相速度低減の一方または両方を促進することができる。
【0081】
例えば、図10は、本質的に直線状導電ストリップの3つの配列62A、62B、62Cを使用する、本発明の一態様による装置60Bの横断面(図5Bおよび図8のそれと類似する)を示している。図10の装置60Bは、図10では第1の面64、第2の面66および第3の面67に平行な第4の面69に配置された、配列62Cを追加したことを除いて、図8に示すものと実質的と類似している。図11は、本発明の一態様によるさらに別の装置60Cの斜視図(図5Aのそれと類似する)を示しており、この装置は、導電ストリップの2つの配列62A、62Dを使用し、配列62A、62Dは、コプレーナストリップ線路100の下方および上方にそれぞれ配置されている。図11の態様の異なる観点によれば、配列62A、62Dの一方の個々の導電ストリップは、配列62A、62Dの他方の対応するストリップを垂直整列(すなわち、y軸に沿って)に配設するか、または代替的に、それらの配列の個々のストリップを交互に(例えば、図8、10に示す複数配列配設と同様に)配設することができる。その他の態様においては、1つまたは2つ以上の導電ストリップの配列を、様々な方法で、コプレーナストリップ線路100の上方および/または下方に配設することができる。
【0082】
II.コプレーナストリップ線路定常波発振器
様々な異なるデバイスに汎用的に使用することのできる、本開示によるコプレーナストリップ線路構成の様々な概念について考察したが、定常波発振器に基づく、本発明のその他の態様による例示的コプレーナストリップ線路デバイスを次に提示する。ここで理解すべきことは、以下に詳細に考察する異なる態様によれば、本発明による定常波発振器の構成は、節1に上述したように、導電ストリップの1つまたは複数の配列を備えても、また備えなくてもよいことである。
【0083】
a.背景
通信システムに加えて、その他の多数の応用の、最も基本的で普遍的な構成単位の1つは、発振器である。本質的に、すべての通信システムは、ある点において、様々な通信関係機能を促進するのに基準発振器を必要とする。その結果として、高周波方式における発振器設計は、関心の高い領域である。特に、システム周波数が劇的に増大するときに、考慮する必要のある電磁気波動効果によって、様々な伝送線路に基づく高周波発振器設計における高い関心が生じている。
【0084】
伝送線路実装に基づく様々なタイプの発振器が、従来から、ギガヘルツ(GHz)領域の高周波クロック信号を生成するのに使用されている。これらの従来型技法の多くは、重大な伝播遅延誘発位相シフトを生ずることなく集積回路システム全体に、大域的に配布することのできる、本質的に方形波のクロック信号を生成することを究極の目的としている。より具体的には、これらの技法の全般的なねらいは、システム全体を通して事象の正しい順序を保存して、システム全体にわたって伝播させることのできる、低クロックスキュー(clock skew)かつ低クロックジッター(clock jitter)の大域クロック信号を生成することである。伝送線路実装に基づく、進行波発振器(TWO:traveling wave oscillator)および定常波発振器(SWO:standing wave oscillator)の両方が、そのような目的に使用されてきた。
【0085】
定常波は、そのような波動の固有の特性が理由で、本開示に関係して特に関心の対象である。定常波は、同一の振幅と周波数を有して、反対方向に進行する2つの波動が相互作用するときに形成される。伝送線路に沿ったある位置において時間とともに変化する振幅と位相とを有する、進行波と異なり、定常波は、伝送線路に沿ったある位置において一定の振幅と位相を有し、この振幅は線路に沿った位置によって正弦波状に変化する。電圧定常波を生成する通常の方法は、入力波を伝送線路に送り込み、短絡回路などの損失なしの終端器によってそれを反射して戻す方法である。しかしながら、伝送線路導体それ自体による損失(例えば、Rによる「直列」損失およびGによる「並列」損失)によって、通常、入力波と反射波との間に振幅不一致が生じ、その結果として、定常波に歪みを与える残留進行波が生じる。したがって、自続(self-sustaining)定常波発振器を効果的に実装するためには、ある種の補償方式(すなわち、増幅)を使用して、伝送線路に固有の損失を克服する必要がある。
【0086】
コプレーナストリップ線路を使用する定常波発振器の従来式実現方法の1つを、図12に示してある。図12では、導体100A、100Bを有する、(図3A、3Bに示すものと類似の)コプレーナストリップ線路100が、そのコプレーナストリップ線路の長さの両端を短絡させて、それによってコプレーナストリップ線路の両端で電圧定常波「ノード」(すなわち、導体100Aと100Bとの間のゼロ電位)を強制することによって、半波(λ/2)共振器200を形成するように構成されている。理論的には、共振器200は、λに関係する周波数を有する、少なくとも1つの定常波をサポートし、この場合に、図12の下部に図式的に示すように、波動の振幅は、共振器の長さに沿って変化する。
【0087】
図12の発振器構成において、コプレーナストリップ線路導体損失の信号振幅に与える影響は、共振器の長さに沿って間隔を空けて配置した分布増幅器(すなわち、相互コンダクタ(transconductor))を備えて、分布相互コンダクタンス(distributed transconductance)を与えることによって、相殺することができる。特に、図12は、3つのそれぞれの電流源106A、106B、106Cによって給電される、ある数のNMOSクロスカップル型ペア(cross-coupled-pair)相互コンダクタ104A、104B、104Cを示している。これらの相互コンダクタのそれぞれは、コプレーナストリップ線路100の導体100A、100Bに、コプレーナストリップ線路に沿った異なる位置において結合されている。ある数のPMOSダイード接続負荷108A、108B、108Cも、コプレーナストリップ線路100に結合されて、導体100A、100Bの間の同相モード電圧を設定する。
【0088】
ここで留意すべきことは、図12の構成において、相互コンダクタ104A、104B、104Cは、同一のゲインを有するように構成されていることである。所与の相互コンダクタのゲインは、相互コンダクタを構成するトランジスタの幅を乗じた(すなわち、トランジスタゲインは、幅および/または電流の増加と共に増加する)、相互コンダクタに関連する電流源(電流源106A、106B、106Cの内の1つ)によって供給される電流に関係している。図12に示す発振器構成において、クロスカップル型ペアの各トランジスタは同じ幅を有して、各トランジスタには同じ電流が供給され、したがって相互コンダクタはすべて同じゲインを有する。コプレーナストリップ線路上の損失を補償するために、複数同一ゲイン相互コンダクタを使用することによって、そのようなコプレーナストリップ線路のための等価集中モデル(equivalent lumped model)が可能となり、このモデルによって、所与の周波数において発振をサポートするのに必要な発振器パラメータの比較的簡単な決定が可能となる。
【0089】
しかしながら、図12の構成における、同一ゲインを有する複数相互コンダクタを使用することから発生する1つの問題は、議論の余地のある大きなエネルギーが、過剰増幅によって浪費されることである。より具体的には、ふたたび図12の下部の波動図を参照すると、すぐに理解されることは、図示した波動モードに対して、波動の振幅は、共振器構造の中心付近で最大値を有し、中心から離れて共振器の両端に近づくにつれて着実に減少することである。したがって、図示したモードをサポートするために、共振器の中心に位置する相互コンダクタンス104Bと同じ源を有するように構成されている相互コンダクタ104A、104Cが、必要とされるよりも高い増幅のために構成されていることに問題があり、特に、これらの相互コンダクタは、必要以上の電流を使用し、それによって貴重な電力源を浪費する。
【0090】
図12の発振器構成から生じる別の問題は、この共振器は、いかなるモード制御機構(例えば、高次モードの抑制)も使用しないことである。その結果として、この構成には、強い高周波モードを加振する傾向がある。この構成においてモード制御が欠如すると、複数の高周波モードの存在によって基本共振周波数における正弦波形に歪を与えるので、最後には、生成される正弦波信号の品質が劣化する。
【0091】
例えば、図12に示す共振器構造の長さに沿って均等に分布する等ゲイン増幅器は、理論的には、図12に示すλ/2におけるモードに加えて、λ、(3/2)λ、(5/2)λ、3λ、などのその他の奇数の高調波(harmnonics)をサポートすることができる。具体的には、各増幅器は、高周波モードをサポートすることのできる電気的な解放ノード(open node)として作用することができる。この方法においては、図12の共振器は、正弦波形生成に対して最適化されていない。この状態は、多くの用途に対して望ましくない。しかしながら、ここで理解すべきことは、図12に示す共振器の最終的な使用は、本質的方形波クロック生成器のためであるので、いくつかの高次モードの存在は、そのようなクロック信号を生成することに対する、共振器の全体性能に実質的に影響を与えない場合もあることである。
【0092】
本出願者らは、コプレーナスプリット線路実装に基づく、従来型の定常波発振器(SWO)を、修正、改善して高品質、高周波正弦波信号の生成を容易にすることができることを認識、理解した。本開示で考えるSWOによって生成される正弦波信号の全体周波数範囲は、約1GHzから100GHzまでの周波数を含むが、本開示は、この点において限定はされないことを理解すべきである。以下においてさらに考察する本発明の様々な態様によれば、単一モードSWOは、これらの事例的周波数範囲において、低電力消費かつ低位相ノイズの正弦波を生成するように、個別に構成することができる。そのような発振器に対するいくつかの企図される応用としては、それに限定はされないが、無線通信、レーダ、様々な応用のための位相ロックループ(PLL)、その他が挙げられる。
【0093】
b.四分の一波長コプレーナストリップ線路定常波発振器
図13A、13Bは、本発明の一態様によるコプレーナストリップ線路SWOの基礎となるいくつかの基本概念を示す。特に、図13Aは、差分コプレーナストリップ線路(すなわち、図3A、3Bのコプレーナストリップ線路と類似のもの)を形成する導体300A、300Bを含む、本質的に四分の一波長(λ/4)のコプレーナストリップ線路SWO300を示している。SWO300は、長さLのコプレーナストリップ線路(参照番号301)によって形成され、コプレーナストリップ線路の一端は短絡302で成端され、線路の他端は、増幅器304として働く一対のクロスカップル型インバータによって成端されている。この態様の別の観点において、増幅器304は、図12に示すのと類似の方法で、電流源によって駆動される、NMOSクロスカップル型相互コンダクタ対によって実装することができる(図面を分かりやすくするために、NMOSトランジスタおよび電流源は、図13Aには明示的には示さず、クロスカップル型インバータによって図式的に表わしてある)。そのような増幅器は、DCエネルギーをRFエネルギーに変換し、このエネルギーを回路に投入してコプレーナストリップ線路に関する損失を補償する、能動的正帰還(active positive feedback)ネットワークを形成する。
【0094】
図13Aに示すSWO300は、コプレーナストリップ線路の両端において境界条件を満足する定常波をサポートする、すなわちコプレーナストリップ線路の増幅器端において最大電圧振幅揺れ(voltage amplitude swing)を有し、かつ線路の短絡端においてゼロ電圧ノードを有するように構成されている。したがって、コプレーナストリップ線路の長さLに基づく可能な加振モードは、理論的にL=λ/4+n(λ/2)(n=0,1,2,3...)に対応する。実際の実装においては、加振モードをサポートする実際の長さLは、以下にさらに考察する多様な理由のいずれかで、理論長とわずかに異なる場合がある。発振の基本周波数f0は、n=0に対応し、すなわちf0=ν/(4L)であり、ここでνは、コプレーナストリップ線路を包囲する材料とそれを構成する材料の両方によって決まる、波動の位相速度である。
【0095】
図13Bは、SWO300によってサポートされる基本モードに対して、それぞれ図中でV(z)およびI(z)で示されている、SWO300の長さに沿った電圧波および電流波を図式的に示している。図13Bのグラフは、SWOの長さに対応するz軸に沿って示してあり、ここでz=0は、増幅器304の位置に対応し、z=Lは短絡端の位置に対応する。図13Bからすぐにわかるように、電圧振幅揺れV(z)は、図面の左側(z=0)で最大であり、右側に動いて、短絡端(z=L)に到達するとゼロに減少するのに対して、電流I(z)は、反対の要領で挙動する;すなわち、電流は左側で最小であり、右側に動くにつれて増大し、コプレーナストリップ線路の短絡端で最大となる。この態様の一観点によれば、SWOの出力は、増幅器304の両端で取り出すことができ(すなわち、最大電圧振幅揺れの点)、この場合に、出力はSWOへの負荷を低減するために適当にバッファリングされる。
【0096】
c.分布/専用ゲインセルを備える定常波発振器
図13Aに示す(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO300に基づく本発明の別の態様を、図14Aに示してあり、これは分布増幅に関する。しかしながら、ここで理解すべきことは、この態様と関係して考察する概念は、本明細書において考察するように、本発明による他の様々なSWO構成に実装することができることである。したがって、四分の一波長SWOに関係して以下で考察する特定の事例は、一義的に説明の目的で提示するものである。
【0097】
この態様の説明を容易にするために、図13Bに示す電圧波形を、図14Bにおいて再生してある。図14Aの態様において、複数の増幅器または「ゲインセル」304A、304B、304C....304Dが、コプレーナストリップ線路の長さに沿って展開されている。図14Aは、4つのそのような増幅器を明示的に示しているが、ここで理解すべきことは、本発明によるSWOには異なる数の増幅器を使用できるので、本発明は、この点で限定されないことである。また、増幅器は図14Aに、コプレーナストリップ線路に沿って等間隔で配置されているように図式的に表わしてあるが、異なる態様によれば、増幅器対して様々な位置が可能であるので、本発明は、この点においても限定はされない。一般に、ここで理解すべきことは、本発明の様々な態様による、増幅器の数と配置に加えて、増幅器のそれぞれのゲインは、以下にさらに考察するように、少なくとも部分的には発振器によって加振される1つまたは2つ以上の所望のモードによって決めることができることである。
【0098】
例えば、図14Aに示す態様の一観点によれば、増幅器のそれぞれのゲイン間の関係は、増幅器を展開するコプレーナストリップ線路に沿った異なる位置における、所望の定常波モードの期待される電圧振幅間の関係を近似するように、調整されている。例えば、図14Bを参照すると、図示した定常波モードの電圧振幅は、コプレーナストリップ線路の長さに沿って左から右へと減少するので、増幅器のそれぞれのゲインG1、G2、G3...Gnも、コプレーナストリップ線路に沿って左から右へと(すなわち、z=0からz=Lに動いて)減少する。このように、この事例における増幅器のゲインは、「振幅依存」である。
【0099】
図14Aに示す態様においては、分布増幅のいくつかのよく知られた便益(例えば、周波数応答の増大)を達成しながら、同時に、振幅のゲインを調整することによって貴重な電力源を保存することができる。ここで思い起こすべきことは、図12に示す従来型SWO実装においては、複数の分布増幅器は、増幅器展開位置における電圧振幅が異なるにもかかわらず、同じゲインを有するように構成されており、それによって、この従来型構成においては、大きなエネルギーが過大増幅によって浪費されることに問題があることである。それとは異なり、本発明による、専用ゲイン増幅器を使用する図14AのSWO実装では、動作のたに必要な合計電流は、複数同ゲイン増幅器を使用する類似の実装よりも少なく、それによって貴重な電力源が保存される。
【0100】
さらに、図14Aに示す態様の複数専用ゲイン増幅器は、さらに、(例えば、λ/4に対応する)実質的に単一モードでの発振を確実にする、モード制御機構として機能する。このことは、やはり、理論的にはある数の他のモードをサポートすることが可能であり、それによって発振器によって生成される信号の正弦波品質を低下させる、図12に示す複数の同ゲイン増幅器従来型構成とは対照的に異なっている。
【0101】
図13Aの態様(1つの集中増幅器)と図14A(分布増幅器)を比較、対照するために、約1500ミクロンの長さを有するコプレーナストリップ線路を使用する、これらのSWOの事例的実装を分析した。図14Aに対応する事例的実装において、4つの増幅器が、コプレーナストリップ線路に沿って使用され、z=0、z=L/4、z=L/2、およびz=3L/4の等間隔で配置されている。ここで留意すべきことは、上述のように、所与の増幅器のゲインは、トランジスタの大きさと消費される電流の積の平方根に比例することである。増幅器において使用されるトランジスタのすべては、長さが0.18ミクロンである。増幅器ゲインを決定する、トランジスタ幅および各増幅器による電流消費は、それぞれ以下のとおりである。
【0102】
【表2】
この実装形態においては、SWOは、12.19GHzで発振し、最大電圧振幅は、z=0において、2.09ボルトである。
【0103】
図13Aに対応する事例的実装において、単一増幅器304のゲインは、図14Aに対応する実装において使用される、分布増幅器の合計集中ゲインに等しく選択される。より具体的には、増幅器304のトランジスタの長さはやはり0.18ミクロンであり、トランジスタ幅は、22.5[1+sin(3π/8)+sin(π/4)+sin(π/8)]ミクロンで与えられる。同様に、増幅器によって伝えられる全電流は、12[1+sin(3π/8)+sin(π/4)+sin(π/8)]ミリアンペアである。このSWOは、9.76GHzで発振し、最大電圧振幅は、z=0において2.27ボルトである。したがって、図13Aに基づく事例的集中増幅器SWOは、より高い振幅を達成するのに対して、図14Aに基づく事例的分布増幅器SWOは、評価可能な程度に高い動作周波数を達成する。
【0104】
e.テーパー付きコプレーナストリップ線路を使用する定常波発振器
図15Aは、本発明による(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO500の別の態様を示し、ここでSWOは、位置依存線路パラメータを有するテーパー付きコプレーナストリップ線路に基づいている。図15Aに示す、テーパー付き構成を使用するSWO500の態様の説明を容易にするために、図13Bに示した(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOに対する電圧および電流の波形を、図15Bに再生した。しかしながら、ここで理解すべきことは、この態様と関係して考察した概念は、本明細書において考察したように、本発明による他の様々なSWOに実装可能であることである。したがって、本質的に四分の一波長のSWOに関係する、これから後に考察する特定の事例は、一義的に、説明の目的で提示するものである。さらに、以下で考察するように、本発明によるテーパー付きコプレーナストリップ線路構成は、SWOでの使用の用途に限定されるものではなく、その他のCPSベースデバイスにおいて使用できることを理解すべきである。
【0105】
1.位置依存パラメータを備えるコプレーナストリップ線路
本発明の一態様は、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが、コプレーナストリップ線路に沿った位置の不連続または連続的な関数(すなわち、R(z)およびG(z))となるように形成されている、コプレーナストリップ線路を目的としている。この態様の一観点においては、RおよびGが変動するにも関わらず、一様な特性インピーダンスが実質的に維持されるように、コプレーナストリップ線路をさらに構成して、局所反射を回避するようにすることができる。
【0106】
この態様の1つの事例的実装形態においては、例えば図15Aに図示するSWO500に示すように、テーパー付きコプレーナストリップ線路が使用され、コプレーナストリップ線路導体500A、500B間の間隔504、および/または各導体500A、500Bの幅502は、コプレーナストリップ線路に沿った位置zの関数として不連続または連続的に変化する。図15Aは、テーパー付き構成の上面図(図3Bと同様)であり、ここで図15Aの間隔504は相応に記号S(z)で表わし、幅502は相応して記号W(z)で表わしてある。その他の点においては、テーパー付き構成500は、図3Aの横断面図に示すものと同様にしてもよい;すなわち、導体500A、500Bは基板上方の誘電体上に配置してもよい。図15Aにおける導体500A、500Bのテーパー付き構成は、コプレーナストリップ線路の長さに沿ったコプレーナストリップ線路パラメータR、Gを効果的に変化させ、その結果、それらは位置依存となり、同時に、コプレーナストリップ線路の一様な特性インピーダンスが効果的に維持される。
【0107】
特に、単位長さ当り抵抗Rは、一般的にはよく知られたスキン効果に関係し、この場合に、高周波において、電荷担体が縁端近く、かつ所与の導体の芯から離れて移動する。コプレーナストリップ線路を構成する2つの導体が、互いにより接近させられる(すなわち、距離Sが減少および/または導体幅Wが増大する)ので、導体の縁端または「表皮」付近を流れるそれぞれの電荷が互いにより接近させられて、それによって電荷流を妨げる。したがって、導体が互いにより接近させられると、一般に、単位長さ当り抵抗Rが増大する。
【0108】
単位長さ当りコンダクタンスGは、導体と、コプレーナストリップ線路がその上方に配置されている基板との間の、電磁場損失に一般に関係する。特に図3Aに示すコプレーナストリップ線路横断面を再び参照すると、コプレーナストリップ線路の導体が互いに離れる方向にさらに移動すると(すなわち、距離Sが増大かつ/または導体幅Wが減少すると)、導体中を流れる電流による磁場が、コプレーナストリップ線路がその上方に配置されている基板と相互作用する機会が増大し、それによって、単位長さ当りコンダクタンスGが増大する。逆に、導体が互いにさらに接近させられると(すなわち、距離Sが減少、かつ/または導体幅Wが増大すると)、基板への損失は一般に減少し、したがって単位長さ当りのコンダクタンスGは減少する。
要約すると、前述のことから、上記の事例におけるコプレーナストリップ線路パラメータR、Gは、一般に導体間隔と逆に変化すること、すなわち導体がより接近させられると、Rは増大しGは減少すること、逆に導体がより大きな距離だけ隔てられると、Rは減少しGは増大することを理解すべきである。
【0109】
2.SWOに対する位置依存パラメータの意味
コプレーナストリップ線路全般上の信号伝播ついて、Rは電流波への結合とみなすことができるのに対して、Gは電圧波への結合とみなすことができ、それぞれ直列損失および並列損失を導入する。したがって、小さなRは少ない直列損失に対応し、小さなGは少ない並列損失に対応する。この直列損失Rと並列損失Gとの間のトレードオフは、それらが導体間隔に対して逆変化するために、進行波を搬送するコプレーナストリップ線路における損失最小化に対して、重大な制約を課す可能性がある。しかしながら、図15Bに示すように、コプレーナストリップ線路が定常波のホストとなる場合には、図15Aに示すテーパー付き構成500を介してR−Gトレードオフを活用して、位置依存定常波振幅を利用することによって、大幅に損失を低減すること(および結果として得られるデバイスの品質係数Qを対応して向上させること)が可能である。
【0110】
例えば、図15Bから、図15AのSWO500の電圧振幅揺れが最大となる、z=0において、単位長さ当りコンダクタンスGが低いと、基板への電力損失は、(z=0において比較的高い)電圧の2乗に単位長さ当りコンダクタンスを乗じたものに比例するので、基板への電力損失が少ない結果となる。したがって、この点において比較的電圧が高い場合でも、基板への損失は、低い単位長さ当りコンダクタンスGを有するコプレーナストリップ線路構成を備えることによって、低減することができる。一方、z=0において、図15Bは、コプレーナストリップ線路の導体内を流れる電流は最小値であり、したがって、コプレーナストリップ線路導体による(すなわち、単位長さ当り抵抗Rによる)電力損失は問題ではなく、その理由は、この電力損失は、(z=0において比較的低い)電流の2乗に単位長さ当り抵抗Rを乗じたものに比例するからである。したがって、この点においてRが高い場合でも、低い電流のせいで、必ずしも重大な損失を誘発するわけではない。
【0111】
反対のシナリオが、z=L(すなわち、図15Aに示すコプレーナストリップ線路の短絡端)に対して成り立つ。特に、図15Bに示すように、この点において、電圧はゼロであり、電流は最大となる。したがって、コプレーナストリップ線路におけるこの点において大きな単位長さ当り抵抗Rを有すると、高い電流のせいで大幅な損失を生ることになるが、それに対して、単位長さ当りコンダクタンスGは、低い電圧(すなわち、ゼロ電圧ノード)のせいで、問題となることは比較的少ない。
【0112】
前記のことを考慮して、本発明の一態様は、変化する単位長さ当り抵抗R(z)および変化する単位長さ当りコンダクタンスG(z)を有するコプレーナストリップ線路を含む、四分の一波長SWOを目的としており、これにおいては、低い単位長さ当りコンダクタンス(低G)の領域が、最大電圧振幅が予期される点z=0に位置し、それによって基板への電力消費が低減される。さらに、SWOは、低い単位長さ当り抵抗(低R)のコプレーナストリップ線路領域を、最大電流が予期される点z=Lに位置するように構成される。図15AのSWO500は、そのような配設の一例となる。一般に、この態様によれば、定常波から生ずる位置依存性の電圧および電流の振幅は、固定位置振幅に基づいてパラメータRおよびGを適当に調整することによって、デバイス損失を低減すること(および対応するQの向上)を容易にする。
【0113】
この態様(に加えて他の態様)において使用されるテーパー付きコプレーナストリップ線路構成は、多数の異なる方法で実装することができる。例えば、一観点によれば、コプレーナストリップ線路の全体長さは、それぞれが異なるRおよびGを有する、ある数の等しいまたは異なる長さの区画部分(section)に分割してもよく、この場合に、LおよびCは一定に維持されて、実質的に一様な特性インピーダンスを維持して効果的に局所反射を防止する。代替的に、コプレーナストリップ線路を、徐々にテーパーの付いた導体間隔および幅を設けて実装して、RおよびGがコプレーナストリップ線路に沿った位置によって徐々に変化するようにして、同時にやはり実質的に一様な特性インピーダンスが維持されるようにしてもよい。
【0114】
図16は、ストリップ線路の特性インピーダンスZを大幅に変えることなく、コプレーナストリップ線路に沿ってRとGを変化させる、本発明の一態様による方法を説明する、グラフおよび対応する事例的テーパー付きコプレーナストリップ線路構成505を含む。この態様の一観点によれば、図16のグラフは、ストリップ線路の長さに沿ってストリップ線路の幅Wおよびストリップ線路導体間の間隔Sを変化させることに基づく、コンピュータシミュレーション(例えば、Sonnet EM)によって得られるデータから編集することができる。したがって、図16のグラフの水平軸は、幅Wを表わし、グラフの垂直軸はストリップ線路の導体間の間隔Sをあらわす。
【0115】
図16のグラフは、3つの事例的「一定特性インピーダンス等高線」Z0,1、Z0,2、Z0,3のプロットを含み、特に、これらの等高線のそれぞれは、異なるWおよびSの値に対して、異なる一定の特性インピーダンスを表わし、ここでZ0,3>Z0,2>Z0,1である。図16は、また、3つの例示的「損失等高線」(R1,G1)、(R2,G2)、(R3,G3)のプロットを含み、ここで各損失等高線は、WおよびSの異なる値に対して、Rの一定値、および対応するGの一定値を反映する。図16のグラフは、損失等高線のそれぞれを、RとGの両方に対する同一の一定値を表わす単独線として表わしているが、実際には、所与の損失等高線に沿ったRおよびGのそれぞれの値は同一ではないが、それでも相応に互いに近似している。したがって、図16のグラフにおいて、各損失等高線に対してRおよびGの値は実質的に同一であると仮定するのは、実際的な設計目的では合理的な近似である。
【0116】
図16に示すように、WまたはSのいずれかを増大させると、上述したR−Gトレードオフのせいで、Rが減少し、Gが増加する結果となる(すなわち、R3>R2>R1およびG3<G2<G1)。しかしながら、特性インピーダンスZ0は、Sが増大すると増大するが、Wが増大すると減少する。したがって、z=0付近で低G、およびz=Lで低Rを達成して、大幅にZ0に影響を与えることなく損失を低減するためには、図16に示すZ0等高線の1つに追従して、コプレーナストリップ線路導体を、同時に、z=0からz=Lまで幅を広げ、かつ離れる方向に移動させてもよい。
【0117】
前述の概念を説明するために、図16のグラフから、本質的に一定の特性インピーダンスZ0,2を有する、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成の設計を一例として考える。ここで理解すべきことは、この事例の基礎となる方法は、以下に考察するように、結果として得られるデバイスの所望の特性インピーダンスを表わす、その他の特性インピーダンス等高線に同様に適用することができることである。
具体的には、図16の一定特性インピーダンス等高線Z0,2を参照して、3つの点A、B、Cを、Z0,2等高線に沿って、この等高線と損失等高線(R3,G3)、(R2,G2)、(R1,G1)とのそれぞれの交点で、識別する。やはり図16の事例に示すように、点A(すなわち高R、低G)に対応する寸法WAおよびSAを、テーパー付きストリップ線路505のz=0の周辺の部分で使用し、点Bに対応する寸法WBおよびSBを、ストリップ線路の中央付近の部分で使用し、点C(すなわち低R、高G)に対応する寸法WCおよびSCを、ストリップ線路のz=Lの周辺の部分で使用する。
【0118】
前述の事例は、特性インピーダンス等高線Z0,2に沿って、3つの基準点A、B、Cを使用して、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成505に沿った対応する寸法を決定するが、ここで理解すべきことは、本発明はこの点において限定されるものではなく、すなわち、所与の特性インピーダンス等高線に沿って任意の数の点を使用して、テーパー付きコプレーナストリップ線路に沿った、対応する寸法を決定することができることである。特に、点の数が増加するにつれて、結果として得られるテーパー付きコプレーナストリップ線路は、RおよびGが本質的にストリップ線路に沿った位置zの連続的関数である線路に、次第に類似してくる。しかしながら、ここで理解すべきことは、所与のインピーダンス等高線に沿って実質的に任意有限の数の点に対して、区分テーパー付き構成(piecewise tapered configuration)が生成され、この構成においては、RおよびGがストリップ線路に沿って不連続に(すなわち、区分毎に)変化することである。
【0119】
図17は、そのような区分変化の概念をさらに説明している。特に、図17は、一定特性インピーダンスZ0を表わす例示インピーダンス等高線のプロットを示すW−S空間におけるグラフを含む(図17のグラフにおけるW−S軸は、図16のそれらと入れ替えられていることに注意のこと)。図17のグラフの直下に示す、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路構成505の5つの異なる部分または区画部分に対する、それぞれのWおよびS寸法に対応して、5つの点(1、2、3、4、および5)がこの等高線に沿って選択される(例示的寸法W5およびS5を、区画部分5に対して図17に示してある)。図17の事例においては、5つの点を選択するが、ここでも理解すべきことは、他の態様においては、異なる数の点を選択してもよいことである。また、図17に定性的に示してあるように、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路の各区画部分1〜5のz軸に沿った長さは、ストリップ線路の1つまたは2つ以上のその他の区画部分と同じであっても、なくてもよく;特に、様々な態様によれば、テーパー付きコプレーナストリップ線路の全長に対する各区画部分1〜5の最適配分は、(以下に詳細に考察する)数学的手順で決定してもよく、かつ随意に経験的判定によって調節してもよい。
【0120】
より具体的には、図16および図17に示す区分テーパー付き構成のいくつかの態様において、損失考察によって、区分構成における各区画部分特有のそれぞれの長さおよび位置を指定することもできる。例えば、一態様において、テーパー付き構成の全体損失を最少化するために、各区画部分を、所与の位置zでの定常波電圧および電流の振幅が与えられると、その位置において最少局所損失が生じる、所定の位置に配置することもできる。
【0121】
しかしながら、zドメインにおける定常波振幅(すなわち、V(z)およびI(z))は、テーパー付きコプレーナストリップ線路構造自体に依存するので(したがってストリップ線路の構築以前には未知であるので)、zドメインの透視視点(perspective)で見た、損失最適化テーパー付きストリップ線路の設計と構築は、一般に、いくぶん困難で、時間がかかり、そしておそらく高価な反復技法を必要とする。前述のことを考慮して、出願者らは、テーパー付きストリップ線路構成の設計および構築は、θを波動位相とする、θドメインの透視視点からの設計を考えることによって、大幅に容易化することができることを認識し、理解した。
【0122】
特に、以下に詳細に考察するように、θドメインにおける定常波電圧および電流の振幅は、実際的な目的では、(弱い損失を仮定して)単純正弦波であると考えてもよく、したがって、zドメインからθドメインへの変換を適用すると、設計のための損失解析が大幅に簡略化される。θドメインにおける区分テーパー付き構成の設計後に、逆変換を適用して、zドメインにおける設計パラメータを与えてもよく、これは、テーパー付き構成を物理的にレイアウトするための実際寸法(すなわち、z軸に沿った区画部分長)を得るために必要である。以下の考察においては、このプロセスをステップごとに詳細に述べる。
【0123】
単一定常波モードのホストとなる、一定特性インピーダンスを有する、一般的テーパー付き(位置依存性)コプレーナストリップ線路における、全体時間平均損失Pdissは、次式:
【数8】
によって与えられ、ここで、Lは線路の水平スパン、I(z)およびV(z)は、位置zにおける定常波モードの電流および電圧の振幅であり、R(z)およびG(z)は、zにおける、単位長さ当たりの直列抵抗および並列コンダクタンスである。最小損失テーパー付き線路を得るために、上述したR−Gトレードオフの拘束の下に、式(I)におけるPdissを最小化するR(z)およびG(z)を見出す必要がある。しかしながら、I(z)およびV(z)はストリップ線路の物理的構造に依存し、その構造はまだ決定されていないことから、先験的には未知であるので、式(I)の積分を求めるのは非常に困難である。したがって、zドメインにおける設計プロセスには、ある種の循環論理(circular argument)を必要とし、特に、時間のかかる反復技法が必要となり、最適化過程を非常に複雑で高価なものにする可能性がある。
【0124】
本発明の一態様によれば、式(I)の計算は、積分変数zを波動の位相θに置き換える変換によって、実質的に簡略化される。第1に、無限小の数の均一なセグメントを有する区分テーパー付き構成を考える。各区分構成のそれぞれの均一なセグメントの長さはdzであり、そして同一特性インピーダンスはZ0である。zとz+dzの間に位置する無限小の均一線路セグメントを伝わると、波動は、dθの無限小の位相変化を受けて、ここでdθとdzは、dθ=β(z)dzによって関係づけられる。
【0125】
ここでβ(z)は、無限小均一セグメント内の移動波の伝播定数であり、よく知られた式:
【数9】
で与えられ、ここで
【数10】
は、無限小均一線路セグメントにおける波動の位相速度であり、L(z)およびC(z)は、無限小均一セグメントにおける単位長さ当たりインダクタンスおよびキャパシタンスであり、そしてωはモード周波数である。上記の関係にβ(z)=dθ/dzを代入すると、θとzとの間に次の関係が得られる。
【数11】
【0126】
ふたたび、均一線路の場合には、θ(z)は、よく知られた関係
【数12】
に簡略化され、ここでβは位相定数、2π/λである。しかし、不均一な線路においては、波動位相速度
【数13】
は、zと共に変化することがあり、したがってθ(z)は線形関数ではない。
zからθ(z)へのマッピングは有用であり、その理由は、一定の特性インピーダンスZ0を有するいずれの汎用伝送線路においても、定常波モードに対する電圧及び電流の振幅は、弱い損失を仮定して、いつも位相θ(z)の正弦曲線であるからである。したがって、これらの振幅は次式のように書き換えることができる。
【数14】
【0127】
θへのパラメータ表示を用いて、式(I)からの電量消費式は、線路長が、(本質的に四分の一波長SWOに対して)π/2位相シフトを生成するように選択されると仮定して、次式:
【数15】
のように書き換えることができる。ここで、Rθ(θ)およびGθ(θ)は、θにおけるラジアン位相シフト当たりの直列および並列損失として定義され、次式:
【数16】
によってR(z)およびG(z)に関係づけられ、ここでdzとdθとの間の関係は、式(3)または(4)から得ることができる。式(7)における積分は、電流および電圧定常波形が、特定のテーパー付きストリップ線路構成と無関係に、θドメインにおいては常に既知の正弦曲線であるので、比較的容易である。
【0128】
上述のことを考慮すると、図17と関係して上記で考察した概念に基づく、区分構成の特定の事例を用いて、本発明の一態様による、zドメインからθドメインへの変換を使用する設計に対する、最適化プロセスを説明することができる。ふたたび図17に示す、特性インピーダンス等高線を参照して、Z0=25オームの事例的特性インピーダンスに基づいて、損失パラメータが、等高線に沿った5つの点(点1〜5)に対してシミュレートされた。以下の表2は、このシミュレーションの結果が記載されており、各区画部分に対するストリップ線路のW−S寸法に加えて、対応する損失パラメータRθおよびGθを示している。
【表3】
【0129】
5つの区画部分のそれぞれに対してθドメインにおける損失パラメータが得られると、各区画部分が、テーパー付き構成の全体損失を最小化するために寄与すべき、位相変化の量を求めることができる。一態様によれば、このことは、θドメインの各点において(すなわち、0≦θ≦π/2)、5つの区画部分の内のいずれが、そのローカル点において単位位相シフト当たりの損失を最少化するかを計算することによって行うことができる。単位位相シフト当りの損失は、式(7)における損失積分の被積分関数である:
【数17】
【0130】
図17を参照すると、z−θ変換を説明する目的で、z軸は、θ軸ともラベル付けしてあるとともに、移行点(θ1,z1)、(θ2,z2)、(θ3,z3)、および(θ4,z4)を、区画部分間の境界に示してある。区画部分間の移行点θ1、θ2、θ3およびθ4は、式(10)を用いて、1つの区画部分の単位位相シフト当たり損失と、次の区画部分のそれとを等化することによって計算することができる。例えば、θ1は次式:
【数18】
によって計算可能であり、ここでRθ,1およびRθ,2は、それぞれ区画部分1、2に対する単位位相シフト当りの直列抵抗である(表2から)のに対して、Gθ,1およびGθ,2は、それぞれ区画部分1、2に対する単位位相シフト当りの並列コンダクタンスである(やはり、表2から)。この計算から、表2に与えられた特定の例に対して、θ1=22.9°が得られる。したがって、区画部分1は、θ<θ1=22.9°に対して、区画部分2よりも低い単位位相シフト当り損失を有し、区画部分2は、θ>θ1=22.9°に対して、区画部分1よりも低い単位位相シフト当りの損失を有する。したがって、1つの事例的設計においては、区画部分1は、テーパー付きストリップ線路構成の最初の約22.9°に広がり、22.9°点において、区画部分2への移行がなくてはならない。その他の区画部分の位相スパンおよび対応する移行点θ2、θ3、およびθ4は、同様に求めることができる。例えば、上記のように式(10)をθ2に適用すると、θ2は39.8°であるとわかり、したがって区画部分2の位相スパンは約17°(すなわち、θ2−θ1)である。
【0131】
式(10)によってθドメインにおける、各区画部分間の移行点(したがって各区画部分のスパン)を得ると、次いで、これらの値を、zドメインに変換して、対応する移行点z1、z2、z3、z4(図17を参照)、したがって区分設計の異なる区画部分のそれぞれの物理的長さが得られる。この目的で、図17を参照すると、i番目の区画部分(i=1,2,3,4,5)の物理的長さは、zドメインにおいてΔzi=zi−zi−1によって与えられ、これは、θドメインにおいて位相スパンΔθi=θi−θi−1に対応する。上記の式(3)を使用して、これらの2つの量は次式:
【数19】
で関係づけられ、ここでLiおよびCiは、i番目の区画部分に対する単位長さ当たりのインダクタンスおよびキャパシタンスであり、EMシミュレーションから既知である。したがって、式(11)を使用して、zドメインにおける各区画部分の長さを求めて、θドメインからzドメインへの設計の変換を完了することができる。
【0132】
この態様の別の観点によれば、上記に概説した方法における任意選択のさらなるステップとして、上記の手順によって各区画部分の物理的長さが決まると、移行点z1、z2、z3、z4付近の実際のストリップ線路配置を平滑化し、それによって線路が、本質的に連続なテーパー付き構成をさらに近似するか、またはそのようになるようにしてもよい。したがって、WおよびSの値は、シミュレートされた元の選択点の内挿となる。上述のように、ここで理解すべきことは、区分設計のために、より多くの点/区画部分を選択するほど、これらの内挿値は精度よく最適化される。
【0133】
この点において、テーパー付きストリップ線路を使用するSWO設計に対して、区分テーパー付き設計を、図式的にシミュレートすることによって、図15Aに示す増幅器304に関連する境界条件を考慮するために設計において必要とされる、調整を決定することができる。増幅器のトランジスタは、コプレーナストリップ線路それ自体の位相シフトに対して追加の位相シフトを効果的に導入する。したがって、SWOが、目標周波数に対応する四分の一波長にまたがるコプレーナストリップ線路を使用してシミュレートされる場合には、実際の発振周波数はこの目標よりも低くなることがある。
【0134】
したがって、この態様の一観点において、増幅器の装荷効果(loading effect)を補償するために、ストリップ線路構成を、シミュレーション発振周波数が目標周波数に達するまで、短縮してもよい。例えば、目標発振周波数が20GHzである場合で、かつシミュレーション発振周波数が、15°に相当する位相シフトをストリップ線路から除去するまで20GHzに達しない場合には、この15°を、配置において線路の始めから削除してもよい。図17および表2と関係して上述した特定の事例においては、区画部分1の位相スパンパラメータΔθ1を、22.9°から7.9°に短縮して増幅器装荷の効果を考慮することができる。このような修正を図17に示してあり、この図では、区画部分1の斜線を施して「X」印をつけた部分507が、ストリップ線路から除去される。
【0135】
要するに、ここで理解すべきことは、図17および表2で与えられる特定の事例に関係して上記に概説した、本発明の一態様による、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路構成の設計手順は、一義的に説明の目的で提示するものであること、および本開示はこの事例に限定されないことである。特に、この設計手順の基礎となる顕著な概念は、図17Bに示す方法フロー図を参照して、一般的に以下のように規定することができる:1)区分テーパー付き構成に対する特性インピーダンスZ0を選択;2)区分テーパー構成に含める区画部分の数を選択(すなわち、図16および図17に示すものと同様な等高線グラフにおける点の数を選択);3)各区画部分に対して、θドメインにおいて、式(8)および式(9)に基づいて損失パラメータRθ、Gθを求める;4)式(1)に基づいてθドメインにおいて区画部分間の移行点を求める;さらに5)式(11)に基づいて、θドメインの移行点(または位相スパン)をzドメインに変換して、異なる区画部分のそれぞれの物理的長さを求める。任意選択の追加ステップとして、各区画部分の物理的長さが求まると、移行点を、幅Wおよび間隔Sの内挿によって平滑化してもよい。さらなる任意選択として、区分テーパー付き構成に基づくSWO設計に対して、増幅器装荷効果を、(例えば、図17Aに示すように)ストリップ線路の全体長を短縮することによって補償してもよい。
【0136】
ここで理解すべきことは、図15A、16、17、17Aに図示した、事例的テーパー付きコプレーナストリップ線路構成は、本質的に(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOに基づいているが、本発明はこの点において限定はされないことである。特に、様々な寸法上のプロファイルを有する、テーパー付き伝送線路構成は、デバイスに沿った異なる点において異なるR値および/またはG値が望ましい、異なる種類のデバイスに対して実装することができる。一般に、本発明の様々な態様による、テーパー付き伝送線路構成は、様々な用途に対し、伝送線路に沿った位置zの関数として、Rおよび/またはGの任意の値を有するように設計することができる。
【0137】
f.Q向上および位相速度低減機能を備える(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO
図18A、18B、18Cは、本発明の様々な態様による、3つの異なる(214)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す。特に、図18Aは、(少なくとも部分的に図13Aに示す態様に基づく)均一コプレーナストリップ線路SWO510の上面図を示すのに対して、図18Bおよび図18Cは、(少なくとも部分的に図15Aに示す態様に基づく)異なるテーパー付きコプレーナストリップ線路SWO512、514の回路ダイの上面図を示している。これらの(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOのそれぞれにおいて、位置z=Lにおけるストリップ線路の導体間の短絡302を図の上部に示してあり、これに対して、(図13Aおよび図15Aに示す増幅器304と類似する)1つまたは2つ以上の増幅器に対する、z=0における接続点516を図の下部に示してある。
【0138】
図18A、18B、18Cに示されたSWOのそれぞれは、0.18ミクロンCMOS技術を使用して製造され、横断面においてSWOのそれぞれは、図5A、5B、8、10、11と関係して上述したものと類似の、導電ストリップの1つまたは2つ以上の配列62も含む(上面図である、図18A、18B、18Cにおいて、配列62は、全体的に、コプレーナストリップ線路の導体の下にある陰をつけた領域として示してある)。先の2つの図と関係して上記で考察したように、これらの態様の一観点において、導電ストリップの配列(複数を含む)の存在によって、SWOにおけるQ向上および位相速度低減の両方が容易になる。別の観点では、図18B、18Cのテーパー付き構成によって実現される損失低減は、これらの態様におけるさらなるQ向上に寄与する。
【0139】
図18A、18B、18Cに示すSWOのそれぞれにおいて、短絡302における相当な導体質量は、比較的低いRが望ましい構造中の点において、直列抵抗を増大させる傾向がある。したがって、一態様において、SWOのそれぞれには、1つまたは2つ以上の配列62と同面上の導電金属プレート63を(例えば、図中で中実の白い領域で示されている、短絡302の下方に)含めてもよく、この場合に、短絡302は、ある数のバイア(via)によってプレート63に接続される。この配設は本質的に、短絡302の領域における導体の質量を増大させ、それによってその領域における直列抵抗を低減する。
【0140】
図18Bのテーパー付き態様においては、図18Aの均一態様と比較して、z=Lにおける導体間隔がより大きく、その結果として、それに比例して短絡302が長くなる。また、この長い短絡302は、図18Aに示す構造に対して、直列抵抗を増大させる傾向にあり、それによって、テーパー構成の便益が部分的に失われる可能性がある。前記のことを考慮して、図18Cの態様は代替テーパー構成を提供し、これの場合には、短絡302の長さが、図18Aに示す均一構成のそれと類似するように、ストリップ線路導体のテーパーが修正されている。
【0141】
均一構成およびテーパー付きの構成の性能を相対的に計測するために、図18A、18B、18Cに示すSWOを、約15GHzでの動作のために、それぞれが約25オームの特定インピーダンスZ0を有するように製作した。デバイスのそれぞれの全体ストリップ線路長Lは、約420ミクロンである。図18Aの均一態様に対して、ストリップ線路のそれぞれの導体の幅は、約85ミクロンであり、導体間の間隔は、約50ミクロンである。図18Bのテーパー付き構成に対して、導体幅は、z=0付近での約75ミクロンからz=L付近での約90ミクロンの範囲であり、導体間の間隔は、z=0での約20ミクロンから、z=Lでの約120ミクロンの範囲であった(例えば、表2を参照)。実験的測定によって、図18Aの均一デバイスに対して、図18Bのテーパー付きデバイスにおいて、約50%のQ向上が実現されたことが確認された(例えば、均一デバイスは約39の品質係数Qを有するのに対して、テーパー付きデバイスのQは、約59であった)。
【0142】
g.低損失周波数調整可能定常波発振器
本発明のさらに別の態様において、SWOのコプレーナストリップ線路実装は、周波数調整能力を備えて構成してもよく、この周波数調整能力を、損失、したがって電力消費の低減のために最適化することができる。例えば、一態様によれば、SWOは、1つまたは2つ以上の可変キャパシタ(「バラクター(varactor)」)を備えて実装してもよく、この可変キャパシタは、コプレーナストリップ線路の単位長さ当たりキャパシタンスCを変え、それによって発振の周波数を変える(周波数と波長を関係づける、位相速度νは、LCの積の平方根に対して逆比例する)。この態様の一観点において、1つまたは2つ以上のバラクターのコプレーナ線路上への配置は、相当な周波数調整能力を維持し、同時にバラクター(複数を含む)によって負わされる損失を低減するように、最適化される。
【0143】
図19A、19Bは、本発明の一態様によるSWOと共に使用することのできるバラクターの異なる表現を示す。特に、図19Aは、コプレーナストリップ線路の2つの導体300A、300Bの間に接続されたバラクター400を示し、このバラクターは、一対のNMOSトランジスタとして実装され、このトランジスタは、そのゲートがコプレーナストリップ線路のそれぞれの導体に結合され、そのソースとドレインは互いに結合されてバイアス電圧Vbiasに接続されている。図19Bは、バラクター400の別の等価な図表現を示し、この場合には、可変キャパシタンス400Aが、抵抗400Bと直列接続されており、バラクター400に付随する固有損失を表している。
【0144】
事例的(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOを示す図13A、13Bを再び参照すると、ここで理解すべきことは、本発明の様々な態様によるSWOに1つまたは2つ以上のバラクター400を実装すると、バラクター抵抗400Bに関連する損失によって、電力消費に影響を与える可能性があることである。特に、バラクターが、SWO内で、最大電圧振幅揺れの点(例えば、図13Aにおけるz=0)に配置されると、周波数調整可能能力は重要であるが、バラクター抵抗の両端での比較的高い電圧による損失も相当にある。一方で、バラクターを、SWの短絡端の近くに配置すると(例えば、図13Aにおけるz=L)、バラクター抵抗の両端での電圧が小さいか、または存在しないために低損失となるが、周波数同調能力はほとんど、またはまったく得られない。
【0145】
しかしながら、出願者らは次のことを認識、理解した:すなわち、少なくともいくつかの製造プロセスと関係して、バラクター抵抗による損失は、最大電圧振幅の点(すなわち、z=0)から電圧ノード(すなわち、z=L)に移動すると、本質的に直線的に減少するが、これは周波数同調能力については当てはまらず;すなわち、バラクター位置に基づく周波数同調能力は、最大電圧振幅の点から電圧ノードに向かって約半分まで(すなわち、0<z≦L/2)、本質的に一定のままである。中間点後(L/2<z≦L)は、その点では周波数同調能力が得られない電圧ノードに接近するにつれて、周波数同調能力は顕著に低下する。いくつかのプロセスにおいては、共振器に沿ったバラクター位置とバラクター抵抗による損失との間には本質的に直線関係があることが指摘されているが、共振器に沿ったバラクター位置とバラクター抵抗による損失との間には、相当な非線形関係も存在する。
【0146】
前記のことを考慮して、本発明の一態様によれば、最大電圧振幅と電圧ノード(ゼロボルト)の間の中間点(例えば、図13Aにおけるz≒L/2)の近傍にバラクターを配置することによって、この現象は、コプレーナストリップ線路SWOにおいて利用される。この態様の一観点においては、中間点に近接しながら、中間点と電圧ノードとの間(例えば、図13AにおいてL/2<z<<L)にバラクターを配置することによって、バラクター位置を最適化することができる。このようにして、相当な周波数同調能力が維持され、同時にバラクター抵抗に起因する損失が相当に低減される。様々な実装形態において、上述のようなバラクターは、均一または不均一(すなわちテーパー付き)コプレーナストリップ線路構成に加えて、本明細書において考察した、(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO以外のSWO構成とも関係して使用することができる。さらに他の態様において、コプレーナストリップ線路に沿ってバラクターを分布させることは、周波数同調能力を与えるとともに、同時に集中バラクター装荷による損失に関する潜在的影響を軽減するのに使用することができる。
【0147】
h.閉ループ定常波発振器
本発明の別の態様は、リング共振器コプレーナストリップ線路実装に基づく、閉ループ(例えば、円形)定常波発振器を目的としている。この態様の一観点においては、以下にさらに詳細に考察するように、クロスカップル型増幅器構成を使用して、発振器に重大な損失を誘起することを回避するように、特有の共振器トポロジーを用いて、単一モード動作を促進する。
【0148】
より具体的には、図20Aには、円形ループとして図示した、本発明の一態様による、閉ループSWO700を示してある。SWO700は、回路の損失を相殺する、少なくとも2つの増幅器702A、702B(すなわち、2組のクロスカップル型インバータ)、および全体経路長Lを有する閉ループコプレーナストリップ線路704(導体704A、704Bを含む)を使用し、前記閉ループコプレーナストリップ線路上に、境界条件V(φ)=V(φ+2)を満たすように定常波が形成され、ここでφはリング構造の所与の基準半径からの任意の基準角度である。この境界条件から、L=2πr=nλ(n=1,2,3...)において可能なエネルギーモードを生じ、ここでrはリングの半径である。n=1に対応する発振の基本周波数f0は、ν/Lで与えられ、ここでνは位相速度である。
【0149】
図20Aに示すSWO700の増幅器702A、702Bの相互接続によって、発振器のためのモード制御技法が効果的に実装できる。特に、点T1を点B2に、そして点T2を点B1に接続することによって、ポートT1−T2およびB1−B2は反対位相(180°)となることが保証され、それによってすべての偶数モード高調波が抑制される。この偶数モード抑制によって、ポートL1−L2は常に「クワイエット(quiet)」すなわちゼロ電圧ノードになる。ポートR1−R2も、増幅器への電力供給を同相モード電圧としてこのポートに分岐させることによって、強制的にゼロ電圧ノードにされる。
【0150】
図20Bは、図20Aに図示したリング共振器に対する物理的配設の一例である。図20Bの配設において、偶数モード抑制を実装するための増幅器702Aと702Bとの間の相互接続は、互いに近接して配置し、それによって、リングコプレーナストリップ線路における意図的な遅延と比較して、導入される時間遅れを無視できる量にする。特に、リングコプレーナストリップ線路の形状は歪んでいながら、それ以外では、そのトポロジーはそのままに維持して、その結果としてポートT1−T2およびポートB1−B2は互いに物理的に接近して、ポート間の接続損失が減少する。図21は、増幅器702A、702Bがやはり互いに近接して配置されるように、「クローバ葉(clover leaf)」形状にした、図20Bの概念に従う閉ループSWOに対する別の配設を示している。図21に示す態様の一観点においては、コプレーナストリップ線路の4つのλ/4区画部分が互いに結合されて、完全ループを形成する。
【0151】
図22A、22Bは、シリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)プロセスを使用して、そのfTが約50GHzであるトランジスタを用いて実装された、10GHz閉ループSWOに対するシミュレーション結果を示している。図22Aに示すように、「ラウドポート(loud port)」(例えば、図20AにおけるT1−T2およびB1−B2)のそれぞれは、発振器が1.5V電源から約3mAのDC電流を消費するときに、1.2ボルトの差分電圧揺れを有する。図22Bに示すように、初期のリンギング(ringing)の後に、「クワイエットポート(quiet port)」(例えば、図20AにおけるL1−L2)は、予想どおりに静穏状態に留まる。
【0152】
この態様の様々な観点によれば、上記で四分の一波長SWO実装と関係して考察した、いくつかのコンセプトは、様々な閉ループコプレーナストリップ線路SWO構成を実現するのに使用することもできる。例えば、この態様の様々な観点において、専用分布増幅方式および可変パラメータコプレーナストリップ線路構成(例えば、テーパー付きコプレーナストリップ線路)の一方または両方を閉ループ構造に使用することができる。別の観点では、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成(すなわち、位置依存性RおよびG)および導電ストリップの配列(複数を含む)の一方または両方を使用して、Q向上および位相速度低減を容易にすることもできる。さらに別の観点では,1つまたは2つ以上の適当に配置されたバラクターを使用して、低損失周波数同調機能を、そのようなSWOに実装することができる。
【0153】
III.結論
いくつかの説明のための態様について説明してきたが、ここで理解すべきことは、当業者であれば、様々な変更、修正、および改良をすぐに思いつくことである。そのような変更、修正、および改良は、この開示の一部とするものであり、この開示の趣旨と範囲に含めることを意図するものである。本明細書に提示したいくつかの例は、機能または構造要素の具体的な組合せを含むが、ここで理解すべきことは、それらの機能及び要素は、本発明によるその他の方法で組み合わせることによって、同じまたは異なる目的を達成することができることである。特に、一つの態様に関係して考察した行為、要素、および機能は、その他の態様における、同様またはその他の役割から除外するものではない。したがって、前述の説明および添付の図面は、説明のためだけのものであり、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1A】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1B】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1C】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1D】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1E】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図2A】従来型コプレーナ導波路(CPW)の異なる視点からの図である。
【図2B】従来型コプレーナ導波路(CPW)の異なる視点からの図である。
【図3A】従来型コプレーナストリップ線路(CPS)の異なる視点からの図である。
【図3B】従来型コプレーナストリップ線路(CPS)の異なる視点からの図である。
【図4A】図2Aおよび図2Bのコプレーナ導波路のための、分布線路パラメータの「シングルエンド」モデルを示す図である。
【図4B】図3A、3Bのコプレーナストリップ線路に対する分布線路パラメータの「差分」モデルを示す図である。
【0155】
【図5A】本発明の一態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく装置の一例を示す、斜視図である。
【図5B】本発明の一態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく装置の一例を示す、横断面図である。
【図6A】本発明の様々な態様による、図5A、5Bの装置の異なる構成に対して、シミュレーション品質係数Q対信号周波数を示す、グラフである。
【図6B】本発明の様々な態様による、図5A、5Bの装置の異なる構成に対して、シミュレーション品質係数Q対信号周波数を示す、グラフである。
【図6C】本発明の様々な態様による、図5A、5Bの装置の異なる構成に対して、シミュレーション品質係数Q対信号周波数を示す、グラフである。
【0156】
【図7A】本発明の様々な態様による、図6A、6B、6Cにおいて提示される異なる構成についての、シミュレーション減速係数または位相速度低減対信号周波数の関係を示すグラフである。
【図7B】本発明の様々な態様による、図6A、6B、6Cにおいて提示される異なる構成についての、シミュレーション減速係数または位相速度低減対信号周波数の関係を示すグラフである。
【図7C】本発明の様々な態様による、図6A、6B、6Cにおいて提示される異なる構成についての、シミュレーション減速係数または位相速度低減対信号周波数の関係を示すグラフである。
【図8】本発明のさらに別の態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、事例的装置の横断面図である。
【図9A】本発明のさらに別の態様による、図5A、図5B、および図8に示す構成に基づく異なる構成に対して、品質係数Qと減速係数または位相速度低減を比較するグラフである。
【図9B】本発明のさらに別の態様による、図5A、図5B、および図8に示す構成に基づく異なる装置に対して、品質係数Qと減速係数または位相速度低減とを比較するグラフである。
【0157】
【図10】本発明の別の態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、事例的装置を示す横断面図である。
【図11】本発明の別の態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、事例的装置を示す斜視図である。
【図12】コプレーナストリップ線路構成に基づく、従来型定常波発振器の事例を示す図である。
【図13A】本発明の一態様による、四分の一波長コプレーナストリップ線路定常波発振器の事例を示す図である。
【図13B】図13Aに示す発振器のための電圧および電流の波形を示す図である。
【図14A】本発明の一態様による、複数増幅器を使用する四分の一波長コプレーナストリップ線路定常波発振器の事例を示す図である。
【図14B】図14Aに示す発振器のための、電圧波形を示す図である。
【0158】
【図15A】本発明の一態様による、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成を使用する、四分の一波長定常波発振器の事例を示す図である。
【図15B】本発明の一態様による、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成に関する様々な概念を示すように、図15Aに対して配置された、図13Bの電圧および電流の波形の再生成である。
【図16】ストリップ線路の特性インピーダンスZ0を変更することなくテーパー付きコプレーナストリップ線路に沿って、RおよびGを変えるための、本発明の一態様による方法を示す図である。
【図17】本発明の一態様による、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路と関係して、図16の方法をさらに示す図である。
【図17A】本発明の一態様による、図17の事例的構成におけるトランジスタ負荷の効果を示す図である。
【図17B】本発明の一態様による、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路構成の設計のための方法フロー図を示す図である。
【0159】
【図18A】本発明の様々な態様による、3つの異なる(λ/4)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す図である。
【図18B】本発明の様々な態様による、3つの異なる(λ/4)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す図である。
【図18C】本発明の様々な態様による、3つの異なる(λ/4)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す図である。
【図19A】本発明の一態様による、定常波発振器用の周波数調整構成要素の異なる表現を示す図である。
【図19B】本発明の一態様による、定常波発振器用の周波数調整構成要素の異なる表現を示す図である。
【0160】
【図20A】本発明の一態様による、閉ループ定常波発振器の事例を示す図である。
【図20B】本発明の一態様による、閉ループ定常波発振器の事例を示す図である。
【図21】本発明の別の態様による、閉ループ定常波発振器の事例を示す図である。
【図22A】図21の閉ループ定常波発振器のシミュレーションから生じる事例的な信号を示す図である。
【図22B】図21の閉ループ定常波発振器のシミュレーションから生じる事例的な信号を示す図である。
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2003年7月23日付出願の「Methods and Apparatus for Implementing Standing Wave Sinusoidal Oscillators」という名称の、米国出願番号第60/489708号、および2004年1月2日付出願の「Methods and Apparatus for Implementing Standing Wave Sinusoidal Oscillators」という名称の米国特許出願第60/533904号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的にはコプレーナストリップ線路(CPS:coplanar striplines)に基づく半導体素子に関する様々な方法および装置に関する。いくつかの事例的な態様においては、正弦波信号源、より具体的には定常正弦波発振器(standing wave sinusoidal oscillators)が、コプレーナストリップ線路構成に基づいて実装される。
【0003】
背景
現在では日常生活の一部となった先端通信応用、例えばセルラー電話、無線ネットワーク、衛星放送および光ファイバ通信は、高速化と小型化に関してエレクトロニクスおよび関連技術の絶え間ない進歩に頼っており、それはすなわち、情報伝送の高速化と様々な通信関係機能を実行する集積回路の小型化である。しかしながら、システム設計者は、10ギガヘルツ(GHz)の帯域の高周波の使用に加えて、集積回路の原子スケールまでの小型化を期待しているので、従来型集積回路技術のいくつかの観点は、不適当で時代遅れとなり続けている。したがって、共通の設計課題は、動作を高速化し、しかもしばしばより小さなスペースに、よく知られた回路構成単位を実装するための新規の方法を見出すことに関する。場合によっては、そのような実装は、電磁波ベースの概念を利用し、半導体基板上に製作される伝送線路または導波路構成に関与する。
【0004】
伝送線路理論は、当該技術分野において十分に確立されている。一般的に、伝送線路は、例えば、信号源を負荷に接続するように誘導して、電力または情報を伝送する手段を提供する。伝送線路には、通常、誘電体によって隔てられた2つの平行な導体が含まれる。信号は、所与の伝送線路に沿って電磁波として伝播し、その伝送線路に関係する様々な物理的パラメータに加えて、その線路上の信号源および線路上の負荷に関係するパラメータが、波動伝播に影響を与える。
【0005】
図1a〜1eには、伝送線路の代表的な例を示してあり、その中には同軸ケーブル(図1a)、2線式線路(図1b)、平行平板型線路(parallel-plate line)もしくはプレーナ線路(planar line)(図1c)、導電板上の電線(図1d)、およびマイクロストリップ線路(図1e)がある。ここで、留意する価値があることは、これらの例のそれぞれは、2つの平行な導体で構成されることである。同軸ケーブルは、電気実験室やいくつかの一般消費者応用において、様々な電気装置の相互接続(例えば、TVセットのTVアンテナまたはケーブルフィードへの接続)のために、日常的に使用されている。マイクロストリップ線路は、様々な半導体製造技法に基づく集積回路において特に重要であり、この場合には、誘電体基板上に製造される(すなわち、誘電体で隔てられた)平行金属ストリップが電子要素同士を接続する。
【0006】
伝送線路は、より広い範疇である「導波路(waveguide)」の特殊な場合としてみなされることが多い。導波路とは、一般に、電磁放射を1点から別の点に誘導するように構成されたシステムを指している。しかしながら、いくつかの一般化した応用においては、導波路とは、本質的に囲われた導管(conduit)であり、そこを通過して電磁放射が、伝送線路に関して一般的に考えられているよりも、より緊密に閉じ込められた状態で伝播するものと認識されている。例えば、マイクロ波領域においては、2導体伝送線路と異なり、導波路は、中空の金属パイプまたは横断面が長方形、楕円形、もしくは円形であるチューブとして形成されることがある。光学領域においては、伝送線路はまったくサポートはされていないが、導波路は、低屈折率環境によって包囲された、固体誘電体フィラメント(例えば、光ファイバ)または薄い誘電体フィルムとして形成されることが多い。
【0007】
多くの応用において従来から扱われているように、伝送線路は、いくつかの重要な点において、より広い範疇の導波路といくぶん異なる意味で特徴づけることができる。例えば、第1に、伝送線路は、一般にDC(周波数/ゼロ)から超高周波(例えば、ミリ波およびマイクロ波範囲、約1GHzから100GHz)で動作するように構成される。しかしながら、導波路は、その特定の構造および寸法によって決まる、ある周波数より上でのみ動作が可能であり(「カットオフ周波数」)、そのために一般的にハイパスフィルタとして作用する。他方、約50GHzから300GHzのオーダーの超高周波においては、伝送線路は、従来からよく知られた伝送線路導体におけるスキン効果に加えて、導体を隔てる材料に関する誘電体損失のために、全体的に非効率的になってくるとみなされている。それに対して導波路では、従来から、この範囲の周波数においては、より大きな帯域幅および低い信号減衰(すなわち、より広い範囲の周波数応答および低い信号電力損失)が得られると考えられている。しかしながら、この周波数範囲の下端およびそれより下において、導波路は、従来から、応用分野によっては、特にさらなる小型化が通常目標とされる集積回路応用においては、寸法的に大きくなりすぎると考えられている。伝送線路と導波路のさらに別の差異は、伝送線路がTEM波(transverse electromagnetic wave)(すなわち、電界および磁界が波伝播方向に垂直に向いている波)だけをサポートできるのに対して、導波路は、一般に、多数の可能な電界構成(すなわち、モード)をサポートすることができる。
【0008】
マイクロエレクトロニクス回路の半導体製造において、高周波電気信号を伝える導波路および伝送線路は、従来から、様々な方法で実装されてきた。2つのそのような実装形態として、それぞれ、コプレーナ導波路(CPW:coplanar waveguide)およびコプレーナストリップ線路(CPS:coplanar stripline)と呼ばれている。図2Aおよび図2Bは、コプレーナ導波路を異なる視野で示してあるのに対して、図3Aおよび図3Bは、コプレーナストリップ線路を異なる視野で示してある。
【0009】
特に、図2Aには、半導体基板103上の誘電体層101上に配置された3つの平行な導体20A、40および20Bによって形成された、コプレーナ導波路50の横断面図を示してある。図2Bは、事例的なコプレーナ導波路デバイスを上から見下ろした上面図であり、このデバイスでは、中央導体40がその両端でパッド42A、42Bによって終端されており、導体20A、20Bは、その面内で導体40を完全に包囲するように電気的に接続して示してある(図2Aの横断面図は、図2Bの一点鎖線2A−2Aに沿った断面である)。図2Aおよび図2Bに示すように、導体20A、20Bの幅W1は、中央導体40の幅W2よりも大幅に大きい場合がある。
【0010】
通常の動作において、コプレーナ導波路50の導体20A、20Bは一緒に接地または基準電圧に電気的に接続されており、伝送すべき信号は中央導体40に流される。この点において、注目すべきことは、結合された接地導体20A、20Bは中央信号導体40よりも大幅に大きな面積を覆うために、コプレーナ導波路内の、それぞれの接地および信号導体は対称ではないことである。この構成は、一般に、「不平衡(unbalanced)」構成と呼ばれている。中央信号導体40の周りに大きな接地または参照電圧を配置することによって、電界を中央導体と接地または基準導体との間に領域に閉じ込め、それによって、波が伝播することのできる「導管(conduit)」が生成される。
【0011】
コプレーナ導波路と異なり、コプレーナストリップ線路は、対称型または平衡型の2導体デバイスである。図3A、3Bは、距離Sだけ隔てられた2つの実質的に同一の平行導体100A,100Bで構成された理想化無限コプレーナストリップ線路100の一例を、異なる視点の図で示している。特に、図3Aは、導体100A、100Bの横断面を示しており、これらは、例えば、基板103上の誘電体層101の上方に配置された金属線路とすることができる。図3Bは、基板上に配置された導体を見下ろす、上面図である(図3Aの横断面図は、図3Bにおける一点鎖線3A−3Aに沿った断面である)。
【0012】
図3Aおよび3Bから容易に観察されるように、コプレーナストリップ線路100の幾何学形状は、図2A、2Bに示すコプレーナ導波路50のそれと顕著に異なっている。特に、コプレーナ導波路50は、横断面に3つの導体を含むのに対して、コプレーナストリップ線路100は2つの導体だけを含む。さらに、それぞれ異なる幅を有してもよいコプレーナ導波路の接地導体20A、20Bおよび中央信号導体40とは異なり、コプレーナストリップ線路の導体100A、100Bは、図3A、3Bに示すように、実質的に同じ幅W3を有する。ここでも、コプレーナストリップ線路における、このような実質的に同一の平行導体の配列は、一般に、対称構成または「平衡」構成と呼ばれる。そのような対称または平衡の2つの導体構成によって、以下にさらに詳細を示すように、コプレーナストリップ線路上の差分信号(differential signals)が容易にサポートされる。対照的に、コプレーナ導波路の非対称または不平衡の構成は、差分信号をサポートせず、単に「シングルエンド型(single-ended)」信号(すなわち、接地電位を基準とする信号)だけをサポートする。
【0013】
従来からある多くの他のマイクロ波応用において、本質的にシングルエンドまたは不平衡のマイクロ波デバイスが普及しているために、コプレーナ導波路実装は、一般に、回路接続構造として好ましいものであった。また、コプレーナ導波路は、一般に、コプレーナストリップ線路よりも、大幅に損失が少ないと思われており、特に、マイクロ波周波数における基板への信号損失についてそうである。したがって、歴史的にいって、高周波マイクロエレクトロニクスデバイスに関する関連文献の多くが、コプレーナストリップ線路ではなく、非常に多くコプレーナ導波路を対象としている。コプレーナ導波路は、一般に、直列および並列(shunt:シャント)の能動型および受動型の回路構成要素の両方と容易に統合されると考えられている。さらに、コプレーナ導波路導体の寸法は、回路構成要素リード線幅に合わせて簡単に変えることによって、その他デバイスとの接続を容易にするとともに、同時に、相互接続されるデバイスと整合性のある、コプレーナ導波路に対する所望の特性インピーダンスを維持することができる。しかしながら、1つのトレードオフは、コプレーナ導波路は、中央信号導体の側面に位置する(flanking)、比較的幅の広い、複数の接地導体のために、大きなスペースをとることである。
【0014】
コプレーナ導波路とコプレーナストリップ線路の両方の様々な特性を、抵抗、インダクタンス、コンダクタンスおよびキャパシタンスなどの、電気回路理論に関する一般概念を使用して、少なくともある程度まで、モデル化することができる。しかしながら、波動ベース構造は、一般に、通常の電気ネットワークとは1つの本質的特徴において異なり、それは、動作周波数に対する大きさである。例えば、電気ネットワークの物理的寸法は、動作周波数に対応する波長よりもはるかに小さいが、これに対して、導波路および伝送線路に基づくデバイスの大きさは、通常、デバイスの動作周波数に対応する波長のかなりの割合となり、多数波長の長さになることさえある。したがって、抵抗、インダクタンス、コンダクタンスおよびキャパシタンスに関する要素は、一般電気回路において、集中パラメータ(lumped parameter)を有する個別構成要素(discrete component)として記述できるが、伝送線路および導波路は、その代わりに伝送線路/導波路の長さ全体にわたって分布する回路パラメータによって記述しなくてはならない。
【0015】
上記のことを考慮すると、図4Aおよび図4Bは、電気回路概念に基づく、分布「線路パラメータ」(distributed "line parameter")を含む、2つの異なる理論的伝送線路/導波路モデルを示している。特に、図4Aは、(図2および2Bに示すコプレーナ導波路50に適用可能な)「シングルエンド型」モデル30を示し、図4Bは、(図3A、3Bに示すコプレーナストリップ線路100に適用可能な)「差分」モデル32を示す。
【0016】
図4A、4Bのモデルにおいて、パラメータzは、波動伝播の方向における、伝送線路/導波路の長さに沿った距離を示す(ここで、dzは差分長を表す)。回路ベース線路パラメータは、図4A、4Bに、単位長さ当たり抵抗R、単位長さ当たりインダクタンスL、単位長さ当たりコンダクタンスG、単位長さ当たりキャパシタンスCとして示してあり、ここでRおよびLは直列要素であり、GおよびCは並列要素である。図4Bにおいて、直列要素RおよびLによる値は、やはりモデルの「差分」特性を示すために、モデル32の2つの同一の導体(例えば、Rdz/2およびLdz/2)の間で分割されている。
【0017】
コプレーナ導波路またはコプレーナストリップ線路を特徴づけるのに用いることのできる、線路パラメータR、L、G、Cは、コプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路を製造するのに使用される、材料のタイプ(例えば、誘電体、基板、および金属の構成要素)およびコプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路配列に関連する様々な寸法(例えば、導体の幅および厚さ、導体間の間隔、誘電体層の厚さ、その他)から直接的に得られる。より具体的には、所与の構造に関係する材料および寸法によって、一般に、構造と関係する様々な物理的性質、例えば有効誘電率εeff、透磁率μ、および様々な損失係数などが決まり、それらに線路パラメータR、L、GおよびCは基づいている。
【0018】
ここでも理解すべきことは、図4A、4Bに示すように、線路パラメータR、L、GおよびCは離散的または集中的ではなく、コプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路の全長に沿って一様に分布していることである。また、理解すべきことは、Rは導体の単位長さ当たりのAC抵抗(すなわち、「直列」抵抗)であるのに対して、Gは、導体を相互に、および基板から隔てる誘電体媒体による単位長さ当りのコンダクタンス(すなわち、「並列(shunt)」抵抗(シャント抵抗))であることである。
【0019】
コプレーナストリップ線路またはコプレーナ導波路の分布する、抵抗、コンダクタンス、インダクタンスおよびキャパシタンスによって、必然的に、所与の実装形態に固有の周波数特性を生じる。例えば、インダクタンスとキャパシタンスの全体エネルギー貯蔵関数は、インダクタンス/キャパシタンスと関連する抵抗/コンダクタンスに基づく、周波数依存性を有する。所与の伝送線路(または導波路)構成を含む、周波数依存性システムの周波数応答を特徴づける1つの一般的なパラメータは、通常は文献においてはQの記号で示される、「品質係数(quality factor)」である。
【0020】
周波数依存性システムの品質係数Qは、一般に、システムのピーク周波数または共振周波数と、システムの周波数帯域幅の比(すなわち、システムの全周波数応答の半値点間の周波数範囲)として定義される。品質係数Qは、代替的に、システムに貯蔵される最大エネルギーと所与の期間内にシステムが失った合計エネルギーとの比と考えることもできる。前記のことを考慮すると、比較的大きなQを有するシステムは、一般的に、そのシステムが、比較的少ないエネルギー損失で、所与の共振周波数に近い周波数をサポートする点において、「周波数選択的」と考えられる。対照的に、比較的小さなQを有するシステムは、重要な周波数選好性を必ずしも有さず、いくぶん損失の多い(lossy)システムと考えられる。
【0021】
所与のコプレーナ導波路配設またはコプレーナストリップ線路配設の品質係数Qは、コプレーナ導波路またはコプレーナストリップ線路に沿った波動伝播に関連する様々なパラメータによって表すこともできる。再び、図3Bに示すコプレーナストリップ線路100を参照すると、事例的な位置依存電圧V(z)が、導体間に示されており、事例的位置依存性電流I(z)が、導体中を流れるのを示してあり、ここでzは波動伝播の方向に沿った距離を示す。コプレーナストリップ線路に沿った位置zの関数として電圧V(z)は、
【数1】
で表され、ここでV0は波の振幅であり、量(2πft−βz)は、波の位相(ラジアン単位)を表し、これは時間tおよび空間zの両方に依存する。もちろんのこと、fは波の周波数、βは、β=2π/λで定義される波の「位相定数」であり、本質的に、位相定数βは、各波長の移動距離に対して、波は2πラジアンの位相変化を生ずることを示す。最後に、αは、波が伝播するときの損失を表す減衰係数であり、これは波の全体振幅に影響を与える。すなわち、増大すると、より大きな損失を示し、相応して波の振幅V0は、e−αzの倍数で減少する。上述のように、品質係数Qは、位相定数βおよび減衰係数αによって表わし、比較的低損失の周波数依存システムに対しては、次式
【数2】
で近似することができる。
【0022】
伝送線路および導波路の別の重要な特徴パラメータは、波動が伝送線路または導波路に沿って伝播する速度が関係する。特に、一般にνで表わされる、伝送線路または導波路の位相速度は、所与の媒体内における波動の周波数fと波長λとの間に、ν=fλの関係をもたらし、その媒体の波動伝播の速度を表わす。したがって、所与の周波数fに対して、位相速度νが小さくなると、波長λは短くなる。位相速度νは、有効誘電率εeffおよび透磁率μなどのデバイスの特定の物理的特性から生ずる。図4Aおよび4Bに示すにモデルに対して、位相速度は、単位長当りのインダクタンスLおよび単位長当りのキャパシタンスCによって、次式
【数3】
で表わすことができる。
【0023】
回路寸法の減少は、改良型マイクロエレクトロニクスデバイス製造技術の重大な目標であり、文献においては、位相速度の低減を容易にする機能に基づく、マイクロ波デバイスの寸法低減に関して焦点が当てられてきた。ここでも、位相速度を低減すると、所与の動作周波数における対応する波長が減少することになる。共振器、発振器、インピーダンス整合ネットワーク、信号分配器および結合器、フィルタ、増幅器ならびに遅延などのデバイスを、伝送線路構成または導波路構成に基づいて実装することができる。上述のように、しばしば、そのようなデバイスの寸法は、ある所望の動作周波数範囲に対して、波長λと同等である。したがって、位相速度νを低下させることによって、より小型のデバイスを実現することができる。
【0024】
このことに留意して、マイクロ波分野において、様々な「遅波(slow-wave)」構造が1970年代から研究されてきた。ここでも、これらの研究の多くは、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)に関係し、これらには、所与の動作周波数または周波数範囲において位相速度および波長を低減し、それによってデバイス寸法を低減するように設計される特徴を組み入れたコプレーナ導波路が含まれる。遅波構造を実現するためのそのような特徴の一つには、「周期的負荷(periodically loaded)」コプレーナ導波路があり、この場合には、フローティング金属ストリップが3つのコプレーナ導波路導体の下方に周期的に配置され、かつ導体に直角方向に配向されている。フローティング金属ストリップの存在は、一般的には、伝播波動における電気的および磁気的エネルギーを空間的に分離すると考えられ、これによって、コプレーナ導波路の単位長さ当りキャパシタンスCが増大することになる。関係式
【数4】
にしたがって、そのような単位長さ当りキャパシタンスCが増大すると、小さな位相速度ν、したがって所要の周波数fにおいて小さな波長λを生じることになる。すなわち、これらの遅波特徴は、小型デバイスの製造を容易にすることができる。
【0025】
コプレーナ導波路に基づく従来型遅波マイクロ波構造において、波長λが減少すると、関係式β=2π/λに従って、対応する位相定数が増大する。しかしながら、関係式
【数5】
による、増大した位相定数βの品質係数Qに与える影響は、文献からは完全に明白ではなく、βの増大によるQの増大は期待されるが、遅波特徴のコプレーナ導波路の損失に与える影響は明確ではない。いくつかの報告においては、フローティング金属ストリップを組み入れたコプレーナ導波路遅波構造のQは、実際には、遅波構造の存在によって生じる損失αの増大によって、遅波構造を有さないコプレーナ導波路のそれよりも減少する可能性があることが示唆されている。したがって、ある種のコプレーナ導波路遅波構造において品質係数と位相速度との間にはトレードオフがある、すなわち、位相速度を低減して小型デバイスの実装を用にすることはできるが、より大きな損失が発生し、それによってデバイスの品質係数Qを低下させると思われる。
【0026】
要約
本開示は、一般的にはコプレーナストリップ線路(CPS)に基づく半導体デバイスに関わる様々な方法および装置に関する。
コプレーナ導波路(CPW)は、おそらく、マイクロ波回路デバイスおよび構造などの分野において過去にはより大きな注目を集めていたが、出願人らは、様々なコプレーナストリップ線路(CPS)構成によって、広範囲の応用のためのいくつかの有用な高速マイクロエレクトロニクスデバイスの製造を容易にすることができることを認識、理解した。
【0027】
コプレーナ導波路とコプレーナストリップ線路の間のいくつかの差異について、図2A、2B、3A、3Bと関係して考察した。例えば、コプレーナストリップ線路は、横断面において2導体の配設であるが、コプレーナ導波路は、横断面において3導体の配設であり、通常、コプレーナストリップ線路よりも大幅に大きなスペースを必要とする。コプレーナストリップ線路の2導体配設は、導体の対称性のために、「平衡」構成であり、これと対照的に、コプレーナ導波路は、3つの導波路導体(すなわち、2つの幅広の導体と1つの幅の狭い導体)間の強い非対称性のために、「不平衡」構成である。
【0028】
多くの回路応用に対して、おそらく、コプレーナストリップ線路とコプレーナ導波路の間の最も重要な差異は、コプレーナストリップ線路は、主として平衡構成のために、差分信号をサポートすることができるのに対して、コプレーナ導波路はそれができないことである。
信号が「ピックアップ」ノイズまたはその他の雑多なノイズによる汚染を受けやすい応用において、差分信号は、重要である。例えば、比較的長い距離にわたって、および/またはいくつかの信号またはその他の放射が存在する環境において転送される信号は、信号の完全性を害する、望ましくない歪みを受ける可能性がある。2つの導体を使用して差分方式で信号を移送することによって、両方の導体に沿って通常、ピックアップされるノイズを、(2つの導体のそれぞれの信号間の差分を観察することによって)差分信号を回復するときに、キャンセルすることができる。具体的には、導体上の通常モードノイズは、一方の導体上の信号から、他方の導体上の信号を差し引き、好ましくは差分信号だけを残すことによって、「除去(reject)」することができる。この概念は、通常、「同相除去(common-mode rejection)」と呼ばれる。
【0029】
差分信号を簡単にサポートし、それによって不要なノイズを同相除去する、コプレーナストリップ線路の能力は、ふたたび図3A、3Bを参照して、はっきりと観察することができる。特に、これらの図に示す、コプレーナストリップ線路100において、2つの事実上同一の導体100A、100Bのいずれも、信号接地またはその他の基準電位にある必要がなく、むしろ、コプレーナストリップ線路導体の両方が、それぞれ接地またはその他の電位を基準とする異なる信号を、それぞれに、かつ同時に搬送することができる。さらに、これらの導体は事実上、同一であり互いに近接しているので、それらはノイズピックアップにおいて、それらの環境に対して本質的に同じ反応をする。
【0030】
対照的に、(図2A、2Bに示すように)コプレーナ導波路は、「シングルエンド型」電気信号、すなわち接地電位を基準とする信号だけをサポートする。さらに、コプレーナ導波路は、通常、その信号導体と比較してその結合接地導体の寸法が大きいことから、本質的に不平衡である。したがって、コプレーナ導波路の導体は、ノイズピックアップにおいて、それらの環境に対して異なる反応をする。したがって、コプレーナ導波路は、差分信号を容易にはサポートせず、コプレーナ導波路に基づくデバイスは、コプレーナストリップ線路によって得られるノイズ低減能力を利用することができない。もちろん、コプレーナストリップ線路も、その2つの導体の内の一方が、接地またはその他の基準電位にあるように構成することができる。しかしながら、コプレーナストリップ線路の、差分信号をサポートする能力によって、コプレーナストリップ線路構成は、多くの回路用途に対して、コプレーナ導波路構成よりも著しく望ましいものとなる。
【0031】
前記のことを考慮すると、以下に開示するいくつかの態様は、いくつかの異なるマイクロエレクトロニクスデバイスの実装を容易にする、様々な機能を組み入れた、コプレーナストリップ線路に関係する。本開示によるコプレーナストリップ線路を組み入れることのできるデバイスの例としては、それに限定はされないが、インピーダンス整合デバイス、電力結合および電力分割用デバイス、遅延器、共振器、発振器、フィルタ、増幅器、ミクサ、その他があり、またそのようなデバイスのCMOS方式実装も含まれる。いくつかの事例的態様において、サイン波信号源、より具体的には定常正弦波発振器が、本開示による様々なコプレーナストリップ線路構成に基づいて実装される。
【0032】
以下にさらに考察するいくつかの態様は、結果として得られるデバイスの品質係数Qを劇的に増大させる、コプレーナストリップ線路実装の様々な機能に関する。例えば、そのような態様の様々な観点において、品質係数Qの20倍またはそれ以上の向上が、シリコン基板ならびに、その他の基板上で製造されるコプレーナストリップ線路デバイスに対して実現することができる。そのような向上は、そのような実装に基づく様々な回路デバイス(例えば、共振器、発振器)の性能の改善に、顕著かつ有利に寄与する。一態様においては、品質係数Qの向上が達成されるとともに、同時に、デバイス内を伝播する1つまたは2つ以上の波動の位相速度が低下し、それによって小型デバイスの製造が容易になる。さらに別の態様においては、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成(tapered coplanar stripline configuration)によって、位置依存線路パラメータが得られ、これを利用して顕著な高Qデバイスを達成することができる。
【0033】
例えば、本発明の一態様は、互いに平行であり、かつ実質的に第1の方向に沿って配向されている、第1の導体および第2の導体のみを含む、コプレーナストリップ線路(CPS)を備える、装置を目的とする。この態様の装置は、コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の直線状導電ストリップをさらに含む。この複数の直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であり、実質的に第1の方向に直角の第2の方向に沿って配向されている。この態様の一観点においては、この装置はシリコン基板をさらに含み、このシリコン基板の上に、少なくとも1つの誘電体、複数の直線状導電ストリップ、およびコプレーナストリップ線路が配置されている。別の観点においては、この装置は、約1Ghzから60Ghz以上の範囲の周波数を有する、コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの信号をサポートするように構成されている。さらに別の観点においては、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップは、約1Ghzから60Ghzの範囲における少なくとも1つの周波数に対してこの装置が少なくとも30の品質係数Qを有するように、配設される。
【0034】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの差分信号を移送する方法であって、少なくとも1つの差分信号を、実質的に第1の方向に沿って配向され、かつ複数の直線状導電ストリップに近接して配置された、コプレーナストリップ線路を介して移送する行為を含み、前記複数の直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であって、かつ第1の方向に直角な第2の方向に実質的に沿っている、前記方法を目的とする。
【0035】
本発明のさらに別の態様は、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスCが、コプレーナストリップ線路に沿った位置の、不連続関数または連続関数となるように構成された、コプレーナストリップ線路を目的としている。この態様の一観点においては、コプレーナストリップ線路導体間の間隔および導体それ自体の幅が、コプレーナストリップ線路に沿って変化する、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成が実装される。この態様の一観点においては、そのようなテーパー付き構成は、コプレーナストリップ線路の長さに沿って線路パラメータR、Gを有効に変えるとともに、同時に、コプレーナストリップ線路の一様な特性インピーダンスを実質的に維持して、局所反射を回避する。
【0036】
本発明の別の態様は、第1の導体および第2の導体を含むテーパー付きコプレーナストリップ線路を含む装置であって、該第1および第2の導体が実質的に第1の方向に沿って配向されており、前記第1および第2の導体の間の空所および前記第1および第2の導体の幅が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、前記装置を目的とする。この態様の装置は、テーパー付きコプレーナストリップ線路に近接して配置された複数の直線状導電ストリップをさらに含む。この複数の直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であるとともに、実質的に前記第1の方向に直角な第1の方向に沿って配向されている。
【0037】
本発明の他の態様は、一般的に、コプレーナストリップ線路に基づく定常正弦波発振器を実装する、様々な方法および装置を目的としている。
例えば、本発明の一態様は、周波数f0を有する少なくとも1つの電圧定常波を生成するように構成された、1/4波長(λ/4)コプレーナ定常波発振器(SWO)を目的としている。この態様のSWOはコプレーナストリップ線路を含み、このコプレーナストリップ線路は、2つの導体を含むとともに、1/4波長(λ/4)に等しいか、またはほぼ等しい長さLを有しており、λは、少なくとも1つの電圧定常波を構成する波動の位相速度によって周波数f0に関係づけられる。このSWOは、コプレーナストリップ線路の第1端の両導体間に配置された、少なくとも1つの増幅器をさらに含み、該2つの導体は、コプレーナストリップ線路の第2端において互いに連結されて、短絡回路を形成している。
【0038】
この態様の一観点において、SWOは、モード制御技術を使用して、高い周波数における正弦波性能を低電力消費で最適化するように構成されている。特に、この態様の一観点において、SWOは、コプレーナストリップ線路の長さに沿って異なるゲインを有する複数増幅器を利用する、専用分布増幅方式(tailored distributed amplification scheme)を使用する、本質的に単一モードデバイスとして構成されている。この態様のさらに別の観点においては、増幅器の異なるゲインは、コプレーナストリップ線路に沿った増幅器のぞれぞれの位置における、所望のモードの予期される振幅に少なくとも部分的に基づいていることにおいて、「振幅依存」である。
【0039】
より一般的には、本発明の一態様は、コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、コプレーナストリップ線路に沿って変化するように振幅を分布させて、コプレーナストリップ線路損失を克服する行為を含む、前記方法を目的としている。本発明の別の態様は、コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、前記少なくとも1つの電圧定常波の発振モードを制御する行為を含む、前記方法を目的としている。これらの態様の様々な観点において、振幅依存分布増幅を利用して、低損失単一モード動作を促進することができる。
【0040】
本発明の別の態様は、コプレーナストリップ線路構成を利用するSWOであって、前記コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の直線状導電ストリップを含む、前記SWOを目的としている。前記複数の直線状ストリップは、本質的に互いに平行であり、実質的に、前記第1の方向に直角の第2の方法に沿って配向されている。この態様の一観点において、コプレーナストリップ線路導体および複数の直線状導電ストリップは、品質係数向上と、コプレーナストリップ線路導体上の電圧定常波の成分の位相速度低減とを実現するために、相互に配設される。
【0041】
本発明の別の態様は、テーパー付きストリップ線路構成を利用して、SWOによる電力消費を大幅に低減する、SWOを目的としている。この態様の一観点においては、SWOの構成は、低単長さ当りコンダクタンス(低G)のコプレーナストリップ線路領域が、最大電圧振幅が期待される箇所、またはその近傍の箇所に配置され、それによって基板への電力消費が減少するようにされる。さらに、別の観点では、低い単位長さ当り抵抗(低R)のコプレーナストリップ線路領域が、最大電流が期待される箇所、またはその近傍の箇所に配置され、それによって伝送線路それ自体からの電力消費(すなわち、直列損失)が低減される。
【0042】
本発明の別の態様は、コプレーナストリップ線路SWOであって、専用分布増幅方式、コプレーナストリップ線路の近傍に配置された複数の直線状導電ストリップ、およびテーパー付きコプレーナストリップ線路構成の内の1つまたは2つ以上を利用し、それによってモード制御を実現して、発振器の全電力消費を低減する、前記コプレーナストリップ線路SWOを目的とする。
さらに別の態様において、SWOは、周波数調整可能性を備えて構成され、この周波数調整可能性は、さらに電力消費を低減し、同時に発振器周波数の有効な調整を容易にするように最適化される。例えば、本発明の一態様は、コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの電圧定常波の周波数を制御する方法であって、少なくとも1つの周波数制御デバイスを、前記少なくとも1つの電圧定常波の最大振幅と、前記少なくとも1つの電圧定常波のゼロ電圧ノードとの間のほぼ中間点にある位置に、コプレーナストリップ線路に沿って配置する行為を含む、前記方法を目的とする。
【0043】
本発明の別の態様は、リング共振器コプレーナストリップ線路実装に基づく、閉ループ(例えば、円形)SWOを目的とする。特に、この態様のSWOは、2つの導体を有する閉ループコプレーナストリップ線路、および第1の場所に前記2つの導体の間に配置された、少なくとも1つの増幅器を含む。この2つの導体は、第1の場所と異なる第2の場所で互いに接続されて、前記少なくとも1つの電圧定常波に対するゼロ電圧ノードをもたらす。この態様の様々な観点において、専用分布増幅方式、コプレーナストリップ線路に近接して配置された複数の直線状導電ストリップ、およびテーパー付きコプレーナストリップ線路構成の内の1つまたは2つ以上を、閉ループ構造と共に使用することができる。別の観点においては、発振器内に重大な損失が含まれるのを回避するように特定の共振器トポロジを使用して、コプレーナストリップ線路導体の交差結合を含む、特定の増幅器構成を利用して、単一モード動作が容易化される。
【0044】
前記の概念のすべての組合せおよび以下により詳細に考察する追加の概念は、本明細書において開示する発明の主題事項の一部として企図するものであることを認識すべきである。特に、本開示に添付のクレームの発明事項のすべての組合せは、本明細書において開示される発明主題事項の一部として企図するものである。
【0045】
詳細な説明
添付の図面は、拡大縮小するために製図することを意図したものではない。図面において、様々な図に示されている、同一またはほぼ同一の構成要素のそれぞれは、同一の番号で表わしてある。分かりやすくするために、すべての図面において、すべての構成要素にラベル付けすることはしていない。
上記の要約に考察したように、本開示の様々な態様は、コプレーナスプリット線路(CPS)に基づく半導体デバイスに関する方法および装置を目的としている。本出願人らは、多様なコプレーナストリップ線路構成によって、多数の応用に対する、いくつかの有用な高速マイクロエレクトロニクスデバイスを形成することができることを認識、理解した。本開示による様々な概念を組み入れたCPSベースデバイスの例としては、それに限定はされないが、インピーダンス整合デバイス、電力結合および分割用のデバイス、遅延器、共振器、発振器、フィルタ、増幅器、ミクサ、その他があり、そのようなデバイスのCMOSベース実装も含まれる。
【0046】
一般に、本発明の様々な態様によるストリップ線路実装に基づく高速マイクロエレクトロニクスデバイスは、約1GHzから約100GHzまでの範囲における差分信号をサポートすることができるが、本開示はこれらの点において限定されないことを理解すべきである。例えば、本明細書に開示された概念に基づくいくつかの実装においては、デバイスは、多様な周波数範囲で動作するように構成して、シングルエンド信号または差分信号のいずれもサポートすることができる。
【0047】
以下にさらに詳しく考察する態様において、CPSベースデバイスには、結果として得られるデバイスの品質係数Qを劇的に増大させる様々な機能を組み入れることができる。さらに、品質係数Qの向上を達成するとともに、同時にデバイス中を伝播する1つまたは2つ以上の波動の位相速度を低減し、それによって比較的小型のデバイスの製造を容易にすることができる。
以下に続く節では、様々なデバイスにおいて汎用可能な本開示による、異なるコプレーナストリップ線路構成に関する態様を、最初に提示する。この開示のその後の節では、定常波発振器(SWO)の例を含めて、様々なコプレーナストリップ線路構成に基づくデバイスのいくつかの具体例を挙げる。本明細書において考察する実施例は、本開示の基礎となるいくつかの顕著な概念を示すことを一義的な目的とするものであること、および本発明は、本明細書において考察するいずれの実装形態またはいずれの特定の実施例にも限定されないことを理解すべきである。
【0048】
I.浮遊導体配列(floating conductor arrays)を備えるコプレーナストリップ線路
図5Aおよび図5Bは、それぞれ、本発明の一態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、装置60の実施例を示す、斜視図および横断面図である。図5Aの上左隅に、x軸36、y軸38およびz軸34を含む座標系が、装置60の斜視図の全体方向を示しており、同様に図5Bでは、上左隅のy軸38およびz軸34が、横断面図がx軸36に平行な方向に沿っていることを示している。
【0049】
図5Aに示すように、この装置は、本質的に互いに平行で、実質的にz軸34に平行な第1の方向に沿って配向された、第1の導体100Aおよび第2の導体100Bを有する、コプレーナストリップ線路100を含む。装置60は、また、コプレーナストリップ線路100に近接して配置された本質的に直線状の導電ストリップの配列62を含む。配列62を構成する直線状導電ストリップは、本質的に互いに平行であり、配列62は、実質的に、第1の方向に直角である第2の方向に沿って配向されている。この態様の一観点においては、図5Aに示すように、第2の方向は、本質的にx軸36に平行、すなわちコプレーナストリップ線路100がそれに沿って配向されている第1の方向と直交している。図5A、5Bに示す配列に描かれている導電ストリップの数は、一義的に説明の目的のものであり、本発明は、配列62における導電ストリップのいかなる特定の数にも限定されないことを理解すべきである。
【0050】
同様に図5A、5Bの両方に示してあるように、装置60は、少なくともコプレーナストリップ線路100と導電ストリップの配列62との間に配置された、少なくとも1つの誘電体101、ならびに該誘電体、前記導電ストリップの配列、およびコプレーナストリップ線路がその上に配置された基板103を含む。この態様の一観点においては、誘電体101はシリコン酸化物とすることができるが、本発明はこの点において限定されるものではなく、その他の誘電体を様々な実装形態で使用することができる。この態様の別の観点においては、基板103はシリコンとすることができる。しかしながら、このときも本発明はこの点において限定されるものではなく、他の基板(例えば、GaAs、SiGe、その他)を様々な実装形態において使用することができる。図5Bを参照すると、この態様の別の観点によれば、コプレーナストリップ線路100(図5Bの視野ではそれの導体100Bだけが見える)が第1の面64に配置され、直線状導電ストリップの配列62が、第1の面と本質的に平行な第2の面66に配置され、その結果、第1の面および第2の面の両方に対する垂線65が、コプレーナストリップ線路の一方の導体および配列62の少なくとも1つの導電ストリップの両方を通過するのがわかる。
【0051】
図5A、5Bに示す態様の装置60の別の観点によれば、この装置は、一般に、約1ギガヘルツ(GHz)から約100GHzの範囲にある周波数を有する、コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの信号をサポートするように構成されている。より具体的には、この装置は、約10GHzから60GHzの範囲にある周波数を有する、コプレーナストリップ線路上の信号をサポートするように構成することができる。様々な実装形態において、差分信号(またはシングルエンド信号)を、コプレーナストリップ線路の導体100A、100Bに沿って移送し、その間に、直線状導電ストリップの配列を、導体100A、100Bに対して浮遊電位(floating electric potential)に維持することができる。以下にさらに詳細に考察するように、浮遊導体配列62がコプレーナストリップ線路100に近接している結果として、装置の品質係数Qが、配列62を備えない従来型コプレーナストリップ線路(例えば、図3A、3Bを参照)において一般的に観察されるそれに対して、劇的に増大する。
【0052】
例えば、図5A、5Bの態様の一観点において、コプレーナストリップ線路100および直線状導電ストリップの配列62の配設は、装置の品質係数Qが、約1GHzから少なくとも60GHzの範囲の少なくとも1つの周波数に対して少なくとも30となるようにされている。別の観点においては、コプレーナストリップ線路および直線状導電ストリップの配列の配設は、装置の品質係数Qが、約1GHzから少なくとも60GHzの範囲の少なくとも1つの周波数に対して、少なくとも50となるようにされている。さらに別の観点では、コプレーナストリップ線路および直線状導電ストリップの配列の配設は、装置の品質係数Qが、約1GHzから少なくとも60GHzの範囲の少なくとも1つの周波数に対して、少なくとも70となるようにされている。以下にさらに詳細に考察するように、前記の特性を達成することは、少なくとも部分的には、装置の様々な構成要素の特有の寸法、構成要素間の特有の間隔、および装置に使用する材料のタイプを選択することによっている。
【0053】
この態様のさらに別の観点によれば、図5A、5Bの装置60における浮遊導体配列62の存在によって、デバイス中を伝播する1つまたは2つ以上の波動の位相速度が減少する結果ともなり、それによって比較的小型のデバイスの製造が容易になる。このような浮遊導体配列の「遅波(slow wave)」効果は、その他の構造と関係して知られており、このような構造においては、そのような浮遊導体による導波路または伝送線路への周期的負荷によって、伝播中の波動(複数を含む)における電気的および磁気的エネルギーが空間的に分離されるものと一般的に考えられている。そのような電気的および磁気的なエネルギーの分離の結果として、その構造の単位長さ当りキャパシタンスCが増大する。関係式
【数6】
に従って、そのように単位長さ当りキャパシタンスCが増大した結果として、位相速度νは小さくなり、したがって所与の信号周波数fにおいて波長λが小さくなる。
【0054】
装置60におけるQ向上効果および位相速度低減効果の両方の考察を容易にするために、ある数の様々な構成要素の寸法および構成要素間の間隔に加えて、装置に使用される材料のいくつかの物理的特性(例えば、誘電率εおよび導電率σ)を、図5Aおよび図5Bに示してある。
例えば、コプレーナストリップ線路100についてx軸36に平行な方向に沿った、第1および第2の導体100A、100Bのそれぞれの幅68を、図5AにWの記号で示してある。同様に、第1と第2の導体の間の間隔70または距離を、Sの記号で示してある。それに応じて、コプレーナストリップ線路100の全体幅の寸法72を図5Aに記号Dで示してあり、ここでD=2W+Sである。y軸38に平行な方向に沿った、導体100A、100Bのそれぞれの厚さ74を、図5A、5Bの両方にtcpsの記号で示してある。最後に、装置60のz軸34に平行な方向に沿った、コプレーナストリップ線路100の全体長さ96を、図5A、5Bの両方に、LCPSの記号で示してある。
【0055】
直線状導電ストリップの配列62について、x軸に平行な方向に沿った、各ストリップの長さ76を、図5AにlSで表わしてある。同様に、図5A、5Bの両方に示してある、z軸34に平行な方向に沿った各ストリップの幅78をdAで表わし、それに対して、(やはり、図5A、5Bに示してある)配列の隣接するストリップ間の、この方向に沿った間隔80をdBで表わしてある。配列62のストリップのそれぞれに対する、y軸に平行な方向に沿った厚さ84を、図5A、5Bの両方に、tstripで表わしてあり、これに対して、第1の面64(この面内にコプレーナストリップ線路100が存在する)と第2の面66(この面内に配列62が存在する)との間の、この方向に沿った距離82を、dsで表わしてある。
【0056】
図5A、5Bに示す装置60の誘電体101および基板103について、第2の面66と基板103の上部境界との間の、y軸に平行な方向に沿った誘電体厚さまたは距離86を、図5A、図5Bの両方にddieで表わし、誘電体の誘電率90をεdieで表わしてある。同様に、y軸に平行な方向に沿った基板厚さまたは距離88をdsubで表わし、基板の誘電率92をεsubで表わし、基板の導電率94をσsubで表わしてある。
【0057】
一般的に、上述のように、出願人らは、装置60の様々な構成要素の特有の寸法、構成要素間の特有の間隔、および装置に使用される材料のタイプの選択によって、装置が有効に信号を搬送することのできる周波数範囲が決まるだけでなく、装置において実現されるQ向上および位相速度低減の程度が決まることを、認識、理解した。特に、シミュレーションプロセスおよび経験的プロセスの両方によって、Q向上および位相速度低減の一方または両方について、装置60の全体構成、より具体的には配列62の導電ストリップの長さls、幅dAおよび間隔dBに関して、多数の有用な一般則が確立されている。
【0058】
例えば、図5A、5Bの態様の一観点によれば、一般的に、大幅なQ向上のための好ましい条件としては、配列62の導電ストリップの長さlsおよびコプレーナストリップ線路100の全体幅Dがほぼ等しい、構成が含まれる。より具体的には、一観点において、導電ストリップの長さlsがコプレーナストリップ線路の全体幅Dよりもわずかに大きい(例えば、約10%以上まで)構造において、劇的なQ向上が認められる。
【0059】
その他の観点においては、大幅なQ向上のための好適な条件としては、各導電ストリップの幅dAと隣接する導電ストリップ間の間隔dBとの少なくとも一方が、コプレーナストリップ線路の全体幅Dよりも大幅に小さい構成が挙げられる。より具体的には、好適なQ向上構成としては、以下の条件の1つまたは2つ以上が認められる構成が挙げられる:幅dAおよび間隔dBが、コプレーナストリップ線路の全体幅Dよりも少なくとも1桁分小さい;導電線路の幅dAおよび導電線路間の間隔dBが、コプレーナストリップ線路の全体幅Dよりもほぼ1桁分小さい;および幅dAおよび間隔dBがほぼ等しい。
【0060】
さらに他の観点によれば、好ましいQ向上構成としては、以下の条件の1つまたは2つ以上が認められる構成が挙げられる:各導電ストリップの幅dAと隣接する導電ストリップ間の間隔dBの内の少なくとも一方が、コプレーナストリップ線路の全体長さLCPSよりも大幅に小さい;幅dAおよび間隔dBは、コプレーナストリップ線路の全体長さLCPSよりも少なくとも1桁分小さい;導電線路の幅dAおよび導電線路間の間隔dBが、コプレーナストリップ線路の全体長さLCPSよりもほぼ1桁分小さい;および幅dAおよび間隔dBがほぼ等しい。
【0061】
図6A、6B、6Cは、図5A、5Bに示す装置60に対する、上述の様々な寸法および間隔に対する様々な異なる値(すなわち、配列62の導電ストリップの長さls、各導電ストリップの幅dA、および隣接する導電ストリップ間の間隔dB)を使用する、シミュレーション品質係数Q(グラフの縦軸)対GHzで表わした信号周波数(グラフの水平軸)についてのある数のプロットを示す3つのグラフである。ここで理解すべきことは、図6A、6B、6Cのグラフを得るためにシミュレートされた特定の構造は、単に事例であること、および本開示に従う様々な措置は、シミュレートされた事例に限定されないことである。このシミュレートされたデバイスおよびそれから生成された結果についての考察は、本明細書においては、一義的に、Q向上のための事例的な好適な条件について、上述した概念のいくつかを説明するためのものである。
【0062】
図6A、6B、6Cのグラフに反映されるシミュレーションにおいて、図5A、5Bに示す装置60の基板103は、厚さdsubが250ミクロン、誘電率εsubが11.9、導電率σsubが10ジーメンス/メートルのシリコンである。誘電体101は、厚さddieが5.155ミクロン、誘電率εdieが4.0であるシリコン酸化物である。コプレーナストリップ線路100の導体100A、100Bのそれぞれの幅Wは80ミクロンであり、これら導体間の間隔Sは60ミクロンであり、その結果として、コプレーナストリップ線路の全体幅Dは220ミクロンである。各導体100A、100Bの厚さtcpsは0.925μであり、コプレーナストリップ線路と配列62との間の間隔dsは1.0ミクロンであり、各導電ストリップの厚さtstripは0.64ミクロンである。最後に、シミュレートされた装置の長さLCPSは400ミクロンである。
【0063】
図6A、6B、6Cのグラフの結果となる、すべてのシミュレーションのための定数として前記の値を使用して、配列62の導電ストリップの長さls、各導電ストリップの幅dA、および隣接する導電ストリップ間の間隔dBを、それぞれその他と独立に変化させて、装置の品質係数Qに与える影響を観察した。以下の表1には、図6A、6B、6Cのグラフの結果となるシミュレーションに使用される、これらのパラメータに対する様々な値を要約してあり、続いてグラフについてのより詳細な考察を行う。表1を参照して、図6A、6B、6Cに示す各プロットは、シミュレートされた異なる装置を表わす。
【0064】
【表1】
【0065】
図6Aは、それぞれ、導電ストリップが3つの異なる長さlsを有し、その一方で、幅dAおよび間隔dBは両方ともそれぞれ5ミクロンに一定に保持されている、装置を表わす3つのプロット150、152、154を示している。特に、プロット150は、(コプレーナストリップ線路の幅Dよりもわずかに長い)240ミクロンの長さlsを反映し、プロット152は、(コプレーナストリップ線路の幅Dよりも大幅に長い)400ミクロンの長さlsを反映し、プロット154は、(コプレーナストリップ線路の幅Dよりも短い)180ミクロンの長さlsを反映している。
【0066】
図6Aのグラフから、lsがコプレーナストリップ線路の幅Dにほぼ等しいか、わずかに長い、シミュレートされた装置において、30GHz近くの周波数で、約65の最高品質係数Qが得られることがすぐにわかる。しかしながら、図9Aと関連して以下にさらに考察するように、ここで理解すべきことは、図6Aにおけるシミュレートされた装置のそれぞれは、同様の寸法および材料を使用するが、導電金属ストリップの配列62を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置と比較して、顕著なQ向上を達成することである。特に、配列62を備えないそのようなデバイスの品質係数Qは、約5〜60GHzの範囲の周波数範囲において10より低い値に留まる(図9Aのプロット176を参照)。したがって、(例えば、図5A、5Bに示す)そのような装置に配列62を追加すると、一般的に、導電ストリップの広範囲の異なる長さlsに対して、この周波数範囲の全体を通して顕著なQ向上が得られる。
【0067】
図6Bは、それぞれ、導電ストリップが4つの異なる幅dAを有し、一方で、ストリップの長さlsは240ミクロンに一定に、ストリップ間の間隔dBは5ミクロンに一定に保持されている、装置を表わす4つのプロット156、158、160、162を示している。特に、プロット156は、5ミクロンの(すなわち間隔dBに等しい)幅dAを反映し、したがってこのプロットは、図6Aに示すプロット150と同一である。図6Bのプロット158は、(間隔dBよりもはるかに小さい)1ミクロンの幅dAを反映し、プロット160は、(間隔dBの2倍の)10ミクロンの幅dAを反映し、プロット162は(間隔dBよりもはるかに大きい)20ミクロンの幅dAを反映している。
【0068】
図6Bのグラフからすぐに分かるように、幅dAおよび間隔dBの両方が、コプレーナストリップ線路100の全体幅Dおよび長さLCPSよりもはるかに小さい、5ミクロンである、シミュレートされた装置において、30GHz付近の周波数において約65の最高品質係数Qが得られる。しかしながら、ここでも理解すべきことは、図6Bのシミュレートされたデバイスのそれぞれは、(幅dAが間隔dBよりもはるかに大きい)プロット162によって表わされるデバイスを例外として、同様の寸法および材料を使用するが、導電ストリップの配列62を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置と比較して、顕著なQ向上(Q>10)を達成することである(例えば、図9Aのプロット176を参照)。図6Bのプロット162の場合には、間隔dBと比較して大幅に大きい幅dAのために、導電ストリップが、配列に類似するよりも、コプレーナストリップ線路の下方の導電プレートに類似し始めることになり、それによって、装置における損失が減少し、品質係数Qを向上させるという配列62の役割が弱まる。
【0069】
図6Cは、それぞれ、隣接する導電ストリップ間の4つの異なる間隔dBを有する装置を表わす、4つのプロット164、166、168、170を示しており、一方で、ストリップの長さlsは240ミクロン一定、各ストリップの幅dAは5ミクロン一定に保持されている。特に、プロット164は、5ミクロンの(すなわち、幅dAに等しい)間隔dBを反映し、プロット166は、(幅dAの2倍の)10ミクロンの間隔dBを反映し、プロット168は、(幅dAよりもはるかに大きい)20ミクロンの間隔dBを反映し、プロット170は、(幅dAよりもはるかに小さい)0.5ミクロンの間隔dBを反映する。
【0070】
ここで理解すべきことは、図6Cのプロット164は、図6Bのプロット156および図6Aのプロット150と同一である、すなわち幅dAおよび間隔dBの両方が5ミクロンであり、これらのプロットに対して、図6A、6Bのシミュレーションにおいて30GHz付近の周波数で65の最高Qが得られたことである。しかしながら、図6Cのグラフから、留意すべき興味深い点は、プロット166から、間隔dBが10ミクロン、幅dAが5ミクロンであるシミュレートされた装置において、30GHz付近の周波数において、約70のわずかに高い品質係数Qが得られることである。また、プロット166から注目すべき点は、この構成について、図6Cにおけるシミュレーションに対する最高Qとして75が、約35GHzの周波数において得られることである。
【0071】
いかなる場合にも、図6Cのシミュレーションにおいて、幅dAおよび間隔dBの寸法の両方が、コプレーナストリップ線路100の全体長さDおよび長さLCPSよりはるかに小さい。また、図6Cのシミュレートされたデバイスのそれぞれは、同様の寸法および材料を有するが、導電ストリップの配列62を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置(例えば、図9Aのプロット176を参照)と比較して、顕著なQ向上(Q>10)を達成する。図6Cのプロット170の場合には、間隔dB(0.5ミクロン)と比較して大幅に大きい幅dA(5ミクロン)によって、劇的効果のいくぶん小さいQ向上が生じるのは、やはり導電ストリップが、配列に類似するよりも、コプレーナストリップ線路の下方の導電プレートに類似し始め、それによって装置における損失を低減し品質係数Qを向上するという配列62の役割が弱まるためである。
【0072】
図7A、7B、7Cは、それぞれグラフ6A、6B、6Cのグラフに示すシミュレーションに対応する、「減速係数(slowing factor)」または位相速度減少(グラフの垂直軸)対GHz単位の信号周波数(グラフの水平軸)のプロットを示す、3つのグラフである。特に、図7Aのプロット150’、152’、154’は、図6Aのプロット150、152、154と同一のシミュレーション条件(表1参照)に対応するのに対して、図7B、7Cのプロットは、図6B、6Cのプロットと同様に対応する。図7A、7B、7Cのグラフにおいて、また本明細書の別の場所で考察したように、「減速係数」は、c/νとして定義され、ここでcは空気中での波動速度を表わし(すなわち、
【数7】
)、νは所与のシミュレートされたコプレーナストリップ線路に基づく装置内での位相速度を表わす。
【0073】
図7A、7B、7Cのグラフにおいて容易に観察されるように、表1に与えられる寸法に基づき、シミュレートされた装置のすべては、ある有意な程度の位相速度低減を示す。しかしながら、ここで興味深いことは、図7A、7B、7Cのグラフにおいて最大程度の位相速度低減を示すプロット(すなわち、プロット152’、156’、および170’)は、すべての場合において、図6A、6B、6Cのグラフにおいて最大程度のQ向上を示すプロットに、必ずしも対応しないことである(例えば、図6Aのプロット150と図7Aのプロット150’とを比較のこと)。したがって、これらのグラフは、本開示による様々なCPSベース装置を設計して、特定の用途に対して装置を「最適化する」際の、評価可能な程度の許容範囲を示している。言い換えると、本開示による装置の様々な構成要素のための具体的な寸法は、少なくとも部分的に、所与の応用における(位相速度低下に関係する)小型化および(品質係数Qに関係する)損失のそれぞれの重要性に基づいて、選択することができる。
【0074】
ここでも、理解すべきことは、図6A、6B、6C、7A、7B、7Cのグラフを得るためにシミュレートされた特定の構造は単に事例に過ぎないこと、および本開示によう様々な装置は、これらの事例に使用される、その特定の材料および寸法に限定されないことである。しかしながら、要約すると、これらのシミュレーションは、全体的に、本発明の様々な態様によるコプレーナストリップ線路に基づく装置において、大幅なQ向上および位相速度低減の両方が実現できることを実証している。また、これらのシミュレーションは、Q向上および位相速度低減を認めることのできるような装置の構成に対する注目すべきガイドラインを与える。
【0075】
図8は、本発明のさらに別の態様による装置60Aの(図5Bのそれと同様の)横断面を示す図である。図8において、装置60Aは、本質的に直線状導電ストリップの2つの配列62A、62Bを含み、配列の一方62Aは第2の面66に配置され、配列の別のもの62Bは、第1の面64および第2の面66に本質的に平行な第3の面67に配置されている。図8に示す態様の一観点によれば、配列62A、62Bの導電ストリップは、交互して配設されており、それによって第1、第2および第3の面の垂線はいずれも、配列62Aの導電ストリップおよび配列62Bの導電ストリップの両方は通過しない。図8の装置60Aに使用される複数の配列62A、62Bは、一般的に、図5A、5Bに示す装置60と比較して、さらなる位相速度低減を容易にしながら、同時に、導電ストリップの配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路に基づく装置と比較して、計測可能な程度のQ向上を維持する。
【0076】
図9A、9Bは、図8の複数配列装置60A、図5A、5Bの単一配列装置60、および導電ストリップの配列(複数を含む)を備えない同様な寸法のコプレーナストリップ線路装置(例えば、図3A、3Bを参照)に基づくシミュレーションの結果を比較する、それぞれ品質係数Q対周波数)、および減速係数もしくは位相速度低減対周波数の、2つのグラフを示している。具体的には、図9Aにおいて、プロット172は、単一配列装置60に対するQ対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット174は、複数配列装置60Aに対するQ対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット176は、導電ストリップの配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路装置に対するQ対周波数のシミュレーション結果を表わす。図9Bにおいて、プロット172’は、単一配列装置60に対する減速係数対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット174’は、複数配列装置60Aに対する減速係数対周波数のシミュレーション結果を表わし、プロット176’は、導電ストリップの配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路装置に対する減速係数対周波数のシミュレーション結果を表わす。
【0077】
図9A、9Bのグラフにおいて、ここでも、図6A、6B、6Cに表わすシミュレーションと関係して上述したものと同じ材料パラメータ(εdie、εsub、σsub)および基板厚さdsubを有する、シリコン基板およびシリコン酸化物誘電体が、すべてのシミュレートされた装置において使用されている。さらに、コプレーナストリップ線路寸法W、S、D、LCPS、tcpsは、図6A、6B、6Cに関係して上述したものと同一である。図9Aおよび図9Bの単一配列装置および複数配列装置のシミュレーションに対して、各導電ストリップの長さlsは240ミクロン、各ストリップの幅dAは5ミクロン、同一配列の隣接ストリップ間の間隔dBは5ミクロン、各導電ストリップの厚さtstripは0.64ミクロンである。図8を参照すると、複数配列装置に対して、第1と第2の面の間と同様に、第2および第3の面の間の距離dsは、1.0ミクロンであり、第3の面67と基板103の境界との間の誘電体厚さddieは、3.515ミクロンである。
【0078】
図9Aですぐにわかるように、プロット174で表わされている、複数配列装置は、(プロット172で表わされている)単一配列装置と同程度の高い品質係数Qを達成はしないが、複数配列および単一配列の装置の両方とも、プロット176で表わされている、配列(複数を含む)を備えないコプレーナストリップ線路を基にする装置と比較して、ある有意なレベルのQ向上を達成する。より具体的には、(本質的にシリコン基板上のコプレーナストリップ線路を表わす)プロット176は、約5GHzから60GHzの間の周波数範囲のほとんどの部分に対して、Qは10より大幅に低いままであるのに対して、プロット172、174は、この周波数範囲のほとんどに対して、Qは10より大幅に高いままである。
【0079】
図9Bにおいてすぐにわかるように、プロット174’で表わされている複数配列装置は、プロット172’で表わされている単一配列装置よりも、大幅に高い減速係数または位相速度低減を達成する。しかしながら、ここでも、単一配列装置および複数配列装置の両方とも、プロット176’で表わされている、配列(複数を含む)を備えないストリップ線路に基づく装置と比較して、大幅な位相速度低減を達成する。
【0080】
さらに別の態様においては、異なる数および配設の導電ストリップの複数配列を、コプレーナストリップ線路と一緒に使用して、Q向上と位相速度低減の一方または両方を促進することができる。
【0081】
例えば、図10は、本質的に直線状導電ストリップの3つの配列62A、62B、62Cを使用する、本発明の一態様による装置60Bの横断面(図5Bおよび図8のそれと類似する)を示している。図10の装置60Bは、図10では第1の面64、第2の面66および第3の面67に平行な第4の面69に配置された、配列62Cを追加したことを除いて、図8に示すものと実質的と類似している。図11は、本発明の一態様によるさらに別の装置60Cの斜視図(図5Aのそれと類似する)を示しており、この装置は、導電ストリップの2つの配列62A、62Dを使用し、配列62A、62Dは、コプレーナストリップ線路100の下方および上方にそれぞれ配置されている。図11の態様の異なる観点によれば、配列62A、62Dの一方の個々の導電ストリップは、配列62A、62Dの他方の対応するストリップを垂直整列(すなわち、y軸に沿って)に配設するか、または代替的に、それらの配列の個々のストリップを交互に(例えば、図8、10に示す複数配列配設と同様に)配設することができる。その他の態様においては、1つまたは2つ以上の導電ストリップの配列を、様々な方法で、コプレーナストリップ線路100の上方および/または下方に配設することができる。
【0082】
II.コプレーナストリップ線路定常波発振器
様々な異なるデバイスに汎用的に使用することのできる、本開示によるコプレーナストリップ線路構成の様々な概念について考察したが、定常波発振器に基づく、本発明のその他の態様による例示的コプレーナストリップ線路デバイスを次に提示する。ここで理解すべきことは、以下に詳細に考察する異なる態様によれば、本発明による定常波発振器の構成は、節1に上述したように、導電ストリップの1つまたは複数の配列を備えても、また備えなくてもよいことである。
【0083】
a.背景
通信システムに加えて、その他の多数の応用の、最も基本的で普遍的な構成単位の1つは、発振器である。本質的に、すべての通信システムは、ある点において、様々な通信関係機能を促進するのに基準発振器を必要とする。その結果として、高周波方式における発振器設計は、関心の高い領域である。特に、システム周波数が劇的に増大するときに、考慮する必要のある電磁気波動効果によって、様々な伝送線路に基づく高周波発振器設計における高い関心が生じている。
【0084】
伝送線路実装に基づく様々なタイプの発振器が、従来から、ギガヘルツ(GHz)領域の高周波クロック信号を生成するのに使用されている。これらの従来型技法の多くは、重大な伝播遅延誘発位相シフトを生ずることなく集積回路システム全体に、大域的に配布することのできる、本質的に方形波のクロック信号を生成することを究極の目的としている。より具体的には、これらの技法の全般的なねらいは、システム全体を通して事象の正しい順序を保存して、システム全体にわたって伝播させることのできる、低クロックスキュー(clock skew)かつ低クロックジッター(clock jitter)の大域クロック信号を生成することである。伝送線路実装に基づく、進行波発振器(TWO:traveling wave oscillator)および定常波発振器(SWO:standing wave oscillator)の両方が、そのような目的に使用されてきた。
【0085】
定常波は、そのような波動の固有の特性が理由で、本開示に関係して特に関心の対象である。定常波は、同一の振幅と周波数を有して、反対方向に進行する2つの波動が相互作用するときに形成される。伝送線路に沿ったある位置において時間とともに変化する振幅と位相とを有する、進行波と異なり、定常波は、伝送線路に沿ったある位置において一定の振幅と位相を有し、この振幅は線路に沿った位置によって正弦波状に変化する。電圧定常波を生成する通常の方法は、入力波を伝送線路に送り込み、短絡回路などの損失なしの終端器によってそれを反射して戻す方法である。しかしながら、伝送線路導体それ自体による損失(例えば、Rによる「直列」損失およびGによる「並列」損失)によって、通常、入力波と反射波との間に振幅不一致が生じ、その結果として、定常波に歪みを与える残留進行波が生じる。したがって、自続(self-sustaining)定常波発振器を効果的に実装するためには、ある種の補償方式(すなわち、増幅)を使用して、伝送線路に固有の損失を克服する必要がある。
【0086】
コプレーナストリップ線路を使用する定常波発振器の従来式実現方法の1つを、図12に示してある。図12では、導体100A、100Bを有する、(図3A、3Bに示すものと類似の)コプレーナストリップ線路100が、そのコプレーナストリップ線路の長さの両端を短絡させて、それによってコプレーナストリップ線路の両端で電圧定常波「ノード」(すなわち、導体100Aと100Bとの間のゼロ電位)を強制することによって、半波(λ/2)共振器200を形成するように構成されている。理論的には、共振器200は、λに関係する周波数を有する、少なくとも1つの定常波をサポートし、この場合に、図12の下部に図式的に示すように、波動の振幅は、共振器の長さに沿って変化する。
【0087】
図12の発振器構成において、コプレーナストリップ線路導体損失の信号振幅に与える影響は、共振器の長さに沿って間隔を空けて配置した分布増幅器(すなわち、相互コンダクタ(transconductor))を備えて、分布相互コンダクタンス(distributed transconductance)を与えることによって、相殺することができる。特に、図12は、3つのそれぞれの電流源106A、106B、106Cによって給電される、ある数のNMOSクロスカップル型ペア(cross-coupled-pair)相互コンダクタ104A、104B、104Cを示している。これらの相互コンダクタのそれぞれは、コプレーナストリップ線路100の導体100A、100Bに、コプレーナストリップ線路に沿った異なる位置において結合されている。ある数のPMOSダイード接続負荷108A、108B、108Cも、コプレーナストリップ線路100に結合されて、導体100A、100Bの間の同相モード電圧を設定する。
【0088】
ここで留意すべきことは、図12の構成において、相互コンダクタ104A、104B、104Cは、同一のゲインを有するように構成されていることである。所与の相互コンダクタのゲインは、相互コンダクタを構成するトランジスタの幅を乗じた(すなわち、トランジスタゲインは、幅および/または電流の増加と共に増加する)、相互コンダクタに関連する電流源(電流源106A、106B、106Cの内の1つ)によって供給される電流に関係している。図12に示す発振器構成において、クロスカップル型ペアの各トランジスタは同じ幅を有して、各トランジスタには同じ電流が供給され、したがって相互コンダクタはすべて同じゲインを有する。コプレーナストリップ線路上の損失を補償するために、複数同一ゲイン相互コンダクタを使用することによって、そのようなコプレーナストリップ線路のための等価集中モデル(equivalent lumped model)が可能となり、このモデルによって、所与の周波数において発振をサポートするのに必要な発振器パラメータの比較的簡単な決定が可能となる。
【0089】
しかしながら、図12の構成における、同一ゲインを有する複数相互コンダクタを使用することから発生する1つの問題は、議論の余地のある大きなエネルギーが、過剰増幅によって浪費されることである。より具体的には、ふたたび図12の下部の波動図を参照すると、すぐに理解されることは、図示した波動モードに対して、波動の振幅は、共振器構造の中心付近で最大値を有し、中心から離れて共振器の両端に近づくにつれて着実に減少することである。したがって、図示したモードをサポートするために、共振器の中心に位置する相互コンダクタンス104Bと同じ源を有するように構成されている相互コンダクタ104A、104Cが、必要とされるよりも高い増幅のために構成されていることに問題があり、特に、これらの相互コンダクタは、必要以上の電流を使用し、それによって貴重な電力源を浪費する。
【0090】
図12の発振器構成から生じる別の問題は、この共振器は、いかなるモード制御機構(例えば、高次モードの抑制)も使用しないことである。その結果として、この構成には、強い高周波モードを加振する傾向がある。この構成においてモード制御が欠如すると、複数の高周波モードの存在によって基本共振周波数における正弦波形に歪を与えるので、最後には、生成される正弦波信号の品質が劣化する。
【0091】
例えば、図12に示す共振器構造の長さに沿って均等に分布する等ゲイン増幅器は、理論的には、図12に示すλ/2におけるモードに加えて、λ、(3/2)λ、(5/2)λ、3λ、などのその他の奇数の高調波(harmnonics)をサポートすることができる。具体的には、各増幅器は、高周波モードをサポートすることのできる電気的な解放ノード(open node)として作用することができる。この方法においては、図12の共振器は、正弦波形生成に対して最適化されていない。この状態は、多くの用途に対して望ましくない。しかしながら、ここで理解すべきことは、図12に示す共振器の最終的な使用は、本質的方形波クロック生成器のためであるので、いくつかの高次モードの存在は、そのようなクロック信号を生成することに対する、共振器の全体性能に実質的に影響を与えない場合もあることである。
【0092】
本出願者らは、コプレーナスプリット線路実装に基づく、従来型の定常波発振器(SWO)を、修正、改善して高品質、高周波正弦波信号の生成を容易にすることができることを認識、理解した。本開示で考えるSWOによって生成される正弦波信号の全体周波数範囲は、約1GHzから100GHzまでの周波数を含むが、本開示は、この点において限定はされないことを理解すべきである。以下においてさらに考察する本発明の様々な態様によれば、単一モードSWOは、これらの事例的周波数範囲において、低電力消費かつ低位相ノイズの正弦波を生成するように、個別に構成することができる。そのような発振器に対するいくつかの企図される応用としては、それに限定はされないが、無線通信、レーダ、様々な応用のための位相ロックループ(PLL)、その他が挙げられる。
【0093】
b.四分の一波長コプレーナストリップ線路定常波発振器
図13A、13Bは、本発明の一態様によるコプレーナストリップ線路SWOの基礎となるいくつかの基本概念を示す。特に、図13Aは、差分コプレーナストリップ線路(すなわち、図3A、3Bのコプレーナストリップ線路と類似のもの)を形成する導体300A、300Bを含む、本質的に四分の一波長(λ/4)のコプレーナストリップ線路SWO300を示している。SWO300は、長さLのコプレーナストリップ線路(参照番号301)によって形成され、コプレーナストリップ線路の一端は短絡302で成端され、線路の他端は、増幅器304として働く一対のクロスカップル型インバータによって成端されている。この態様の別の観点において、増幅器304は、図12に示すのと類似の方法で、電流源によって駆動される、NMOSクロスカップル型相互コンダクタ対によって実装することができる(図面を分かりやすくするために、NMOSトランジスタおよび電流源は、図13Aには明示的には示さず、クロスカップル型インバータによって図式的に表わしてある)。そのような増幅器は、DCエネルギーをRFエネルギーに変換し、このエネルギーを回路に投入してコプレーナストリップ線路に関する損失を補償する、能動的正帰還(active positive feedback)ネットワークを形成する。
【0094】
図13Aに示すSWO300は、コプレーナストリップ線路の両端において境界条件を満足する定常波をサポートする、すなわちコプレーナストリップ線路の増幅器端において最大電圧振幅揺れ(voltage amplitude swing)を有し、かつ線路の短絡端においてゼロ電圧ノードを有するように構成されている。したがって、コプレーナストリップ線路の長さLに基づく可能な加振モードは、理論的にL=λ/4+n(λ/2)(n=0,1,2,3...)に対応する。実際の実装においては、加振モードをサポートする実際の長さLは、以下にさらに考察する多様な理由のいずれかで、理論長とわずかに異なる場合がある。発振の基本周波数f0は、n=0に対応し、すなわちf0=ν/(4L)であり、ここでνは、コプレーナストリップ線路を包囲する材料とそれを構成する材料の両方によって決まる、波動の位相速度である。
【0095】
図13Bは、SWO300によってサポートされる基本モードに対して、それぞれ図中でV(z)およびI(z)で示されている、SWO300の長さに沿った電圧波および電流波を図式的に示している。図13Bのグラフは、SWOの長さに対応するz軸に沿って示してあり、ここでz=0は、増幅器304の位置に対応し、z=Lは短絡端の位置に対応する。図13Bからすぐにわかるように、電圧振幅揺れV(z)は、図面の左側(z=0)で最大であり、右側に動いて、短絡端(z=L)に到達するとゼロに減少するのに対して、電流I(z)は、反対の要領で挙動する;すなわち、電流は左側で最小であり、右側に動くにつれて増大し、コプレーナストリップ線路の短絡端で最大となる。この態様の一観点によれば、SWOの出力は、増幅器304の両端で取り出すことができ(すなわち、最大電圧振幅揺れの点)、この場合に、出力はSWOへの負荷を低減するために適当にバッファリングされる。
【0096】
c.分布/専用ゲインセルを備える定常波発振器
図13Aに示す(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO300に基づく本発明の別の態様を、図14Aに示してあり、これは分布増幅に関する。しかしながら、ここで理解すべきことは、この態様と関係して考察する概念は、本明細書において考察するように、本発明による他の様々なSWO構成に実装することができることである。したがって、四分の一波長SWOに関係して以下で考察する特定の事例は、一義的に説明の目的で提示するものである。
【0097】
この態様の説明を容易にするために、図13Bに示す電圧波形を、図14Bにおいて再生してある。図14Aの態様において、複数の増幅器または「ゲインセル」304A、304B、304C....304Dが、コプレーナストリップ線路の長さに沿って展開されている。図14Aは、4つのそのような増幅器を明示的に示しているが、ここで理解すべきことは、本発明によるSWOには異なる数の増幅器を使用できるので、本発明は、この点で限定されないことである。また、増幅器は図14Aに、コプレーナストリップ線路に沿って等間隔で配置されているように図式的に表わしてあるが、異なる態様によれば、増幅器対して様々な位置が可能であるので、本発明は、この点においても限定はされない。一般に、ここで理解すべきことは、本発明の様々な態様による、増幅器の数と配置に加えて、増幅器のそれぞれのゲインは、以下にさらに考察するように、少なくとも部分的には発振器によって加振される1つまたは2つ以上の所望のモードによって決めることができることである。
【0098】
例えば、図14Aに示す態様の一観点によれば、増幅器のそれぞれのゲイン間の関係は、増幅器を展開するコプレーナストリップ線路に沿った異なる位置における、所望の定常波モードの期待される電圧振幅間の関係を近似するように、調整されている。例えば、図14Bを参照すると、図示した定常波モードの電圧振幅は、コプレーナストリップ線路の長さに沿って左から右へと減少するので、増幅器のそれぞれのゲインG1、G2、G3...Gnも、コプレーナストリップ線路に沿って左から右へと(すなわち、z=0からz=Lに動いて)減少する。このように、この事例における増幅器のゲインは、「振幅依存」である。
【0099】
図14Aに示す態様においては、分布増幅のいくつかのよく知られた便益(例えば、周波数応答の増大)を達成しながら、同時に、振幅のゲインを調整することによって貴重な電力源を保存することができる。ここで思い起こすべきことは、図12に示す従来型SWO実装においては、複数の分布増幅器は、増幅器展開位置における電圧振幅が異なるにもかかわらず、同じゲインを有するように構成されており、それによって、この従来型構成においては、大きなエネルギーが過大増幅によって浪費されることに問題があることである。それとは異なり、本発明による、専用ゲイン増幅器を使用する図14AのSWO実装では、動作のたに必要な合計電流は、複数同ゲイン増幅器を使用する類似の実装よりも少なく、それによって貴重な電力源が保存される。
【0100】
さらに、図14Aに示す態様の複数専用ゲイン増幅器は、さらに、(例えば、λ/4に対応する)実質的に単一モードでの発振を確実にする、モード制御機構として機能する。このことは、やはり、理論的にはある数の他のモードをサポートすることが可能であり、それによって発振器によって生成される信号の正弦波品質を低下させる、図12に示す複数の同ゲイン増幅器従来型構成とは対照的に異なっている。
【0101】
図13Aの態様(1つの集中増幅器)と図14A(分布増幅器)を比較、対照するために、約1500ミクロンの長さを有するコプレーナストリップ線路を使用する、これらのSWOの事例的実装を分析した。図14Aに対応する事例的実装において、4つの増幅器が、コプレーナストリップ線路に沿って使用され、z=0、z=L/4、z=L/2、およびz=3L/4の等間隔で配置されている。ここで留意すべきことは、上述のように、所与の増幅器のゲインは、トランジスタの大きさと消費される電流の積の平方根に比例することである。増幅器において使用されるトランジスタのすべては、長さが0.18ミクロンである。増幅器ゲインを決定する、トランジスタ幅および各増幅器による電流消費は、それぞれ以下のとおりである。
【0102】
【表2】
この実装形態においては、SWOは、12.19GHzで発振し、最大電圧振幅は、z=0において、2.09ボルトである。
【0103】
図13Aに対応する事例的実装において、単一増幅器304のゲインは、図14Aに対応する実装において使用される、分布増幅器の合計集中ゲインに等しく選択される。より具体的には、増幅器304のトランジスタの長さはやはり0.18ミクロンであり、トランジスタ幅は、22.5[1+sin(3π/8)+sin(π/4)+sin(π/8)]ミクロンで与えられる。同様に、増幅器によって伝えられる全電流は、12[1+sin(3π/8)+sin(π/4)+sin(π/8)]ミリアンペアである。このSWOは、9.76GHzで発振し、最大電圧振幅は、z=0において2.27ボルトである。したがって、図13Aに基づく事例的集中増幅器SWOは、より高い振幅を達成するのに対して、図14Aに基づく事例的分布増幅器SWOは、評価可能な程度に高い動作周波数を達成する。
【0104】
e.テーパー付きコプレーナストリップ線路を使用する定常波発振器
図15Aは、本発明による(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO500の別の態様を示し、ここでSWOは、位置依存線路パラメータを有するテーパー付きコプレーナストリップ線路に基づいている。図15Aに示す、テーパー付き構成を使用するSWO500の態様の説明を容易にするために、図13Bに示した(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOに対する電圧および電流の波形を、図15Bに再生した。しかしながら、ここで理解すべきことは、この態様と関係して考察した概念は、本明細書において考察したように、本発明による他の様々なSWOに実装可能であることである。したがって、本質的に四分の一波長のSWOに関係する、これから後に考察する特定の事例は、一義的に、説明の目的で提示するものである。さらに、以下で考察するように、本発明によるテーパー付きコプレーナストリップ線路構成は、SWOでの使用の用途に限定されるものではなく、その他のCPSベースデバイスにおいて使用できることを理解すべきである。
【0105】
1.位置依存パラメータを備えるコプレーナストリップ線路
本発明の一態様は、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが、コプレーナストリップ線路に沿った位置の不連続または連続的な関数(すなわち、R(z)およびG(z))となるように形成されている、コプレーナストリップ線路を目的としている。この態様の一観点においては、RおよびGが変動するにも関わらず、一様な特性インピーダンスが実質的に維持されるように、コプレーナストリップ線路をさらに構成して、局所反射を回避するようにすることができる。
【0106】
この態様の1つの事例的実装形態においては、例えば図15Aに図示するSWO500に示すように、テーパー付きコプレーナストリップ線路が使用され、コプレーナストリップ線路導体500A、500B間の間隔504、および/または各導体500A、500Bの幅502は、コプレーナストリップ線路に沿った位置zの関数として不連続または連続的に変化する。図15Aは、テーパー付き構成の上面図(図3Bと同様)であり、ここで図15Aの間隔504は相応に記号S(z)で表わし、幅502は相応して記号W(z)で表わしてある。その他の点においては、テーパー付き構成500は、図3Aの横断面図に示すものと同様にしてもよい;すなわち、導体500A、500Bは基板上方の誘電体上に配置してもよい。図15Aにおける導体500A、500Bのテーパー付き構成は、コプレーナストリップ線路の長さに沿ったコプレーナストリップ線路パラメータR、Gを効果的に変化させ、その結果、それらは位置依存となり、同時に、コプレーナストリップ線路の一様な特性インピーダンスが効果的に維持される。
【0107】
特に、単位長さ当り抵抗Rは、一般的にはよく知られたスキン効果に関係し、この場合に、高周波において、電荷担体が縁端近く、かつ所与の導体の芯から離れて移動する。コプレーナストリップ線路を構成する2つの導体が、互いにより接近させられる(すなわち、距離Sが減少および/または導体幅Wが増大する)ので、導体の縁端または「表皮」付近を流れるそれぞれの電荷が互いにより接近させられて、それによって電荷流を妨げる。したがって、導体が互いにより接近させられると、一般に、単位長さ当り抵抗Rが増大する。
【0108】
単位長さ当りコンダクタンスGは、導体と、コプレーナストリップ線路がその上方に配置されている基板との間の、電磁場損失に一般に関係する。特に図3Aに示すコプレーナストリップ線路横断面を再び参照すると、コプレーナストリップ線路の導体が互いに離れる方向にさらに移動すると(すなわち、距離Sが増大かつ/または導体幅Wが減少すると)、導体中を流れる電流による磁場が、コプレーナストリップ線路がその上方に配置されている基板と相互作用する機会が増大し、それによって、単位長さ当りコンダクタンスGが増大する。逆に、導体が互いにさらに接近させられると(すなわち、距離Sが減少、かつ/または導体幅Wが増大すると)、基板への損失は一般に減少し、したがって単位長さ当りのコンダクタンスGは減少する。
要約すると、前述のことから、上記の事例におけるコプレーナストリップ線路パラメータR、Gは、一般に導体間隔と逆に変化すること、すなわち導体がより接近させられると、Rは増大しGは減少すること、逆に導体がより大きな距離だけ隔てられると、Rは減少しGは増大することを理解すべきである。
【0109】
2.SWOに対する位置依存パラメータの意味
コプレーナストリップ線路全般上の信号伝播ついて、Rは電流波への結合とみなすことができるのに対して、Gは電圧波への結合とみなすことができ、それぞれ直列損失および並列損失を導入する。したがって、小さなRは少ない直列損失に対応し、小さなGは少ない並列損失に対応する。この直列損失Rと並列損失Gとの間のトレードオフは、それらが導体間隔に対して逆変化するために、進行波を搬送するコプレーナストリップ線路における損失最小化に対して、重大な制約を課す可能性がある。しかしながら、図15Bに示すように、コプレーナストリップ線路が定常波のホストとなる場合には、図15Aに示すテーパー付き構成500を介してR−Gトレードオフを活用して、位置依存定常波振幅を利用することによって、大幅に損失を低減すること(および結果として得られるデバイスの品質係数Qを対応して向上させること)が可能である。
【0110】
例えば、図15Bから、図15AのSWO500の電圧振幅揺れが最大となる、z=0において、単位長さ当りコンダクタンスGが低いと、基板への電力損失は、(z=0において比較的高い)電圧の2乗に単位長さ当りコンダクタンスを乗じたものに比例するので、基板への電力損失が少ない結果となる。したがって、この点において比較的電圧が高い場合でも、基板への損失は、低い単位長さ当りコンダクタンスGを有するコプレーナストリップ線路構成を備えることによって、低減することができる。一方、z=0において、図15Bは、コプレーナストリップ線路の導体内を流れる電流は最小値であり、したがって、コプレーナストリップ線路導体による(すなわち、単位長さ当り抵抗Rによる)電力損失は問題ではなく、その理由は、この電力損失は、(z=0において比較的低い)電流の2乗に単位長さ当り抵抗Rを乗じたものに比例するからである。したがって、この点においてRが高い場合でも、低い電流のせいで、必ずしも重大な損失を誘発するわけではない。
【0111】
反対のシナリオが、z=L(すなわち、図15Aに示すコプレーナストリップ線路の短絡端)に対して成り立つ。特に、図15Bに示すように、この点において、電圧はゼロであり、電流は最大となる。したがって、コプレーナストリップ線路におけるこの点において大きな単位長さ当り抵抗Rを有すると、高い電流のせいで大幅な損失を生ることになるが、それに対して、単位長さ当りコンダクタンスGは、低い電圧(すなわち、ゼロ電圧ノード)のせいで、問題となることは比較的少ない。
【0112】
前記のことを考慮して、本発明の一態様は、変化する単位長さ当り抵抗R(z)および変化する単位長さ当りコンダクタンスG(z)を有するコプレーナストリップ線路を含む、四分の一波長SWOを目的としており、これにおいては、低い単位長さ当りコンダクタンス(低G)の領域が、最大電圧振幅が予期される点z=0に位置し、それによって基板への電力消費が低減される。さらに、SWOは、低い単位長さ当り抵抗(低R)のコプレーナストリップ線路領域を、最大電流が予期される点z=Lに位置するように構成される。図15AのSWO500は、そのような配設の一例となる。一般に、この態様によれば、定常波から生ずる位置依存性の電圧および電流の振幅は、固定位置振幅に基づいてパラメータRおよびGを適当に調整することによって、デバイス損失を低減すること(および対応するQの向上)を容易にする。
【0113】
この態様(に加えて他の態様)において使用されるテーパー付きコプレーナストリップ線路構成は、多数の異なる方法で実装することができる。例えば、一観点によれば、コプレーナストリップ線路の全体長さは、それぞれが異なるRおよびGを有する、ある数の等しいまたは異なる長さの区画部分(section)に分割してもよく、この場合に、LおよびCは一定に維持されて、実質的に一様な特性インピーダンスを維持して効果的に局所反射を防止する。代替的に、コプレーナストリップ線路を、徐々にテーパーの付いた導体間隔および幅を設けて実装して、RおよびGがコプレーナストリップ線路に沿った位置によって徐々に変化するようにして、同時にやはり実質的に一様な特性インピーダンスが維持されるようにしてもよい。
【0114】
図16は、ストリップ線路の特性インピーダンスZを大幅に変えることなく、コプレーナストリップ線路に沿ってRとGを変化させる、本発明の一態様による方法を説明する、グラフおよび対応する事例的テーパー付きコプレーナストリップ線路構成505を含む。この態様の一観点によれば、図16のグラフは、ストリップ線路の長さに沿ってストリップ線路の幅Wおよびストリップ線路導体間の間隔Sを変化させることに基づく、コンピュータシミュレーション(例えば、Sonnet EM)によって得られるデータから編集することができる。したがって、図16のグラフの水平軸は、幅Wを表わし、グラフの垂直軸はストリップ線路の導体間の間隔Sをあらわす。
【0115】
図16のグラフは、3つの事例的「一定特性インピーダンス等高線」Z0,1、Z0,2、Z0,3のプロットを含み、特に、これらの等高線のそれぞれは、異なるWおよびSの値に対して、異なる一定の特性インピーダンスを表わし、ここでZ0,3>Z0,2>Z0,1である。図16は、また、3つの例示的「損失等高線」(R1,G1)、(R2,G2)、(R3,G3)のプロットを含み、ここで各損失等高線は、WおよびSの異なる値に対して、Rの一定値、および対応するGの一定値を反映する。図16のグラフは、損失等高線のそれぞれを、RとGの両方に対する同一の一定値を表わす単独線として表わしているが、実際には、所与の損失等高線に沿ったRおよびGのそれぞれの値は同一ではないが、それでも相応に互いに近似している。したがって、図16のグラフにおいて、各損失等高線に対してRおよびGの値は実質的に同一であると仮定するのは、実際的な設計目的では合理的な近似である。
【0116】
図16に示すように、WまたはSのいずれかを増大させると、上述したR−Gトレードオフのせいで、Rが減少し、Gが増加する結果となる(すなわち、R3>R2>R1およびG3<G2<G1)。しかしながら、特性インピーダンスZ0は、Sが増大すると増大するが、Wが増大すると減少する。したがって、z=0付近で低G、およびz=Lで低Rを達成して、大幅にZ0に影響を与えることなく損失を低減するためには、図16に示すZ0等高線の1つに追従して、コプレーナストリップ線路導体を、同時に、z=0からz=Lまで幅を広げ、かつ離れる方向に移動させてもよい。
【0117】
前述の概念を説明するために、図16のグラフから、本質的に一定の特性インピーダンスZ0,2を有する、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成の設計を一例として考える。ここで理解すべきことは、この事例の基礎となる方法は、以下に考察するように、結果として得られるデバイスの所望の特性インピーダンスを表わす、その他の特性インピーダンス等高線に同様に適用することができることである。
具体的には、図16の一定特性インピーダンス等高線Z0,2を参照して、3つの点A、B、Cを、Z0,2等高線に沿って、この等高線と損失等高線(R3,G3)、(R2,G2)、(R1,G1)とのそれぞれの交点で、識別する。やはり図16の事例に示すように、点A(すなわち高R、低G)に対応する寸法WAおよびSAを、テーパー付きストリップ線路505のz=0の周辺の部分で使用し、点Bに対応する寸法WBおよびSBを、ストリップ線路の中央付近の部分で使用し、点C(すなわち低R、高G)に対応する寸法WCおよびSCを、ストリップ線路のz=Lの周辺の部分で使用する。
【0118】
前述の事例は、特性インピーダンス等高線Z0,2に沿って、3つの基準点A、B、Cを使用して、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成505に沿った対応する寸法を決定するが、ここで理解すべきことは、本発明はこの点において限定されるものではなく、すなわち、所与の特性インピーダンス等高線に沿って任意の数の点を使用して、テーパー付きコプレーナストリップ線路に沿った、対応する寸法を決定することができることである。特に、点の数が増加するにつれて、結果として得られるテーパー付きコプレーナストリップ線路は、RおよびGが本質的にストリップ線路に沿った位置zの連続的関数である線路に、次第に類似してくる。しかしながら、ここで理解すべきことは、所与のインピーダンス等高線に沿って実質的に任意有限の数の点に対して、区分テーパー付き構成(piecewise tapered configuration)が生成され、この構成においては、RおよびGがストリップ線路に沿って不連続に(すなわち、区分毎に)変化することである。
【0119】
図17は、そのような区分変化の概念をさらに説明している。特に、図17は、一定特性インピーダンスZ0を表わす例示インピーダンス等高線のプロットを示すW−S空間におけるグラフを含む(図17のグラフにおけるW−S軸は、図16のそれらと入れ替えられていることに注意のこと)。図17のグラフの直下に示す、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路構成505の5つの異なる部分または区画部分に対する、それぞれのWおよびS寸法に対応して、5つの点(1、2、3、4、および5)がこの等高線に沿って選択される(例示的寸法W5およびS5を、区画部分5に対して図17に示してある)。図17の事例においては、5つの点を選択するが、ここでも理解すべきことは、他の態様においては、異なる数の点を選択してもよいことである。また、図17に定性的に示してあるように、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路の各区画部分1〜5のz軸に沿った長さは、ストリップ線路の1つまたは2つ以上のその他の区画部分と同じであっても、なくてもよく;特に、様々な態様によれば、テーパー付きコプレーナストリップ線路の全長に対する各区画部分1〜5の最適配分は、(以下に詳細に考察する)数学的手順で決定してもよく、かつ随意に経験的判定によって調節してもよい。
【0120】
より具体的には、図16および図17に示す区分テーパー付き構成のいくつかの態様において、損失考察によって、区分構成における各区画部分特有のそれぞれの長さおよび位置を指定することもできる。例えば、一態様において、テーパー付き構成の全体損失を最少化するために、各区画部分を、所与の位置zでの定常波電圧および電流の振幅が与えられると、その位置において最少局所損失が生じる、所定の位置に配置することもできる。
【0121】
しかしながら、zドメインにおける定常波振幅(すなわち、V(z)およびI(z))は、テーパー付きコプレーナストリップ線路構造自体に依存するので(したがってストリップ線路の構築以前には未知であるので)、zドメインの透視視点(perspective)で見た、損失最適化テーパー付きストリップ線路の設計と構築は、一般に、いくぶん困難で、時間がかかり、そしておそらく高価な反復技法を必要とする。前述のことを考慮して、出願者らは、テーパー付きストリップ線路構成の設計および構築は、θを波動位相とする、θドメインの透視視点からの設計を考えることによって、大幅に容易化することができることを認識し、理解した。
【0122】
特に、以下に詳細に考察するように、θドメインにおける定常波電圧および電流の振幅は、実際的な目的では、(弱い損失を仮定して)単純正弦波であると考えてもよく、したがって、zドメインからθドメインへの変換を適用すると、設計のための損失解析が大幅に簡略化される。θドメインにおける区分テーパー付き構成の設計後に、逆変換を適用して、zドメインにおける設計パラメータを与えてもよく、これは、テーパー付き構成を物理的にレイアウトするための実際寸法(すなわち、z軸に沿った区画部分長)を得るために必要である。以下の考察においては、このプロセスをステップごとに詳細に述べる。
【0123】
単一定常波モードのホストとなる、一定特性インピーダンスを有する、一般的テーパー付き(位置依存性)コプレーナストリップ線路における、全体時間平均損失Pdissは、次式:
【数8】
によって与えられ、ここで、Lは線路の水平スパン、I(z)およびV(z)は、位置zにおける定常波モードの電流および電圧の振幅であり、R(z)およびG(z)は、zにおける、単位長さ当たりの直列抵抗および並列コンダクタンスである。最小損失テーパー付き線路を得るために、上述したR−Gトレードオフの拘束の下に、式(I)におけるPdissを最小化するR(z)およびG(z)を見出す必要がある。しかしながら、I(z)およびV(z)はストリップ線路の物理的構造に依存し、その構造はまだ決定されていないことから、先験的には未知であるので、式(I)の積分を求めるのは非常に困難である。したがって、zドメインにおける設計プロセスには、ある種の循環論理(circular argument)を必要とし、特に、時間のかかる反復技法が必要となり、最適化過程を非常に複雑で高価なものにする可能性がある。
【0124】
本発明の一態様によれば、式(I)の計算は、積分変数zを波動の位相θに置き換える変換によって、実質的に簡略化される。第1に、無限小の数の均一なセグメントを有する区分テーパー付き構成を考える。各区分構成のそれぞれの均一なセグメントの長さはdzであり、そして同一特性インピーダンスはZ0である。zとz+dzの間に位置する無限小の均一線路セグメントを伝わると、波動は、dθの無限小の位相変化を受けて、ここでdθとdzは、dθ=β(z)dzによって関係づけられる。
【0125】
ここでβ(z)は、無限小均一セグメント内の移動波の伝播定数であり、よく知られた式:
【数9】
で与えられ、ここで
【数10】
は、無限小均一線路セグメントにおける波動の位相速度であり、L(z)およびC(z)は、無限小均一セグメントにおける単位長さ当たりインダクタンスおよびキャパシタンスであり、そしてωはモード周波数である。上記の関係にβ(z)=dθ/dzを代入すると、θとzとの間に次の関係が得られる。
【数11】
【0126】
ふたたび、均一線路の場合には、θ(z)は、よく知られた関係
【数12】
に簡略化され、ここでβは位相定数、2π/λである。しかし、不均一な線路においては、波動位相速度
【数13】
は、zと共に変化することがあり、したがってθ(z)は線形関数ではない。
zからθ(z)へのマッピングは有用であり、その理由は、一定の特性インピーダンスZ0を有するいずれの汎用伝送線路においても、定常波モードに対する電圧及び電流の振幅は、弱い損失を仮定して、いつも位相θ(z)の正弦曲線であるからである。したがって、これらの振幅は次式のように書き換えることができる。
【数14】
【0127】
θへのパラメータ表示を用いて、式(I)からの電量消費式は、線路長が、(本質的に四分の一波長SWOに対して)π/2位相シフトを生成するように選択されると仮定して、次式:
【数15】
のように書き換えることができる。ここで、Rθ(θ)およびGθ(θ)は、θにおけるラジアン位相シフト当たりの直列および並列損失として定義され、次式:
【数16】
によってR(z)およびG(z)に関係づけられ、ここでdzとdθとの間の関係は、式(3)または(4)から得ることができる。式(7)における積分は、電流および電圧定常波形が、特定のテーパー付きストリップ線路構成と無関係に、θドメインにおいては常に既知の正弦曲線であるので、比較的容易である。
【0128】
上述のことを考慮すると、図17と関係して上記で考察した概念に基づく、区分構成の特定の事例を用いて、本発明の一態様による、zドメインからθドメインへの変換を使用する設計に対する、最適化プロセスを説明することができる。ふたたび図17に示す、特性インピーダンス等高線を参照して、Z0=25オームの事例的特性インピーダンスに基づいて、損失パラメータが、等高線に沿った5つの点(点1〜5)に対してシミュレートされた。以下の表2は、このシミュレーションの結果が記載されており、各区画部分に対するストリップ線路のW−S寸法に加えて、対応する損失パラメータRθおよびGθを示している。
【表3】
【0129】
5つの区画部分のそれぞれに対してθドメインにおける損失パラメータが得られると、各区画部分が、テーパー付き構成の全体損失を最小化するために寄与すべき、位相変化の量を求めることができる。一態様によれば、このことは、θドメインの各点において(すなわち、0≦θ≦π/2)、5つの区画部分の内のいずれが、そのローカル点において単位位相シフト当たりの損失を最少化するかを計算することによって行うことができる。単位位相シフト当りの損失は、式(7)における損失積分の被積分関数である:
【数17】
【0130】
図17を参照すると、z−θ変換を説明する目的で、z軸は、θ軸ともラベル付けしてあるとともに、移行点(θ1,z1)、(θ2,z2)、(θ3,z3)、および(θ4,z4)を、区画部分間の境界に示してある。区画部分間の移行点θ1、θ2、θ3およびθ4は、式(10)を用いて、1つの区画部分の単位位相シフト当たり損失と、次の区画部分のそれとを等化することによって計算することができる。例えば、θ1は次式:
【数18】
によって計算可能であり、ここでRθ,1およびRθ,2は、それぞれ区画部分1、2に対する単位位相シフト当りの直列抵抗である(表2から)のに対して、Gθ,1およびGθ,2は、それぞれ区画部分1、2に対する単位位相シフト当りの並列コンダクタンスである(やはり、表2から)。この計算から、表2に与えられた特定の例に対して、θ1=22.9°が得られる。したがって、区画部分1は、θ<θ1=22.9°に対して、区画部分2よりも低い単位位相シフト当り損失を有し、区画部分2は、θ>θ1=22.9°に対して、区画部分1よりも低い単位位相シフト当りの損失を有する。したがって、1つの事例的設計においては、区画部分1は、テーパー付きストリップ線路構成の最初の約22.9°に広がり、22.9°点において、区画部分2への移行がなくてはならない。その他の区画部分の位相スパンおよび対応する移行点θ2、θ3、およびθ4は、同様に求めることができる。例えば、上記のように式(10)をθ2に適用すると、θ2は39.8°であるとわかり、したがって区画部分2の位相スパンは約17°(すなわち、θ2−θ1)である。
【0131】
式(10)によってθドメインにおける、各区画部分間の移行点(したがって各区画部分のスパン)を得ると、次いで、これらの値を、zドメインに変換して、対応する移行点z1、z2、z3、z4(図17を参照)、したがって区分設計の異なる区画部分のそれぞれの物理的長さが得られる。この目的で、図17を参照すると、i番目の区画部分(i=1,2,3,4,5)の物理的長さは、zドメインにおいてΔzi=zi−zi−1によって与えられ、これは、θドメインにおいて位相スパンΔθi=θi−θi−1に対応する。上記の式(3)を使用して、これらの2つの量は次式:
【数19】
で関係づけられ、ここでLiおよびCiは、i番目の区画部分に対する単位長さ当たりのインダクタンスおよびキャパシタンスであり、EMシミュレーションから既知である。したがって、式(11)を使用して、zドメインにおける各区画部分の長さを求めて、θドメインからzドメインへの設計の変換を完了することができる。
【0132】
この態様の別の観点によれば、上記に概説した方法における任意選択のさらなるステップとして、上記の手順によって各区画部分の物理的長さが決まると、移行点z1、z2、z3、z4付近の実際のストリップ線路配置を平滑化し、それによって線路が、本質的に連続なテーパー付き構成をさらに近似するか、またはそのようになるようにしてもよい。したがって、WおよびSの値は、シミュレートされた元の選択点の内挿となる。上述のように、ここで理解すべきことは、区分設計のために、より多くの点/区画部分を選択するほど、これらの内挿値は精度よく最適化される。
【0133】
この点において、テーパー付きストリップ線路を使用するSWO設計に対して、区分テーパー付き設計を、図式的にシミュレートすることによって、図15Aに示す増幅器304に関連する境界条件を考慮するために設計において必要とされる、調整を決定することができる。増幅器のトランジスタは、コプレーナストリップ線路それ自体の位相シフトに対して追加の位相シフトを効果的に導入する。したがって、SWOが、目標周波数に対応する四分の一波長にまたがるコプレーナストリップ線路を使用してシミュレートされる場合には、実際の発振周波数はこの目標よりも低くなることがある。
【0134】
したがって、この態様の一観点において、増幅器の装荷効果(loading effect)を補償するために、ストリップ線路構成を、シミュレーション発振周波数が目標周波数に達するまで、短縮してもよい。例えば、目標発振周波数が20GHzである場合で、かつシミュレーション発振周波数が、15°に相当する位相シフトをストリップ線路から除去するまで20GHzに達しない場合には、この15°を、配置において線路の始めから削除してもよい。図17および表2と関係して上述した特定の事例においては、区画部分1の位相スパンパラメータΔθ1を、22.9°から7.9°に短縮して増幅器装荷の効果を考慮することができる。このような修正を図17に示してあり、この図では、区画部分1の斜線を施して「X」印をつけた部分507が、ストリップ線路から除去される。
【0135】
要するに、ここで理解すべきことは、図17および表2で与えられる特定の事例に関係して上記に概説した、本発明の一態様による、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路構成の設計手順は、一義的に説明の目的で提示するものであること、および本開示はこの事例に限定されないことである。特に、この設計手順の基礎となる顕著な概念は、図17Bに示す方法フロー図を参照して、一般的に以下のように規定することができる:1)区分テーパー付き構成に対する特性インピーダンスZ0を選択;2)区分テーパー構成に含める区画部分の数を選択(すなわち、図16および図17に示すものと同様な等高線グラフにおける点の数を選択);3)各区画部分に対して、θドメインにおいて、式(8)および式(9)に基づいて損失パラメータRθ、Gθを求める;4)式(1)に基づいてθドメインにおいて区画部分間の移行点を求める;さらに5)式(11)に基づいて、θドメインの移行点(または位相スパン)をzドメインに変換して、異なる区画部分のそれぞれの物理的長さを求める。任意選択の追加ステップとして、各区画部分の物理的長さが求まると、移行点を、幅Wおよび間隔Sの内挿によって平滑化してもよい。さらなる任意選択として、区分テーパー付き構成に基づくSWO設計に対して、増幅器装荷効果を、(例えば、図17Aに示すように)ストリップ線路の全体長を短縮することによって補償してもよい。
【0136】
ここで理解すべきことは、図15A、16、17、17Aに図示した、事例的テーパー付きコプレーナストリップ線路構成は、本質的に(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOに基づいているが、本発明はこの点において限定はされないことである。特に、様々な寸法上のプロファイルを有する、テーパー付き伝送線路構成は、デバイスに沿った異なる点において異なるR値および/またはG値が望ましい、異なる種類のデバイスに対して実装することができる。一般に、本発明の様々な態様による、テーパー付き伝送線路構成は、様々な用途に対し、伝送線路に沿った位置zの関数として、Rおよび/またはGの任意の値を有するように設計することができる。
【0137】
f.Q向上および位相速度低減機能を備える(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO
図18A、18B、18Cは、本発明の様々な態様による、3つの異なる(214)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す。特に、図18Aは、(少なくとも部分的に図13Aに示す態様に基づく)均一コプレーナストリップ線路SWO510の上面図を示すのに対して、図18Bおよび図18Cは、(少なくとも部分的に図15Aに示す態様に基づく)異なるテーパー付きコプレーナストリップ線路SWO512、514の回路ダイの上面図を示している。これらの(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOのそれぞれにおいて、位置z=Lにおけるストリップ線路の導体間の短絡302を図の上部に示してあり、これに対して、(図13Aおよび図15Aに示す増幅器304と類似する)1つまたは2つ以上の増幅器に対する、z=0における接続点516を図の下部に示してある。
【0138】
図18A、18B、18Cに示されたSWOのそれぞれは、0.18ミクロンCMOS技術を使用して製造され、横断面においてSWOのそれぞれは、図5A、5B、8、10、11と関係して上述したものと類似の、導電ストリップの1つまたは2つ以上の配列62も含む(上面図である、図18A、18B、18Cにおいて、配列62は、全体的に、コプレーナストリップ線路の導体の下にある陰をつけた領域として示してある)。先の2つの図と関係して上記で考察したように、これらの態様の一観点において、導電ストリップの配列(複数を含む)の存在によって、SWOにおけるQ向上および位相速度低減の両方が容易になる。別の観点では、図18B、18Cのテーパー付き構成によって実現される損失低減は、これらの態様におけるさらなるQ向上に寄与する。
【0139】
図18A、18B、18Cに示すSWOのそれぞれにおいて、短絡302における相当な導体質量は、比較的低いRが望ましい構造中の点において、直列抵抗を増大させる傾向がある。したがって、一態様において、SWOのそれぞれには、1つまたは2つ以上の配列62と同面上の導電金属プレート63を(例えば、図中で中実の白い領域で示されている、短絡302の下方に)含めてもよく、この場合に、短絡302は、ある数のバイア(via)によってプレート63に接続される。この配設は本質的に、短絡302の領域における導体の質量を増大させ、それによってその領域における直列抵抗を低減する。
【0140】
図18Bのテーパー付き態様においては、図18Aの均一態様と比較して、z=Lにおける導体間隔がより大きく、その結果として、それに比例して短絡302が長くなる。また、この長い短絡302は、図18Aに示す構造に対して、直列抵抗を増大させる傾向にあり、それによって、テーパー構成の便益が部分的に失われる可能性がある。前記のことを考慮して、図18Cの態様は代替テーパー構成を提供し、これの場合には、短絡302の長さが、図18Aに示す均一構成のそれと類似するように、ストリップ線路導体のテーパーが修正されている。
【0141】
均一構成およびテーパー付きの構成の性能を相対的に計測するために、図18A、18B、18Cに示すSWOを、約15GHzでの動作のために、それぞれが約25オームの特定インピーダンスZ0を有するように製作した。デバイスのそれぞれの全体ストリップ線路長Lは、約420ミクロンである。図18Aの均一態様に対して、ストリップ線路のそれぞれの導体の幅は、約85ミクロンであり、導体間の間隔は、約50ミクロンである。図18Bのテーパー付き構成に対して、導体幅は、z=0付近での約75ミクロンからz=L付近での約90ミクロンの範囲であり、導体間の間隔は、z=0での約20ミクロンから、z=Lでの約120ミクロンの範囲であった(例えば、表2を参照)。実験的測定によって、図18Aの均一デバイスに対して、図18Bのテーパー付きデバイスにおいて、約50%のQ向上が実現されたことが確認された(例えば、均一デバイスは約39の品質係数Qを有するのに対して、テーパー付きデバイスのQは、約59であった)。
【0142】
g.低損失周波数調整可能定常波発振器
本発明のさらに別の態様において、SWOのコプレーナストリップ線路実装は、周波数調整能力を備えて構成してもよく、この周波数調整能力を、損失、したがって電力消費の低減のために最適化することができる。例えば、一態様によれば、SWOは、1つまたは2つ以上の可変キャパシタ(「バラクター(varactor)」)を備えて実装してもよく、この可変キャパシタは、コプレーナストリップ線路の単位長さ当たりキャパシタンスCを変え、それによって発振の周波数を変える(周波数と波長を関係づける、位相速度νは、LCの積の平方根に対して逆比例する)。この態様の一観点において、1つまたは2つ以上のバラクターのコプレーナ線路上への配置は、相当な周波数調整能力を維持し、同時にバラクター(複数を含む)によって負わされる損失を低減するように、最適化される。
【0143】
図19A、19Bは、本発明の一態様によるSWOと共に使用することのできるバラクターの異なる表現を示す。特に、図19Aは、コプレーナストリップ線路の2つの導体300A、300Bの間に接続されたバラクター400を示し、このバラクターは、一対のNMOSトランジスタとして実装され、このトランジスタは、そのゲートがコプレーナストリップ線路のそれぞれの導体に結合され、そのソースとドレインは互いに結合されてバイアス電圧Vbiasに接続されている。図19Bは、バラクター400の別の等価な図表現を示し、この場合には、可変キャパシタンス400Aが、抵抗400Bと直列接続されており、バラクター400に付随する固有損失を表している。
【0144】
事例的(λ/4)コプレーナストリップ線路SWOを示す図13A、13Bを再び参照すると、ここで理解すべきことは、本発明の様々な態様によるSWOに1つまたは2つ以上のバラクター400を実装すると、バラクター抵抗400Bに関連する損失によって、電力消費に影響を与える可能性があることである。特に、バラクターが、SWO内で、最大電圧振幅揺れの点(例えば、図13Aにおけるz=0)に配置されると、周波数調整可能能力は重要であるが、バラクター抵抗の両端での比較的高い電圧による損失も相当にある。一方で、バラクターを、SWの短絡端の近くに配置すると(例えば、図13Aにおけるz=L)、バラクター抵抗の両端での電圧が小さいか、または存在しないために低損失となるが、周波数同調能力はほとんど、またはまったく得られない。
【0145】
しかしながら、出願者らは次のことを認識、理解した:すなわち、少なくともいくつかの製造プロセスと関係して、バラクター抵抗による損失は、最大電圧振幅の点(すなわち、z=0)から電圧ノード(すなわち、z=L)に移動すると、本質的に直線的に減少するが、これは周波数同調能力については当てはまらず;すなわち、バラクター位置に基づく周波数同調能力は、最大電圧振幅の点から電圧ノードに向かって約半分まで(すなわち、0<z≦L/2)、本質的に一定のままである。中間点後(L/2<z≦L)は、その点では周波数同調能力が得られない電圧ノードに接近するにつれて、周波数同調能力は顕著に低下する。いくつかのプロセスにおいては、共振器に沿ったバラクター位置とバラクター抵抗による損失との間には本質的に直線関係があることが指摘されているが、共振器に沿ったバラクター位置とバラクター抵抗による損失との間には、相当な非線形関係も存在する。
【0146】
前記のことを考慮して、本発明の一態様によれば、最大電圧振幅と電圧ノード(ゼロボルト)の間の中間点(例えば、図13Aにおけるz≒L/2)の近傍にバラクターを配置することによって、この現象は、コプレーナストリップ線路SWOにおいて利用される。この態様の一観点においては、中間点に近接しながら、中間点と電圧ノードとの間(例えば、図13AにおいてL/2<z<<L)にバラクターを配置することによって、バラクター位置を最適化することができる。このようにして、相当な周波数同調能力が維持され、同時にバラクター抵抗に起因する損失が相当に低減される。様々な実装形態において、上述のようなバラクターは、均一または不均一(すなわちテーパー付き)コプレーナストリップ線路構成に加えて、本明細書において考察した、(λ/4)コプレーナストリップ線路SWO以外のSWO構成とも関係して使用することができる。さらに他の態様において、コプレーナストリップ線路に沿ってバラクターを分布させることは、周波数同調能力を与えるとともに、同時に集中バラクター装荷による損失に関する潜在的影響を軽減するのに使用することができる。
【0147】
h.閉ループ定常波発振器
本発明の別の態様は、リング共振器コプレーナストリップ線路実装に基づく、閉ループ(例えば、円形)定常波発振器を目的としている。この態様の一観点においては、以下にさらに詳細に考察するように、クロスカップル型増幅器構成を使用して、発振器に重大な損失を誘起することを回避するように、特有の共振器トポロジーを用いて、単一モード動作を促進する。
【0148】
より具体的には、図20Aには、円形ループとして図示した、本発明の一態様による、閉ループSWO700を示してある。SWO700は、回路の損失を相殺する、少なくとも2つの増幅器702A、702B(すなわち、2組のクロスカップル型インバータ)、および全体経路長Lを有する閉ループコプレーナストリップ線路704(導体704A、704Bを含む)を使用し、前記閉ループコプレーナストリップ線路上に、境界条件V(φ)=V(φ+2)を満たすように定常波が形成され、ここでφはリング構造の所与の基準半径からの任意の基準角度である。この境界条件から、L=2πr=nλ(n=1,2,3...)において可能なエネルギーモードを生じ、ここでrはリングの半径である。n=1に対応する発振の基本周波数f0は、ν/Lで与えられ、ここでνは位相速度である。
【0149】
図20Aに示すSWO700の増幅器702A、702Bの相互接続によって、発振器のためのモード制御技法が効果的に実装できる。特に、点T1を点B2に、そして点T2を点B1に接続することによって、ポートT1−T2およびB1−B2は反対位相(180°)となることが保証され、それによってすべての偶数モード高調波が抑制される。この偶数モード抑制によって、ポートL1−L2は常に「クワイエット(quiet)」すなわちゼロ電圧ノードになる。ポートR1−R2も、増幅器への電力供給を同相モード電圧としてこのポートに分岐させることによって、強制的にゼロ電圧ノードにされる。
【0150】
図20Bは、図20Aに図示したリング共振器に対する物理的配設の一例である。図20Bの配設において、偶数モード抑制を実装するための増幅器702Aと702Bとの間の相互接続は、互いに近接して配置し、それによって、リングコプレーナストリップ線路における意図的な遅延と比較して、導入される時間遅れを無視できる量にする。特に、リングコプレーナストリップ線路の形状は歪んでいながら、それ以外では、そのトポロジーはそのままに維持して、その結果としてポートT1−T2およびポートB1−B2は互いに物理的に接近して、ポート間の接続損失が減少する。図21は、増幅器702A、702Bがやはり互いに近接して配置されるように、「クローバ葉(clover leaf)」形状にした、図20Bの概念に従う閉ループSWOに対する別の配設を示している。図21に示す態様の一観点においては、コプレーナストリップ線路の4つのλ/4区画部分が互いに結合されて、完全ループを形成する。
【0151】
図22A、22Bは、シリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)プロセスを使用して、そのfTが約50GHzであるトランジスタを用いて実装された、10GHz閉ループSWOに対するシミュレーション結果を示している。図22Aに示すように、「ラウドポート(loud port)」(例えば、図20AにおけるT1−T2およびB1−B2)のそれぞれは、発振器が1.5V電源から約3mAのDC電流を消費するときに、1.2ボルトの差分電圧揺れを有する。図22Bに示すように、初期のリンギング(ringing)の後に、「クワイエットポート(quiet port)」(例えば、図20AにおけるL1−L2)は、予想どおりに静穏状態に留まる。
【0152】
この態様の様々な観点によれば、上記で四分の一波長SWO実装と関係して考察した、いくつかのコンセプトは、様々な閉ループコプレーナストリップ線路SWO構成を実現するのに使用することもできる。例えば、この態様の様々な観点において、専用分布増幅方式および可変パラメータコプレーナストリップ線路構成(例えば、テーパー付きコプレーナストリップ線路)の一方または両方を閉ループ構造に使用することができる。別の観点では、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成(すなわち、位置依存性RおよびG)および導電ストリップの配列(複数を含む)の一方または両方を使用して、Q向上および位相速度低減を容易にすることもできる。さらに別の観点では,1つまたは2つ以上の適当に配置されたバラクターを使用して、低損失周波数同調機能を、そのようなSWOに実装することができる。
【0153】
III.結論
いくつかの説明のための態様について説明してきたが、ここで理解すべきことは、当業者であれば、様々な変更、修正、および改良をすぐに思いつくことである。そのような変更、修正、および改良は、この開示の一部とするものであり、この開示の趣旨と範囲に含めることを意図するものである。本明細書に提示したいくつかの例は、機能または構造要素の具体的な組合せを含むが、ここで理解すべきことは、それらの機能及び要素は、本発明によるその他の方法で組み合わせることによって、同じまたは異なる目的を達成することができることである。特に、一つの態様に関係して考察した行為、要素、および機能は、その他の態様における、同様またはその他の役割から除外するものではない。したがって、前述の説明および添付の図面は、説明のためだけのものであり、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1A】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1B】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1C】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1D】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図1E】従来型伝送線路の様々な例を示す図である。
【図2A】従来型コプレーナ導波路(CPW)の異なる視点からの図である。
【図2B】従来型コプレーナ導波路(CPW)の異なる視点からの図である。
【図3A】従来型コプレーナストリップ線路(CPS)の異なる視点からの図である。
【図3B】従来型コプレーナストリップ線路(CPS)の異なる視点からの図である。
【図4A】図2Aおよび図2Bのコプレーナ導波路のための、分布線路パラメータの「シングルエンド」モデルを示す図である。
【図4B】図3A、3Bのコプレーナストリップ線路に対する分布線路パラメータの「差分」モデルを示す図である。
【0155】
【図5A】本発明の一態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく装置の一例を示す、斜視図である。
【図5B】本発明の一態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく装置の一例を示す、横断面図である。
【図6A】本発明の様々な態様による、図5A、5Bの装置の異なる構成に対して、シミュレーション品質係数Q対信号周波数を示す、グラフである。
【図6B】本発明の様々な態様による、図5A、5Bの装置の異なる構成に対して、シミュレーション品質係数Q対信号周波数を示す、グラフである。
【図6C】本発明の様々な態様による、図5A、5Bの装置の異なる構成に対して、シミュレーション品質係数Q対信号周波数を示す、グラフである。
【0156】
【図7A】本発明の様々な態様による、図6A、6B、6Cにおいて提示される異なる構成についての、シミュレーション減速係数または位相速度低減対信号周波数の関係を示すグラフである。
【図7B】本発明の様々な態様による、図6A、6B、6Cにおいて提示される異なる構成についての、シミュレーション減速係数または位相速度低減対信号周波数の関係を示すグラフである。
【図7C】本発明の様々な態様による、図6A、6B、6Cにおいて提示される異なる構成についての、シミュレーション減速係数または位相速度低減対信号周波数の関係を示すグラフである。
【図8】本発明のさらに別の態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、事例的装置の横断面図である。
【図9A】本発明のさらに別の態様による、図5A、図5B、および図8に示す構成に基づく異なる構成に対して、品質係数Qと減速係数または位相速度低減を比較するグラフである。
【図9B】本発明のさらに別の態様による、図5A、図5B、および図8に示す構成に基づく異なる装置に対して、品質係数Qと減速係数または位相速度低減とを比較するグラフである。
【0157】
【図10】本発明の別の態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、事例的装置を示す横断面図である。
【図11】本発明の別の態様による、コプレーナストリップ線路構成に基づく、事例的装置を示す斜視図である。
【図12】コプレーナストリップ線路構成に基づく、従来型定常波発振器の事例を示す図である。
【図13A】本発明の一態様による、四分の一波長コプレーナストリップ線路定常波発振器の事例を示す図である。
【図13B】図13Aに示す発振器のための電圧および電流の波形を示す図である。
【図14A】本発明の一態様による、複数増幅器を使用する四分の一波長コプレーナストリップ線路定常波発振器の事例を示す図である。
【図14B】図14Aに示す発振器のための、電圧波形を示す図である。
【0158】
【図15A】本発明の一態様による、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成を使用する、四分の一波長定常波発振器の事例を示す図である。
【図15B】本発明の一態様による、テーパー付きコプレーナストリップ線路構成に関する様々な概念を示すように、図15Aに対して配置された、図13Bの電圧および電流の波形の再生成である。
【図16】ストリップ線路の特性インピーダンスZ0を変更することなくテーパー付きコプレーナストリップ線路に沿って、RおよびGを変えるための、本発明の一態様による方法を示す図である。
【図17】本発明の一態様による、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路と関係して、図16の方法をさらに示す図である。
【図17A】本発明の一態様による、図17の事例的構成におけるトランジスタ負荷の効果を示す図である。
【図17B】本発明の一態様による、区分テーパー付きコプレーナストリップ線路構成の設計のための方法フロー図を示す図である。
【0159】
【図18A】本発明の様々な態様による、3つの異なる(λ/4)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す図である。
【図18B】本発明の様々な態様による、3つの異なる(λ/4)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す図である。
【図18C】本発明の様々な態様による、3つの異なる(λ/4)コプレーナストリップ線路定常波発振器設計の写真を示す図である。
【図19A】本発明の一態様による、定常波発振器用の周波数調整構成要素の異なる表現を示す図である。
【図19B】本発明の一態様による、定常波発振器用の周波数調整構成要素の異なる表現を示す図である。
【0160】
【図20A】本発明の一態様による、閉ループ定常波発振器の事例を示す図である。
【図20B】本発明の一態様による、閉ループ定常波発振器の事例を示す図である。
【図21】本発明の別の態様による、閉ループ定常波発振器の事例を示す図である。
【図22A】図21の閉ループ定常波発振器のシミュレーションから生じる事例的な信号を示す図である。
【図22B】図21の閉ループ定常波発振器のシミュレーションから生じる事例的な信号を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数f0を有する少なくとも1つの電圧定常波を生成する、定常波発振器であって、
2つの導体を含むとともに、その長さが四分の一波長(λ/4)に等しいか、またはほぼ等しい、コプレーナストリップ線路であって、ここでλは、前記少なくとも1つの電圧定常波を構成する波動の位相速度によって、前記周波数f0に関係づけられる、前記コプレーナストリップ線路;および
前記コプレーナストリップ線路の第1端において前記導体間に配置された、少なくとも1つの増幅器を含み、
前記2つの導体は、前記コプレーナストリップ線路の第2端において互いに接続されて短絡を形成している、前記発振器。
【請求項2】
少なくとも1つの増幅器が、少なくとも一対のクロスカップル型インバータを含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
少なくとも1つの増幅器が、該少なくとも1つの増幅器のゲインをコプレーナストリップ線路の長さに沿って変化するように分布させる手段を含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項4】
発振器の発振モードを制御する手段をさらに含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項5】
少なくとも1つの増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って配置された複数の増幅器を含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項6】
複数の増幅器が、異なるゲインを有するように構成された少なくとも2つの増幅器を含む、請求項5に記載の発振器。
【請求項7】
複数の増幅器の内のそれぞれの増幅器が、前記複数の増幅器の内の別の増幅器と異なるゲインを有するように構成されている、請求項6に記載の発振器。
【請求項8】
複数の増幅器のそれぞれのゲインが、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように構成されている、請求項6に記載の発振器。
【請求項9】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、コプレーナストリップ線路に沿って該増幅器が配置されている位置における、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係する、請求項8に記載の発振器。
【請求項10】
複数の増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に等間隔で配置されている、請求項5に記載の発振器。
【請求項11】
複数の増幅器の内のそれぞれの増幅器が、前記複数の増幅器の内の別の増幅器と異なるゲインを有するように構成されている、請求項10に記載の発振器。
【請求項12】
複数の増幅器のそれぞれのゲインが、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように構成されている、請求項10に記載の発振器。
【請求項13】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、コプレーナストリップ線路に沿って該増幅器が配置されている位置における、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係する、請求項12に記載の発振器。
【請求項14】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGを有するように構成されている、請求項1に記載の発振器。
【請求項15】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に一様な特性インピーダンスを有するように構成されている、請求項14に記載の発振器。
【請求項16】
コプレーナストリップ線路が複数の区画部分として構成され、該複数の区画部分の各区画部分が、異なる単位長さ当り抵抗Rおよび異なる単位長さ当りコンダクタンスGを有する、請求項14に記載の発振器。
【請求項17】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが実質的に連続して変化するように構成されている、請求項14に記載の発振器。
【請求項18】
2つの導体の間の間隔および該導体の幅が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、請求項14に記載の発振器。
【請求項19】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の第2端におけるよりも、該コプレーナストリップ線路の第1端において単位長さ当りコンダクタンスGが小さくなるように、かつ前記コプレーナストリップ線路の第1端におけるよりも前記コプレーナストリップ線路の第2端において単位長さ当り抵抗Rが小さくなるように、構成されている、請求項14に記載の発振器。
【請求項20】
少なくとも1つの増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って配置された複数の増幅器を含む、請求項19に記載の発振器。
【請求項21】
複数の増幅器のそれぞれのゲインが、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように構成されている、請求項20に記載の発振器。
【請求項22】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、コプレーナストリップ線路に沿って該増幅器が配置されている位置における少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係する、請求項21に記載の発振器。
【請求項23】
複数の増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に等間隔で配置されている、請求項22に記載の発振器。
【請求項24】
2つの導体が、実質的に互いに平行であって、第1の方向に沿って実質的に配向されている第1の導体および第2の導体を含む、発振器であって、
コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の実質的に直線状の導電ストリップをさらに含み、該複数の導電ストリップは、実質的に互いに平行であるともに、実質的に前記第1の方向に直角の第2の方向に沿って配向されている、請求項1に記載の発振器。
【請求項25】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが有するように構成されている、請求項24に記載の発振器。
【請求項26】
少なくとも1つの電圧定常波の周波数f0を調整する、少なくとも1つの周波数調整構成要素をさらに含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項27】
少なくとも1つの周波数調整構成要素が、コプレーナストリップ線路の第1端と第2端の間のほぼ中間点に配置された少なくとも1つのバラクターを含む、請求項26に記載の発振器。
【請求項28】
少なくとも1つのバラクターが、中間点とコプレーナストリップ線路の第2端との間に配置されている、請求項27に記載の発振器。
【請求項29】
少なくとも1つの電圧定常波を生成する定常波発振器であって、
2つの導体を含む、閉ループコプレーナストリップ線路;および
第1の場所において、前記2つの導体の間に配置された少なくとも1つの増幅器;を含み、
前記2つの導体は、第1の場所とは異なる第2の場所において互いに接続されて、前記少なくとも1つの電圧定常波に対するゼロ電圧ノードを提供する、前記定常波発振器。
【請求項30】
少なくとも1つの増幅器が、該少なくとも1つの増幅器のゲインをコプレーナストリップ線路の長さに沿って変化するように分布させる手段を含む、請求項29に記載の発振器。
【請求項31】
発振器の発振モードを制御する手段をさらに含む、請求項29に記載の発振器。
【請求項32】
発振器の発振周波数を制御する手段をさらに含む、請求項29に記載の発振器。
【請求項33】
少なくとも1つの増幅器が、少なくとも:第1の場所に位置する第1の増幅器であって、前記第1の場所は、第2の場所から第1の方向に、閉ループコプレーナストリップ線路のまわりの距離の四分の一にある、前記第1の増幅器;および第2の場所から第2の方向に、前記閉ループコプレーナストリップ線路のまわりの距離の四分の一にある、第3の場所に位置する第2の増幅器;を含み、前記第1および第2の増幅器が、閉ループコプレーナストリップ線路において互いに相対している、請求項29に記載の発振器。
【請求項34】
第1の場所の2つの導体の内の第1の導体が、第3の場所の前記2つの導体の内の第2の導体に接続されており、第1の場所の第2の導体が、前記第3の場所の第1の導体に接続されている、請求項33に記載の発振器。
【請求項35】
第1の場所が第3の場所に物理的に近接するように、閉ループコプレーナストリップ線路が成形されている、請求項34に記載の発振器。
【請求項36】
第1の導体および第2の導体を含むコプレーナストリップ線路であって、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGを有するように構成されている、前記コプレーナストリップ線路。
【請求項37】
コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に一様な特性インピーダンスを有するように構成されている、請求項36に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項38】
コプレーナストリップ線路が複数の区画部分として構成され、該複数の区画部分の各区画部分が、異なる単位長さ当り抵抗Rおよび異なる単位長さ当りコンダクタンスGを有する、請求項37に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項39】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが実質的に連続して変化するように構成されている、請求項37に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項40】
2つの導体の間の間隔および該導体の幅が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、請求項37に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項41】
コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、
A)コプレーナストリップ線路損失を克服するように、該コプレーナストリップ線路に沿って変化させて増幅を分布させる行為を含む、前記方法。
【請求項42】
行為A)が、
分布させた増幅が少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように、コプレーナストリップ線路に沿って増幅を分布させる行為を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
行為A)が、
B)複数の増幅器をコプレーナストリップ線路に沿って配置する行為であって、前記複数の増幅器の内の少なくとも2つの増幅器が、異なるゲインを有するようにする、前記行為を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、前記増幅器がコプレーナストリップ線路に沿って配置されている位置において、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係づける、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
行為B)が、
複数の増幅器を、コプレーナストリップ線路の長さに沿って等間隔に配置する行為を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、
A)前記少なくとも1つの電圧定常波の発振モードを制御する行為を含む、前記方法。
【請求項47】
行為A)が、
B)少なくとも1つの電圧定常波の少なくとも1つの所望の発振モードを加振するように、少なくとも1つの増幅器を、コプレーナストリップ線路に沿って配置する行為を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
行為B)が、
少なくとも1つの電圧定常波の少なくとも1つの所望の発振モードを加振するように、複数の増幅器を、コプレーナストリップ線路に沿った異なる場所に配置する行為を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
行為A)が、
分布させた増幅が少なくとも1つの電圧定常波の所望の発振モードの振幅と関係するように、該コプレーナストリップ線路に沿って増幅を分布させる行為を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの電圧定常波の周波数を制御する方法であって、
A)コプレーナストリップ線路に沿って、少なくとも1つの電圧定常波の最大振幅と前記少なくとも1つの電圧定常波のゼロ電圧ノードとの間のほぼ中間点である位置に、少なくとも1つの周波数制御デバイスを配置する行為を含む、前記方法。
【請求項51】
行為A)が、
B)少なくとも1つの周波数制御デバイスを、コプレーナストリップ線路に沿って、中間点とゼロ電圧ノードとの間にある位置に配置する行為を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
行為B)が、
少なくとも1つの周波数制御デバイスを、ゼロ電圧ノードよりも中間点に接近して配置する行為を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
実質的に互いに平行であって、第1の方向に沿って実質的に配向されている第1の導体および第2の導体だけを含む、コプレーナストリップ線路(CPS)、および
コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の本質的に直線状の導電ストリップであって、実質的に互いに平行であるともに、実質的に前記第1の方向に直角の第2の方向に沿って配向されている、前記複数の直線状の導電ストリップを含む、装置。
【請求項54】
少なくとも、コプレーナストリップ線路と複数の直線状導電ストリップとの間に配置された、少なくとも1種の誘電体をさらに含む、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
少なくとも1種の誘電体、複数の直線状導電ストリップ、およびコプレーナストリップ線路がその上に配置されている、シリコン基板をさらに含む、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
装置が、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有するコプレーナストリップ線路上で少なくとも1つの信号をサポートするように構成されており、かつ
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数において、装置が少なくとも30の品質係数Qを有するように、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップが配設されている、請求項53に記載の装置。
【請求項57】
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置の品質係数Qが少なくとも50となるように、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップが配設されている、請求項53に記載の装置。
【請求項58】
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置の品質係数Qが少なくとも70となるように、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップが配設されている、請求項53に記載の装置。
【請求項59】
第2の方向は第1の方向に対して直交しており、
コプレーナストリップ線路が、第1の面内に配置され、
複数の直線状導電ストリップの少なくとも一部が、第1の面と本質的に平行な第2の面内に配置され、そして
第1の面および第2の面の両方に対する少なくとも1本の垂線が、コプレーナストリップ線路の1つの導体および複数の直線状導電ストリップ少なくとも1つの導電ストリップの両方を通過する、請求項53に記載の装置。
【請求項60】
第1および第2の導体のそれぞれが、コプレーナストリップ線路に沿った所与の点において第2の方向に沿って、幅Wを有し;
前記コプレーナストリップ線路が、コプレーナストリップ線路に沿った所与の点において第2の方向に沿って、第1の距離Sだけ隔てられており;
前記コプレーナストリップ線路は、コプレーナストリップ線路に沿った所与の点において第2の方向に沿って、第1の寸法Dを有し、ここでD=2W+Sであり;
複数の直線状導電ストリップのそれぞれの導電ストリップは、第2の方向に沿って長さIsを有し、さらに
長さIsおよび第1の寸法Dがほぼ等しい、請求項59に記載の装置。
【請求項61】
長さIsが、第1の寸法Dよりも最大約10%だけ大きい、請求項60に記載の装置。
【請求項62】
複数の直線状導電ストリップのそれぞれの導電ストリップが、第1の方向に沿って幅dAを有し、該幅dAは第1の寸法Dよりも大幅に小さい、請求項60に記載の装置。
【請求項63】
複数の直線状導電ストリップの隣接する直線状導電ストリップが、第1の方向に沿って距離dBだけ隔てられており、該距離dBは第1の寸法Dよりも大幅に小さい、請求項62に記載の装置。
【請求項64】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
直線状導電ストリップの幅dAが、隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBよりも小さく、最大で距離dBの約半分である、請求項63に記載の装置。
【請求項66】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、第1の寸法Dよりも約1桁分小さい、請求項63に記載の装置。
【請求項67】
直線状導電ストリップの幅dAおよび隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項66に記載の装置。
【請求項68】
直線状導電ストリップの幅dAおよび隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、第1の寸法Dよりも少なくとも1桁分小さい、請求項63に記載の装置。
【請求項69】
直線状導電ストリップの幅dAおよび隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
コプレーナストリップ線路が第1の方向に沿って長さLCPSを有し;
複数の直線状導電ストリップのそれぞれの導電ストリップが第1の方向に沿って幅dAを有し;さらに
前記幅dAは、前記コプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも大幅に小さい、請求項60に記載の装置。
【請求項71】
複数の直線状導電ストリップの隣接する直線状導電ストリップが、第1の方向に沿って距離dBだけ隔てられており、該距離dBはコプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも大幅に小さい、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項71に記載の装置。
【請求項73】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、コプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも約1桁分小さい、請求項71に記載の装置。
【請求項74】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項73に記載の装置。
【請求項75】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、コプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも約1桁分小さい、請求項71に記載の装置。
【請求項76】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項75に記載の装置。
【請求項77】
複数の直線状導電ストリップが、
第1の面に配置された、第1の複数の直線状導電ストリップ;および
第1の面および第2の面に本質的に平行な第3の面に配置された、第2の複数の直線状導電ストリップを含む、請求項59に記載の装置。
【請求項78】
第1の面が、第2の面と第3の面の間に位置する、請求項77に記載の装置。
【請求項79】
第1の複数の直線状導電ストリップおよび第2の複数の直線状導電ストリップが交互に配設され、それによって、第1、第2および第3の面に対するいずれもの垂線も、前記第1の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップと前記第2の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップの両方を通過しないようにされている、請求項78に記載の装置。
【請求項80】
第2の面が、第1の面と第3の面の間に位置する、請求項77に記載の装置。
【請求項81】
第1の複数の直線状導電ストリップおよび第2の複数の直線状導電ストリップが交互に配設され、それによって、第1、第2および第3の面に対するいずれもの垂線も、前記第1の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップと前記第2の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップの両方を通過しないようにされている、請求項80に記載の装置。
【請求項82】
複数の導電ストリップが、少なくとも、第1、第2および第3の面に本質的に平行な第4の面に配置された、少なくとも第3の複数の直線状導電ストリップを含む、請求項77に記載の装置。
【請求項83】
少なくとも1つの差分信号を移送する方法であって、
A)第1の方向に実質的に沿って配向され、複数の直線状導電ストリップに近接して配置されたコプレーナストリップ線路上で、前記少なくとも1つの差分信号を移送する行為であって、前記複数の直線状導電ストリップが本質的に互いに平行であり、前記第1の方向に直角な第2の方向に実質的に沿って配向されている前記行為を含む、前記方法。
【請求項84】
コプレーナストリップ線路が、第1の導体および第2の導体だけを含み、少なくとも1つの差分信号を移送する方法であって、
B)複数の直線状導電ストリップを、前記第1の導体および第2の導体に対して浮動電位に維持する行為をさらに含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップがシリコン基板上に配設されており;前記コプレーナストリップ線路は、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有する少なくとも1つの信号をサポートするように構成されており;前記コプレーナストリップ線路および前記複数の直線状導電ストリップは、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも50の品質係数Qを有するように、配設されており;さらに行為A)が、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有する少なくとも1つの差分信号を、前記コプレーナストリップ線路を介して移送する行為を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記コプレーナストリップ線路および前記複数の直線状導電ストリップは、約10ギガヘルツから少なくとも50ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも70の品質係数Qを有するように、配設されており、かつ行為A)が、
約10ギガヘルツから少なくとも50ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有する少なくとも1つの差分信号を、前記コプレーナストリップ線路を介して移送する行為を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
シリコン基板;
互いに平行であって、前記シリコン基板の上方の第1の面に配置され、かつ実質的に第1の方向に沿って配向されている、第1の導体および第2の導体;
前記シリコン基板の上方で、かつ前記第1の面に平行な第2の面に配置された、複数の直線状導電ストリップであって、本質的に互いに平行であるとともに、前記第1の方向と直交する第2の方向に実質的に沿って配向されている、前記複数の直線状導電ストリップ;および
少なくとも、前記第1の面と前記第2の面の間に配置された、少なくとも1種の誘電体を含む、コプレーナストリップ線路デバイスであって、
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツの範囲にある周波数を有する、前記第1および第2の導体上で少なくとも1つの信号をサポートするようにされているとともに、前記第1および第2の導体、ならびに前記複数の直線状導電ストリップは、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある、少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも30の品質係数Qを有するように配設されている、前記コプレーナストリップ線路デバイス。
【請求項88】
第1および第2の導体ならびに複数の直線状導体ストリップが、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも50の品質係数Qを有するように、配設されている、請求項87に記載の装置。
【請求項89】
第1および第2の導体ならびに複数の直線状導電ストリップが、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも70の品質係数Qを有するように、配設されている、請求項87に記載の装置。
【請求項1】
周波数f0を有する少なくとも1つの電圧定常波を生成する、定常波発振器であって、
2つの導体を含むとともに、その長さが四分の一波長(λ/4)に等しいか、またはほぼ等しい、コプレーナストリップ線路であって、ここでλは、前記少なくとも1つの電圧定常波を構成する波動の位相速度によって、前記周波数f0に関係づけられる、前記コプレーナストリップ線路;および
前記コプレーナストリップ線路の第1端において前記導体間に配置された、少なくとも1つの増幅器を含み、
前記2つの導体は、前記コプレーナストリップ線路の第2端において互いに接続されて短絡を形成している、前記発振器。
【請求項2】
少なくとも1つの増幅器が、少なくとも一対のクロスカップル型インバータを含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
少なくとも1つの増幅器が、該少なくとも1つの増幅器のゲインをコプレーナストリップ線路の長さに沿って変化するように分布させる手段を含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項4】
発振器の発振モードを制御する手段をさらに含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項5】
少なくとも1つの増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って配置された複数の増幅器を含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項6】
複数の増幅器が、異なるゲインを有するように構成された少なくとも2つの増幅器を含む、請求項5に記載の発振器。
【請求項7】
複数の増幅器の内のそれぞれの増幅器が、前記複数の増幅器の内の別の増幅器と異なるゲインを有するように構成されている、請求項6に記載の発振器。
【請求項8】
複数の増幅器のそれぞれのゲインが、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように構成されている、請求項6に記載の発振器。
【請求項9】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、コプレーナストリップ線路に沿って該増幅器が配置されている位置における、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係する、請求項8に記載の発振器。
【請求項10】
複数の増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に等間隔で配置されている、請求項5に記載の発振器。
【請求項11】
複数の増幅器の内のそれぞれの増幅器が、前記複数の増幅器の内の別の増幅器と異なるゲインを有するように構成されている、請求項10に記載の発振器。
【請求項12】
複数の増幅器のそれぞれのゲインが、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように構成されている、請求項10に記載の発振器。
【請求項13】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、コプレーナストリップ線路に沿って該増幅器が配置されている位置における、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係する、請求項12に記載の発振器。
【請求項14】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGを有するように構成されている、請求項1に記載の発振器。
【請求項15】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に一様な特性インピーダンスを有するように構成されている、請求項14に記載の発振器。
【請求項16】
コプレーナストリップ線路が複数の区画部分として構成され、該複数の区画部分の各区画部分が、異なる単位長さ当り抵抗Rおよび異なる単位長さ当りコンダクタンスGを有する、請求項14に記載の発振器。
【請求項17】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが実質的に連続して変化するように構成されている、請求項14に記載の発振器。
【請求項18】
2つの導体の間の間隔および該導体の幅が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、請求項14に記載の発振器。
【請求項19】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の第2端におけるよりも、該コプレーナストリップ線路の第1端において単位長さ当りコンダクタンスGが小さくなるように、かつ前記コプレーナストリップ線路の第1端におけるよりも前記コプレーナストリップ線路の第2端において単位長さ当り抵抗Rが小さくなるように、構成されている、請求項14に記載の発振器。
【請求項20】
少なくとも1つの増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って配置された複数の増幅器を含む、請求項19に記載の発振器。
【請求項21】
複数の増幅器のそれぞれのゲインが、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように構成されている、請求項20に記載の発振器。
【請求項22】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、コプレーナストリップ線路に沿って該増幅器が配置されている位置における少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係する、請求項21に記載の発振器。
【請求項23】
複数の増幅器が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に等間隔で配置されている、請求項22に記載の発振器。
【請求項24】
2つの導体が、実質的に互いに平行であって、第1の方向に沿って実質的に配向されている第1の導体および第2の導体を含む、発振器であって、
コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の実質的に直線状の導電ストリップをさらに含み、該複数の導電ストリップは、実質的に互いに平行であるともに、実質的に前記第1の方向に直角の第2の方向に沿って配向されている、請求項1に記載の発振器。
【請求項25】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが有するように構成されている、請求項24に記載の発振器。
【請求項26】
少なくとも1つの電圧定常波の周波数f0を調整する、少なくとも1つの周波数調整構成要素をさらに含む、請求項1に記載の発振器。
【請求項27】
少なくとも1つの周波数調整構成要素が、コプレーナストリップ線路の第1端と第2端の間のほぼ中間点に配置された少なくとも1つのバラクターを含む、請求項26に記載の発振器。
【請求項28】
少なくとも1つのバラクターが、中間点とコプレーナストリップ線路の第2端との間に配置されている、請求項27に記載の発振器。
【請求項29】
少なくとも1つの電圧定常波を生成する定常波発振器であって、
2つの導体を含む、閉ループコプレーナストリップ線路;および
第1の場所において、前記2つの導体の間に配置された少なくとも1つの増幅器;を含み、
前記2つの導体は、第1の場所とは異なる第2の場所において互いに接続されて、前記少なくとも1つの電圧定常波に対するゼロ電圧ノードを提供する、前記定常波発振器。
【請求項30】
少なくとも1つの増幅器が、該少なくとも1つの増幅器のゲインをコプレーナストリップ線路の長さに沿って変化するように分布させる手段を含む、請求項29に記載の発振器。
【請求項31】
発振器の発振モードを制御する手段をさらに含む、請求項29に記載の発振器。
【請求項32】
発振器の発振周波数を制御する手段をさらに含む、請求項29に記載の発振器。
【請求項33】
少なくとも1つの増幅器が、少なくとも:第1の場所に位置する第1の増幅器であって、前記第1の場所は、第2の場所から第1の方向に、閉ループコプレーナストリップ線路のまわりの距離の四分の一にある、前記第1の増幅器;および第2の場所から第2の方向に、前記閉ループコプレーナストリップ線路のまわりの距離の四分の一にある、第3の場所に位置する第2の増幅器;を含み、前記第1および第2の増幅器が、閉ループコプレーナストリップ線路において互いに相対している、請求項29に記載の発振器。
【請求項34】
第1の場所の2つの導体の内の第1の導体が、第3の場所の前記2つの導体の内の第2の導体に接続されており、第1の場所の第2の導体が、前記第3の場所の第1の導体に接続されている、請求項33に記載の発振器。
【請求項35】
第1の場所が第3の場所に物理的に近接するように、閉ループコプレーナストリップ線路が成形されている、請求項34に記載の発振器。
【請求項36】
第1の導体および第2の導体を含むコプレーナストリップ線路であって、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGを有するように構成されている、前記コプレーナストリップ線路。
【請求項37】
コプレーナストリップ線路の長さに沿って、実質的に一様な特性インピーダンスを有するように構成されている、請求項36に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項38】
コプレーナストリップ線路が複数の区画部分として構成され、該複数の区画部分の各区画部分が、異なる単位長さ当り抵抗Rおよび異なる単位長さ当りコンダクタンスGを有する、請求項37に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項39】
コプレーナストリップ線路が、該コプレーナストリップ線路の長さに沿って単位長さ当り抵抗Rおよび単位長さ当りコンダクタンスGが実質的に連続して変化するように構成されている、請求項37に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項40】
2つの導体の間の間隔および該導体の幅が、コプレーナストリップ線路の長さに沿って変化する、請求項37に記載のコプレーナストリップ線路。
【請求項41】
コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、
A)コプレーナストリップ線路損失を克服するように、該コプレーナストリップ線路に沿って変化させて増幅を分布させる行為を含む、前記方法。
【請求項42】
行為A)が、
分布させた増幅が少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係するように、コプレーナストリップ線路に沿って増幅を分布させる行為を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
行為A)が、
B)複数の増幅器をコプレーナストリップ線路に沿って配置する行為であって、前記複数の増幅器の内の少なくとも2つの増幅器が、異なるゲインを有するようにする、前記行為を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
複数の増幅器のそれぞれの増幅器のゲインが、前記増幅器がコプレーナストリップ線路に沿って配置されている位置において、少なくとも1つの電圧定常波の振幅と関係づける、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
行為B)が、
複数の増幅器を、コプレーナストリップ線路の長さに沿って等間隔に配置する行為を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
コプレーナストリップ線路上に少なくとも1つの電圧定常波を生成する方法であって、
A)前記少なくとも1つの電圧定常波の発振モードを制御する行為を含む、前記方法。
【請求項47】
行為A)が、
B)少なくとも1つの電圧定常波の少なくとも1つの所望の発振モードを加振するように、少なくとも1つの増幅器を、コプレーナストリップ線路に沿って配置する行為を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
行為B)が、
少なくとも1つの電圧定常波の少なくとも1つの所望の発振モードを加振するように、複数の増幅器を、コプレーナストリップ線路に沿った異なる場所に配置する行為を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
行為A)が、
分布させた増幅が少なくとも1つの電圧定常波の所望の発振モードの振幅と関係するように、該コプレーナストリップ線路に沿って増幅を分布させる行為を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
コプレーナストリップ線路上の少なくとも1つの電圧定常波の周波数を制御する方法であって、
A)コプレーナストリップ線路に沿って、少なくとも1つの電圧定常波の最大振幅と前記少なくとも1つの電圧定常波のゼロ電圧ノードとの間のほぼ中間点である位置に、少なくとも1つの周波数制御デバイスを配置する行為を含む、前記方法。
【請求項51】
行為A)が、
B)少なくとも1つの周波数制御デバイスを、コプレーナストリップ線路に沿って、中間点とゼロ電圧ノードとの間にある位置に配置する行為を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
行為B)が、
少なくとも1つの周波数制御デバイスを、ゼロ電圧ノードよりも中間点に接近して配置する行為を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
実質的に互いに平行であって、第1の方向に沿って実質的に配向されている第1の導体および第2の導体だけを含む、コプレーナストリップ線路(CPS)、および
コプレーナストリップ線路に近接して配置された、複数の本質的に直線状の導電ストリップであって、実質的に互いに平行であるともに、実質的に前記第1の方向に直角の第2の方向に沿って配向されている、前記複数の直線状の導電ストリップを含む、装置。
【請求項54】
少なくとも、コプレーナストリップ線路と複数の直線状導電ストリップとの間に配置された、少なくとも1種の誘電体をさらに含む、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
少なくとも1種の誘電体、複数の直線状導電ストリップ、およびコプレーナストリップ線路がその上に配置されている、シリコン基板をさらに含む、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
装置が、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有するコプレーナストリップ線路上で少なくとも1つの信号をサポートするように構成されており、かつ
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数において、装置が少なくとも30の品質係数Qを有するように、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップが配設されている、請求項53に記載の装置。
【請求項57】
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置の品質係数Qが少なくとも50となるように、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップが配設されている、請求項53に記載の装置。
【請求項58】
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置の品質係数Qが少なくとも70となるように、コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップが配設されている、請求項53に記載の装置。
【請求項59】
第2の方向は第1の方向に対して直交しており、
コプレーナストリップ線路が、第1の面内に配置され、
複数の直線状導電ストリップの少なくとも一部が、第1の面と本質的に平行な第2の面内に配置され、そして
第1の面および第2の面の両方に対する少なくとも1本の垂線が、コプレーナストリップ線路の1つの導体および複数の直線状導電ストリップ少なくとも1つの導電ストリップの両方を通過する、請求項53に記載の装置。
【請求項60】
第1および第2の導体のそれぞれが、コプレーナストリップ線路に沿った所与の点において第2の方向に沿って、幅Wを有し;
前記コプレーナストリップ線路が、コプレーナストリップ線路に沿った所与の点において第2の方向に沿って、第1の距離Sだけ隔てられており;
前記コプレーナストリップ線路は、コプレーナストリップ線路に沿った所与の点において第2の方向に沿って、第1の寸法Dを有し、ここでD=2W+Sであり;
複数の直線状導電ストリップのそれぞれの導電ストリップは、第2の方向に沿って長さIsを有し、さらに
長さIsおよび第1の寸法Dがほぼ等しい、請求項59に記載の装置。
【請求項61】
長さIsが、第1の寸法Dよりも最大約10%だけ大きい、請求項60に記載の装置。
【請求項62】
複数の直線状導電ストリップのそれぞれの導電ストリップが、第1の方向に沿って幅dAを有し、該幅dAは第1の寸法Dよりも大幅に小さい、請求項60に記載の装置。
【請求項63】
複数の直線状導電ストリップの隣接する直線状導電ストリップが、第1の方向に沿って距離dBだけ隔てられており、該距離dBは第1の寸法Dよりも大幅に小さい、請求項62に記載の装置。
【請求項64】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
直線状導電ストリップの幅dAが、隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBよりも小さく、最大で距離dBの約半分である、請求項63に記載の装置。
【請求項66】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、第1の寸法Dよりも約1桁分小さい、請求項63に記載の装置。
【請求項67】
直線状導電ストリップの幅dAおよび隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項66に記載の装置。
【請求項68】
直線状導電ストリップの幅dAおよび隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、第1の寸法Dよりも少なくとも1桁分小さい、請求項63に記載の装置。
【請求項69】
直線状導電ストリップの幅dAおよび隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
コプレーナストリップ線路が第1の方向に沿って長さLCPSを有し;
複数の直線状導電ストリップのそれぞれの導電ストリップが第1の方向に沿って幅dAを有し;さらに
前記幅dAは、前記コプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも大幅に小さい、請求項60に記載の装置。
【請求項71】
複数の直線状導電ストリップの隣接する直線状導電ストリップが、第1の方向に沿って距離dBだけ隔てられており、該距離dBはコプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも大幅に小さい、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項71に記載の装置。
【請求項73】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、コプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも約1桁分小さい、請求項71に記載の装置。
【請求項74】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項73に記載の装置。
【請求項75】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBのそれぞれが、コプレーナストリップ線路の長さLCPSよりも約1桁分小さい、請求項71に記載の装置。
【請求項76】
直線状導電ストリップの幅dAと隣接する直線状導電ストリップを隔てる距離dBがほぼ等しい、請求項75に記載の装置。
【請求項77】
複数の直線状導電ストリップが、
第1の面に配置された、第1の複数の直線状導電ストリップ;および
第1の面および第2の面に本質的に平行な第3の面に配置された、第2の複数の直線状導電ストリップを含む、請求項59に記載の装置。
【請求項78】
第1の面が、第2の面と第3の面の間に位置する、請求項77に記載の装置。
【請求項79】
第1の複数の直線状導電ストリップおよび第2の複数の直線状導電ストリップが交互に配設され、それによって、第1、第2および第3の面に対するいずれもの垂線も、前記第1の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップと前記第2の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップの両方を通過しないようにされている、請求項78に記載の装置。
【請求項80】
第2の面が、第1の面と第3の面の間に位置する、請求項77に記載の装置。
【請求項81】
第1の複数の直線状導電ストリップおよび第2の複数の直線状導電ストリップが交互に配設され、それによって、第1、第2および第3の面に対するいずれもの垂線も、前記第1の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップと前記第2の複数の直線状導電ストリップの1つの導電ストリップの両方を通過しないようにされている、請求項80に記載の装置。
【請求項82】
複数の導電ストリップが、少なくとも、第1、第2および第3の面に本質的に平行な第4の面に配置された、少なくとも第3の複数の直線状導電ストリップを含む、請求項77に記載の装置。
【請求項83】
少なくとも1つの差分信号を移送する方法であって、
A)第1の方向に実質的に沿って配向され、複数の直線状導電ストリップに近接して配置されたコプレーナストリップ線路上で、前記少なくとも1つの差分信号を移送する行為であって、前記複数の直線状導電ストリップが本質的に互いに平行であり、前記第1の方向に直角な第2の方向に実質的に沿って配向されている前記行為を含む、前記方法。
【請求項84】
コプレーナストリップ線路が、第1の導体および第2の導体だけを含み、少なくとも1つの差分信号を移送する方法であって、
B)複数の直線状導電ストリップを、前記第1の導体および第2の導体に対して浮動電位に維持する行為をさらに含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
コプレーナストリップ線路および複数の直線状導電ストリップがシリコン基板上に配設されており;前記コプレーナストリップ線路は、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有する少なくとも1つの信号をサポートするように構成されており;前記コプレーナストリップ線路および前記複数の直線状導電ストリップは、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも50の品質係数Qを有するように、配設されており;さらに行為A)が、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有する少なくとも1つの差分信号を、前記コプレーナストリップ線路を介して移送する行為を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記コプレーナストリップ線路および前記複数の直線状導電ストリップは、約10ギガヘルツから少なくとも50ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも70の品質係数Qを有するように、配設されており、かつ行為A)が、
約10ギガヘルツから少なくとも50ギガヘルツまでの範囲にある周波数を有する少なくとも1つの差分信号を、前記コプレーナストリップ線路を介して移送する行為を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
シリコン基板;
互いに平行であって、前記シリコン基板の上方の第1の面に配置され、かつ実質的に第1の方向に沿って配向されている、第1の導体および第2の導体;
前記シリコン基板の上方で、かつ前記第1の面に平行な第2の面に配置された、複数の直線状導電ストリップであって、本質的に互いに平行であるとともに、前記第1の方向と直交する第2の方向に実質的に沿って配向されている、前記複数の直線状導電ストリップ;および
少なくとも、前記第1の面と前記第2の面の間に配置された、少なくとも1種の誘電体を含む、コプレーナストリップ線路デバイスであって、
約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツの範囲にある周波数を有する、前記第1および第2の導体上で少なくとも1つの信号をサポートするようにされているとともに、前記第1および第2の導体、ならびに前記複数の直線状導電ストリップは、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある、少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも30の品質係数Qを有するように配設されている、前記コプレーナストリップ線路デバイス。
【請求項88】
第1および第2の導体ならびに複数の直線状導体ストリップが、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも50の品質係数Qを有するように、配設されている、請求項87に記載の装置。
【請求項89】
第1および第2の導体ならびに複数の直線状導電ストリップが、約1ギガヘルツから少なくとも60ギガヘルツまでの範囲にある少なくとも1つの周波数に対して、装置が少なくとも70の品質係数Qを有するように、配設されている、請求項87に記載の装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【公表番号】特表2006−528466(P2006−528466A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521187(P2006−521187)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023311
【国際公開番号】WO2005/011101
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(592257310)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023311
【国際公開番号】WO2005/011101
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(592257310)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (31)
【Fターム(参考)】
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